インドネシア: cbm 1開発への展望 · 2020. 12. 11. · 2008 年5月28...

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更新日:2008/07/18 調査部: 坂本茂樹 インドネシア: CBM 1 開発への展望 (関係企業・機関 HP、Platts、Energy Intelligence、コンサルタント資料) インドネシア政府は、2008 5 月末、Medco 2 / Ephindo 3 から成るインドネシア企業コンソーシアムと、 同国最初のCBM探鉱・開発に係わるPS契約を締結した(南スマトラの鉱区)。その後、さらに新たな CBM鉱区の契約締結が続き、またVICO 4 PertaminaなどによるCBM開発計画も表明された。米国で CBMを含む非在来型ガス田開発が活発化し、豪州東部でCBMを原料ガスとするLNG事業計画が脚 光を浴びるなど、世界的にCBM開発が活発化する中にあって、世界でも有数の石炭資源を有するイン ドネシアにおいてもCBM開発が開始されようとしている。Shell 、豪州Arrow Energyなど、CBM生産者 を含む外国企業も同国のCBM開発に関心を寄せている。 インドネシア政府は、2003 年に南スマトラのCBM実験プロジェクトを支援することで同国のCBM開発 検討を開始した。政府とADB 5 2002 年に実施したCBM資源に係わる共同調査に拠ると、同国の CBM埋蔵量は 453 Tcf と想定され、世界でも有数の規模となる。しかし、インドネシアにおけるCBM発は先行する米国、豪州とは異なってまだ初期段階にあり、短・中期的にガス市場に及ぼす影響は限定 される。同国のCBM開発は経験が浅くて技術の蓄積が乏しく、販売市場、開発資金、法制整備等に問 題を抱える。また外資にとって同国の石油ガス上流事業自体が依然として厳しい投資環境にあるなど、 解決すべき課題が多い。本稿は、インドネシアでいよいよ開始されたCBM開発の現況を概観し、今後の 見通しと課題を検討する。 1. CBM鉱区PS契約の締結 2008 5 28 日、インドネシア石油給ガス上流企業の Medoco および Ephindo は、インドネシア政 1 Coal Bed Methane、炭層ガス 2 Medcoenergi 、インドネシアの有力民間石油企業。1980 年に掘削サービス会社として設立後、石油上流企 業へと成長。 3 2005 年に設立されたインドネシアの石油上流企業。 2006 年に石炭採掘ILTHABI REKATAMA社とコンソーシ アムを組み、CBM開発を検討している。 4 Virginia Indonesia CompanyBPENI がそれぞれ 50%出資するインドネシアのガス生産共同事業会社、 東カリマンタンSanga Sangaガス田のオペレーター 5 Asian Development Bank、アジア開発銀行 - - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 1

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Page 1: インドネシア: CBM 1開発への展望 · 2020. 12. 11. · 2008 年5月28 日、インドネシア石油給ガス上流企業の Medoco およびEphindo は、インドネシア政

更新日:2008/07/18

調査部: 坂本茂樹

インドネシア: CBM1開発への展望

(関係企業・機関HP、Platts、Energy Intelligence、コンサルタント資料)

