メコン(ミャンマー・タイ) 食の安全性をテーマとする青少...

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21 世紀東アジア青少年大交流計画 2011 年度 メコン(ミャンマー・タイ) 食の安全性をテーマとする青少年派遣事業 報告書 (2012 年 6 月 30 日~2012 年 7 月 9 日) 2012 年 7 月 財団法人日本国際協力センター

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  • 21 世紀東アジア青少年大交流計画

    2011 年度

    メコン(ミャンマー・タイ)

    食の安全性をテーマとする青少年派遣事業

    報告書

    (2012 年 6 月 30 日~2012 年 7 月 9 日)

    2012 年 7 月

    財団法人日本国際協力センター

  • 目 次

    はじめに 1

    1. 21 世紀東アジア青少年大交流計画とは 2

    2. メコン食の安全性をテーマとする派遣事業(タイ・ミャンマー)概要 3

    3. 写真で振り返るプログラム 4

    4. 全体日程 7

    5. プログラム詳細 8

    6. 派遣団報告発表 13

    7. 派遣団の感想 18

    おわりに 20

  • 2007 年より日本政府が進めている「21 世紀東アジア青少年大交流計画」(英文名:

    JENESYS Programme)の一環として、メコン地域の食の安全性をテーマとして、日本人青

    年 7 名がタイ・ミャンマーの両国を訪問しました。

    本プログラムは、国内において食品衛生・成分分析・研究を行なっている若手実務家・

    研究者がタイ・ミャンマー両国の食品安全管理の現状を学び、現地の若手実務家・研究

    者・開発者と意見交換を行なうことで同国における食の安全性の向上の一助となり、また

    日本側にとっても、東南アジアにおけるより一層の食の安全の確保のための協力可能性

    を探る機会となることを目的として実施されました。

    派遣団は、出発前のオリエンテーションを受け準備を万端に整えて、多くの期待を胸に

    出発しました。

    初めに訪れたタイでは、「世界の台所」と言われている同国でも最先端の日系、現地の

    食品加工工場を視察するとともに、工場関係者の方々と活発に意見を交換し、日本と遜色

    のない食品安全・衛生管理のレベルを実感しました。また、タイ滞在最終日の報告会では、

    食品の安全管理分野に従事するタイ国政府職員と活発、かつ率直な意見交換を行いまし

    た。

    続いて訪れたミャンマーでは、2010 年度に JENESYS 招へいプログラムで来日した若手

    食品研究者たちと再会し、同国で実施されてきた草の根無償資金協力による食品分析・

    検査技術向上プロジェクトを視察し、活発な意見交換を行ないました。

    日本の若手研究者たちは、両国の食品加工現場やスーパー、市場などを視察すること

    でその食品加工の多様性を学び、また両国の独特の食文化に触れ、各国の食文化を尊

    重しつつ食品衛生や安全基準をクリアする方策について日々議論を繰り広げました。

    今回、プログラムの実施にあたり、在タイ日本国大使館、在ミャンマー日本国大使館、ミ

    ャンマー食品加工・輸出業者協会並びに多くの関係者の皆様のご協力により成功裏に幕

    を閉じることができました。ご多忙中にも関わらず、日本の若手食品研究者の訪問を快く

    引き受けていただいた全ての関係者の皆様に改めて心よりお礼申し上げます。

    はじめに

  • 1.21 世紀東アジア青少年大交流計画(JENESYS Programme)とは

    (Japan-East Asia Network of Exchange for Students and Youths)

    2007 年 1 月に開催された第 2 回東アジア首脳会議(EAS)において、日本政府が提唱し

    た事業で、大規模な青少年交流を通じてアジアの強固な連帯にしっかりとした土台を与え

    るとの観点から進められる事業です。EAS 参加国(ASEAN、中国、韓国、インド、豪州、

    ニュージーランド)を中心に、2007 年から 5 年間、招へい事業、派遣事業等を通して、青少

    年の相互理解と友好関係の促進を目的とした交流プログラムを実施するものです。

    <概 要>

    注)SAARC 南アジア地域協力連合

  • 2.メコン「食の安全性をテーマとする青少年派遣事業」概要

    ・派遣期間: 2012 年 6 月 30 日(土)~7 月 9 日(月)

    ・団員数: 7 名 (男性 4 名、女性 3 名)

    ・訪問国: タイ王国(バンコク、サラブリ、サムットプラカーン、ノンタブリ)

    ミャンマー連邦共和国(ヤンゴン)

    【出典:http://www.nationsonline.org】

    ・現地交流・視察先:

    <タイ> 保健省 食料薬品管理局(FDA)

    農業・協同組合省 農産品・食品規格基準局(ACFS)

    CP Foods サラブリ鶏肉加工工場

    タイ味の素社 ノンケー工場

    上野製薬株式会社 パンプー工場

    <ミャンマー> ミャンマー食品加工・輸出業者協会(MFPEA)

    食品産業開発支援研究所(FIDSL)

    Crystal Springs Co.,Ltd

    Tin Ye Win Manufacturing Co.,Ltd.

