プレゼンテーション: 土壌-植物系での放射性セシ …総説の構成...
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土壌環境研究領域・山口紀子
総説の執筆に着手した経緯
2011.7.8 キックオフミーティング資料より
能
総説の構成
土壌固相
土壌液相
植物
VI章:森林生態系
農地における土壌—植物系
放射性Csの貯留と内部循環
VII章:対策
V章:輸送
吸収抑制
III章:NH4+,
K+が支配する固液分配
IV章:植物吸収のメカニズム
II章:土壌固相での挙動
農地の土壌—植物系への流入源
除染・修復
農地をとりまく環境での自然の物質循環に由来する放射性Csの増減
II章 土壌中のCsの挙動と福島の土壌汚染状況
Csはなぜ土壌に強く固定されるのか
土壌のCs固定能力をどう評価するか
どのような土壌で固定能力が高いか
III章:土壌固相-液相間におけるCs の分配に関わる要因
土壌への陽イオンの吸着
Cs+ -
-
-セシウムは1価の陽イオン
土壌の負電荷に吸着
土壌の持つ負電荷の量
陽イオン交換容量Cation Exchange CapacityCEC (cmolc kg-1)
カルシウムなどの陽イオンが占有
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-
Ca2+
K+
137Cs+
-
土壌の負電荷を占有するのは、量が多いか親和性が強い陽イオン
セシウムを封じこめることができる負電荷サイトとの親和性で勝負!
放射性セシウムは、存在量では他の陽イオンにとてもかなわない
5000Bq=137Cs:1.6×10-9 g
134Cs: 1.0×10-10 g
-
Cs
わずかにしか存在しない放射性セシウムが他の陽イオンとの競合の中で優先的に負電荷に保持される理由
セシウムイオンを強くひきつける負電荷があると、水分子を排除して負電荷にさらに近づくことができる
水分子を排除したセシウムイオンは、粘土鉱物の
“くぼみ”にぴったりとはまりこむことができる
粘土鉱物(2:1型層状ケイ酸塩鉱物)の層と層の間(層間)
水分子
COO-
OO
COO
HO--
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有機物の負電荷は、セシウムを吸着できるが、吸着力は弱い
2:1型層状ケイ酸塩鉱物←層間に陽イオンを保持
Si四面体シート
直径0.26nmの穴(六員環)
水和していないCs+がジャストフィット
Si四面体シート
Al八面体シート
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層間
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フレイドエッジサイト
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風化層の末端がほつれて大きな水和イオンがはいりこめるようになる
Csに極めて選択的、一度捉えたCsを離さない
イライトバーミキュライト
雲母
陽イオンが入り込む余地がない
カリウムが占有
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フレイドエッジサイト
フレイド・エッジサイトに入り込むには水分子が邪魔!
イライトバーミキュライト
Cs+のほかに侵入できるのはK+, NH4+
親和性:Cs+>>NH4+>K+
土壌中の負電荷に占めるフレイドエッジサイトの割合は極めてわずか。
放射性Csの存在量も、ごく微量(たとえば5000Bq/kgのCs-137は陽イオン交換容量の1兆~10億分の1以下)
放射性Csにとっては十分すぎる量が存在。極めてCs選択性が高いことから、放射性Csを封じ込める支配要因
(陽イオン交換容量の0.001~1.4%程度)
200倍
1000倍
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フレイドエッジサイト
フレイドエッジサイトに到達するまでの道筋が、アルミニウム水酸化物や有機分子などによりふさがれているたどりつけない
Csが固定されるには時間がかかる(乾燥・湿潤の繰り返しが必要?)
放射性Cs降下からあまり時間がたっていない段階では、フレイドエッジサイト以外の負電荷にもCsが吸着
スメクタイト
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- -
土壌有機物の官能基、粘土鉱物構造末端等の表面水酸基
COO-
OO
COO
HO--
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-
Nakao et al., 2009 Eur, J. Soil Sci.,Dumat et al., 2000, Environ.l Sci. Technol. Wang&Staunton. 2010. Eur. J. Soil Sci.
分配係数 Kd=溶液中放射性Cs濃度
土壌中放射性Cs濃度
(L kg-1)
日本の水田・畑土壌 → 270~35730 L kg-1
( Kamei-Ishikawa et al., 2008, J. Radioanal. Nucl. Chem.)