インドネシア政府は、2008年5月末、Medco2/ Ephindo3から成るインドネシア企業コンソーシアムと、

同国最初のCBM探鉱・開発に係わるPS契約を締結した(南スマトラの鉱区)。その後、さらに新たな

CBM鉱区の契約締結が続き、またVICO4、PertaminaなどによるCBM開発計画も表明された。米国で

CBMを含む非在来型ガス田開発が活発化し、豪州東部でCBMを原料ガスとするLNG事業計画が脚

光を浴びるなど、世界的にCBM開発が活発化する中にあって、世界でも有数の石炭資源を有するイン

ドネシアにおいてもCBM開発が開始されようとしている。Shell、豪州Arrow Energyなど、CBM生産者

を含む外国企業も同国のCBM開発に関心を寄せている。 インドネシア政府は、2003 年に南スマトラのCBM実験プロジェクトを支援することで同国のCBM開発

検討を開始した。政府とADB5が 2002 年に実施したCBM資源に係わる共同調査に拠ると、同国の

CBM埋蔵量は 453 Tcfと想定され、世界でも有数の規模となる。しかし、インドネシアにおけるCBM開

発は先行する米国、豪州とは異なってまだ初期段階にあり、短・中期的にガス市場に及ぼす影響は限定

される。同国のCBM開発は経験が浅くて技術の蓄積が乏しく、販売市場、開発資金、法制整備等に問

題を抱える。また外資にとって同国の石油ガス上流事業自体が依然として厳しい投資環境にあるなど、

解決すべき課題が多い。本稿は、インドネシアでいよいよ開始されたCBM開発の現況を概観し、今後の

見通しと課題を検討する。

1. CBM鉱区PS契約の締結

2008 年5 月28 日、インドネシア石油給ガス上流企業の Medoco および Ephindo は、インドネシア政

1 Coal Bed Methane、炭層ガス 2 Medcoenergi、インドネシアの有力民間石油企業。1980年に掘削サービス会社として設立後、石油上流企

業へと成長。 3 2005年に設立されたインドネシアの石油上流企業。2006年に石炭採掘ILTHABI REKATAMA社とコンソーシ

アムを組み、CBM開発を検討している。 4 Virginia Indonesia Company、BPとENIがそれぞれ50%出資するインドネシアのガス生産共同事業会社、

東カリマンタンSanga Sangaガス田のオペレーター 5 Asian Development Bank、アジア開発銀行

- - Global Disclaimer(免責事項)

本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま

れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの

投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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府と南スマトラ堆積盆地におけるCBM鉱区のPS契約に調印した。インドネシアで最初のCBM開発の

PS 契約である。続いて 6 月 26 日、ジャカルタで開催されたCBM国際会議“IndoCBM 2008”におい

て更に 2 件の CBM 開発に係わる PS 契約が調印された。これら PS 契約の内容は次の通りである。

締結日 コントラクター 地域 鉱区名 利益配分比率 投資額、作業 2008/5/28

・Medco (オペレーター) ・Ephindo

南スマトラ

Sekayu

政府 55% 事業者 45%

当初 2 年で 500~

750 万米ドルを投資

(生産井掘削) 2008/6/26

Samantaka Mineral Prima

スマトラ Riau

Indragiri

政府 60% 事業者 40%

2008/6/26 Ridlatama Mining Utama

東カリマンタン Bentian Besar 政府 55% 事業者 45%

(両鉱区を合わせて)

当初 3 年で 1,300 万

米ドルを投資

インドネシア政府の支援により、南スマトラ産炭地域において 2003 年から CBM 実験プロジェクトが実

施されており、Medco もこれに参加していた。数年の検討期間を経て PS 契約が締結され、いよいよイン

ドネシアでも本格的にCBM事業が開始されようとしている。エネルギー鉱物資源省によると、更に 50を

越える企業がスマトラおよびカリマンタン島において CBM 鉱区の PS 契約を申請しているという。

しかし、インドネシアの石油ガス上流投資環境はもともと経済条件が厳しいことに加えて、こと CBM に

関しては実務経験、技術力蓄積が乏しいため、商業生産に至るまでには困難が予想される。CBM 事業

実現には、政府支援や契約条件のインセンチブ措置が求められる。

以下に、CBM 開発の現況と今後の展望を記す。

2. インドネシアのCBM事業

(1) 政府の CBM 開発検討開始

インドネシアでは 1990年代半ば以降、国際石油企業の新規進出が減少して探鉱活動が落ち込んだこ

とから、石油、天然ガス共に生産が低迷している。特に石油需給は 2004 年に純石油輸入国となり、原油

生産減少傾向に歯止めをかけることができずに需給ギャップが拡大している。一方インドネシアは国内

市場に石油製品を供給するための十分な原油処理能力を持たないことから石油製品輸入が増加してい

る。数年来の原油価格高騰に伴って輸入製品価格も上昇し、国内石油製品市況を安定させるための補

助金額が増加して国庫を圧迫する悪循環が続いている。 - -

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図 1 インドネシアの石油生産・消費量推移(BP 統計 2008 年 6 月)

