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シェアリングエコノミーが与える影響 ~事業環境の変化をビジネス機会とするために~ 20196みずほ銀行 産業調査部

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Page 1: シェアリングエコノミーが与える影響 - Mizuho Bank...(出所) PwC, The sharing economy、シェアリングエコノミー協会「シェアリングエコノミー市場調査

シェアリングエコノミーが与える影響 ~事業環境の変化をビジネス機会とするために~

2019年6月 みずほ銀行 産業調査部

Page 2: シェアリングエコノミーが与える影響 - Mizuho Bank...(出所) PwC, The sharing economy、シェアリングエコノミー協会「シェアリングエコノミー市場調査

1

目次

1.シェアリングエコノミーの背景 P2

2.シェアリングエコノミーの拡大が もたらすビジネスモデルの変化 P9

・ビジネス領域の拡大 ・モノの所有者の変化 ・プラットフォームビジネス

おわりに P29

Page 3: シェアリングエコノミーが与える影響 - Mizuho Bank...(出所) PwC, The sharing economy、シェアリングエコノミー協会「シェアリングエコノミー市場調査

1.シェアリングエコノミーの背景

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3

シェアリングエコノミーの“復権”

産業革命以降の「大量生産・消費型経済」の時代を経て、『活用度の低い資産や時間を有効活用するた

めの「シェアリング」』として新しいシェアリングエコノミーが拡大

第1次産業革命 1800年前後

大量消費型経済 シェアリングエコノミー

共有経済・交換経済・贈与経済 (シェアリングエコノミー)

蒸気機関の活用 電力利用

大量生産開始 コンピュータによる生産自動化

(出所)各種資料よりみずほ銀行産業調査部作成

現在

供給力不足をカバーするための 「シェアリング」

供給力の 驚異的な拡大

活用度の低い資産や時間を 有効活用するための「シェアリング」

ITの発展

大量の低稼働資産

シェアリングエコノミーの復権

1. シェアリングエコノミーの背景

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4

大量生産・消費型経済の限界と新たな価値観の登場

大量生産・消費型経済に伴う資源の浪費は、既に地球全体で賄えるレベルを超過

一方、リーマンショックを契機に「新しい消費」の考え方が、ミレニアル世代を中心に普及・浸透

新興国を中心とした中間層の急激な増加

1.7個

地球

世界人口がその国と同様の生活をした場合

2.9個

地球

5.0個

地球

大量生産・消費型経済の限界 (注)エコロジカル・フットプリント(人間による環境負荷)とバイオキャパシティ (地球環境が本来持っている生産力や廃棄物の収容力)を比較して算出したもの (出所)GFN, Global Footprint Network National Footprint Accounts 2018より みずほ銀行産業調査部作成

1年間に消費した地球資源 現状

1年間に消費する地球資源(想定) 将来

経済危機による価値観の変化

(出所)各種資料よりみずほ銀行産業調査部作成

CLOSE 失業

穴を開けられる モノが欲しい

より価値のあるものを安く 自分だけのものを持ちたい

経済危機

価値観の変化

穴を開けたい

資産価値下落 / 所得減少

1. シェアリングエコノミーの背景

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5

Internet of Thing

テクノロジーの発展により取引コストが低下

テクノロジーの進展によって、世界中で瞬時に様々な情報交換が容易になり、取引コストが低下

インターネット利用人数

35.8億人 (2017年)

移動通信体サービス契約数

78.4億契約 (2017年)

IoTデバイス数

274.9億台 (2017年)

(出所)総務省「平成30年情報通信白書」等よりみずほ銀行産業調査部作成

テクノロジーの発展 様々な情報交換が容易に

1. シェアリングエコノミーの背景

IoT進展による容易なマッチング

ネット上での「信用」構築(口コミ)

