オープン化時代に求められる

知財人材

日本知財学会2015年度春季シンポジュウム

弁理士 佐藤辰彦 Ph.D.

特許業務法人創成国際特許事務所

早稲田大学大学院客員教授

トヨタのパテントコモンズ戦略

• トヨタ自動車は2015年1月５日、同社が持つ燃料電池車の関

連特許約5680件をすべて無償で提供すると発表した。

• 提供するのはトヨタが単体で保有する燃料電池車の特許。グループの部品企業が持つ特許は対象外。水素と酸素を反

応させて発電させる中核部品の「スタック」と、燃料タンク、シ

ステム制御関連の計5610件に関しては、2020年末までの特

許実施権を無償とする。水素ステーションの関連特許約70件

については、公共性が高いため無期限で無償提供する。

パナソニックのパテントコモンズ戦略

• パナソニックは2015年3月23日、同社が保有するIoT

（Internet of Things：モノのインターネット）関連特許やソフト

ウェアなどの知的財産を無償提供すると発表した。IoT関連

アプリケーションやサービスの開発と普及を促進する狙いと

いわれる。

• ホームモニタリングや太陽光発電などで使われているデバイスとクラウドを結ぶ技術について、無償で利用できるようにす

る。知的財産の公開で互換性を高め、IoTサービスの開発と

普及を加速し、接続デバイスの拡大を期待している。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kyousou/dai4/siryou1.pdf知的財産戦略本部競争力強化専門調査会

