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メタボローム解析を用いた 植物エキス混合物 ( 青汁 ) の成分分析例 HMT メタボローム解析とは? 食品分野にも広がりを見せるメタボローム解析 私たちの生体内や食品の中には、アミノ酸や糖、有機酸といった低分子 が存在しています。これらの物質の多くは、酵素の働きによって作られ た代謝物質 (メタボライト) です。こうした多数の代謝物質について、 その種類や濃度を網羅的に分析する手法のことを「メタボローム解析」 あるいは「メタボロミクス」と呼びます。 慶應義塾大学発のベンチャー企業として 2003 年に山形県鶴岡市に設立 されたヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社 (HMT) はメタボローム解析の受託試験を行っており、お客様からいただいた食 品試料や、血液等の生体試料などにどのような代謝物質が含まれている かを分析することが可能です。 分析対象となっている物質には、 アスパラギン酸やアルギニンなどのアミノ酸、 クエン酸や乳酸といった有機酸、 アデノシンや ATP などの核酸、 アスコルビン酸 (ビタミン C) パントテン酸 (ビタミン B5などのビタミン類、 GABA やオルニチン、アスタキサンチンといった 機能性関与成分なども含まれています。 (対象物質は測定プランによって異なります。検出対象物質の一覧、および詳細は お問い合わせください。また、試料中の存在量が少ない場合には検出されません) メタボローム解析はこれまで、特に医科学分野で多く利用され てきました。しかし近年は、食品そのものの成分分析や、製造 過程・調理過程で生じる変化の解析、更には機能性成分の探索 や生体における働きの解明など、食品科学の分野にも広がりを 見せています。HMT においても食品関連の試験を多く受託して おり、様々な種類の食品試料の分析を行ってきました。 右:HMT における食品試料の受託実績 (食品試料に限った際の試験数、 2019 年 12 月末現在) 左:HMT における受託実績 (研究領域別の試験数、2019 年 12 月末現在) 植物エキス混合物(青汁)においてメタボローム解析を行った例 健康食品として広く知られている「青汁」は、植物の葉を 絞ったもの、あるいは粉末状にした上で水に溶かした ものを飲用としています。それゆえ、原料となる植 物の葉に含まれている代謝物質が、青汁製品その ものの持つ性質に大きな影響を与えることが考え られます。 青汁の原料としてはケールが有名ですが、大麦若 葉が用いられる場合もあります。また、製品化の過 程では他の緑黄色野菜や添加物等が加えられることも あり、同じ「青汁」であっても、製品ごとにその代謝 プロファイル (代謝物質の状態) は大きく異なりま す。 そこで、具体的に各製品間でどのような違いがあ るのかを確かめるため、市販の青汁粉末 16 種類 を用いて、HMT にてメタボローム解析を行いまし た。 結果概要: 全 16 種類の青汁から、合計で 202 種類の代謝物質が検出された。 (左)各青汁の各代謝物質について、 16 種の平均値と比較してヒートマップを作成した。 平均値よりも高値であれば赤色、低値であれば緑色を示している。特定の物質が高値を示すような 青汁や、殆どの物質が平均値程度の青汁など、それぞれの特徴が視覚的に現れている。 (上左)主成分分析 (PCA) と呼ばれる統計手法を用いて、それぞれの青汁の類似度を確認した。 似た代謝プロファイルをもつ青汁は近い位置にプロットされ、大きく異なる代謝プロファイルを もつ青汁は遠い位置にプロットされる。また、5-1, 5-2, 6 の 3 種の青汁はケールを主原料とし、 他の青汁は大麦若葉を原料としていたことから、成分が大きく異なることが改めて確かめられた。 (上右)PCA の結果をもとに、どのような代謝物質が結果に大きな影響を与えているか確認したところ、 核酸の一種であるチミジン (Thymidine) や、コーヒーの含有成分としてよく知られるカフェイン (Caffeine) といった物質に差が見られることが示唆された。 こうしたメタボローム解析結果は、 ・新商品の開発や既存製品の改良についての手がかりを得る ・他社商品と自社商品との差別化ポイントを明らかにする ・製法や風味を変更した際、製品の品質に影響がないかを確かめる といった用途に応用することができると期待されます。 実施方法:市販の青汁 (15 社、 16 商品) について、弊社標準プロトコルに従って代謝物質を抽出 した。その後、抽出液を弊社「Basic Scan」の仕様に沿って解析し、それぞれ記載のあった一日 摂取推奨量を基に、含有される代謝物質量を計算した。本ポスターに記載のデモデータはいずれ も弊社の報告書に標準仕様として掲載されるデータだが、一部ポスター用に加工して使用した。 0 5 10 15 -5 -10 -15 1 2 3 4 5-1 5-2 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 PC1 (32.6%) 0 5 10 15 -5 -10 -15 PC2 (23.2%) Relative Area Caffeine 10.0 12.0 (×10 -1 ) 8.0 6.0 4.0 2.0 0 Relative Area Thymidine 5.0 6.0 (×10 -2 ) 4.0 3.0 2.0 1.0 0 HMT ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社 ver. p_20.01 (2020/06) © 2020 Human Metabolome Technologies, Inc. 本資料の一部または全部を許可なく複製・配布することを禁じます。 [email protected] 03-3551-2180 http://humanmetabolome.com その他・不明 (8.86%) 農業 (3.62%) 化学 (5.44%) 創薬 (9.99%) 医療 (49.49%) 食品 (22.60%) その他・加工品 (18.4%) 海産物 (2.9%) 茶(3.5%) 果汁 (5.2%) 果物 (5.6%) 調味料 (5.7%) 穀物 (6.7%) 食肉 (7.7%) 酒類 (10.8%) 乳製品 (12.3%) 野菜 (21.2%)