瞬時にあらゆるニーズを マッチングすることが可能に

Facebook等の実名性SNS、口コミや交友関係等の 個人の信用関連情報

1

2

GPSや各種センサー等の 精度向上や小型化

顔が見えない相手とも 安心して取引が可能に

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個人の貸借を仲介するシェアリングビジネス ~AirbnbとUber~

AirbnbやUberは、貸し手と借り手の「情報」と「利用」を仲介する機能を担う ― 貸し手は、シェアリング対象財を所有し、空き時間を利用可能時間として利用者にサービスを提供 ― 利用者は、シェアリング対象財を所有せず、利用した分だけ料金を支払う

(出所)各社HP等よりみずほ銀行産業調査部作成

貸し手 (ホスト)

借り手 (ゲスト)

ホスト手数料 ゲスト手数料

情報 部屋情報登録

情報 部屋情報閲覧

予約リクエスト

部屋

利用

情報 ドライバー情報登録

情報 ドライバー情報閲覧

宿泊料金 宿泊料金

貸し手 (ドライバー、

タクシー会社等)

借り手 (利用者)

手数料

配車リクエスト

輸送サービス

利用

利用料金 利用料金

シェアリング企業 (情報・利用仲介機能のみ)

シェアリング企業 (情報・利用仲介機能のみ)

Airbnbの基本構造 Uberの基本構造

Airbnb Uber

1. シェアリングエコノミーの背景

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7

特定

特定

不特定

不特定

時間・分

シェアリング対象財の利用期間

貸し手 借り手

貸し手と借り手の特定・不特定

IoT進展による 容易なマッチング

拡大

拡大

ネット上での 「信用」構築

カーリース

機器リース

年 月・日

既存シェアリングビジネス 新シェアリングビジネス

ファウンドリ (ファブレス)

工場遊休時間シェア

シェアリングリース (例:農機)

カーシェア

ライドシェア

ホームシェアリング

レンタカー

貸会議室

スペースシェア

タクシー

個人間物品レンタル

ホテル・旅館

(出所)みずほ銀行産業調査部作成

きめ細かい“共有(シェア)”と“分散型信用”によるビジネス領域の拡大

物品レンタル

1. シェアリングエコノミーの背景

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メガトレンドから発生したシェアリングエコノミーは今後も拡大

(出所)みずほ銀行産業調査部作成

社会・経済構造の変化 テクノロジーの発展 資源・環境問題の深刻化

気候変動 (地球温暖化、異常気象)

資源不足 (エネルギー、食糧、水等)

ミレニアル世代の意識変化 (モノの利用を重視)

都市人口密度の上昇

IoT進展による マッチング技術の向上

インターネット上での 信用構築

シェアリングエコノミーの拡大は継続

メガトレンド メガトレンド メガトレンド

IoTをはじめとするテクノロジーの発展や社会・経済構造の変化、資源・環境問題の深刻化を踏まえると、「シェアリングエコノミー」の拡大は不可逆な流れ

メガトレンドとシェアリングエコノミー

ストレンジャー・シェアリングに 伴う取引コストが低下 資産有効活用ニーズの高まり シェアリングし易い環境の拡大

1. シェアリングエコノミーの背景

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2.シェアリングエコノミーの拡大が もたらすビジネスモデルの変化

・ビジネス領域の拡大 ・モノの所有者の変化 ・プラットフォームビジネス

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様々な分野でのシェアリングの広がり

プラットフォーム(イメージ)

マッチング

モノ・サービス

対価

供給者登録プ-ル

需要者登録プ-ル

需要者 供給者

様々な分野でのシェアリング事例

・ ・ ・

・ ・ ・

シェアリングの対象となるのは、多種多様な「モノ」に加えて、「スキル」や「資金」も含まれる 「協働しつつ●●をする」という新しい形態のビジネスモデルであり、モノに限らない様々な分野で需要

