s 2 反応の特徴tnagata/education/ochem1/2019/ochem1...ハロゲン cl ‒, br‒, i‒...
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・求核剤の種類(つづき)
SN2 反応の特徴
・溶媒効果
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求核剤の種類(復習)求核剤:ローンペアを持つ化学種は(原理的には) すべて求核剤になり得るローンペアを持つ原子 負電荷を持つもの 電荷を持たないもの
酸素 ‒OH, ‒OR, RCOO‒ H2O, ROH(※)
イオウ ‒SH, ‒SR H2S, RSH(※)
窒素 ‒NH2, RNH‒, R2N‒ NH3, RNH2, R2NH, R3N
炭素 ‒C≡N, RC≡C‒ (なし)
ハロゲン Cl‒, Br‒, I‒ (なし)
(※)の求核剤はハロゲン化アルキルとの SN2 を通常起こさない(求核性が低いため)
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求核剤の反応性:塩基性の影響(復習)
塩基性が高いほど求核性も高い
同周期の原子の場合
負電荷を持つ化学種は、電荷を持たない化学種よりも求核性が高い
HO > H2O
HO > CH3COO
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求核剤の反応性:周期の異なる原子の場合は?
HO HS
どちらが反応性高い?
(塩基性は HO‒ の方が高いが……?)
実は「溶媒」に依存する
CH3OH 中: HO < HS
CH3CN 中: HO > HS
(プロトン性溶媒)
(非プロトン性溶媒)
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分極率と求核性
HS → ローンペアの原子軌道が大きい= 電子が動きやすい(分極率が大きい)
C
H
HH
HS X
�����
δ– δ–CH
HH
HO X
�����
δ– δ–
「遷移状態」の結合の強さ
分極率が大きいほど、遷移状態の「長い結合」に適応しやすい→ 求核性が高い
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周期の異なる原子の求核性
HO HS対
求核性を決める要因塩基性
分極率
(HO‒ が高い)
(HS‒ が高い)
どちらが優先する?
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求核性に対する溶媒効果CH3OH 溶液中
O HCH3 OHHO‒ は水素結合を受ける
反応性落ちる
分極率の高い HS‒ が優先
CH3CN 溶液中
水素結合は起きない
塩基性の高い HO‒ が優先
(プロトン性極性溶媒)
(非プロトン性極性溶媒)
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プロトン性極性溶媒と非プロトン性極性溶媒プロトン性極性溶媒 =強く正に分極した水素原子を持つ溶媒
(水素結合供与体である溶媒)
CH3OH CH3CH2OH CH3COOH����� ����� ��
非プロトン性極性溶媒 =プロトン性でない極性溶媒
OCH3CN H N
CH3
CH3O
SO
���� ������ N,N-������ ��
���������
(DMF) (DMSO)
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【練習問題】次のそれぞれの組み合わせにおいて、どちらの反応がより速く進行するか。理由をつけて答えなさい。
CH3CH2Br CH3CH2Br +(a) + CH3 O CH3 S��������
CH3CH2Br CH3CH2Br +(b) + CH3 O CH3 S�DMF��
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SN2 反応の溶媒効果
今度は、同じ求核剤について、溶媒を変えた時の反応速度の違いを考える
CH3OH 溶液中
CH3CN 溶液中
ヘキサン溶液中
CH3 Br + HO
どの溶媒が最も適している?
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溶媒を三種類に分類するプロトン性極性溶媒 =強く正に分極した水素原子を持つ溶媒
非プロトン性極性溶媒 =プロトン性でない極性溶媒
非極性溶媒 =分極した結合を持たない溶媒 (当然非プロトン性)
CH3OH CH3CH2OH CH3COOH����� ����� ��
OCH3CN H N
CH3
CH3O
SO
���� ������ N,N-������ ��
���������
(DMF) (DMSO)
CH3(CH2)4CH3
���
CH3
�� ���
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プロトン性極性溶媒
OH
δ–
δ+O
Hδ–δ+
CH3
OH
CH3OH
CH3
δ+δ–δ+
δ–
CH3
�����
– +O
HCH3
δ+δ–
OH
δ–δ+CH3
OH
CH3
δ+δ–O
H
δ–
δ+CH3
�����
(アニオン=陰イオン) (カチオン=陽イオン)
例:メタノール
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非プロトン性極性溶媒
SCH3
H3CO
SCH3
CH3O
SH3C
CH3O
SH3C
CH3
O
�����
+
S CH3H3C
O
SCH3
CH3O
SH3C CH3
O
SH3C
H3CO
�����
–
(アニオン) (カチオン)
例:ジメチルスルホキシド (DMSO)
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非極性溶媒
�����
–
�����
+
(アニオン) (カチオン)
例:ベンゼン
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SN2
