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グ リ ー ン ピ ー ス・ジ ャ パ ン   お魚スーパーマーケットランキング7 ~枯渇しゆく海、日本市場に求められる変化~

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グリーンピース・ジャパン お魚スーパーマーケットランキング7

~枯渇しゆく海、日本市場に求められる変化~

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© Greenpeace / Marco Care

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枯渇しゆく海地球の70%を覆う海には、100万種もの生きものがいるといわれます。海が育む命は、何十億もの人たちの食や生活を支え、地球上の50~70%の酸素もまた海が作り出していると推定されています。まさに海は、私たち人間にとってもかけがえのないものなのです。

しかし、その海の恵みは、世界規模の水産業界によって容赦なく搾り取られています。今、世界の水産資源の3分の1は、過剰に漁獲されています1。より多くの魚を獲ろうとする努力も虚

しく、漁業管理が向上した地域はあっても、総漁獲量は1990年代から減少の一途を辿っているとする研究結果2もあります。そのうえ、水産物の総生産量(天然・養殖)は、2025年までに20%近くの増加が予測されており3、継続してさらに大きな負荷が海洋生態系に与えられることを意味します。

絶滅の危機にさらされている魚も少なくありません。寿司や刺身でお馴染みのマグロやウナギの多くは、種の絶滅リスクを評価する、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種に指定されています。例えば、太平洋クロマグロは、乱獲が原因で初期資源量の2.6%まで減ってしまっています 4。

絶滅危惧種に指定されても、なお魚を巡る議論の主流は、いかに漁獲量を最大化するかということです。私たち人間が魚を食べられるのは、多様な生きものたちが豊かな生態系を織りなしているおかげです。マグロもウナギも生態系の一部。絶滅の脅威を排除し、生物多様性を守ることは、その恩恵を受ける私たちの最優先事項であり、責任でもあるのです。 漁業の対象とする種を獲る時に、他の魚や生きものを偶発的に一緒に獲ってしまうことを混獲と呼びます。混獲の犠牲になって命を落とす魚や海の生きものは、毎年10万トンに

ものぼります5。人工集魚装置(FADs)と呼ばれ、海に漂わせる人工物を用いるマグロの巻き網漁は、混獲を引き起こす代表例です。海に漂う物に集まる魚の習性を利用したFADsには、マグロだけでなく、サメ・エイ・ウミガメ・イルカなど他の生きものも自然と集まってきます。こうして、不運にもマグロと一緒に網にかかった商業価値のない生きものたちは、その場で海に捨てられてしまいます6。毎年何千トンもの小さな魚も無差別に一網打尽にされ、捨てられています。従来型のはえ縄漁では、100kmを超えることもある長い縄

ファッズ

© Christ ian Åslund / Greenpeace

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© Greenpeace / Pierre Gleizes

