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08 TOPPAN CSR レポート 2017 サステナブルパッケージの 普及を目指して 特集 1 多様な役割をもつ容器包装 毎日のくらしに身近な容器包装は、様々な役割をもっ ています。主な機能として、外部環境から内容物を守る 「保護の機能」、ものを小分けにしたり、運びやすく販売 しやすくする「利便性の機能」、用途や注意事項を伝える 「表示の機能」をあげることができます。 一方で、このように多様な機能をもつ容器包装も、内 容物が使用・消費された後には不要なものとなり、ゴミと して廃棄されるため、安全性や利便性といった求められ る役割を果たしながらも、地球環境への負荷を極力減ら した容器包装の開発が広く社会から求められています。 近年、特に注目が集まっている「フードロス(食品廃棄)」 ■ 家庭ゴミのうち容器包装廃棄物は、容積比で54.7% ■ サーキュラー・エコノミー・パッケージ における、EU の廃棄物にかかわる目標 2030年までに、加盟国各自治体の廃棄物の65%をリサイクルする 2030年までに、包装廃棄物の75%をリサイクルする 2030年までに、すべての種類の埋め立て廃棄量を最大10%削減する 出典:環境省「平成28年度 容器包装廃棄物の使用・排出実態調査」 出典:欧州委員会プレスリリース 容器包装 54.7% 紙類 10.7% プラスチック類 38.1% ガラス類 2.1% 金属類 3.8% その他 0.0% 容器包装以外 45.3% の削減にも、容器包装が貢献しています。食品加工技術と 容器包装技術がかけ合わされることで、鮮度保持や賞味 期限の延長を実現するとともに、小分けや個包装によっ て必要な量だけ購入・使用ができるようになるためです。 世界的にも、 容器包装の負荷削減は大きな課題 EUは現在、サーキュラー・エコノミー(循環型経済)と いう新しいモデルを成長戦略の核に据えています。2015 年12月、欧州委員会は実現に向けての主要な行動計画 群「サーキュラー・エコノミー・パッケージ 」を採択しまし た。この中で、優先的取り組み分野として、プラスチック、 食品廃棄物、希少原料、建築・解体および バイオマス・バ イオ由来資源の5分野が掲げられています。目標の実現 に向けてEU各国での目標策定とその実施のための法 整備を求めています。 くらしに欠かすことのできない容器包装を、持続可能なものにするために、 トッパンはバリューチェーン全体の協働で、取り組みを進めています。

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08 TOPPAN CSR レポート 2017

サステナブルパッケージの普及を目指して

特 集

1

多様な役割をもつ容器包装

 毎日のくらしに身近な容器包装は、様々な役割をもっています。主な機能として、外部環境から内容物を守る

「保護の機能」、ものを小分けにしたり、運びやすく販売しやすくする「利便性の機能」、用途や注意事項を伝える

「表示の機能」をあげることができます。 一方で、このように多様な機能をもつ容器包装も、内容物が使用・消費された後には不要なものとなり、ゴミとして廃棄されるため、安全性や利便性といった求められる役割を果たしながらも、地球環境への負荷を極力減らした容器包装の開発が広く社会から求められています。 近年、特に注目が集まっている「フードロス(食品廃棄)」

■ 家庭ゴミのうち容器包装廃棄物は、容積比で54.7%

■ サーキュラー・エコノミー・パッケージにおける、EUの廃棄物にかかわる目標

● 2030年までに、加盟国各自治体の廃棄物の65%をリサイクルする● 2030年までに、包装廃棄物の75%をリサイクルする● 2030年までに、すべての種類の埋め立て廃棄量を最大10%削減する

出典:環境省「平成28年度 容器包装廃棄物の使用・排出実態調査」 出典:欧州委員会プレスリリース

容器包装54.7%

紙類 10.7%

プラスチック類38.1%

ガラス類 2.1%金属類 3.8%その他 0.0%

容器包装以外45.3%

の削減にも、容器包装が貢献しています。食品加工技術と容器包装技術がかけ合わされることで、鮮度保持や賞味期限の延長を実現するとともに、小分けや個包装によって必要な量だけ購入・使用ができるようになるためです。

