ghost fluid法 を用いた圧縮性二相流の数値解法の検討* (第2報,気 …

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2643 日本 機 械 学 会 論 文 集(B編) 72巻723号(2006-11) 論 文No.06-0034 Ghost Fluid法 を 用 い た圧 縮 性 二 相 流 の 数 値 解 法 の 検 討* (第2報,気液二相流のための改良) 高比 之*1,湯 哉*2 Investigations of Numerical Methods for Compressible Two-Phase Flows with the Ghost Fluid Method (2nd Report, Improvement for Gas-Liquid Two-Phase Flows) Hiroyuki TAKAHIRA *3 and Shinya YUASA *3 Department of Mechanical Engineering , Osaka Prefecture University, 1-1 Gakuen-cho, Naka-ku, Sakai-shi, Osaka, 599-8531 Japan The present work is concerned with the improvement of the Ghost Fluid Method (GFM)for gas- liquid two-phase compressible flows. We have improved the GFM by correcting velocities, pressure and density at boundary nodes using the Riemann solutions to avoid numerical oscillations near the gas-liquid interface. Also, the definition of the values for ghost cells has been improved. The improved GFM is applied to one-dimensional shock tube problems, the interaction between a water shock wave and a cylindrical gas bubble, and the interaction between an air shock wave and a water column. It is shown that the correction with the Riemann solutions is effective in diminishing the numerical oscillations near the interface. We have succeeded in capturing the sharp interface for the shock-air bubble interaction with good mass conservation. The present numerical result for the interaction between an air shock wave and a water column is in good agreement with the experiment by Igra and Takayama. Key Words : Bubble, Shock Wave, Multiphase Flow, Numerical Analysis, Ghost Fluid Method, Level Set Method, Riemann Solution 1. 緒 境界面(接触不連続面)または,界 面を有する二流 体 をEuler的 に計算する場合,界 面での不連続量が数 値 誤 差 を 引 き起 こす.従 来 の 計 算 手 法 の 多 くは,分 散 誤 差 を取 り除 く こ と に重 点 を置 い た 結 果,散 逸 誤 差 を 許 容 して い た(1).分 散誤差および散逸誤差の両方を 取 り除 く手 法 と して,Ghost Fluid法(2)が 注目され て い る. しか し,Ghost Fluid法 で は,気 体 一気 体 の 二 相 流 のように両相が軟らかい流体の場合には,容 易にそれ らの運動を扱えるが,水 一空気の二相流のような,一 方 の 流 体 が 他 方 に比 べ て 非 常 に硬 い場 合,界 面 にお い て数値振動が発生しやすいことが指摘されている.そ の た め,Fedkiw(3)はGhost Fluid法 における仮想流 体の値の定義方法の変更を提案しているが,後 述する ようにこの方法は,二流体の初期の圧力差が比較的小 さい場合は有効であるが,二 流体の初期の圧力差が非 常に大きな場合や多次元問題では数値振動を抑制でき な い.ま た,Ghost Fluid法 と と も に用 い るlevel Set 法(4)による界面捕獲の際 には,Level Set関 数 を再 初 期化する際の数値拡散が界面形状を滑らかにし,質量 保 存 性 に 問題 を 生 じ る. 以 上の 背景 か ら,第 一報(5)では,界 面 を捕獲 す る際の数値拡散が質量保存性に及ぼす影響を検討 し, Hybrid Particle Level Set法(6)が 界面捕獲に非常に 有効であることを示した.本 報では,気 液二相流の界 面 で の 数 値 振 動 を 抑 制 す る た め に,一 次 元Riemann 厳 密 解(7)~(9)を 用いて,界 面を挟んだ格子の物理量 を補 正 す る手 法 を,Ghost Fluid法 に併用することを 提 案 す る.ま ず,手 法 の 詳 細 を説 明 し,そ し て,手 法 を一次元衝撃波管問題,二 次元水衝撃波と空気気泡 と の干渉問題ならびに空気衝撃波と水柱との干渉問題に * 原稿 受 付2006年1月16日 . *1 正員 ,大 阪 府 立 大 学 工 学 部 機 械 工 学 科(〓599-8531堺 市中 区 学 園 町1-1). *2 三 井 造 船(株)(〓104-8439東 京 都 中 央 区 築 地5-6-4) . E-mail : takahira@me. osakafu-u. ac. jp 55

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Page 1: Ghost Fluid法 を用いた圧縮性二相流の数値解法の検討* (第2報,気 …

2643

日本機械学会論文集(B編)

72巻723号(2006-11)

論 文No.06-0034

Ghost Fluid法 を用いた圧縮性二相流の数値解法の検討*

(第2報,気 液二相流のための改良)

高 比 良 裕 之*1,  湯 浅 伸 哉*2

Investigations of Numerical Methods for

Compressible Two-Phase Flows with the Ghost Fluid Method

(2nd Report, Improvement for Gas-Liquid Two-Phase Flows)

Hiroyuki TAKAHIRA *3 and Shinya YUASA

*3 Department of Mechanical Engineering, Osaka Prefecture University,

1-1 Gakuen-cho, Naka-ku, Sakai-shi, Osaka, 599-8531 Japan

The present work is concerned with the improvement of the Ghost Fluid Method (GFM)for gas-

liquid two-phase compressible flows. We have improved the GFM by correcting velocities, pressure and density at boundary nodes using the Riemann solutions to avoid numerical oscillations near the

gas-liquid interface. Also, the definition of the values for ghost cells has been improved. The improved GFM is applied to one-dimensional shock tube problems, the interaction between a water shock wave and a cylindrical gas bubble, and the interaction between an air shock wave and a water

column. It is shown that the correction with the Riemann solutions is effective in diminishing the numerical oscillations near the interface. We have succeeded in capturing the sharp interface for the shock-air bubble interaction with good mass conservation. The present numerical result for the interaction between an air shock wave and a water column is in good agreement with the experiment by Igra and Takayama.

