リハビリテーション栄養における多職種連携の重要性―訪問リハ … ·...

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台 9-7-1 訪問・通所サービス(1) リハビリテーション栄養における多職種連携の重要性―訪問リハビリテーション利用者の1例― 1 角田病院 リハビリテーション課,2 角田病院 栄養課 さいとう ゆうか ○斉藤 由華(理学療法士) 1 ,小澤 尚子 2 ,福田 貴洸 1 【はじめに】リハビリテーション(以下、リハ)栄養において、在宅生活では栄養支援が体制化し難い点が課 題である。今回、在宅生活を送る利用者に対して管理栄養士(以下、Rd)等との多職種連携を体制化し、支 援したことでMNA ‐ SF及びFIMが向上した症例を経験した為、その過程と考察を報告する。 【症例紹介】80 歳代女性、要介護4。小規模多機能居宅介護施設へ5日/週宿泊、2日/週自宅で在宅生活を送っていた。某年4月 下旬に肺炎・尿路感染症を呈し当院へ入院、5月中旬に退院し在宅生活を再開、同月下旬に自宅にて訪問リハ を1回/週(20分)開始。倫理的配慮として書面と口頭にて報告の趣旨を説明し同意を得た。 【経過】訪問リハ 開始時、MNA ‐ SF 5点と低栄養を示し、唾液によるムセを認めた。日常生活動作はFIM 57点、うち歩行2点 と最大介助が必要だった。そこでケアマネジャー(以下、CM)と相談し、6月中旬より訪問リハは週2回となり、 当院のRdの訪問栄養指導が開始、7月下旬に言語聴覚士(以下、ST)の嚥下機能評価が追加された。両者共に 同病院職員であり、随時情報共有が行えた。栄養指導は、食事形態・栄養補助食品・姿勢等を検討・共有、嚥 下機能は、嚥下反射遅延によりトロミが必要視され、施設・自宅での使用法を検討した。検討内容を踏まえ、 Rd・ST・訪問リハで施設や自宅を訪問し、家族・CM・施設職員へ指導を行った。10月上旬時点で、MNA ‐ SF 12点、FIM 69点、歩行も3点と向上した。運動量も日常で確保され、トロミの使用も開始し状態が維持で きた為、訪問リハは週1回に変更した。 【考察】本例より、在宅生活を送る上で栄養状態とリハは重要と言える。 訪問リハ開始時のアセスメントから支援に必要な専門職を提案し、各々の専門性を多職種で協働出来たことが 栄養状態及びADLの向上に繋がったと考える。今後はリハ職が適切なアセスメントの上、多職種を巻き込む 提案を積極的に行うことが必要と考える。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-7-1 訪問・通所サービス(1)リハビリテーション栄養における多職種連携の重要性―訪問リハビリテーション利用者の1例―

1 角田病院 リハビリテーション課,2 角田病院 栄養課

さいとう ゆうか

○斉藤 由華(理学療法士) 1,小澤 尚子 2,福田 貴洸 1

【はじめに】リハビリテーション(以下、リハ)栄養において、在宅生活では栄養支援が体制化し難い点が課題である。今回、在宅生活を送る利用者に対して管理栄養士(以下、Rd)等との多職種連携を体制化し、支援したことでMNA ‐ SF及びFIMが向上した症例を経験した為、その過程と考察を報告する。 【症例紹介】80歳代女性、要介護4。小規模多機能居宅介護施設へ5日/週宿泊、2日/週自宅で在宅生活を送っていた。某年4月下旬に肺炎・尿路感染症を呈し当院へ入院、5月中旬に退院し在宅生活を再開、同月下旬に自宅にて訪問リハを1回/週(20分)開始。倫理的配慮として書面と口頭にて報告の趣旨を説明し同意を得た。 【経過】訪問リハ開始時、MNA ‐ SF 5点と低栄養を示し、唾液によるムセを認めた。日常生活動作はFIM 57点、うち歩行2点と最大介助が必要だった。そこでケアマネジャー(以下、CM)と相談し、6月中旬より訪問リハは週2回となり、当院のRdの訪問栄養指導が開始、7月下旬に言語聴覚士(以下、ST)の嚥下機能評価が追加された。両者共に同病院職員であり、随時情報共有が行えた。栄養指導は、食事形態・栄養補助食品・姿勢等を検討・共有、嚥下機能は、嚥下反射遅延によりトロミが必要視され、施設・自宅での使用法を検討した。検討内容を踏まえ、Rd・ST・訪問リハで施設や自宅を訪問し、家族・CM・施設職員へ指導を行った。10月上旬時点で、MNA ‐SF 12点、FIM 69点、歩行も3点と向上した。運動量も日常で確保され、トロミの使用も開始し状態が維持できた為、訪問リハは週1回に変更した。 【考察】本例より、在宅生活を送る上で栄養状態とリハは重要と言える。訪問リハ開始時のアセスメントから支援に必要な専門職を提案し、各々の専門性を多職種で協働出来たことが栄養状態及びADLの向上に繋がったと考える。今後はリハ職が適切なアセスメントの上、多職種を巻き込む提案を積極的に行うことが必要と考える。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-7-2 訪問・通所サービス(1)多職種の介入により在宅生活を快適サポート~当社独自のサポート付き住宅で一人でも生活できるように~

富家リハビリセンター苗間

もちづき けい

○望月 圭(理学療法士),飯島 晴美

【目的】病気や障がいにより在宅生活が困難となった際の生活の場の選択肢として、介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどの介護保険サービスで利用できる公的な施設のほか、集合住宅で個のニーズに合わせて医療・介護サービスが受けられるサービス付き高齢者住宅などがある。その中で当社は、「一人でのびのびと生活したい」

「生活を縛られたくない」などの意向のほか、経済的な事情を抱えた方の尊厳を尊重したサポート付き住宅事業(以下;サポ住)を展開している。中枢神経疾患や認知症などそれぞれ障がいを抱える方が一人でも安全に安心して生活を送ることができるよう、当社・当グループで行っている支援内容や方法を報告する。

【方法】当グループで展開している在宅系介護サービスとサポート付き住宅事業が提供するサービスを、実際に利用されている方を対象に認知機能、ADL・IADLを数値化し、利用者ごとに支援内容や方法を挙げて在宅生活における支援の重要性を検証する。

【結果】さまざまな身体的障がい、経済的な問題を抱えた利用者が一人でも安全に、安心して在宅生活を営む上で、ADLでは「セルフケア」「移動」「コミュニケーション」「社会的認知」、IADLでは「買い物」「食事の準備」「電話を使用する能力(緊急コールシステム)」「服薬管理」が重要性を占めた。また、利用者それぞれの主観としても上記項目は生活する上で必要性を感じているとの意見が多く挙がった。

【まとめ】高齢者が一人で生活を送る上で、健康状態の管理や運動量の確保、精神的なゆとりのほか家屋環境整備等は欠かすことが出来ず、それらを多職種が連携してサポートすることでより利用者のニーズに寄り添った支援が可能となっている。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-7-3 訪問・通所サービス(1)障害特性に応じた個別支援の必要性について

特別養護老人ホーム 淀川暖気の苑

まつだ ゆうすけ

○松田 祐典(社会福祉士),高辻 龍一,森井 隆人

[はじめに]作業所を利用されるメンバー様においても、程度に関わらず様々な障がいをもたれており、それぞれの特性に応じた支援が必要である。見た目ではわからない、利用者様の抱える困難な問題や、配慮すべき課題についてどのように介入し、支援を行ったか発表する。

[方法]○名前:A様 年齢:46歳  障がい区分認定:3 療育手帳:B1 身体障がい:4級聴覚が過敏な面があり、周囲の声や物音で気分が悪くなると集中して作業に取り組めず、離れた場所に逃げ込んでソファで休むことも多くあった。声が大きい人には興奮して「うるさい!」と怒鳴るなどトラブルも頻繁にみられた。午前中の2時間の作業をストレスなく過ごして頂く為に、まず個室を準備し使用して頂いた。個室利用にあたりルールやスケジュールを構造化し、視覚的に伝え、どうやったら落ち着いて過ごせるかを話し合った。そして、自分の気持ちを落ち着いて伝えられる様になるために、担当のスタッフを日替わりで配置し、スタッフと話せる時間を設定することで自分の気持ちを表出できるよう支援を行った。

[結果]担当スタッフを配置し、1日2回は話す時間を設ける事で、その日の困った事や不安な気持ちを些細な事でも話せるようになった。また個室の利用により外部の刺激を遮断したことで毎日休憩時間以外の2時間の作業時間は集中して取り組めるようになり、途中で休むこともなくなった。また、個別化、構造化をすることで利用者様にとって理解がしやすくなり、安心してスタッフとも関われるようになった。

