グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月...

31
令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

Upload: others

Post on 05-Aug-2020

4 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

令和元年6月経済産業省製造産業局総務課

グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

Page 2: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

1.2013年度「GNT企業100選」

1

Page 3: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

グローバルニッチトップ(GNT)企業100選 経済産業省は、2013年度、「GNT企業100選」事業を実施し、大企業内6事業部門、中堅企業25

社、中小企業69社 を選定・表彰(GNT企業100選)。

2

・大企業 ・・・ 世界市場の規模が100~1000億円程度であって、20%以上の世界シェアを保有。

・中堅企業 ・・・ 10%以上の世界シェアを保有。

※中堅企業:大企業のうち売上高が1000億円以下。

・中小企業者 ・・・ 10%以上の世界シェアを保有。

分野 大企業 中堅企業 中小企業

機械・加工 2(7) 8(20) 42(108)

素材・化学 1(5) 10(19) 9(25)

電気・電子 1(2) 4(9) 10(31)

消費財・その他 2(2) 3(4) 8(28)

選定要件(企業規模別) 選定結果

数字は選定企業数。( )の数字は応募企業数。※この他、GNTに準じる企業(ネクストGNT)として、7社を選定。

重視したポイント

・シェアだけでなく、利益も確保していること。

・特定のサプライチェーンに依存せず、より多くの企業、より多くの国に供給していること。

・グローバルニッチトップ製品を増やしていること。

・シェアの持続性があること。

地理的な分布

・GNT企業は、広く全国に分布。

(出典)https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/gnt100/index.html

Page 4: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

(参考)GNT企業の例 ①中小企業(機械・加工分野)

3

(株)エンジニア (大阪府大阪市)*機械・加工分野

錆びたりなめたネジの頭を掴んで簡単に外す、プライヤー型の専用工具は、国内はもちろん、世界のどこにも存在せず、同社製品が世界初。

マーケティングにより、本当に市場から要求されている製品を開発し、ヒットを実現。従来にはなかったコンセプトの製品であり、世界シェアは100%。

(株)マスダック (埼玉県所沢市)*機械・加工分野

全自動どら焼き機

どら焼機、オーブン、充填成型機など菓子業界向けの機械メーカーとして世界に進出。世界各国の現地事情に合わせた機能の機械を製造。

生産能力1時間あたり850個~6,000個の4機種

の全自動どら焼機を揃えており、世界各国の現地事情に合わせた機能の機械を製造。世界シェアは100%。

どら焼き機による製品例 製品外観 ネジザウルスシリーズ販売実績

(出典)https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/gnt100/index.html

世界シェア100% 世界シェア100%

Page 5: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

(参考)GNT企業の例 ②中小企業(素材・化学分野)

4

メック(株) (大阪府大阪市)*素材・化学分野

メックエッチボンドCZシリーズ(以下CZ)は銅表面を数μmエッチング(溶解)することで表面に超微

細な凹凸形状を形成し、銅と樹脂との密着性を高めているプリント配線板用薬品。

CZシリーズを使用することによって、銅と樹脂と

の密着が保たれるため、ほとんど全てのパッケージ基板にCZが使用されており、世界シェアは100%。

(株)オキサイド (山梨県北杜市)*素材・化学分野

SLT結晶

低い欠陥密度で、広い透過波長領域を持ち、可視から紫外領域のレーザ応用に優れた「非線形結晶SLT(定比組成タンタル酸リチウム)」の量産化に世界で初めて成功。

独立行政法人物質材料研究機構が開発した結晶育成技術の実用化を目指して2000年に設

立したベンチャーであり、同製品の世界シェアは100%。

スマートフォンで使用CZの凹凸形状が密着を向上

(出典)https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/gnt100/index.html

世界シェア100% 世界シェア100%

Page 6: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

(参考)GNT企業の例 ③中小企業(電気・電子分野及び消費財・その他)

5

セーレン(株) (福井県福井市)*消費財・その他分野

染色技術とITの融合により、企画から製造、販売まで行う独自の一貫生産ビジネスモデルを確立し、車輌内装材全般を網羅。

「ビスコテックス」は、染色技術にIT技術を融合させ、従来実現できなかった1,677万色を用い

た多彩なデザイン表現力を多品種・小ロット・短納期で実現。世界シェアは100%。

(株)エルエーシー (東京都町田市)*電気・電子分野

オートボディプリンター

独自のプリンターヘッドを使用した各種プリンターを開発・製造・販売。様々な素材(凹凸、湾曲面)に印刷することを実現。

同社の代表的な製品である「オートボディプリンター」は、自動車、トラック、バス等のボディへダイレクトにプリントを施す装置で、同社による世界オンリーワン製品で、世界シェアは100%。

タイヤプリンター ビスコテックス

(出典)https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/gnt100/index.html

世界シェア100% 世界シェア100%

Page 7: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

(参考)GNT企業の例 ④大企業

6

(株)堀場製作所 (京都府京都市)*機械・加工分野

排ガス規制の対象拡大や強化といった外部環境の変化に対して、自社技術だけでなく、他社からの技術供与も柔軟に活用。変化する顧客ニーズに対する迅速な対応を可能としている。

