情報化協力ミッション(フィリピン・マニラ)報告書 ·...

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1/23 2005/10/27 (財)国際情報化協力センター ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 情報化協力ミッション(フィリピン・マニラ)報告書 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 1.開催日: 平成 17 年 10 月 17 日(月) 2.開催場所: フィリピン(マニラ)ドゥシット・ホテル(DusIT Hotel) 3.主催: <フィリピン>フィリピンコンピュータ協会(Philippines Computer Society、PCS) 1 <日本> 財団法人国際情報化協力センター(CICC) 4.会議概要: CICC とフィリピンコンピュータ協会が共催し、“Philippine ‒ Japan Business Forum“を開催し た。日本とフィリピンの IT 分野での協力について意見交換・協議を行い、互いの現状とニーズ を理解することにより、今後の協力・分野を探った。本セミナには、政府、産業界を中心に約 80 名が参加し、各取り組みや現状が発表されたのち、ディスカッションの場である Open Forum セ ッションにて双方の意見交換が行われた。 フィリピン IT の概況、本セミナ議事のまとめは下記の通り。 1 Philippines Computer Society (PCS、フィリピンコンピュータ協会)http://pcs-IT.org/ 1967 年設立 の IT 産業促進する最も歴史のある業界団体で、個人会員を中心に 700 会員。CICC のカウンタパートで、 過去に 2 国間会議や数々のセミナを実施。現在は研修の窓口となっている。 All rights reserved Copyright © 2005 CICC

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Page 1: 情報化協力ミッション(フィリピン・マニラ)報告書 · ンターネットアクセス供給、2.社会に ict への認識と生かせる能力の構築、3.健全で競争

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2005/10/27

(財)国際情報化協力センター

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情報化協力ミッション(フィリピン・マニラ)報告書

◆̶◆̶◆̶◆̶◆̶◆̶◆̶◆̶◆̶◆̶◆̶◆̶◆̶◆̶◆̶◆̶◆̶◆̶◆

1.開催日:

平成 17 年 10 月 17 日(月)

2.開催場所:

フィリピン(マニラ)ドゥシット・ホテル(DusIT Hotel)

3.主催:

<フィリピン>フィリピンコンピュータ協会(Philippines Computer Society、PCS)1

<日本> 財団法人国際情報化協力センター(CICC)

4.会議概要:

CICC とフィリピンコンピュータ協会が共催し、“Philippine ‒ Japan Business Forum“を開催し

た。日本とフィリピンの IT 分野での協力について意見交換・協議を行い、互いの現状とニーズ

を理解することにより、今後の協力・分野を探った。本セミナには、政府、産業界を中心に約80

名が参加し、各取り組みや現状が発表されたのち、ディスカッションの場であるOpen Forumセ

ッションにて双方の意見交換が行われた。

フィリピン IT の概況、本セミナ議事のまとめは下記の通り。

1 Philippines Computer Society (PCS、フィリピンコンピュータ協会)http://pcs-IT.org/ 1967 年設立の IT 産業促進する最も歴史のある業界団体で、個人会員を中心に 700 会員。CICC のカウンタパートで、

過去に 2国間会議や数々のセミナを実施。現在は研修の窓口となっている。

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◆フィリピン IT の概況

・ フィリピンはアジアでも有数の半導体(欧米系大手メーカ)・記憶デバイスの産業拠点で、

半導体後工程及びコンピュータ周辺機器分野が発展。IT 産業規模は 2 兆円、うち 4 割が

ハード・周辺機器、電子・半導体が全体の 35%、通信・ネットワークが全体の 20%、ソフトウェ

ア・ITサービスが1%。近年ソフトウェア・ITサービス産業(ビジネス・プロセス・アウトソーシン

グ(以下 BPO)、ソフトウェア開発、エンジニアリングデザイン、コンピュータグラフィックおよ

びアニメーション)が急成長。アジアの中でインドと並び英語が得意なフィリピンは、ソフトウ

ェア・ITサービス産業、中でもコールセンタやBPOなど米国市場に向けた e-Service 分野

が急成長している。これまで米国一辺倒だったが、ITバブル崩壊後米国一辺倒ではなく、

日本からのソフトウェア開発アウトソーシング市場にも注目し始めている。

・ 日本とフィリピンとの貿易状況を見ると、2005 年 1~6 月までの輸出入は日本が 1 位。フィ

リピンにおける日系 IT 企業は、ADTX、キャノンインフォメーションテクノロジー、富士通、

JGC、MBK データ(三井系)、NYK、NEC テレコムソフトウェア、NTT、住友、東映アニメー

ション、Tsukiden など。現地大使館によると、フィリピンの大きな優位性として、投資経済庁

(PEZA)による投資優遇政策の充実、およびそれに伴う必要な手続きのスムーズさが挙げ

られるという。既に進出している外国企業は、この優遇政策のもとに事業を拡大していると

いう。

・ フィリピンの優位性は、優秀な人材、充実したインフラ、アジア各国から4時間以内という立

地のよさ、ホスピタリティあふれる生活、政府の支援などがあげられる。

・ 政府が策定している 2005~2010 年の ICT 分野の戦略的な方向性は、5 項目を通して

e-enabled 社会を実現することを目的としている。それらは、1.すべてのコミュニティへのイ

ンターネットアクセス供給、2.社会に ICT への認識と生かせる能力の構築、3.健全で競争

力のあるビジネス環境の構築、4.世界トップクラスのICTサービスによる高付加価値の職の

創出、5.政府サービスの市民への直接供給、である。また、2005~2010 年の電子政府戦

略は、市民とビジネスに焦点を置き、土地税申告や健康保健サービス、税金徴収などの

社会システム分野におけるオンラインサービス構築を目指している。

・ 日比の IT 分野の協力として、2004 年 5 月、茂木日本国情報通信技術担当大臣とプリシ

マ・フィリピン国貿易産業長官により、人材育成を中心とした具体的な実施プログラムを推

進する「アジア IT イニシアチブ(AITI)」共同声明が締結された。具体的なプロジェクトはフ

ィリピン大学IT人材育成プロジェクト(UP-ITTC、UP/JICA)、情報処理技術者試験の実施

と人材育成(PhilNITS)、人材育成(CICC、AOTS)、日比間のビジネスマッチング

(JETRO-BOI)となっている。

・ より詳細のフィリピン IT 事情については、下記参照のこと。

CICC アジア情報化レポートフィリピン 2004(2005 年版は CICC までご連絡ください)