すべての負電荷を評価負電荷量に対して過剰の放射性Csが存在する場合の指標
水 土壌への分配を評価する方法
土壌 溶液への分配を評価する方法
スメクタイト
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固定態
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風化雲母バーミキュライトイライト
土壌有機物の官能基、粘土鉱物構造末端等の表面水酸基
COO-
OO
COO
HO--
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交換態
1M 酢酸アンモニウム抽出(大量のNH4+でCs+を追い出す、フ
レイドエッジサイトへの再分配を抑制)
速
保持力
保持に要する時間 遅
強弱
RIP = KcFES
(Cs-K) × [FES]
土壌1kgあたりのFES量
フレイド・エッジサイト(FES)におけるCsのKに対する吸着選択係数(≒1000)
放射性セシウム捕捉ポテンシャル
Radiocesium Interception Potential
フレイドエッジサイト(FES)の137Cs親和性を評価する方法
Cremers et al. (1988) Nature
フレイドエッジサイト以外の負電荷を大量のCaを使ってマスク→フレイドエッジサイトにKを投入→Kと放射性Csを競合させる
土壌が放射性セシウムを固定する能力:
粘土鉱物・土壌のCECとRIP
バーミキュライトを多く含む土壌でRIPが高い傾向(Delvaux et al., 2000)
陽イオン交換容量(CEC)
フレイドエッジサイト
放射性セシウム捕捉ポテンシャル(RIP)
cmolc kg-1 mmol kg-1
カオリナイト* 5 0.0006 6
スメクタイト* 91 0.01 100
イライト* 25 1.2 11800
バーミキュライト(Vt) * 89 2.6 25900
Vtを含まない黒ボク土** 19 0.059 587
Vtを含む黒ボク土** 23 0.12 1186
CECとRIPに関連なし
*Nakao et al.(2008) Soil Sci. Plant Nutr. **山口ら(未発表)
CsがKより1000倍選択性が高いとみなして算出
RIPと移行係数の関係
ライグラスを土壌を変えて同じ条件で栽培
(Delvaux et al., 2000 Environ. Sci. Technol.)
RIPと移行係数に直線関係RIPの値が一桁小さい=TFが一桁大きい
土壌に137Csを添加して乾湿を繰り返すことで137Csを固定させる
植物のCs 吸収メカニズム、植物種・品種間差IV章
土壌固相
土壌溶液
根
NH4+
K+が促進
可食部
地上部
負電荷に捕捉
K+が抑制
輸送体による制御、植物種・品種間差
KとCsの吸収は競合関係にある
Kが増えるとCs吸収量が減る
CsはKと同じ輸送システムを経由して吸収される
K+
Kが不足
膜輸送タンパク質の発現が増大
土壌溶液濃度が1mMより高い場合は、K濃度と植物のCs吸収量に明確な関係があらわれない
Cs吸収量も増える
Smolders et.al., 1997, Environ. Sci. Technol.
植物体内でのCsとKの分布・移行は異なる(Tsukada et al., 2000, 2008,津村ら、1984によるイネの研究例)
Kは新たな葉身に移動しやすい
cf.Csは古い葉身にとど
まりやすい
相対的にCsはKよりも玄米に移行しやすい(絶対量は少ない)
玄米中濃度/全地上部中濃度Cs:11~23%、K:8~11%
Cs は穂ばらみ期~結実
初期にかけて、葉面に付着したCsは、玄米へ移行
植物種によってはKが不足すると、粘土鉱物に固定されたCsを吸収できる可能性がある
バーミキュライト、雲母に固定された137Csの吸収→ 最大2.8%
オオムギ>サツマイモ>トウモロコシ
>イネ>エンドウ(小島ら、1979 土肥誌)
鉱物の構成成分(ケイ酸)ごと溶かして、Kを獲得
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雲母の層間のK
イネ(リクトウ)、トウモロコシ
(杉山・阿江 2000 土肥誌)
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フレイドエッジサイトに固定された137Cs
V章:土壌‐地下水‐流域における放射性Cs の輸送過程
収穫、糞尿搬出、食肉搬出など
堆肥、飼料など風食、
飛散など
表面水(河川など)を通じた134+137Csの流出
地下水を通じた134+137Csの流出
地下水中の134+137Cs輸送
土壌中の134+137Cs輸送
水食・風食に伴う134+137Cs輸送
根域下への134+137Cs溶脱
湿性・乾性沈着など
植物根による134+137Cs吸収
粒子・懸濁態としての輸送が
主体
137Csは土壌粒子の輸送を把握するトレーサー
土壌との接触時間が短い場合や有機質土壌では溶存態としての輸送も無視できない
樹冠によるトラップ及び地表面への沈着
粘土鉱物への吸着
リターの分解
再吸収
落葉と共に地表面へ
降雨による洗い流し
その他の森林生物への移行・濃縮
VI章:森林生態系における放射性Cs の動態
効率的に養分を再循環させる仕組により生態系内部で放射性Csが循環
動きやすい形態で放射性Csが保存される特徴
米国北東部の温帯林の例K要求量リター分解:87%母材の風化:11%落葉前の養分の引き戻し:4%
VII章:作物可食部への移行を抑えるための対策
1.取り除く(除染)
2.薄める
3.閉じ込める
表土除去、ファイトレメディエーション、微粒子の除去、(リーチング)
耕起、深耕
天地返し、資材施用
土壌側からはたらきかける方法
1.品種(作目)の選択
2.K施肥
土壌にKが十分に存在する場合は効果は小さい。
Kによる土壌からの溶出促進とのバランスも考慮する必要
Kのうち0.0117%が放射性の40Kである。(塩化カリウム肥料1kgは、約15,000 Bqの40Kを含む)
今後の試験研究・対策に向けて必要なこと
農業環境における放射性Cs汚染拡大の防止と環境回復
農作物における放射性Csの移行の予測と低減化
農業従事者の被ばく線量管理
汚染した作物体の処分およびそのための技術開発
移行モデルの構築
日本土壌肥料学会 土壌・農作物等への原発事故影響WG農業環境における放射能汚染への低減化に関する提言より