各国における規制対象ガス成分の分析に用いられる「エンジン排ガス測定装置」において、世界シェアは80%。

排ガス測定装置

(株)日立ハイテクノロジーズ(東京都港区)*消費財・その他分野

同社の開発した遺伝子配列を解析するキャピラリ電気泳動型DNA解析装置は、ヒトゲノムプ

ロジェクトを始め生物学、医学などのライフサイエンスに関わる研究分野に広く用いられてきた。

ビジネスパートナーであるThermo Fisher Scientific 社と提携し、遺伝子配列解析の業界標準となり、世界シェアは90%。

自転車用変速機関連部品

(出典)https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/gnt100/index.html

世界シェア80% 世界シェア90%

Page 8: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

●ハーマン・サイモン博士(ドイツ人経営学者)による「隠れたチャンピオン(Hidden Champion)」の定義

「世界市場で3位以内か、大陸内で1位。」「売上高が40億ドル以下。」「世間からの注目度が低い。」

(ハーマン・サイモン 「グローバルビジネスの隠れたチャンピオン企業」 (上田隆穂監訳、渡部典子訳)中央経済社、2012年、p.16)

●細谷祐二氏(元経済産業省・地域政策研究官)による 「GNT企業」の定義

「ニッチトップ製品(注:競合他社が国内に少ない独自の製品)を複数保有し、そのうちの少なくとも一つは海外市場でもシェアを確保している企業。」

(細谷祐二「日本のものづくりニッチトップ企業の実態と経営戦略について―アンケート調査結果を中心に―」(『商工金融』 2013年8月号、p.26))

●難波正憲教授(立命館アジア太平洋大学名誉教授)による「GNT企業」の定義

「特定の商品または技術において、世界のトップグループのポジションを占める企業。」

(難波正憲・福谷正信・鈴木勘一郎 「グローバル・ニッチトップ企業の経営戦略」 東信堂、2013年2月、p.7)

●株式会社日本政策投資銀行による「バリュー・チェーンコア企業」の定義

「次の①~④に該当する企業で、かつ財務評点が一定水準以上の企業。」①非上場の独立系 B-to-B 製造業で、海外取引がある。(拠点が海外にある、輸出している。)

②取引構造上、重要な役割を担っている。③高い技術力を有している。④定性評価。

(参考)GNT企業やその類似概念に関する定義 「GNT企業」に加え、「隠れたチャンピオン」(ドイツ)や「バリュー・チェーンコア企業」について、国内外で以下の

ようにとらえられている。

7(出典)https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/gnt100/index.html

Page 9: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

2.2018年度フォローアップ調査結果

8

Page 10: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

9

フォローアップ調査項目 「GNT企業」選定から5年が経過した今、GNT企業の現状と課題について、アンケートに基づくフォロー

アップ調査を実施した(100社中、75社から回答あり)。

項目(1 )企業データ(記述

式)従業員数売上高(直近決算)営業利益率(直近決算)研究開発費(直近決算)GNT製品・サービスの種類の数売上高のうち、最近5年間において新規にGNT化した製品・サービスの割合5年前に認定されたGNT製品・サービスの現在の世界市場シェア5年前に認定されたGNT製品・サービスの現在の市場規模5年前に認定されたGNT製品・サービスの現在の国内・海外の競争者数海外売上比率(直近決算、GNT製品・サービス以外も含む)販売国数(GNT製品・サービス以外も含む)海外拠点が存在する国の数

(2)世界市場シェアに影響を与えた要因

製品・サービス自体の競争力の変化自社の営業活動取引先企業の製品・サービスの需要変化競合他社の動向市場動向

(3)第四次産業革命の影響

影響の有無・程度社内の具体的な取組事務処理業務の効率化(例:賃金計算ソフトの導入)生産プロセスや製造工程の効率化(例:ロボットによる生産自動化)製品・サービスの品質・価値向上(例:データ分析による不良品削減)新たなビジネスの創出(例:3.の不良品削減システムの外販)

Page 11: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

10

(続き)フォローアップ調査項目 「GNT企業」選定から5年が経過した今、GNT企業の現状と課題について、アンケートに基づくフォロー

アップ調査を実施した(100社中、75社から回答あり)。

項目(4)戦略の方向性 研究開発によるコア技術のさらなる強化

コア技術の他分野への応用・転用による市場拡大コア技術に関する保守・点検などのアフターサービスの強化GNT製品・サービスにかかる生産コストの低減顧客の囲い込み(例.既存顧客との共同開発)新規顧客の獲得(例:顧客の多角化)GNT製品・サービスのブランド化、さらなる差別化知財保全、技術漏洩や他社による模倣防止(例:製造装置の内製化、従業員教育)国際標準との連携や各国規制・制度との調和による市場の拡大既存のコア技術によらない新規事業への移行