http://www.cicc.or.jp/japanese/kunibetsu/pdf_ppt/philippines.pdf

JETRO 定期報告フィリピン IT 事情

http://www3.jetro.go.jp/jetro-file/search-text.do?url=05000757

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◆本セミナ議事のまとめ

・ 基調講演では、CICC中島 純三ポリシーボード議長により、日本のRFIDおよびバイオメト

リクス等の日本の先端技術の紹介があった。セミナ後、フィリピンコンピュータ協会会長か

ら、フィリピンコンピュータ協会は IT ユーザ側の専門家が会員になっているため、このよう

な先端技術の紹介は非常に興味深く勉強になったとのコメントがあった。もし可能であれ

ば、今後フィリピンコンピュータ協会がフィリピン国内で開催するセミナや展示会等で紹介

してもらいたいとのこと。

・ 2004年 5月に締結されたアジア ITイニシアチブの進捗状況について、実施機関による講

演により確認できた。アジア IT イニシアチブは、産業界のニーズに合致した IT 人材育成

および日本語の話せるブリッジエンジニア養成など、IT 人材育成に焦点をあてたものであ

るが、現地日系企業を中心に、フィリピン大学プロジェクト(UP-ITTC)の学生に奨学金を

支給し人材育成に貢献したり、またPhilNITSの情報処理技術者試験を受験し合格者が増

加するなど、アジア IT イニシアチブのプロジェクトをうまく活用しているようだ。アジア IT イ

ニシアチブの一環として実施している CICC のブリッジエンジニア現地研修にも、現地日

系企業が自社の人材育成に活用するなど、積極的に活用され、また効果が現れてきてい

る印象を受けた。

・ 今回のセミナの実施時期が、米国で開催されているアウトソーシングのイベントと同時期と

いうこともあり、米国に目を向いている会社は米国に、日本に目を向けようとしている会社

は本セミナに参加したようだ。現状では比企業は日本市場に入るきっかけがつかめず、ま

ずは日系企業とネットワーク構築の場が貴重な機会となる。したがって本セミナのフィリピン

人参加者は、昼食後セミナ終了時にいたるまで途中で帰る人はほとんどおらず、熱心に

講演を聴き、また積極的に人的ネットワークを広げていた。特に Open Forum セッションに

おいて、津田氏による、中国が日本からのアウトソーシング市場拡大のポイントを説明(退

職した日本人 IT エンジニアを活用する等)は、フィリピンにとって新しい視点を与えた。同

時にフィリピン産業界には、日本からのアウトソーシングには日本語が理解できることは非

常に重要な要素として認識された。

・ フィリピン IT 産業の課題として、フィリピン IT産業の情報が日本にほとんど伝わってこない

ことが日比の共通課題として認識された。今回のセミナは日本からの参加者にとっても、フ

ィリピン IT 市場および企業の現状を知る良い機会となった。今後はフィリピン IT 業界団体

を中心として積極的に情報発信につとめること、CICC としても今回得られた人的チャネル

を通じて、アジア情報化レポートを中心とした情報発信をより充実したものにしていきた

い。

・ 今回のセミナにあわせて、CICC 同窓会が設立された。20 年前の CICC 研修生をはじめ

20 名近くが参加し、CICC での研修の様子と各々の現況を紹介した。フィリピンコンピュー

タ協会と CICC 同窓生が連携を取りながら、今後フィリピン国内の IT 化を促進する様々な

活動を展開していくことが期待される。CICC としてもこの同窓会活動を支援していきたい。

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・ 今回のセミナの様子は、下記の関連ウェブサイトでも紹介されている。

JICA フィリピン IT 人材育成(IT-HRD)プロジェクト「プロジェクト通信第 5 号」

http://ITtc.up.edu.ph/IThrd/newsletter.html

JETRO「JETRO 定期報告 フィリピン IT 事情」(掲載予定)

http://www3.jetro.go.jp/jetro-file/search-text.do?url=05000757

5.プログラム:

10 月 17 日(月)

会 場:ドゥシット・ホテル(DusIT Hotel)

テ ー マ:日比ビジネスフォーラム(Philippines- Japan Business Forum)

会議言語:英語

8:30 ~ 9:00 受付

9:00 ~ 9:05 開会(国歌斉唱)

9:05 ~ 9:30 主催者挨拶(フィリピン側):

フィリピンコンピュータ協会 Vin Van Tooren 会長

主催者挨拶(日本側):

CICC 兼谷明男専務理事

9:30 ~ 9:45 ~写真撮影~

9:45 ~ 9:05 基調講演①:

CICT Angelo Timoteo Diaz de Rivera コミッショナー /

国家コンピュータセンタ長官

『フィリピンの IT 政策(電子政府プロジェクト含む)』

10:05 ~ 10:25 基調講演②:

経済産業省 商務情報政策局情報処理振興課

大澤 一郎課長補佐

『e-Japan 戦略とアジアへの協力』

10:25 ~ 10:45 基調講演③:

貿易産業省 Elmer Hernandez 次官 /

投資委員会 Managing Director

『フィリピンの IT 産業概況と日本への期待』

10:45 11:00 ~コーヒーブレイク~

11:00 ~ 11:40 基調講演④:

CICC 中島 純三ポリシーボード議長/

(株)日立製作所 情報・通信グループ 理事

『日本における最近の IT概況』

11:40 ~ 12:10 アジア IT イニシアチブ紹介

JICA フィリピン大学 IT 研修センタ 飯島チーフアドバイザ

『人材育成プロジェクト概況』

PhilNITS Ma. Corazon M. Akol 代表

『PhilNITS 試験とその戦略』

12:10 ~ 13:30 ~昼食~

13:30 ~ 14:10 日系企業の取り組み及び今後の課題

富士通フィリピン社 壷谷重男会長

『日比ビジネスフォーラム』

ADTX システム社 コーポレートプランニング

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Ramil Villanueva 副社長

『ADTX システム社における人材育成』

14:10 ~ 14:30 日本のアウトソーシング現況

TM コンサルティング 津田衛代表

『日本のソフトウェアオフショア開発の動向と今後の課題』

14:30 ~ 15:30 フィリピン産業界の取り組みと今後の課題

ビジネスプロセスアウトソーシング協会

フィリピンソフトウェア産業協会

フィリピンアニメーションカウンシル

15:30 ~ 16:00 ~コーヒーブレイク~

16:00 ~ 16:40 オープンフォーラム

16:40 まとめ/閉会挨拶

フィリピンコンピュータ協会財団 Mon Ibrahim 会長

18:00 ~ 20:00 懇親会(CICC 同窓会設立式)”Chao”

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6.会議議事:

6.1. 講演議事

◆̶◆̶◆講演◆̶◆̶◆

主催者挨拶(フィリピン側)

フィリピンコンピュータ協会

Vin Van Tooren 会長

今回のフォーラム開催にあたり謝辞を申し上げたい。IT の発展に伴い地理的な距離が縮ま

ったことにより、国境を越えてビジネスが可能になった。PCS は IT 分野のフィリピンビジネスの

拡大を促進しており、今回 CICC との共催で開催するビジネスフォーラムが、ビジネスのきっか

けとなることを願いたい。

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主催者挨拶(日本側)

CICC 兼谷明男専務理事

今回のフォーラム開催を喜ばしく思うとともに、特にフィリピン側の PCS に感謝したい。CICC

はアジア地域の情報化を支援するための非営利法人であり、経済産業省の指導と、関係諸機

関、会員企業の協力のもと、積極的に協力事業の展開を図っている。1983 年の設立以来、IT

人材育成研修、共同研究開発、公共システム開発プロジェクトに関する二国間協力事業、国

際標準化推進事業、OSS 分野の事業、専門家の派遣やセミナ/シンポジウムの開催等を通じ

た情報交換や情報化支援など、アジア諸国の期待に応え、その国の実情に即した多くの支援

事業に取組んでいる。

フィリピンに対しては、CICC では重点国と位置づけ、設立当初から色々な形での情報化協

力を実施している。特に昨年 5 月に、アジア IT イニシアチブの一環として、フィリピンプリシマ

前貿易産業省大臣と日本の茂木 IT担当大臣との間で「IT人材育成プログラム」についての共

同声明への調印が行われ、IT人材育成という重要課題のもと、CICCも重点的に取り組んでい

る。具体的には、研修生受け入れ 167 名、現地研修/セミナ等の実施、PhilNITS に対する

e-Learning 機材供与と、日本語が話せる IT ブリッジエンジニア研修を実施している。また、今

回はビジネスフォーラムにあわせて、夕食レセプションにてCICC同窓会を設立する運びとなり、

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今後、CICC同窓会が貴国の IT人材育成等に貢献することを期待すると同時に、CICC として

