ソーシャルワークにおけるストレングス教育の意義harp.lib.hiroshima-u.ac.jp/hirokoku-u/file/10659...ソーシャルワークにおけるストレングス教育の意義...

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ソーシャルワークにおけるストレングス教育の意義 「本目談援助」系科目担当教員へのヒアリングをつうじて- 山口真里 1.はじめに 本研究1)の着手は、講義や演習、実習、卒業論文指導などの教育経験をつうじ、学生のもつ 劣等感や無気力状態を目の当たりにした体験がきっかけで、あった。例えばある学生は、 [ "W とり教育』を受けたために、何かにつけて『ゆとり世代だから』と批判される。そのため他世 代と同じ教育を受けていない自分たちは、人間的に必要な何かが欠落しているのではないかと いう漠然とした不安をもっている」と発言したことがあった。また今日の大学では、学生の大 学入学の適性を図るために、学力だけでなく多面的に評価できるよう多様な入試形態をとって いる。このこと自体は大学で学生のあらゆる能力を伸ばせる可能性を広げることにつながって いると確信しているが、学生によっては、自分の文章能力や読解能力などの学力に不安をもっ たまま大学生活を送り、そのことが他学生への劣等感や無気力状態につながり、学力以外の能 力を十分発揮できない状況に陥る場合がある。 このような学生たちの劣等感や無気力状態は、 「ゆとり教育」という限定された世代がもつ ものであったり、少子化や大学入試形態の変遷などが間接的に影響を及ぼしているものである。 これを鑑みると、日本のソーシヤノレワーク実践を担う若い人材や大学生が、共通した劣等感を もっている可能性も否定で、きない。 しかし IFSW のソーシヤルワークの定義にもあるように、ソーシャルワーカーは社会的な困難 に直面し、パワーレスな状態にある利用者が主体的に生活を立て直していけるよう促進するエ ンパワメント実践を行わなければならない。そのためには、ソーシャルワーカー自身が自らの 強さを認識し、自信を獲得する体験を積み、その重要性を実感することが必要である。学生た ちがソーシヤノレワーカー養成課程で、そうした実感を得ることは、将来エンパワメント実践を行 ううえでも重要な課題といえよう。 そこで本研究では、手始めにわが国のソーシヤルワーカー養成課程といえる社会福祉士養成 課程で学生が自らの強さを認識し自信を獲得できるような教育方法を模索してみたい。なかで もエンパワメント実践の基盤となるストレングスにかかわる教育に焦点化し、その方法確立に むけた足がかりをつかみたいと考えている。 -79-

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ソーシャルワークにおけるストレングス教育の意義

「本目談援助」系科目担当教員へのヒアリングをつうじて-

山口真里

1.はじめに

本研究1)の着手は、講義や演習、実習、卒業論文指導などの教育経験をつうじ、学生のもつ

劣等感や無気力状態を目の当たりにした体験がきっかけで、あった。例えばある学生は、 [" Wゆとり教育』を受けたために、何かにつけて『ゆとり世代だから』と批判される。そのため他世