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Page 1: メタボローム解析を用いた青汁分析例 HMT p 20 · もつ青汁は遠い位置にプロットされる。また、5-1, 5-2, 6の3種の青汁はケールを主原料とし、

メタボローム解析を用いた

植物エキス混合物(青汁 )の成分分析例

HMT

メタボローム解析とは? 食品分野にも広がりを見せるメタボローム解析

私たちの生体内や食品の中には、アミノ酸や糖、有機酸といった低分子が存在しています。これらの物質の多くは、酵素の働きによって作られた代謝物質 (メタボライト) です。こうした多数の代謝物質について、その種類や濃度を網羅的に分析する手法のことを「メタボローム解析」あるいは「メタボロミクス」と呼びます。

慶應義塾大学発のベンチャー企業として 2003 年に山形県鶴岡市に設立されたヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社 (HMT) ではメタボローム解析の受託試験を行っており、お客様からいただいた食品試料や、血液等の生体試料などにどのような代謝物質が含まれているかを分析することが可能です。

分析対象となっている物質には、アスパラギン酸やアルギニンなどのアミノ酸、クエン酸や乳酸といった有機酸、アデノシンや ATP などの核酸、アスコルビン酸 (ビタミン C) やパントテン酸 (ビタミン B5) などのビタミン類、GABA やオルニチン、アスタキサンチンといった機能性関与成分なども含まれています。

(対象物質は測定プランによって異なります。検出対象物質の一覧、および詳細は お問い合わせください。また、試料中の存在量が少ない場合には検出されません)

メタボローム解析はこれまで、特に医科学分野で多く利用されてきました。しかし近年は、食品そのものの成分分析や、製造過程・調理過程で生じる変化の解析、更には機能性成分の探索や生体における働きの解明など、食品科学の分野にも広がりを見せています。HMT においても食品関連の試験を多く受託しており、様々な種類の食品試料の分析を行ってきました。

右:HMT における食品試料の受託実績(食品試料に限った際の試験数、

2019 年 12 月末現在)

左:HMT における受託実績(研究領域別の試験数、2019 年 12 月末現在)

植物エキス混合物(青汁)においてメタボローム解析を行った例

健康食品として広く知られている「青汁」は、植物の葉を絞ったもの、あるいは粉末状にした上で水に溶かしたものを飲用としています。それゆえ、原料となる植物の葉に含まれている代謝物質が、青汁製品そのものの持つ性質に大きな影響を与えることが考えられます。

青汁の原料としてはケールが有名ですが、大麦若葉が用いられる場合もあります。また、製品化の過程では他の緑黄色野菜や添加物等が加えられることもあり、同じ「青汁」であっても、製品ごとにその代謝プロファイル (代謝物質の状態) は大きく異なります。

そこで、具体的に各製品間でどのような違いがあるのかを確かめるため、市販の青汁粉末 16 種類を用いて、HMT にてメタボローム解析を行いました。

結果概要:全 16 種類の青汁から、合計で 202 種類の代謝物質が検出された。

(左)各青汁の各代謝物質について、 16 種の平均値と比較してヒートマップを作成した。   平均値よりも高値であれば赤色、低値であれば緑色を示している。特定の物質が高値を示すような   青汁や、殆どの物質が平均値程度の青汁など、それぞれの特徴が視覚的に現れている。

(上左)主成分分析 (PCA) と呼ばれる統計手法を用いて、それぞれの青汁の類似度を確認した。    似た代謝プロファイルをもつ青汁は近い位置にプロットされ、大きく異なる代謝プロファイルを    もつ青汁は遠い位置にプロットされる。また、5-1, 5-2, 6 の 3 種の青汁はケールを主原料とし、    他の青汁は大麦若葉を原料としていたことから、成分が大きく異なることが改めて確かめられた。

(上右)PCA の結果をもとに、どのような代謝物質が結果に大きな影響を与えているか確認したところ、    核酸の一種であるチミジン (Thymidine) や、コーヒーの含有成分としてよく知られるカフェイン    (Caffeine) といった物質に差が見られることが示唆された。

こうしたメタボローム解析結果は、

 ・新商品の開発や既存製品の改良についての手がかりを得る ・他社商品と自社商品との差別化ポイントを明らかにする ・製法や風味を変更した際、製品の品質に影響がないかを確かめる

といった用途に応用することができると期待されます。

実施方法:市販の青汁 (15 社、 16 商品) について、弊社標準プロトコルに従って代謝物質を抽出した。その後、抽出液を弊社「Basic Scan」の仕様に沿って解析し、それぞれ記載のあった一日摂取推奨量を基に、含有される代謝物質量を計算した。本ポスターに記載のデモデータはいずれも弊社の報告書に標準仕様として掲載されるデータだが、一部ポスター用に加工して使用した。

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HMT ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社

ver. p_20.01 (2020/06)© 2020 Human Metabolome Technologies, Inc. 本資料の一部または全部を許可なく複製・配布することを禁じます。

[email protected] 03-3551-2180 http://humanmetabolome.com

その他・不明(8.86%)

農業(3.62%)

化学(5.44%)

創薬(9.99%)

医療(49.49%)

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その他・加工品(18.4%)

海産物     (2.9%)

茶(3.5%)

果汁(5.2%)

果物(5.6%)

調味料(5.7%) 穀物

(6.7%) 食肉(7.7%)

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