(5)具体的な取組と課題 研究開発現在の研究開発拠点、共同開発の相手、研究開発上の課題

製造現在の製造拠点、今後の製造拠点のあり方

海外販売現在の販売拠点、重視する海外販売チャネル。海外での販売・商取引上の課題

知財管理、国際標準化現在の対応方針

人材確保・組織のあり方組織作りにおいて重視していること、人材確保に関する課題

情報収集最新の情報収集に関する課題

Page 12: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

11

調査結果(1)企業データに関する比較 5年前と比較して、従業員数、売上高・営業利益率は全体的に増加・向上。 GNT製品の世界シェアはやや減少(55%)、市場自体が成長し、競争者が多少増えた影響あり。 海外売上高は伸びているが、販売国数や海外拠点数はやや減少。販売先の選択と集中の影響か。 営業利益率(11%)は全製造業平均(7%)より高く、海外売上比率(45%)はモノの輸出企業全

体の平均(30%)より高い。 研究開発費が売上高に占める割合(4%)は、大企業平均(3%)と同等以上。

回答数(社)

H30年度調査結果(平均値)

H25年度調査結果(平均値)

①従業員数 75 1,110 人 1,015 人②売上高(直近決算) 75 40,742 百万円 31,921 百万円参考:従業員一人当たりの売上高 74 37.0 百万円 33.5 百万円

③営業利益率(直近決算) 69 11.4 % 11.0 %④研究開発費(直近決算) 64 1,597 百万円 データ無し⑤研究開発費が売上高に占める割合(合計/合計) 64 3.5 % データ無し⑥GNT製品・サービスの種類の数 70 3.8 種類 3.4 種類⑦売上高のうち、最近5年間において新規にGNT化した製品・サービスの割合 63 14.6 % 28.6 %⑧5年前に認定されたGNT製品・サービスの現在の世界市場シェア 73 55.0 % 58.7 %⑨5年前に認定されたGNT製品・サービスの現在の市場規模 61 700.4 億円 523.2 億円⑩5年前に認定されたGNT製品・サービスの現在の国内・海外の競争者数 72 14.5 社 13.3 社⑪海外売上比率(直近決算、GNT製品・サービス以外も含む) 71 44.7 % 46.6 %⑫海外売上高 70 24,081 百万円 21,307 百万円⑬販売国数(GNT製品・サービス以外も含む) 71 29.4 ヵ国 35.5 ヵ国⑭海外拠点が存在する国の数 73 5.1 ヵ国 6.2 ヵ国※5年間の変化を見るため、数字の比較は同一企業同士の平均とした。※参考1:平成29年度の全製造業の利益率は7.0% (出所:平成30年度経済産業省「企業活動基本調査」)

平成29年度の中小企業全体の利益率は5.0% (出所:2018年版「中小企業白書」)※参考2:平成29年度のモノの輸出企業の海外売上比率は30.3% (出所:平成30年度経済産業省「企業活動基本調査」)※参考3:日本の大企業1,810社の研究開発費が売上高に占める割合(合計/合計)は2.9%

(出所:東洋経済新報社「会社四季報CD-ROM 2019年2集・春号」より研究開発費と前期本決算売上高(連結)が計上されている企業を抽出し、計算)

Page 13: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

12

調査結果(2)世界シェアに影響を与えた要因

質問: GNT製品・サービスの世界市場シェアに影響を与えた/与えている要因は何ですか。 (複数選択可)

世界シェア自体はやや減少しているものの、業績向上や海外売上の伸びと連動し、5年前と比較して事業環境が総合的に向上しているとの認識。「製品・サービス自体の競争力の向上」「営業活動の奏功」が目立つ。

市場シェアに影響を与えた負の要因としては、特に「競合他社の台頭・躍進」が挙げられる。

図1.世界シェアに影響を与えた要因

59.7%

9.7%

56.9%

9.7%

54.2%

4.2%

12.5%

23.6%

50.0%

9.7%

6.9%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70%

製品・サービス自体の競争力が向上した

製品・サービス自体の競争力が向上しなかった

自社の営業活動が奏功し、海外販路が拡大した

自社の営業活動が奏功せず、海外販路は拡大しなかった

取引先企業の製品・サービスの需要に連動して需要が増えた

取引先企業の製品・サービスの需要に連動して需要は増えなかった

競合他社の撤退・縮小があった

競合他社の台頭・躍進があった

市場動向が変化し、需要が増えた

市場動向が変化し、需要が減った

その他

(n=72)

Page 14: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

非常に大

きい25.0%

多少ある48.6%

ほとんど

ない26.4%

(n=72)

13

調査結果(3)第4次産業革命の影響 「非常に大きい」と回答した企業は25%にとどまるものの、「事務処理業務の効率化」「生産プロセスや製造

工程の効率化」「製品・サービスの品質・価値向上」には半数以上の企業が取り組んでいる。「新たなビジネスの創出」には約3割の企業が至っている。

質問:第四次産業革命/デジタル化/AI・IoTの普及による影響はありますか

質問:デジタル化/AI・IoTの普及を受けて、どのような対応が進んでいますか。(複数選択可)