代と同じ教育を受けていない自分たちは、人間的に必要な何かが欠落しているのではないかと

いう漠然とした不安をもっている」と発言したことがあった。また今日の大学では、学生の大

学入学の適性を図るために、学力だけでなく多面的に評価できるよう多様な入試形態をとって

いる。このこと自体は大学で学生のあらゆる能力を伸ばせる可能性を広げることにつながって

いると確信しているが、学生によっては、自分の文章能力や読解能力などの学力に不安をもっ

たまま大学生活を送り、そのことが他学生への劣等感や無気力状態につながり、学力以外の能

力を十分発揮できない状況に陥る場合がある。

このような学生たちの劣等感や無気力状態は、 「ゆとり教育」という限定された世代がもつ

ものであったり、少子化や大学入試形態の変遷などが間接的に影響を及ぼしているものである。

これを鑑みると、日本のソーシヤノレワーク実践を担う若い人材や大学生が、共通した劣等感を

もっている可能性も否定で、きない。

しかし IFSWのソーシヤルワークの定義にもあるように、ソーシャルワーカーは社会的な困難

に直面し、パワーレスな状態にある利用者が主体的に生活を立て直していけるよう促進するエ

ンパワメント実践を行わなければならない。そのためには、ソーシャルワーカー自身が自らの

強さを認識し、自信を獲得する体験を積み、その重要性を実感することが必要である。学生た

ちがソーシヤノレワーカー養成課程で、そうした実感を得ることは、将来エンパワメント実践を行

ううえでも重要な課題といえよう。

そこで本研究では、手始めにわが国のソーシヤルワーカー養成課程といえる社会福祉士養成

課程で学生が自らの強さを認識し自信を獲得できるような教育方法を模索してみたい。なかで

もエンパワメント実践の基盤となるストレングスにかかわる教育に焦点化し、その方法確立に

むけた足がかりをつかみたいと考えている。

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ソーシャルワークにおけるストレングス教育の意義

11. ソーシヤルワークにおけるストレングス教育の位置

1.ストレングスにかかわる研究と教育の動向

近年のソーシヤノレワークでは、ストレングスがソーシヤルワーカーと利用者との対等な関係

を構築し、真に利用者の望む生活を実現する支援展開の鍵概念として注目されている。一般に

ストレングスとは、利用者が日常生活のなかで、培ってきた身体的・精神的・社会的能力や強さ、

豊かさなどを示し、利用者の生活世界を重視する概念である。

ストレングスの先行研究は、主にエンパワメントや社会構成主義を援用した研究のなかで行

われてきた。例えばエンパワメント研究でカウガーら (Cowger,C. D. & Sni vely, C. A.)は、

「エンパワーメントのための燃料やエネノレギーJ2) として重視し、エンパワメントの基盤とな

る重要な概念と位置づけている。一方で、ストレングス視点には、ソーシヤノレワーカーが利用者

の主観的な生活世界を理解することで、利用者中心の支援を展開しようとするところに特徴が

ある。そこには、社会構成主義の「私たちが世界をありのままに把握するのではなく、自分自

身の知識に基づいた枠組みによって把握しているJ3) という考え方も包含されている。すなわ

ち社会構成主義の研究でストレングスは、利用者が自らの世界を意味づける基盤として位置づ

けられている。このように先行研究では、ストレングスへの着目の必要性が強調されているが、

具体的な支援過程や展開方法については、十分明示していない現状がある。

一方でわが国では、社会福祉士及び介護福祉士法の改正に伴い、 2009年度から社会福祉士養

成課程で新カリキュラムに基づく教育が始まった。科目名の変更や時間数の増加、教育内容の

見直しが行われた新カリキュラムでは、従来の社会福祉援助技術関連科目の充実が図られてい

る。その結果、 「相談援助の基盤と専門職」、 「相談援助の理論と方法」、 「相談援助演習」、

昨日談援助実習指導」、 「相談援助実習」の 5科目(以下、総称して「相談援助」系科目とよ

ぶ)が社会福祉士養成課程の科目として登場することとなった。なかでも「相談援助の基盤と

専門職」、 「相談援助の理論と方法」の科目では、従来のカリキュラムと比較してストレング

スモデ、ルやストレングス視点などストレングスにかかわる教育内容が強調されている。このよ

うな流れからみても、わが国でストレングスに着目できるソーシャルワーカーの養成が期待さ

れていることがうかがえ、ストレングスにかかわる教育を重視していることが理解できる。

また「相談援助」系科目は、理論から実践まで一連の流れとして教育していくこと、すなわ

ち科目聞の連動が重要となる。久保は、ソーシヤルワーク・スキルを伝承するうえで、価値と

知識を結合させて行為に変えていくことを学生にどのように教えていくかが教員のミッション

であると強調している 4)。 「相談援助」系科目は、ソーシヤルワーカー養成において、まさに

こうした教員のミッションを担った科目群で、あり、それを実現しうるものであるといえよう。

しかし社会福祉士養成課程の現状として、そうした「相談援助」系科目間の連動性が担保され、

学生の学びに反映されているとは言い難い。例えば江口らは、所属大学のソーシャルワーク関

係科目一覧(旧カリキュラムの「相談援助」系科目社会福祉援助技術論 1J ["社会福祉援

助技術論11J ["社会福祉援助技術演習 1J ["社会福祉援助技術演習11J ["社会福祉援助技術現

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広島国際大学医療福祉学科紀要第8号 2012年 3月

場実習指導 1J i社会福祉援助技術現場実習指導llJ i社会福祉援助技術現場実習J)で各科

目の担当教員を示しているが、担当教員が必ずしも科目間で重複しているわけではないことが

わかる。また彼らは、社会福祉援助技術現場実習報告集を分析し、大学での援助技術の学びが

現場で役立つほど深化されていないと結論付け、ソーシャルワーク関係科目担当教員間でソー

シャルワークの基本的理解や教育目標の共有が重要であると指摘している 5)