世界的にも、容器包装の負荷削減は大きな課題 EUは現在、サーキュラー・エコノミー(循環型経済)という新しいモデルを成長戦略の核に据えています。2015年12月、欧州委員会は実現に向けての主要な行動計画群「サーキュラー・エコノミー・パッケージ」を採択しました。この中で、優先的取り組み分野として、プラスチック、食品廃棄物、希少原料、建築・解体およびバイオマス・バイオ由来資源の5分野が掲げられています。目標の実現に向けてEU各国での目標策定とその実施のための法整備を求めています。

くらしに欠かすことのできない容器包装を、持続可能なものにするために、トッパンはバリューチェーン全体の協働で、取り組みを進めています。

09TOPPAN CSR レポート 2017

めて成り立つものです。トッパンは、設計および製造面における取り組みに加え、メーカーや流通、生活者などのステークホルダーを“むすぶ”有機的な取り組みにより、モノ・コトの両面からサステナブルパッケージへの置き換えを推進しています。これからも「有限を無限に近づける」仕組みの構築・高度化を通じて、持続可能な社会の形成に貢献していきます。

特集1 サステナブルパッケージの普及を目指して

出典:(公社)日本包装技術協会「包装…知っとく知識」

持続可能な社会の形成に貢献する容器包装 容器包装の目指す姿としては、機能が万全に備わっていることはもちろん、内容物に対して材質・容積ともに過剰ではないこと、使用する人にふさわしい安心・安全のための配慮がなされていること、そして、環境に与える負荷を極力低減しているといったことなどがあげられます。トッパンはこのような容器包装を目指していくことがまさしく持続可能な社会の形成に貢献することにつながっていくと考えます。

「有限を無限に近づける」仕組み、サステナブルパッケージ 近年、パッケージの機能を維持・改善しながら使用する原材料の削減を図るという「パッケージの最適化」を目指すことが国際的な潮流となっています。トッパンではこのような社会的課題や国際的な動向を視野に入れ、ISO18600シリーズの考え方に沿った独自の指針のもと

「サステナブルパッケージ」の提案活動を展開しています。 過度にパッケージを減量化して機能を損なうのではなく、品質保持および使用時のエネルギーや水の使用量にも配慮するなど、お客さまの製品のライフサイクル全体を考慮したパッケージの最適化設計の提案。そして、非枯渇性資源や再生資源の有効活用、紙の調達における森林資源の持続可能な利用に配慮したパッケージの提案。これらを「パッケージの環境配慮指針」として制定し、活動を展開しています。 一方で、このサステナブルパッケージ は、バリューチェーンの様々なステークホルダーとの協働によって初

■ トッパンが目指すサステナブルパッケージ

■ 容器包装の目指す姿

トッパン

流通

生活者

中身メーカー

原材料メーカー

バリューチェーンで協働

環境サステナブルパッケージ

への置き換え

持続可能な社会

社会

経済

過度にパッケージを減量化して機能を損なうのではなく、品質保持や使用時のエネルギー使用量などにも配慮した、最適化設計を行います。

資源の有効利用を進めるため、パッケージの4R設計に取り組みます。

■ パッケージの環境配慮指針

❶ 製品のライフサイクル全体を考慮した設計 ❷ 持続可能な資源の利用

パッケージの最適化バイオマス資源の利用

適正調達した紙の利用

再生資源の有効活用リデュース・リプレイス

リユース・リサイクル

LCA 手法により環境負荷を確認

非枯渇性資源や再生資源の有効活用、森林資源の持続可能な利用に配慮した、パッケージを提案します。

トッパンの目指す「サステナブルパッケージ」

循環型社会に適合

環境に与える負荷を極力低減している 安心・

安全・人優先使用する人にふさわしい配慮がなされている

低コスト・少負担トータルコストを最小に抑えている

適正包装製品に対して材質・容積とも過剰ではない

機能万全必要な機能を満たしている

10 TOPPAN CSR レポート 2017

 賞味期限切れや食べ残しなどで廃棄される食料は、世界で年間約13億トンに上り、グローバルで大きな課題となっています。こうした食品ロスを低減するために、トッパンはパッケージの面からアプローチを行っています。 透明バリアフィルム「GL BARRIER」は、アルミ箔に匹敵する世界最高水準のバリア性を実現し、食品を酸化・乾燥・吸湿から守ることで、従来品よりも品質保持期間の延長を可能にしました。これにより、材料の調達コストや在庫ロスの低減につながるだけでなく、パッケージの層構成の合理化により軽量化することで、輸送エネルギーの削減も実現できます。 透明バリアフィルムは今後需要が拡大すると見込まれており、トッパンは2016年4月に米国・ジョージア州に新工場を竣工しました。この工場から北米や