Key Words : Bubble, Shock Wave, Multiphase Flow, Numerical Analysis, Ghost Fluid Method, Level Set Method, Riemann Solution

1. 緒 言

境界面(接 触 不連続 面)ま たは,界 面を有す る二流

体をEuler的 に計算す る場合,界 面での不連続量が数

値誤差 を引き起 こす.従 来の計算手法 の多 くは,分 散

誤差 を取 り除 くことに重点 を置 いた結果,散 逸誤差 を

許容 して いた(1).分 散 誤差お よび散逸誤差 の両方 を

取 り除 く手法 と して,Ghost Fluid法(2)が 注 目され

て いる.

しか し,Ghost Fluid法 では,気 体 一気体 の二相流

のように両相 が軟 らかい流体の場合 には,容 易にそれ

らの運 動を扱えるが,水 一空気の二相流 のような,一

方 の流体が他方 に比べて非常 に硬 い場合,界 面 にお い

て数値振動が発生 しやす いことが指摘 され ている.そ

のため,Fedkiw(3)はGhost Fluid法 にお ける仮想流

体の値 の定義方法 の変更を提案 して いるが,後 述す る

ように この方 法は,二 流体 の初期の圧力差が比較的小

さい場合 は有効であるが,二 流体の初期の圧 力差が非

常 に大きな場合や多次元問題では数値振動 を抑制で き

ない.ま た,Ghost Fluid法 とともに用 いるlevel Set

法(4)に よる界面捕獲の際 には,Level Set関 数 を再 初

期化 する際の数値拡散が界面 形状 を滑 らか にし,質 量

保存性 に問題 を生 じる.

以 上の 背景 か ら,第 一報(5)で は,界 面 を捕獲 す

る際 の数値拡散 が質量保 存性 に及ぼす影 響を検討 し,

Hybrid Particle Level Set法(6)が 界 面捕獲 に非常 に

有効で あることを示 した.本 報では,気 液二相流の界

面 での数値 振動 を抑制す るた めに,一 次 元Riemann

厳 密解(7)~(9)を 用 いて,界 面を挟 んだ格子 の物理量

を補 正す る手法 を,Ghost Fluid法 に併用す ることを

提 案する.ま ず,手 法の詳細 を説明 し,そ して,手 法

を一次元衝撃波管問題,二 次元水衝撃波 と空気気泡 と

の干渉問題な らび に空気衝撃波 と水 柱との干渉問題に

* 原稿 受付2006年1月16日 .

*1 正 員,大 阪 府立 大 学 工学 部 機械 工 学 科(〓599-8531堺 市 中

区学 園町1-1).*2 三井 造船(株)(〓104-8439東 京 都 中央区築 地5-6-4) .

E-mail : takahira@me. osakafu-u. ac. jp

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2644 Ghost Fluid法 を用 いた圧縮 性二相 流の数値解法 の検討(第2報)

適用 し,手 法 の有効性 を検討す る.

2.  数 値 計 算 手 法

本 報 では,一 次元 な らび に平面二 次元Euler方 程

式 を扱 う.Euler方 程式の解法 には,時 間発展 に3rd-

order TVD Runge-Kuttaス キーム を,対 流 項の計算

に3rd-order ENO-LLFス キーム(10)を 用 いる.

界 面の位 置を捕獲す るため に,Level Set法(4)を 用

いる.Level Set法 では,符 号付 の界面か らの距離関数

(Level Set関 数)ψ を定義 し,ψ=0の 集合が 界面を,

ψ<0の 集 合が一方 の流体 を,ψ>0の 集合 が もう一

方 の流体 を表す.ψ は,次 式 によ り時間発展 され る.

(1)

ここで,u,vは,そ れぞれデカル ト座標系x,y方 向の

速度で ある.ま た,次 式 によ りLevel Set関 数 の再初

期化 を行 い,Level Set関 数を正 しい距離 関数 に保 つ.

(2)

ここで,S(ψ0)=ψ0/√ψ20+(δx)2は平滑化 され た符 号関数

で あ り,ψ0は 仮 想時 間T=0に お け る ψ の初期値,

δxは 格 子間 隔程度 の微 小量 であ る.式(1)を 解 いた

後,仮 想時間Tに 関 して式(2)が 界面近傍で収束す る

まで解 き,Level Set関 数 を距離 関数 に保 つ.本 解 析

では,Level Set方 程 式(式(1))を 解 くた めに,時 間

発 展 に3rd-order TVD Runge-Kuttaス キーム を,対

流 項の計算 に5th-order WENOス キーム(11)を 用 い

て いる.ま た,再 初期化方程式(式(2))を 解 くために,

時 間発展 に3rd-order TVD Runge-Kuttaス キー ムを,

対流項 の計算 に5th-order WENOス キームを用 いる.

また,通 常のLevel Set法 とともに,Hybrid Particle

Level Set (HPLS)法(6)を 導 入する.HPLS法 の詳細

は,前 報(5)を 参 照された い.な お,平 面二次元 気泡

と衝撃波 との干渉問題 にHPLS法 を適用 した場合,通

常 のLevel Set法 と比 べて,約10%計 算 時間が 増え

た(5).

Ghost Fluid法(2)で は,ψ<0の 領域 に流体1,

ψ>0の 領域 に流体2が 存在す るものとする と,ψ>0

の領域 に流体1の 仮想的な流体(Ghost Fluid1)を 定義

し,ψ<0の 領域 に流体2の 仮想的な流体(Ghost Fluid

2)を 定義す る.こ れ によ り,流 体1とGhost Fluid 1

を合わせて一つ の流体 が,流 体2とGhost Fluid 2を

合 わせ て も う一 つの流体 が 計算領域 全体 に定 義 され

た ことにな る.一 般 に,Ghost Fluidの 値を定義す る

際には,法 線方 向速度 な ど界面を挟んで連続な分布 と

な る量 は,も う一方 の流体 に対 して定義 された物理量

をGhost Fluidの 値 としてその まま採用 し,エ ン トロ

ピー,接 線方向速度な ど界面 を挟 んで不連続 な分布 と

な る量 は,一 方の流体か らもう一方 の流体 へ向かって

補間す ることによ りGhost Fluidの 値 を定義する.こ

の結果,気 液界 面での境 界条件 は陰的 に満 足 され る.