者と供給者をマッチングさせるプラットフォーマーが台頭してきている

アセットシェアリング 協働しつつ【購入】

仮想(暗号)通貨 協働しつつ【信用創出】

クラウドファンディング 協働しつつ【資金提供】

クラウドソーシング 協働しつつ【研究開発】

ギグ(単発仕事)サービス (フードデリバリー・ライドヘイリング等) 協働しつつ【雇用】

(出所)みずほ銀行産業調査部作成

プラットフォーマー 運営者

2. ビジネスモデルの変化 ビジネス領域の拡大

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シェアリングビジネスの市場規模は、2025年に全世界で$335bn(CAGR32.6%)と大幅に拡大する見

通し。日本においても2025年度には3.7兆円となる見込み カテゴリ別では、モノのシェアリングビジネスが65%を占める

モノ 65%

スキル 11%

資金 24%

シェアリングビジネスの市場規模 ~世界規模で急拡大する予測~ 2. ビジネスモデルの変化

シェアリングビジネスの市場規模予測 カテゴリ別の日本市場シェア

(出所) PwC, The sharing economy、シェアリングエコノミー協会「シェアリングエコノミー市場調査 2018年版」よりみずほ銀行産業調査部作成

市場規模 (2018年度)

1.9兆円

シェアリングビジネスは 「モノ」が65%を占める

ビジネス領域の拡大

CY2013 CY2025

$15bn

$335bn

0

100

200

300

400($bn)

0

2

4

6

8

FY2030 FY2018 FY2025

1.9兆円

3.7兆円

5.8兆円

(兆円) 全世界 日本

CAGR 11.8%

CAGR 32.6%

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【ご参考】 日本でも様々な領域でシェアリングビジネスが登場

日本でも、様々な企業によるシェアリングビジネスの創業が増加 さらに、異業種(大手通信事業者等)や、海外企業(中国ライドシェア大手等)の参入も相次ぐ

(注)表における「×」は提携を意味する (出所)各種資料よりみずほ銀行産業調査部作成

シェアリング企業 異業種参入 海外企業参入

民泊 百戦錬磨 民泊・駐車場 楽天 民泊 [米国]Airbnb

空間 スペースマーケット 駐車場 リクルート 民泊 [中国]途家(トゥージア) ×[日本]楽天

駐車場 akippa 自転車 ・カーシェア NTTドコモ 民泊 [米国]Expedia

×[日本]楽天

カーシェア タイムズ24 自転車 ソフトバンク 民泊 [和蘭]Booking.com ×[日本]楽天

洋服 エアークローゼット 高級車 DeNA 自転車 [中国]摩拝単車(Mobike) ×[日本]札幌地元企業

ブランドバッグ ラクサス・テクノロジーズ 工場・倉庫 三菱商事 自転車 [中国]ofo ×[日本]ソフトバンク

印刷工場・運送 ラクスル 建設機械 豊田通商 タクシー配車 ・ライドシェア

[米国]Uber

倉庫 SOUCO 海運 三井物産 ×ウェザーニュース

タクシー配車 ・ライドシェア

[中国]滴滴出行 ×[日本]第一交通産業

フリマ・自転車 メルカリ オフィス JINS オフィス [米国]WeWork

日本のシェアリングビジネスへの参入企業

2. ビジネスモデルの変化 ビジネス領域の拡大

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日本:倉庫の空きスペースを活用した物流施設のシェアリング ~souco~

soucoは空きスペースがある倉庫と利用希望者をマッチングし、最短1日から提供可能な仕組みを構築 通常の倉庫のレンタルが長期であることは、物流の非効率さを生む要因の一つになっており、倉庫のシェ

