パラメトリックデザインと自由曲面インターフェー …1.背景と目的...
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1.背景と目的 近年、精度の向上や価格の低下などにより、デジタルファブリケーションがものづくりの現場において普及しつつあり、デザイン案の検討や製作における速度が格段に上がっている。[1] デジタルファブリケーションのひとつの特徴として、少品種大量生産と多品種少量生産とを比べた場合のコストが変わらないという点があげられる。そのため、消費者が既製品を選ぶのではなく、自分のためにカスタマイズしやすいようにパラメトリックデザイン [*] が注目されている。[2]
パラメトリックデザインではモデリングとインテグレーションに分けることができる。[3] 以下に示すf-chairというプロジェクトでは、椅子を観測し、その成り立ちを時系列に再構成したものである。[4] その過程で、実物では定数として固定されていた値を変数に置き換え、パラメトリックモデリングを構築している。 (図1) パラメトリック•モデルを作るフェーズとともに、そのパラメータの組み合わせを決めるインテグレーションを行うフェーズがある。図2では、パラメータを操作して得られるもののうち51種類を示している。
図1: f-chairのコード 図2: f-chairによるバリエーション
本研究では特に、2次元平面の材料から切り出すCNCマシンに着目するとともに、パラメトリック•モデルをインテグレーションするフェーズに着目する。用意されたパラメータからユーザーがカスタマイズしデザインを行う主な方法としてFabseat [5] のようにスライダーやチェックボックスなどを用いて擬似的に形状操作するものやSketch Chair [6] のようにPC画面上で自由曲線を描画することで形状操作するものがある。 (図3) (図4)
本研究では、物理的な自由曲面のインターフェースを用いることによって、実際に形状を見ながらデザインを行うことができ、パラメトリックデザインでしばしば用いられるPC画面上での自由曲線の描画やスライダー操作では認識できなかった物質としての3次元形状を認識することができる。また、自由曲線の描画では暗黙的に、スライダー操作などではできなかった複数の変数を同時に操作することによってより思い通りにパラメトリックデザインを行うものを目指す。 [**](パラメトリックデザインとは変数操作による設計の総称。3次元モデルの部分を数値変数(パラメータ)にし、この変数を操作して目的の形状を作り出す。変数にあてはめる数値を変化させることで、変形のしかたをコントロールしながら多くのバリエーションを作り出すことができる。また、変数間の関係を連立方程式でルール定義できるので変形の自由度が高い。)
図3: Fabseat 図4: Sketch Chair2.アプローチ Rhinocerosとそのプラグインであるgrasshopperを用いて,アルゴリズムを構築し,その一部分を変数化(パラメータ化)しておく.そうすることにより,後からデザインの再決定が可能になる.同時に,grasshopperとArduinoを連動させることによって,実際に形状を操作しながら変数を取り込むことができる装置を作る.下の例ではグリッド上の棚の表面形状を実際に操作しながら数値として取り込むことによって,直感的・即興的デザインを試みているところである.現在,この装置は開発中である. (図5) (図6)
図5: grasshopperとArduinoの連動 図6: 装置のシステム3.実験・評価、今後の流れ 従来のパラメータ操作のみによってデザインを行う場合と装置を用いて行う場合、パラメータと装置の両方用いる場合のそれぞれについて実験を行い、その有用性を検証する。また、椅子や棚、もしくは機能を持たない玩具のようなものなど、いくつかの異なるジャンルに関して実験を行うことによりこの装置の有用な分野についても検討する予定である。 実験のスケジュールとしては、東京デザイナーズウィーク2010において実験を行い、そこで得られてた知見をもとに11月下旬から12月にかけて再度、実験を行う予定である。 [**][**]東京デザイナーズウィーク2010ではFabLab Japanの活動を行っている,慶應義塾大学 田中浩也研究室と多摩美術大学 久保田研究室(ハッカースペース)によって共同でコンテナ出展する予定である。
参考文献[1] ニール•ガーシェンフェルド, 糸川洋 (訳):ものづくり革命 パーソナル•ファブリケーションの夜明け, ソフトバンククリエイティブ, 2006[2]マルチメディア•インターネット事典: http:// j i ten.com/dicmi/docs/k26/21218s.html[3] 10+1 アーキテクチュラル・コーディング〈1〉:パラメトリック•モデリングとゲーテ─型と派生の思考を巡って: http://tenplusone.inax.co.jp/school/tanaka/--/[4] f-chair: http://www.grasshopper3d.com/photo/fchair-1?context=latest[5]Fabseat:http://web.media.mit.edu/~dimp/Dimitris_Papanikolaou_Portfolio_web.pdf[6] Sketch Chair: http://www.gregsaul.co.nz/SketchChair/
パラメトリックデザインと自由曲面インターフェースを用いた家具デザインの設計支援に関する研究
政策•メディア研究科 平本知樹
abstract: 本稿はデジタルファブリケーションやパラメトリックデザイン、自由曲面のインターフェースを用いることによる家具デザインの支援に関する研究である.物理的な自由曲面のインターフェースを用いることによって、実際に形状を見ながらデザインを行うことができ、パラメトリックデザインでしばしば用いられるPC画面上での自由曲線の描画やスライダー操作では認識できなかった物質としての3次元形状を認識することができる。また、自由曲線の描画では暗黙的に、スライダー操作などではできなかった複数の変数を同時に操作することによってより思い通りにパラメトリックデザインを行うものを目指す。今後、自由曲面を操作できる装置を用いて実験を行い、従来のPC画面上でのスライダー操作で作ったデザインとの比較検討してその有用性を検証していく。