全計算領域で二種類 の流体 を定義 した後,そ れぞれ の

流体 につ いて独立 に単相流 の問題 と して支配方程 式を

解き,各 格子点で次の時間ステ ップで の二種類 の物理

量 を求める.そ して,次 の時間ステ ップで のLevel Set

関数の符号 に基 づき,ψ<0の 領域 では流体1の 物理

量を採用 して流体2の 物理量 を捨てる.同 様に,ψ>0

の領域では流体2の 物理量 を採用 し流体1の 物理量 を

捨てる.こ れによ り,次 の時間ステップで の物理量が各

格子点でただ一つ に決定 され る.こ の手順 を繰 り返 し

て任 意の時間での各物理量 を求め る.手 法の詳細 につ

いては,前 報(5)を 参照 され たい.な お ,Ghost Fluid

法には,Euler方 程式 の解 法 には縛 られず,原 理的 に

は単相 流の解 法に用い られ るあ らゆ る手法が適用可能

である という特徴 があ る.

3. Riemann解 を用 いた界面近 傍の物理量 の補正

圧 縮性 の気液 二相流の数値解析で は,気 液界面近傍

で気相 と液相 で音 響イ ンピーダ ンスが大き く異な るた

め,数 値振動が非常 に起 こりやす い.本 研 究では一次

元 のRiemann厳 密解(7)を 用 いて気液界面近傍の物理

量 を補正 し,数 値振動 を抑制する.Cocchi & Saurel(8)

は界面追跡 にFront Tracking法 を用 いて,法 線方向に

沿 ってRiemann解 を計算 し,界 面 の両側の物理 量の

補正 を行 った.ま た,Nourgalievら(9)は 界 面追 跡に

Level Set法 を用 い,ま た,デ カル ト座標 系の各方 向

に一次元Riemann解 法 を適用 し,各 方 向のRiemann

解 を使 って反復計算 を行 い,近 似的に法線方向 に沿 っ

た補正 を行 った.こ れ らの手法 は,一 次元問題 につい

ては本質的 に同 じである.本 報で はNourgalievら(9)

と同様 の補 正手順 を用 いた.Nourgalievら の手法 との

相 違点は,後 述す る界面位 置の定義方法な らび に二次

元 問題 における速度補正 の詳細 にある.以 下 に,補 正

手順 を述べ る.

3・1  Riemann厳 密解 時刻tnに お ける情報か

ら界面 における物理量を,Riemann解 法 を用 いて計算

す る.ま ず,時 刻tn にお けるLevel Set関 数か ら界面

に隣接 している格子点(Boundary Node:BN)を 判別

す る.例 えば,格 子点(i,j,k)と 格子 点(i+1,j,k)と

の間でLevel Set関 数の符号が変わ っていれ ば,こ の格

子点間に界面が存在する ことにな り,格 子点(i,j ,k)と

格子点(i+1,j,k)は 界面 に隣接 して いる格 子点(BN)

となる.こ の時BNは 必ず二つ の格子点が対 となって

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Ghost Fluid法 を用いた圧縮性二相流 の数値 解法の検討(第2報) 2645

判別 され,そ れぞれ の格子点 が界面 に対 して どち ら側

に存在す るかを判別 する.こ の一対 のBNの 間の界面

位置 を格 子線に沿って近似 的に求め,そ の格 子線 上の

界面位置 を θとする.そ して,時 刻tnに おけ る界面の

左側 の格子 点(i,j,k)と 右側の格子点(i+1,j,k)の 情

報か ら,一 次元Riemann厳 密解 法を用 いて Δt時 間後

の時刻tn+1に お ける界面(θn+1)で の物理 量 ψ*を 求

める.こ こで,ψ*は,密 度 ρ,圧 力p,な らび に格子線

の方 向の速度Vξ とす る.例 えば,x方 向のRiemann

解 の場合,x方 向速度uがVξ で ある.

界面 にお ける一次元Riemann解 によ り,圧 力,法

線方 向速度はただ一つに決定され るが,界 面で密度は

不 連続 な分布 となるため,そ の値を一つに決定できな

い.ま た,接 線方 向速度Vn,Vζ は,一 次元 問題に対

す るRiemann解 法 では定義で きない.そ こで,界 面

におけ る物理量 を流体1,流 体2に ついて二種類定義

す る.こ の うち,圧 力 と法線 方 向速 度は共 通で あ り,

密度 は,Riemann解 法 によ って得 られ た諸量か ら各

流体の状態方程式を用いて二種類計算す ることがで き

る.界 面における接線方向速度は,接 線方向速度が法

線 方向に沿ってRiemann不 変量(8)で あることを利用

して,法 線方向に沿 って各流体側か ら近似 的に与える.

例えば,図1の 格子点(i,j)と(i+1,j)と の間の界面

では,x方 向速度は格子点(i,j)と(i+1,j)の 物理量

か らRiemann解 法を用 いて定義 され る.格 子点(i,j)

の属す る流体(流 体1)に とっての界面で の接線方 向速

度は格子点(i,j)の 速度vで 与え,格 子点(i+1,j)の

属す る流体(流 体2)に とって の界面で の接線方 向速度

は格子点(i+1,j)の 速度vで 与える.こ れ によ り,界

面 にお ける接線方 向速度 を含めて全物理量が二種類定

義 され る.

