アミン・チオールの反応tnagata/education/ochem1/2019/ochem1...アミンの分類 n h c h n...
TRANSCRIPT
アミン・チオールの反応
1
アミンとは何か
アンモニア NH3 の一つ以上の水素原子を有機置換基で置き換えたもの
アミン
NH
HH
NH
CH3H
NCH3
CH3H
NCH3
CH3CH3
アンモニア メチルアミン ジメチルアミン トリメチルアミン
注:N に結合した炭素原子に結合しているのは炭素・水素のみであること
N C N CO
炭素・水素のみ酸素二重結合=「アミド」(アミンとは全く違う性質)
2
アミンの命名法
NH
CH3CH2H
NC
CH3CH2C
CH3CH3
H
HCH3
CH3
NCH2CH3
CH3CH2H
「アミン」の前に置換基名を置く
エチルアミン ジエチルアミン エチルジイソプロピルアミン
「エチル」基が2個
「エチル」基が1個、「イソプロピル」基が2個
ethylamine diethylamine ethyldiisopropylamine
("amine" の前や置換基名の間に空白を入れない ※ エーテルの命名法とは異なる)
3
アミンの分類
NH
CH
NC
CH
NC
CC
一級アミン 二級アミン 三級アミン
・窒素原子に結合している炭素原子の数によって分類
・脂肪族アミンと芳香族アミン
NC N
脂肪族アミン 芳香族アミン
N に結合している炭素原子がすべて sp3
N に芳香環が結合
4
アミノ基
NH
HNCH2CH3
CH2CH3NCH3
H
・「NH2」を置換基として呼ぶ名称=「アミノ基」
アミノ基 メチルアミノ基 ジエチルアミノ基
・化合物名称の一部としても使うことがある
N OHCH3
CH33-ジメチルアミノ-1-プロパノール例:
5
アミンの塩基性アミンは塩基性を示す
NH
CH3H
+ H Cl NH
CH3HH Cl+
メチルアミン メチルアンモニウムカチオン
「アンモニウム」NH4+ の H が一つ「メチル基」で置換された、という意味
カチオン=陽イオン
6
アンモニウムカチオン
NHH
HHNHCH3CH2
HHNCH2CH3CH3CH2
HH
NCH2CH3CH3CH2
CH2CH3H
NCH2CH3CH3CH2
CH2CH3CH3CH2
アンモニウムカチオン
エチルアンモニウムカチオン
ジエチルアンモニウムカチオン
トリエチルアンモニウムカチオン
テトラエチルアンモニウムカチオン
(一級アンモニウム) (二級アンモニウム)
(三級アンモニウム) (四級アンモニウム)
7
アンモニウムカチオンとアンモニウム塩
NH
CH3H
+ H Cl NH
CH3HH Cl+
「塩化メチルアンモニウム」
アンモニウムカチオン(陽イオン)とアニオン(陰イオン)が対を作ったイオン性の物質
アンモニウム塩
[名前の付け方](無機化合物の塩と同じルール)アニオン名とアンモニウムカチオン名を並べる(英語ではカチオン名が先)
NCH2CH3CH3CH2
CH2CH3CH3CH2
HSO4–硫酸水素テトラエチルアンモニウムtetraethylammonium hydrogen sulfate
8
アンモニウム塩の書き方いろいろ 溶液中の状態(イオンが解離している)
溶媒を蒸発させた状態(イオン結合性の物質=塩)
このように書くこともある(「メチルアミン塩酸塩」とも呼ばれる)
NH
CH3HH Cl+
NH
CH3HH Cl
NH
CH3H• HCl
NH
CH3H
HCl
これはダメ!(N と Cl の間に共有結合はない)
9
脂肪族アミンの塩基性
NHH
HHNHCH3CH2
HHNCH2CH3CH3CH2
HHNCH2CH3CH3CH2
CH2CH3H
アミンの塩基性の強さ=共役酸の pKa からわかる
9.4 11.2 11.0 11.1
・脂肪族アミンはアンモニアより少し強い塩基・一級・二級・三級アミンの塩基性はほぼ同じ
(共役酸の pKa が大きいほど強い塩基)
10
芳香族アミンの塩基性
NHH
H
芳香族アミンの塩基性は脂肪族アミンと比べて著しく低い
pKa = 4.6
NH
HNHH
H
H+
ローンペア電子の非局在化 ローンペアがなくなる=非局在化効果がなくなる
非局在化効果が小さくなる
NH
CH3CH2H
NHCH3CH2
HH
H+
非局在化効果は変わらない
= H+ を受け取りたくない
脂肪族アミン:
11
アミンの反応
脱離基としてのアミノ基
求核剤としてのアミノ基
四級アンモニウムの脱離反応
12
アミンの N は脱離能が低い
NH
CH3H
+ OH OHCH3 + NH2
極めて塩基性が高い→脱離能が低い
NH2NH336
���
�������
pKa
NH3
9.4
NH4
極めて塩基性が高い プロトン化してもまだ高い
13
アンモニウムの N は脱離できるか
NCH3CH2 + OHHH
HNCH3CH2H
H+ H OH
脱離基になれる? H+ の脱離が優先してしまう
C‒N は切れない=脱離基になれない
四級アンモニウムカチオンなら脱離基になれる
NCH2CH3CH3
CH3
+ OHCH2H
脱離基になれる? C‒N が切れた=脱離基になれた
(H+ がない)
CH2CH2 NH3C
CH3H3C
+ + H OH
14
求核剤としてのアミノ基アミンの N は求核剤として働く
BrCH3CH2 + NH2CH3CH2 NHCH3CH2
