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1 2018 年度 上智大学経営学部経営学科 網倉ゼミナール 卒業論文 フードデリバリー業界は誰が支えていくのか 2019 年 1 月 15 日提出 A1542546 内海遼太郎

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2018 年度

上智大学経営学部経営学科

網倉ゼミナール 卒業論文

フードデリバリー業界は誰が支えていくのか

2019 年 1 月 15 日提出

A1542546 内海遼太郎

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目次

1.はじめに

2.基礎情報

フードデリバリー業界の現状

3.仮説・検証

①:従来の宅配デリバリー形態が今後も支えていくのではないか

②:「出前館」が行うデリバリー形態が支えていくのではないか

③:「Uber Eats」が行うデリバリー形態が支えていくのではないか

4.結論

5.おわりに

6.参考文献

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1.はじめに

高校入学以来、私は最寄りの中野駅までほぼ毎日、自転車を利用して通学している。そし

て最近ではロードバイク(競技用の自転車でハンドルが下方に丸く曲がっているもの)にも

手を出し始め、街行く自転車がどこのメーカーか、だいたい〇十万くらいかなどを観察する

ようになった。そうして中野の街の自転車乗りたちを観察するうちに、ある一つのことに気

が付いた。それは、彼らが何やら「Uber Eats」と書かれた緑の正方形型のリュックサック

を背負いながら、街を縦横無尽に走り回っているのである。私が高校生の時には一度も見か

けなかったこの緑のリュックは、今や中野では昼夜ともに見かけない日はないくらいにな

った。Uber Eatsは数あるシェアリングエコノミーサービスの中でもフードデリバリー業界

に位置し、この業界の「黒船襲来」とまで言わしめ、国内において日々提供エリアを拡大さ

せ続けているようだ。

「緑のリュック」に興味を持ちさらに詳しく調べてみると、国内市場は Uber Eats 一強か

と思いきや、国内のフードデリバリーサービスも負けじと奮戦していることがわかった。そ

して近年はフードデリバリー業界にとって大きな山場とも言え、出前「新世紀」に突入して

いることがわかってきた。これからの日本のフードデリバリー市場は誰が支えていくのか。

本稿では国内のフードデリバリー市場を分析するとともに、今後どのような様相をなして

いくのか明らかにしていきたいと思う。

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2.基礎情報

フードデリバリー業界の現状

そもそもフードデリバリー業界とは何だろうか。これから論じる内容を明確にするため

本稿においてはフードデリバリー業界を「電話やインターネットを通じて調理済みの料理

を配達するサービス」と定義する。日本では昔から「出前文化」が広く浸透しており、古

くはそばや寿司や中華料理、近年ではピザやハンバーガーなど注文できる品物は多種多様

を極め、私たちの食卓にしばしば並んできた。

市場調査会社の矢野経済研究所によると、国内のフードデリバリー業界の動向は年々右

肩上がりに成長しているという。2010 年に 1兆 6700 億円であった市場規模は 2014 年に

は 2兆円近い規模まで成長しており、4 年間で約 16%という着実な成長を見せてきた。下

の図のように今後も年々フードデリバリー市場は2%近くの成長を見せると、同研究所は

結論付けている。

図1

注:事業者売上高ベースをもとに作成。2015 年以降は予測値。(出典:矢野経済研究所)

次に「図2外食率と食の外部化率の推移」について見ていく。このグラフでは国内にお

ける外食率は平成 9 年の 39.7%をピークに、平成 27 年には 34.7%まで落ち込んでいること

から年々低下の一途をたどっていることがわかる。一方で食の外部化率は同じ平成9年が

44.6%、平成 27年が 43.7%と若干の低下はみられるものの、ほぼ横ばい調子となっている

16717 17402 18097 18797 19348 19864 20281 20675 21072 21470

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2010 11 12 13 14 15 16 17 18 19

商品宅配サービス市場の推移と予測(億円)

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ことがわかる。このことから推測できるのは、人々の外食頻度は減っている(外食率の低下)

が、食を自宅で済ませるのではなく外部から調達していること(食の外部化率の横ばい化)