    ノンタブリ

    サムットプラカーン

    サラブリ

    ヤンゴン

    バンコク

  • 在タイ日本国大使館:表敬訪問 上野製薬株式会社:パンプ―工場視察

    上野製薬(株)パンプ―工場:分析ラボ バンコク市内視察:交通機関 BTS 体験

    CP Foods(鶏肉加工工場)視察 味の素ノンケー工場視察

    3.写真で振り返るプログラム

  • 保健省食料薬品管理局(FDA) オートーコー市場視察

    オートーコー市場:ドリアン試食 ミャンマー・食品産業開発支援研究所(FIDSL)

    食品産業開発支援研究所(FIDSL):ラボ見学 クリスタル スプリング(株):飲料水工場視察

  • Tin Ye Win (株):キャンディ工場視察 ローカル市場視察

    民族料理「モヒンガー」体験 シェダゴン・パゴダ視察

    報告会・招へいプログラム参加者とともに 民族衣装ロンジーを着て過去の招へい者と

  • 4.全体日程

    プログラム 目的 宿泊成田集合

    結団式・オリエンテーション

    夕方: 市内視察(車窓より)スーパーマーケット視察①

    市内の様子を視察し、同国理解の発端とする。

    午前 在タイ日本国大使館 訪問 両国関係の歴史と現況を知り、相互理解と交流の一助とする。

    上野製薬株式会社 パンプ―工場視察(在サムットプラカーン)*バンコクより車で南へ約40分程度

    食品添加物工場の現場を訪れることで、現場の安全管理体制や取組みについて知識を得、理解を深める。

    バンコク市内視察(ワット・ポー またはワットアルン、チャオプラヤー川エキスプレスボート)

    代表的な歴史、伝統文化施設を見学し、その土地に根付く文化を同国への理解を深める一助とする。

    スーパーマーケット視察②タイマーケットで人気のある日本食レストラン視察

    同国の食品マーケット、食品衛生管理、食の嗜好等について理解を深める。

    午前CPグループ(タイ二大大手の食品会社)CP Foods鶏肉加工工場視察(在サラブリ)*バンコクより車で北へ約2時間

    午後味の素 ノンケー工場視察(在サラブリ)*バンコクより車で約1時間半

    保健省食料薬品管理局(FDA)訪問 (在ノンタブリー)講義 (タイの法整備、現状と取り組みについて)

    タイ国の食品安全管理を統括している省庁を訪問することで、同国の食品安全管理分野における、法整備、現状及び今後の課題について知識を得、また同世代の研究者との交流を通じ、同国に対する理解を深める。

    オートーコー市場視察市内で食品を取り扱う市場やスーパーマーケットを視察することにより、同国の食品マーケット、食品衛生管理等について理解を深める。

    午後ワークショップ報告レセプション

    今回のプログラムを通して学んだこと、気づき及びこの経験の今後への活かし方について、在タイ日本国大使館、タイ政府関係者、過去のJENESYS招聘者等に報告する。

    午前

    在ミャンマー日本国大使館 訪問 両国関係の歴史と現況を知り、相互理解と交流の一助とする。

    ミャンマー食品加工・輸出業者協会(MFPEA)訪問講義:ミャンマーの現状と取り組みについて食品産業開発支援研究所(FIDSL)視察

    ミャンマーにおける食の安全・管理のための技術研修等食品産業における日本の支援および取り組みについて学ぶ。

    7月6日(金)

    終日食品工場視察Crystal Sprongs(飲料水)Tin Ye Win Manufacturing(キャンディ)

    食品工場の現場を訪れることで、現場の安全管理体制や取り組みについて知識を得、理解を深める。

    午前ヤンゴン市内視察(シェダゴン・バゴダ、マーケット視察)

    ヤンゴン市内の見所を巡ることにより、同国への理解を深める一助とする。また、ヤンゴン市内で食品を取り扱う市場を視察することにより、食品衛生管理等について理解を深める。