HCH3CH2+ Br
N 上のローンペアが求核反応を起こす
N 上にプラスの形式電荷が残る
(アンモニウムカチオン)
NHCH3CH2
HCH3CH2+
O O
O
塩基で H+ を除く
N HCH3CH2
CH3CH2+
HO O
Oアルキル基が一つ増えたアミン
15
ハロゲン化アルキルとアミンの反応
CH3CH2 NH2CH3CH2 Br
BaseNH3
CH3CH2 Br
BaseCH3CH2 NH
CH3CH2
CH3CH2 Br
Base
CH3CH2 NCH3CH2
CH2CH3 CH3CH2 BrCH3CH2 N
CH3CH2CH2CH3
CH3CH2Br
ハロゲン化アルキルとアミンの反応(アミンのアルキル化)
一級アミン 二級アミン
三級アミン 四級アンモニウム塩
16
四級アンモニウム塩は多くの用途を持つ
・帯電防止剤
・相関移動触媒
・殺菌剤
(CH2)17 NCH3CH3
CH3CH3 Cl
N (CH2)15 CH3Cl
・陰イオン交換樹脂
CH2 NCH3CH3
CH3
CH CH2 n
Cl
N(CH2)7
CH3
(CH2)7
(CH2)7
CH3
CH3
CH3Cl
17
【練習問題】下の反応の機構を巻き矢印で書き、生成物を書きなさい。また、生成物の名称を書きなさい。
Cl+ N CH3
H3C
H3C
18
四級アンモニウムカチオンのE2反応
NCH2CH3CH3
CH3
+ OHCHH
CH3Δ
NH3C
CH3H3C
+ + H OHCH3CH CH2
四級アンモニウムカチオン 強塩基 加熱 アルケン 三級アミン
NCH2CH3CH3
CH3CHH
CH3 + OH NH3C
CH3H3C
+ + H OHCH3CH CH2
Hofmann (ホフマン)脱離
反応機構(E2 反応)
19
Hofmann 脱離の位置選択性
CH3 CH CH2 CH3Br
+ OH CH3 CH CH CH3 + H OH+ Br
CH3 CH CH2 CH3N
+ OH
CH3 CH3CH3
CH2 CH CH2 CH3 + H OH+ NH3C
CH3H3C
通常の E2(ハロゲン化物イオンが脱離基)
Hofmann 脱離(三級アミンが脱離基)
置換基の多いアルケン
置換基の少ないアルケン
不安定な生成物が優先する? → 遷移状態の安定性の差による
20
Hofmann 脱離の位置選択性
CH2 CH CH2 CH3N
CH3 CH3CH3
H OH
CH2 CH CH2 CH3N
CH3 CH3CH3
H OH
δ–CH2 CH CH2 CH3
NH3C
CH3H3C
H OH
脱離しにくい脱離基
カルボアニオン類似の遷移状態
(アルキル基が少ない方が安定)
H+ の引き抜きの方が優先する
21
Hofmann 脱離の応用
Br NH3CCH3
CH3Br
N(CH3)3 Ag2O, H2O
Δ+ N(CH3)3 + H2O
四級アンモニウムの生成
Ag+ を使って対イオンを ‒OH に交換
NH3CCH3
CH3OH
AgBr+
Hofmann 脱離
22
【練習問題】次の反応の各段階について説明しなさい。
NCH3
CH3I Ag2O, H2ON
CH3H3CN
CH3H3C
I–N
CH3H3C
OHΔ
23
チオール・スルフィド
チオールの構造と性質
スルフィドの構造と性質
24
チオールの構造
メルカプト基 SH を持つ化合物
チオール
※ 「メルカプト」=水銀 (mercury) を捕獲する (capture)
CH3CHCH2SHCH3 CH2CH2SHHO
エタンチオール
CH3CH2SH
2-メチル-1-プロパンチオール
2-メルカプトエタノール(「2-ヒドロキシエタンチオール」ではない)
25
チオールの特徴
CH3CH2SH CH3CH2OHbp. 37 °C bp. 78 °C
CH3CH2SH CH3CH2OHpKa = 15.9pKa = 10.6
・(アルコールと比べて)沸点が低い
・(アルコールと比べて)酸性度が高い
(水素結合が弱いため)
(ローンペアの電子反発が小さく、共役塩基が安定なため)
26
チオラートアニオン
CH3CH2SH + NaH CH3CH2S + Na + H2
チオラートアニオン(チオールの共役塩基)
よい求核剤として働く(特にプロトン性極性溶媒中で)
CH3CH2 S + CH3CH2 BrCH3OH
CH3CH2 S CH2CH3 + Br
27
チオールの用途強い悪臭を持つ!
SH SH スカンクの悪臭成分
SH 都市ガスの臭い成分
※ チオールの悪臭は酸化剤で消臭できる
S HR S SR R SR OH SROH
O, ,
[O]etc.
28
スルフィドの構造
エーテルの酸素結合を硫黄に置き換えたもの
スルフィド
CH3 S CH3 CH3C
H3CH3C
S CH3 S CH3
ジメチルスルフィド t-ブチルメチルスルフィド
フェニルメチルスルフィド
(チオアニソール)
29
スルフィドの反応
CH3 S CH3 + CH3 I SH3C
CH3H3C
+I
スルフィドの S 原子は比較的高い求核性を持つ
ヨウ化トリメチルスルホニウム
一方、スルフィドは SN2 反応の脱離基としても機能する
SH3C
CH3H3C
+ + OH SH3C
H3CCH3 OH+
※ アルケンの生成には適さない(スルホニウムイリドが生成する)
30