バイオ医薬品開発における凝集体の評価 –svpの測 …•...

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1 バイオ医薬品開発における凝集体の評価 – SVPの測定法 ウェブセミナー September 10 2015 スペクトリス株式会社マルバーン事業部 マーケットスペシャリスト バイオサイエンス 加藤眞紀 バイオ医薬品の処方検討課題 複数のファクターがバイオ医薬品の特性に影響する。 複数の分析法がバイオ医薬品の評価に必要 医薬品 特性 化学的 安定性 化学的 安定性 コロイド 安定性 構造的 安定性 機能性 生物学的 適合性 凝集、高粘度、 長期安定性の低下 販売の遅れや失敗、 製品リコール

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Page 1: バイオ医薬品開発における凝集体の評価 –SVPの測 …• SVPは、医薬品製造直後と保存期間を通して評価するべきである。2-10μmのSVPを評価する手法はいくつかある。•

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バイオ医薬品開発における凝集体の評価– SVPの測定法

ウェブセミナー

September 10 2015

スペクトリス株式会社マルバーン事業部

マーケットスペシャリスト

バイオサイエンス

加藤眞紀

バイオ医薬品の処方検討課題

複数のファクターがバイオ医薬品の特性に影響する。→複数の分析法がバイオ医薬品の評価に必要

医薬品特性

化学的

安定性

化学的

安定性

コロイド安定性

構造的

安定性機能性

生物学的適合性

凝集、高粘度、長期安定性の低下

販売の遅れや失敗、製品リコール

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タンパク質凝集~なぜ懸念されるのでしょうか?

› 免疫原性を起こす可能性› 薬効の減少につながる可能性

› 免疫原性を起こすメカニズムについて明確に理解されていない:サイズ、分子量、異種構造?

› デリバリーチェーン中どこにでも起こる可能性 冷凍・冷蔵保管、凍結・融解サイクル バッファー・添加物の変化 熱、振動、せん断応力などのストレス 容器内面との相互作用

› 安定性を促進する理想的な処方がない› FDAがモニター、報告することを推奨

サイズ 分子量 量 複数の手法で検証

http://www.fda.gov/downloads/drugs/guidancecomplianceregulatoryinformation/guidances/ucm338856.pdf

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凝集体測定に関するFDAの推奨

FDA, Guidance for Industry (2014)Immunogenicity Assessment for Therapeutic Protein Products

• 医薬品中の凝集体の種類を明確にキャラクタライズするために、タンパク質凝集体の検出を強化する手法を取り入れるべきである。

• 凝集を測定する方法は絶えず進化し、改良されている。1つ以上の

適切なアッセイを選び、常に改良、開発することを考慮するべきである。

• アッセイは通常のロット管理や安定性評価での使用を検証し、その中のいくつかは比較評価するべきである。

サイズ測定法~大きさによって異なる原理

SEC/GPC顕微鏡画像法

動的光散乱法(DLS)

レーザー回折・散乱法

nm 10 100 µm 10 100 mm cm (107 nm)

RMM

NTA

Taylor分散法

フロー式画像法

Invisible Subvisible Visible

簡便

高精度

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DLSとSECで評価

SEC/GPC顕微鏡画像法

動的光散乱法(DLS)

レーザー回折・散乱法

nm 10 100 µm 10 100 mm cm (107 nm)

RMM

NTA

Taylor分散法

フロー式画像法

Invisible Subvisible Visible

簡便

高精度

動的光散乱法 (DLS)

› ブラウン運動している粒子にレーザー光を照射し、散乱光を検出 小さな粒子–散乱光強度のゆらぎは急速に変化

大きな粒子–散乱光強度のゆらぎはゆっくりと変化

› 粒子サイズ分布

› Polidispersity(多分散性) オリゴマーや凝集の指標

› タンパク質-タンパク質相互作用 kD、B22

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BSAの凝集をDLSで検出

熱変性させたBSA凝集体をそれぞれ0% (red), 2.25% (green), 11.25% (blue), 45% (black)含むBSAサンプルの粒子径分布BSA: Bovine serum albumin(ウシ血清アルブミン)

BSAをマルチ検出器付きSECで測定

› モノマーとダイマー・トリマー(オリゴマー)、高分子凝集体の区別が可能

Molecular weight (LS) (kDa)

Intrinsic Viscosity (dl/g) Rh (nm)