[考察]障がい特性を理解し、その方に合った対応を都度行うためにも、何に困っていて何が苦しいのかを知る必要がある。自己発信や身の回りのことができる為、見た目に分かりづらい部分もあるが、つらい思いをされている方はたくさんいることを理解し、それぞれに適した支援の提供を目指したい。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-7-4 訪問・通所サービス(1)外来維持期リハビリテーションから通所リハビリテーションへの移行~当院での取組み~

東浦平成病院

ほんだ やすのり

○本田 泰規(理学療法士),長尾 千恵,広瀬 千里,田中 純一,山下 惣平,藤井 貴子

[はじめに]H28年診療報酬改定にて、「医療と介護の役割を勘案し、要介護被保険者に対する維持期リハビリテーションについて評価の適正化を行いつつ、介護保険への移行を図る」とし、「 標準的算定日数を超えており、状態の改善が期待できると医学的に判断されない場合のリハビリテーションについて介護保険へ移行する 」と方針が示された。しかし、原則として平成 30 年3月までに移行するようにと猶予期間が与えられている為、移行に向けて動き出している施設は少ないのが現状である。そこで当院では、移行時期間近でのいわゆる「かけこみ移行」やケアマネジャーなど関係者の知識・意識不足による混乱を避ける為、受け皿となる通所リハビリテーション体制のシステム構築を行い、ケアマネジャーなど関係者との連携を図ることで早期の移行を目指した。

[方法]H28年5月より以下のように段階的に移行を進めた。1.通所リハビリテーション体制のシステム構築2.院内・院外関係者への説明3.移行対象者への説明4.移行開始

[結果]5名に説明を行い、その結果を以下に示す。・完全移行終了1名・通所リハビリテーション体験後、拒否により移行中止1名・個別説明の段階で本人または家族の拒否により移行中止3名[考察]院内での検討会のみでなく、行政も含めた院外での説明会を重ねた事で、通所リハビリテーション体制のシステムが構築できた。しかし、移行できなかった理由として、①負担額の増大、②移行猶予期間、③生活リズムの変化、④環境の変化が挙げられた。③④では特に、通所リハビリテーション利用における1時間の縛りにより、自由度の制限や環境自体にネガティブな印象が関係している結果となった。これらの解決には、スタッフ数増加とともに質の担保が重要ではあるが、継続してシステム化・環境整備を行い完全移行に向けた取組みを継続していく。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-8-1 訪問・通所サービス(2)いきいき百歳体操が心身機能に与える影響

東浦平成病院

はた かずき

○畑 嘉寿来(理学療法士),本田 泰規,上田 悠司,大池 紗侑里,泊 謙一,竹田 雄世,藤崎 舞,上原 拓也,松野 佑城,藤井 貴子

[はじめに]いきいき百歳体操(以下、百歳体操)は、高齢者ができる限り健康でいきいきとした生活を送れるように支援することを目指した体操である。地域在住高齢者を対象とした先行研究において、百歳体操を週2回、3 ヶ月間行うことで心身機能の向上が図れると報告されている。今回、百歳体操が通所リハビリテーション利用者の心身機能に与える効果について検証する。

[方法]対象は通所リハビリテーション利用者75名(男性24名、女性51名、平均年齢81.07±8.86歳)、通所時に毎回百歳体操を実施した。実施期間は6週間、実施前後に運動機能評価としてShort Physical Performance Battery(以下、SPPB)、うつ尺度としてGeriatric Depression Scale 15(以下、GDS-15)を測定した。対象者を介護度別、体操回数別(1-8回、9-16回、17-24回、25回以上)に分け、対応のあるt検定を用いて統計学的処理を行った。有意水準は5%未満とした。

[結果]平均実施回数は週1回の対象者が6.36回、週2回の対象者が11.14回であった。介護度別では要支援2、体操回数別では1-8回の対象者にSPPB総得点で有意な向上を認めた。またSPPBの5回立ち座り(以下、5CS)は、全対象者に時間の短縮がみられた。GDS-15では全対象者において有意な変化は認めなかった。

[考察]本研究は短期間ではあったが、5CSの点数及び時間が改善傾向となった。百歳体操には立ち座り運動があり、椅子からの立ち上がり10回2セットを8カウントでゆっくりと行う特徴がある。このことから運動特異性により、5CSの結果が改善傾向であったものと考えられる。以上より、先行研究と同様に週1回から2回程度の百歳体操は立ち上がり能力をはじめ、身体機能に効果をもたらせると考えられる。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-8-2 訪問・通所サービス(2)乳幼児グループ「トマト」でのサイン言語を使用した取り組み

緑成会整育園

たいら めぐみ

○平 恵(保育士),竹村 美果,山田 直人

[はじめに]整育園通所センター乳幼児グループ「トマト」は、発達に遅れがある未就学のお子さんを遊びの中から発達を促すことを目的とした母子通園施設である。当施設では、発達初期の乳幼児にコミュニケーションを図る手段として、有効とされているサイン言語を活動の中に多く取り入れている。今回、サイン言語を使用することでコミュニケーションに変化のあった児および家庭での使用状況を調査し、検討することを目的とする。

[方法]対象は、歩行可能な2 ~ 5歳の児9名(言語レベル:前言語期~ 2語文)。活動の中において今まで使用してきたサイン言語(マカトン、手話など)をプリントに配布し、親と職員間で共有した。職員は、活動の流れの中で毎回同じサインを使用し、親には家庭でも意識して使用するよう伝達した。活動の様子を経過を追ってビデオ撮影し、親には家庭での使用状況のアンケートを取った。

[結果]ビデオでの観察により、サインを使用することで言葉の理解が広がった児がいた。また、自分の要求や気持ちが伝えられやすくなり泣きや自傷行為が減ったなどの変化が見られる児もいた。アンケート結果からは、9名中4名が家庭でもサインを使用しており、使用していないと回答した5名の内3名は言葉の理解ができているため、サイン使用の必要はないと感じていた。

[考察]アンケート結果から、家庭でのサイン言語の使用状況に差があることが分かった。児の発達段階等により、親の言葉へのアプローチに対する認識に違いがあることが要因と考えられる。今後も、発達段階が様々な児に対してより細かいアプローチが必要とされる。また、親と職員との共通認識をいっそう深めていくことが母子通園施設である「トマト」の課題の一つであると考えている。さらに、親と児がよりよいコミュニケーションが取れるように橋渡しをしていきたい。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-8-3 訪問・通所サービス(2)新たなコミュニケーションツールによる行動変化や心理変化を検証する

介護老人福祉施設 ヴィラ南本宿

おさだ ともこ

○長田 知子(理学療法士)

[はじめに]現在、日本は少子高齢化社会であり今後もこの状況はますます進むと言われている。現状では生産年齢人口の減少が続く中、介護現場においても人手不足や過重な労働が問題となっている。そこで2015年より問題解決の為政府が「ロボット新戦略」を導入している。当施設ではロボットによる人手不足や重労働の解消に加え、体操やコミュニケーションツールとしてリハビリテーションの役割を果たす事が出来ないかを検討する。

[方法]当施設デイサービス利用者の60名を対象に,音声によるコミュニケーション可能なロボット3台、音声返答が出来ない非コミュニケーションロボット1台を利用者のテーブルに置き、自由に手に取れるようにし行動の変化を検証した。

[結果]利用者は全てのロボットに興味を示すが経過と共にコミュニケーションを取れるロボットにより興味を示した.コミュニケーションを取れるロボットと接する事で本人以外の複数人で会話が成されるなど相乗効果も見られた。また、スタッフが行っていた集団体操もロボット体操の体操機能を使用し実施できた。これにより、利用者は新しい刺激に楽しみを感じ、スタッフは仕事量の軽減に繋がり業務の質の向上に繋がった。

[考察]今回、ロボットの導入により利用者の様々な反応が見られたがコミュニケーションが増加した要因として今までにない刺激が利用者の活動性向上に繋がったと考える。その反面,ロボットに慣れる事で導入前の状態に戻る利用者もいた。しかし、ロボットの更なる有効活用を見出すことで使用者のリハビリは勿論、スタッフの業務負担を軽減できサービスの質の向上が見込めるのではないかと考える。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-8-4 訪問・通所サービス(2)多様化する通所事業所と求められるニーズ

清水病院 通所介護

よしだ てつま

○吉田 哲馬(理学療法士)

【はじめに】当通所介護事業所は廃校を利用し、認知症予防とリハビリに特化した内容で平成28年に開設した。高齢化の著しい当地域における通所事業所の傾向と反応を分析したのでここに報告する。

【目的】当地域における通所事業所の傾向と分析から当事業所のあり方を考える。【方法】当地域にある通所事業所を調査した結果から事業所機能を分析した。また、介護支援専門員へのアンケートにより当事業所への反応を調査した。

【結果】アンケート結果よりサービス内容に対する肯定的な意見が多く聞かれた。【まとめ】今後も地域におけるニーズ把握や事業所の傾向を知ることで、地域において当事業所が担える役割の明確化を図っていきたい。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-9-1 訪問リハ(1)施行時特例市における訪問リハビリの特定事業所集中減算の問題

