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第10回CRCと臨床試験のあり方を考える会議in別府 信頼性を高める医療情報とは? ~治験における記録方法を考える~ GCP調査担当する立場から GCP調査担当する立場から (独)医薬品医療機器総合機構 信頼性保証部 近藤恵美子 1

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Page 1: GCP調査を担当する立場から4 平成21年度GCP実地調査調査実績 件数品目数成分数 治験依 頼者数 医療機関 数 症例数 新医薬品 72 148 72 76 176

第10回CRCと臨床試験のあり方を考える会議in別府

信頼性を高める医療情報とは?~治験における記録方法を考える~

GCP調査を担当する立場からGCP調査を担当する立場から

(独)医薬品医療機器総合機構

信頼性保証部 近藤恵美子

1

Page 2: GCP調査を担当する立場から4 平成21年度GCP実地調査調査実績 件数品目数成分数 治験依 頼者数 医療機関 数 症例数 新医薬品 72 148 72 76 176

GCP査察(調査)担当者の日米欧での共通認識

• 査察(調査)では、生データから承認申請資料までの信頼性を保証すること

• 重要な視点は、被験者の人権、安全及び福祉に対する配慮が 科学的 社会的利益よりも優先されること配慮が、科学的、社会的利益よりも優先されること

• 科学的に妥当なプロトコールに基づき治験が実施 管理科学的に妥当なプロトコ ルに基づき治験が実施、管理されること

• 違反や逸脱が認められた場合、大切なことは、再発防止のための「カイゼン」のための対応が講じられていること

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PMDAが行う基準適合性調査

根拠;

治験依頼者が保管する調査対象医療機関のCRF等の原資料(根拠となる資料)

調査対象医療機関に保存されている原資料

治験業務手順書、IRBの運営

根拠;薬事法第14条第5項薬事法第14条の2第1項

GCP実地調査となる資料)治験業務手順書、 の運営

に係る手順書及び議事要旨等、CRFの作成の元となる文書、データ及び記録(同意文書、診療録、検査伝票、患者日誌、投与記録など)

治験の依頼・契約に関する資料、モニタリング記録等の治験の管理に関する資料、症例報告書(CRF)、モニタリング記録等

1. 全試験から調査対象試験を抽出

投与記録など) モニタリング記録等2. ピボタル試験では抽出率を高く、その他の試験では

低くしているが、抽出率の下限は定めていない。1医療機関当たりの抽出率は概ね20%程度。なお、

調査中に問題があった場合には、1施設当たりの調査対象症例数を増やして対応

承認申請書に添付され適合性書面調査

治験依頼者が保管する、重要な調査対象試験を実施した全ての医療機関の原資料(根拠となる資料)

ている資料(承認申請資料:CTD)

適合性書面調査

治験の依頼・契約に関する資料、モニタリング記録等の治験の管理に関する資料、症例報告書(CRF)、モニタリング記録等

原資料から申請資料までの適合性を保証する3

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GCP実地調査では

GCP第2条第10項に規定される原資料から、被験者

GCP実地調査では

GCP第2条第10項に規定される原資料から、被験者

の人権、安全性及び福祉の保護のもとに、被験者の

様々な非定型な情報をプロトコールというルールに様 な非定型な情報を う

従い、科学的な質と成績の信頼性が確保された治験

が実施されたか、を検証します。

被験者の人権への配慮の基に、主要評価項目等の有効性評価や死亡例等の重篤な有害事象等の安全性評価に関わ評価や死亡例等の重篤な有害事象等の安全性評価に関わる項目に影響を及ぼす事例か否かを判断して試験の信頼性を保証します。

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平成21年度 GCP実地調査 調査実績

件数 品目数 成分数治験依頼者数

医療機関数

症例数

新医薬品 72 148 72 76 176 2826

後発医薬品 10 9 9 9 9 348後発医薬品 9 9 9 9 3 8

医療機器 1 1 1 1 4 6

医師主導治験 2 2 2 4 85

海外調査 7 14 7 7 14 293海外調査 7 14 7 7 14 293

総計 92 174 91 93 207 3558

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GCP実地調査件数の推移(新医薬品に係る国内調査)(新医薬品に係る国内調査)