3・2 物 理量の補正 まず,一 次元 問題 を例 に補

正手順 を示す(8),(9).い ま,図2の よ うに時刻tnに お

いて界面がi番 目とi+1番 目の格子 点の間 に存在 す

る場 合を考え る.こ の時,補 正対象 となるのはi番 目

とi+1番 目の格子点 とな る.時 刻tn+1に お いて,以

下 の三通 りの界面位 置にお ける補 正を考え る.

(1)界 面が前の時 間と同 じ格子点 間に存 在す る場合.

(2)界 面が前 の時間 に存在 していた格子点 の位置か ら,

右 隣 りの格子点 間の位置 に移動す る場合.

(3)界 面が前の時 間に存在 していた格子点の位置か ら,

左隣 りの格子 点間の位置 に移 動する場合.

時刻tn+1に お ける界 面位 置を次のよ うに表現す る.

(3)

(1)

(2)

(3)

式(3)か ら,界 面 θn+1は,θn+1=0の 時 に はi番 目

の格 子 点 上 に,θn+1=1の 時 に はi+1番 目の 格 子 点

上 に,0<θn+1<1の 時 に はi番 目 とi+1番 目の 格

子 点 の 問 に 存 在 す る こ と に な る.ま た,θn+1<0の

場 合 は,界 面 が 格 子 点 を越 えて 左 側 の格 子 点iとi-1

の 間 に移 動 した こ とに な り,θn+1>1の 場 合 は,界

面 が 格 子 点i+1を 越 え て 右 側 の 格 子 点i+1とi+2

の 間 に移 動 した こ と に な る.な お,Nourgalievら(9)

は,Characteristic-Based Marching (CBM)法 にお い

て,Riemann解 に よ る補 正 に利 用 す る界 面 位 置 を,式

(3)の 代 わ り に,

(4)

と定義 し,θ を,x方 向速度 のRiemann解 で あるVζ

を用 いて,以 下 のように時間発展 して定めて いる.

(5)

こ こで,Δtは 時 間 刻 み,Δxは 格 子 幅 で あ る.一 方,

時 刻tn+1に お け る界 面 位 置 は,TVD Runge-Kutta法

Fig. 1 Two interfacial values.

Fig. 2 Correction of boundary nodes (1D).

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2646 Ghost Fluid法 を用いた圧縮性二相 流の数値解法の検討(第2報)

によ り時 間発展 された時刻tn+1に おけ るLevel Set関

数 を用 いて も定義 され る.一 般 に,両 者は 一致 しな い

た め,Nourgalievら(9)の 方法 を用 いると,時 刻tn+1

にお いて二種類の界面位置が存在す ることになって し

ま う.こ の点 を考慮 し,本 解析 では,Level Set方 程

式 の時間発展およびその後 の再初期化な らびにHPLS

法 による補 正後 に得 られ た時刻tn+1のLevel Set関 数

を用 いて,式(3)に よ りRiemann解 による補正 に利

用 する界面位 置 θn+1を 定 義 して いる.

界面位置 θn+1を 用いて,2つ のBN(i番 目とi+1

番 目の格子点)の 値 は,以 下の ように補正 され る.

(6)

(7)

ここで,ψ は補正す る物理量,ψ*L,ψ*Rは,そ れぞ れ

界面での左側お よび右側 のRiemann解 を表 している.

多次元 問題 の場合 には,一 次元 の場合 の補 正をそれ

ぞれの方向で行 い,以 下 に示す手順 で反復計算を行 う

ことで,近 似的 に多次 元問題 に拡張す る.

(1) 補正す る変数 を ψ,反 復 回数 をmと す る.

(2) すべて のBNに つ いて以下 に示す,法 線方 向で重

み を付 けた補間 を行 う.

(a)x方 向につ いて,図3に 示 す四つの場 合を考

える.

(i) 補 正 しよ うとす るBNのx方 向の両 隣,

す なわち左側,右 側 に界 面が存在 しない

場 合(そ の他の方 向,y,z方 向 には界面

が 存在),x方 向の補正 値 ψxは 次式 のよ

うに定義す る.

(8)

(ii) 界面が補 正 しよ うとす るBNの 右側 に存

在 する場合,式(6)を 用 いてx方 向の補

正値 ψxを 求め る.

(iii) 界面が補 正 しよ うとするBNの 左側 に存

在 する場合,式(7)を 用 いて 飢方 向の補

正 値 ψxを 求め る.

(iv) 界面が 補正 しよう とす るBNの 両 隣(左

側,右 側)に 存在する場合,両 隣の界面で

の物理量 ψ*L,ψ*Rの平均値をx方 向の補

正 値 ψxと す る.

y,z方 向 も同様 に補正 値 ψy,ψzを 求 める.

(b) 各方向で求 めた補 正値 ψx,ψy,ψzに 法線方

(i) (ii)

(iii) (iv)

向の重みを付け,次 式のよ うに ψを更新する.

(9)

ここでdは 各方 向を表 し,ξdは 法線ベ ク トル

の各成分である.ま た,RBN(Real Boundary

Node)は,Ghostで はな い実 際の流体が存在

す る領域 におけ るBNを 表 して いる.

(3) すべ て のBNに お け る残差 ε=Σ|ψ(m+1)RBN-

ψ(m)RBN|を計算す る.

(4) 収束判定.ε/N<δ な ら,反 復終 了.そ うでな けれ

ば,(2)へ 戻 る.こ こでNはBNの 個 数,δ は許

容誤差で ある.

本反復計算における反復 回数 は,δ=10-8の とき,お

よそ10回 程度 とな る.

速度Vξ の補正 には注意 が必要で ある.い ま,図4

よ うに格子点(i,j)と(i+1,j)がBNで あ り,そ れぞ

れを,補 正対象1お よび補正対象2と す る.補 正対 象

1の 速度 を補 正す る際,補 正対象1はy方 向 にの み界

面が存在 す るため,y方 向速度vが 補 正対象 とな る.