このようにソーシヤルワーク教育においては、 「中目談援助」系科目の受講により、学生が理

論と実践をつなげられるような理解を深めることが大きな課題となっている。これはストレン

グス教育においても同様である。特に「相談援助」系科目の内容には、学生がソーシヤルワー

カーとしてその理論を実践へと具体化していくプロセスが内包されている。同様にストレング

スに着目した支援についても、ストレングスにかかわる理論を学んだうえで実践に具体化でき

る教育方法が必要とされている。

2.ストレングス教育の必要性

しかし、ストレングスにかかわる教育について言及した先行研究はほとんどない。これは、

「相談援助」系科目のストレングスにかかわる教育の内容や方法、 「相談援助」系科目聞の連

動性、教育効果の検討の現状については把握で、きていない現状を示している。

一方で、ストレングスと関わりの深い概念で、あるエンパワメント研究においては、その教育

方法に言及している先行研究を見つけることができた。例えば替藤は、エンパワメントの具体

的な方法や技法をソーシャルワーク教育のなかにどのように取り入れていくかが課題であると

指摘し、 「教育の場にあっても一人ひとりがおかれている状況を認識し、共有し合うことから

始めることJ6)がエンパワメント実践の第一歩となると提案している。また保正は、 「ソーシ

ヤルワーカー自身がエンパワーメントとはどのようなことなのかを、自らの体験として実感す

ることJ7)が重要であると捉え、エンパワメント志向の演習の実践を提唱し、当事者のエンパ

ワメントにつながる学生自身のエンパワメントを図ることを強調している。

筆者も本学科の社会福祉援助技術論や社会福祉援助技術演習の講義で、ストレングスに着目

して支援を行う重要性を解説する機会があった。事例を用いてストレングスへの着目を促す演

習を行ったが、学生たちは具体的なストレングスが何かを把握することに苦戦しているようで

あった。そこでストレングスにかかわる教育の試みとして、ストレングス パワー変容過程版

エコスキャナー8)を用いた演習を 2007年度から 2009年度まで継続して行い、学生 52名から

感想などを記したレポートを得ることができた。学生の承諾を得たうえで、これまでのストレ

ングス演習のレポートの整理・分析を行った。その結果、学生52名中 45名(約 86・5%)が演

習をつうじて事例の利用者のストレングスを「発見できたJ iある程度発見できたJ i少し発

見できた」とレポートに記載していた。また 2009年度のレポート課題にストレングスーパワー

変容過程版エコスキャナーを使用したことで視点や考え方に変化がみられたか、あればその変

化の内容を書くよう指示したところ、 15名中 11名(約 73.3%)の学生が「視点や考え方に変

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ソーシャルワークにおけるストレングス教育の意義

化があった」と回答し、利用者のストレングスに着目する視点の獲得を実感できたことがわか

った。具体的には、 「利用者の立場に立って考えられるようになったどんな利用者でもス

トレングスを持っているということが理解できた。勝手にその人のことを決めつけてはいけな

いとわかっていても、実際は結構決めつけてしまっていることがわかったJ I利用者のもつ資

源や能力などに気づくことができただけでなく、それを使ってどんなことができるかを考えら

れるようになった」などの回答が得られた。

この演習は、回数の限定があったため、 l回のみの実施となった。しかし学生の受講の様子

やレポートからはこうした演習によって学生たちがストレングス視点を持つことができたり、

その視点、から支援する重要性を理解できるという教育効果への示唆が得られた。

そこで本論文では、 「ストレングスやストレングス視点の概念やそれにかかわる歴史、モデ

ルやアフ。ローチ、学生自身が自らのストレングスを認識できるような取り組みなど、ストレン

グスへの学生の理解を促し、深める教育内容や方法」をストレングス教育と呼び、その現状を

整理してみたい。そのために、①「相談援助」系科目担当教員へのヒアリング、②ヒアリング

結果の考察、をつうじてストレングス教育内容の実際を理解し、その課題を明らかにしていき

たい。

I1I.ヒアリングからみるストレングス教育の実際

1.ヒアリングの概要

ストレングス教育の現状とその効果を明らかにするため、社会福祉士養成課程で「相談援助

の基盤と専門職J I相談援助の理論と方法J I相談援助演習J I相談援助実習指導J I相談援

助実習」の 5科目を担当している 4年制大学教員 3名を対象に、 2010年9月から 10月にかけ

て、自由回答形式のヒアリング、を行った。この 3名は、講義形式の「相談援助の基盤と専門職」

あるいは「相談援助の理論と方法」を担当しており、かっ「相談援助演習J I相談援助実習指

導J I相談援助実習」のいずれも担当している教員である。そのため講義・演習・実習への一

連の流れのなかで教育を行うことが可能で、あり、科目聞の連動もふまえたストレングス教育の

取り組みを考察するうえで有効な示唆を得られると考え選定した。

ヒアリング項目については、担当教員の所属学科の概要(定員や各学年の人数、入試制度、

カリキュラム、教員体制)や「相談援助」系科目の体制を聞き取ったうえで、ストレングス教

育の効果や課題を知るため、 「中目談援助J系の各科目における①ストレングス教育内容と学生

の反応、②「相談援助J系科目以外の科目での取り組み、③ストレングス教育の意味、④スト

レングス教育の課題、の4点についてヒアリング、を行った。ヒアリングに際しては、対象教員

に対して事前に依頼状と調査主旨文を送り、承諾を得たうえで実施した。またヒアリング内容

の本論文への掲載についても既に承諾を得ている。

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広島国際大学医療福祉学科紀要第8号 2012年 3月

2. ヒアリングの結果

ヒアリング対象の所属する学科や担当教員の体制などについては、プライバシーに考慮し、

本論文では取り上げない。本論文では、主に「相談援助」系の各科目におけるストレングス教

育内容について考察していきたい。表 1は、 「相談援助」系科目担当教員 3名の「相談援助」

系の各科目におけるストレングス教育内容と学生の反応と、 「相談援助」系科目以外の科目で

の取り組みについてのヒアリング結果をまとめたものである。なお表1の※印は、学生の反応

についてのヒアリング結果を示している。また表2には、ストレングス教育の意味とストレン

グス教育の課題のヒアリング結果をまとめている。

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「 キ目中目 談談 援援 助助 の」 基系 盤科 と目 専の 門各 職科目