16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度

調査実施成分数

50 50 51 82 95 74

調査実施品目数

114 95 127 134 179 150

調査実施調査実施治験依頼者数

52 59 66 90 97 76

調査実施調査実施医療機関数

114 120 104 183 216 180

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治験依頼者に対して「改善すべき事項」として通知した件数の推移

250

300251件

200

250200

181

100

150129 134

50

100

39

0

(注)新医薬品に係る国内調査、旧GCPの事例を含む 7

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治験依頼者に対して「改善すべき事項」として通知した件数の項目別推移

GCP第20条第2項

通知した件数の項目別推移

300

GC 第 0条第 項

GCP第21条第1項GCP第21条第2項GCP第22条第1項

200

250GCP第22条第1項GCP第22条第2項GCP第23条第1項その他

件数

100

150その他数

50

100

0

8(注)新医薬品に係る国内調査、旧GCPの事例を含む 8

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治験依頼者に対する「改善すべき事項」として通知した事例の項目別内訳通知した事例の項目別内訳

第22条第2項

GCP第20条第2項・副作用情報等(7件)

第20条第2項18%

第22条第2項15% GCP第21条第1項

GCP第21条第2項

・モニタリングの実施(26件)

GCP第21条第2項

GCP第22条第1項

・モニタリングの実施(0件)

第21条第1項67%

GCP第22条第1項

GCP第22条第2項

・モニターの責務(0件)

タ グ報告書 件

GCP第23条第1項

・モニタリング報告書(6件)

・監査(0件)監査( 件)

9(注)新医薬品に係る国内調査、新GCP適用治験のみ 9

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実施医療機関に「改善すべき事項」として通知した件数 推移通知した件数の推移

800

900

121

治験実施体制

個別症例

600

700

121

81件数

300

400

500

698

84130

84

100

200

300458 512

389282

181

28

0

100

10(注)新医薬品に係る国内調査、旧GCPの事例を含む

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実施医療機関に「改善すべき事項」として通知した件数 項目別推移

治験実施計画書

通知した件数の項目別推移

800

900

治験実施計画書

症例報告書

治験審査委員会件

600

700

800 治験審査委員会

記録保存

その他

件数

400

500

100

200

300

0

100

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平成21年度 医療機関の個別症例に関する事例について

第41条その他

第44条4%

GCP第41条第2項(21件)・保存不備(診療録、検査報告書等)

第47条

第41条12%

その他

8% GCP第44条(7件)・選択・除外基準違反等

第47条18% GCP第46条第1項(106件)

・投与方法不遵守、併用禁止薬使用、治験実施計画書規定項目の未実施

第46条58%

GCP第47条第1項(32件)・症例報告書への記載不備(検査結果・有害事象・併用薬)58%

その他(15件)

(検査結果 有害事象 併用薬)

・同意説明・取得の不備、再同意の未取得(n=181) 再同意の未取得

12(注)新医薬品に係る国内調査、新GCP適用治験のみ 12

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モニタリングと医療機関における個別症例に関する事例との関連性

(平成21年度:新医薬品に係る国内調査 新GCP適用治験のみ)(平成21年度:新医薬品に係る国内調査、新GCP適用治験のみ)