1 美原記念病院 訪問看護ステーショングラーチア リハビリテーション部門,2 居宅介護支援事業所みはら,3 ケアプランセンターみはら,4 美原記念病院 リハビリテーション科,5 美原記念病院 神経内科

いしもり たくや

○石森 卓矢(作業療法士) 1,小幡 香織 2,五十嵐 美幸 3,風晴 俊之 4,美原 盤 5

【はじめに】在宅療養が推進されている現在、地域の訪問リハビリへのニーズは極めて大きい。今回、当地域における訪問リハビリが担う役割を明らかにし、施行時特例市である当地域の特定事業所集中減算(集中減算)のあり方に関する問題を提起したい。

【方法】平成28年8月時点、当地域の訪問リハビリの資源について、事業所数、スタッフ数、利用者数を調査し、さらに当市における介護保険サービス受給者数から訪問リハビリ利用率を算出した。次に、当事業所における依頼元について調査した。

【結果】当地域における訪問リハビリを提供する事業所数は、訪問看護が6箇所、病院・老健が4箇所で、スタッフ数は計31名であった。利用者数は329名で、サービス受給者は5637名であり、訪問リハビリ利用率は6%であった。当事業所のスタッフ数は11名で、利用者数は175名、53%を当事業所がフォローしていた。依頼元は75事業所あり、関連居宅介護支援事業所から35名(20%)で、外部の居宅介護支援事業所からは140名(80%)依頼されていた。なお、関連居宅介護支援事業所は集中減算を受けている。

【考察】当市の訪問リハビリ利用率は6%と多くなく、当事業所は地域内の訪問リハビリの半数以上のシェア率を有しており、多くの事業所から依頼を受けている。先行研究において、訪問リハビリは、ADL、IADL、生活範囲の向上に寄与し、在宅での自立支援を推進することができると報告した。当事業所の関連居宅介護支援事業所は、必要な利用者に適切なサービスを提供すべく、集中減算を受けてでも、訪問リハビリを利用しているが、外部の居宅介護支援事業所からは、訪問リハビリの依頼を阻む可能性も考えられ、訪問リハビリの利用が制限されかねない。このことは、在宅生活者の自立支援を阻害し、介護度増加にも繋がる可能性がある。よって、訪問リハビリに関して集中減算は除外されるべきである。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-9-2 訪問リハ(1)意識消失の可能性がある利用者への入浴獲得へ向けたアプローチ

聖ヶ塔病院 リハビリテーション科

よしむら ただし

○吉村 公志(理学療法士),西崎 久美

【はじめに】今回、意識消失のリスクがある利用者の入浴動作について、訪問リハで動作方法の工夫や家族指導を行った結果、シャワー浴が獲得できたため、以下に報告する。

【症例紹介】70歳代男性。びまん性大細胞型リンパ腫の既往。平成26年6月にADL低下、当院へ入院し、心房細動の診断。平成27年1月に自宅へ退院。自宅での入浴希望あるが、座位保持30分程度で意識消失があり、起立直後にめまいや動悸の訴えがあるため、入浴は通所リハを利用。自宅で起立動作を最小限にしたシャワー浴を獲得する目的で訪問リハを介入した。

【経過・結果】入浴訓練1週目は移動と対応方法を検討。いざり動作で浴室まで移動。意識消失時に臥位にできるよう洗体位置の変更と浴槽マットを導入。2週目は妻も含めた動作の確認を実施。更衣を座位で臀部挙上にて行う方法に変更。妻の介助にて臀部挙上訓練をリハ以外でも行う。3週目は実際にシャワー浴を実施。妻の不安が強く、洗体、更衣動作は粗雑であった。動悸などの前兆がある場合は落ち着いて臥位になるよう指導。身体が湿り、着衣に時間を要したため、衣服の種類や着衣方法を検討。入浴のアプローチを継続的に行うことで、不安は軽減し、妻の介助下でのシャワー浴が獲得できた。

【考察】入浴は浴槽の出入り時に起立性低血圧を起こすリスクがある。また、様々なADLの複合動作であり、負荷が大きい動作である。一方、意識消失リスクへの対応方法には頭部を下げる、急な起立を回避する、臥位で下肢を挙上することが有効とされている。本症例は意識消失のリスクが高いため、体位変換の少ない、いざり動作でのシャワー浴を目標に設定した。それに向けて臥位にできる環境設定や体位変換の少ない動作・介助方法の指導、妻の不安に対しての指導、入浴動作の反復訓練の実施によりシャワー浴が獲得でき、QOLの向上に繋がったと考える。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-9-3 訪問リハ(1)施設での洗濯動作を獲得するにあたり、多職種連携の重要性を学んだ一例

福島寿光会病院 リハビリテーション科

むとう ゆうき

○武藤 祐樹(作業療法士),木田 雅彦

【目的】経済的理由から受けていたランドリーサービスを中止したい旨の希望のある施設利用者に多職種協同で洗濯動作の獲得へ向けたアプローチを行った。しかし、訪問リハビリの時間的制約から、一事業所だけでは洗濯から乾燥そして取り込みまでの一連での動作獲得の練習ができなかったが、他事業所との協同により可能となった一例を経験したので報告する。

【症例】70歳台前半女性、末梢神経障害による左下腿弛緩性麻痺、要介護度2、生活保護受給者、HDS-R24点。起居動作、車いす移乗、車いす操作は施設内で自立していた。本症例は、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がそれぞれ介入しているため、一職種週1日40分ずつの関与であった。

【方法】洗濯に関する一連の動作を分割し、リハビリ時間内に収める努力をしたが時間が超過するため洗濯後の衣類の回収が行い切れなかった。そこで、ケアマネジャーと訪問介護事業所に相談し、リハビリの時間後に洗濯物干しを手伝う介護サービスが追加された。洗濯訓練の訪問リハビリと介護サービスはそれぞれ週1回40分と25分であった。

【結果】他事業所と連携を取ることで、リハビリ時間以外に練習する機会が得られ、アプローチ開始後3カ月半で、洗濯の一連の動作を習得し、独力で洗濯ができるようになった。

【考察】今回、洗濯動作の自立を目指したリハビリを希望する症例を初めて経験した。住宅型有料老人ホームの高齢者は、単身生活で家族による生活動作の協力が得られにくいことが多く、経済的に困窮している場合もある。今後このような希望は増加することが予想される。他方、介護保険制度での訪問リハビリにも制限があり、今後さらに厳しくなる可能性もある。このような状況の中で、生活動作の獲得に多職種や他事業所との協力が益々不可欠となると考える。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-9-4 訪問リハ(1)住宅型有料老人ホームの訪問リハビリにおける園芸活動の取り組み

福島寿光会病院 リハビリテーション科

はやし みほこ

○林 美保子(理学療法士),木田 雅彦

【はじめに】住宅型有料老人ホームに入居している方は今まで住み慣れた環境と違う環境で生活しなければならない。訪問リハビリの利用者が趣味で行っていた園芸活動を再度行うことで、生活の中に継続的な活動が取り入れられることを目的で始めた。住宅型有料老人ホームの訪問リハビリにおける園芸活動の取り組みと今後の課題について報告する。

【対象】当院付属の住宅型有料老人ホームに入居して訪問リハビリを利用している4名(男性3名、女性1名、平均82歳)である。療養原因は、慢性腎不全による維持透析が2名、脳梗塞後遺症が1名、レヴィ―小体型認知症が1名である。FIMは21点から118点と幅がある。

【活動内容】訪問リハビリは1回40分で月7 ~ 9回行った。平成28年10月からは、その中の2 ~ 3回を園芸リハビリに充当した。活動場所は施設の屋上であり、プランターで栽培できる季節の野菜や花を育てた。栽培作業で必要な土づくり、間引き、草むしり、手入れ、水やりなどを、個々のFIMに応じて行うことで自発的な活動を促した。

【結果】園芸活動は、訪問リハビリの時間的制限から継続的な活動量の増加には至らなかった。しかし、機能訓練では得られない充実した表情や積極性がみられた。また、連続的な作業を集中して行い、活動性に持続が認められた。対象者は以前に栽培の経験があったため、「こんな所で土いじりができるとは思わなかった」「生きている感じがする」との感慨が聞かれた。

【考察】園芸活動は、以前の楽しい経験を思い出させる方法であると考えられる。新しい場所で新しい生活を作り上げるために、以前の楽しい趣味活動を再開させることが、生きがいを見いだすための重要な支援であると考えられる。今後は、訪問リハビリ以外にも好きな時に園芸活動が行えるような安全性の配慮と継続的な活動が行える環境整備が課題と考える。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-9-5 訪問リハ(1)在宅療養者のリスク管理にかかる一考察~ EtCO2測定を含めた呼吸評価表を作成して~