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千b/d

1992

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2003

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2005

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2007

インドネシア石油生産・消費推移(BP統計2008年6月)

生産量

消費量

図 2 インドネシアのガス生産・消費量推移(BP 統計 2008 年 6 月)

インドネシア ガス生産・消費推移(BP統計、2008年6月)

0.0

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2007

bcf/d

生産量

消費量

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インドネシア政府は、国内市場の石油依存度を減らすために、天然ガス、石炭を含む国産エネルギー

利用を進めようとしている。インドネシアは豊富な石炭資源があって CBM 埋蔵量も豊富と見られ、CBM

も将来の有望な国産エネルギーとしても役割を期待されている。

インドネシア政府は、2003 年に CBM 開発促進のための国家チームを作り、翌 2004 年から CBM 探

査実験作業の実施、CBM 開発に係わる法整備、CBM 生産技術の開発等の作業を開始した。チーム・

メンバーは、LEMIGAS(エネルギー鉱物資源省傘下の石油ガス技術開発センター=チームリーダー)、

BP Migas など政府系機関が中心である。CBM 探査実験作業は、最も高い CBM ポテンシャルを持つ

と考えられる南スマトラ堆積盆地の Ranbutan 地域で実施された。

図 3 インドネシア政府が支援した南スマトラ Rambutan CBM フィールド

(出所)LEMIGAS 資料(第 2 回 IndoOGP2008、2008 年 2 月)

(2) インドネシアの石炭資源

インドネシアは石炭資源が豊富であるが、カロリーが高くて高品質とされる無煙炭、瀝青炭の比率が低

く、褐炭の比率が高い。褐炭はインドネシア石炭資源の約60%近くを占める。無煙炭、瀝青炭はカリマン

タン島に多く、スマトラ島の石炭はほとんどが褐炭と言われる。褐炭はカロリーが低く、自然発火し易い特

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徴があって輸送が難しいため、これまで石炭として利用されることが少なかった。しかし南スマトラの石炭

(褐炭)はガス資源密度が高いため、インドネシアの CBM 開発では最も有望と見なされている。

(3) インドネシアの CBM 資源

インドネシア政府が認識する、在来型および非在来型の石油ガス資源埋蔵量は次の通りである。

表 1 インドネシアの石油ガス埋蔵量 埋蔵量

石油 89 億バレル 在来型資源 天然ガス 187 Tcf

非在来型資源 CBM 453 Tcf (possible を含む) (出所)第 32 回 IPA(Indonesian Petroleum Association)会議資料(2008 年 6 月)

CBM 埋蔵量は、インドネシア政府が 2002 年に ADB と共同で実施した CBM 埋蔵量調査に基づく。

インドネシアは 453 Tcf の CBM 埋蔵量を有する可能性があり、これは同国の天然ガス埋蔵量の 2 倍以

上に相当する。この CBM 埋蔵量規模は、ロシア、北米、中国、豪州と並んで世界でも 5 指に入る。

図 4 インドネシア:石炭堆積盆地の CBM ポテンシャル

(出所)LEMIGAS 資料(第 2 回 IndoOGP2008、2008 年 2 月)

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堆積盆地毎の CBM 推定埋蔵量を表 2 に示す。ポテンシャルが高いと見なされる堆積盆地は、スマト

ラ島の南スマトラ、中部スマトラ堆積盆地、そしてカリマンタン島のBarito、Kutei堆積盆地である。この4

堆積盆地の合計埋蔵量は 418 Tcf となり、インドネシアの全 CBM 埋蔵量の 92%を占める。

表 2 堆積盆地毎の CBM のポテンシャルおよび埋蔵量 地域 堆積盆地 ポテンシャル 埋蔵量

スマトラ島 南スマトラ 高 183 Tcf カリマンタン島 Barito 高 102 Tcf カリマンタン島 Kutei 高 80 Tcf スマトラ島 中部スマトラ 高 53 Tcf カリマンタン島 北部 Taranaki 中 17 Tcf カリマンタン、スラウェシ、スマトラ島 他 Berau 他 中 13 Tcf スラウェシ、スマトラ島 スラウェシ、Bengkulu 低 5 Tcf 合計 453 Tcf