医療機関 治験依頼者

適用条項 事例内容の概略 件数 第21条 第1項適用条項 事例内容の概略 件数 第21条 第1項

第41条 第2項保管不備(診療録等) 10 0

保管不備(検査伝票等) 11 1

第44条選択基準違反 2 0

第44条除外基準違反 5 0

第46条 第1項

投与方法の不備 24 0

中止基準違反 6 0

併用薬・禁止薬・療法違反 22 2第46条 第1項

検査関係未実施 27 0

検査時期・方法の不遵守 12 0

その他 15 2

併用薬等記載不備 3 3

第47条 第1項検査関係記載不備 1 1

有害事象記載不備 20 7

その他 8 5

第48条 第2項 有害事象報告の不備 2 0第48条 第2項 有害事象報告の不備 2 0

第50条 第1項 同意説明・取得の不備 1 0

第52条 第1項 署名不備 0 0

第54条1項 継続参加確認の不備 2 2

3項 再同意の未取得 10 0

総件数 181 23 1313

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記録の保存に関する事例

・同意書、診療録、検査伝票、画像フィルムが保存されていなか たていなかった

・原資料として規定された患者日誌等が保存されていなかった

同意文書、診療録が保管されていなかった場合、承認申請資料から、データが削除される可能性がある

主要評価項目や副次評価項目のデータが保存されていなかった場合も、データの一部が削除される可能性がある

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GCP第34条、第41条第2項(記録の保存)に関する事例GCP第34条、第41条第2項(記録の保存)に関する事例

12同意書

件数指摘した内容

13診療録(外来診療録、入院診療録)

12同意書

26検査データ、画像フィルム、評価スコアなど

8治験関連文書(契約書、合意書、IRB関連文書)

15心電図チャート

4治験薬管理表

8治験関連文書(契約書、合意書、 関連文書)

(平成18年度~平成21年度 GCP実地調査結果より)

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CRF作成に関する事例

・CRFに記載されたデータと 原資料の記載(検査結CRFに記載されたデ タと、原資料の記載(検査結果、併用薬、合併症、既往歴等)が異なっていた。

・有害事象○○が発現し、△△が投与されていた、

あるいは予定外来院による診察を受けていたがあるいは予定外来院による診察を受けていたが、

CRFに当該事項が記載されていなかった。

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CRF作成に関する留意点

・診療録(原資料)に必要な事項が記載されているか?

診療録に必要事項を記載するよう医師に提言

診療録(原資料)に必要な事項が記載されているか?

例)有害事象発現日・転帰、実際に服用された併用薬

・有害事象について

「因果関係がないから」、「軽微だから」、「一過性だから」という

理由で「有害事象として記載しなかった」というのは適切では

ありません。

「モニターさんがチェックしてくれるだろう」「 タ さ ま う「AEはモニターさんにまかせよう」というふうに考えていませんか?

医療機関でのデ タの品質管理も重要です医療機関でのデータの品質管理も重要です

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同意・再同意に関する事例

・治験実施計画書に規定された投与前検査が同意取・治験実施計画書に規定された投与前検査が同意取

得に先立って実施されていた。

・選択基準を満たすための前治療薬のwash outが

同意取得に先立って実施されていた。同意取得に先立って実施されていた。

・CRCが補助説明をしていたにもかかわらず、同意文説明を わ ず、

書に署名していなかった。

・説明文書を改訂したが、治験参加中の被験者に対し

て、文書による再同意を得ていなかった。

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その他の留意事項

・併用薬の服用について、CRCが来院時に被験者から直接聞き取った内容をメモとして記録し、これに基づいてCRFを記載き取った内容をメモとして記録し、 れに基 いてCRFを記載しかしこれらの情報は原資料として保存されていない

例) 診療録:薬剤○○ 3T 3× 7日間処方CRF :併用薬としての記載なし

→ CRCのメモには「服用していなかった」旨記載あり CRCのメモには 服用していなかった」旨記載あり

診療録:薬剤△△ 頓用 10回分処方実際に服用した日付の記載なし実際に服用した日付の記載なし。

CRF :H○年○月○日、H△年△月△日服用→ CRCのメモには被験者から聞き取った服用日の記載あり

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その他の留意事項

・診療録(医師記録)に記載されたデータと、診療録内のカルテシール(あるいは治験用ワークシート)間に不整合があり、どちらが原データかが不明。

・診療録(医師記録)、カルテシールあるいはワークシートを誰が記載したのかが不明が記載したのかが不明

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信頼性を高める医療情報のために必要なこと信頼性を高める医療情報のために必要なこと

◆GCP調査において、「改善すべき」と指摘される例は 必ずしも多くないる例は、必ずしも多くない

◆GCPの基本は 承認申請資料の信頼性の保◆GCPの基本は、承認申請資料の信頼性の保証と被験者の人権、安全及び福祉に対する配慮

◆指摘を受けないことを目指すのではなく、目的を達成するための医療記録を!を達成するための医療記録を!

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