また,補 正対象2の 速度 を補正す る際は,x方 向,y

Fig. 3 Correction of boundary nodes in the x

direction (2D).

Fig. 4 Correction of velocity (2D).

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Ghost Fluid法 を用 いた圧縮 性二相流の数値解法 の検 討(第2報)2647

方 向に界面が存在す るため,x方 向速度uとy方 向速

度 υがそれぞれの方向 につ いて補正対象 となる.こ の

時,補 正対 象2のx方 向速度uは,x方 向の界面の値

(interfacial value 3)と 格子点(i, j)の 速度 を内挿 して

補 正す る.そ のた め,補 正対 象1のx方 向速 度uが

反 復によって更新 され なけれ ば,補 正対象2の 速度u

は一度 の補 正で収 束 して しまう.こ の ことを考 慮 し,

反復 の際には補 正対象1の 速度uも 更新す る.こ うす

る ことで,補 正対 象1の 速 度uが 更新 され るため,補

正対 象2の 速度uが 逐次 更新 されてい く.反 復が終 了

し,最 終 的に,速 度u,υ を実際の速度 に置 き換 える際

には,補 正対象速度のみ を置 き換 えた.例 えば,補 正

対 象1で はy方 向 にのみ界面が存在す るためy方 向速

度 υのみを,補 正対象2で はx,yの 両方 向 に界面 が

存在す るため,u,υ 両方 を置 き換えた.

4.  数値計算結果と考察

4・1  一次元衝 撃波管問題 界面 の左側が水,右

側 が空気で ある二相流 に関す る衝撃波管 問題 を計算 し

た.4mの 計算領域 を200分 割 し,界 面は最 初,150

番 目と151番 目の格子 の間のx=3mの 位 置 にある.

界面 を挟んで左側 と右側 の状態 は,ρL=1000kg/m3,

ρR=0.1189kg/m3, PL=105Pa, PR=104Pa,

uL=uR=0m/sと す る.な お,水 に関 しては,Tait

の状態方程式 を用いた.本 問題を,通 常 のGhost Fluid

法で計算 したところ,界 面付近 の水 の圧 力が極端 に下

が り圧 力に振動が 生 じた.こ の振動 は初期 の水 と空気

の圧 力差 によって界面付近 の空気 の速度 が大きな値 と

な り,そ の速度 によ って 界面付 近の水が 引っ張 られ,

圧 力が急激 に下 がって しまった ことによる.水ー空 気

系 の場合,水 の音響イ ンピー ダンスは空気に比べて非

常 に大 き く,一 般 に硬 い(stiff)流体であ る.こ のよ う

な場合,水 側か ら進 んで きた圧縮波 は界面で膨張波 と

して反 射 し,ほ とん ど透過 しない.逆 に,空 気側か ら

進 んで きた圧縮 波 は約2倍 の振幅 で透過 す る.こ の

ことか ら,物 理量 が初期 に不連続な場合 は,界 面の速

度 と圧 力の値は単相の場合 と水ー空 気系の場合で大 き

く異な り,水ー空 気 系の界面では速度 と圧力が二流体

の中間 の値を取 るので はな く,速 度 は水側 の速 度 に,

圧 力は空気側の圧力 に近 い値 を取 る.そ のため,界 面

での境界条件 を正 しく捕 らえ るためにはGhost Fluid

の値を単相の場合 とは異な る方法で決定す る必 要が あ

る.Fedkiw(3)は,こ の問題 を解決するため に,気 体 の

Ghost Fluidの 圧力 を気体側か ら補間 し,水 のGhost

Fluidの 速度 を水側 か ら補 間す る ことを提案 している.

この方 法で計算 した結 果(t=0.000075s)を 図5に 示

す.図5よ り,界 面 はほ とん ど移動せず,圧 力分布 に

振 動は見 られな いことがわ かる.ま た,本 計算条 件で

は,両 相 の圧 力差が10倍 と小 さいため,空 気中に伝播

す る圧力波は識別で きず,水 側 には界面で反射 した膨

張 波が伝播 して いる.密 度 に関 しても,散 逸誤差 の影

響がほ とん ど見 られず,空 気 と水 の密度がお よそ0.1

:1000と いう比を保 った まま計算 可能 である ことがわ

かる.

図5で は,初 期の圧 力差 が比 較的 小さな 水ー空 気

系の衝撃波管問題 を扱 ったが,圧 力差が 非常 に大きな

水-空気系の衝撃波管 問題 の場 合,図5で 用 いた改良

を施 して も,界 面近傍 の水 に数値振動が起 こ り,安 定

に解析で きなか った.そ こで,以 下 に,水 -空気系の

問題に対 して,Riemann厳 密解 による補正 を施 した計

算例 を示す.初 期条 件は以下 の通 りであ る.1mの 計

算領域 を800個 の格子 で分割 した.最 初,x=0.7m

に界面が存在 し,界 面の左側のx>0.7mの 領域 に水,

界面の右側 のx>0.7mの 領域 に空気 が存在す る.状

態方程式は水,空 気 ともに,以 下のstiffened gas状 態

方程式(1)を 用 いた.

(10)

ここで,eは 単位 質量あた りの内部エネルギーで ある.