アリングを活用することで、より柔軟な物流網の構築が可能に

(出所)souco HP等よりみずほ銀行産業調査部作成

空きスペースを活用した物流施設のシェアリング

2. ビジネスモデルの変化

・倉庫のレンタル契約は3~5年が通常で最短でも1年 ・余分にスペースを確保する必要があり、ムダが多い 課題

倉庫提供者と利用希望者をマッチング ~ 必要なスペースを必要な日数だけ提供 ~

<想定される使い道>

季節性のある商品

イベント等の一時在庫

急な在庫発生時

<簡易な手続き&リスク低減>

契約書の定型化

各種保険を契約に包含

料金は前払い制

利便性の高い仕組みを構築

souco

「soucoのビジネスモデル」

契約 保険 決済

倉庫 提供者

利用 希望者 倉庫提供

登録 紹介

支払い

支払い

ビジネス領域の拡大

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日本:定額制での女性向け高級かばんのシェアリング ~ラクサス~ Laxusは、女性向け高級かばんを月額6,800円で無期限にレンタルできるビジネスモデルを展開 データ活用によるユーザーの利便性向上や優良顧客が残る仕組み構築により高い継続率を誇る

(出所)当社HP、各種報道等よりみずほ銀行産業調査部作成

継続率が高いLaxusのシェアリングビジネス

1.バッグを選ぶ

2.バッグが届く

3.バッグを交換する

・ブランド店舗の来店を位置情報連携で把握 ・商品の入荷通知機能によるニーズ把握 ・心理テスト風の診断で好みを把握

⇒ 顧客の好みで商品表示し、探す手間を削減

データを活用した 利便性向上

・メンテナンスの充実で高品質を維持 ・真贋判定で偽ブランドを排除

⇒ 高い品質による信頼性を獲得

商品の高い 品質の維持

・バッグの使い方が荒い顧客は利用停止 ・クレーマーは利用停止(従業員の負担減)

⇒ 悪質な顧客による無駄なコストをカット

優良顧客だけが 残る仕組み

顧客の利便性を高めることで、会員の平均継続率が95%

2. ビジネスモデルの変化 ビジネス領域の拡大

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ドイツ:蓄電池を活用した再エネ電力のシェアリング ~ゾンネン~

ゾンネンは2010年に設立され、「ゾンネンバッテリー」を開発したドイツの蓄電池ベンチャー 住宅用太陽光発電と蓄電池を活用し、コミュニティ内で発電した電力を蓄電池管理システムを通じて

シェアリングすることで、電気料金をゼロで消費することが可能に

2. ビジネスモデルの変化 ビジネス領域の拡大

電力 電力

電力 電力

電力

蓄電池管理システムを通じた再エネ電力のシェアリング

(出所)sonnen HP等よりみずほ銀行産業調査部作成

バイオガス等 再エネ

sonnen

調整力 市場

バッテリーの一部を調整力 としてゾンネンへ拠出

月額手数料 (19.99ユーロ/月)支払い

住宅用太陽光発電と ゾンネンバッテリーを購入

4,250~6,750kWhまで 電力が使い放題 (電気料金ゼロ)

自家発電の電力過不足を コミュニティ内で自動融通

※必要に応じてバイオガス発電等を活用 (非常時のみ市場から調達)

【 ゾンネンコミュニティ 】

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シェアリングエコノミーの浸透はモノの所有者に変化を及ぼす

「所有から利用へ」というシェアリングの価値観が浸透すると、従来の貸し手(個人等)は自己利用のた

めの資産買い替えはせず、将来的に新たな借り手となることが想定される シェアリング対象財の所有者が変化していくことに伴い、モノの位置づけが変わり、企業はどこで収益

機会を捉えるのかといった戦略の再考が求められる

(出所)各種資料よりみずほ銀行産業調査部作成

自己利用

シェアリング利用

自己利用

遊休時間

ITの発展による取引コスト低下

大量消費型経済 シェアリングエコノミー

資産買い替えタイミング

個人 (貸し手)

個人 (自己利用)

対象財の所有

利用目的

現在

シェア企業 (貸し手)