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© Wil l Rose / Greenpeace

1 FAO, 2016, The State of World Fisheries and Aquaculture 2016. Contributing to food security and nutrition for all, Rome, pp.5-6, viewed Dec 2017, <http://www.fao.org/3/a-i5555e.pdf>国際連合食糧農業機関(FAO)は、2013年の水産資源評価において、31.4%が過剰漁獲(乱獲)、58.1%が乱獲の一歩手前(持続可能なレベルの限界まで漁獲されている)の状態にあるとしている。2 Daniel Pauly & Dirk Zeller, 2016, ‘Catch reconstructions reveal that global marine fisheries catches are higher than reported and declining’, Nature Communications, p. 2, viewed 12 Sep 2017, <https://www.nature.com/articles/ncomms10244.pdf>3 FAO, 2016, The State of World Fisheries and Aquaculture 2016. Contributing to food security and nutrition for all, Rome, p.5, viewed Dec 2017, <http://www.fao.org/3/a-i5555e.pdf>4 水産庁, 2017, 太平洋クロマグロの資源状況と管理の方向性について, p.10, viewed Dec 2017, <http://www.jfa.maff.go.jp/j/tuna/maguro_gyogyou/attach/pdf/bluefinkanri-9.pdf>5 Fonteneau A, Chassot E, Bodin N, 2013, ‘Global spatio-temporal patterns in tropicaltuna purse seine fisheries on drifting fish aggregating devices (DFADs): Taking a historical perspective to inform current challenges’, Aquatic Living Resources, viewed Dec 2017, <https://www.alr-journal.org/articles/alr/abs/2013/01/alr130046/alr130046.html>6 Dempster T & Taquet M, 2004, ‘Fish aggregation device (FAD) research: Gaps in current knowledge and future directions for ecological studies’, Reviews in Fish Biology and Fisheries, p.7. Viewed April 2014, <http://archimer.ifremer.fr/doc/2004/publication-721.pdf>7 Clarke, S, Sato, M, Small, C, Sullivan, B, Inoue, Y & Ochi, D, 2014, Bycatch in longline fisheries for tuna and tuna-like species: a global review of status and mitigation measures, FAO Fisheries and Aquaculture Technical Paper, No. 588. Rome, p.83, viewed Jan 2018, <http://www.fao.org/3/a-i4017e.pdf>8 FAO, 2016, The State of World Fisheries and Aquaculture 2016. Contributing to food security and nutrition for all, Rome, p.iii, viewed Dec 2017, <http://www.fao.org/3/a-i5555e.pdf>9 McDowell R, Mason M & Mendoza M, 2015, AP Investigation: Slaves may have caught the fish you bought, viewed Dec 2017, <https://www.ap.org/explore/seafood-from-slaves/ap-investigation-slaves-may-have-caught-the-fish-you-bought.html>10 Greenpeace Southeast Asia, 2016, Turn the Tide -Human Rights Abuses and Illegal Fishing in Thailand’s Overseas Fishing Industry, <http://www.greenpeace.org/seasia/Press-Centre/publications/Turn-The-Tide/>11 CdeBaca, Luis, 2014, ‘Briefing on the Trafficking in Persons Report 2014’, viewed 24 Aug 2017, <https://2009-2017.state.gov/j/tip/rls/rm/2014/228067.htm>

に付けられた数千本の針で魚を釣りますが、毎年5~10万羽のウミドリなども命を落としているのです7。

漁業の闇に直面しているのは、海の生きものだけではありません。国連食糧農業機関(FAO)は、世界の水産物の15%以上は違法・無報告・無規制(IUU)漁業によって獲られたものと推定しています8。IUU漁業は水産資源の適切な管理の妨

げになるだけでなく、深刻な人権問題との繋がりも懸念されています。近年、AP通信などメディアの調査によって、東南アジアの水産業界における強制労働・人身売買・児童労働を含む人権侵害の実態が明るみになってきました9。2016年のグリーンピース・東南アジアによる現地調査では、海上で漁獲物を漁船から運搬船に積み替える洋上転載を利用した人身売買や、ま

ともな報酬もなく数年にわたって船上の労働力として拘束するケースも発覚しています10。調査で分かったことは、氷山の一角に過ぎません。米国務省は、50カ国以上の船や水産物加工施設で、強制労働や人身売買が行われているとしています11。日本で消費される魚介類が、IUU漁業や人権侵害の犠牲の上に成り立っていないという保証はありません。

安い水産物を世界中に供給するため、安価な労働力を得るために、こういった人権問題や違法行為が蔓延しているのです。目先の利益を求めるあまり、水産業界は制御不能な状態に陥っています。

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お魚スーパーマーケットランキング7

かつてない脅威にさらされている、私たちのかけがえのない海を守るため、グリーンピースは、世界の海の40%を保護区にすること、そして残りの60%の海で行われる全ての人間活動がサステナブルになることを目標に、世界中で活動をしています。日本では、その一環として、食卓にのぼる魚介類の主な購入先であるスーパーマーケットに、海の生態系と労働者にきちんと配慮した「サステナブル・シーフード」だけが並ぶことが当たり前になることを目指します。