おlする 相教 談育 援内 助容 のと 理学 5市生 との 方反応

j去

相談媛

助演習

談援

実習

指導

相談援助実習

で「の相取談り援組助み」

系科目以外の科目

表1 r相談援助」系科目とそれ以外の科目でのストレングス教育内容と学生の反応

教員A 教員B 教員C

-病理モデル、生活モデル、ストレングスモデル、などは、登場し -歴史とのつながりのなかでス卜レングスにかかわる内容を教えてきた歴史的経緯のなかで教えている。ストレングスについて ている。は、モデルやアプローチのなかで少しふれる。 '1コマとって工ンパワメントを教えており、そのなかでストレンゲ

ス視点の概略についてふれている。-ストレングスやエンパワメントは、ソーシャルワークにもともとあったものを整理しなおしたもの。この講義では、ソーシャルワークの見方そのものを伝えなければならない。ストレングスという言葉をあえてつかつて強調してということは特にない。あとは別に意識しては教えていない。そういう見方を当然だと思ってほしいし、スタンダードにしてほしいという思いがある。 1年生は頭が柔らかいので、視点をもっというよりも、そうなってほしい。支援過程を事例を出して繰り返し教えていく。問題発見型からいいところもみられるようになってほしい。問題を10個みつけたら、ょいところ10個みつけるように、いろんなところで言っている。これが当たり前になってほしい。※学生の反応l立、 1年生なのであまりない。

-主に支援過程のなかで教えている。特にアセスメントのな -社会福祉とソーシャルワークの違いやIFSWの定義のなかの工かでの困りごとや問題を解決する糸口をどうっかむか、ど ンパワメントというキーワードのなかで教えている。う物事を多角的にみるかという時にストレングス視点を強 -視点からモデル、モデルからアプローチという流れを重視して調する。ストレングス視点は長所をみればいいというもの いる。その流れのなかでス卜レングスを教えている。ではない。短所を長所に変えていく、発想を転換していくと -支援過程のアセスメントやケアマネジメントのなかで教えていいう点でも重要。アセスメントとも関連する。プランニングで る。は、地域の資源なども含めた資源としてのストレングスの -実習の直前にストレングス演習を行い、自分自身の長所をみ活用も含めて、それをどう活かしていくかが重要。アセスメ つけてもらう。ントでどう認識したかにもかかわってくる。インターベンショ -ストレングス視点そのもの、その視点がなぜ重視されるようにンも同様の教え方をしている。 なったか、視点の内容、過程やアプローチのなかでどう生かす

か、具体的な技法などを具体的な事例で考える。また自己肯定感につながるという実感をもってもらう。体感することで、ストレングス視点の大事さを知ってもらう。弱さをみとめることも強さであるとして認めていけるかどうかも課題である。※学生からは、「問題をみないJr解決を生み出す技法は日常的にも実習でも使えるJr違った視点を身につけるといううえでは勉強になったJr見方を変えることで問題を解決する力が生まれるJr自分自身がポジティブ‘でなければならないと思ったJr短所もすごい長所になると思った」という感想があった。

• r相談援助の理論と方法」の講義と連動させやすい科目 -事例検討のアセスメントの部分で、ストレングスに着目するよう -事例研究のときにストレングス視点をいかす。ストレングスといである。 に留意する程度で、ストレングスに特化した内容の演習は行つ うよりも事例のときにどうみることができるかを意識している。マ-その人の可能性をいかに引き出していくかに焦点を当て ていない。 イナス面と捉えられるところがその人の潜在能力を示しているとた自己実現にかかわる演習を行った。そのなかでその人 • r相談援助の基盤と専門職Jr相談援助の理論と方法」などで‘ ころでもある。多角的にみられるようになってほしいと思っていの力や能力に焦点を当てていかねばならないことを教え 教えたりしたことを演習前の解説に取り込むようにはしている。 る。た。 このことでプラス面をみるようになる。 -クラス制なので他の担当教員のクラスの学生のことはわから-自分の長所を20個書き出す内容の課題に取り組んでもら -事例のなかの「いいところJIこ着目していく。 ない。い、自分のプラス面を評価してふりかえり、分析することを ※学生たちは、事例検討の際に、基本的には利用者理解につ大切にしている。 いて前向きな結果を出してくる。利用者をわるいところ、問題点※自分の長所を自分で出せない場合は、短所を20個挙げ ばかりでみない。大事なことはちゃんと捉えている。講義科目のさせるが、かなり出る。自分のだと難しいが、他人の短所を 効果であってほしいとは思う。学生は利用者がどう思っている長所に転換していく作業であるとうまくできる。視点を変え か、何がしたいのかを第一に考える姿勢を一貫して持っていることのむずかしさを感じた。学生の自己評価が高くない。 る。自分にも他人にもプラス簡を見にくい傾向があるかもしれない。積極的に強さを見つけて戦略的にそれを引き出すことが苦手である。学生自身が成功体験をあまり持っていないからかもしれない。