も支援したいと考えている。今後は、引き続き日本に研修生を受け入れるとともに、昨年に引き

続き PhilNITS において日本語が話せる ITブリッジエンジニア研修を、来月 11月より 1 ヶ月程

度実施する予定である。また、電子政府や社会公共情報システムの分野で、日本の経験や技

術を生かせる分野があれば、協力プロジェクトを推進していきたいと考えている。最後に、この

フォーラムで率直に意見交換することにより、今後の両国の連携が加速し、また深化することを

期待したい。

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基調講演①:

CICT Angelo Timoteo Diaz de Rivera

コミッショナー

国家コンピュータセンタ長官

『フィリピンの IT 政策

(電子政府プロジェクト含む)』

2004 年 7 月、アロヨ大統領の就任演説における 10 項目の公約(10 Point Legacy Agenda)

の中で、IT進行及びIT活用による同国発展を重要視する指針を掲げている。1つは全国を結

ぶ輸送とデジタル基盤の整備、もう 1 つは近代的な教育の実施である。

2005~2010 年の ICT 分野の戦略的な方向性は、5 項目を通して e-enabled 社会を実現す

ることを目的としている。それらは、1.すべてのコミュニティへのインターネットアクセス供給、2.

社会に ICT への認識と生かせる能力の構築、3.健全で競争力のあるビジネス環境の構築、4.

世界トップクラスの ICTサービスによる高付加価値の職の創出、5.政府サービスの市民への直

接供給である。

2005~2010 年の電子政府戦略は、市民とビジネスに焦点を置き、土地税申告や健康保健

サービス、税金徴収などの社会システム分野におけるオンラインサービス構築を目指している。

中小企業を活用しアプリケーション開発をアウトソーシングして構築する計画である。資金面は、

2003年、財務管理省と ITECC(情報技術・電子商取引協議会、当時の IT分野最高意思決定

機関)が設立した電子政府基金(e-Government Fund)を活用、この基金は重要な分野、複数

の省庁に跨るものでインパクトの大きいプロジェクトに対し予算付けがなされる。電子政府基金

のプロジェクト採択の基準は、3 つあり、1.アロヨ大統領の 10 ポイントアジェンダに沿ったもの、

2.これまでの ICT 政策に沿ったもの、3.複数の省庁のニーズに合致するもの、があげられる。

2005 年承認されたプロジェクトは、自治省公共安全情報システム(1 億 7,600 万ペソ=約 3

億5千万円)、貿易産業省フィリピンビジネスレジストリ(1億7,576万ペソ=約3億5千万円)、

CICT コミュニティセンタ(2 億円=約 4 億円)などで合計 6 億 1,775 万ペソ(約 12 億 3,500 万

円)となっている。2006 年は 10 億ペソ(約 20 億円)の予算立てがなされており、CICT のコミュ

ニティセンタ、財務管理省の電子予算執行プロジェクト、教育省の E-Learning マルチメディア

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コンテンツ開発プロジェクトなど7プロジェクトが予定されている。電子政府プロジェクトのメリット

として、サービスの向上、透明性の確保とアカウンタビリティの確保(政府)、省庁間のプロセス

の標準化と情報共有等があげられる。

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基調講演②:

経済産業省 商務情報政策局

情報処理振興課

大澤 一郎課長補佐

『e-Japan 戦略とアジアへの協力』

本日は日本の IT 政策と、アジアへの協力について述べたい。

「e-Japan 戦略概要」はまず、

①2001年 1月、「e-Japan戦略Ⅰ」として高速通信インフラ整備や電子商取引等重点5分野が

策定され、つぎに

②2003 年 7月、「e-Japan 戦略Ⅱ」として、医、食など先導的 7分野を加えた IT利活用促進を

目的とした。その後

③2004 年 2 月、「e-Japan 戦略Ⅱ加速化パッケージ」として e 文書法成立等、さらに

④2005 年 2 月「IT 政策パッケージ-2005」が策定された。

「IT 政策パッケージ-2005」では、「2005 年に世界最先端の IT 国家となる」と掲げた

e-Japan 戦略の目標達成に向け、利用者の利便性向上を目的に電子政府や医療分野等を強

化している。①行政サービス②医療③教育・人材④生活⑤電子商取引⑥情報セキュリティ・個

人情報保護⑦国際政策⑧研究開発の 8分野から構成され、特に前半の 4分野で利用促進を

はかっている。来年はじめに新たな e-Japan 戦略を策定する予定。

これらの e-Japan戦略により、インターネットブロードバンド料金は月2,600円(2004年)となり、

携帯電話普及率は 68%(2003 年)、オンラインによる政府サービスは 96%(2004 年)が可能とな

り、インターネット上での株取引は 22.5%(2004 年)となった。

アジアに対する協力について、アジアに対して複数のプロジェクトを実施しているが、中でも

アジア IT イニシアチブを重要視している。これまでにベトナム、フィリピン、インドネシアで実施。

フィリピンにおけるアジア ITイニシアチブは2004年5月、当時茂木日本国情報通信技術担当

大臣と、プリシマフィリピン貿易産業長官が共同声明に締結、人材育成に焦点をあてた内容と

なっている。具体的には、フィリピン大学での IT人材育成プロジェクト(UP-ITTC、UP/JICA)、

情報処理技術者試験の実施(PhilNITS)、情報処理技術者試験インストラクタ・ITエンジニア養

成研修(AOTS)、日本語による IT ビジネス研修(CICC)、日比間のビジネスマッチング

(JETRO-BOI)などが実施されている。人材育成分野では、特に CICC は招聘研修および現

地研修を重要視し、積極的に活動している。

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基調講演③:

貿易産業省 Elmer Hernandez 次官 /

投資委員会 Managing Director

『フィリピンの IT 産業概況と日本への

期待』

日本とフィリピンとの貿易状況を見ると、2005年 1~6月までで輸出入は日本が1位となって

いる。輸出は 43億ペソ(約 86億円)で全体の 18%を占め、ついで米国 39億ペソ(約 78億円)

