ブルー&グリーンプロジェクト号 岩手・陸前高田の...

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持続可能な社会のための情報誌 ブルー&グリーンプロジェクト号 企画 特集 岩手・陸前高田の 松林再生を応援 「住民が主体の活動を」 INTERVIEW 俳優 村上弘明さん 省エネ型ガス給湯・暖房機の普及と 植樹活動推進 ブルー&グリーンプロジェクトとは 「高田松原を守る会」の取り組み プロジェクトイメージキャラクター さん 2004年5月4日生まれ。デビューは08年。人気ドラマ、映画、 舞台などで活躍。親世代、子供たちにも人気が高い。ブルー& グリーンプロジェクトを身近に感じ、知ってもらい、家族で環 境について知ってもらいたいという願いを込めて起用。

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持続可能な社会のための情報誌

ブルー&グリーンプロジェクト号

企画特集

岩手・陸前高田の松林再生を応援

「住民が主体の活動を」●INTERVIEW住民 体 活動 」俳優 村上弘明さん

省エネ型ガス給湯・暖房機の普及と植樹活動推進

●ブルー&グリーンプロジェクトとは

●「高田松原を守る会」の取り組み

プロジェクトイメージキャラクター

谷た に

 花か

音の ん

さん2004年5月4日生まれ。デビューは08年。人気ドラマ、映画、舞台などで活躍。親世代、子供たちにも人気が高い。ブルー&グリーンプロジェクトを身近に感じ、知ってもらい、家族で環境について知ってもらいたいという願いを込めて起用。

「マツの木が

「マツの木が

すくすく

すくすく

育ってほしい」

育ってほしい」

「マツの木が

すくすく

育ってほしい」

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ふるさとの復興と新たな創造に向け、

東北の三陸沿岸が再生の道を歩み始めて

います。岩手県の陸前高田市では、東日

本大震災による津波で失われた白砂青松

の名勝地「高田松原」を復活させる取り

組みが行われています。

 

住生活の向上を主な目的とした一般財

団法人「ベターリビング」(東京都千代

田区)とガス業界が推進する「ブルー&

グリーンプロジェクト」が、高田松原の

再生活動を応援することになりました。

同プロジェクトは、財団が認定した対象

の省エネ型給湯・暖房機の普及と家庭部

門の省CO2

化と連動させ、台数が1台

増えるごとに1本の木をベトナムで植え

 「郷土の未来のためにも、あのなつか

しい風景をよみがえらせたい」と熱く語

るのは、元中学の理科教師で、地元の市

民グループ「高田松原を守る会」の会長

を務める鈴木善久さん(69)です。

 「松原の再生に役立ててほしい」。震災

前に高田松原で松ぼっくりを集めていた

女性が、守る会にたくさんの種を寄贈し

ました。それらの種を森林総合研究所・

林木育種センター東北育種場(同県滝沢

市)に託してマツの栽培を始めたのが震

災発生から2カ月後。生育した約600

本の苗木は現在、陸前高田市に里帰りし

て、守る会が畑で大切に育てています。

そのほか、地元の海岸で拾った松ぼっく

り内の種から芽生えたものや寄贈分も含

め、守る会では約7000本の育苗を手

がけています。

 

結成は2006年。そ

れまでは松林の手入れや

清掃活動をしていました。

震災による津波で、当時

約60人いた会員のうち9

人が犠牲になりました。

生前の仲間の姿を胸に刻

みながら松原の再生に立

ち上がり、現在の会員は約140人。関

西や沖縄からも参加があり、草刈りなど

の手伝いに訪れます。

 

守る会の副会長で市議の千田勝治さ

ん(66)は「いまなお仮設住宅で暮らし、

日常を取り戻せない被災者が大勢いる。

マツの植樹を通して市民が元気になるよ

うな活動にしたい」。ブルー&グリーン

プロジェクトをはじめ広がる支援の輪に

鈴木さんは「みなさんが継続して応援し

てくれることは大きな力になる」と話し

ていました。

てきました。スタートから8年を経た今

年からは植樹の拠点を国内に移します。

 

具体的な作業については一般財団法人

「日本緑化センター」(東京都港区)がア

ドバイスします。同センターの瀧邦夫事

務局長は「松原があった砂浜は、震災で

ほとんどが海に沈んだため、これから盛

り土が施され松を植える地盤がつくられ

る。まずは近くで試験植栽をして、どの

ような植え方がマツの生育に望ましいか

を調べる」と言います。防潮堤の建設や

地盤整備など県の事業とも関わりますが、

「早ければ3年後には植樹が始められる

のではないか」と予測します。「松林の

再生は全国の海岸林の共通のテーマ」と

瀧さんは強調します。

 陸前高田市の海岸に江戸時代に植栽され、アカマツやクロマツなど計7万本の松林は岩手を代表する防潮林となり、白砂青松の景観を擁する景勝の一つとしても知られた。東日本大震災で1本だけ残ったマツ(樹齢約170年)は「奇跡の一本松」と呼ばれたが、その後、立ち枯れが進み、幹を防腐処理し枝葉をレプリカで復元した。 岩手県では松林があった広田湾の沿岸2㌔に二つの防潮堤を整備中で、その間に高田松原を復活させる。予定地の一部に市民による植栽・保育エリアが設けられる予定。