    午後 ワークショップ、報告会準備今回のプログラムを通して学んだこと、気づき及びこの経験の今後への活かし方についてまとめる。

    午前過去の招へい者とのディスカッションMAFPEA/FIDSL関係者、若手研究者、若手食品関連業者

    過去の招聘者でもある若手研究者とミャンマー国の食品安全管理について理解を深めると同時に、日本における食品安全管理の現状と取り組みについても紹介し、ミャンマー国における日本理解の促進を図る。

    報告会今回のプログラムから学んだことと、この経験の今後への活かし方について、在ミャンマー日本国大使館、FIDSL関係者、交流関係者、過去のJENESYS招へい者等に報告する。

    7月9日成田08:10(NH916)解散

    月日

    6月30日(土)

    午後出発前にJENESYS事業の概要や派遣プログラムのコンセプトを理解し、訪問に向けた事前知識を得、心構えをする。

    成田泊

    7月1日(日)

    午後

    成田 10:50 → バンコク 15:25 (NH953)

    バンコク泊

    7月2日(月)

    午後

    7月3日(火)

    食品工場の現場を訪れることで、現場の安全管理体制や取り組みについて知識を得、理解を深める。

    7月4日(水)

    午前

    7月5日(木)

    バンコク 09:15 → ヤンゴン 10:05 (PG701)

    ヤンゴン泊

    午後

    7月7日(土)

    7月8日(日)

    機内泊

    午後ヤンゴン 19:40 → バンコク 21:35 (TG306)

    バンコク 23:55 →  (NH916)

  • 5.プログラム詳細

    月 日 内 容

    7 月 1 日

    (日)

    視察:スーパーマーケット(Tops)

    【概要】

    バンコク到着後、一行はタイ最大の小売業社であるトップス・スーパーマーケットを訪問し、食料

    品の品揃えや価格、冷蔵庫の温度管理の状況、商品の成分・消費期限表示の有無、生鮮品の

    保存・包装状態などを中心に、参加者は食品分析担当者の視点で店内を観察していた。

    7 月 2 日

    (月)

    在タイ国日本大使館訪問

    【概要】

    経済部一等書記官(農林水産業担当)よりタイ国の概要について講義を受けた後、大使を表敬

    訪問した。

    講義では、タイの歴史・政治・経済情勢、日タイ関係に加えて、アグリビジネスを重要・成長産業

    として位置付け、「キッチン・オブ・ザ・ワールド」のキャッチフレーズの基で輸出振興に力を入れ

    ていること、日系食品企業の進出も盛んで、アジアの食品加工センターとしての役割を担ってい

    ること、日本食ブームの中、日本食レストランが爆発的に増加していることなど、タイの農水産

    業・食品産業についても多く語られ、参加者は有益な予備知識を得ることができた。

    大使との面談では、大使から、参加者 7 人のうち 6 人が所属する日本食品分析センターの業務

    内容、食品分析手法、データの活用方法など参加者の業務に関連することを数多く質問され、

    また、食の安全について、タイ以外の国の事例も紹介されるなど、和やかな雰囲気の中での表

    敬訪問となった。

    視察:上野製薬株式会社パンプー工場

    【概要】

    1989 年にバンコク市南東に位置するバンプー工業団地に設立された、タピオカ澱粉などタイの

    農産資源を原料に、人工甘味料等の製品を日本の規格に合わせて製造する日系食品工場を

    視察した。

    会社概要を紹介する DVD を視聴した後、工場施設(タピオカ試験圃場、マルチトール、ソルビト

    ール製造工場、制御室、原料保管庫、粉末化施設、倉庫、充填室、QC 室等)を見学した。参加

    者は非遺伝子組み換え作物を原料としていること、工場の周りにアリ侵入防止溝など昆虫など

    の侵入防止策が施されていること、製品のトレーサビリティーが可能であることなどが、特に印

    象に残った様子であり、施設見学の途中、また、質疑応答の時間に、多くの質問を投げかけて

    いた。

    視察:バンコク市内視察(ワット・ポー寺院、チャオプラヤー川エキスプレスボート)

    【概要】

    巨大な寝釈迦像があるバンコク最古の寺院であるワット・ポー寺院を見学し、タイの歴史・文化

    の一端に触れることができた。また、バンコク市民が通勤、通学の足として利用するチャオプラ

    ヤー川エキスプレスボートに乗船し、ラッシュ時で混みあうタイ人の通勤の様子を垣間見ること

    ができた。

  • 視察:スーパーマーケット(Gourmet Market)

    【概要】

    バンコク市内にある高級スーパーマーケットを訪問した。グルメマーケットと命名されているだけ

    あり、参加者は、国内外の高級食品が充実していること、また、日本の高級スーパーマーケット

    と遜色のない衛生管理の状況に驚いていた。

    7 月 3 日

    (火)