から、飲食店などに出向いて外食する機会は減って、フードデリバリーを利用する機会が増

えているということである。

図2

注:外食率=外食市場規模÷全国の食料・飲料支出額

食の外部化率=広義の外食市場規模÷全国の食料・飲料支出額

公益財団法人 食の安全・安心財団 web サイト http://anan-zaidan.or.jp/data/index.html より引用

市場規模が伸び、出前を注文する消費形態が浸透していく一方で、この業界の根幹を揺る

がす大きな事態が存在することにも着目したい。2018/4/10 の日本経済新聞記事「宅配ピ

ザ・すし、届けません 人手不足で持ち帰りに力」によると、

「ピザやすしの宅配企業が配達員の人手不足を受け持ち帰りに力を入れ始めている。若者

の運転免許保有者が減り配達の担い手確保が難しくなっている。今後、「脱宅配」の動き

がじわりと広がる可能性がある。(中略)警察庁によると、17年末の 16~24 歳の運転免許

保有者数は 10 年前に比べて約2割減の 566万人と、配達の担い手は減少傾向にある。」

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と述べられている。この記事では 16~24歳の若者のドライバーの数は減少傾向にあり、大

型チェーン店における配達の担い手の確保が困難になっていると報じている。フードデリ

バリー業界が年々成長を続け、宅配サービスに対する需要が伸びる一方、店側は供給に必要

な人員の確保に苦戦している現状が、フードデリバリー産業に垣間見える。

フードデリバリー業界の発展についてここまで述べてきたが、次に消費者の視点に立っ

てどの媒体を用いているのかについてデータを用いて分析していく。今までフードデリバ

リーの注文方法として電話という手段が広く一般的であったが、最近ではインターネット

及びスマートフォンのアプリからの注文という方法が増加している。

図4 フードデリバリーの注文比率と前年同期比

2016 年 6 月~2017年 5 月計(NPD Japan, エヌピーディー・ジャパン調べ)

図4から、注文比率(左)でみると「電話」が 6 割以上を占めており、まだまだ従来の

電話での注文方法を選択する人がいる一方で、前年同期比(右)でみるとインターネット

の成長率は 15%超となっており、電話での注文を大きく上回る成長を遂げている。また成

長率を見るとインターネットでの注文とアプリからの注文はデリバリー計増加分全体の

67%を占め、フードデリバリー市場における PC・スマートフォンを用いた注文方法は今

後、より増加していくと思われる。

ここまでの近年におけるフードデリバリー市場動向をまとめると以下のことが導き出さ

れる。

①フードデリバリー業界は成長産業であり、今後も着実な需要が見込める。

②一方で配達員の人口は減少傾向にあり、人員の確保が難しい。

③従来の電話による注文よりも、インターネットや専用アプリなどのオンライン注文が

増加する。

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これらの市場ニーズを満たすものとして最も適切なサービス形態こそ今後のフードデリ