で全体の 17%、その後中国、オランダ、香港が続く。輸入は 39 億ペソ(約 78 億円)で全体の

18%を占め、ついで米国 37億ペソ(約 74 億円)で全体の 17%、その後台湾、シンガポール、中

国が続く。直接投資も日本が1位で、180億ペソ(約360億円)で全体の40%を占め、ついで韓

国が 90億ペソ(約 180億円)で全体の 20%、その後オランダ、米国、タイが続く。フィリピンにお

ける日系 IT企業は、ADTX、キャノンインフォメーションテクノロジー、富士通、JGC、MBKデー

タ(三井系)、NYK、NEC テレコムソフトウェア、NTT、住友、東映アニメーション、Tsukiden など

が進出している。

フィリピンの優位性は、優秀な人材、充実したインフラ、アジア各国から 4 時間以内という立

地のよさ、ホスピタリティあふれる生活、政府の支援などがあげられる。急成長分野として、

BPO、ソフトウェア開発、エンジニアリングデザイン、コンピュータグラフィックおよびアニメーショ

ンが挙げられる。

まず、優秀な人材について、2004 年スイスの International Institute for Management

Development (IIMD)調査によると、アジアパシフィック地域におけるフィリピン人材の位置づけ

は、労働人口 3,300 万人中熟練したワーカの豊富さで 1位、シニアマネージャの数で 3位、IT

専門家の数で 4 位、会計分野の技術者の数で 10 位、中間管理職の多さで 10 位、高い技術

のエンジニアの数で12位という、高い評価を受けている。加えて、フィリピンは高い教育を保っ

ており、94%の識字率、毎年 40 万人大学卒業生(うち 8 万人が IT/コンピュータサイエンス/エ

ンジニアリング分野)、11 万人が商業・ビジネス関連卒業となっている。また、米国基準の会計

基準を導入していることもあり、10 万人の会計・ファイナンス・マネジメント分野の人材(毎年

3,000人づつ増加)がおり、毎年会計試験に2,500~3,000人合格している。これらの豊富な人

材数に加え、堪能な英語、顧客サービスのよさ、専門性の高さ、学習能力の速さ、安価なコス

ト、文化適応力の高さなどが、利点としてあげられる。2003/2004 年 Mercer Human Resource

Consulting の調査によると、チームリーダ、スーパーバイザ、マネージャ、シニアマネージャ全

ての分野において、調査対象 32 カ国中マレーシア、中国、インド、インドネシア、ベトナム等ア

ジア諸国に比べて、一番安価という結果が出ている。調査によると各々の年収は、チームリー

ダ(7,900 ドル)、スーパーバイザ(11,600 ドル)、マネージャ(17,000 ドル)、シニアマネージャ

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(24,900 ドル)となっている。

次に、インフラの充実度も高い。海外とは光ファイバーでつながっており、料金も安い(米国

まで 1 ヶ月 2,000 ドル)、アジアの主要都市と比較した場合の土地の安さ、自家発電バックアッ

プ等による電源も確保されている。経済区庁(PEZA)による ITパーク設立は1995年から始まり、

年々土地が狭くても ITパークとして登録できるようになっている。現在、PEZAの優遇政策を受

けられる IT パーク/IT ビルディングの最低限の大きさは 5,000 スクエアメータとなっている。

政府の政策面からは、CICT 設立(2004 年)、電子商取引法(2000 年 6 月)、民間企業に対

する個人情報保護法のガイドラインの策定等の政策も制定されている。また、優遇政策として

は、4~8 年の所得税免除、輸入資本財の手数料等免除など、手厚い優遇政策が策定されて

いる。承認には通常 1 ヶ月程度かかるが、最近は即日で可能となるケースもある。

IT ソフトウェアおよび IT サービスセクタの 2004 年の輸出額は 10 億ドル、投資は 80 億ペソ

(約 160 億円)、雇用総数は 10 万人となっている。この分野は今後も急成長する見込みで、

2010 年には輸出額 60億ドル、投資額 440 億ペソ(約 880 億円)、雇用総数 64 万人を見込ん

でいる。IT ソフトウェアおよび IT サービスセクタとして、BPO、ソフトウェア開発、エンジニアリン

グデザインサービス、コンピュータグラフィック・アニメーションを対象としている。BPO はコール

センタの次の成長分野として期待されており、特に会計分野が強い。AIG、JPMorgan、AlITalia、

Citybank、P&G、Chevron Texaco、Accenture、Sell、HSBC などが進出している。ソフトウェア開

発の現状は次の通り。ソフトウェア開発会社300社以上、輸出額1億8,600万USドル、1万人

以上の IT 専門家、北米・ヨーロッパ・日本・アジア地域対象、特にゲーム分野はこの 2 年間急

成長、CMM 取得に向けた取り組みなど。人材育成はコンピュータ関連学部のある大学は 86

大学、643 の IT 専門学校と 400 の IT 関連職業訓練校がある。

今後の方向性としては、アジア IT イニシアチブや日本語教育プログラムを中心とした日本と

のパートナーシップの継続に加え、英語が堪能で技術力のある人材の供給、産学が連携した

プログラムの実施、個人情報保護関連政策の充実化、IT ハブの構築、迅速な政府手続き、日

本を含めた国際機関との連携を重視し、フィリピン政府として IT を推進していきたい。

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基調講演④:

CICC 中島 純三 ポリシーボード議長

(株)日立製作所情報・通信グループ

理事

『日本における最近の IT 概況』

本日は日本の IT 産業について、日本より本日参加している主な会社のフィリピンでの活動

状況について、次に、生体認証、RFID について、最後に 2010 年のユビキタス情報社会につ

いて日立の考える未来展望を述べる。

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まず、日本の IT産業について述べたい。政府の動きとして、2001年 1月に政府の IT戦略と

して「e-Japan 戦略」を策定、「IT を活かした知識創発型社会を実現し、5 年以内に IT 分野で

世界最先端国家になる」という目標を掲げた。その後、「e-Japan 戦略Ⅱ」を 2003 年 7 月に発

表し、IT 利用による社会の活性化を目指し、推進組織として小泉総理と全ての閣僚を含む「IT

戦略本部」を組織した。同時に、民間有識者からなるチェック機能としての「評価専門調査会」

を設置した。この評価専門調査会の座長は、日立の庄山社長がつとめている。これら組織設

置により、IT戦略本部が計画を立て、行政の担当部門が施策を実施し、評価専門調査会が評

価して、次の改善につなげていくという PDCA サイクルが可能となった。

「e-Japan 戦略」の大きな目標の一つであった、ブロードバンドの普及について見ると、2003

年には当初目標を達成し、2004 年には、3,500 万世帯を超えた。これは、規制緩和により、行

政、通信会社、電力会社などが所有する回線を相互に利用可能としたことが大きな要因となっ

ている。電子政府・電子自治体の実現も大きな目標の一つだったが、2003 年までには中央官

庁の 96%の手続きを電子的に行うことが可能となった。政府や民間が IT戦略を遂行した結果、

総務省の予測では、日本における IT の市場規模は 2005 年で 29兆円、2010 年には 88兆円

まで伸びると予測される。また、波及効果のある分野を含めた市場の総額は120兆円/年にも

なると言われている。

次に、日本から本日の会議に参加している会社の、フィリピンでの事業内容、製品、販売拠

点などについて述べる。

日立: -Hitachi Global Storage Technologies Philippines Corp.

(HICAP、1.5” 30GB と 1” 6GB ハードディスクドライブの製造)

-TOP Mechanics Corporation

(日立とオムロンの ATM 事業統合による合弁会社、

銀行用 Automated teller machines とその部品の製造)

富士通: -FUJITSU PHILIPPINES, INC. (FPI、システム販売、オフショア開発)

-FUJITSU COMPUTER PRODUCTS CORPORATION OF THE PHILIPPINES

(FCPP、magnetic disk drives and magneto-optical disk drives の製造)

-FUJITSU DIE-TECH CORPORATION OF THE PHILIPPINES

(FDTP、press die & molds のデザインと製造)

NEC: -NEC Philippines,Inc.等 3 社(マニラ、販売、物流、ネットワーク工事関係)

-NEC TOKIN Philippines,Inc.