Monomer 66 0.056 3.88Dimer 133 0.071 5.32Trimer 201 0.095 6.69

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FDAがSubvisible particles (SVP)に注目

• タンパク質の凝集を確実に測定するには、1手法では十分でない。• サイズ範囲0.1-10μmのSVPは免疫原性を示す可能性が極めて高いが、

現行のテクノロジーでは正確にモニターされていない。

FDA, Guidance for Industry (2014)Immunogenicity Assessment for Therapeutic Protein Products

SVP測定 – 新たな手法

SEC/GPC顕微鏡画像法

動的光散乱法(DLS)

レーザー回折散乱法

nm 10 100 µm 10 100 mm cm (107 nm)

RMM

NTA

Taylor分散法

フロー式画像法

Invisible Subvisible Visible

簡便

高精度

• SVPは、医薬品製造直後と保存期間を通して評価するべきである。2-10μmのSVPを評価する手法はいくつかある。

• 0.1-2μmのSVPは、新たな手法が開発されたため、評価する努力をするべきである。

FDA, Guidance for Industry (2014)Immunogenicity Assessment for Therapeutic Protein Products

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ナノトラッキング法(NTA)

› ブラウン運動している粒子にレーザー光を照射し、散乱光を動画で捉え可視化

解析トラッキング動画取得

粒子の移動速度から粒子径を算出

個数基準の濃度

ポリスチレン粒子を用いたNTAとDLSの比較

› DLSで区別できていなかった200nmと300nmの粒子は、NTAで分離して検出される

NTA DLS

装置:Nanosight 装置:Zetasizer Nano ZSP

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IgGとインスリンの凝集体

Filipe et al, Pharmaceutical Research (2010)

› NTAではモノマー、オリゴマーは検出できないが、凝集体は分解能高く検出

IgGの熱ストレスによる凝集のモニター

› 50℃に設定し、

リアルタイムで継時的に凝集をモニター

› 凝集体のサイズと数を算出

Filipe et al, Pharmaceutical Research (2010)装置:NanoSight

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共振式質量測定法(RMM)

› 共振器のマイクロ流路を粒子が通過すると、周波数がシフトする

› 粒子の浮力から、質量、粒子径を算出

Δf

m

MB=Δf*S M =MB /(1-ρf/ρp)

D =(6M/

(πρp))1/3

周波数

シフト

質量分

布粒子径

分布

RMM – 従来法との比較

› 最高の分解能

› 浮力の違いによりサイズの近い物質も区別

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IgG 測定値の比較 – 屈折率の影響

Zolls et al, Journal of Pharmaceutical Science (2013)

› 光を利用したMFIやLOでは、添加剤としてスクロースなど糖を入れると屈折率の変化により測定値が変わる。RMMはこのような影響を受けない。

タンパク質凝集のキャラクタリゼーション

›SVPの形成に関するストレスの影響を評価

›タンパク質凝集に関するせん断応力の影響

›粒子径分布プロファイル取得

›様々なストレス条件を比較 –強制分解試験

ControlShear-stress

装置:Archimedes

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注射器中のタンパク質凝集体とシリコンオイル油滴

OilOilOil ProteinAggregates

ProteinAggregates

ProteinAggregates

浮力により区別して測定

油滴 タンパク質凝集体

装置:Archimedes

1994: Betaseron, IFN-β 1b (Bayer HealthCare)

1996: Lyophilized Avonex, IFN-β 1a (Biogen Idec)

2002: Rebif, IFN-β 1a (Merck Serono) - Liquid version of Avonex

2009: Extavia (Novartis), IFN-β 1b (Betaseronと同等品- Bayerからライセンス)

臨床試験の結果、製造元によって患者の中和抗体の発生率が異なり、効果の差が認められた。

→原因を調べるためにSVPを評価

事例:多発性硬化症の治療薬 IFN-β

From: Barnard et al, J. Pharm. Sci. (2013): Vol.102, 915-928

Fractions of patients developing neutralizing antibodies (clinical trials)

%

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多発性硬化症の治療薬 IFN-β の比較

タンパク質凝集体とシリコン油滴の評価

Barnard et al, J. Pharm. Sci. (2013): Vol.102, 915-928

Protein Oil

サンプルアバタセプト(商品名:オレンシア)ヒト細胞障害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)の細胞外ドメインとIgG Fcドメインの融合タンパク質Mw: 92 kDa, pI=4.5-5.5(pH5付近で不安定化)