シェアリング利用

シェアリングエコノミーの浸透による変化

モノの所有者の変化 2. ビジネスモデルの変化

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モノのリスク負担者がユーザーから企業へ

シェアリングの拡大によってモノの所有者が企業に移り、従来ユーザーが負っていた価格変動リスクや

故障リスク等を供給サイドが負うことに 資産に紐付くリスク負担をどのようにコントロールするかが課題に

<従来> <今後>

(出所)みずほ銀行産業調査部作成

所有移転に伴うリスク負担者の転換

2. ビジネスモデルの変化 モノの所有者の変化

製造業

ユーザー

モノの所有

モノの提供 「製品価値」

製造業

ユーザー

モノの所有

故障リスク

資産負担

メンテナンス負担

セキュリティリスク

価格変動リスク

サービスの提供 「利用価値」

リスク負担が企業に移転し、

そのコントロールが課題に

稼動リスク

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モノのデザインが「使い捨て」前提から「シェア」前提へ

モノが「使い捨て」前提から「シェア」前提にシフトしていくことで、求められる製品デザインも変化 耐久性が高く、メンテナンスや再利用も踏まえた持続可能なデザインへの転換が求められる

「使い捨て」前提の製品設計 ~計画的な旧式化デザイン~

(出所)各種資料よりみずほ銀行産業調査部作成

「シェア」前提の製品設計 ~持続可能なデザイン~

高い耐久性

メンテナンスが容易 (パーツは標準化)

長い製品寿命 (再利用・再生が容易) 耐久性低い 製品寿命短い

(計画的旧式化)

シフト

求められる製品デザインの変化

コスト削減 パフォーマンス向上 リスク回避

多彩な機能 実用的機能

ユーザーのニーズ

2. ビジネスモデルの変化 モノの所有者の変化

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モノの付加価値の最大化 ~データを活用した価値創造~

モノの売り切りから利用サービスの提供へシフト(=製品価値から利用価値へ)する中で、データを活用

してモノの付加価値を最大化していくことが求められる 製造業は、品質(モノの強さ)・オペレーション力を活かしてプラットフォームを構築し、新たな価値やエコ

システムの創出へ

(出所)みずほ銀行産業調査部作成

利用環境・用途に見合った製品性能の具備

UXの高さと個別化された幅広いサービスの提供

広範なインストールベース、オペレーション力の強み

モノの強さ・オペレーション力を活かして プラットフォームを構築

製品価値から利用価値への転換(サービス化)

機械(モノ)

製品(モノ)

利用サービス

機械(モノ)

製品(モノ)

利用サービス

B to B

B to C

2. ビジネスモデルの変化

サービス化

サービス化

モノの所有者の変化

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製造データの集約によるモノの強みを活かしたエコシステム形成 ~ファナック~

オープンプラットフォーム FIELD system の模式図 エコシステム形成による好循環

ロボット CNC PLC その他の 各種機器

フィールドAPI (コンバータAPIで取り込んだデータをアプリが取得)

FIELD systemミドルウェア

コンバータAPI (各機器のデータを共通のデータモデルに変換)

ZDT LINKi DIMo サードパーティ製アプリ

アプリケーション例

つなぐ機器

故障予知 システム

稼働状況 監視ソフト

機械学習アプリ ケーション基盤

FANUC FANUC Preferred Networks

NTT グループ

IoT

プラットフォーム

ファナック「FIELD

system

(出所)ファナック公表資料、各種報道よりみずほ銀行産業調査部作成

強いインストールベース

機器由来のデータ量増加

多様なアプリケーション開発

ユーザーにとっての魅力度向上

ユーザーの増加

プラットフォーム参加者の増加

ファナックは、製造現場の全ての生産機器を接続して製造データを集約するIoTシステムを立ち上げ - 他社の機器接続や第三者のアプリケーション開発も可能なオープンプラットフォーム 生産性を向上するためのサービスを提供するプラットフォーム型のビジネスモデルは、モノに強みを持