γとIIは,物 質 によ って決 まる定数で あ り,水 の場合

は,γ=4.4,II=6.0×108,空 気 の場 合は γ=1.4,

II=0と な る.な お,γ とIIの 詳 細 につ いて は,文 献

(1)を 参 照 され た い.界 面 の 両側 の 各 流 体 の初 期 値 は,

ρL=1000kg/m3, ρR=50.0kg/m3, pL=109Pa,

PR=105Pa, uL=uR=0m/sと した.な お,こ

れ らの 計 算 条 件 は,文 献(9)で 用 い られ た も の と 同 じ

で あ る.こ の 条 件 の 下 で,Δt=0.125×10-6sで 時

間240μsま で 計 算 した(図6).計 算 領 域 の 両 端 で は ま

Fig. 5 Water-air shock tube problem (Fedkiw's method (3) )

59

Page 6: Ghost Fluid法 を用いた圧縮性二相流の数値解法の検討* (第2報,気 …

2648 Ghost Fluid法 を用 いた圧縮性二相 流の数値解法の検討(第2報)

だ衝撃 波が伝 わっていないため,境 界条件は不要で あ

る.図6か ら,通 常 のGhost Fluid法 では安定 に解析

で きなかった非常に大きな圧力差 を持つ,衝 撃波管の

問題 に対 して も,Riemann厳 密解 を用いた解 の補正 を

Ghost Fluid法 に組 み合わせれ ば,安 定 に解 析で きる

ことがわかる.な お,本 計算条件では,圧 力差が10000

倍 あるた め,空 気 中に伝播す る衝撃 波が識別 でき る.

衝撃 波の波面 の厚 さは,Euler方 程式 の解 法に依存 し

てお り,本 報で用 いた,3rd-order TVDRunge-Kutta

ス キーム(時 間発展),3rd-order ENO-LLFス キーム

(対流項 の計算)で は,数 値誤差のため に三格子幅程度

の厚み が見 られ る.Ghost Fluid法 を用 いた解析で は,

任意 のEuler計 算 のスキー ムが使用可 能で あるので,

衝撃波 の波面をよ り鋭 く捕 らえ るには,格 子間隔 を細

か くす ると ともに,高 次精度のEuler計 算のスキーム

を使 うことが有効 と思われ る.

4・2 空気気泡 と水衝撃波 との干渉 この問題 は,

通常 のGhost Fluid法 では界面付近で圧力振動が起 こ

るので,Riemann厳 密解 を用 いた補 正 を行 った.ま

た,水,空 気 ともに状態方程式 にstiffened gas状 態方

程式 を用 いた.図7(a)に 円筒 状の気泡 の初期配 置 を

示す.上 下左右 の境界 は無反 射(透 過)境 界 と して い

る.中 心線 を挟 んで上下対 称であるため,計 算領域は

上側半分 の領域 と し,中 心線 上で対 称 となるよ うに中

心線上 の境界 条件を設定 した.ま た,こ の上側 半分の

計算領域 を100×250の 格子で分割 した.計 算の初期

条件 を以下 に示す.

pre-shocked water : p=1000kg / m3, u = 0m / s,

v = 0m / s, p = 105Pa

post-shocked water : p = 1323.6478kg / m3,

(a) (b)

u = 681.577871m / s, v = Om / s, p = 1.9x109Pa

air bubble : p = 1kg / m3, u =  Om / s, v = Om / s,

p = 105Pa

時間刻み は,Δt=2.033×10-9sと した.界 面捕獲 に

通常 のLevel Set法 を用 いた場合(Case (a))とHPLS

法 を用 いた 場合(Case (b))の 二通 りで 計算 した.ま

た,Ghost Fluid領 域の物理 量は以下の ように定 義 し

た.す な わち,空 気 のGhost Fluidで は,エ ン トロ

ピー と接線方 向速度 だけでな く圧 力 も空気側か ら補間

して与 えた(法 線方 向速度 に関 しては,空 気 のGhost

Fluidの 領域 に実 際に存在 して いる水の法線速 度を用

いる).一 方,水 のGhost Fluidで は,エ ン トロピー と

接線方向速度だ けでな く法線方 向速 度 も水側か ら補間

して与 えた(圧 力に関 して は,水 のGhost Fluidの 領

域 に実際 に存在 している空気の圧力 を用い る).Ghost

Fluidの 領 域の値 の補 間には,Fast Marching法(12)

を用 いた.

界面捕獲 にHPLS法 を用 いた場合 の計算結果を図8

に示す.図8は 気泡形状 と等圧線 の時 間変化 を示た も

のであ る.図8で は水の領域 と空気 の領域 の等圧線を

それぞれ20本 ずつ表示 してい る.ま た,カ ラー につ

いて は1.9×109Pa以 上 の圧 力は赤で表 示 して いる.

図8(i)~(iii)では,水 中の衝撃波 が円筒形 の空気 気

泡 に衝突 し,そ の一部が透過 して気 泡内を伝播 し,残

りの大部分は反射 して気泡 の後方 に強 い膨 張波が形成

され る.ま た,気 泡内の空気 の音速 よ り,周 囲の水の

音速の方が速 いため,透 過 した気泡 内部 の圧 力波よ り

水中の衝撃波の方が速 く伝播す る.(iv)~(v)で は水中

の衝撃波が界面近傍で膨張波 と干渉 し,衝 撃波 が界面

に沿って回 り込みなが ら曲が り始 め,気 泡 は変形 を伴

いなが ら収縮す る.そ の後(vi)で は,気 泡 の後方 の水

の圧 力が上昇 し,衝 撃波が気泡 に衝突 した側 の界 面か

らジェッ トが発生す る.(vii)で は,気 泡内 を伝播 した

圧 力波が下流側の界面に衝突 し,そ の後 まもな く(viii)

Fig. 6 Water-air shock tube problem (Riemann

correction)

Fig. 7 Computational domain for (a) water shock-

cylindrical air bubble interaction, (b) air

shock-cylindrical water column interaction.

60

Page 7: Ghost Fluid法 を用いた圧縮性二相流の数値解法の検討* (第2報,気 …

Ghost Fluid法 を用 いた圧縮性 二相流の数値解法 の検 討(第2報)  2649

(i) t=3.233μs

Case (a) Case (b)

(ii) t=3,416μs

Case (a) Case (b)

では,ジ ェッ トが下 流側の気 泡壁 に衝 突す る.ジ ェッ

トが衝突 した際,衝 突面で 非常 に高 い圧 力が発生 し,

圧 力の最大値はおよそ5.8GPaと なって いる.そ の後

(ix)で は,ジ ェッ トの衝 突に伴 う衝撃波 が周囲 に伝播

す る.