(出所)LEMIGAS 資料(第 2 回 IndoOGP2008、2008 年 2 月)

(4) インドネシア政府の CBM 開発計画

政府は、2006年の大統領令5号として、インドネシアの長期エネルギー見通しを発表した。2025年を

ゴールとする中長期エネルギー供給政策を、石油消費比率の削減、それに代わるガス、石炭および新

エネルギー比率の増大に置いた。CBM は地熱、バイオ燃料、原子力等と共に「その他」に分類される。

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図 5 インドネシア政府長期エネルギー見通し(大統領令 2006 年 5 号)エネルギーMix

長期エネルギー見通し(2006年):エネルギーMix

石油, 54%

石油, 20%

ガス, 27%

ガス, 30%

石炭, 14%

石炭, 33%

その他, 5%

その他, 17%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

2005年 2025年

(注) 2025 年「その他」17%の内分け

5% 地熱

5% バイオ燃料

2% 石炭液化

5% 原子力、CBM(全体の 1~2%)、バイオマス、水素燃料、他

17% 合計

政府は更に、図 6 に示す CBM 開発ロードマップを作成して、CBM 開発を推進しようとしている。

2008年上期に既に複数のCBM鉱区契約が調印されており、生産開始は2010年頃と推測される。中

長期的な CBM 生産量は、2015 年に最大で 100MMcfd、2020 年に最大500MMcfd、2025 年に最大

1Bcfd と想定している。

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図 6 インドネシア政府 CBM 開発のロード・マップ

(出所)Ephindo 社 HP(Global Coal Methane Energy Summit 発表資料、2008 年 1 月)

(5) CBM 開発の法的枠組み

CBM 開発に係わる法令は、2006 年の「エネルギー鉱物資源相規則 No. 33/2006」を基にしている。

CBM の所有権は州にあるが、管理権は中央政府にあるとされる。インドネシアにおける CBM 開発は、

経験、技術が乏しく、コストが高く、在来型石油ガスに較べて事業化に年数がかかると見られるため、

CBM 開発契約の経済条件に優遇措置を設けることが必要と考えられている。政府は現在、CBM 開発

に係わる法的枠組みを作成中であり、程なく完成すると見られる。なお 2007 年 11 月に、CBM 開発に

係わる利益配分比率の目安を、政府 55%:コントラクター45%とすることが定められた。この CBM 開発

利益配分比率は、石油、ガスの標準的な数値(コントラクター取得率はそれぞれ、15%、30%)に較べる

とコントラクターに有利な条件になっている。

(6) 政府の CBM 開発事業化の方針

政府は、CBM をまず国内市場向けエネルギー源として、下記のように段階的に事業化を進めようとし

ている。当初は CBM 生産地域周辺の小規模需要向け供給から開始し、最終的には広域ガス・パイプラ

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インを経由して最大消費地ジャワ島向けに供給することを念頭に置いている。

a. 短期(2010 年~)

地方のエネルギー基礎需要を充足させるため、家庭用、発電用に小規模な実験プロジェクトを実施

b. 中期(2014 年)~

製鉄、発電など産業用および輸送用に供給する

c. 長期(2020 年)~

CBM 生産地域(スマトラ、カリマンタン島)から広域ガス・パイプラインを経由して、主要エネルギー消

費地のジャワ島に供給する。

3. 具体的なCBM開発計画

(1) 南スマトラ堆積盆地の CBM 開発

南スマトラ堆積盆地は、インドネシアで最もCBM開発が有望な地域と考えられている。CBM資源の有

望性に加えて、南スマトラから西ジャワへの幹線SSWJガス・パイプライン6が 2007 年 3 月に完成してお

り、今後の輸送能力増強も予定されているため、将来CBM生産が本格化した際に最大エネルギー市場

のジャワ島に対するガス輸送が可能となるメリットが大きい。

図 7 SSWJ ガス・パイプラインを含むインドネシアのガス・パイプライン、LNG 液化基地位置図

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96 South Smatra- West Jawa gas pipeline、