1 大久野病院 訪問看護ステーション,2 大久野病院

たかおか ようすけ

○高岡 洋介(理学療法士) 1,進藤 晃 2,進藤 幸雄 1,柚木 祐子 1,渡辺 満雄 1

【はじめに】 近年在院日数の短縮により入院療養する様なケースが自宅退院する事で、より質の高いリスク管理や呼吸アセスメントが求められている。しかし在宅では血液ガス分析を含む呼吸評価・リスク管理が十分とは言えない。そこで当事業所では呼気終末炭酸ガス濃度(以下EtCO2)測定の出来るカプノメーターを導入し、評価表作成を含めてリスク管理の取り組みを行ったため、ここに報告する。

【対象・方法】 対象は当事業所の利用者で、Ⅱ型呼吸不全や拘束性換気障害を含む全12名。平均年齢68.4歳(±7.2歳)。評価は一般的な身体機能評価・呼吸機能評価に加え、カプノメーターを使用しEtCO2を測定した。また併せて在宅酸素療法(以下HOT)の吸入アダプタや酸素流量も調査し、その結果を反映させて呼吸評価表を作成した。

【結果】 複数の症例において ①流量6L以上でHOT ②一回換気量350mml以下 ③オキシマイザーやベンチュリーマスク使用 ④努力肺活量が低下 などの条件に該当するケースに、EtCO2が45㎜ Hg以上の高炭酸ガス血症とCO2ナルコーシス症状を認めたため、Dr報告など対応を行った。その後、呼吸評価表作成において一連の呼吸評価に①~④の項目を追加した評価表を作成し、事業所独自の評価表として使用を開始した。

【考察】 呼吸不全が進行したケースでは呼吸状態を含むリスク管理は非常に重要な要素である。特にEtCO2測定を合わせた呼吸評価は高炭酸ガス血症や全身状態の把握に不可欠と思われる。またEtCO2は一回換気量・酸素吸入アダプタ・酸素流量など様々な要因に左右され、それらも合わせた包括的な評価が必要である。今回、事業所独自の評価表を作成したことで、どのスタッフでも一様に高炭酸ガス血症の要素をチェックできる包括的な呼吸評価として標準化し、運用している。今後は地域包括ケアシステムの推進などにより増加していく在宅療養者に対して、事業所として更なる質の向上が必要だと考える。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-9-6 訪問リハ(1)

「また歩きたい!!」 ~歩行車導入の試みがきっかけとなって~

呉記念病院 訪問リハビリ

おき ゆうすけ

○沖 祐輔(理学療法士)

【はじめに】脊髄炎により車椅子生活となった症例に対し、身体状況にあった歩行車を導入することで諦めきれなかった歩行を訪問リハ中で実現することが出来た事例を報告する。

【症例紹介】70歳代女性、要介護1。Th11以下の脊髄炎を発症し中等度の下肢対麻痺と感覚障害が残存し歩行困難と宣告され車椅子生活となる。訪問リハはスライド移乗時に殿部離床が不十分で仙骨への縟瘡の要因となっていた為、移乗動作改善を目的に実施。

【経過】移乗時に下肢への荷重が少なく殿部離床が不十分であった為、歩行器で立位訓練を開始。当初は両上肢依存による立位保持であったが徐々に両下肢の支持性向上し、両上肢の支持と下肢の誘導介助でステップ動作が可能となる。訓練を継続していく中で本症例の諦めきれなかった「また歩きたい」希望が湧き、歩行の検討を開始した。しかし常に両上肢の支持が必要で自ら歩行補助具を操作する余裕なく、下肢の振り出しや支え介助が必要で介助量も多く歩行は難渋した。福祉用具業者に相談し上記の問題点を補えることが出来る歩行車の提案を受け試行することとなった。その歩行車では両上肢で支えたまま自ら歩行車を操作することができ歩行練習を開始。下肢の振り出し・接地の介助の下15m程歩行が可能となった。

【結果】現状では日常生活で歩行することは困難だが訪問リハ中での歩行機会を得て、本症例の「また歩きたい」希望を叶えることができ、訪問リハが楽しみとなり生活意欲の向上に繋がっている。また随伴効果として移乗動作がスライド移乗からステップ移乗で行えるようになった。維持期では加齢による衰えや生活環境等によっては身体機能やADLの維持・改善が難しいことがある。現状を維持・打破するためにも福祉用具の活用が重要な要素の一つであると改めて再認識することが出来た。今後も利用者のニーズに合わせたADL・QOLの維持・改善に繋がるサービス提供や他職種連携に努めていきたい。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-10-1 訪問リハ(2)

「買い物に行きたい!」~ MTDLPを活用し、屋外活動を獲得した症例~

京都南西病院 診療部 リハビリテーション科

おおやぎ しゅんご

○大八木 駿吾(理学療法士),松本 一央,杠 美里

【はじめに】訪問リハビリの利用者に対し、生活行為向上マネジメント(以下、MTDLP)を用いて興味がある活動を抽出した上で支援計画を立案し、その計画に基づいたリハビリを実施する事で、最終的に実行度と満足度共に向上がみられた症例を経験した。今回、在宅におけるリハビリでMTDLPを活用する事の必要性を認識した為、ここに報告する。

【事例紹介】「目標:買い物に行きたい」 実行度(1 / 10)満足度(1 / 10)利用者は1年前に脳梗塞を発症した51歳男性。非麻痺側機能、体力は維持されていたが、歩行を含めた1人での屋外活動は歩行能力の低下、高次脳機能障害により未実施となっていた。その為家族が外出し独居となる日中の大半は屋内のみで生活していた。利用者は元々買い物を行う等の屋外活動が好きで、それが実施出来ていない事がストレスの要因となっていた。

【方法・結果】方法はMTDLPを用い、興味・関心チェックシートから利用者の興味がある活動を具体的に抽出し、必要な要素を分析した後、その活動への実践的なアプローチを優先して行った。結果は「買い物に行きたい」という目標が達成でき、実行度(8 / 10)満足度(10 / 10)共に向上がみられた。また、買い物に行けるようになった事で自信向上に繋がり、1人での散歩や通院等の外出頻度が向上した。妻からは「1人で散歩するようになり本人のストレスが減ってきた。」との言葉が聞かれ、屋外活動範囲の狭小化に対するストレスの減少も示唆された。

【まとめ】MTDLPを用いる事で、興味のある活動を具体的に抽出し、目標を明確に設定する事が出来た。それにより目標に沿った具体的な練習や指導が行え、加えて利用者と家族を含めたチーム全員が同じ目標に対して取り組めた。アプローチの視点を興味のある活動とする事で、利用者の意欲が高まり、活動の獲得へと繋がった。結果、活動の幅が拡がり、満足度も向上した。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-10-2 訪問リハ(2)訪問リハビリ実施中の動画撮影による効果

愛全病院 リハビリテーション部

なつぼり としひで

○夏堀 敏秀(理学療法士),吉川 文博

<はじめに> 当事業所は利用者や院内リハビリ職員、他事業所等へ情報提供を行うため訪問リハビリ実施中に動画撮影を行っている。動画を用いた情報提供が院内・事業所連携等の一助となったため報告する。<当事業所紹介> リハビリ職員は9名。平成28年度の登録者数は90 ~ 100名。月間件数は370 ~ 450件、新規者数は2 ~ 9件、終了者数は1 ~ 9件である。<動画使用内容> 撮影した動画は①ご本人・家族へのフィードバック、②ケアマネジャーへのリハビリ内容の周知、③サービス担当者会議での情報提供、④院内リハビリ職員へのフィードバック、⑤当事業所内会議での症例検討にて使用している。<動画使用による効果> 実例の一部を紹介をする。①ご本人へ買い物のための屋外移動時の動画を見て頂き、「腰が曲がっているからもっと意識しないと」といった前向きな発言が聞かれた。②訪問リハビリ実施中に動画を使用している旨をケアマネジャーへ伝えたところ「そんなこともしているんだ」等の反応が得られた。③サービス担当者会議にて移乗時の動画を他事業所に見て頂き、「このように移乗していたのか」という反応の他、今後の生活について詳細に話し合うことが出来た。④訪問リハビリ実施中の動画を見て頂くことで生活が見え、「こんな生活になると予想していなかった」等の反応が得られ、入院中から在宅を考える一助となった。⑤動画を使用することで生活について詳細に知ることが出来、事業所全体で一人の利用者の生活を考えることが出来た。<考察> 動画を使用することで「生活の見える化」を図ることができ、利用者や家族をはじめ、院内リハビリ職員や他事業所と生活について詳細に話し合うことが出来た。今後は、「生活の見える化」を入院中から推進出来るよう院内のリハビリ職員等と連携を図ること、また、今以上に他事業所との情報共有を図り、利用者の生活がより良い生活となるよう支援していきたい。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-10-3 訪問リハ(2)SWOT分析による目標設定により、デイサービスや家庭内での役割獲得に繋がった事例