-実習後は、実習に行く前と後とで、自分の何が変わった -関心のある学生は、エンパワメン卜支援や利用者の生きてきた -演習とはまた別のクフスになるので担当学生が異なる。のかを聞き、実感してもらうようにしている。 背景を考えるなどの支援計画を立てている。 -実習後はしっかりして帰ってくる。がんばったところをフィード

-学生本人が「相談援助の理論と方法Jの講義で聴いて、人の バックする。報告会では、インシデント場面を報告させるが、そういいところを伸ばしていく点(長所をみること)に関心をもっ。こ するとしっかりと考えられるようになる。のように学生本人の元々 の関心とリンクした場合は、実習計画書に反映される。

-巡回時に学生の日誌をみると、反省ばかり書いているこ -巡回時にできるにだ立けプったラスら面に着目するように伝える。支援者 -実習指導者がマンツーマンで指導してもらえる実習は、学生とが多い。反省ではなくて、できたことも書くように指導する や利用者の立場 どうかということを考えさせるように が鍛えられる場でもある。実習の場での学生のなかでの成長の場合もある。プラス面を自分で評価していく。「できたJこと する。 度合いが大きい。は、なぜ「できt::Jのかを振り返って分析する。それを継続していくためには、どうしたらよいのか、何が必要なのかを必ず聞くようにしている。他の自分の要素とどう結びついて「できた」のかを分析して具体的に考えてもらう。それが利用者のストレングスを根拠を示しながら伝えていく技術にもなる。自分の体験を分析することが、実践する際の技術に結びつけることになる。-実習体験と授業の肉容をリンクさせて考えるように意識している。

-実習後のゼミで、学生に実習体験を話してもらう時は、意 -ゼミでは前期で、学生が選んだ本を読んでレジュメを作成して -ゼミの4年生をみていると成長がよくわかる。色々 学んできたも識して授業内容とリンクさせて振り返りをさせるようにして 発表してもらった。例えば解決志向アプローチに関する本では、 のが、実習からかえってきてもう一度こだわって勉強することいる。 その人自身が考える状況、解決策を重視しているおり、それが で、それを卒論で深め、自分の中で統合していく。ゼミのなかで

ストレングスにつながる視点であることを学んだ。またストレンゲ も意欲のある学生は、ソーシャルワークそのものが何かをちゃスに関する本では、事例をとおして、強さをみる技法を身につけ んと捉えていく。ソーシャルワークそのものの理解の度合いがることができる。 変わってくる。

-卒業論文に意欲をもって取り組むことで、ソーシャルワークの視点が身につく。どうやって取り組んでいったかというプロセスが視点を身につけることのおおきなきっかけとなる。-ゼミから卒業論文まで一貫して教えていくことの重要性を感じる。教員の労力も大きい。学生と面接し、やりとりを繰り返さなければならない。しかしそのなかで、学生は知識を統合していく。-授業・演習・実習・ゼミ・卒業論文と一貫して教えていくことの重要性を実感している。

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表2 ストレングス教育の意味と課題

教員A 教員B 教員C

ス -ストレングス教育をする」とてでプ、ラ学ス生思が考プにラなスξ思考になって -ストレン夕、ス視点によって状況を多角的1:.みる」とができる。 -利用者にもつながるし、自分自身も支えていく」とLなる。

ト いく。また彼らは支援者とし る必要がある。 利用者の立場に立って状況を考えられる。状況が違ってみえて -ストレングス視点の見方をすることで実践で効果を上げること

レ そうした側面を見ょうとすると、演習などをしていると視野が くる。これは対人支援職では大事なことである。プラス面を見て ができる。それは自分自身の次の仕事への意欲や社会的評価,、/ 広がるし、色々なものへの関心が広がったり、それによって フィードバックできるということは、相手にとっても成長の機会に につながる。最後は自分自身(専門職自身)を救うことになる。

グ 選択肢が広がるのがわかる。 なるし、関係性をつくるうえでも大事である。社会福祉の場面で -ソーシャルワーカーは成果を重視する必要がある。プロセスを

ス は、マイノリティーが支媛対象となる。本来の力を発揮できてい とおして利用者の状況が変化していった成果をみる。成果を上教 ない人たちが多い。その人たちの力や潜在的な可能性をみつ げていくこと、結果を出していくことが重要である。ストレングスに育 けて引き出していくということは社会福祉の専門職として大事な 着目するだけでなく、それが実践の結果にどうつながったのかを