    視察:CPF 鶏肉加工工場

    【概要】

    農業・食料品分野のみならず、通信、不動産など 8 分野で事業を展開する、タイ最大の複合企

    業 CP(Charoen Phokphan)グループの CP Foods 社の鶏肉一貫加工工場を視察した。動物愛

    護とイスラム教作法に則った鶏の処理方法、HACCP システムを組み込んだ加工工程、複数回

    にわたる製品の検査体制(調理後、市販前・後)など、徹底した食の安全・衛生管理体制につい

    て学ぶことができた。参加者は、日本と同等、もしくはそれ以上の管理レベルにあると感嘆して

    いた。また、日本では一般的でないハラル食品への対応などに参加者は強く印象付けられてい

    た。

    視察:味の素ノンケー工場

    【概要】

    タイ中部サラブリ県のノンケー工業団地内にある、アジア地域では最大規模の味の素ノンケー

    工場で生産される、タイ国内で広く使われている調味料“ロッテイ Ros Dee”、日本向け商品であ

    るクックドゥ(Cook Do)の製造現場を視察した。また、同社が、品質、安全、環境の 3 点を社会

    的責務として、HACCP、GMP の基準に合わせた、環境や労働安全衛生にも配慮して製品を製

    造していること、また、同社の海外事業戦略などにつき、説明を受けた。参加者は、同社による

    徹底した食品安全・衛生管理に強く印象付けられる一方、一部の工程においては、オートメー

    ション化せず、多くの労働力で対応している点などに関心を寄せていた。

    7 月 4 日

    (水)

    講義:タイの法整備、現状と取組について

    【概要】

    保健省食料薬品管理局(FDA)を訪問し、タイ国の食品安全管理の現状と法制度、食料薬品管

    理局(FDA)の役割について講義を受けた。

    “安全で健康に良い食品”、“世界の台所”を政策として掲げ、タイ国内で生産される食品はもと

    より、海外から輸入される食品の検査を実施し、食品の安全確保に努めていること、全ての加

    工製品は FDA の認証を受けたうえで登録しないとタイ国内では販売できないこと、登録製品は

    13 桁のシリアルナンバーで管理され、消費者も 13 桁の登録番号をインターネットで検索するこ

    とにより製品の詳細情報を見ることができることなど、政府機関による徹底した管理システムに

    参加者は驚いていた。また、中国製品については少なからず警戒していること、日本製品につ

    いては原発事故直後の一時期は規制を強めていたが、現在は事故前と変わらない対応をして

    いるとの回答に、参加者は安堵感を滲ませていた。

  • 視察:オートーコー市場

    【概要】

    タイ各地から運ばれる選りすぐりの野菜、果物、鮮魚精肉、乾物、米など、質の良い食材が揃う

    市場として知られているオートーコー市場を視察し、同市場における食材の陳列の様子から、

    衛生管理の様子を観察した。

    ワークショップ、報告レセプション

    【概要】

    プログラムを通して学んだこと、気づいたことについてグループ討議を行った後、在タイ日本国

    大使館経済部一等書記官(農林水産業担当)、タイ政府 農業・協同組合省 農産品・食品規

    格基準局(ACFS)の職員 2 名を交えて報告会を行った。

    参加者からは、以下の通り、報告がなされた。

    1) タイにおける食品の安全確保への取組みは制度的にも高いレベルであり、製品加工施設に

    おける食の安全・衛生管理は非常に高い水準に達している。

    2)イスラム教の戒律に基づいた生産基準を整備し、鶏肉の処理に当たってはハラルを順守し

    た生産を行うなど、包括的な食の安心・安全への取組みがなされている。

    3) 一方、スーパー等に陳列されている商品の包装状態、飲食店における衛生管理については

    改善の余地が見られる。

    発表後の懇談会では、日本留学の経験を持つ ACFS 職員 1 人から「タイは海外への輸出製

    品に対しては細心の注意を払って完全な対応をしているが、国内消費分、特に農産品の安全

    性確保については十分な対応がなされているとはいえない」との実情を聞き、参加者から、視

    察では把握することのできない実態を知ることができ、非常に有意義であったとのコメントがあ

    った。

    タイ→ミャンマーへ移動

    7 月 5 日

    (木)