バリー市場を牽引し、支えていくと考えられる。では果たしてそのサービス形態とはいっ

たいどのようなものなのか。次章ではそのサービス形態の仮説を提示するとともに検証・

分析・考察をしていく。

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3.仮説・検証

ここまでフードデリバリー業界の現状と特徴について論じてきたが、本章では「フード

デリバリー業界は誰が支えていくのか」について仮説を立てるとともに、

仮説①従来の宅配デリバリー形態が今後も支えていくのではないか

仮説②「出前館」が行うデリバリー形態が支えていくのではないか

仮説③「Uber Eats」が行うデリバリー形態が支えていくのではないか

といった視点から分析・考察を行っていきたい。

※なお本稿における②「出前館」が行うデリバリー形態とは、同サービスがシェアリング

デリバリー®を開始する 2016年以前の仲介型デリバリー形態のことを指す。

仮説①従来の宅配デリバリー形態が今後も支えていくのではないか

従来の宅配デリバリー形態とは、飲食店が行うデリバリーサービスを指し、いわゆる出

前のことである。主に飲食店が自店で提供している飲食物などを、自店の従業員が希望す

る顧客のもとに配送するサービス形態を指す。皆が「出前」と聞いて思い浮かべるような

ピザや寿司を商品に扱う大手チェーン店もこれらに属する。

分析・考察

従来の宅配デリバリー形態に特徴的なのは、飲食店が出前を行うことによって今まで店

舗に訪れたことのない新たな顧客を開拓でき、また既存の顧客に対しても店舗に直接来る

ことなくサービスを提供可能になるため、相乗効果が望めるということである。しかしな

がら、個人の飲食店が出前を自社で手掛ける場合、配達を行う際の従業員の人件費、車両

費、加えてチラシによる販促なども自己負担となるため、参入するハードルが高いという

問題点がある。また近年のフードデリバリー市場の動向で従来の電話による注文よりも、

インターネットや専用アプリなどのオンライン注文が増加していることから、今後出前に

よる売り上げを見越すのであれば、オンライン注文用プラットフォームづくりが必要不可

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欠である。このことは個人経営型飲食店の出前参入難易度をさらに高める要因になりえ

る。

では大型チェーン店のように資金が豊富な飲食店であれば、今後のフードデリバリー業

界で売り上げを伸ばし続けることができるのか。実際それも難しい。前述した 2018/4/10 日

本経済新聞記事「宅配ピザ・すし、届けません 人手不足で持ち帰りに力」によると、2章

フードデリバリー業界の現状で述べたように、配達員の減少に対して直接的な対策のめど

は立っておらず、大手チェーン店各社には「持ち帰り専門店」といった脱宅配の流れがみら

れるためである。

以上のことから、従来の宅配デリバリー形態は、これから始める個人経営飲食店にとっ

ては参入障壁が高く、大型チェーン店にとっては配達の根幹となる人員の確保が難しいと

いった問題が存在するため、今後成長するフードデリバリー業界を支えるにはあまり適し

てるとは言えない。

仮説②「出前館」が行うデリバリー形態が支えていくのではないか

次に株式会社夢の街創造委員会が運営する「出前館」を例に、飲食店業としての経営母

体を持たない企業が、今後のフードデリバリー業界を牽引していくのではないかという仮

説を立てる。出前館の基本ビジネスモデルは、これまで電話注文のみに限っていたレスト

ランが、出前館に加盟することによって出前館の持つアプリやインターネットサイトを通

じて新たな注文経路が構築できることにある。下の図5のように、利用者が出前館を通じ

てレストランに注文を行うと、注文内容は FAX・メールなどを通じてレストランのもとに

連絡が入り、レストランは自店舗の配達員を使って宅配を行う。出前館の基本形態はいわ

ゆる出前取次である。手数料も月額 3000 円から始めることができ、レストランが自力で

プラットフォームを構築するよりも、はるかに格安である。同社はこのようにして加盟店

に対し、新たな注文経路を比較的安価に提供することで創業 1999 年以来、フードデリバ

リー業界の推移と並行して業界シェアを伸ばすとともに、着実な成長を見せてきた。

図5・6

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夢の街創造委員会 2018 年 1 月個人投資家説明会資料より引用

図7 出前館の業績推移

夢の街創造委員会 2018 年 1 月個人投資家説明会資料より引用

分析・考察

出前館はこれまでユーザを集客し、注文や決済を代行する仕組みで国内最大級の出前ポ

ータルサイトに上り詰めた。出前館のような仲介型デリバリー形態の最大の強みは、安価

な手数料でアプリやインターネットサイトのようなオンライン型注文に進出することがで

きるということである。フードデリバリー業界において国内のオンライン注文の比率が

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年々上昇していることから、これまで電話でしか注文できなかった個人経営飲食店にとっ