つ製造業の一つの戦い方

2. ビジネスモデルの変化 モノの所有者の変化

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重要性を増すプラットフォーム ~製品/サービス中心からユーザー中心へ~

従来のサプライチェーンビジネスからレイヤー構造を持つプラットフォームビジネスへの転換が進む ユーザーを起点とした考え方への変化を踏まえ、魅力的なプラットフォームを構築していくためには、

ユーザーの取引コストを下げて利便性を高めていくことが重要に

サプライチェーンビジネス プラットフォームビジネス

素材 加工 組立 販売

ユーザー

・「製品やサービス」が中心の仕組み ・ユーザーは、最終的な製品/サービスから選択 ・製品を製造し、「最終製品」が付加価値の源泉 ※レイヤー構造でもその一部でチェーン構造自体は存続

チェーン構造

ユーザー

・「ユーザー」が中心の仕組み ・ユーザーは、各レイヤーで製品/サービス等を選択 ・取引を生成し、「つながり」が付加価値の源泉 ・複合的な選択により、ユーザーの利便性が向上

レイヤー構造

レイヤーⅢ

レイヤーⅡ

レイヤーⅠ

(製造業の場合)

(出所)各種資料よりみずほ銀行産業調査部作成

特徴 特徴

製品/サービス 中心

ユーザー 中心

プラットフォームビジネス 2. ビジネスモデルの変化

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プラットフォームビジネスは「いかに利用量を稼ぐか」が重要

プラットフォームビジネスの主なコストは固定費のため、「いかに利用量を稼ぐか」が重要に ― 多くのプラットフォーマーは、クラウドサービス等の利用によって事業の拡大・縮小に応じた柔軟な対

応ができるように工夫している(≒IT投資の変動費化)

+ < 対象財保有コスト システムコスト 利用料

供給者 需要者 情報・利用仲介

対象財の 保有コスト

/年

対象財の 自己利用時間

割合/年 1-

×

人数/年

利用時間/人

固定費 固定費

利用単価/時間 対象財の利用可能時間割合/年

×

人数/年

利用単価/人

従量制 定額制 量

×

(出所)みずほ銀行産業調査部作成

人件費/年

IT投資/年

+

/対象財・年 /対象財・年 /年

プラットフォームビジネスにおける収益モデル

プラットフォームビジネス 2. ビジネスモデルの変化

×

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魅力的なエコシステム形成によるビジネスの好循環 プラットフォームビジネスは、シェア企業を中核に、ビジネスを補完する機能を担う企業が集積してエコ

システムを形成するため、サポート企業が集まり易い環境を整えることも重要となる エコシステムの拡大と利用者や利用量の増加による好循環が進みやすい仕組み

エコシステム 個々のサポート企業が参入・退出することで

新陳代謝する

利用者

プラット フォーマー

サポート 企業

サポート 企業

サポート 企業

エコシステム全体を 評価して選択

サポート 企業

サポート 企業

サポート 企業

サポート 企業の 拡大

+ ITの発展

(マッチング技術向上とネット上での信用構築)

情報や ノウハウの

拡大

利用量の拡大

ビジネスの 好循環

対象財の 顧客価値向上

↑ 品質維持や

借り手ニーズ合致

対象財 (供給者)の 量の拡大

入れ替え +

エコシステム強化

(出所)みずほ銀行産業調査部作成

エコシステムと利用者の関係性 プラットフォームビジネスの好循環

プラットフォームビジネス 2. ビジネスモデルの変化

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MaaSが自動車産業へ与える影響 ~製品ではなくユーザー起点の考え方~ MaaS(Mobility as a Service)が自動車産業へ与える影響として、従来の製品(自動車)を中心とした考

え方から、ユーザー目線での複合的なサービス提供への転換が求められる 有力なエコシステムの構築に向けて、様々な事業者が多様なパートナーとの連携を模索

(出所)みずほ銀行産業調査部作成

車両・走行データ

移動 データ

バイタル データ

決済・購買 データ

データの 有機的な統合

①交通系エコシステム

エネルギー (充電・蓄電)