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(出所)各種情報・報道から JOGMEC 作成

Medco/ Ephindo 鉱区を含む南スマトラの CBM 事業は、探鉱から商業生産可否を確認するまでに 5

年程度の期間を要すると考えられる。その間の試験生産段階では、生産物は鉱区近隣の肥料工場等小

規模な産業用需要に向けられる。商業生産への移行が決った後、生産物はスマトラの相対的に大きな

産業需要向けに供給される。最終的にある程度の量を安定的に生産できることが実証された後に、

SSWJパイプラインを経由してジャワ島向け供給が行われると見られる。ジャワ島へのCBM供給が可能

になり、国内ガス市場へのインパクトが発生するのは、2015~20 年頃になると考えられる。

図 8 Medco/ Ephindo の Sekayu 鉱区を含む南スマトラの CBM 地域

(出所)

南スマトラの主要ガス生産者であるPertaminaは、Sydney Gas7、Shellとそれぞれコンソーシアムを

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107 豪州New Soth Wales州Sydney堆積盆地でCBMを生産し地元市場に供給するガス事業者

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組んで、同地域におけるCBM開発に乗り出そうとしている。Pertamina上流分野の幹部が 2008 年6 月

末に明らかにした。既に政府にCBM開発計画を提出しており、承認取得後、2008 年内にも探鉱作業を

開始する計画と言われる。5,500 万ドルを投じてCBMの探鉱、開発を実施し、2~3 年で商業生産を目

指すという。Pertaminaは南スマトラにガス田を保有しており、SSWJガス・パイプラインを通じてジャワ

島にガスを供給する主要生産者である。同地域のガス・マーケティングに精通していることから、CBM開

発が軌道に乗れば、事業化に有利な立場にあると考えられる。

(2) VICO による Sanga Sanga 鉱区の CBM 開発(カリマンタン島東部 Kutei 堆積盆地)

VICO 幹部は 2008 年6 月中旬、同社のカリマンタン島東部 Sanga Sanga 鉱区に置いて CBM 開発

を実施するため、2015年までに50億ドルを投資する計画を明らかにした。同社は、Sanga Sanga鉱区

に 10 Tcf の CBM 埋蔵量があると想定している。

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図 9 東カリマンタン Bontang 液化基地と原料ガスを供給するガス田群

(出所)各種情報・報道から JOGMEC 作成

VICO の Sanga Sanga ガス田は Bontang 液化基地向けの主要ガス供給元であり、1990 年代は

Total/ INPEX のマハカム沖ガス田を凌ぐ 1 ,200 MMcfd 以上の原料ガスを供給していた。しかし 2000

年以降生産減退が進み、2007 年の生産量は 470MMcfd であった。今後更に生産減退が進展する

Sanga Sanga ガス田は、Bontang 液化基地向けガス供給源としての役割を急速に減じていく。

VICO は有望な CBM 賦存地域でもある Kutei 堆積盆地にある Sanga Sanga 鉱区内の CBM を開

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発して Bontang 液化基地に供給することで、同基地向け主要原料ガス供給者の地位を維持しようとして