ては、売り上げを伸ばす良いきっかけとなる。

しかしながらこの仲介型デリバリー形態の最大の弱点はデリバリー機能を持たない飲食

店はそもそも利用することができないということである。出前館の行う基本ビジネスモデ

ルはあくまで出前取次であるため、自前のデリバリー機能を持つ飲食店には注文形態の拡

大のチャンスを与えるが、デリバリー機能のない飲食店にとって受けられる恩恵はほぼな

いに等しいと考えられる。

すでにデリバリー機能を持つ飲食店であれば、国内最大級のポータルサイト加盟という

認知率の向上や、新たな注文経路を開拓できるといった大きなメリットが存在するが、デ

リバリー機能を自店舗で賄えない飲食店にとってはその恩恵を享受できない。仲介型デリ

バリー形態はフードデリバリー業界の牽引ではなく店の淘汰を招く可能性がある点から適

してるとは言えない。

仮説③「Uber Eats」が行うデリバリー形態が支えていくのではないか

Uber Eatsとは配車サービスで有名な Uber が 2016 年より開始した、新しい形態のフー

ドデリバリーサービスである。Uber が得意とする CtoC 型のビジネスモデルとなってい

る。「Uber Eats」のアプリを介して、配達パートナーと顧客が個人間でやり取りをするこ

とから、これまでのレストランと顧客がやり取りをする「出前」とは大きく異なってい

る。また Uber Eats が宅配を代行するため、配達員の人件費、配達車両の購入費・維持費

などもレストラン側が負担せずとも、提携するだけで容易にデリバリー事業に参入でき、

店の売上と認知度の向上が期待できる。

同サービスはサンフランシスコやパリなど世界中の都市で幅広く展開しており、2016 年

に追加された東京は 8か国 34 都市目となる。日本に上陸して以来、この2年間で同サービ

スは東京のみならず、展開都市エリアを拡大させ続けている。

表1

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⦅Uber Eats(ウーバーイーツ)情報局より作成⦆

図8

⦅Uber Eats(ウーバーイーツ)情報局より作成⦆

2016 年は東京の渋谷区、港区などごく一部のエリアでしかサービスを行っていな

かったが、2017 年末には東京 23区の多くがサービスエリアに追加され、2018 年に

は東京以外の 8 府県でのサービスが開始した。図では、サービス開始からわずか 2

年ほどでエリア数(同一の市であっても地域によって利用できない場所があるため、

利用可能区1つにつきエリア数1として計上した)を大幅に増加させていることがわ

かり、今後もさらなるエリアの拡大が期待できる。また ITmediaビジネス

ONLINEによると、2016 年時点で 150 店舗ほどであった提携レストラン数は 2017

年には 1000 店舗越えにまで拡大し、1000 人程度であった配達員の数は、5000 人

ほどまで達している。

分析・考察

フードデリバリー業界において大手デリバリーチェーン店が人員の確保に苦戦す

る中、Uber Eatsが 1年で配達員を 5 倍近く伸ばすことができた仕組みとして、「雇

用」という形態をとらなかったことが大きく関係している。Uber Eatsは配達員に

年月 サービス開始エリア

2016年 渋谷区、港区にてサービス開始。

2017年 千代田区、中央区、新宿区、目黒区、品川区、中野区、台東区、文京区、豊島区、板橋区、北区、杉並区、練馬区が追加。

2018年4月 大阪府大阪市にてサービス開始。

2018年8月 神奈川県横浜市、川崎市にてサービス開始。

2018年9月 埼玉県さいたま市にてサービス開始。

2018年10月 京都府京都市、兵庫県神戸市、愛知県名古屋市にてサービス開始。

2018年11月 福岡県福岡市にてサービス開始。

2018年12月 千葉県市川市にてサービス開始。

2

1523 25

37 40

59 6369

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国内の展開エリア数

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対し「業務委託」という契約形態をとっており、配達員は「企業に雇用されるので