「お魚スーパーマーケットランキング」は、大手スーパーマーケットのサステナブル・シーフードを調達するための取り組みや課題を明らかにすることを目的とするアンケート調査の結果です。2011年の初回調査では、対象スーパーマーケットは5社でしたが、2016年の第6回調査より、さらに多くの消費者に価値ある情報発信をするため、売上や店舗数などを総合的に判断し、15社に拡大しました。本レポートは、2017年11月から2018年1月にかけて実施した第7回調査の結果です。 スーパーマーケットが「サステナブル・シーフード」の調達を決定すれば、スーパーマーケットに魚介類を納める全てのサプライヤーは、サステナブルに変わるはずです。その変化の波は、グローバル化し複雑に絡み合ったサプライチェーンを徐々に遡り、水産業界がサステナブルになる後押しをすることになります。そうして、やがて海も人も守る、大きなうねりになるのです。この波を起こせるのは、他でもない「消費者」であるあなたの「サステナブル・シーフードがほしい」という強い想いと行動です。一人ひとりの小さな行動を変化に繋げて、私たちのかけがえのない海を一緒に守りましょう。

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5

前回の調査結果と比較すると、全体的に大きな進展はありませんでした。総合結果(P5)と各カテゴリー (P12~P15)において、40%以下だったスーパーマーケットは、早急な改善が必要です。あなたがお買い物をするスーパーマーケットはどうですか? アンケート調査のカテゴリー(P6~P7)、アンケート調査の結果(P8~ P11)、消費者にできること(P18~ P19)を参考に、あなたの

「サステナブル・シーフード」を探してみてください。スーパーマーケットにお勤めの方には、スーパーマーケットへのお願い(P16~P17)もあります。

イオン

コープデリ

西友

オークワ

イトーヨーカドー

ラルズ

バロー

平和堂

ユニー

ライフ

マルエツ

ヤオコー

イズミ

イズミヤ

1位

2位

3位

4位

5位

6位

7位

8位

9位

10位

11位

12位

参加辞退 フジ

GoodBad

69.6%

47.1%

41.3%

35.0%

22.9%

19.3%

12.0%

11.8%

10.7%

5.8%

3.4%

2.9%

スーパーマーケットからの回答をご覧いただけます。

⬆⬆⬆

➡⬆

⬇⬇

50% 100%0%

http://act.gp/2u8rEmU

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6

持続可能な魚介類を調達するための方針と労働・公平性・社会的責任についての方針が明確に定められているか、方針の内容、適用される魚介類商品のタイプ(天然・養殖、生鮮・冷凍・常温)、販売する魚介類商品のうち調達方針を守れた割合を聞きました。

アンケート調査は、5カテゴリー・16問と付随する小項目から構成されます。参加企業の回答を点数化し、カテゴリーごとの得点率と、それら得点率の合計平均を算出。合計平均を総合評価としました。

調達方針 [Q1-Q5]

グリーンピースが持続可能でないと考える漁業(者)・養殖業(者)21項目のうち、調達方針で排除すると定められている項目と、販売されている魚介類商品のうち、各項目の排除に成功した割合を聞きました。例えば、絶滅危惧種を対象とする漁業、混獲が20%を超える漁業、人権侵害に関与している漁業・養殖業、養殖魚1kgあたり1kg以上の天然魚を餌として利用している養殖業などがあります。

持続可能性 [Q6-Q7]

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7

トレーサビリティ [Q8]

イニシアチブ [Q9-Q15]

絶滅危惧種 [Q16]

日本で大人気のマグロやウナギは絶滅危惧種。取り扱い状況を聞きました。絶滅の危険性がある種は、持続可能でない魚の代表例です。絶滅危惧種の販売の有無は、本当に生物多様性や海洋生態系に配慮をしているかどうかを見極める目安になります。

お店に持続可能な魚介類商品だけが並ぶこと、サステナブル・シーフードというコンセプトを世の中に根付かせるための取り組みを聞きました。サステナブル・シーフードを調達するためには、スーパーマーケットに魚介類を提供する全てのサプライヤーの理解と協力が必須です。また、消費者がよりサステナブルな商品を選べるように、どうサステナブルなのか、詳しい情報を提供することも求められています。