    在ミャンマー日本国大使館訪問

    【概要】

    ミャンマーの歴史と政治・経済情勢の現状等について説明を受けた。

    「国軍主導とは言え民主化への取組みが進み、欧米各国も活発な外交活動を展開するなど高

    速回転するミャンマー情勢であるが問題は多い。財閥が誕生する一方、民族衣装であるロンジ

    ーも買えない程の貧困層もいるなど貧富の格差は大きく、識字率 90%と言われているが実質

    は 50~60%ぐらいで、貧しさゆえに子供は労働力とみなされているため、大学進学率は非常に

    低い。また、大学を卒業しても就職先がないという深刻な就職難でもある。

    このような状況の中、食品の安全性については国際基準からかけ離れているのが現状だが、

    日本の支援を受けながら自主規準を設けるなどして改善を目指している。」

    参加者は政府の農産品輸出促進政策の有無、教育制度、日系企業の進出状況などの質問に

    加えて、対応してくれた大使館職員のミャンマーでの辛い体験、お薦めのミャンマー料理なども

    質問して、その回答のユニークさ、面白さで大いに盛り上がった。

  • 視察:ミャンマー食品加工・輸出業者協会(MFPEA)、食品産業開発支援研究所(FIDSL)

    【概要】

    ミャンマー食品加工・輸出業者協会(MFPEA)の会長、副会長の挨拶の後、食品産業開発支援

    研究所(FIDSL)理事より MFPEA と FIDSL の関係とそれぞれの役割と現状について説明を受け

    た。

    「ミャンマーの食品加工、衛生・品質管理技術は前近代的なものが多く、検査機器の不足もあ

    り、食品分析検査(食品の成分分析、微生物・残留農薬の検査)体制は整っていない。また、食

    品加工・輸出業者が準拠すべき食品衛生・安全に係る法令・基準も未整備のままとなってい

    る。これらを改善すべく、食品加工輸出業界からの要望に基づき、食品の輸出振興、国内食品

    市場拡大を目的とした FIDSL が設立された。しかしながら、ミャンマー側に当該分野における十

    分な知見がないことから、JICA、JETRO による国の食品基準策定、研究所職員の食品分析能

    力向上のための技術支援が求められた。これまでに数名の専門家が JICA、JETRO より派遣さ

    れ、また分析機材も供与されて、一部試験・分析を開始し成果を上げている。」

    説明の後、ラボラトリーを見学した。参加者は予想以上に整った施設・機材に驚きながらも厳し

    い専門家の目で観察し、薬瓶にラベル表示がない、薬品の使用期限の表示がない、有害物

    質、廃棄物の管理が不十分などの指摘をしていた。同ラボラトリーには昨年実施の JENESYS

    若手食品安全研究者・技術者訪日プログラムで来日した研究員たちが数名在籍しており、久々

    の再開を喜びつつ、前述の問題個所を共有し、対策について真剣に考えていた。

    7 月 6 日

    (金)

    工場視察:Cristal Spring Co., Ltd.

    【概要】

    ボトル詰め飲料水、炭酸清涼飲料水を作る工場を視察した。井戸から汲み上げた地下水を原

    水に、国際ボトル飲料水協会(IBWA)のスタンダードを基準にして飲料用として加工している。

    原水の汲み上げからペットボトルの形成(母材のプリフォームは台湾から輸入)充填、梱包など

    ほぼ一貫生産している。ジュースの原材料はシンガポールなどからの輸入に頼っており、その

    理由が国内では原材料の質の担保ができないからという回答に一同は驚いていた。工場の視

    察では、清潔で整頓されている一方で、温度管理などがなされていないことにより製品への影

    響等について互いに議論を交わしていた。

    工場視察:Tin Ye Win Manufacturing Co., Ltd

    【概要】

    1998 年から操業のキャンディを製造する会社で、数ヶ月前にヤンゴン市内にある工業団地に

    移転してきたという新しい工場を訪問した。事務所棟は近代的で清潔感あふれるモダンなオフ

    ィスビルと言ったところだがキャンディ製造工場の方は密閉性がそれほどない、比較的オーソド

    ックスな製造現場であった。低所得者でも手軽に買えるように飴の 1 粒サイズを小さくして価格

    を抑える工夫をしている。海外への輸出も非常に前向きで、日本への輸出も視野に入れている

    のか、日本の食品基準について熱心に日本側参加者に質問していた。

  • 7 月 7 日

    (土)

    視察:ヤンゴン市内視察(シュエダゴン・パゴダ、アウンサンマーケット)