1 志村大宮病院 訪問リハビリテーションセンター,2 志村大宮病院

ほんざわ ゆういち

○本澤 祐一(理学療法士) 1,鈴木 邦彦 2

○はじめに今回、回復期リハビリ病棟を退院後、1年経過し、ご自宅での生活は安定するも、日中はテレビを見ているだけという生活が続いていた事例を担当した。本症例に対し、SWOT分析にて目標を設定し、多職種やご家族と連携し、デイサービス(以下、デイ)や自宅内での役割獲得に繋がった為、以下に報告する。本報告については事例・家族に十分な説明を行い、同意を得ている。○基本情報60代 男性疾患名:脳梗塞高次脳機能障害:注意障害・半側空間無視VQ:26点生活歴:病前は、造園業と同時にアルバイトをしており、休日は農作業の手伝いをしていた。退院後は、週5日デイ、週1日訪問リハビリを利用。休日は妻と散歩に行くか、テレビを見ていた。○介入経過SWOT分析にて、対象者の強み(新しい物が好き・人に感謝される事が好き)と弱み(消極的・抑うつ傾向)。環境の強み(tablet保有・デイ利用)と弱み(義母と仲が悪い・妻がストレスフル)の4点を整理し、クロス分析を施行。その中で、対象者の強みと環境の強みを掛け合わせ、能動的に興味を持った事を調べ活動に繋げられるように、tabletを使用し、デイでの掲示板作成を目標に設定。訪問リハビリでは、tabletの操作方法の指導と習慣化できるように指導、2カ月後、目標達成。それに伴い、訪問リハビリの回数を隔週に変更。次の目標として自宅での食器洗いをご自身で設定。デイでの実動作練習を依頼、訪問リハビリでは自宅での環境設定を行った。同時に、妻に実際の場面を見てもらうと共にデイで感謝されている事や喜んで行っている様子を説明し、理解を促す事で、目標達成し訪問リハビリ終了。○考察SWOT分析を用い、本人と環境の強みを活かすと共に担当者会議や逐次の電話などで情報を共有する事で、本人の弱みである消極的な面が僅かながら改善し、一部であるが能動的な活動に繋がり、役割獲得に繋がったと考える。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-10-4 訪問リハ(2)外出が契機となってADL・IADLが向上し、活動的な生活を獲得した一症例

湖山病院訪問看護ステーション

えぐち ようすけ

○江口 陽介(作業療法士),岡田 明菜

【はじめに】対象者の生きがいを支援する事は作業療法の大切な役割である。特に在宅支援では、作業や活動に着目した関わりの必要性は高く、QOL向上に大きく影響すると思われる。今回、廃用によりADL・IADLが低下した症例に対し、訪問リハビリでの外出企画を実施した。その結果、精神面の向上が図られ、活動的な生活を獲得したため報告する。

【症例紹介】80歳代男性。腰部脊柱管狭窄症、変形性膝関節症。H27年11月に胸膜炎と肺炎にてA病院に入院し約3か月で退院。生活歴は活動的で家族との外出や食べ歩きが趣味。

【初回評価】ROM:両膝関節-15°、両股関節-20°。MMT:両上肢4、両下肢2。感覚:両足底共に深部感覚軽度鈍麻。BI:45点 FIM:77点起立・移乗動作:膝折れが多く転倒リスクが高い。実生活:活動範囲が制限され、受診以外での外出の機会はない。

【経過】H28年4月訪問リハビリ開始。下肢・体幹の筋力低下により転倒が多い。2か月後に移乗動作時の膝折れ軽減。4か月後に車の乗り降り訓練開始し、家族への介助指導も実施。6か月後に自主トレ頻度が増加。移乗動作軽介助で可能。7か月後に家族も含め外出企画実施。8か月以降は移乗動作自立。家族との外出頻度増加。MMT:両下肢4、BI:70点、FIM:93点

【考察】活動的な生活を獲得した要因として、外出企画の実施が重要であったと考える。実際の外出を通して、対象者自身が可能な部分と問題点を具体的に理解し、自信に繋げる事ができた。また、家族との外出が対象者のidentityを満たし、精神面の向上が図られたと考える。それらが生活に対する意識を変え、日常生活での活動量が増加し、ADL・IADL向上にも繋がったと考える。また、家族との情報交換や実際の場面での介助指導等、家族との細かい連携も重要であったと考える。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-10-5 訪問リハ(2)当院回復期病棟退院し訪問リハへ移行した症例―活動度の変化について―

富家千葉病院 リハビリテーション室

おさない かずや

○長内 和弥(作業療法士),須賀 晴彦

【はじめに】 我が国は2025年に向けて、地域包括ケアシステムの構築がされている。医療制度においても、アウトカム評価の導入により在院日数の短縮を図るため、急性期及び回復期病棟退院後の訪問リハビリテーション(以下リハ)依頼は増加している。今回、当院回復期病棟を退院し、訪問リハを開始した症例に対し、活動度の変化を追っていく。

【方法・症例紹介】 症例は、60歳代男性。要介護2。妻と息子家族と一軒家にて生活している。平成24年6月に左視床出血を呈し、12月に回復期病棟を退院。退院後2年間は通所リハを利用。平成26年12月より当院の訪問リハが開始。

【結果】 経過を①回復期退院時、②訪問リハ開始時、③現在の3つの活動度に分ける。 ①FIM121点(運動項目86点/認知項目35点)であり、ADLはほぼ自立レベルだが、運動を継続するため週3回の通所リハを実施した。 ②FIM115点(80/35)であり、歩行に対する希望が高く、犬の散歩や外出を希望した。介入当初はPTのみ介入だったが、上肢、体幹の筋緊張亢進も認める為、OTも介入開始となる。週2回の訪問リハ、週3回の通所リハを継続。自宅で出来る自主訓練を本人・家族へ指導を実施した。 ③FIM112点(77/35)であり、右半身の筋緊張亢進を認められたため、服薬の変更や、訪問リハと通所リハでの動作の統一、福祉用具の再検討を図り、過剰な筋緊張亢進を予防した。現在は転倒する事無く、孫と一緒に犬の散歩を行う。

【考察】 本症例は、FIMの低下は認めたが、訪問・通所リハを利用した事で、身体機能の低下が最小限になったと思われる。その結果、発症から5年経過した現在も、自宅で安全な生活が送れていると考える。回復期退院後から訪問リハへと継続した関わりが実施できた事により、追跡調査が行えたと共に、シームレスな対応を行う事が可能となったと考える。今後は症例数を増やし当院における回復期退院後の予後予測に役立てていきたい。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-10-6 訪問リハ(2)当院の神経内科疾患患者における再入院に至る要因の調査

札幌西円山病院 リハビリテーション部作業療法科

おくたき ゆうた

○奥滝 優太(作業療法士),冨居 泰臣,石川 朝子,伊藤 隆

【目的】当院の神経内科総合医療センターに入退院を繰り返す患者の属性及び入院背景等を調査し,ここに結果を報告する.

【対象と方法】H28年4月から1年間,当院に2回以上入院した患者66名(男性26名,女性40名,平均年齢79.8±11.4歳)を対象とした.疾患内訳はパーキンソン病(関連疾患を含む)40名,多発神経炎6名,脳血管疾患5名,その他(重症筋無力症,多発性硬化症等)であった.入院目的は主疾患の治療34名,合併症の治療19名,精査3名,レスパイト6名,その他4名であった.調査として1回目と2回目入院の全対象における入院時の機能的自立度(FIM)の運動及び認知項目総点を比較した.また主疾患の治療群における2回目入院前生活状況として,服薬管理・飲水管理の不良,生活不活発,睡眠不良の有無を調べた.この4項目の有無を目的変数とし,FIM下位項目(移動,移乗,トイレ内動作,食事)と認知症

(HDS-R20点・MMSE23点以下をカットオフ)・同居者・社会資源利用・運動習慣・役割の有無を説明変数としたロジスティック回帰分析を行った.

【結果】全対象におけるFIMは運動及び認知項目に有意差はなかったが,主疾患の治療群では運動項目のみ有意に悪化していた.入院前生活状況は服薬管理の不良8名,飲水管理の不良11名,生活不活発14名,睡眠不良11名であった.ロジスティック回帰分析では,服薬管理不良は運動習慣・移乗FIM・食事FIM,飲水管理不良は運動習慣・トイレ内動作FIM,生活不活発は役割・運動習慣・トイレ内動作FIM,睡眠不良は運動習慣・トイレ内動作FIM・食事FIMがそれぞれ有意な変数として選択された.

【考察】主疾患の治療目的患者はFIM運動項目が悪化した状態での再入院となっている.その背景として様々な危険因子,特に運動習慣が確立されていないことが生活習慣不良に陥る要因として示唆される.また,運動習慣や役割の有無があるかという解釈は個々人により差があるため今後はもっと客観的指標を取り入れた調査をしていきたい.