持続可能な魚介類だけを調達するために、調達方針で排除することが定められているトレーサビリティと違法・無報告・無規制(IUU)漁業に関する6項目と、販売されている魚介類商品のうち、各項目の排除に成功した割合を聞きました。魚介類商品がお店に並ぶまでに辿った経路(サプライチェーン)の全容を、漁船まで遡って明らかにできること(トレーサビリティ)は、持続可能な魚介類を調達するための要です。分からない部分があると、知らないうちにIUU漁業や強制労働などの社会的責任にかかる問題への関与リスクが高まります。複雑にグローバル化したサプライチェーンでは、なおさら重要です。

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各カテゴリーの回答のハイライト

調達方針 持続可能性と社会的責任に関する魚介類の調達方針の有無 昨年からの進展はありませんでした。明文化した調達方針があるスーパーマーケットは、イオン・イトーヨーカドー・コープデリの3社のみでした。きちんと明文化されてはいないものの、何かしらの方針があるスーパーマーケットは、西友・ユニー・ラルズの3社でした。自社のバイヤーや取引先が調達方針を正しく理解し、認識を同じくするためには、明文化は必須です。西友は、世界最大のスーパーマーケットである米ウォルマートが親会社。ウォルマートのシーフード・ポリシーに従うとしていますが、まだ日本語版はありません。サプライヤー向けの要件は日本語版があります。水産業にはびこる環境・社会的問題を解決するためには、買う側であるスーパーマーケットが厳しい方針を作ることが重要です。

アンケート調査の結果

イオンイトーヨーカドー コープデリ

ある なし イズミ  オークワ  西友※

平和堂  マルエツ  ヤオコーユニー※   ライフ   ラルズ ※

※明文化はされていないが何かしらの方針がある企業

イオンイトーヨーカドー なし

25%未満 25-50%未満 50-75%未満 75-100%未満 100%

コープデリユニー※

※明文化はされていないが何かしらの方針がある企業

西友※ ラルズ ※

[Q1]

[Q4]販売している全ての魚介類商品のうち、持続可能な魚介類の調達方針の内容を満たす割合この結果は、各社が調達方針で定義する「持続可能性」の達成度を表しています。数字が大きくても、グリーンピースが考える持続可能ではない魚介類を排除できていない場合もあります。

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© Jir i Rezac / Greenpeace

9

絶滅危惧種や保護指定されている種、漁獲が禁止されている種を対象とする漁業(者)から調達しないイオン・コープデリ・西友・ユニー・ラルズの5社が該当。しかし実際には、全てのスーパーマーケットがニホンウナギや太平洋クロマグロなどの絶滅危惧種の販売を続けていることから、基準が守られていないことが分かります。

持続可能性

Highlight

[Q6-c]

[Q6-j]混獲して破棄される魚介類の重量が総漁獲量の20%を超える漁業(者)から調達しないコープデリとユニーの2社が基準としていますが、混獲が20%以下であることをどう確認しているか、その詳細は不明です。私たちが魚介類を口にする影で、多くの生きものが無駄に命を落としています。人の目が届かない海の上で起きている難しい問題のため、スーパーマーケットの協力なくして解決できません。

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漁獲した漁船までの経路の全てを遡ることができないものや、その漁獲が漁獲可能量内であることの証明がないものは扱わない基準として掲げるのはイオン(達成率25-50%未満)と西友(50-75%未満)の2社のみ。漁船まで遡ることができるトレーサビリティが確立されなければ、IUU漁業や違法・非道徳な雇用慣行を行っている漁船や水産加工場の特定は不可能です。サプライチェーン上の全ての関係者が問題を理解し、解決に向けて手を携える必要があります。スーパーマーケットが厳しい基準を設定し、その購買力を正しく使うことが、この途方もなく困難なタスクを進めるための大きな希望となります。

トレーサビリティ[Q8-a]

[Q8-e]洋上転載によるものは扱わない該当なし。およそ40%の洋上転載は人の目の届かない外洋で行われることもあり、IUU漁業や密輸などの犯罪行為、人権問題への関与リスクは高くなります。運搬船にオブザーバーを乗船させるなどの国際的な取り組みもありますが、まだ一部に過ぎず、文字通り世界中を行き来する運搬船の全てを監視し、これらのリスクを完全に排除する方法はまだありません。確実に生態系や労働者を守るためには、洋上転載に由来する魚介類の取り扱いを止めることが必要です。