    【概要】

    功徳を積み、来世の幸せを願って寄進される金や宝石で飾られたミャンマー最大の仏塔、シュ

    エダゴン・パゴダと、服飾や日用品、美術品、貴金属などがメインに販売されているヤンゴン市

    内最大規模のアウンサンマーケットを見学した。シュエダゴン・パゴダではミャンマーの作法に

    則って裸足で境内に入り、生まれた曜日の祭壇にお参りした。

    アウンサンマーケットでは売られている布地から、各民族の独特の織り方があることに深い興

    味を示していた。また多くのミャンマーの人々が着用している、民族衣装ロンジーを購入した。

    ワークショップ、報告会準備

    【概要】

    食の安全性への取組みについてミャンマーの現状を視察して気づいたこと、タイの状況との比

    較、そして、それらを踏まえて、食の安全性確保のためのミャンマーへの提言をグループで討

    議して報告会の準備をした。討議は時間内に終わらず、夜遅くまで続けられた。

    7 月 8 日

    (日)

    過去の招へい者との交流

    【概要】

    昨年の JENESYS プログラムの参加者 15 名が参加し、3 テーブルに分かれて派遣団と交流し

    た。最初はお互いの仕事などについて自己紹介があり、日本の芸能人の話や家族の話に及ん

    だ後、今回のプログラムのテーマである食品の分析方法や食品添加物の規制状況でなどにつ

    いて議論が交わされた。日本側の女性参加者は前日に購入したミャンマーの民族衣装ロンジ

    ーを着て出席したため、ミャンマー側の参加者からは喜びの声が上がった。華やかで、和やか

    な雰囲気の交流であった。

    報告会

    【概要】

    過去の招聘者とミャンマー農産品加工・輸出業者協会(MFPEA)の副会長、視察したキャンディ

    工場の社長と統括マネージャー、在ミャンマー日本国大使館書記官ら、総勢 28 名が参加して

    報告会が行われた。参加者からはミャンマーでのプログラムを通じて気づいたこと、タイ国との

    比較報告、改善への提案などが報告された。報告会参加者、主に MFPEA 副会長からは改善

    点として指摘された点についての具体的な対策方法などが質問され、食の安全性確保に対す

    るミャンマー側の並々ならぬ熱意と日本に対する支援と協力要請が強く込められた発言であっ

    た。派遣団員もこれに応じるべく、今後も継続的な交流を行ない、情報交換を行なっていくこと

    を約束した。

  • 6.派遣報告発表

    プログラムを通じて学んだこと、気づき、提言などを、タイ、ミャンマーそれぞれの滞在最終日の報告

    会にて、プログラム関係者に対して報告発表を行いました。関係者からは様々なコメントを頂戴し、派

    遣団員にとっては更なる気づき、学びの場となりました。以下に報告会で使用した発表資料を掲載し

    ます。

    ①タイ

    The report about Thai food safety

    2012.07.03. Wed.

    about SUPER MARKET• Thermal management of refrigerator was good(we were surprised at it.)

    • The packing of the meat product was rude

    • Imported products were dramatically expensive(we also surprised at that Japanese food is  very  popular)

    ・ good   ・ bad   ・general

    about RESTAURANT• Some were less clean than Japanese

    (tables, chairs, dishes, and especially in the area it is hard to see it directly)

    • Some of store employee had less hospitality(Smiling, how to handle the food)

    • There few disposable dishes (kitchen wears)→ Why?

    [in advance]  about HALAL The idea about halal is not popular in Japan→The amount of Muslim/Muslimah is very small 

    • Not to eat pork, of course• To kill the animals (in manner)→ halal meat

  • UENO FINE CHEMICAL CO., Ltd.• The garter to shut out the aunts• Controlled by the computer(There were not much people than the others)

    • Not to use GM products• Traceable the history of their container(Was this container used for what? )

    CP (Charoen Phokphan) group• Good at management for halal(manners to kill chickens, feeding, and so on)

    • Large amount of manpower(Is it necessary all?  maybe too many)

    • Specialized at sanitary action (controling temperture, washing hands, and so on) (Is it necessary all?  maybe too much)

    • Ecologically friendly(waste oil→biodiesel, factory waste→feedstuff )

    AJINOMOTO THAI CO.Ltd.• large amount of manpower(somewhat depends on human wave tactics)

    • some facilities to shut out the insects(aunt gatter, UV lamp, high speed shutter)

    • Japaneselike facilities

    We impressed by the word  “the quality is not only equal to the product quality (plus one’s operation, environmental quality)

    FDA (Food and Drug Administaration)

    • The difference between Japan and Thaiespecially in climate (ex. effects ofthe insects,agrichemical, and so on)

    • Same to be afraid of China• Instead of the matter of radioactive material, importing Japanese products actively recently

    • About GMP

    in brief• There weren’t much hazard about foods• Maybe Japanese concern about food safety too much, but as a consumer, we want not to take down  our crisis awareness

    →We want other countries to be be er • It is good for us to take the FDA system in Japan

    • (We wanted to visit “standard‐level” factories as well)

    Thank you for your kind attention!