61.1%

62.5%

51.4%

26.4%

9.7%

8.3%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70%

事務処理業務の効率化

生産プロセスや製造工程の効率化

製品・サービスの品質・価値向上

新たなビジネスの創出

その他

必ずしもデジタル化に対応する必要はない

(n=72)生産プロセスや製造工程の効率化 ・製品検査を含む製造工程の自動化

・試験装置の自動化(自動で運転し、検査データを取得)・生産管理ソフトの導入・ロボットによる生産自動化、IoTによる加工機稼働状況把握 等

製品・サービスの品質・価値向上 ・製造工程のデータ分析による技術継承・各種測定装置の導入やデータ分析による不良品削減 等

新たなビジネスの創出 ・IoTにより、操業状況を把握できるアフターメンテナンスサービス・Webマーケティング 等

具体的な取組内容

Page 15: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

14

「研究開発によるコア技術のさらなる強化」が最も多い。 「サービスのブランド化、差別化」も支持されており、これらはGNT企業らしさとも評価できる。(赤枠)同時に、「コア技術の他分野への応用による市場拡大」や「新規顧客の獲得」といった横展開も重視されている。 (青枠)

以上から、「技術の深化」と「事業の横展開」に平行して取り組む様子が浮かび上がってくる。質問:グローバル化・デジタル化の進展の中で、GNT製品・サービスの競争力・

占有力を高めるために注力していることは何ですか。(複数選択可)

図2.GNT製品・サービスの競争力・占有力を高めるための戦略の方向性

調査結果(4)戦略の方向性

78.4%

59.5%

40.5%

54.1%

44.6%

68.9%

63.5%

41.9%

29.7%

12.2%

4.1%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%

研究開発によるコア技術のさらなる強化

コア技術の他分野への応用・転用による市場

拡大

コア技術に関する保守・点検などのアフター

サービスの強化

GNT製品・サービスにかかる生産コストの低減

顧客の囲い込み

新規顧客の獲得

GNT製品・サービスのブランド化、さらなる差別

知財保全、技術漏洩や他社による模倣防止

国際標準との連携や各国規制・制度との調和

による市場の拡大

既存のコア技術によらない新規事業への移行

その他(n=74)

Page 16: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

60.3%

28.8%

5.5%

56.2%

37.0%

32.9%

15.1%

4.1%

13.7%

5.5%

0.0%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70%

国内の顧客

国内のサプライヤー

国内の同業他社

国内の大学

国内の公的研究機関

海外の顧客

海外のサプライヤー

海外の同業他社

海外の大学

海外の公的研究機関

その他(n=73)

97.3%

16.2%

14.9%

4.1%

6.8%

8.1%

9.5%

1.4%

0.0%

1.4%

0.0%

0.0%

0.0%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

国内

北米

中国

台湾

韓国

ASEAN

欧州

インド

その他アジア

中南米

ロシア

中東

アフリカ

(n=74)

15

調査結果(5)①研究開発-海外展開の現状 研究開発拠点は国内が中心になっているが、中小企業が主体であることを勘案すれば、海外の拠点設置も

決して少なくはない。 研究開発のパートナーについても、国内顧客や国内大学が多いものの、海外と連携している企業の割合も少

なくはない。質問:研究開発拠点はどこに設置していますか?(複数選択可)

図3.研究開発拠点の設置場所

質問:研究開発はどこと共同で行っていますか?(複数選択可)

図4.研究開発のパートナー

Page 17: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

16

調査結果(5)①研究開発-研究開発における課題 課題としては、「研究開発を行える人材の確保」、「事業化・収益化までの期間の長さ」、「顧客ニーズの把

握」を挙げた企業が多い。 「研究開発資金の確保」を課題として挙げた企業は25%強程度で、資金面は強く問題視されていない模様。

質問:研究開発における課題は何ですか?(複数選択可)

図5.研究開発における課題

63.0%

69.9%

27.4%

65.8%

5.5%

1.4%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80%

顧客ニーズの把握

研究開発を行える人材の確保

研究開発資金の確保

事業化・収益化までの期間の長さ

その他

特に課題はない

(n=73)

Page 18: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

17

調査結果(5)②製造-海外展開の現状 製造拠点については、国内生産のみとする企業は5割を下回る。海外の製造拠点は、中国を筆頭に、

ASEAN、そして北米が多くなっている。 今後の展望としては、海外を基本とする企業(赤枠)よりも、国内の製造拠点を基本とした展開を想定する

企業(青枠)の方が多く、半数以上。

質問:製造拠点はどこに設置していますか?(複数選択可)

図7.製造拠点の今後の方向性

質問:今後の製造拠点のあり方はどのようにお考えでしょうか?

図6.製造拠点の設置場所

47.3%

27.0%

43.2%

10.8%

12.2%

27.0%

13.5%

6.8%

1.4%

4.1%

0.0%

1.4%

0.0%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

国内生産のみ

北米

中国

台湾

韓国

ASEAN

欧州

インド

その他アジア

中南米

ロシア

中東

アフリカ (n=74)

全面的に海外

に製造拠点を

移していく1.4%

海外の製造拠

点を基本としな

がら、国内には

研究開発拠点

を残す

4.2%

国内の製造拠

点を基本としな

がら、必要に応

じて海外にも製

造拠点を展開

する54.2%

基本的には国

内の製造拠点

で生産していく36.1%

自社は研究開

発や設計に特

化し、製造工程

は外部に委託

していく

1.4%

その他

2.8%

(n=72)

Page 19: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

18

調査結果(5)③販売-海外展開の現状 販売拠点については、国内に加え、海外では中国を筆頭に、北米、そして欧州が多い。 海外向けの販売チャンネルとしては、自社の販売網が最も重要視されている。海外代理店を重視している企