●高田松原 なつかしい風景を再び

植樹に向けマツの苗木を育成育成

高田松原再生イメージ図

50年後

植栽直後

広田湾松苗植栽エリア

防潮堤(第2線堤)

防潮堤(第1線堤)

出典:大船渡農林振興センター

マツの生育を見る鈴木善久さん(左)と千田勝治さん。休耕田を借りて苗木畑にしている=岩手県陸前高田市で、9月29日

苗木畑での作業に汗を流すメンバーやボランティアら=高田松原を守る会提供

国内での植樹活動開始へ

ブルー&グリーンプロジェクト

高田松原を守る会

 ブルー&グリーンプロジェクトは、一般財団法人ベターリビングとガス業界が共に推進している、日本の家庭に省エネ型高効率ガス給湯・暖房機(エコジョーズ・エコウィル・エネファーム)の普及を図り、同時に植樹活動の支援を行う環境貢献活動です。 ブルーは、環境保全に貢献する高効率ガス機器の炎を、グリーンは植樹により広がる緑を表しています。

ブルー&グリーン    プロジェクトとは

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―岩手県の魅力を発信する「いわて☆は

まらいん特使」にこの夏、就任しました。

具体的な活動は。

 

4編のPR動画に出演しました。自然

や食、地域資源、温泉などを題材にドラ

マ仕立ての構成で、県のホームページの

特設サイトなどで公開されています。

―どのような思いで臨んだのでしょう。

 

郷里の陸前高田が1日も早く復興して

ほしい。インフラ整備など形だけの復興

ではなく、住む人たちが暮らしやすいま

ちづくりをしていく。そのためには、岩

手県全体が元気になっていかなければい

けない。単に岩手の物産や食をアピール

するのではなく、環境や地域の人々の魅

力を全国の人に伝えていく。そのことに

よって、少しでも震災の記憶の風化が抑

えられるのではないか。そういう気持ち

もありました。

 

動画の収録は一段落付きましたが、今

後も微力ながら岩手のためにできること

を県庁の方々と考えていきたいと思いま

す。

―震災のときは。

 

東京にいました。携帯電話で連絡を取

ろうにもすぐにはつながらず、そのなか

で唯一、電話がつながったのは岩手のラ

ジオ局のディレクター。「どうか生き抜

いてください」と願いながら(リスナー

に)呼びかけました。両親の無事が分か

ったのは発生から4日後。実家は津波で

半壊しました。

―ご自身が生まれ育った広田町は、海辺

の町。

 

日常のなかに空気のごとく海があった。

波の音は自分の生活のリズムになってい

ました。それを強く感じたのは、郷里を

出て仙台で浪人生活を送り、進学のため

上京して海と隔絶された場で暮らし始め

たときでした。

―陸前高田で沿岸部の復旧事業や支援活

動が進められています。その一つがブル

村上弘明さん 1956年、岩手県陸前高田市生まれ。「仮面ライダー スカイライダー」で主演デビュー。以後、ドラマや映画などで活躍。1993年のNHK大河ドラマ「炎立つ」(第二部)では、郷里の偉人で奥州藤原氏初代の藤原清

きよ

衡ひら

役で主演した。2015年テレビ東京新春ワイド時代劇「大江戸捜査網2015隠密同心、悪を斬る!」に出演。

自然と共存するまちづくりを

村上 弘明さん

俳優

ー&グリーンプロジェクト。

 

震災前の海岸の景色は、僕の原風景と

して心に刻まれています。松原の再生に

期待しています。海岸林は防砂林や田畑

の塩害を防ぐなどの役割があります。

 

陸前高田は江戸時代に宿場町として栄

え、当時の中心部はもっと奥まったとこ

ろにありました。鉄道が通り、近代化が

進むにつれ、メーンストリートが段々と

海の近くに移り、沿岸に大きな防潮堤が

できて、海が見えなくなりました。

 

これから新たなまちづくりや、ブルー

&グリーンプロジェクトのような植樹活

動が進められていくわけですが、どうす

れば住民が暮らしやすく、自然と共存す

るまちづくりができるのかを市民が考え、

そこで得た意見を市が県や国に伝えてい

く。住民が主体になることが大切です。

 