-NEC Telecom Software(セブ、通信用組み込み)

リコー: -販売拠点をマニラに設置。コピー、ファックスなど販売

次に、技術動向としてバイオメトリクスを紹介したい。バイオメトリクスには、指、静脈、手のひ

ら、指紋、顔、虹彩など複数あり、コスト、心理的抵抗感、安全性、機器の大きさなどから、各々

の特徴がある。中でも、指静脈の認証は、非常に精度が高く偽造も困難で、将来主流となると

期待されている。指静脈の認証は、ATM の本人確認だけでなく、セキュリティの高い部屋への

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入退室管理など、色々な分野で活用されている。最近、PC に内臓する小型の指静脈のフラッ

トセンサーが開発され、今年度中に製品化予定。これを使うと本人以外は PC が使えずセキュ

リティ確保できる。この他にも、公共サービス、医療分野、金融などにおいて活用できるとされ

る。

次に、RFID とそのアプリケーションについて述べたい。RFID は、多くの情報を小さいチップ

の中に凝縮できるため、社会的・経済的ニーズから、今後ユビキタス社会の中心的な技術にな

ると期待されている。RFID の中で最も小さい電子タグ=ミューチップを日立は開発しているが、

ミューチップ自体は 0.4mm角の小さなチップで、外部アンテナを取り付けると長さ 53mmの電

子タグとなる。電子タグを色々なモノに取り付けて、電波を利用して読みとることにより、個体の

自動認識に利用することが可能となる。今年開催されていた日本での「万国博覧会」の入場券

にも使用された。また今回の入場券管理システムはマシンリーダブルのため、従来の人手作

業による入場確認方式に比べ、CO2 換算で 11%、27 トン分の削減につながり、「環境対策」

にも寄与した。また、この RFID タグは、例えば、家電メーカの工場から量販店までの製品の流

通に利用し、どの時点でも製品管理が可能となる。この他、道路に RFID タグを埋め込み、目

の不自由な人に位置情報や案内情報を電子的に受け取ることもできる。政府主導のプロジェ

クトとしては、経済産業省による HIBIKI プロジェクトがあげられる。本プロジェクトは、2004 年 8

月から 2006 年 7 月までの 2 年間、安価で、安定供給が可能な、国際的に流通できる、RFID

を開発することを目的としている。この RFID は国際統一標準にし、今後アジアをはじめとし世

界に拡大したいと考えている。

最後に、日立が将来どのような IT 社会を目指しているか、を紹介したい。センサ端末(人の

動作や脈拍をモニターする)や、人間型のロボットの開発、防災などを主な目的とした自律型

飛行体などの開発に取りくみ、安心、安全、便利なユビキタス情報社会を目指している。

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アジア IT イニシアチブ紹介

JICA フィリピン大学 IT 研修センタ

飯島チーフアドバイザ

『人材育成プロジェクト概況』

フィリピン IT-HRD(IT 人材育成)プロジェクト(Philippine IT Human Resources Development

Project)は、「フィリピン大学IT研修センター(UP-ITTC)が産業界のニーズにあったIT研修を

実施できるようになること」をプロジェクトの目標に、JICA とフィリピン大学(UP)が協力し、2004

年 7 月 20 日~2008 年 7 月 19 日までの 4 年間の計画で実施しているプロジェクトで、アジア

IT イニシアチブ人材育成の一環として実施されている。プロジェクト目標は、UP-ITTC が、IT

産業界に対して、将来リーダーとなり得るIT技術者を継続して供給できるようになることとし、IT

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関連学部の大学卒業生および現職の IT エンジニアなどを対象に IT 研修を実施している。

UP-ITTC では、1 年間のコースで基礎科目と日本語(400 時間)とビジネススキルに加え、「ア

プリケーション開発」「ネットワークシステム」(2006 年からはこれに加えて「エンベデッドシステ

ム」も開講)の専門課程を含む、IT 研修を実施している。コース終了後は、PhilNITS 情報処理

技術者試験FEレベル、日本語能力試験3級、ブリッジSE能力、インターンシップの機会習得

などが挙げられる。奨学金制度も設置されており、1 年間で手当て付奨学金が約 28 万円(年

間学費と生活費の1年分相当)、奨学金が16万円(学費のみ)の設定。2005年は14人(奨学

生)と 38 名の合計 52 名が合格したが、実際に入学したのは 38 名となっている。

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アジア IT イニシアチブ紹介

PhilNITS Ma. Corazon M. Akol 代表

『PhilNITS 試験とその戦略』

2000 年 10 月 ASEAN+3 会合において、日中韓がアジア地域で技術者が円滑に流動でき、

かつその人材をアジア地域で活用すべく、共通スキルスタンダードの必要性を認識した。具体

的な試験として、日本は 1969 年から国内で実施している情報処理技術者試験を、アジア地域

で相互認証することを推進、METI 指導のもと IPA が実施しており、FE(基本情報処理)、SW

(ソフトウェア開発)をベースに、各分野の試験に分かれている。

フィリピンでは 2002 年 4 月 17 日に日本側と MOU を締結した2。現在ではアジア IT イニシ

アチブ人材育成の一環として実施されており、JETRO からの専門家派遣、各種研修の実施、

機材供与などが行われている。CICCからは、ブリッジエンジニア研修の実施と、e-Learning教

材の貸与がなされた。PhilNITS では当初から FE 試験のみを実施、2001 年からパイロットプロ

ジェクトを開始した。合格率は2001年6.1%(パイロットプロジェクト)、2002年5.3%、2003年8.4%、

2004 年 13.4%(合格者は 62 名)と上昇している。FE試験に合格するメリットとしては、ビザ習得

の1項目がクリアできる、世界標準により自分の能力が測定できるなどが挙げられ、実際FE試

験合格者は、現地日系企業を含めすぐに就職が決まるという。2003 年 5 月、貿易産業省の製

品標準局が情報処理技術者試験をフィリピンの IT 試験として承認したことに伴い、名前を

JITSE-Phil(Japanese IT Standards Exam of the Philippines)から PhilNITS(Philippines National

IT Standards Foundation)へ変更し、フィリピン国内の資格であることを示している。また 2005

年 9 月にはセブ事務所が開設され、JETRO 専門家が派遣されている。

(前半の日本の IT サービス産業市場は省略。後述の津田氏講演議事で言及する)