イノベーションモデルイノベーションモデルイノベーションモデルイノベーションモデルにににに基基基基づくづくづくづく知的財産知的財産知的財産知的財産戦略戦略戦略戦略

5

知的財産知的財産知的財産知的財産ライフサイクル・モデルライフサイクル・モデルライフサイクル・モデルライフサイクル・モデル

成熟段階 衰退段階

成長段階

初期段階

提

供

す

る

価

値

時間

標準化による市場形成→市場優位の技術の囲い込み

→市場ポジションでの選択と集中

製品技術から製造技術の競争力強化→収益の最大化

他の分野へ知財活用の転換→市場転換・移行

市場撤退と後発エリアへの事業・技術移転

市場形成市場形成市場形成市場形成のためのビジネスモデルのためのビジネスモデルのためのビジネスモデルのためのビジネスモデル構築構築構築構築

基本発明・技術の確立

出展：「オープンビジネスモデル」ヘンリー・チェスブロウのモデルを参考に作成

6

オープンオープンオープンオープンかかかかクローズかクローズかクローズかクローズか

差別化か、標準化？

デファクトデファクトデファクトデファクト化化化化 デジュールデジュールデジュールデジュール化化化化 差別化差別化差別化差別化

普及普及普及普及をををを後押後押後押後押しししし 普及普及普及普及をををを後押後押後押後押しししし 収入獲得収入獲得収入獲得収入獲得

Win－Win条件 規格関係者と条件協議

技

術

経

営

知

財

の

役

割

技術技術技術技術のののの位置位置位置位置づけづけづけづけ判断判断判断判断

差別化差別化差別化差別化

標準化標準化標準化標準化

7

自社優位の基本技術の開発

早期の周辺技術の開発

製品化品質機能優位の最大化

開発先行優位の最大化

権利化の選択と集中

強い特許群

＋

ノウハウ

知財コスト低減の最大化

製品差別の最大化

知財取引ポジションの最大化

市場形成優位の最大化

市場需要の最大化

デファクト化 デジュール化

市場形成・適合化

基本特許 周辺特許

+

+

開

発

戦

略

知

財

戦

略

事

業

戦

略

市

場

優

位

係争コストの低減

権利化コストの低減

技術標準の確立

市場需要の喚起

差別専有力の強化

研究開発先行

品質機能先行

他社特許の取り込み

収

益

の

最

大

化

収益の再投資

技術開発に反映

事業戦略に反映

普及の後押し

パンテントプール形成

ブラックボックス化

オープンオープンオープンオープン・・・・クローズのリニアモデルクローズのリニアモデルクローズのリニアモデルクローズのリニアモデル

発明の保護と市場優位２００９ 佐藤辰彦

8

共創共創共創共創モデルモデルモデルモデル（（（（研究開発研究開発研究開発研究開発のオープンのオープンのオープンのオープン化化化化））））

研究開発研究開発研究開発研究開発のののの競争競争競争競争モデルのモデルのモデルのモデルの変化変化変化変化

イノベーションを強化する産業技術政策のあり方(中間報告）

産業構造審議会産業技術分科会基本問題小委員会 ２００９

9

共共共共創創創創モデルモデルモデルモデル（（（（研究開発研究開発研究開発研究開発のオープンのオープンのオープンのオープン化化化化））））

自前主義モデルから分散統合モデルへ

イノベーションを強化する産業技術政策のあり方(中間報告）

産業構造審議会産業技術分科会基本問題小委員会 ２００９

コンソーシアム

インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ

• 2015年6月18日、三菱電機・ＩＨＩ・川崎重工・富士通など国内

有力30社以上が、次世代の「ものづくり技術の標準化」を目

指すコンソーシアムを設立。

• ＩＣＴを利用して工場間や設備同士をつなぐ（ＩｏＴ）規格を標準化し、相互に接続しやすくする。

• 法政大学の西岡靖之教授を中心に具体的事項について議論を進める。

2015年6月8日日本経済新聞

11

オープン・イノベーションのオープン・イノベーションのオープン・イノベーションのオープン・イノベーションの流流流流れでれでれでれで求求求求められるものめられるものめられるものめられるもの

・・・・実現実現実現実現すべきすべきすべきすべき新新新新たなたなたなたな価値観価値観価値観価値観にににに基基基基づくづくづくづく

社会社会社会社会システムシステムシステムシステムののののコンセプトをコンセプトをコンセプトをコンセプトを提案提案提案提案するするするすることことことこと。。。。

・コンセントドリブン・コンセントドリブン・コンセントドリブン・コンセントドリブン型型型型のののの研究研究研究研究開発開発開発開発をををを通通通通じてじてじてじて市場市場市場市場をををを作作作作るるるる。。。。

これをこれをこれをこれを前提前提前提前提にににに、、、、

①①①①専門化専門化専門化専門化・・・・高度化高度化高度化高度化したしたしたした要素技術要素技術要素技術要素技術のののの組組組組みみみみ合合合合わせでどのようにわせでどのようにわせでどのようにわせでどのように実現実現実現実現するのかするのかするのかするのか

②その②その②その②その組組組組みみみみ合合合合わせのわせのわせのわせの中中中中でででで主導的主導的主導的主導的なななな要素技術要素技術要素技術要素技術をどのようにをどのようにをどのようにをどのように確保確保確保確保するのかするのかするのかするのか

③その③その③その③その競争競争競争競争をををを効率的効率的効率的効率的にににに進進進進めるためにめるためにめるためにめるために、、、、共通基盤技術共通基盤技術共通基盤技術共通基盤技術のののの確立確立確立確立とととと標準化標準化標準化標準化とととと要素技術要素技術要素技術要素技術のインターフェイスをのインターフェイスをのインターフェイスをのインターフェイスを

いかにいかにいかにいかに実現実現実現実現するかするかするかするか

がががが「「「「ものづくりものづくりものづくりものづくり事業化事業化事業化事業化」」」」でででで求求求求められてめられてめられてめられているいるいるいる。。。。

イノベーションを強化する産業技術政策のあり方(中間報告）

産業構造審議会産業技術分科会基本問題小委員会 ２００９

12

成長

拡

大

拡

大

共創

市場市場市場市場形成の形成の形成の形成の

コンセプトリーダーコンセプトリーダーコンセプトリーダーコンセプトリーダー

事業プラットフォーム事業プラットフォーム事業プラットフォーム事業プラットフォーム

内外中小企業 内外中小企業

内外中小企業

内外中小企業

技術力

スピード

技術力

スピード

ブランド力

企画力

アジア市場

米国市場

欧州市場アフリカ市場

ASML(オランダオランダオランダオランダ)は２０００は２０００は２０００は２０００年代年代年代年代

のののの初初初初めからめからめからめから既既既既にこのモデルをにこのモデルをにこのモデルをにこのモデルを

実現実現実現実現しているしているしているしている→世界世界世界世界シェア６３㌫シェア６３㌫シェア６３㌫シェア６３㌫

エコイノベーションエコイノベーションエコイノベーションエコイノベーション

オープンイノベーションによるプラットフォームオープンイノベーションによるプラットフォームオープンイノベーションによるプラットフォームオープンイノベーションによるプラットフォーム

のののの展開展開展開展開

INSIDE-OUT

OUTSIDE-IN

13

世界世界世界世界をををを取取取取りりりり込込込込むオープンビジネスモデルむオープンビジネスモデルむオープンビジネスモデルむオープンビジネスモデル

プラットフォームをプラットフォームをプラットフォームをプラットフォームを支配支配支配支配するするするする

→携帯端末携帯端末携帯端末携帯端末OSのオープンのオープンのオープンのオープン化化化化によるによるによるによる囲囲囲囲いいいい込込込込みみみみ

＊＊＊＊世界世界世界世界シェアはシェアはシェアはシェアは日経新聞日経新聞日経新聞日経新聞２０１２２０１２２０１２２０１２．．．．１１１１１１１１．．．．１９１９１９１９朝刊朝刊朝刊朝刊によるによるによるによる