試験法シェーカを500回転/分に設定し、各シリンジに充填したサンプルを、4℃環境下で1週間連続的に振盪し、ストレス試験を行った

CTLA4(PDB ID: 1DQT)

サンプル名 内容Control ストレスなしPolymer-SOF プラスチック製シリコン無シリンジにてストレス試験Glass-SOF ガラス製シリコン無シリンジにてストレス試験Polymer-SO+ プラスチック製シリコン有シリンジにてストレス試験Glass-SO+ ガラス製シリコン有シリンジにてストレス試験

事例:プレフィルドシリンジ製剤の検討

E. Krayukhina, et al., J. Pharm. Sci., 104: 527-535, 2014

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RMMによるSVP測定結果

0.00E+00

5.00E+07

1.00E+08

1.50E+08

2.00E+08

2.50E+08

3.00E+08

3.50E+08

4.00E+08

4.50E+08

5.00E+08

# particles in Acetate

< 0.500 0.5-1.0 1.0-1.5 >1.5

0.00E+00

1.00E+05

2.00E+05

3.00E+05

4.00E+05

5.00E+05

(b)

0.00E+00

5.00E+07

1.00E+08

1.50E+08

2.00E+08

2.50E+08

3.00E+08

3.50E+08

4.00E+08

4.50E+08

5.00E+08

# particles in PBS

< 0.500 0.5-1.0 1.0-1.5 >1.5

(a)

μm μm

シリコンオイル存在下でSVP増加 pH7.4→5.0によりSVPが減少

(MFI, AUC, SECの結果と相関あり)

E. Krayukhina, et al., J. Pharm. Sci., 104: 527-535, 2014マルバーンアプリケーションノート

シリコンオイルと凝集体に関する考察

Protein (folded)

Protein (unfolded)

- 1μm(Sub-visible Particle: SVP)

- 20μm (Visible Particle: VP)

Stressed by presence of silicone oilAggregated by conformational change

Stressed by pHAggregated on DLVO theory (zeta potential)

(A) (B) (C) (D)

シリコンオイルは特に1μm程度の粒子形成(SVP)に寄与していた。

巨大な凝集粒子(VP)は、SVPが核となって凝集がさらに促進し形成されたと考えられ

る。この時、pHが等電点付近(pH5.0)であれば、粒子として凝集が促進しやすい環境であ

るため (ゼータ電位の考え方)、pH5.0におけるSVPがVPへと成長していったと考えられる。

その結果、SVPの数はpH7.4に比べて減っていたと考えられる。

マルバーンアプリケーションノート

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マルバーンの粒子計測ラインナップ

SEC/GPC顕微鏡画像法

動的光散乱法(DLS)

レーザー回折・散乱法

nm 10 100 µm 10 100 mm cm (107 nm)

RMM

NTA

Taylor分散法

フロー式画像法

簡便

高精度

OMNISEC

ナノサイト

モフォロギG3

アルキメデス

ゼータサイザー

マスターサイザー

ビスコサイザー

FPIA

タンパク質凝集体測定原理比較

測定原理 DLS NTA RMMMalvern装置 Zetasizer Nanosight Archimedes測定基準 散乱強度基準 個数基準 個数基準

測定パラメータ 粒子径 粒子径、個数濃度 粒子径、個数濃度、質量

分解能 低 中 高

粒子径範囲 * <1nm – >1μm <30nm - >1μm <250nm – 5μm濃度範囲 * <108 – 1012 個 /mL 106 – 109 個/mL 104 – 109 個/mL最小容量 2μL, 12μL

(機種による)300μL 100μL

特徴 粒子径、濃度の測定

範囲が広く、汎用性が高い

個々の粒子を可視化し個数濃度を求める

最も分解能が高く、

比重の違いによりタ

ンパク質凝集体とシ

リコンオイルを区別することが可能

* サンプルによって異なる

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まとめ

› バイオ医薬品中の0.1-10μmのSubvisible particles (SVP) は免疫原性を示す可能性が高く、複数の手法を用いて評価するべき

› DLSで定性的に広範囲の大きさを測定

› サブビジブル領域の凝集体はNTAやRMMで測定

マルバーンのライフサイエンスソリューション

OMNISEC

ナノサイト

アルキメデス

ゼータサイザー

ビスコサイザー

MicroCal VP-Capillary DSC

MicroCal PEAQ-ITC

ゼータサイザーへリックス