いる。同社は CBM 生産量を、2010 年に 10~30 MMcfd、2015 年に 500 MMcfd に引き上げることを

目標にしているという。

カリマンタン島には大きなガス需要が無く、またエネルギー主要消費地ジャワ島へのガス・パイプライン

が建設される可能性は低い。CBMをLNG用原料ガスとして使用することができれば、カリマンタン島で

産出する CBM の商業価値は大きく高まる。VICO に限らず、Kutei 堆積盆地で Bontang 液化基地に

近い鉱区を保有するコントラクターは、すべて液化基地向け CBM 供給者になる潜在的可能性を有する。

しかし豪州クイーンズランド州のCBM-LNG案件成立の経緯に見るように、CBMをLNG向け原料ガス

としての事業化に目安をつけるには 10 年以上の期間を要している。Kutei 堆積盆地の CBM を液化基

地に供給する事業化目処がつけられるのは早くても 2015 年以降と想定され、CBM 供給を材料として

Bontang 液化基地の拡張を検討できるのは、2020 年以降になると考えられる。

(3) 外国企業との共同事業の可能性

現時点でインドネシアの CBM 開発に興味を表明している外国企業は、Shell、Arrow Energy、

Santos、Sydney Gas、LNG Japan、石油資源開発を含む数社と言われる。CBM 開発に係わる法定

枠組みがまた明確になっていないため、Pertamina 等インドネシア企業との共同事業実施が当面の現

実的な事業参入方法と考えられる。

4. インドネシアのCBM開発の展望と課題

(1) CBM開発の課題

インドネシアの CBM 開発への課題は、技術的課題とコマーシャル分野の課題が考えられる。

先述したように、インドネシアは国内の CBM 開発経験・期間が短く、開発技術の蓄積が乏しい。技術

的課題としては、インドネシアの各地域で生産される CBM の性状・特徴の把握、可採埋蔵量の精査、

CBM 生産コストの精査、随伴水の処理技術・方法の確立、利用可能な海外の既存技術の適用等が考え

られる。

コマーシャル分野の課題として、先ずは CBM 生産がインドネシアの在来型ガス生産(ほとんどが陸域、

浅海域)に較べてコストが嵩むと見られるため、CBM 鉱区 PC 契約に適切なインセンチブ措置を盛り込

む必要がある。政府は先に CBM 鉱区の利益配分比率を在来型石油ガス鉱区に較べて有利な“政府

55%:コントラクター45%”の標準を定めた。現在、政府は CBM 探鉱に係わる法令を作成中であり、まも

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なく完成する予定である。

次に、外資参入の必要性を念頭に置き、ガスを含む国内エネルギー市場の市場価格化を進め、エネ

ルギー産業分野の投資環境を徐々に改善することである。在来型ガス開発事業に較べて事業採算に劣

る CBM 事業に外資を呼び込むには、不評であるインドネシアの投資環境改善が必須である。

(2) CBM開発の展望

インドネシアの CBM 資源が有するポテンシャルは大きいが、同国の CBM 開発はまだ初期段階にあ

り、その成果は今後の事業進展如何にかかってくる。

CBM開発、生産で先行する米国は、既にCBM生産量を飛躍的に増大させて国内の主要ガス供給源

としての地位を確立させている。後続の豪州では、CBM は既に主要エネルギー消費地東部のガス供給

の 25%を占め、CBM を原料ガスとする CBM-LNG プロジェクトは新たな LNG 事業形態として脚光を

浴びている。これらの地域では、もともと国内に成熟したガス市場を持ち、輸送インフラ、法制度を含む

ガス供給体制が整っていた。米国では在来型ガス生産量が頭打ち傾向にあり、新たなガス資源が登場

して事業採算の目処がつけば自ずと生産が伸びる事業環境にあった。

一方、インドネシアは主要な LNG 輸出国であるが、国内ガス市場は未熟でガス輸送インフラは限定さ

れている。国内エネルギー価格は統制色が強くてガス事業の採算は必ずしも良好ではなく、エネルギー

分野の投資環境は厳しい。東南アジアでは相対的になお豊富な在来型ガス埋蔵量を持ちながら、輸出

/国内市場向けを巡って明確なガス事業政策を打ち出せておらず、外国石油企業の開発投資も及び腰

の状態である。

2003年以降政府主導でCBM実験生産が実施されてきたものの、国内企業には生産技術の蓄積が乏

しいため、CBM の商業ベースの生産には米国、豪州以上に期間を要する可能性が高い。原油価格高

騰のあおりを受けて、利用可能な国内エネルギー開発を促進しようとする気運が高まっている。この機会

にガスを含むエネルギー産業の市場化、効率化を実施できれば、CBM 生産もまずは国内市場向け主

要エネルギー源の一つとして軌道に乗る可能性がある。しかし全般的な成果が現れるのは早くても

2015 年以降となる、中長期的観点の事業になると考えられる。

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