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-11-1 通所リハ(1)糖尿病を患う利用者様に対する通所リハビリテーション会議とその取り組み

1 南小樽病院 リハビリテーション部,2 南小樽病院 通所リハビリテーションすまいる,3 南小樽病院 診療部

まえだ しゅんじ

○前田 峻志(理学療法士) 1,佐々木 やす子 2,久保 元気 1,佐々木 淳一 1,藤澤 和代 1,大川 博樹 3

●はじめに糖尿病による右下腿切断後義足の利用者様に対しリハ会議を通して運動意欲向上、体重減少、血糖コントロールの改善が認められたので、その過程を報告する。

●方法 1)対象:F様 60代 男性 診断名:糖尿病 糖尿病性網膜症 糖尿病性末梢神経障害 腎症 生活環境:徹夜と間食が多く、血糖管理が難しい。日中は独居 2)期間:平成27年4月2日~平成29年5月31日

●倫理的配慮発表にあたり、本人、御家族に十分説明を行い、同意を得た。

●データ分析方法通所利用開始から現在までの全10回のリハ会議を通し、体重、HbA1c、リハ時の歩行距離(m/日)、生活や利用状況の変化などを分析。

●結果期間中6 ヵ月毎の推移は、体重が71.0kg、72.0kg、65.0kg、69.4kg、66.2kgと減少傾向だった。同様にHbA1cは7.3%、8.4%、7.3%、7.6%、7.2%と変動した。リハ時の歩行距離は400m/日、680m/日、以降は1300m/日で経過した。利用当初は目標が定まらず、生活リズムも乱れていた。会議の中で目標距離を358km(北海道小樽~稚内間)と定め、地図やグラフで視覚化を図った。また、ルームランナーの導入や短期目標達成の表彰などで意欲が顕著に向上した。平成29年5月現在の累計歩行距離は200kmに至り、自宅では腹筋やプッシュアップなどの自己トレーニング実施。

●考察当初は、右大腿切断後の心理的負担とそれまでの悪い生活習慣が原因で意欲が低下していた。リハ会議で「歩行距離の視覚化」を図った結果、達成感を感じさせ、意欲の表れに繋がった要因と考える。体重やHbA1cの改善要因は「ルームランナーの導入」だった。導入前は消極的な姿勢だったが、試行した結果、運動意欲が強く表れた。今後の展望として、リハ会議を通して、他職種が連携し合い、本人が安心して在宅生活を送れるよう情報を共有する必要がある。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-11-2 通所リハ(1)図書館に行きたい-短時間通所リハビリテーションでの生活行為向上マネジメントの活用-

石巻健育会病院 リハビリテーション部

みやぎ しゅんすけ

○宮城 峻介(作業療法士)

【はじめに】当院通所リハビリを利用中の本事例に対し、生活行為向上マネジメント(以下MTDLP)を用いて介入した。その結果、病前の習慣だった、意味のある作業を獲得するに至ったので以下に報告する。

【事例紹介】80代男性。疾患:糖尿病性神経障害、脊柱管狭窄症。妻と2人暮らし。要介護度:2。生活歴:職歴は教師。近所の図書館へ行く事が習慣だった。現病歴:X-25年糖尿病発症、神経障害併発。自力歩行困難となり、電動車いす生活へ。X年当院通所リハビリ利用開始。

【作業療法評価】作業療法介入時に図書館に行きたいという目標が聞かれる。生活行為アセスメント表で事例の問題点と強み、予後を整理。事例と協議の上、生活行為目標は「公共交通機関を利用し、シルバーカー歩行にて自宅の近所の図書館へ本を借りに行く(実行度1/10、満足度1/10)」に設定した。

【介入経過】生活行為向上プラン表を用いて治療計画立案。担当CMにシルバーカーのレンタル、妻に自主トレ時の見守りを依頼。屋外歩行練習は、初期は100mで疲労見られたが、6 ヶ月後は350mを歩行可能になった。物品の出し入れは、初期は恐怖心の為動作を行えず。手すりを把持し、輪の出し入れを実施。4 ヶ月後には棚へ本の出し入れ可能になった。

【結果】妻・CM・OTと共に図書館へ外出訓練実施。動作は問題なく、事例は終始楽しげな様子(実行度8/10、満足度8/10)だった。訓練を期に月に2度図書館へ行くようになり、妻と外食するようになった。事例は現在も通所リハビリを継続し、2本杖での歩行練習を実施している。そして、当院主催の遠足に2本杖で参加する事が出来た。

【考察】事例は通所リハ以外に外出機会の乏しい状態であった。介入後は図書館に行くという意味のある作業の獲得のみならず、妻と外食する、遠足に参加する等の波及効果を得られた。 MTDLPの活用により目標の共有とそれに向けた介入の結果、事例の生活機能を向上させる事が出来たと考える。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-11-3 通所リハ(1)維持期リハビリの介護保険への移行~当院通所リハビリテーションの取り組み~

原土井病院 リハビリテーション部

かわばた たかひろ

○川端 隆広(理学療法士)

【はじめに】原土井病院デイケアセンターでは、平成12年から通所リハビリテーションを開設し長時間と短時間のサービスを提供してきた。しかしながら、維持期のリハビリにおける医療保険から介護保険への移行を重点課題とし短時間型のみの運営に変更したのでその取り組み等について報告する。

【目的】短時間デイケアの業務改善を行い、維持期のリハビリを必要とする方に対し、医療保険のリハビリサービスから介護保険の短時間型デイケアに移行できるよう心理面での不安改善し、デイケアへの移行促進を図る。

【方法】短時間デイケアへ変更に伴う業務改善内容は以下の通りである。①デイケア室を病院回復期リハビリ病棟の訓練室一部へ移行。②サービス提供時間を1時間へ変更。③利用対象を歩行可能な方と限定。④医師以外のスタッフは2人の専従の理学療法士のみ。送迎もリハビリスタッフが行う。⑤送迎範囲は事業所から車で10分以内の方を対象。1回の送迎往復時間は30分以内。

【結果】デイケア移行に関し、病院訓練室の機器を併用することで費用節約が出来き、スムーズに移行できた。医師以外は2人の理学療法士中心に実施しているが送迎・リハビリに関し問題なく運営できている。利用者登録7名から開始し、4月末現在で23名まで増加。利用者アンケートより、介護保険移行への不安改善、提供時間「1時間」での訓練量・内容とも満足との意見多数あり。家族から理学療法士が送迎を行うことで、通所前後に意見・情報交換が行えてよいとの意見あり。

【考察】今回、短時間型デイケアの業務改善を行い、維持期リハビリの介護保険への移行促進に一定の効果が得られた。しかし、未だ心理面での介護利用へ抵抗や不安あり維持期リハビリは介護保険での確立までには至らなかった。今後はさらに外来リハビリ担当との連携し、さらなる介護保険移行への促進のためマニュアル作成し維持期リハビリの介護保険利用への定着を目指す。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-11-4 通所リハ(1)社会参加の促進に向けた取り組み~自己効力感の向上を目指したアプローチ~

北九州古賀病院 リハビリテーション科

かわぐち けんたろう

○川口 健太郎(作業療法士)

<はじめに>2025年問題を控える中、地域包括ケアシステムを構築していくことは益々重要になってくる。その中で通所リハは利用者様の心身機能の回復に努め、住み慣れた地域で自分らしく生活していけるよう社会参加を促進していく必要がある。今回、自己効力感に着目したアプローチを行った結果、社会参加へ繋がった事例を経験したため報告する。<事例紹介>70代女性。平成22年脳出血(右視床出血)を発症。軽度の左片麻痺が認められるがADLは自立レベル。自発性低下や意欲低下等のうつ症状を認めることから活動性が低下し、地域の文化祭にて日本舞踊を披露したいという目標あるが達成には至っていない。<方法と結果>自己効力感向上目的にてパウダーアートや木目込み作業等の作業活動を実施し、他利用者の観察や事例への言語的な説得も併せて行った。また、デイケア内にて日本舞踊を披露する機会も設けた。結果、徐々に自己効力感の向上を認め、地域の文化祭へ参加し日本舞踊を披露するという目標を達成することが出来た。<考察>結果より自己効力感を向上させることが社会参加に繋がることが示唆された。様々な作品作りや他者の観察、言語による説得を通して達成感や自己有能感を獲得し、また実際に舞踊を披露する経験を通して情緒的な安定を図れたことが自己効力感の向上に繋がったのではないかと考える。今後も自己効力感に着目したアプローチを行い社会参加を促進していきたい。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-11-5 通所リハ(1)通所リハビリ施設における長期間利用者への看護師の関わり-事例検討での振り返り-

1 老人保健施設千束,2 東京大学大学院医学系研究会科 健康科学・看護学専攻

ゆざわ ちえみ

○湯澤 智恵美(看護師) 1,中野 博美 1,齋藤 弓子 2,高岡 茉奈美 2,五十嵐 歩 2,山本 則子 2

【目的】通所リハビリ施設(以下、通所リハと称する)では、医療ニーズの高い利用者が安心して地域での生活を継続するための支援が求められる。本研究は、通所リハでの実践を振り返り看護介入の視点とその効果を明らかにした。