ⅰＯＳ アンドロイド ウィンドウズ

マイクロソフト

アップルグーグル

アマゾン

ⅰＰａｄ

タブレット

ネクサス７

タブレット

キンドル・ファイヤ

タブレット

サーフェス

ＰＣタブレット

（鴻海） アセンブリメーカー（ex☺サムソン・HTC）

部品メーカー

インターネットインターネットインターネットインターネット

電子書籍電子書籍電子書籍電子書籍・ネットオークション・ネットオークション・ネットオークション・ネットオークション

インターネットインターネットインターネットインターネット検索検索検索検索

アプリ アプリ

ユーザー・

インターフェイス

競争の場

OSのオープンのオープンのオープンのオープン化化化化によるによるによるによる囲囲囲囲いいいい込込込込みみみみ

世界シェア

７２．７㌫世界シェア

１３．９㌫

平成23年度特許出願技術動向調査報告書 燃料電池

①アプローチ①アプローチ①アプローチ①アプローチ：：：：事業事業事業事業をををを俯瞰俯瞰俯瞰俯瞰するするするする

平成23年度特許出願技術動向調査報告書 燃料電池

②アプローチ②アプローチ②アプローチ②アプローチ：：：：強強強強みみみみ・・・・弱弱弱弱みみみみをををを検証検証検証検証するするするする

平成23年度特許出願技術動向調査報告書 燃料電池

③アプローチ③アプローチ③アプローチ③アプローチ：：：：競争環境競争環境競争環境競争環境をををを見極見極見極見極めるめるめるめる。。。。

経済産業省：水素・燃料電池戦略ロードマップ概要

④アプローチ④アプローチ④アプローチ④アプローチ：：：：グランドデザインをするグランドデザインをするグランドデザインをするグランドデザインをする。。。。

経済産業省：水素・燃料電池戦略ロードマップ概要

⑤アプローチ⑤アプローチ⑤アプローチ⑤アプローチ：：：：ロードマップをロードマップをロードマップをロードマップを作作作作るるるる。。。。

19192015/7/19

事業戦略事業戦略事業戦略事業戦略

知財戦略知財戦略知財戦略知財戦略開発戦略開発戦略開発戦略開発戦略

１１１１．．．．三位一体三位一体三位一体三位一体のののの経営経営経営経営をををを進化進化進化進化させるさせるさせるさせる。。。。

２２２２．．．．そのためにはそのためにはそのためにはそのためには三者三者三者三者がががが一体一体一体一体にににに行動行動行動行動するためのするためのするためのするための戦略情報戦略情報戦略情報戦略情報のののの共有共有共有共有がががが必要必要必要必要

３３３３．．．．戦略情報戦略情報戦略情報戦略情報としてとしてとしてとして知財情報知財情報知財情報知財情報をををを活用活用活用活用するするするする。。。。

知財情報知財情報知財情報知財情報のののの経営戦略情報化経営戦略情報化経営戦略情報化経営戦略情報化のののの必要性必要性必要性必要性

知財情報知財情報知財情報知財情報 知財情報知財情報知財情報知財情報

知財情報知財情報知財情報知財情報

（知財情報解析知財情報解析知財情報解析知財情報解析））））技術技術技術技術ポジションポジションポジションポジション分析分析分析分析：：：：共起共起共起共起ネットワークネットワークネットワークネットワーク分析分析分析分析

有機有機有機有機ＥＬＥＬＥＬＥＬ分野分野分野分野のののの各社各社各社各社 技術技術技術技術ポジションポジションポジションポジション分析分析分析分析

19

「課題」の観点から各社

をポジショニング

「構成（解決手段）」の観点から

各社をポジショニング

特定特定特定特定のののの構成構成構成構成／／／／課題課題課題課題にににに注力注力注力注力するするするする出願人出願人出願人出願人をををを発見発見発見発見しししし、、、、

・・・・潜在的潜在的潜在的潜在的なななな競合競合競合競合

・アライアンス・アライアンス・アライアンス・アライアンス先先先先

・・・・技術技術技術技術のののの売売売売りりりり込込込込みみみみ先先先先

をををを発見発見発見発見するするするする。。。。

21

伸び率(件/年)

（（（（知知知知財情報解析財情報解析財情報解析財情報解析））））ライフサイクルマップのライフサイクルマップのライフサイクルマップのライフサイクルマップの解析解析解析解析

（（（（※※※※出願公開出願公開出願公開出願公開のののの時期時期時期時期をををを考慮考慮考慮考慮しししし、、、、2011年以降年以降年以降年以降はははは参考値参考値参考値参考値））））