反応座標
エネルギー非極性溶媒
非プロトン性極性溶媒
プロトン性極性溶媒
遷移状態
CBrH
HH+ HO
CH
HH
OHBrδ–δ–
C OHH
HH
+Br
SN2反応(アニオン性求核剤)
非極性溶媒>非プロトン性極性溶媒>プロトン性極性溶媒
イオンの安定化
差が小さい
反応が速い順=活性化エネルギー(山の高さ)が低い順
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【練習問題】次の反応は SN2 機構で進行する。溶媒として DMSO を使う理由を説明しなさい。
Br NaCN
DMSOCN
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・酸素求核剤 (‒OH, ‒OR)
さまざまな求核剤による SN2 反応
・硫黄求核剤 (‒SH, ‒SR)・炭素求核剤 (‒C≡N, ‒C≡CR)・窒素求核剤 (NH3, NH2R, NHR2, NR3)・ハロゲン求核剤 (I‒, Br‒, Cl‒, F‒)
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酸素求核剤による SN2 反応 (1)
+ HO– + BrCH3CH2 Br CH3CH2 OH
アルコール水酸化物イオン
・H2O では求核性が足りない。HO‒ が必要。
・脱離反応(あとで学ぶ)との競争に注意。
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酸素求核剤による SN2 反応 (2)+ RO– + BrCH3CH2 Br CH3CH2 ORアルコキシド(フェノキシド) エーテル
・アルコール(フェノール)では求核性が足りない。共役塩基が必要。
・脱離反応(あとで学ぶ)との競争に注意。
(Williamson のエーテル合成)
ROH + NaH RO– Na+ + H2
+ NaOH Na+OH O + H2O
水素化ナトリウム(強塩基)
フェノールはアルコールより酸性が強いのでNaOH で共役塩基にできる
・化学の研究現場では非常に出番の多い反応です
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硫黄求核剤による SN2 反応
+ HS– + BrCH3CH2 Br CH3CH2 SH
+ RS– + BrCH3CH2 Br CH3CH2 SR
チオール水硫化物イオン
チオラート チオエーテル
・H2S や RSH では求核性が足りない。共役塩基が必要。RSH + NaH RS– Na+ + H2
NaOH でもできなくはないが、NaH が無難
・チオールは独特の性質が多くある(詳しくは有機系の研究室で!)
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炭素求核剤による SN2 反応
+ C N C N + BrCH3CH2 Br CH3CH2
+ C CR C CR + BrCH3CH2 Br CH3CH2
シアニド ニトリル
アセチリド アルキン
・ニトリルは溶媒などで広く使われる(例:アセトニトリル=CH3CN)・ニトリルはカルボン酸の原料にもなる
C NCH3CH2H2O, H2SO4
��CCH3CH2
O
OH
・アセチリドの反応は既出。炭素-炭素結合の生成に役立つ。
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窒素求核剤による SN2 反応 (1)
CH3CH2 Br + NH3 CH3CH2 NH3 + Br–
アンモニア アンモニウムイオン
CH3CH2 NH2 + BaseH
CH3CH2 NH2 + H–Base
(塩基) アミン
・NH3 は電荷を持たない状態でも十分な求核性を持つ(逆に、共役塩基の ‒NH2 は塩基性・求核性が強すぎて使いにくい)
・NH3 が反応すると、正電荷をもつ「アンモニウムイオン」になる
・「アンモニウムイオン」から塩基が H+ を取り去って、アミンが生成する
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窒素求核剤による SN2 反応 (2)CH3CH2 NH2
CH3CH2 BrBase
CH3CH2 NHCH3CH2
CH3CH2 Br
Base
CH3CH2 NCH3CH2
CH2CH3CH3CH2 Br
CH3CH2 NCH3CH2
CH2CH3
CH3CH2Br–
一級アミン 二級アミン
三級アミン 四級アンモニウム塩・アミンの「○級」は、窒素原子に結合している炭素原子の数を表す・一級~三級アミンは、塩基で H+ を取り去って、電荷を持たない生成物として得る・四級アンモニウム塩は、正電荷をもつ形しか存在しないので、対イオンとともに「塩」として得る
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ハロゲン求核剤による SN2 反応
+ I– + BrCH3CH2 Br CH3CH2 I
・脱離したハロゲン化物イオンも求核剤として反応できる→ 平衡になる。単一生成物を得るのは困難。
+ NaBrCH3CH2 Br CH3CH2 INa++ I+����
・アセトン溶媒中で NaI を使うと、NaBr がアセトンに不溶なので、平衡が右に移動し続け、反応が完結する。
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【練習問題】下の反応がどのように進むか説明しなさい。
O
CH3O
OH
OH
OH
C8H17Br (3 eq.)
K2CO3 (3 eq.)DMF
O
CH3O
OC8H17
OC8H17
OC8H17
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【練習問題】下の化合物を Williamson エーテル合成で作るには、何を出発物質にすればよいか。
CH3C
H3CH3C
O CH2CH2CH3
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