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11

持続可能な魚介類の取り扱いを増やすため、明確なゴールと達成期限がある明確な目標があるのはイオンとコープデリの2社のみでした。イオンは、2020年までに海のエコラベルであるMSCやASC商品の取り扱いを20%に増やす等*、より明確な目標を公にしています。コープデリは、数値目標と進捗管理をしているとするものの、その詳細は不明です。西友は、親会社の米ウォルマートが掲げる、2025年までにサプライヤーにMSC等の認証取得もしくは漁業改善プロジェクトへの参加を100%にするという目標がありますが、日本における明確な目標と達成期限はありません。

取り扱いをしないことが定められている絶滅危惧種ヨーロッパウナギはワシントン条約の対象種になっていることもあり、ライフを除く11社全てが取り扱いをしない方針ですが、アメリカウナギは7社にとどまりました。ニホンウナギ稚魚の漁獲量激減を受けてか、ライフは回答を控えるとし、ユニーは前回調査では調達をしない方針だったアメリカウナギを外しました。ニホンウナギや太平洋クロマグロなど、その多くが日本で消費される種を扱わないスーパーマーケットはなく、スーパーマーケットが指す「持続可能性」が個体数の回復や生態系保全を優先するものでないことは明らかです。

イニシアチブ

絶滅危惧種

イオン  イズミ  イトーヨーカドー  オークワ  コープデリ西友   平和堂  マルエツ  ヤオコー  ユニー  ラルズ

イオン  イズミ  イトーヨーカドー  オークワ  コープデリ西友   平和堂

ヨーロッパウナギ

アメリカウナギ

太平洋クロマグロ  大西洋クロマグロミナミマグロ  メバチマグロ  ニホンウナギ該当のなかった種

無回答 ライフ

[Q12-a]

[Q16]

© Ardi les Rante / Greenpeace

*Marine Stewardship Council, EU Our Ocean 2017 - Commitments, viewed March 2018, <https://www.msc.org/2020-leaders>

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12

➡ 1 位

69.6%

持続可能性

トレーサビリティ

調達方針

イニシアチブ

絶滅危惧種

95.0 76.3

75.0 73.0

28.6

持続可能性

トレーサビリティ

調達方針

イニシアチブ

絶滅危惧種

85.0 46.9

22.9 52.0

28.6

持続可能性

トレーサビリティ

調達方針

イニシアチブ

絶滅危惧種

60.0 38.8

41.7 37.8

28.6

⬆2 位

47.1%

⬇3 位

41.3%

調達方針があり、 「絶滅危惧種」を 除く全てのカテゴリーで7割を達成。 2020年までに水産商品のうち20%をMSC・ASC認証商品にする等の明確な目標を公開しています。

調達方針があります。天然の太平洋クロマグロを扱っていない唯一のスーパーマーケットです。調達方針の適用範囲を常温商品(缶詰など)まで拡大する等の改善がありました。

米ウォルマートの調達方針に準ずるも、日本語版はありません。1年以内の日本語版もしくは日本独自の調達方針の策定を検討中です。FIPやAIPを利用して改善に向けた取り組みをしています。

イオン

コープデリ

西友

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13

持続可能性

トレーサビリティ

調達方針

イニシアチブ

絶滅危惧種

95.0 0.0

0.0 51.5

28.6

持続可能性

トレーサビリティ

調達方針

イニシアチブ

絶滅危惧種

70.0 4.4

0.0 26.0

14.3

持続可能性

トレーサビリティ

調達方針

イニシアチブ

絶滅危惧種

10.0 47.5

0.0 24.5

14.3

➡ 4 位

35.0%

⬆ 5 位

22.9%

⬆6 位

19.3%

➡⬆⬇お魚スーパーマーケットランキング 6 の順位との比較

調達方針はありますが、カテゴリー「持続可能性」と「トレーサビリティ」に含まれる基準がありません。具体的にどのような魚を「持続可能」と定義しているのか、具体的な内容の公表が急務です。