陸前高田市出身の俳優、村上弘明さんは、故郷の再生に熱いまなざしを注

いでいます。海のそばで育ち、「波の音が自分の生活のリズムになっていた」

という村上さんは、「人間は自然のなかで生かされている。その意味を考え

ながら、住民主体の復興事業を進めてほしい」と言葉に力を込めます。

                      【聞き手・明珍美紀、写真も】

岩手の魅力発信するPR特使である「いわて☆はまらいん特使」就任の意気込みを語る

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 http://mainichi.jp/feature/ecology/

毎日新聞社は日本の里山を保全・再生する活動を支援しています。マイECOの用紙代の一部は日本の里山の保全と再生に役立てられます。

【表紙:マツの苗木】陸前高田市の高台にある「高田松原を守る会」の育苗畑では、アカマツやクロマツの苗木が順調に育っています。そのなかには震災で失われた高田松原の遺伝子を受け継ぐものがあり、まさに「希望の苗木」です。(撮影・明珍美紀)

これまでのブルー&グリーンプロジェクト

 一般財団法人ベターリビングは、国民の住宅に対するニーズが量から質へ変化しつつあった1973年に、建設大臣の許可を得て設立されました。以来、優良な住宅部品の開発・普及を中心として、住生活水準の向上に資することを目的としたさまざまな活動を

進めてきました。活動の柱となっている「優良住宅部品認定事業」等を実施するとともに、調査研究や技術開発、およびこれらの成果の普及・広報活動、各種情報提供など、住宅に関する広範な事業を展開しています。

ベターリビングとは

 

岩手県陸前高田市の高田松原は、地元

はもとより県内外の方々から親しまれて

きました。東日本大震災による津波や地

震で大きな被害に見舞われた地で、松原

をよみがえらせようと、市民の皆さんが

力を合わせています。

 

それを応援する形でブルー&グリーン

プロジェクトも陸前高田での植樹活動を

始めることになりました。

 

このプロジェクトを始動するきっかけ

ですが、近年、産業部門などのCO2

出量は減少傾向にある一方、家庭部門の

CO2

排出量は増加し続けている状況が

あります。日本で使われる主要なエネル

ギーの40%近くは家庭で消費され、その

約半分が風呂や台所での給湯や暖房に使

われています。つまり給湯機器はほぼす

べての住宅に設置されるものであり、そ

の意味で給湯・暖房分野の省エネをはか

ることで、日本のCO2

排出の削減に大

きなインパクトをもたらすのです。

 

例えば対象機器の普及実績の約97%を

占める「エコジョーズ」は、一般的な給

湯器と比べて13%、年間で0・2㌧もの

CO2

排出量を削減できます。対象機器

の普及実績はすでに400万台を超えて

いますが、日本には4000万世帯を超

えるガス給湯設備が設置されていること

を考えると、今後もなお一層、対象機器

の普及を図るには、消費者の対象機器に

対するさらなる認知向上が不可欠です。

そこで私たちの活動をより身近にご理解

いただこうと考え、植樹活動の拠点をベ

トナムから国内に移すことにしました。

 

省エネ性に優れた対象機器の普及によ

る家庭のCO2

排出削減と、松原再生活

動への支援による津波被災地域の自然環

境の再生や地域活性化に寄与する活動と

して、今後も協力企業などとともに、積

極的にブルー&グリーンプロジェクトを

推進していきます。

対象機器の普及で

CO2

削減と植樹活動を推進

那珂正理事長

 2006年の6月、ブルー&グリーンプロジェクトの植樹活動はベトナムでスタートしました。「ガスで森をつくる」をキャッチフレーズに、省エネ型高効率ガス給湯・暖房機の普及1台につき1本の植樹(アカシアマンギウム等)を実施。日本の家庭の消費エネルギー削減と海外での緑化活動に取り組んできました。約8年にわたり行った累計390万本(約2200㌶)の植樹活動を通じて、森林回復による環境改善効果とともに林業雇用創出や水源確保による地域住民の生活水準の向上など、大きな社会効果を生み出すことができました。 ちなみにベトナムでの植樹によるCO2削減効果では年間約6万㌧が見込まれ、対象機器の普及では、年間約99万㌧のCO2が削減できます。年間合計で日本の約21万世帯の排出量にあたる、約105万㌧のCO2削減効果があるのです。

発行日:2014年10月31日編集・発行:毎日新聞社 水と緑の地球環境本部発行人:斗ヶ沢秀俊

〒100-8051 東京都千代田区一ツ橋1の1の1☎ 03・3212・2607 FAX 03・5208・4946E-mail:[email protected]デザイン:中村千晶、山本幸枝

ベターリビング

植栽後、3年3カ月

植栽前

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