2 フィリピン以外では、日本はインド、シンガポール、韓国、中国、ベトナム、ミャンマー、台湾、マレーシアと締結している。

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日系企業の取り組み及び今後の課題

富士通フィリピン社 壷谷重男会長

『日比ビジネスフォーラム』

富士通フィリピン社(FPI)では、奨学金プログラムを実施している。1985 年に開始され、ハワ

イ大学で MBA コースを取得するプログラムでは、これまでに 38 人を支援している。フィリピン

国内の奨学金プログラムは 1992 年に開始され、デラサール・アテネオ・ドンボスコ等大学の

IT・コンピュータサイエンス等の学部に、これまで 65 人を支援した。FPI 社の IT 人材育成につ

いては、これまで 4,500 人の IT エンジニアを教育したが、半分以上が米国、カナダ、オースト

ラリア、シンガポールに行ってしまった。FPI 社は 2000年、日本経済産業省より人材育成とフィ

リピンへの貢献として賞を受賞した。

日本のIT市場を見ると、市場自体は大きいが、まだ外国人に門戸を大きく開いておらず、ま

たアウトソーシング割合も大きくない。2004 年、日本の IT サービス産業は 1,300 億ドル、5,500

社あり、57 万人の雇用がある。2003 年時点で米国・ヨーロッパに続き、日本は 3 番目の市場と

なっている。日本における外国人ITエンジニア数を見ると、2004年3月 JISAの調査によると、

251 社対象のうち 104 社が外国人 IT エンジニアを雇用しており、中国が圧倒的、ついでその

半数が韓国、韓国の 1/3 がインド、フィリピン人は中国と比べると 1/20 以下である。

フィリピンと日本の人口比を見ると、日本は高齢化による人口減少、フィリピンは人口増加に

より、2025 年に人口数が逆転する。また 2003 年日本へのビザ内訳を見ると、韓国、台湾、中

国についでフィリピンは 13 万人と多いが、エンターテイナーや結婚によるビザが多い。フィリピ

ン国内の登録された日本人数は1万 2千人程度で登録していない日本人は3~4万人いるよ

うだ。また毎年約 7 千組が結婚している状況。今後は、より高度なレベルの人の行き来を期待

したい。

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日系企業の取り組み及び今後の課題

ADTX システム社

コーポレートプランニング

Ramil Villanueva 副社長

『ADTX システム社における人材育成』

ADTEX Systems Inc.は 1993年設立され、従業員275人(平均年齢26歳、90%がソフトウェ

アエンジニア)、売上268百万ペソ(536百万円2004年)、ISO9001を取得した。本社 アラバン、

他の事業所 マカティ、セブ、品川オフィスにフィリピン人マネジャーがいる。ADTEX フィリピン

はセブにあり、ストレージデバイス開発を行なっている。業務内容としては、ファームウェア開発、

ストレージ、モバイル、リテール、ビジネスアプリケーション開発、組み込み開発、品質保証サ

ービスを行なっている。2003年から 3年連続での e-Service フィリピンでベストプロダクトアワー

ドを受賞、2003 年は E-ビジネスカテゴリーにおいて多重モニター遠隔制御システム、2004 年

はヘルスケア分野、2005 年はウェブサイトが受賞した。

この成長の裏には人材育成がある。METIのITSSを利用し、ACTIONと呼ばれる自社の教育

センターを設立しており、5 ケ月で、日本語 3 級、PhilNITS 合格を目指している。現在、

PhilNITS の合格率 35%と高く、また従業員の 70%近くは日本語 3 級を取得している。ACTION

では、講義内容として、①幅広い IT知識(1 ヶ月、全体の 16%)、②最新技術(オープンスタン

ダード)(3ヶ月、全体の52%)、③日本のビジネス文化(1週間、全体の6%)、④日本語でのコ

ミュニケーション能力(検定 3 級)(5 ヶ月間通しで、26%)を行なう。新卒以外にも、継続して日

本語教育を行なっており、従業員の2級が19%、 3級が66%、4級が12%、1級が1%いる。

自社の研修以外に、PhilNITS、AOTS、CICC、フィリピン大学プロジェクト(UP-ITTC)の研修を

受講している。ADTXは今後も、人材投資を行い質の高い人材を輩出して行きたいと考えてい

る。

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日本のアウトソーシング現況

TM コンサルティング 津田衛代表

『日本のソフトウェアオフショア開発の

動向と今後の課題』

本日の講演は、アジアにおけるソフトウェアオフショア開発、日本の IT サービス産業、ソフト

ウェアオフショア開発の現状、日本にとってのオフショア開発の順に説明したい。

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まず、ITオフショアリングの区分と分野は下記の通り。今回は1.ソフトウェア開発分野(アニメー

ションおよびゲームを除く)に焦点をおく。

パッケージ、ミドルソフト、ツール等のソフト製品開発

組込みソフトウェの開発(デジタル家電、携帯電話、産業機器等)

個別業務アプリケーション開発

1 ソフトウェア開発

コンバージョン、バージョンアップ、ソフト保守

2 情報処理サービス ビジネスプロセスオペレーション、コールセンタ

3 データ入力・処理 データ入力作業、CAD-CAM データ入力、マルチメディアコンテンツ

No 区分 主な分野

オフショア開発に取り組んでいる国も多いが、日本向けに積極的に推進しているのはアジア

各国であり、インドや中国をはじめとして東南アジア、南アジア各国に広がっている。日本のオ

フショアソフトウェア開発の歴史を見ると、1980 年代は韓国・台湾、その後インド・フィリピン、

1990 年代に入り中国・インド、2000 年に入りベトナムやその他の国に進出している。

さて、日本の IT サービス産業規模を世界のマーケットサイズから見ると、2003 年世界の IT

サービス産業7,478億ドルのうち、米国は48%、ヨーロッパ30%、日本11%、中国0.9%、韓国0.7%

となっており、3 位に位置する。日本の IT サービス産業の内訳を見ると、受注ソフトウェアが

47%、ソフトウェアプロダクト 10%、情報処理サービス 17%、管理運営受託 13%、データベース 2%、

他となっており、ソフトウェア開発に相当するのは、受注ソフトウェアとソフトウェアプロダクトをあ

わせて 57%となる。日本の IT サービス産業の特徴は、日本語と日本文化、信頼関係、長期的

な視点、高品質が挙げられ、また受注ソフトウェアの特徴は仕様書が最初からきちんと決まっ

ていないことや途中で何度も仕様変更があることが挙げられる。日本のオフショア開発のニー

ズとしては、人件費の高騰、開発コストの低価格化、ソフトウェアエンジニア不足などの背景が

あり、オフショア開発に乗り出した。オフショア開発ではコスト、技術力、日本語力、ISO9001 や

CMM などの信頼性、ビジネス文化、インフラ、日本からの距離などが重要な要素となる。

現在、日本のオフショア開発の現状は、2004 年 JISA他の調査によると、調査対象の 251 社

のうち、48%が海外へのオフショア開発経験あり、52%が経験なしだった。今後拡大予定或いは

オフショア開発予定と回答した会社は多い。求められる技術は、ニーズの多い順に Java、言語

(日本語および英語)、C++、プロジェクト管理、プロジェクトアドミニストレーション、ネットワーク

テクノロジー、セキュリティとなっている。今後発注可能性のある国として、中国、インド、韓国、

ベトナム、台湾、アメリカ、香港、タイ、シンガポール、フィリピンの順になっている。実際、日本

の大手 IT ベンダを見ると、オフショア開発の割合は全体の 1 割弱、うち中国への発注割合は

90%程度になっている。中国・インドにオフショア先を選択する理由は、ソフトウェア市場規模の

大きさ、ソフトウェア企業数、CMM 取得状況、日本語人口など日本にとって優位な点が多いこ

とにある。

日本のオフショア市場規模をざっと見積もると、日本のITサービス産業は1,340億ドルあり、

うち受注ソフトウェアとソフトウェア製品は 57%にあたる 763 億ドル、オフショア開発市場を 5~8%

と見積もっても 38~64 億ドルの市場があることになる。現状、日本から海外へのオフショア開

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発は 16 億ドルなので、今後 2~4倍に増加する可能性があるといえる。中国、インド、韓国、フ