時期は未定ですが、調達方針の明文化を検討中です。ワシントン条約対象種は扱わない決まりのため、ヨーロッパウナギの扱いはありません。

明文化はされていませんが、調達方針があります。アメリカウナギはニホンウナギ稚魚の不漁を理由に、扱わない絶滅危惧種から外されました。ヨーロッパウナギは扱いません。

イトーヨーカドー

ラルズ

ユニー

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持続可能性

トレーサビリティ

調達方針

イニシアチブ

絶滅危惧種

0.0 3.8

0.0 27.6

28.6

持続可能性

トレーサビリティ

調達方針

イニシアチブ

絶滅危惧種

0.0 5.0

6.3 19.4

28.6

持続可能性

トレーサビリティ

調達方針

イニシアチブ

絶滅危惧種

0.0 0.0

0.0 25.0

28.6

⬆7 位

12.0%

⬇8 位

11.8%

➡ 9 位

10.7%

市場流通する生魚は買い付けるため、調達方針はありません。ヨーロッパウナギとアメリカウナギは扱わない決まりです。信憑性のない回答が多く評価できない項目が複数ありました。

調達方針はなく、市場流通する生魚は買い付けるとのこと。ヨーロッパウナギ・アメリカウナギは扱いません。信憑性のない回答が多く評価できない項目が複数あり、順位を下げる結果となりました。消費者がサステナブルな選択をするための確かな情報をお願いします。

調達方針はありませんが、ヨーロッパウナギとアメリカウナギは扱わない決まりです。認証商品に関する取り組みと、消費者に提供する情報などが新たに追加されました 。

14

オークワ

イズミ

平和堂

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マルエツ

持続可能性

トレーサビリティ

調達方針

イニシアチブ

絶滅危惧種

0.0 0.0

0.0 14.8

14.3

持続可能性

トレーサビリティ

調達方針

イニシアチブ

絶滅危惧種

0.0 0.0

0.0 16.8

0.0

持続可能性

トレーサビリティ

調達方針

イニシアチブ

絶滅危惧種

0.0 0.0

0.0 0.0

14.3

⬆10 位

5.8%

⬇11 位

3.4%

⬇12 位

2.9%

➡⬆⬇お魚スーパーマーケットランキング 6 の順位との比較

調達方針はありませんが、ヨーロッパウナギは扱わない決まりです。消費者に提供する情報が新たに追加されました。

調達方針の策定を検討中です。消費者に提供する情報の追加や、社員教育などの新しい取り組みがありました。昨年は、ヨーロッパウナギとアメリカウナギは扱わない決まりでしたが、今年は無回答に終わりました。

調達方針はありませんが、メジマグロとヨーロッパウナギを扱わない決まりです。昨年同様、ほとんどの質問に回答しなかったため、消費者にとって意味のある参加ではありませんでした。

15

ヤオコー

ライフ

マルエツ

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16

日本語で明文化した持続可能な魚介類の調達方針を策定・導入し、広く一般に公開するもしも、あなたの会社にまだ調達方針と基準がなければ、すぐに着手してください。私たちが口にする魚介類が、海の生態系や労働者に犠牲を強いることがないように、良識ある方針を掲げましょう。その方針を社内やサプライチェーンに周知すること、そして、誰もが見られるように広く一般に公開してください。そうすることで、透明性がより高まるだけでなく、あなたの会社でサステナブル・シーフードを購入する消費者も誇りを持てることでしょう。

「海にも人にも優しい」サステナブルな調達に向けて

絶滅危惧種の取り扱いを中止するもしも、あなたの会社が絶滅危惧種を売っていたら、今すぐ取り扱いを中止してください。生態系や生物多様性を守ることを既に方針に掲げている場合は、その方針を形骸化させないためにも、絶滅危惧種の販売を止めることは最優先事項です。絶滅の脅威を取り除き、個体数を回復させるためのあらゆる努力が必要です。他の会社が販売を止めたかどうかは関係ありません。目先の利益のためではなく、真に環境に優しい会社になれるかは、あなたの選択にかかっています。

スーパーマーケットへのお願いスーパーマーケットへのお願い

© Pierre Gleizes / Greenpeace© Paul Hil ton / Greenpeace

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トレーサビリティを強化して、サプライチェーンの透明性を高めるあなたの会社が販売している全ての魚介類商品は、お店に並ぶまでに辿ってきた旅路が分かりますか?漁船や養殖場からお店まで、サプライチェーンの全てを明らかにできる、強固なトレーサビリティが確立されていなければ、サステナブルかつ社会的責任を果たした魚介類の調達は不可能です。