【方法】実践内容を経過に沿って文章化し実践の意図に沿って整理した。その内容を、施設内の看護・介護職員や外部研究者と共有しフィードバックを受けた。本研究は、所属組織の倫理委員会の承認を得て実施した。

【事例紹介】A氏、80代、男性、要介護3。多発脳梗塞加療後、通所リハを週3回利用し自宅で療養中。妻と2人暮らし。利用開始当初はトイレ歩行ができていたが、徐々にふらつきが出現する。リハビリ拒否がみられ、うつむいたまま無表情に座って過ごすようになる。

【看護の展開】介入前期:長時間の座位により下肢浮腫が増強し、うまく歩けないことから自信喪失や歩行に対する恐怖心が生じ、さらなる歩行困難を招いていると考えた。下肢浮腫の軽減とコミュニケーションを図るためフットケアを開始した。介入中期:A氏に笑顔が見られるようになったため、他の利用者との交流を促した。趣味の社交ダンスを活用した歩行訓練やトイレに行く時に足首運動を一緒に行い、A氏が無理なく体を動かせるように配慮した。フットケア後は、下肢の浮腫が良くなっていることを伝えた。介入後期:同郷の利用者と故郷の話ができるよう調整した結果、A氏のリハビリ拒否は無くなり、他の利用者とも積極的に関わりを持つようになった。

【考察】通所リハでは、限られた時間で多くの利用者の中から看護介入の必要な対象者を見つけるアセスメントが重要である。本人が得意なことや出来ることに着目し、強みを活かすケアが行動変容に繋がったと考える。A氏の行動が変化したことにより、介護職やリハビリ職等のA氏に関わる全てのケア提供者の関わりが増し、A氏がさらに変化するという相乗効果が生まれた。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-11-6 通所リハ(1)リハビリマネジメント加算Ⅱを通して積極的な摂食の介入が可能となった一例

介護老人保健施設ゆうゆうホーム リハビリテーション科

ひらばやし ふきこ

○平林 芙季子(言語聴覚士),佐久間 千恵,佐藤 義則

【はじめに】リハビリマネジメント加算Ⅱ(リハマネⅡ)を実施し事業所間連携がスムーズに行われ、積極的な嚥下訓練が可能となった症例について報告する。

【症例】60歳代、男性。X年脳幹出血を発症。保存的加療後、重度構音障害、嚥下障害が残存。X+ 1年、胃瘻を造設。主治医は他病院の医師である。他施設にて身体リハビリ、訪問介護サービスを利用していた。X+2年1月より当施設にて通所リハビリテーション利用開始、週一回構音訓練実施(リハマネⅠ)。

【経過】第一期:X+3年2月本人家族の希望で嚥下訓練開始。直接訓練実施のため主治医に嚥下造影(VF)検査を依頼、w/c姿勢にてソフト食までの丸のみ、気管侵入が認められた。主治医の指示でミキサー食を使用した直接訓練を開始。X+3年8月よりリハマネⅡ開始となる。第二期:粥ゼリー中心に直接訓練実施。咽頭へ食物や痰の貯留がみられたが自力で喀出可能。リハマネⅡ会議で本人より「甘い物が食べたい」と希望あり、好物をミキサー形態で摂取。外出行事にも参加。X+4年のリハマネⅡ会議では「カレーや刺身が食べたい」との希望がありカレーミキサーを摂取。この頃より若干嚥下機能の低下が疑われる。翌月の会議時に鮪の刺身を使用した嚥下訓練を実施し、会議参加者と様子を共有。その際、訓練内容の再検討とVF再検査を提案した。第三期: 主治医の下VF再検査を実施。嚥下能力の低下、逆流物の誤嚥が認められたが本人家族から訓練継続の希望があり、主治医の指示の下訓練を継続する。

【結果と考察】リハマネⅡを実施した結果を以下に挙げる。1.事業所間での情報共有・連携がスムーズになった2.本人家族の希望に沿った介入が可能になった3.生活により密着したリハビリが提供できた4.本人の意欲・QOLの向上5.リスクへの対応が迅速に行われたリハマネⅡを効果的に活用する事で、介入困難な事例でも積極的に介入する事が可能になると思われる。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-12-1 通所リハ(2)1時間以上2時間未満の通所リハビリテーションを開設してみえた効果と今後の課題

大久野病院

たじま まさよし

○田島 雅祥(理学療法士),渡邉 悠馬,須嵜 由起子,工藤 弘之,進藤 晃

【はじめに】近年、生活期のリハビリテーション(以下リハ)では要介護被保険者に対して、介護保険でのリハへの移行が推進されている。当院でも生活期の外来リハの受け皿として平成28年4月より1時間以上2時間未満の通所リハを開設した。当初は週3日から営業し外来リハからの移行が多かったが、徐々に外来以外の利用者が増え、営業日も増やしていった。1年間運営してみえた動向と効果、今後の課題について以下に報告する。

【対象と方法】開設~平成29年5月の間に利用した35名を対象に、性別、年齢、要介護度、外来からの移行者数、終了者数、相談件数、また利用開始から3 ヶ月間入院がなく継続利用した14名の握力、最大歩行速度、Timed Up and Go test(TUG)、改訂版Frenchay Activities Index(SR-FAI)を開始時と概ね3 ヵ月後で平均値を比較した。医師は利用初回に目標の確認とリスク管理を踏まえ指示を出し、リハプログラムは利用者を評価後、個別プログラムを主体的に取り組む形で行った。生活課題に対し機能訓練を行いIADL練習も適時行った。

【結果】男性19名女性16名、平均年齢75.6歳、要支援1・2及び 要介護1の割合は69%、外来からの移行は11名、終了者12名、相談件数57件であった。3 ヵ月後の機能評価では、握力男性26.4kgから30.6kg、女性17.9kgから18.9kg、最大歩行速度1.0m/sから1.1m/s、TUG13.2sから12.2s、SR-FAI14から16.3と改善傾向であった。

【考察】基本属性は、平成27年の全国デイ・ケア協会の報告に類似する形となった。身体機能低下に対しての機能訓練の依頼が多い中、機能低下を防ぎSR-FAIも改善傾向であり、終了者を出せたことは、機能向上の先にある活動と参加を意識した当通所リハの取り組みの成果ではと考える。

【今後の課題】短時間通所リハでIADLが改善し活動と参加に繋げ、終了者を出す事ができた。終了者が日常生活を維持できるように社会資源の開発や地域との連携が今後の課題である。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-12-2 通所リハ(2)重度認知症の利用者へのPT介入による変化

初富保健病院 通所リハビリ科

かさい りょうすけ

○葛西 亮介(理学療法士),小滝 治美,佐々木 寛法,平野 梨加子

【はじめに】今回, 20年以上前にアルツハイマー病(AD)の診断を受けられた当院通所リハビリの利用者様に対して理学療法士(PT)が介入した取り組みを通して得た経験を報告する.

【倫理的配慮】今回の発表の目的・方法をご本人, ご家族に書面と口頭で説明をし, 同意を得た.

【対象者紹介】平成6年にADの診断を受けた70歳代後半の女性A様. 当院通所リハビリを週2回, 通所介護を週3回, SSを月1回利用されている. ADLは全介助. FIMで運動機能16点, 認知機能8点. 食事は咀嚼・嚥下は可能. 認知はFAST 7に該当する.

【PT介入時期】1. 歩行介入期歩行能力低下により自宅からの外出が困難になる. 歩行, 階段昇降を中心に運動療法を実施. 日常生活での手引き歩行が可能となり, その後5年間継続して行う事が出来ていた.2. 食事介入期Ⅰ摂食動作に重点を置き, 自立度の向上を目指した. 動作を細分化し, 出来ることを見出し, 御自身のタイミングでの摂食嚥下の獲得により, 誤嚥を防止する事ができた.3. 食事介入期Ⅱ抜歯実施後, 食形態の変更, 食事摂取量が減少し, それに伴い体重減少がみられた. 担当者会議内で議論した内容を参考にして実践した結果, 食事摂取量増加, 体重の維持・増加に繋がった.4. 褥瘡介入期体重減少に伴い仙骨部に褥瘡を発症. 当院Dr.診察後に除圧指導, 福祉用具の検討, 薬剤処置を実施した結果, 褥瘡の治癒に至った.

【考察・まとめ】ADをはじめ, 認知症を有する方はその症状や診断を受けてからも長い期間を過ごされる. この期間では①できている活動を長く保つこと, ②状態の変化時に適切な対応を行うことが大切であると考える. PTがこの視点と知見を持ち, CMや他事業所と積極的に多職種と連携し, 利用者とご家族に対し, 適切に介入できれば本症例のように重度の認知症を有する利用者も長期にわたって穏やかに在宅生活を継続できると考える.