な お,通 常 のLevel Set法 を用 い た 場 合 は,約t=

3.7μsに 界 面近 傍 にお いて 負 圧 が現 れ た が.HPLS法 を

用 いた 場 合 は,t=6.0μsま で 負 圧 が 見 られ な か っ た.

図9にt=3.233μs,t=3.416μsに お け るCase

(a), Case(b)の 場 合 の 界 面 形 状 を示 す.t=3.233μs

の 図で は 両 者 に違 い は ほ とん ど 見 られ な い,し か し,

t=3.416μsの 図 に お いて は,Case(a)で は ジ ェッ ト

が 気 泡 を 貫 通 して い る の に 対 し,Case(b)で は 薄 い

層 状 の 界 面 が 残 って い る.こ れ はCase(a)で はLevel

Set関 数 の 数 値 拡 散 に よ っ て,層 状 の 界 面 が 消 滅 して

い るた め と考 え られ る.

次 に,図10に 気 泡 の 質 量 変 化 率 の 時 間 変 化 を 示 す.

気 泡 の 質 量 変 化 率 は次 式 で 計 算 し た.

(11)

(12)

ここで,ΔVijは 計算セル の体積で ある.図10に は,

格子分解能 の影響 を見 るため に,100×250の 格 子で

計算 した結果 とともに,200×500の 格子で計算 した と

き の質 量変化率 の時間変化 を表示 して いる.図10よ

り,質 量変化 率は,約t=0.7μsの 時に極大値 をとっ

た後,減 少に転 じ,約t=1.7μs付 近で極小値 をと り,

その後 再び上昇 している.気 泡が小 さくな るにつれて,

質量変化率が増 えて いくのは,格 子解像度 を倍 にする

と質量変化率が約 半分になっている ことか ら,固 定格

子 を用 いた ことによる格子分解能 が大き く影響 してい

る もの と考 え られ る.し か し,ジ ェッ トが気泡 を貫通

す る以前で は,質 量 の誤差 は最 大で も10%程 度 に収

まってお り,十 分な質量保存性が確保 されている と思

われ る.ま た,通 常 のLS法 とHPLS法 の比較 では,

質量の保 存性 として は,約t=2μs以 前では,HPLS

法の方が若干優位で あるが,気 泡 が小さ くなる と質量

を大 きめに評価 して いる.こ れは,通 常 のLS法 にお

いては,再 初期化の際 の数値拡散 によ り気泡の体積が

減少す るた め(5),そ の結果,数 値拡散 が気泡 の質量

を減 らす方向 に作用す るこ とが影 響 している もの と考

え られ る.

な お,同 じ計算 対象 に関す るNourgalievら(9)の

CBM法 による計算 結果で は,ジ ェッ トが貫通す る前

の時刻 t=3.05μsま で の気泡 形状(格 子解像度 は,本

解析 にお ける100×250格 子 によ る計算に相当)と,約

t=2.65μsま での質量変化率 の時間変化(格 子解 像度

は,本 解 析における200×500格 子による計算に相 当)

が示 され ている.図 は省略するが,気 泡 形状に関 して

は,図8とNourgalievら の計算結果は良 く一致 して い

Fig. 8 Pressure distribution for shock-cylindrical

bubble interactions in water.

Fig. 9 Comparison of bubble shapes between Case

(a) and Case (b).

Fig. 10 Time histories of mass ratio for shock-

cylindrical bubble interactions in water.

61

Page 8: Ghost Fluid法 を用いた圧縮性二相流の数値解法の検討* (第2報,気 …

2650 Ghost Fluid法 を用いた圧縮性二相流 の数値解 法の検討(第2報)

(i) t=3.738μs (ii) t=6.325μs (iii) t=7.475μs (iv) t=8.337μs (v) t=10.35μs (vi) t=12.075μs

(vii) t=12.650μs (viii) t=13.512μs (ix) t=18.400μs (x) t=21.275μS (xi) t=25.587μs (Xii) t=30,188μs

た.一 方,質 量の保存性 に関 して は,Nourgalievら の

計算で は,時 刻約t=0.7μsに おける質量の極大値 に

おける誤差 が約12%,時 刻約t=2.3μsに おける極小

値における誤差が約0.95%と なっていた.図10と 比較

する と,質 量誤差が極大値 を取 る時刻お よびその値は,

Nourgalievら の計算 とほぼ同 じである.質 量誤差が極

小値 を取 る時 刻は,本 解析で は約t=1.7μsで あ り,

Nourgalievら の計算 よ りも早 くなって いるが,そ の値

はNourgalievら の計算とほぼ同じである.Nourgaliev

らの計算で はジェッ ト貫通後 の計算 が示 されて いない

ため,ジ ェッ ト貫通後 の比較 は行えな いが,ジ ェッ ト

貫 通前までは,本 解析結果 はCBM法 によ る結果 と比

べ て 同程度 の質量保存性で ある と言 える.

4・3 水柱 と空気 衝撃波 との 干渉 空気 中に円筒

状 の水柱が存在 し,空 気中の衝撃波 と干渉す る問題 に

ついて計算 した.こ の計算はIgra & Takayama (13)の

実 験,数 値 解析 に対 応 して いる.図7(b)に 水柱 と衝

撃 波の初期配 置を示す.上 下 左右 の境界 は無反射(透

過)境 界 と してい る.中 心 線上で対称 となるよ うに中

心線 上の境界条件 を設定 した.ま た,こ の上側半分 の

計算 領域を250×500の 格子 で分割 した.計 算の初期

条 件を以下 に示 す.

pre-shocked air : ρ = 1kg / m3, u = 0m / s,

v = 0m / s, p = 105Pa

post-shocked air : ρ = 1.8106kg / m3,

u = 246.241m / s, v = 0m / s, p = 2.3544 × 105Pa

water co1umn : ρ = 1000kg / m3, u = 0m / s,

v = 0m / s, P = 105Pa

Δt=5.75×10-9sと し,時 間 約30μsま で 計 算 した.