より多くの人がサステナブルな商品を選ぶための情報を提供するあなたは、自分の会社の魚介類商品に貼られたラベルや店内表示などから、その商品がサステナブルかどうか判断できますか? たとえ持続可能な魚介類を調達し、生態系や労働者を守る取り組みをしていても、消費者に伝わっていなければサステナブル・シーフードを日本で広める効果は限定的になってしまうでしょう。トレーサビリティを駆使して得られた情報を積極的に公開することで、消費者は賢い選択をすることができます。

現代的奴隷、労働者搾取、違法・無報告・無規制 ( IUU) 漁業に終止符を打つために最大限の努力をすることを公に約束するあなたの会社が販売している魚介類商品がIUU漁業・人権侵害に関与していないと自信を持って言えますか?海からの恵みによって利益を得るビジネスをしているならば、労働者搾取やIUU漁業について至急の対策を講じることは最も重要な責任です。あなたの会社の購買力は、大きな変化を起こす希望です。積極的にサプライチェーンを調査し、調達基準を見直しましょう。現代的奴隷を公に批難し、サプライヤーや政府、そしてNGOと協力をして、体系的な変化をもたらしてください。

© Greenpeace / Marco Care

© Sirachai Arunrugstichai / Greenpeace © Clément Tardif / Greenpeace© Pierre Gleizes / Greenpeace

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「本当のこと」を知るお魚スーパーマーケットランキングを見て、よく行くスーパーマーケットのサステナブル度と改善すべき点を学ぼう。

お店にあなたの熱い想いを伝えるいつもお買い物をするお店にサステナブル・シーフードだけを売ってほしいと伝えよう。海の生きものや環境に配慮して獲られたお魚、お店に並ぶまでに携わった全ての人が公正に扱われているお魚しか食べたくないと伝えよう。そして、現代的奴隷や強制労働、違法漁業など深刻化する問題にどう取り組んでいるか、お店の人に聞いてみよう。

みんなで一緒に考える問題について友達や家族や周りの人たちと一緒に考えよう。海で起きている問題を周りの人にも伝えよう。

世界の海と労働者を守るため消費者にできること

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サステナブルな選択肢がなければ食べない私たちの魚介類に対する需要はサステナブルな調達によって供給できる量をはるかに超えています。マグロやウナギなどの、絶滅危惧種は特に避けたい魚です。今、魚介類の消費量を減らすことは、海にかかる負担を緩和し、未来へ魚を残すことに繋がります。サステナブル・シーフードが手に入らない時に選べる行動のひとつです。

サステナブル・シーフードを買うことで、サステナブルな魚介類の調達をしているお店や調達してくれた人たちに感謝の気持ちを伝えよう。お店で見つからない場合は、お店の人に聞いてみてください。

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OCEAN HOLIC

マグロの『ツナ吉』くん

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Tel 03-5338-9800国際環境NGO

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お魚スーパーマーケットランキング6

http://act-greenpeace.jp/ocean/tunacan/あなたのツナ度をCHECK

日本のツナ缶、もしかしてヤバイ!?ツナ缶のツナには、悲しい現実がつまっているのを知っていますか?海の生き物ウミガメ・サメ、海で働く人々の現状をあなたの好きなツナ商品から知ることができます。(2017年発表)

http://act-greenpeace.jp/ocean/ranking6/

豊かな海を守るページ

スーパーマーケットランキングの第6弾。海の問題解決のカギを握るのはスーパーです!スーパーなど15社に5項目でアンケートを取りサステナブルなお魚の取り扱いを評価しました。(2016年発表)

グリーンピース・ジャパンの海を守るための活動をまとめて紹介しています。もっとサステナブル・シーフードについて◀知りたい方はこちら

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国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは、環境保護と平和を願う市民の立場で活動するNGOです。問題意識を共有し、社会を共に変えるため、政府や企業から資金援助を受けずに独立したキャンペーン活動を展開しています。

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