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-12-3 通所リハ(2)デイケア利用者における生活機能と身体機能との関連性~ニーズに応じたIADL向上を目指して~

1 AMG埼玉回生病院,2 杏林大学 大学院医学研究科 社会医学系専攻 社会医療情報学

すずき あきこ

○鈴木 晶子(理学療法士) 1,渡邊 雅巳 1,橋本 磨人 1,高橋 恭子 1,虻川 和博 1,岳 眞一郎 1,吉田 正雄 2

【はじめに】デイケアは、平成27年の介護保険改定で社会参加支援加算が新設され、デイケアを卒業しデイサービスに移行させることが評価されるようになった。したがって、家庭や社会への参加を可能とするために、日常生活動作

(ADL)のみならず手段的日常生活動作(IADL)の評価と向上に向けたプログラムはこれまでより必要である。今回我々は、IADLの評価、プログラム立案に役立てることを目的に、IADLと関連する種々の身体機能について分析を行ったので報告する。

【対象と方法】当院デイケア利用者のうちHDS-R10点以上で歩行が可能(補装具使用を含む)であり、かつ本研究に同意が得られた33名(平均年齢81.6±17.4歳、男性10名、女性23名)を対象とした。ADLの評価尺度にBarthel Index (BI)、 IADLの評価尺度にFrenchay Activities Index (FAI)を使用した。また身体機能の下肢筋力の指標に足趾把持力、バランス機能の指標にFunctional reach test (FRT)と片脚立位保持 (OLS)、移動能力の指標にTime up and go test (TUG)を測定した。FAIは総合点の他に屋内項目(食事の用意、片付け、洗濯、掃除や整頓、読書)と屋外項目(買い物、外出、屋外歩行、交通手段、旅行、庭仕事)の各合計点を算出し、身体機能の項目、BIとSpearmanの相関分析を実施した。

【結果】解析の結果、FAI総合点に対して、OLS、FRT、足趾把持力は正の相関が認められた。一方、FAI総合点とTUGは負の相関が認められた。また、FAIの屋内項目ではFRT、屋外項目ではOLSと正の相関が認められた。

【考察】今回調査した身体機能項目に対するアプローチは、IADL向上に向けて有用である可能性がある。本調査では屋内項目と屋外項目に相違が見られた。その理由として屋内ではリーチを必要とする動作が多く、屋外では段差や斜面が多い為と考えられた。このことは利用者のIADLのニーズに応じた評価、プログラム立案の一助となり得ることが示唆された。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-12-4 通所リハ(2)短時間通所リハビリテーションにおける経過・アンケート調査からみえてきたこと

平成とうや病院 通所リハビリテーションセンター リハビリテーション科

こが ふみや

○古賀 文也(理学療法士),小嶋 真矢,井柄 涼輔,井上 沙紀,宮崎 真紀

【はじめに】当通所リハビリテーション(以下通所リハ)利用者の歩行評価結果と生活動作との関連を調べるため、アンケート調査を実施した。TIMED UP&GOテスト(以下TUG)とアンケート結果からみえてきた課題について報告する。

【対象・方法】1.TUG対象:6カ月以上継続して利用された利用者37名(平成27年9月~平成29年5月)利用開始時~ 6か月間の各月(計6回)のTUG結果を抽出2.アンケート対象:利用者39名(平成29年5月現在)

(男性:18名 平均年齢80.0歳、女性:21名 平均年齢76.3歳)内容:リハビリの必要性、リハビリを必要と感じる動作(ADL・IADL)、施設を選んだ理由

【結果】1.TUG要支援:平均タイム10.9秒から9.7秒要介護:平均タイム11.7秒から10.3秒2.アンケート回答リハビリの必要性:必要と感じる 39名/39名リハビリを必要と感じる動作ADL:階段(段差)昇降 30名、歩行 29名、立位保持 15名IADL:屋外歩行 27名、外出 21名、庭・家の手入れ 14名施設を選んだ理由:リハビリスタッフがいる 24名、送迎がある 20名、家が近い 19名

【考察】TUGの結果から要支援・要介護ともに運動器不安定症機能評価基準11秒以下まで改善し、歩行能力の改善を認めるが、アンケート結果から階段(段差)昇降、歩行、屋外歩行、外出にリハビリの必要性を感じる利用者が多い。また、施設選考の理由に「リハビリスタッフがいる」や「送迎がある」が多いことから屋外での移動に対し不安が強く、セラピストが充実している通所リハにてリハビリを行いたい希望があると示唆される。以上のことから安定した歩行能力を獲得している利用者においても、不安から活動範囲に制限を受けていると考えられる。活動範囲を拡大するためには機能改善だけでなく、精神面・環境面の制限因子を抽出し、残存能力の活用につなげていくことが必要である。必要な課題を分析し、通所リハから地域へと連動させていくマネジメントが今後の課題と考える。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-12-5 通所リハ(2)外出への不安感に対して外出訓練を行い、通所リハビリ卒業に繋がった一症例

千木病院 リハビリテーション部

おざき たいし

○尾崎 泰士(理学療法士)

【はじめに】身体機能の改善は得られたが、屋外歩行に対する不安感が強く、自発的な外出に繋がらなかった症例に対し、外出訓練を導入することで外出機会が増大し、通所リハビリを卒業することが出来た為、ここに報告する。尚、今回の発表について本人から同意を得た。

【症例紹介】70歳代女性。転倒による腰椎圧迫骨折、腰部脊柱管狭窄症のため歩行能力低下し、当院通所リハビリ利用となる。独居生活であり、外出機会は週1回の通所リハビリ利用のみ。通所利用5 ヶ月にてMMTは両上下肢・体幹4、最大連続歩行距離は500m。

【経過】利用5 ヶ月より自宅から50m先にある郵便ポストまで外出訓練を行い、これを習慣付けるよう指導した。利用7 ヶ月に自宅から一人で400m先の公民館へ水墨画教室への参加、600m先のスーパーに買い物へ行くようになる。ここで本人より公共交通機関を利用して買い物へ行きたい、通所リハビリ卒業を目指したいと希望あり。しかし、自信が持てず一人での外出機会の拡大には繋がっていなかった。通所利用2年、バスの昇降や長距離歩行獲得を目的とした外出訓練実施。これにより更なる外出機会の拡大が可能となり、通所リハビリ卒業となる。

【考察】本症例は屋外歩行時の転倒に対する不安感を持っていた為、身体機能や歩行能力の改善が見られていたにも関わらず、外出機会が全く無い状況であった。そこで、段階的に外出訓練を行うことが本人の外出に対する動機付けとなり、元来の趣味であった水墨画教室へ通えるようになったことでQOLの向上、更なる外出意欲の向上に繋がり、通所リハビリ卒業が可能となったと考える。以上により、外出への不安感に対する外出訓練は有用であったと考える。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台9-12-6 通所リハ(2)臨床心理士が介入し、認知・身体・精神面に改善が認められた通所リハビリテーション利用者の症例報告

1 西仙台病院 臨床心理室,2 西仙台病院 看護部,3 西仙台病院 リハビリテーション科,4 西仙台病院 医局

ほりこし あゆみ

○堀越 歩(臨床心理士) 1,村上 美津子 2,佐藤 一輝 3,原 真弓 1,今川 篤子 4

[はじめに]当院通所リハビリテーション(以下、通所リハ)では、平成28年度より利用者の認知機能向上や個別介入を目的として臨床心理士(以下、CP)がかかわり始めた。個別介入をした利用者1名に改善が認められたため報告する。

[症例と介入までの経緯]症例は60代男性(以下、A)。平成24年発症の脳(左被殻)出血後、右片麻痺、構音障害、注意障害が残存。平成26年より当院の通所リハで作業療法士(OT)や言語聴覚士(ST)による個別リハを受けている。病前より音楽を好み、30年以上ギターやベース、ボーカルとしてバンド活動を行っていた。通所リハではAの趣味とは異なる曲が流れることが多く、手持ち無沙汰にしていることが多かった。利用開始時「またギターが弾けるようになりたい」という希望をAが目標として掲げ、握力向上に向けた介入が行われていたが、転倒等もあり歩行能力向上リハが優先されていた。

[臨床心理士による介入]1回約30分間、動画サイトを利用してAの好きな曲を一緒に鑑賞する個別介入を開始した。その後、その時間を利用して楽器演奏を行った。麻痺が強くギター演奏は断念したが、CPが弟子となってAから指導を受けることとした。A自身はキーボードでベース音を担当し、通所リハスタッフ等が加わりバンドを結成、約3か月間の練習を重ねて発表した。

[結果]バンド活動前後で認知面ではMini Mental State Examinationが6点向上した。活動中、身体面では麻痺側の簡易上肢機能検査結果が17点向上した。精神面では、活動性や意欲が向上し発話や笑顔が増えた。

[考察]CP介入により、Aの認知・身体・精神面が改善した。他の職種とは異なる視点から利用者のニードを発掘し個別介入ができるCPは、通所リハ利用者の心身機能やQOL向上に貢献することが期待される。今後も実践を積み重ね、独自の役割を模索、検討し、発信していきたい。