業も5割を超える。

質問:販売拠点はどこに設置していますか?(複数選択可)

図8.販売拠点の設置場所 図9.海外向けの販売チャンネル

質問:重視している海外向けの販売チャンネルはどれですか?(複数選択可)

91.9%

60.8%

63.5%

35.1%

41.9%

44.6%

58.1%

27.0%

9.5%

18.9%

10.8%

9.5%

4.1%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

国内

北米

中国

台湾

韓国

ASEAN

欧州

インド

その他アジア

中南米

ロシア

中東

アフリカ (n=74)

71.6%

56.8%

44.6%

48.6%

13.5%

21.6%

4.1%

0% 20% 40% 60% 80%

自社の海外販売網

有力な海外代理店

商社を通じた販売

海外見本市への出展

ウェブサイト等を通じた直販

顧客からの紹介・口コミ

その他(n=74)

Page 20: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

19

調査結果(5)③販売-海外での販売・商取引上の課題 海外での販売・商取引上の課題としては、多くの企業が「規制や制度の違い」と「模倣品の発生」が突出した

課題として認識されている。

質問:海外での販売・商取引上の課題は何ですか?(複数選択可)

図10.海外での販売・商取引上の課題

55.4%

23.0%

17.6%

2.7%

51.4%

16.2%

14.9%

8.1%

9.5%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

規制や制度の違い

売掛金回収の引き延ばし

極端な短納期発注

相手先都合による受取拒否

模倣品の発生

取引先からの技術開示請求

現地社員による知的財産の流出

その他

特に課題はない(n=74)

Page 21: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

20

調査結果(5)④知的財産と国際標準化への対応方針 知的財産への対応方針としては、特許取得せずに企業秘密扱いを基本とする企業と、特許取得することを

基本とする企業に分かれている。 国際標準化への対応方針としては、やや受け身の企業と、自社の技術を積極的に国際標準にしたい企業に

分かれている。また、対応の必要性をそこまで感じていない企業も少なくない。

質問:特許取得の対応方針を選んで下さい。

図11.知的財産への対応方針 図12.国際標準化への対応方針

赤枠:特許取得せず、企業秘密扱いとすることが基本青枠:特許取得することが基本緑枠:さほど気にしていない

赤枠:国際標準に自社製品を準拠させたい(やや受け身)青枠:自社の技術を国際標準にしたい(積極的)緑枠:対応の必要性を感じていない

質問:国際標準化の対応方針を選んで下さい。

特許を公開する

と容易に模倣さ

れるため、原則

特許を取得せず

技術は企業秘

密としている12.5%

重要な技術は

企業秘密とし、

他社に取得され

ると不都合が生

じる範囲に限っ

て特許を取得す

33.3%

コアとなる技術

について特許を

取得し、模倣に

は原則として特

許権侵害で対

応する45.8%

企業秘密とせず

コアとなる特許

を公開しても、

同一の性能を有

する製品を製造

される恐れは低

4.2%

特許の取得と他

社による模倣の

可能性ついて

は、特段考慮し

ていない

2.8%

その他

1.4%

(n=72)

自社製品が、

関連する国際

標準に準拠す

ることを目指し

ている

42.5%

自社の技術を

国際標準にす

ることを目指し

ている

12.3%

自社の技術を

国際標準とする

とともに、標準

化部分以外で

利益が出る仕

組みづくりを目

指している

16.4%

国際標準化へ

の対応の必要

性を感じている

が、何をしたら

いいのかわか

らない2.7%

特に国際標

準への対応

は必要ない26.0%

その他

0.0%

(n=73)

Page 22: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

21

調査結果(5)⑤人材確保における課題 海外における課題としては、「海外で経営・マネジメントを行う人材の不足」と「営業を行う人材の不足」を挙

げた企業が多く、海外での人材確保の困難さが示されている。 国内でも、「国内の人材不足」に続き、「自社の知名度の低さ」を挙げた企業が多く、その内訳を見ても、全

体的な人材の不足感が示されている。

質問:人材確保における課題は何ですか?(複数選択可)

図13.人材確保における課題

〔国内で不足している人材〕*アンケート自由記述内容より・設計技術者、デザイナー ・研究開発者・ICT関係の技術者 ・製造・組立担当・生産管理、品質管理担当 ・経理・財務担当・全般的に不足

41.1%

53.4%

42.5%

19.2%

12.3%

45.2%

8.2%

2.7%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

自社の知名度が低く、全体的に応募者が集まりにくい

海外で経営・マネジメントを行う人材が不足している

海外で営業を行う人材が不足している

海外で製造管理を行う人材が不足している

海外で研究開発を行う人材が不足している

国内の人材が不足している

その他

特に課題はない (n=73)

Page 23: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

22

調査結果(5)⑥情報収集における課題 海外関係では、「海外の市場動向、顧客ニーズの把握」と「海外の競合他社の動向の把握」を挙げた企業

が多く、海外における情報収集の困難さが示されている。 「国内の市場動向、顧客ニーズの把握」を挙げた企業も6割に達しており、国内であっても、ニッチな市場であ

るため、その市場動向、顧客ニーズの把握が困難であることが示されている。

質問:情報収集における課題は何ですか?(複数選択可)