  • ②ミャンマー

    Food Safety Report in Myanmar

    2012.07.08. Sun.

    Chapter1. about Thai food safety (factories, FDA system)2. about Crystal Spring Co., Ltd3. about Tin Ye Win Co., Ltd4. about Supermarket5. about Restaurant6. about FIDSL7. about Food Sanitation Act (Japanese law)8. Conclusion

    in Thailand (factories)• Some methods for preventing from insects• Positive for exporting

    ー “Thailand is kitchen of the world”→ to adjust to the interna onal food standard

    • Their factories are regulated by computer system• Large amount of manpower• Be conscious of ecology system

    in Thailand (FDA system)• Almost all processed products are registered to FDA, and controlled by them

    ーAll consumers can check the quality of products whenever he/she wants

    (but it seems the system isn’t common)

    • Empowerment of consumers’ consciousness

    about Crystal Springs Co.,Ltd• The possibilities of contamination

    ex) birds, insects, geckos (we saw)

    • Not much thermal controlling• Vigourless for exporting their products

    about Crystal Springs Co.,Ltd

    • They surveyed about water quality, but how about the bottle?

    • In terms of soft‐drink, we concern about the food additives (for sterilization, coloring)

    • Some of Package film was dirty• To formulation the system to be able to remove the pollutant when the raw water will be exposed

  • about Tin Ye Win Co., Ltd• The workers have their caps on not to take their hairs in the productsーhow about eyebrow, and eyelash?

    • They check the raw material firmly (we can’t see it)• They are positive for exporting their products

    • The film for packaging is stored close to outside

    about Tin Ye Win Co., Ltd

    • To get some international certification for exporting→it is difficult to export to Japan as it is

    • There is still a fear of handling their products ex) risk management of contamination, 

    using the can of painting material, cotton gloves• In the process, they collect cracking one, and they will reuse as materialーIsn’t there denaturalization because of reheating

    → ex) cracked rice cracker package (at discount)

    about Supermarket• Thermal control was better than Thailand• There were many “made in Myanmar” processed products than we thought

    • There were many Thai products as was expected(more Korean products than Japanese )

    • A few raw products• Ingredient labels were poor(imported products are good)

    about Restaurant• Same qualities as Thai one(as for expensive restaurants)

    • Local restaurant was also good taste⇒We wonder about the cups in hot water

    ー Is it for killing bacteria?Don’t they use detergent?

    about FIDSL• Very clean environment (stairs is bad)→It seems it became be er than before

    • The labeling of prepared reagents and samples was poorex) expiration date of test reagents

    • Management of the hazardous substances is poor(including acid disposal liquid)ex) putting the reagents in higher place

    • Checking equipments daily is good• Thermal controling is good• The wall is made of glass

    ーgood for workers because of better prospects

    about FIDSL[suggestion]• To put safety bar in reagents rack• To label all the things• To treat waste liquid properly• To put on safety shoes to keep from the danger 

    (in terms of microbiological test, the sandals they  are using is good for sanitation)

  • about Food Sanitation Act (Japanese law)[Table of Contents]Chapter I General Provisions Chapter II Food and Additives Chapter III Apparatus and Containers and Packaging Chapter IV Labeling and Advertising Chapter V Japanese Standards of Food AdditivesChapter VI Guidelines and Plans for Monitoring and Guidance Chapter VII Inspections Chapter VIII Registered Conformity Assessment Bodies Chapter IX Business Chapter X Miscellaneous Provisions Chapter XI Penal Provisions 

    Conclusion• Not much laws  concerning aboutfood safety

    • Less consciousness of consumers for food safety

    • We want to do as much as we can to improve food safety in Myanmar

    Q & A

    Thank you for your kind attention!