の ことである。 DVや虐待などは自分を否定される行為である。そ みていくことも大事である。利用者の生活にみられる成果を利用意 うした深刻な状況を生き抜いてきた人に、肯定的な言葉かけを 者だけでなく、外部(他の専門職や家族など)に伝えていく。こう味 いかにできるか、自己否定を減らす作業(対象者の成長を促す いうことができる専門職だと伝えていくことが重要である。

作業ともなる)を一緒にやっていくためには大事な視点であると考えている。

ス -事例分析では、比較的利用者の強さや長所に目を向ける」 -ストレングス視点でみたらどんな効果が上がるのかを、学生に -発想だけではタメで、効果につなげていく必要がある。

ト とができる。ある意味他人事だとできる。しかし自分のことや も現場の人にも伝えていく作業が課題である。詳細な事例を -学部レベルでは限界がある。大学院レベルの教育をしていきた

レ 友人のこととなると難しくなる。実習や実際の現場の利用者 使って、その支援過程のなかでそう活かしていくのか、その技 い。現場ベースで教育できるようなソーシャルワー力一養成の場、;/ 相手にプラス思考になれるかについては不安が残る。生身 術をどう教えていくのか、具体的なイメージをもってもらうことが ヵtほしい。グ の人聞からそうしたプラス面を探していくのは下手なのでは 課題である。ス ないかという気がしている。 -ストレングス自体がまだ整理されている最中の概念である。研教 -ストレングス視点の課題は、アセスメントの方法とも関連し 究課題として十分に整理されていないのではないか。ストレン育 てくる。話を聞きながら情報を拾ってくる能力(情報収集・認 グスを社会構成主義、エンパワメント、エコシステム、ラップのスの 識能力)の課題でもある。 トレングスモデルなど、どの文脈(研究背景)のなかで教えるか課 -自分自身にストレングス視点をもってもらえるようにしたい。 によっても、どう解説するか、どう強調するかという点は異なっ題 そのため学生に自信や成功体験をもたせることを重視してい てくる。今後その整理をすることも課題である。

る。事例検討ばかりではなく、他人のストレングスや自分のストレングスをその場で体験してもらうことも重視している。-学生が自分自身をストレングス視点でみて、成功体験を実感してもらう。そうした実感がないと、他者にそのようなアプ口ーチはできない。他人にいわれるだけで、本人が認識していないようではいけない。それでは次につながらないし、人にうまく伝えていくことができない。本人が実感することが重要である。-友人のために誕生日カードを書いたり、友人が何を好きか考えたりすることは得意。学生が普段やっている実体験と専門職としての内容を結びつけて解説し、教えていくことが重要である。それをみんなの前であえて評価していく。その能力が教員に問われている。-ストレングスを資源として使っていくときに他の情報とどう結びつけていくかをどう教えていくかが課題。コミュニケーション技術とも関連するが、情報を引き出す技術をどう教えるかも課題である。