欧州のパッケージメーカーに対する供給を行うことで、日本からの輸送コストを減らし、安定的な供給を図っていきます。

世界最高水準のバリア性能をもつ透明バリアフィルム「GL BARRIER」

トッパン独自の透明蒸着加工技術とコーティング技術を活用しており、印刷・ラミネートなどの後加工もしやすいフィルム

 メカニカルリサイクルとは、回収したPETボトルを粉砕・洗浄後、さらに高温・減圧下で一定時間処理することで再生材中の汚染物質を除去して高品質の再生樹脂を得る方法です。 トッパンでは、メカニカルリサイクルPET樹脂を使用したPETフィルムを「メカニカルリサイクルPETフィルム」として、各種パウチの印刷基材やバリア素材として導入しています。 このフィルムは、再生樹脂を世界最高レベルの80%使用し、一般PETフィルムと同等の物性・透明性を実現する一方、CO₂排出量は一般PETフィルムに比べて約24%削減しています。 厚生労働省のガイドラインに基づく評価を実施しており、食品用途にも使用可能な品質・安全性を有しています。

回収PETボトルを再生PETフィルムへ「メカニカルリサイクルPETフィルム」

サステナブルパッケージを実現するための様々な技術・仕組み

透明バリアフィルム「GL BARRIER」のレトルト対応グレードの基材にメカニカルリサイクルPETフィルムを用いた「GL-AR-NF」を開発

11TOPPAN CSR レポート 2017

特集1 サステナブルパッケージの普及を目指して

 紙の環境配慮のために、古紙パルプを多く使うこと、バージンパルプを使用する場合は森林認証紙や間伐材などのパルプ、非木材紙などを利用することが推奨されています。2011年9月にトッパングループ

「森林の持続可能な利用に配慮した用紙調達ガイドライン」を制定しました。 トッパンは、間伐材を含む国産材を30%以上使用し、独自開発の透明バリアフィルム(GL BARRIER)を採用した紙製の飲料容器「カートカン®」を1996年に上市しました。国産材を積極的に利用することは、緑のサイクルを循環させ、日本の森林の保全につながります。 カートカン®容器を飲料メーカーに販売した金額の一部は「緑の募金」に寄附され、国内の森林整備の活動資金として活用いただいています。またカート

カン®は飲料用紙パックのリサイクルルートで回収でき、トイレットペーパーに生まれ変わります。

間伐材紙を使用した飲料容器「カートカン®」

カートカン®は無菌充填により常温流通に対応し、自動販売機や通販など多様な販売チャネルで活用される

 バイオマスプラスチックは、枯渇性資源である化石資源の代わりに、再生可能資源である植物由来の原料を使用した包材です。植物は生育時に大気中のCO₂を吸収しているため、焼却時に発生するCO₂をゼロカウントにできると考えられます。 トッパンは、1991年からバイオマスプラスチックを使用したパッケージの開発・商品化に取り組んできました。その中で誕生した「BIOAXX(バイオアクス)®」シリーズは、植物由来原料を用いており、バイオマスポリエチレンを使用したラミネート加工が特長です。2012年に、厚さ40µm以下のバイオマスポリエチレンを用いたラミネートパッケージを実現したことで、非食品に限らず食品や医薬品など、幅広い分野の軟包装材として利用できるようになりました。

バイオマスプラスチックを使用したパッケージ「BIOAXX(バイオアクス)®」シリーズ

トイレタリー製品の詰め替えスタンディングパウチのほか、食品や医薬品、紙コップなど幅広い分野で使用可能

サステナブルパッケージを実現するための様々な技術・仕組み