通信 車両清掃

車両整備

小売・外食 空港

病院・介護 観光 企業・学校

②クルマ周辺サービス

③移動元・移動先連携 ④ 決済・金融

タクシー

自転車 徒歩

自動車 電車・地下鉄

バス・BRT

モビリティを巡るエコシステムの三層構造

プラットフォームビジネス 2. ビジネスモデルの変化

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データ連携によるMaaS分野でのエコシステム形成 ~トヨタとソフトバンク~

2019年2月、トヨタとソフトバンクによる共同出資会社MONETを設立 両社が持つ人流と車両のデータを連携し、新たなMaaSプラットフォームのソリューションを提供 2019年3月には「MONETコンソーシアム」を設立(計88社参加)し、日野・ホンダによる出資も決定

(注)出資比率は設立時点(2019年2月) (出所)各社プレスリリースよりみずほ銀行産業調査部作成

ソフトバンクとトヨタによる共同出資会社の設立

50.25% 49.75% 資本金20億円 (将来的に100億円まで増資)

オンデマンドモビリティサービス データ解析サービス Autono-MaaS事業

IoTプラットフォーム

(人流データなど)

モビリティサービス プラットフォーム

(車両データなど)

SoftBank TOYOTA

MONET

TECHNOLOGIES

プラットフォームビジネス 2. ビジネスモデルの変化

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データ活用に向けた課題 ~各国・地域で異なるデータ保護・規制~

各国・地域におけるデータ保護・規制

日本 米国 欧州 中国

個人データ

考え方 欧米の中間的な 立場

データの自由な 利活用を促進

個人が自らのデータ をコントロールする

サイバー空間には 国家主権が及ぶ

域外流通 本人の事前同意が 必要 原則自由

保護体制が不十分な国に対しては原則禁止

非常に強い制限

域内流通 一般的な保護 自主規制 一般的な保護に加え、データポータビリティ権なども保障

包括的な保護法は 存在せず

産業データ 域外流通 原則自由 原則自由(注) 個別規制

(金融、医療等) 国家機密については 幅広く禁止

(注)産業用データの利活用権限については契約で規定、営業秘密については法律で保護 (出所)各種資料よりみずほ銀行産業調査部作成

個人データや産業データの流通については、各国・地域で考え方が異なる - 特に個人データの域外流通は、原則自由の米国から強い制限が課される中国まで幅広い 企業がグローバルにデータを活用していくためには、それぞれの規制への対応が求められる

プラットフォームビジネス 2. ビジネスモデルの変化

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EU:プラットフォーマーによる個人データ独占に対する規制

EUにおけるプラットフォーマーへの規制

(出所)各種資料よりみずほフィナンシャルグループ リサーチ・アンド・コンサルティング業務部作成

米国の巨大プラットフォーマーに個人データが集中する現状を問題視するEUにおいて、自身のデータに

対する個々人の所有権強化に関する議論が進展 2018年5月、EUではデータ・ポータビリティ権を規定した一般データ保護規則(GDPR)が施行 - 米国や中国の巨大プラットフォーマーへの対抗策が必要という点では日本もEUと同様

個人データ

個人データ 個人

いつの間にか収集

プラットフォーマー EU

再び個人のものに…

プラットフォーマーの 個人データの囲込を 打破したい

競争力の源泉

プラットフォームビジネス 2. ビジネスモデルの変化

Google Amazon

Facebook Apple

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【ご参考】 日本で検討されている個人データの流通・活用の仕組み

① PDS (Personal Data Store)

個人データを含めたデータを円滑に流通するには、個人が関与する仕組みが有効とされる - 検討会ではその仕組みとして、個人が自らのデータを蓄積・管理する「①PDS」、個人の委託で データを管理・運用する「②情報銀行」に加え、データ取引を仲介する「③データ取引市場」を提示