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ソーシヤノレワークにおけるストレングス教育の意義

N. ヒアリングにみるストレングス教育内容の分析

1.ストレングス教育の取り組み

表 1から、1) ["相談援助の基盤と専門職J ["相談援助の理論と方法」、 2) ["相談援助演

習」、 3) ["相談援助実習指導」、 4) ["相談援助実習」、 5)その他の科目の 5つにわけで

ストレングス教育内容と学生の反応について整理してみたい。

1) ["相談援助の基盤と専門職J ["相談援助の理論と方法」

この 2つはソーシャルワーカーの専門職としての価値や理論、技術などの内容を含み、相互

に密接に関連しているため、まとめて整理してみたい。 2つの講義科目では、主に(1 )ソー

シヤノレワークの歴史、 (2)モデルやアフ。ローチ、 (3 )支援過程、の 3つの内容でストレン

グス教育が行われていた。まず(1)ソーシヤノレワークの歴史の内容では、病理モデルから生

活モデ、/レへのパラダイムの転換を背景に、ストレングスモデ、ルが登場してきたことが教えられ

ている。また (2)モデノレやアプローチの内容では、ストレングスモデルやケアマネジメント、

エンパワメント・アプローチに関連した内容で教えられていた。そして (3)支援過程の内容

では、ストレングス視点をもって過程展開していくことが強調されていた。具体的には、スト

レングスに着目してアセスメントすることや、短所を長所に転換させる技法など、状況を多面

的に捉えて問題解決の糸口をつかんでいく重要性が教えられていた。一方でストレングス視点

は、ソーシャルワークに従来あった見方を整理しなおしたものであるという前提から、ストレ

ングスをことさら取り上げて教育はしていないという意見もあった。

2つの講義科目でのストレングス教育に対する学生の反応には、受講する学年による違いも

みられる。例えば講義配当が 1年生である場合はまだ学生からの反応が薄いが、実習の準備等

で現場への意識が出てくる 2年生以降の学生ではストレングス教育による視点の変化やその意

義を実感できていることがわかる。

2) ["相談援助演習」

この科目では、支援事例にストレングス視点を向けるよう促したり、学生自身におきかえて

ストレングスを考える課題を用いたりして、学生が1) ["相談援助の基盤と専門職J ["相談援

助の理論と方法」の講義内容を具体的にイメージできるような取り組みが行われている。特に

1年生で1)の講義を受講した学生たちが、事例検討の際に、利用者に自然にストレングス視

点をむけられているという成果がみられるとし、う意見もあった。

しかし「相談援助演習」は、複数の担当教員で担当するため、他の教員のクラスでのストレ

ングス教育の様子や学生の反応はわからないという意見もみられた。

3) ["相談援助実習指導J

この科目では、各学生の関心に基づいて実習計画や実習での支援計画を作成するという特性

があるため、ストレングスに関心を持つ学生には適宜ストレング、ス教育の指導を行っているこ

とがわかった。また実習後の指導で、学生自身にストレングス視点を向けさせ、自分たちが実

習で獲得できたことを整理し、支援者としての自信と今後の課題を認識してもらうという取り

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広島国際大学医療福祉学科紀要 第 8号 2012年 3月

組みも行われていることがわかった。

4) ["相談援助実習」

実習中の巡回時には、学生ができなかったことだけでなく、できたことも認識できるように

指導していた。一方でそうした見方を実習先の利用者や支援者にも向けるように促しているこ

ともわかった。

5)その他の科目

咋目談援助j 系科目以外の科目では、ゼミでストレングス教育を意識した取り組みが行われ

ていた。例えば、ゼミで、学生が関心を持ったストレングスに関わる文献を読んで、発表を行うこ

とが挙げられる。またゼミで学生が各自の実習体験を振り返って自分たちができたことを取り

上げ、それがなぜできたのかを分析して自己評価を高めていけるよう取り組んでいるという回

答も得られた。["相談援助」系科目よりも少人数で行うゼミでは、学生に対してストレングス

教育を意識しながら細やかな教育指導を行うことができる。またストレングスにかかわらずソ

ーシャルワークの理解を浸透させていくためには、講義・演習・実習・ゼミ・卒業研究をつう

じて一貫して教育することが重要であるという回答もあった。

このようにヒアリングからは、教員が講義から実習にかけて徐々に理論を学び実践へと具体

化していく工夫を行っていることがわかった。また「相談援助」系科目だけでなく、ゼミや卒

業研究などの少人数の場を用いてストレングス教育を実施していることが理解できた。

2. ストレングス教育の意味と課題

次に表2から、ヒアリングの対象となった教員が考える1)ストレングス教育の意味と 2)