図14.情報収集における課題

60.8%

33.8%

83.8%

59.5%

48.6%

1.4%

8.1%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%

国内の市場動向、顧客ニーズの把握

国内の競合他社の動向の把握

海外の市場動向、顧客ニーズの把握

海外の競合他社の動向の把握

海外の規制・ルールや標準化動向の把握

その他

特に課題はない(n=74)

Page 24: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

23

調査結果(5)まとめ GNT企業の戦略の方向性としては、「コア技術の深化」と「用途・顧客の拡大」の両方を探る企業が多い。 海外進出国の選択と集中が感じられ、課題は「規制や制度の違い」・「模倣品」が中心。 全体的に「人材の不足」と「市場や顧客ニーズ把握の困難さ」が見られ、国内・海外共通である。 第4次産業革命対応やデジタル化対応については、一定以上の取組が進んでいる状況。

総括収益性 ・企業業績は5年前と比較して全体的に向上している傾向となっており、事業環境も良好である企業が多い。

・営業利益率は製造業の平均より高い。研究開発費が売上高に占める割合は、大企業と同等以上。・コア技術の強化という縦の深化と用途や顧客の拡大などの横展開の両方を意識して取り組んでいる。

研究開発 ・コア技術の強化に対する意識が高い企業が多い。・ユーザーや大学と共同開発している企業が多く、海外企業等、海外との連携を進めている企業も少なくない。・研究開発を行える人材の確保や顧客ニーズの把握を課題として挙げた企業は多い。

グローバル化対応

・GNT100社の海外売上比率は44%であり、モノの輸出企業平均(30%)と比べると高い。・海外売上は伸びているが、販売国数や海外拠点はやや減少傾向。販売先の選択・集中が考えられる。・製造拠点は国内のみである企業は半数以下であるが、今後の方向性としては、国内を基本に考えている企業が多い。・海外での販売・商取引上の課題としては、「規制や制度の違い」と「模倣品」を挙げた企業が多い。

第4次産業革命やデジタル化対応

・人材不足への対応もあり、自動化等の省力化は進めている。・第四次産業革命/デジタル化/AI・IoTへの対応については、必ずしも強く意識されていないが、全体として一定以上の取組が進んでいる。

人材問題 ・人材確保における課題としては、海外関係では「経営・マネジメントを行う人材の不足」や「営業を行う人材の不足」を挙げた企業が多い。・「国内の人材不足」を挙げた企業も4割を超えており、必要な職種も様々であり、全体的な不足感が感じられる。それに関連して「自社の知名度の低さ」が応募者確保の難しさにつながっていると考えている企業も多い。

情報収集 ・情報収集における課題としては、「海外の市場動向、顧客ニーズの把握」を挙げた企業が最も多く、海外関係では、「海外の競合他社の動向の把握」を挙げた企業も多く、海外関係の情報入手の困難さを感じている企業は多い。・「国内の市場動向、顧客ニーズの把握」を挙げた企業も多く、国内であっても、市場動向、顧客ニーズの把握が困難であることが示されている。この背景には、発注元企業の動向変化などにより、市場予測が困難なことが考えられる。

Page 25: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

(参考)「隠れたチャンピオン」企業

24

Page 26: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

25

隠れたチャンピオン企業(1)隠れたチャンピオン企業とは ①定義・特徴 戦略・マーケティングのコンサルティング会社のサイモンクチャー&パートナーズの会長であり、北京の対外経済貿

易大学の名誉教授でもあるハーマン・サイモン博士は、著書“Hidden Champions of the 21st Century”(2009)の中で、「世界各地で大成功を遂げているのに、目立たない存在としてカーテンの陰に隠れ、時には意図的に秘密のままでいようとする企業が多数存在する。」と記している。

隠れたチャンピオン企業の定義と特徴定義 ・世界市場で3位以内に入るか、大陸内で1位である。

・売上高が50億ユーロ(6250億円*1ユーロ=125円換算)以下である。・世間一般には知られていない

特徴の総括 ・自社が定める市場を世界中で支配している。・規模の面で顕著な成長を遂げてきた。・著しい生存能力を持っている。・しばしば目立たない製品に特化している。・真のグローバル競争の担い手である。・成功しているが、奇跡の企業ではない。

市場への取組・集中化

・隠れたチャンピオンは通常、自社の市場を狭く定義し、その市場で強い地位を築いていく。・狭い市場定義が意味するのは、隠れたチャンピオンの世界市場が相対的に小さく、そのまま維持される。一部はスーパーニッチャーで世界シェアの70~100%を占め、新しい競合他社にとっては高い参入障壁となる。

・そうした市場の多くは断片化漠然としているが、隠れたチャンピオンは自社市場によく精通している。彼らは概して、専門化と、何よりも顧客との緊密な関係のおかげで、市場について卓越した直観的な理解を得ている。