データを流通させるための機関

個人との契約等に基づき、PDS等を活用して個人データの管理や第三者提供を実施

PDS

BANK

情報銀行

データ 保有事業者

個人データ

個人データ

個人データ

データ 利活用事業者

PDS事業者

PDS データ 利活用事業者

データ 保有事業者

管理・制御

管理・制御

PDS(分散型)

PDS(集中型)

PDS

PDS

個人データ

個人データ

個人データ

個人が自らの意思で自らのデータを蓄積・管理するための仕組み

「分散型」は各個人の端末等、「集中型」は事業者のサーバ等でデータを蓄積・管理

(注)PDS、情報銀行、データ取引市場は、それぞれ排他的ではなく、同一事業者が複数機能を担う場合もある (出所)内閣府IT総合戦略本部資料よりみずほ銀行産業調査部作成

② 情報銀行

プラットフォームビジネス 2. ビジネスモデルの変化

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おわりに

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想定される未来① ~「モノの利用時間」を起点とした需給の考え方へ~

モノの提供から、サービスの提供に価値観が変化することを踏まえると、従来のように「生産販売数量」

を中心とした産業の需要と供給を見ていては不十分 利用から生じる「モノの利用時間」を起点として、産業の需要と供給を見ることが重要に

- 従来は意識されていなかった「モノの稼働率」が、製造業の生産販売数量を決めるキー変数に

(出所)みずほ銀行産業調査部作成

モノの利用サービス提供 (サービス業やシェアリングビジネス等)

「モノの利用時間」

モノの生産・販売 (製造業等)

「生産販売数量」

モノの生産・販売 ~大量生産・消費経済~

利用サービスの提供 ~シェアリングエコノミー~

中心 起点

モノの稼働率

モノの生産・販売 (製造業等)

「生産販売数量」

シェアリングエコノミー拡大による需給予測の変化

おわりに

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想定される未来② ~シェアリングビジネスは複合的な利用サービスの提供へ~

今後、ますますシェアリングエコノミーが浸透していくと、ユーザーが求める「利用価値」の範囲が拡大し、要求水準も高まっていくことが想定される

ユーザーの利便性を高めるためには複数の利用サービスを組み合わせて提供していく必要があり、様々な分野の産業でバリューチェーン構造に大きな影響が出る可能性

(出所)みずほ銀行産業調査部作成

利用サービス+α

利用サービスの提供 「利用価値」

複合的な利用サービスの提供 「利用価値の深化」

モノの提供 「製品価値」

大量生産・消費経済 シェアリングエコノミー

B to B

B to C

機械

製品

利用サービス+α

機械

製品

機械

製品 製品 製品

利用サービス

機械

製品

利用サービス

B to B

B to C

機械

製品

B to B

B to C

シェアリング ファウンドリ

シェアリングビジネスの未来像

おわりに

現在

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社会課題解決にも繋がるビジネス機会としてシェアリングエコノミーを活用

少資源や少子高齢化などの様々な社会課題を抱える先進国でもシェアリングエコノミーは必要 事業環境が変化する中、新興国企業はスピーディーに成長しており、脅威となる可能性 企業が創意工夫を凝らし、積極的にシェアリングビジネスに取り組むことで、脅威を好機とし、持続的成

長へ貢献する活躍に期待

(出所)みずほ銀行産業調査部作成

新興国企業

少子 高齢化

少資源 エネルギー・環境制約

災害

人手不足

社会保障 費用増加

インフラ 老朽化

シェアリング エコノミー

自国への参入≒脅威

シェア企業

シェア・消費者 所有・消費者

連携

対象財の 生産・販売

対象財のリユース

様々な社会課題

課題解決

企業による 積極的な取り組み

シェアリング ビジネスの

好循環を実現

シェアリングエコノミーを活用したビジネス機会の取り込み

おわりに

持続的成長

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