課題を整理してみたい。

1)ストングス教育の意味

3名の教員に共通していたのは、ストレングス教育を行うことで、学生が多角的に状況を捉

え、利用者の立場に立って考えることができるとしヴ回答であった。ソーシヤノレワークの対象

となる利用者は、深刻な状況を生き抜いてきた人が多い。そうした人々に肯定的な言葉かけを

いかにできるか、また彼らの自己否定感を軽減する作業を共にできる人材の養成は重要である

とし、う回答も得られた。そのためには、学生自身が成功体験をし、プラス思考で支援ができる

ことが必要であるとしづ意見もあった。この回答は、先に述べたエンパワメント教育の先行研

究からも裏付けることができる。

一方で、、ストレングス視点をもつことは、支援の選択肢を増やすなど実践に効果を挙げるこ

とができ、それがソーシャルワーカーとなった際の自信や仕事への意欲、社会的評価につなが

るという回答も得られた。

このようなヒアリング結果から、社会福祉士養成課程の教員が学生たちがストレングス視点

や利用者のストレングスを引き出す技法を身につける意義を実感していることが明らかとなっ

た。

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ソーシャルワークにおけるストレングス教育の意義

2)ストレングス教育の課題

ストレングス自体は発想だけが強調されることが多く、その具体的な支援方法が研究課題と

して十分に整理されていないため、教育内容や方法に課題が多く残されているという回答が得

られた。また学生自身にストレングス視点を向けてもらう必要性を痛感しており、教員がし、か

に学生のストレングスに着目しそれを引き出していけるかということに日々課題を感じている

という回答もあった。このようにストレングス教育には、学生のストレングスを引き出す教員

側の技量も求められることと、ストレングス概念の整理や支援方法についての研究もストレン

グス教育に影響を与えることが課題として挙げられている。

また教員の所属学科の科目担当体制などにもよるが、同一教員が「相談援助の基盤と専門職」

「相談援助の理論と方法J ["相談援助演習」を担当している場合は、ストレングス教育も理論

と事例検討などの内容を連動させて学生にイメージさせやすい講義を行うことができたり、教

員自身がストレングスに研究関心がある場合は意識的に取り入れるようにしている場合もあっ

た。ただし「相談援助演習J ["相談援助実習J ["相談援助実習指導」では、複数の教員で担当

することが多く、担当教員聞の共通認識がまだ十分にできていない場合もある。その際には、

科目聞の連動をさせることが難しくなるという現状も理解できた。特に「相談援助実習指導」

「宇目談援助実習」では、実習先や学生の関心によって担当教員や巡回教員も異なるため、他科

目との連動が困難になることがわかった。

先行研究とヒアリング結果をまとめると、ストレングス教育研究には、以下のような教育上

の課題と研究上の課題がある。

1)教育上の課題

(1)ストレングスに着目し引き出していく支援過程や技術・技法の教育方法の構築

(2 )学生の自信や成功体験の獲得につながる教育方法の構築

(3) ["相談援助」系科目聞の教育内容を連動させる工夫の模索

2)研究上の課題

(1)様々な背景をもっストレングス概念聞の関係性の整理

(2) ストレングスに着目し引き出してし、く支援過程やそこで発揮される技術や技法の提示

(3 )ストレングスに着目した実践効果の提示

1)教育上の課題には、まず(1)ストレングスに着目した支援展開方法を構築することが

挙げられる。それと同時に、時に様々な劣等感や無気力状態に陥る学生たちに (2)自信をも

っ意義とそれを引き出すことの重要性を体感できる教育方法を構築することが重要である。そ

してこうした教育は、理論から実践への一連の流れを教える (3) ["相談援助」系科目聞を連

動させる工夫を模索することで、効果を上げることができると考えられる。また 2)研究上の

課題の(1)概念整理や (2)支援過程での技術や技法の提示、研究で整理された (3)支援

展開の効果を実践で検証していくことは、教育内容とも重複する課題であるため、早急な達成

が求められる。なかでも実践で得られたが旦九単舟け l子のように実感してもらい、ストレング

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スに着目した支援の意義を理解してもらうかは、教育固有の重要な課題といえよう。

V.おわりに

このように 3名の大学教員へのヒアリング調査からは、ストレングス教育内容の実際やスト

レングス教育を行ううえでの教員のねらいや思いを垣間見ることができた。このヒアリング結

果の分析によるストレング、ス教育の現状と課題については、日本社会福祉学会第58回全国大会

で報告を行った。報告会場にいた社会福祉士養成校教員からは、質疑応答などをつうじて本研

究の意義への賛同を得ることができた。具体的には、学生が自分自身にストレングヌ視点を向

けることで自信を持つ方法や、そのことが実際の支援に有意義となることへの関心が強いこと

がうかがえた。今回のヒアリング調査は、 3名のみの実施となったが、今後も継続した調査を

続け、ストレングス教育の現状と課題を明らかにし、ストレングス教育の方法を模索していき

たい。

<脚注>

1)本論文は、文部科学省科学研究費補助金若手研究 (B) ["ソーシャルワーク教育におけるス

トレングスーパワー変容過程の展開ツールの活用J (課題番号:21730479)の補助金を受

けた研究成果の一部を示したものである。

2) Saleebey, D. ed., The Strengths Perspecti ve in Social Work Practice the 3rd edi tion,

Allyn and Bacon, 2002,p.108

3)狭間香代子『社会福祉の援助観 ストレングス視点/社会構成主義/エンパワメント』筒

井書房、 2001年、 p.9

4)第26回日本ソーシヤルワーク学会シンポジウム 1["ソーシヤノレワーク・スキルの伝承J(久

保美紀、 2009年 7月4日) Wソーシヤルワーク学会誌』第 20号、日本ソーシャルワーク

学会、 2010年、 p.43

5)江口敏一・一広伸子・山本佳世子・通山久仁子「専門性を高めるソーシャルワーカー養成

教育の課題社会福祉援助技術現場実習をとおして一J W西南女学院大学紀要~ Vol. 11、

西南女学院大学、 2007年、 pp.69-70,77

6)替藤順子「エンパワーメント実践と教育方法の課題ーエンパワーメント実践の特質をふま

えて一J Wソーシャルワーク研究~ Vol. 23 No. 2、1997年、 p.37

7)保正友子 (2002) ["学生のエンパワーメントを促す社会福祉援助技術演習の検討J Wソー

シャルワーク研究~ Vol. 28 No. 3 相川書房、 p.50

8)京都府立大学大学院博士論文研究「ソーシャルワーク実践におけるストレングスーパワー

変容過程の構築」では、ストレングスに着目した支援過程展開として、利用者が培ってき

たストレングスを利用者自身が他者や周りに影響を与え、行動を起こしていくパワーに変

容させるストレングスーパワー変容過程を提示した。この研究のなかで試作したのが、利

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ソーシャルワークにおけるストレングス教育の意義

用者のストレングス状況とその変容を捉えるツールとしてのストレングスーパワー変容

過程版エコスキャナーである。

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