21

技術技術技術技術のののの発展度合発展度合発展度合発展度合いといといといと技術技術技術技術

進歩進歩進歩進歩ののののＳＳＳＳ字字字字カーブとカーブとカーブとカーブと対応対応対応対応づづづづ

けることでけることでけることでけることで、、、、製品製品製品製品ライフサイライフサイライフサイライフサイ

クルもクルもクルもクルも推測推測推測推測。。。。

22

（知財解析）企業の開発動向分析

使用ソフト：Χｌｕｓ（カイラス）

上記マップは、関連技術が２５件以上まとまっているもの、即ちその会社の重点出願

を表すものについて、時系列でみたもの。

青はA社、赤はB社を表す。各社各社各社各社のののの開発中心開発中心開発中心開発中心のののの移動移動移動移動がががが

みえるみえるみえるみえる。。。。

23

・・・開発対象の検討項目に挙がっている課題

特許網の可視化 開発候補分野開発候補分野開発候補分野開発候補分野をををを発見発見発見発見するするするする

（知財情報解析）ポジション分析

ウェブクローリング系

自社サイト利用

(e-コマース）

自社グループ製品・サー

ビスの検索

検索エンジン系

関連事業有り（広告等）系

サイジニア

検索エンジンオンリー系

コンサル系

コンテンツ保有せず

（検索サービス等）

コンテンツ保有

(eコマースサイト等)

検索エンジン開発・提供が主（技

術開発）

自社サイト・サービスで利用が主

Amazon

Google

YahooeBay

IBM

Microsoft

Sony

Alibaba

Strands Labs

Daily Me

StumbleUpon

NaviPlus

チームラボ

Hunch

Recorded Future

InSuggestCollarity

CBS Interactive

Baynote

StyleFeeder

ALBERT

一般情報（ウェブ情報やＩＲ

情報）から整理

https://gt110.secure.ne.jp/%7Egt110230/PA2014/program.pdf

262015/7/19

１１１１．．．．事業事業事業事業部門部門部門部門・・・・開発開発開発開発部門部門部門部門のののの戦略化戦略化戦略化戦略化にににに寄与寄与寄与寄与するするするする。。。。

２２２２．．．．そのためにはそのためにはそのためにはそのためには三者三者三者三者がががが一体一体一体一体にににに行動行動行動行動するためのするためのするためのするための戦略情報戦略情報戦略情報戦略情報のののの共有共有共有共有。。。。

３３３３．．．．知財知財知財知財戦略部門戦略部門戦略部門戦略部門のののの専門分化専門分化専門分化専門分化とととと知知知知財財財財プロデューサープロデューサープロデューサープロデューサーのののの育成育成育成育成をををを目指目指目指目指すすすす。。。。

オープンオープンオープンオープン化時代化時代化時代化時代のためののためののためののための知財戦略部門知財戦略部門知財戦略部門知財戦略部門のののの強化強化強化強化

戦略戦略戦略戦略情報情報情報情報 戦略戦略戦略戦略情報情報情報情報

戦略戦略戦略戦略情報情報情報情報

事業戦略事業戦略事業戦略事業戦略

知財戦略知財戦略知財戦略知財戦略開発戦略開発戦略開発戦略開発戦略

知財知財知財知財ネゴシエーターネゴシエーターネゴシエーターネゴシエーター

IP negotiator

知知知知財交渉財交渉財交渉財交渉・・・・標準化標準化標準化標準化

知知知知財財財財アナリストアナリストアナリストアナリスト

IP Analyst

知財情報解析

知知知知財財財財プロセキュータープロセキュータープロセキュータープロセキューター

IP prosecutor

知財ポートフォリオ

知財知財知財知財プロデユーサープロデユーサープロデユーサープロデユーサー

IP producer

知財企画

知

財

知

財

知

財

知

財

戦

略

部

門

戦

略

部

門

戦

略

部

門

戦

略

部

門

27

知財の役割分担

四位一体のフォーメーション

開発者

知財担当

弁理士

開発情報

知財情報

知財専門スキル

事業事業事業事業をををを成長成長成長成長させるさせるさせるさせる

知財知財知財知財のののの構築構築構築構築とととと活用活用活用活用

各分野各分野各分野各分野のののの特性特性特性特性にあったにあったにあったにあった活動活動活動活動をををを

分担分担分担分担することによりすることによりすることによりすることにより各各各各セクターのセクターのセクターのセクターの強強強強みみみみ

をををを生生生生かすかすかすかす。。。。

知財の創出 ポートフォリオ

の構築

知財の戦略的活

用

経営者

経営情報

知財知財知財知財をををを企業企業企業企業のののの競争資源競争資源競争資源競争資源とするためにとするためにとするためにとするために

オープン化時代に求められる

知財人材

弁理士 佐藤辰彦

特許業務法人創成国際特許事務所

早稲田大学大学院客員教授