ィリピン、ベトナムを比較すると、フィリピンは日本語能力を除くと技術力や人材数などはよいと

いえる。

成功の秘訣は、オフショア開発で重要な視点としてコスト、技術力、日本語能力、プロジェク

ト管理能力、日本のソフトウェア開発文化の習得、相互コミュニケーション、仕様書変更に対す

る対応、高品質などが求められる。フィリピンの優位点としては、データ入力やデザイン、アニメ

ーションやゲーム分野、国際ビジネスの豊富な経験、チームワークのよさ、堪能な英語が挙げ

られる。今後、日本からオフショア開発を考えた場合、日本顧客との長期的なパートナーシッ

プ、日本語能力の向上、開発とマネジメントノウハウの蓄積などが求められるといえる。

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フィリピン産業界の取り組みと今後の課題

ビジネスプロセスアウトソーシング協会

Dan Reyes 会長

『ビジネスプロセスアウトソーシング

概況』

Business Processing Association Philippines (BPAP)は、フィリピンの e-Service 産業をまとめ、

インドの NASSCOM のような窓口となる組織を目指している。フィリピンの BPO は 6 分野ある。

1.コールセンタ:最も急成長を遂げている分野で、2000 年から 2004 年まで年間 2 倍の成長。

2005 年は 50~70%成長が見込まれる。現在 7 万 2 千人の雇用があり、2005 年末まで

に 10 万人の雇用が期待される。2004 年の売り上げは 8 億ドルで 2005 年末までに 10

億ドルが見込まれる。企業としては、PeopleSupport、Sykes、ACS 等。

2.バックオフィス:保険、銀行サービス、旅行業務、出版、コンテンツ開発、IT サポート、法律転

写、会計分野などの需要がある。HSBC、AIG、Shell AG、Procter&Gamble に加え、

Accenture、SPITechnologies などから受注がある。

3.医療記録転写:現在、47社ある。今後5年間で米国とヨーロッパでの高齢化が進むため、年

間 20%の成長が見込める。

4.アニメーション:米国および日本からアウトソーシングを受注。

5.エンジニアリングデザイン:政府関連、建築、造船等の分野で、最先端のコンピュータアプリ

ケーションを用いてデザインしている。主な企業は JGC、Fluor、Bechtel、

Dash Engineering など。

6.ソフトウェア開発:広範囲の分野をカバーしている。主な企業は Lexmark、NEC、NCR、

Canon、Safeway 等。

(文中、貿易産業省の講演内容と重複する箇所は省略した)

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フィリピン産業界の取り組みと今後の課題

フィリピンソフトウェア産業協会 Fermin

Taruc 会長

『フィリピンにおけるソフトウェア

産業概況』

2004年時点でソフトウェア開発企業数は600社程度あり、うち 30%が米国、ヨーロッパ、日本

からのオフショア開発を行っている。分野は銀行、製造業、政府、大学など広域に及ぶ。2004

年 11 月時点でソフトウェア輸出先を見ると、米国と欧州各々40%、日本が 20%、その他という内

訳である。

2005 年 6月、PSIAはセブソフトウェア協会とともに“フィリピンソフトウェア 2010”レポートを政

府に提出、各目標の頭文字をとって”FLY HIGH”と呼ばれるこの計画には、2010 年に向けた

ソフトウェア開発分野の青写真が描かれている。この”FLY HIGH”計画には、2010年までに50

社が国際基準レベルに達すること、フィリピンに 50 の外資系ソフトウェア企業を誘致すること、

フィリピンブランドを創出すること、ソフトウェア開発分野で新規に10万人を雇用すること、毎年

3%づつ知的財産権準拠のソフトウェアを増加すること、政府のソフトウェアへの投資を毎年 10%

づつ拡大すること、産業界の目的達成のためインフラを設備すること、という 7 つの具体的目

標が掲げられている。

現在、日本向けソフトウェア開発を行っている企業は現地日系企業を中心に 32 社あり、特

に Java、C/C++、.Net、組み込み系が多い。

(文中、貿易産業省の講演内容と重複する箇所は省略した)

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フィリピン産業界の取り組みと今後の課題

フィリピンアニメーションカウンシル

Joy I Bacon 会長

『フィリピンにおけるアニメーション

産業』

インド NASSCOM 調査によると、2000 年全世界で 160 億ドルだったアニメ市場は、2004-

2005 年は 500 億ドルと予測される成長分野である。背景には、インターネットのコンテンツ、コ

ンピュータグラフィック、オンラインゲーム市場等の市場ニーズの高まりが挙げられる。現在、フ

ィリピンのアニメーション市場は、企業数 50 社、アニメーションカウンシル会員企業 22 社、フィ

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リピン人のアニメーター5 千人、2004 年の売り上げは 40 億ドルとなっている。フィリピン人は創

造性が強いこと、米国文化に親しんでいること、柔軟性が高いことなどが利点としてあげられ、

20 年ほど前から米国(ウォルトディズニー、ワーナーブラザーズ等)、日本(東映アニメーション

等)、ヨーロッパなどのアウトソーシング受注先となっている。フィリピンアニメーションカウンシル

では、会員企業が協調し、世界に通用する信頼性の高いインフラ整備や(フィリピン発の)コン

テンツ作りを目指したい。この説明の後、現地 Animation 会社からのデモンストレーションがあ

った。

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6.2. Open Forum の議事

◆̶◆̶◆Open Forum◆̶◆̶◆

最初に参加したフィリピン企業から各 3 分程度で、自社の紹介があった。

紹介のあった企業は下記の通り。ここでは概略のみを記述する。

・ Bayan Telecommunication (Bayantel):データプロセス、BPO。東京にも支社を持つ。

・ PointWest:米国向けの医療関連他アウトソーシング。今後、日本市場も視野に。

・ CPL Philippines:ドイツ企業の子会社、ソフト開発サービス。

・ Tsukiden Software Philippintes:アプリケーション開発、組み込み。200 人の従業員。

・ Astra Philippines:ウェブベースを中心としたビジネスアプリケーション開発。UP-ITTC プロ

ジェクトにも協力。

・ IBM Solution:CMM3 レベルを取得。IBM のサービス事業を行う。

・ Animation Production, Novel Academy:フランス、インド、オーストラリアからの仕事に従事。

研修も実施。

・ 他企業

フィリピン各企業の紹介の後、日本からのコメント並びにフリーディスカッションが行われた。

議事概要は下記の通り。

CICC長沼:CICCはフィリピンに対し研修をはじめとして様々な協力を行っているが、中でもア

ジア情報化レポートとしてフィリピンIT産業の調査レポートを発行している。フィリピンIT

産業は日本であまり紹介されていないため、CICC としてはこのレポートを通じて、日本

の関係者にフィリピン IT 状況を紹介している。

CICC 浅井:アジア情報化レポートを執筆しているが、中国やインドに比べてフィリピンはしっか

りした統計が入手できないことが多い。先ほど講演のあったビジネスプロセスアソシエ

ーションがインドの NASSCOM となるよう期待したい。

(なお、会議終了後、PSIA より 2010年のフィリピンソフトウェア産業の青写真を策定した

“FLY HIGH2010“レポートを入手。また PCS よりフィリピン概況および IT 産業に関する

統計を入手した。)

SpiceWorx Consultancy 安部氏:フィリピン企業が日本市場からのオフショア開発ビジネス

に参入する場合、日本語能力と同時に営業チャネル開拓が大きな難関になっている

ことを、数多くのフィリピン企業から聞いている。中国は、日本のオフショアソフ

トウェア開発委託先として急速に成長しているが、中国企業はどのようにチャネル

開拓しているのか、日中オフショアビジネスに詳しい津田氏に質問させていただき

たい。

TM コンサルティング津田氏:中国の日本向けアウトソーシング状況について、マクロな視点か

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らは、中国は日本語能力の高さと人的ネットワーク層の厚さが優位点としてあげられる。