・集中することで、狭い市場における深い問題解決やバリューチェーンへとつながる。・ソフトな多角化はリスクの最小化だけでなく、既存の強みをもっと活用につながる。

出所:定義は「Hidden Champions Globalization, Innovation, Success February 21. 2019」(ハーマン・サイモン氏レポート)より引用、特徴の総括及び市場への取組・集中化は「 Hidden Champions of the 21st Century 」(ハーマン・サイモン博士の2009年の著書、邦訳本のタイトル「グローバルビジネスの隠れたチャンピオン企業」 )より引用

Page 27: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

26

隠れたチャンピオン企業(1)隠れたチャンピオン企業とは ②具体的な企業-1 ハーマン・サイモン博士が“Hidden Champions of the 21st Century”の中で挙げた企業は以下のとおり。

表7.隠れたチャンピオン企業の例(日本企業以外)-1

企業名 国名 主な特徴

バーダー ドイツ 魚の処理システムのサプライヤーで、80%の世界シェアを有する。

スリービー・サイエンティフィック ドイツ 骨格モデルなど解剖学の補助教材の世界市場リーダー。テトラ ドイツ 水槽や養殖池用品のサプライヤーとして世界市場リーダー。

アーノルド&リヒター ドイツ 高品質映画カメラの世界市場リーダー。ザハトラー ドイツ カメラの三脚の世界市場リーダー。ランタル ドイツ 旅客機の内装の世界市場リーダー。

W.E.T. ドイツ 自動車のヒーティング技術の世界市場リーダー。

ベバスト ドイツ 遠隔操作の自動車暖房の世界市場リーダー。ゲレッツ ドイツ 劇場の緞帳、舞台諸幕、舞台装置を製造。大きな舞台用幕の世界唯一のメーカーとして100%

の市場シェアを有する。クライス ドイツ オルガンのメーカーとして世界中に知られており、多くの世界の有名な場所に納入されている。ブレインラボ ドイツ 外科用ナビゲーション・システムを供給。世界中に約3,000台のシステムを設置し、60%の世

界シェアを占めている。デロ ドイツ 工業用(エアバック・センサーやチップ用など)の接着剤メーカー。世界中の全ての携帯電話の

半数で用いられている。エネルコン ドイツ 風力タービン業界の主要メーカーの一つ。世界中の風力発電の特許の40%以上を保有する

技術リーダー。オミクロン ドイツ 走査型トンネル顕微鏡の世界市場リーダー。EOS ドイツ レーザー焼結システムの世界主要メーカー。ベルフォア オーストリア 火災や水害など災害復旧分野での世界市場リーダー。プランゼー オーストリア 耐火性金属とその化合物でつくる高機能材料の世界主要メーカー。ユングブンツラワー オーストリ

ア・スイスコカ・コーラなどに入っているクエン酸を供給するグローバル・リーダー。

ニヴァロックス スイス 腕時計内部の調節機構を製造し、世界市場シェアは90%にのぼる。

Page 28: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

27

隠れたチャンピオン企業(1)隠れたチャンピオン企業とは ②具体的な企業-2 ハーマン・サイモン博士が“Hidden Champions of the 21st Century”の中で挙げた企業は以下のとおり。

表8.隠れたチャンピオン企業の例(日本企業以外)-2

企業名 国名 主な特徴

エレクトロナイト ベルギー 鉄鋼業用センサーで展開している世界60ヵ国全てでトップシェアとなっている。(世界市場全体では、60%を占める)

SGS フランス 製品の検査と認証分野の世界リーダー。ペッツェル フランス ハーネス、フロントランプなど登山、洞窟探検などのスポーツや高所作業などの専門用品のグ

ローバル・リーダー。ディクソン・コンスタント フランス ブラインド、トラック・シートなど産業用繊維の世界市場リーダー。サエスゲッター イタリア 密閉した装置の真空状態の改善・維持を助けるゲッター材料のメーカー。バリウム・ゲッターの

世界シェアは85%。

アモリモ ポルトガル コルク製品とコルク・フローリングのグローバル・リーダー。ヘガネス スウェーデ

ン粉末冶金技術の世界の主要なサプライヤー。

ド・ラ・リュー イギリス イギリス最大のセキュリティ印刷および製紙会社で、150ヵ国以上の紙幣を作っている。

ヘガネス・コーポレーション アメリカ 鉄粉末で世界一のサプライヤー。マキルヘニー アメリカ 「タバスコ」は世界で最も有名で愛されているペッパーソースとして160ヵ国以上で販売されてい

る。ジマー、デピュイ、ビオメ アメリカ 尻、膝、その他の関節などを代替する整形外科用品のグローバル・リーダー。インタナショナルSOS シンガポー

ル国際緊急救助サービスのグローバル・リーダー。

エッセル・プロパック インド 歯磨粉用チューブで33%の世界シェアを持つ。

オリカ オーストラリア

鉱山や採石場用の爆薬の世界的なリーダー。

ガラガー ニュージーランド

羊や家畜を囲い込む電気柵の世界市場リーダー

エンブラエル ブラジル 地域間輸送用旅客機でトップの航空機メーカー。サッピ 南アフリカ 上質塗工紙と溶融性パルプで世界一。

Page 29: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

28

隠れたチャンピオン企業(1)隠れたチャンピオン企業とは ②具体的な企業-3(日本企業) ハーマン・サイモン博士が“Hidden Champions of the 21st Century”の中で挙げた企業は以下のとおり。