はなく、企業と対等な立場で業務の依頼を受ける働き方」(エン転職・業務委託で働

くときの注意点より引用)が可能となる。配達員は自分の好きな時に好きな場所で、

仕事を始めることができ、好きな時に好きな場所でやめることができる。近年注目

されている副業や兼業、フリーランスのような柔軟で流動的な働き方を、自転車と

スマートフォン 1台で可能にするプラットフォームを作り上げた。

図9

副業・兼業の促進に関するガイドラインより引用

本業のスキマ時間という「旧遊資産」の有効活用を望む、フリーワーカーたちを

上手に囲い込むことによって、国内フードデリバリー業界が人員不足にあえぐ中、

Uber Eats は見事配達員の確保に成功している。

加えて Uber Eats は、これまで個人経営を行っていたレストランのフードデリバ

リー業界参入へのハードルを大きく下げた。個人飲食店がフードデリバリー業界に

参入する手立ては自前で環境整備を行うほかなかった現状を、宅配代行を手掛ける

ことで大きく変え、提携エリアとレストランを着実に伸ばした。

以上より、

①成長産業であるフードデリバリー市場における、新規飲食店の裾野を広げ、

②配達員の人口確保に成功し、

③増加するインターネットや専用アプリなどのオンライン注文に対応した、

Uber Eats は今後のフードデリバリー業界を牽引し、支えるデリバリー形態としてふさわ

しいといえる。

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4.結論

各仮説の考察と検証から、これからのフードデリバリー業界を支える形態として

最も望ましいのは、Uber Eats のようなシェアリングデリバリーであることが分か

った。CtoC 型ビジネスモデルはホテル業、タクシー産業のようにあらゆる産業に

おいて革命的なビジネスチャンスをもたらす可能性を秘めているが、法規制と常に

隣り合わせということを忘れてはならない。今後「緑のリュック」はどのような様

相を呈していくのか、これからも目が離せない。

5.おわりに

自分の好きなテーマで論文を書こうと思い、最初はアメコミについてテーマを設定して

いましたが、自分の疑問に対するデータをなかなか見つけられず、結局テーマを変更する形

となってしまいました。身近な疑問について執筆したものの、自分で仮説を立て、データを

収集し、検証・考察を行うということがこんなにも難しいのかと痛感する日々でした。書き

終わってみて感じたのは、検証・考察において定量的なデータを用いて分析できなかったた

め浅いものとなってしまったこと、論理の飛躍と穴が目立つこと、そして「何がおもしろい

のか」という問いに自信をもって答えられないという後悔です。これからは「伸びしろ」を

盾に物事から目を背けるのではなく、先生が日々ゼミの中で投げかけてくださっていた問

いに、正面から答えられる社会人として精進していきたい所存です。

最後になりますが、原田さんの部活の後輩として、網倉ゼミに迎えていただき本当に感謝

しています。網倉ゼミを通して先輩、後輩そして気の合う同期たちと巡り会えたのは、大学

生活において大変大きな財産となりました。ゼミであまり貢献できていないのにもかかわ

らず、「タダ飯」ばかりを食べていた私を、2 年間面倒を見てくださり、やさしく迎えてく

ださり、網倉先生、ありがとうございました。大変お世話になりました。

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6.参考文献

牧 泰嗣/小さな店でも大きく儲かる 出前・宅配・デリバリーで売上げ・利益を伸ばす方

法/同文館出版/平成 29 年

公益財団法人 食の安全・安心財団

http://anan-zaidan.or.jp/data/index.html

<外食・中食 調査レポート>急成長するフードデリバリー(宅配) ~市場規模は 4039 億

円、前年比+11%~

https://www.npdjapan.com/press-releases/pr_20170705/

日本経済新聞記事「宅配ピザ・すし、届けません 人手不足で持ち帰りに力」/2018 年 4月

10日

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29193530Q8A410C1MM0000/?n_cid=NMAIL

007

夢の街創造委員会 2018 年 1月個人投資家説明会資料

https://www.yumenomachi.co.jp/ir_information/library/doc01.html

Uber Eats情報局~高時給で自由な配達員の副業・アルバイト~

https://shigoto.work/archives/25

ITmedia ビジネスONLINE 上陸から 1 年社長が語る「UberEATS」好調の舞台裏

http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1710/02/news052.html

エン転職 業務委託で働くときの注意点

https://employment.en-japan.com/tenshoku-daijiten/9353/

副業促進に関するガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-

Roudoukijunkyoku/0000192845.pdf