これは、中国は日本への留学生の数も多く、留学後に日系企業で働き、人的ネットワ

ークを構築しているためで、日本と中国の距離は近いといえる。一方、日本ではフィリピ

ンの IT 状況は知られていないため、先ずは宣伝することが重要となる。ミクロな視点か

らは、本日フィリピン現地企業で日本に留学したフィリピン人の人にあったが、まだ留学

生等の層は薄く、多少時間がかかると思われる。最近中国では、日本のIT技術者で退

職した人が中国企業で働いているケースが増加している。フィリピンでは、日本語を話

す人口が急に増えるとは思えないため、例えばこのような日本の IT 技術者を活用する

のも一つの手ではないかと思う。

CICC 長沼:日本企業が海外人材を求めるのは、日本人の開発コストの高騰や人的資源の不

足、質量ともに日本人だけで日本のソフトウェア開発を支えるには限界に来ているため

である。JISAのレポートによると、海外の人材に対しては、①プロジェクトマネージャ、②

コンサルタント、③IT スペシャリスト、④アプリケーションエンジニアが求められている。

また、技術については津田氏の講演にあった通り。産業界のニーズとしては、大企業

ではプロジェクトマネージャ、システムインテグレータ、一方、中小企業では日本語、文

化が理解できる人材の要求が高い。特にオフショアビジネスを希望する中小企業では

英語での仕様書を書けず、日本語が必要条件となっている。一方、大企業では英語で

アウトソーシングを行なっているところも多く、日本語能力の希望は比較的少ない。

富士通フィリピン壷谷氏:フィリピンに能力はあると思うが、外から見ると、産業や政治含めて混

乱しているように映ってしまう。外に対し、どのようにフィリピンの能力を PR するかが重

要なポイント。

PCS Ibrahim 氏:今回のビジネスフォーラムでは、数々の講演および Open Forum のディスカッ

ションを通じ、意味のある議論ができたと思う。今回のフォーラムをきっかけに、IT 分野

での日比双方の関係が益々発展することを期待し、まとめとしたい。

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7.関係機関訪問:

HITachi Global Storage Technologies Philippines Corp.(HICAP) (マニラ)

IBM のストレージ部門を買収して 2003 年設立、世界に 2 万人以上の従業員を擁する。

ISO9001およびISO14001を取得。組み立て部分をフィリピン、シンガポール、タイ、中国で行う。

フィリピンは HDD 磁気ヘッドと、2.5 型~1.0 型 HDD 装置(ビデオ、デジカメなど情報家電向

け)を作っている。なお、世界シェアを見ると 2.5 型は半分、1.0 型は半分、3.5 型は 8%となって

いる。日立グループはフィリピン国内に 19 箇所あり年間意売り上げ 1,100 億円。

HICAPはラグーナテクノパーク(70社、うち 54社は日系)に位置する。フィリピンな優秀な労

働力に加え、離職率も低い、英語能力(工場ゆえ日本語は必要なし)、投資環境の整備が利

点として挙げられる。低い離職率に関して、HICAP ではエンジニアクラス 10%、係長クラス 3~

4%、課長以上の管理職は全員残っており、この数字はフィリピン国内でも低いという。HICAP

では、垂直統合生産(一貫生産)、部品の調達、良好な労使関係(家族を重視)、政府・各種

団体との良好な関係を重視している。また人事には IBM 方式を導入し、現地フィリピン人現地

雇用を役職クラスに雇用している。現在、部長は 20%、課長は 98%がフィリピン人。同時に、役

職の階層を少なくし、成果主義を取り入れるなど行っている。間接人員は 500 名(90%が大卒、

男女半々)、工場のラインは全員高卒以上(94%女性、平均24-25歳)となっている。初任給は

1 万 2 千円程度で中国よりも若干安い。インフラ設備も整っており、8 割の電気を自家発電し、

全てグローバルネットワークでつながっている(システムはSAPを導入)。また2005年 9月には

安全操業で労働省から表彰を受けた。環境に対する規制も厳しく、廃棄物処理が無難しい

(規制は厳しいが遵守していない現地企業も多い)。

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東映アニメーション(マニラ)

現在、日本で毎週 5 本(各 30 分)放映されている東映のテレビアニメ全番組の制作に関わ

る他、劇場用アニメーション映画やテレビ作品も制作。制作工程の約 7 割はフィリピンでこなす。

30分1本の番組につき3,500枚、月産で6万枚程度。今はほとんどがデジタル化され、日本と

は 1.5Mbps の専用回線 2 本で接続 1 日 2 ギガバイト程度のデータを送信。1986 年にパート

ナ企業に外注しはじめ、1990 年合弁会社設立、2000 年完全子会社化。正社員は 160~170

名(フリーランス 12 名、契約社員 40 名)。日本語翻訳専用担当 4 名、それ以外の従業員は、

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現在日本語を習得していないが、日本語が話せるほうがスムーズなコミュニケーションがはか

れるとのこと。職種によるが、平均すると月給は 4~5 万円程度。フィリピン人の特徴として、独

創性はそれほど強くなくフィリピン発のコンテンツはまだないが、模倣するのは得意。

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セブ投資促進センタ(セブ)

フィリピンの優位性として、親日的な国民性、英語能力、低コスト、インフラ、日本からの近距

離(マニラから 1 日 21 便)、大学など教育機関の充実、日本との光ファイバー専用線敷設、ま

たセブはフィリピンの中でもっとも安全といわれている。人件費を見たとき、日本の大手会社を

1 人 100 万円とすると、協力メーカは 70-80 万円、インド大手は 60-70 万円、日中合弁企業

は50万円、フィリピンへのオフショア25-30万円が目安となる。一方、デメリットとしては、人口

爆発、不十分な安全、高い離職率、日本語浸透度の低さが挙げられる。セブには 7 つの工業

団地と、PEZA に登録されたビルが 2 つある。また、日本の退職者村も建設している。

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NEC テレコムソフトウェア(セブ)

NECテレコムソフトウェアは、1999年NEC通信システム100%出資の子会社として設立。組み

込みソフトウェアをメインに行い、顧客は NEC 通信システム、NEC ソフトウェア東北など、系列

会社となっている。年間売り上げ252百万ペソ(約 500百万円)。従業員はセブ271名、マニラ

53名(レベルの高い人材)、日本人9名、合計325人おり、8割がエンジニアである。離職率は

15%程度。

セブでは 100 人のうち、トップ 10 の優秀な人が雇用できるメリットがある。実際、新卒は大学

の推薦により採用。月給は 3 万円程度、事務所賃貸料は日本と比較し 1/10、オフィス家具は

1/6 程度。フィリピンの工場は労働組合が多いが、IT 産業において労働組合はない。

NEC の強みとして、低賃金・優秀なソフトウェア技術者の確保、日本語教育の充実(日本語

教師2人)、仕様変更に臨機応変に対応できることなどが挙げられる。課題としては、高い離職

率による技術の継承問題、発注側管理のオーバーヘッドの大きさ、若手の技術者が多く、特

にJavaは上級が少ない、ブリッジ SE の育成などが挙げられる。

以上

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