界 面 捕 獲 に はHPLS法 を 用 い た. Ghost Fluidの 値 の

定 義方 法は,図8と 同様 であ る.す な わち,空 気の

Ghost Fluidに 関 しては,空 気側 か らエ ン トロ ピー,

接線速度 と圧力を補間 して与え,水 のGhost Fluidに

関 しては,エ ン トロピー と全ての速度成分 を水側か ら

補 間して与 えた,ま た,Riemann解 を用 いた補正 を施

した,計 算結果 を図11(圧 力分布)に 示す.

空気衝 撃波が水柱に衝突す ると,一 部は上流側 の界

面 で反射 し,残 りは水柱の 内部 に透過 す る(i),水 の

音速 の方が 空気 の音速 よ りも速いため,水 柱内部 に透

過 した衝撃波 は,空 気 中の衝 撃波よ りも速 く伝播 し,

(ii)で下 流側 の界 面に到達す る.水 柱 内部 を伝播 した

衝撃波が界 面で反射す ると,水 柱内部 に膨 張波が形成

され る.膨 張 波は下流側 の界 面付 近で集 束す るため,

圧 力が非常 に低下する(iii).(iv)で は,膨 張 波のす ぐ

後 ろに圧縮波が 形成 され,圧 縮波 は膨 張波を追いかけ

るよ うに下流側 の界面 か ら上流側 の界 面へ伝播す る.

そ して,(v)で 圧縮波が膨 張波 に追 いつき,上 流側 の

界面 に到達 す る.そ の後,(vi)か ら(viii)に か けて再

Fig. 11 Pressure distributions for air shock-water column interactions.

Fig. 12 Comparison between experimental inifi-

nite fringe double exposure holographic

interferogram (13) and numerical schlieren

image at t=23μs.

62

Page 9: Ghost Fluid法 を用いた圧縮性二相流の数値解法の検討* (第2報,気 …

Ghost Fluid法 を用 いた圧縮性 二相流の数値解法 の検討(第2報) 2651

び 上流側 の界面で圧縮波が反射 し,膨 張波 とな って下

流側 の界面に向か って伝播す る.(ix)以 降,圧 力波は

これ まで と同様 に界面で反射を繰 り返 しなが ら減衰 し

て い く.

次に,Igra & Takayamaの 実験結果(13)と の比較 を

図12に 示す.図12の 実験 結果は二重露光型ホ ログラ

フ干渉法で撮影 されたものであ り,計 算結果はシュリー

レン法 で撮影 したイ メー ジで ある.こ の図か ら,衝 撃

波の波面な ど計算結果は実験 と良 く一致 して いると考

え られ る.な お,本 解析では,Rankine-Hugoniotの 関

係よ り初期値 を定めて いるが,Euler方 程式の数値解

析では,打 切 り誤差 のため,わ ずか なが ら,Rankine-

Hugoniotの 関係が満 た されな くな り,そ のわずか な

誤差が,波 と して伝播 して いく.図12の 空気中に薄 く

見 られる波面(水 柱の中心 よ りやや右側)は,こ うした

初期条件の与え方 に起 因す る数値誤差 によって発 生 し

た波面 と考 え られ る.図12に お いて,こ の波面 にお

け る密度 の誤差 は最大約0.6%で あ り,衝 撃波 と水柱

との干渉現象には影響 しな い.ま た,図13に 水柱の質

量変化率 を示す.図 よ り,質 量の最大誤差 は0.16%で

あ り,本 解析の質量保存性 が非常 に良いことがわか る.

5.  結 言

本研究 では,Ghost Fluid法 のお ける気液界 面での

数値 振動 を抑制す るため に,Riemann解 を用 いた補

正方 法 を提 案 した.本 手法 を,一 次元衝 撃波管 問題,

二次元水衝 撃波 と空気気 泡 との干渉問題な らび に空気

衝撃 波 と水柱 との干渉問題 に適用 し,手 法 の有効性 を

検 討 した.そ の結果,以 下 の知見 を得た.

(1)界 面近傍の物理量 の補正 に一次元Riemann解 を

用いる ことは,数 値振動 を抑 制す る上で有効 であ る.

(2)水 一空気系の圧 縮性二相 流の計算 では,Ghost

Fluid領 域 の物 理量 を定 義す る際 に,空 気 のGhost

Fluidは,エ ン トロ ピー と接線方 向速度だ けで な く

圧力 も空気側か ら補 間して与 え,水 のGhost Fluidで

は,エ ン トロピー と接線方向速度 だけで な く法線方 向

速度 も水側 か ら補 間して 与え ることが有 効であ る.

(3)空 気衝撃波 と水柱 との干渉問題 に関する数値計算

結果は,十 分な質量保存 性のもとでIgra & Takayama

の実験結 果 と良 く一致 した.

文 献

(1) Saurel, R. and Abgrall, R., SIAM J. Sci. Comput.. Vol. 21 (1999), pp. 1115-1145.

(2) Fedkiw, R., et al., J. Comput. Phys., Vol. 152 (1999). pp. 457-492.

(3) Fedkiw, R., J. Comput. Phys., Vol. 175 (2002), pp. 200-224.

(4) Sussman, M., Smereka, P. and Osher, S., J. Comput, Phys., Vol. 114 (1994), pp. 146-159.

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(13) Igra, D. and Takayama, K., Shock Waves, Vol. 11 (2001), pp. 219-228.

Fig. 13 Time histories of mass ratio for air shock-

water column interactions.

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