  • 7.派遣団の感想(抜粋)

    ● 今回のプログラムでは様々な事を学んだ。食の安全というテーマでその安全の水準、工

    場設備、研究所について理解を深めることができた。また、それだけでなく行政の視点か

    らの話も聞けた事がとても参考になった。国政の水準や経済基盤、国民の意識など様々

    な要因が複雑に絡んでいることを実感した。それでもその中で一つ一つできることを確実

    に実施していくことが大事だと思う。このプログラムに参加したメンバーや周囲の人々を

    巻き込んで、今後もこの交流を続けていけたら、いや、続けていかなければならない。

    ● 国により食の安全に対する認識が異なることは仕方がない事だと思う。お互いにコミュニ

    ケーションを密にとり、文化や背景を相互に理解しながら共通の認識を得て行く事が必要

    だと考えるようになった。

    ● 今後日メコンの継続的な交流の為、今回得た人々との絆を大切にしていきたい。特にミャ

    ンマーの FIDSL とは以前からも交流があるので、友好都市ならぬ、友好分析機関として、

    人材、技術、機器等の交流を継続的にできればと思う。

    ● タイは思っていた以上に街は発達していたが、急速に発達した印象を受けた。また、一般

    の方々はまだまだ食の安全に対する意識が低い、または知識はあるが金銭的な問題で

    安全なものが買えないという状況が気になった。タイは今、きれいなもの汚いもの、新しい

    もの古いもの、裕福な人貧しい人、安全なもの安全かどうかわからないもの等様々なもの

    が混在しているという印象を受けた。

    ● ミャンマーは、訪問前の印象と近かったが、より素敵な国という感想をもった。人が温かく

    愛嬌があり何より各々の人が文化を誇りに思い大事にしていた。

    ● ミャンマーの食の安全面はまだまだであると感じた。 法律、政治、経済の問題、情報の

    不足、大きな貧富の差等課題は山積みである。今後も訪問国の関係者と連絡を取り、先

    に繋がる行動を取りたいと思う。

  • ● タイの工場及び FDA を訪問して安全管理を思ったよりもしっかりしていると感じた一方で、

    農業従事者との話で輸出用製品の安全管理はしっかりしているが、タイ国内の流通製品

    については把握できないほどの状況だと聞きとても驚いた。

    ● ミャンマーで FIDSL にて様々な提案をした際に、試薬の使用期限を決めて管理した方が

    良いと言ってしまったが、日本では期限がきたら未使用でも捨てる事もあり、ミャンマーの

    実情にはそぐわないことを言ってしまったのではないかと思うと同時に、日本は経済的に

    も恵まれていることを強く感じた。今後も交流を続けて、タイとミャンマーの発展に少しでも

    寄与したい。

    ● 今回色々な企業を訪問し、日本の食品安全管理基準は一番厳しいと何度か耳にした。こ

    の厳しい基準は日本の消費者が作り上げたものである。私は分析試験を通じて日本の

    消費者が求める安全への厳しい要求を知り、時に行き過ぎた消費者意識を感じる事があ

    った。こうした厳しい目が食品の安全性を高め品質管理の技術や手法を発展させてきた

    のも事実だと思っている。

    ● ミャンマーは、経済、政治(行政)、法律、国民の教育等様々な問題があることを知り、とて

    も勉強になった。ミャンマーの人たちが自分の力で調査、分析ができるようになるまで、レ

    ベルを引き上げてあげる必要があり、その手助けをすることができたら良いと思う。その

    一方でミャンマーの人たちも受け身ではなく自分たちの手で先を切り開くような努力をす

    る必要もあると同時に感じた。

  • おわりに

    本プログラムを通じ、日本における食の安全を若手研究者たちは、タイ・ミャンマー両

    国で同じ分野で活躍している若手研究者、行政官、食品加工業者と触れ合い、互いに活

    発な意見を交わし、あたたかい絆が結ばれたこと、また、両国の衣・食・住・宗教などの文

    化に触れ、派遣国への理解を深めたことで、これまで近くて遠かった両国がより身近に感

    じられるようになったとの感想を述べています。

    食の安全の確保は世界各国共通の課題でありながら、一朝一夕では解決し難い問題

    を多く内包する分野でもあります。日本はこれまで幾多の研究者の努力と他国からの助言

    によって一定の食の安全の維持が可能となりましたが、O-157 による食中毒問題など、課

    題はまだ山積しています。これらの課題は日本国内だけではなく、世界規模で共有し解決

    すべき課題として各国の連携が必要となりますが、今回育まれた新たなネットワークがそ

    の解決の小さな一歩となることを心から祈念します。

    訪問先では短い滞在ではありましたが、今回の出会いを契機として日本・タイ・ミャンマ

    ーの交流が益々盛んになり、友好の架け橋が更に強固なものになりますことを期待してお

    ります。

    最後に、今回、日本の若手研究者の受入にご協力頂きました全関係者の皆様に、深く

    お礼申し上げます。

  • 00.表紙00-1.目次(差し替え)01.02.はじめに03.写真で振り返るタイミャンマー滞在04.全体日程05.プログラム詳細日程06.派遣成果07.派遣団の感想08.おわりに9.報告書裏表紙