表9.隠れたチャンピオン企業の例(日本企業)

企業名 主な製品 世界市場での地位

オプトエレクトロニクス レーザー、バーコード、スキャナー No.2ミヤチテクノス 精密溶接 No.1ジャムコ 航空機用キッチンとトイレ No.1日本高純度化学 金コーティング用ファインケミカル No.1ニデック 眼科医療用機器 No.1東邦チタニウム チタン No.1ホソカワミクロン 集塵プロセス技術 リーダーの1社

日本写真印刷 小型タッチパネル No.1アルバック LCDパネル、コーティング装置 No.1浜松ホトニクス 光源 リーダーの1社SUMCO 30ミリのシリコン・ウエハー No.1ナナオ プレシジョン・ミニター リーダーの1社上村工業 HDDコーティング リーダーの1社日本製鋼所 原子炉収納容器 No.1

Page 30: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

29

隠れたチャンピオン企業(2)最近の動向:デジタル化対応 ①製造業 ドイツの隠れたチャンピオン企業は、 B to Bのデジタル化をリードしている面もあり、先進的な企業

例は以下のとおり。

出所:「Hidden Champions Globalization, Innovation, Success February 21. 2019」(ハーマン・サイモン氏レポート)より引用

企業名 概要

IFM Electronic サービスを重視するセンサーのスペシャリストとして設立し、世界85ヶ国以上の拠点を有する。センサーや産業用システムを主な製品とし、「Industry 4.0向けのポートフォリオを求める顧客への唯一のサプライヤー」を自認する。

SEW Eurodrive ベルトコンベアやプラント等で使用されるモータやギアモータ、それに対応するオートメーション技術、さまざまなサービスを扱い、世界50カ国に展開している。ロットのサイズ等について、ベストな選択ができると自認している。

Kärcher 家庭用及び業務用のトータル清掃・洗浄システムの製造・販売を行う企業。世界65ヵ国に拠点を持つ。40,000もの製品群を24時間で配達。

Knauf 鉱物繊維遮音板、石膏入り石膏入り乾式モルタルおよびセメント系外装石膏および絶縁材料を扱い、住宅・商業施設および産業機器における、省エネルギー性能と断熱ソリューションを提供。世界中に150以上の生産拠点を有する。

Trumpf レーザー発振器及び板金工作機械を製造する企業で世界70ヵ国に拠点を持つ。総合板金加工機メーカーのイノベータとして、シートメタル加工をリードしてきた。

ARRI 映像制作現場の要望を積極的に取り入れ、カメラやライト、レンズなど、高品質な製品を開発・製造してきた。ARRIのビジネスは製品開発や製造、販売にとどまらず、作品の制作全般にまでそのユーザーサービスを拡げている。

Page 31: グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題...令和元年6月 経済産業省製造産業局総務課 グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題

30

隠れたチャンピオン企業(2)最近の動向:デジタル化対応 ②ソフト/サービス業 ドイツの隠れたチャンピオン企業は、 B to Bのデジタル化をリードしている面もあり、先進的な企業

例は以下のとおり。

出所:「Hidden Champions Globalization, Innovation, Success February 21. 2019」(ハーマン・サイモン氏レポート)より引用

企業名 概要

Teamviewer リモートデスクトップ、デスクトップ共有、オンライン会議、Webセミナー、コンピュータ間のファイル転送用の独自のコンピュータソフトウェアパッケージの開発会社。全世界で累積18億のダウンロードと55万の有料法人ユーザーを獲得。

Fixmobility 新興の鉄道会社。これまで国営鉄道のドイツ鉄道が優位であった鉄道事業に参入。3年間で0から5億ユーロへ売上を伸ばし、26ヵ国で事業を展開。

Brainlab 医療用ソフトウェアおよび対応するプラットフォームの開発・製造販売を行っている企業で、脳神経外科領域においては、脳神経外科用ナビゲーションシステムをはじめて開発した企業として知られている。世界19か国に拠点がある。

Control expert 自動車保険金請求管理の分野における手動プロセスをデジタル化し、短時間で処理している。毎年900万件を超えるレポート、コスト見積もり、請求書、メンテナンス文書を処理している。13ヵ国で事業を展開。

Würth 自動車をはじめ運送・金属・電機・住宅・建設などの事業分野において、組立部品・メンテナンス・修理用品など10万点に及ぶ商品を扱っている。グループ会社400社以上を保有しており、世界86カ国にて事業を展開。夜間無人店舗を実現。

Wirecard 決済サービスに関するシステム提供や各種ソリューションを提供する多国籍企業。世界40カ国以上に拠点を持つ。フ世界200以上の国際的な支払いサービス、また100以上の取引通貨に対応している。売上15億ユーロ、時価総額は230億ユーロ。

RIB Software 建築、エンジニアリング、不動産およびプロセス業界の顧客に建設およびビルディングインフォメーションモデリング (BIM)ソフトウェアを提供している。5D仮想建設機能を有している。

Riskmethod ビッグデータモニタリングと機械学習AIを使用してサプライチェーンへのリスクを短期間で特定するサービスを提供。