gpsを用いた盛土締固め管理と地盤反力データの活...
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GPSを用いた盛土締固め管理と地盤反力データの活用の試みについて
能代河川国道事務所 発表責任者 工務第二課長 鈴木 浩 建設監督官 樋川 満
○加藤 保
1.はじめに
本報告は、一般国道7号摩当山トンネル工事より発生するトンネル掘削ズリを利用した
道路路体盛土工において、GPS等を用いたICT(情報通信技術)を活用し、盛土締固め
品質管理の向上および施工管理の合理化を図った情報化施工事例について報告するも
のである。 2.従来の岩塊盛土締固め管理
盛土締固め管理は、「土質系盛土」の品質規定方式(砂
置換法やRI法による密度試験)に対して、「岩塊盛土」は
工法規定方式により管理されており、モデル試験施工によ
り検証した転圧機械による規定転圧回数と日作業量から
求めた転圧機械の走行時間管理値を定め、タスクメーター
(図-1)で比較管理している。 しかしながら、この管理方法は、あくまでも「走行時間」
による管理であり、転圧エリア、転圧回数各層毎の面的で
確実な締固め管理の信頼性に乏しい。 3.情報化施工の活用
「地盤反力データ(以下、CCV
(Compaction Control Value:加速
度応答値)、という)」を用いた締固
め管理はこれまで土質系材料に
対しての有効性は確認されている
が、岩塊に対しての検証は少なく、
本工事では、「GPS・地盤反力デ
ー タ を 用 い た 盛 土 締 固 め 管 理
(NETIS 登録番号 KT-010048-A)」
を採用し、面的な締固め管理を行
うことに加えて、「岩塊盛土」に対し
てのCCVを用いた締固め品質管理の「適用可能性」を検証したものである。 なお、実施に当たってはTS・GPSを用いた盛土締め固め情報化施工管理要領(案)平
成15年12月」に基づいた。
図-1 タスクメーターによる管理
図-2 土工の締固め管理
3-1.GPS盛土締め固め管理 このシステムの利点は、
GPSを転圧機械の振動ロ
ーラに搭載(図-3)すること
により、振動ローラの地上
位置を座標値で得られ、走
行軌跡、転圧回数を振動ロ
ーラの車載モニターでリア
ルタイムに確認することが
出来ることである。 車載モニターで確認でき
る締固め分布図は、走行軌
跡、転圧回数が色分けされ
ている。(図-4) これにより振動ローラのオペレータが、
車載モニターでこの色分けされたリアルタ
イムの情報を確認しながら施工するため、
層全体を面的かつ目で見て迅速に管理す
ることができ、人為的ミスによる締固め回
数不足を無くすとともに品質の均一化が可
能となった。 さらに、データが記録されることから盛
土管理図として活用できる。
3-2.CCVを活用した岩塊盛土管理法の可能性 CCVは振動ローラの振動輪に取り付けた、加速度センサーによって求めた振動加速
度波形を演算処理することにより求めた値をいう。 一般的な傾向として、
地盤が軟らかい時にCC
Vは小さく、地盤が締固
められて密度が増加、あ
るいは空隙が少なくなっ
て固まった状態になると
CCVは大きくなる。 本工事における、CCV
分布図を図-5に示す。 転圧回数が増えるとC
CVが大きくなることが確
認できる。
図-3 移動機器構成イメージ
図-4 車載モニター
図-5 CCV分布図
凡例
図-6にCCV平均値と転圧回数の関係を示す。 転圧回数において奇数回は振動ローラの前進、偶数回は後進時の値としている。 1~8層目における各層で、転圧初期にばらつきがあるが、後期には、較差が収束して
くる傾向となっている。また、転圧回数が増すに連れ、CCVも増す傾向となっている。 図-7にCCV増分と転圧回数の関係を示す。 1~8層目における各層で、転圧初期にCCV増分が多いが、転圧回数8回もしくは10
回を境に後期は横ばいもしくはマイナスの傾向となっている。
図-9に沈下量と転圧回数の関係を示す。 ここでは、代表例として3層目のデータ考察を行った。 沈下量は、転圧初期における沈下量が 10~5mm/2 回、程度計測されるものの、転圧
回数8回以降はほぼゼロに近い計測結果となっている。
図-6 CCV平均値と転圧回数の関係 図-7 CCV増分と転圧回数の関係
図-8 CCV平均値と転圧回数の関係 図-9 沈下量と転圧回数の関係
4.結果・結論 検証結果、計測されたCCVは層毎で多
少のバラツキはあるものの、8回までは増
分が多く、8回を境界にして前後進のCCV
平均値の格差が収束する方向に転じてい
る。このことは、岩塊盛土においても「沈下
計測結果から決定した規定転圧回数」と
「CCV」は相関があり、「CCVが岩塊盛土
管理の評価指標となる可能性がある」と判
断できる。 システム施工を行うとなれば、計測機
器購入や建設機械への改造に加え、通
信費用が生じる。施工規模や工事件数
によりコストダウンを図る必要があるが、
高品質管理を実施でき、利点が大きいと
考える。
本施工の品質管理においては、
①施工時にリアルタイムでデータ情報を
活用することにより、各層毎の締固め管理
を面的に管理することができ、施工の効率
化が図れた。 ②従来工法では転圧機械の稼働時間
により目に見えにくい品質管理に対し、
システム施工では転圧機械の走行軌跡・
転圧回数・CCV等の計測データで目に見
える品質管理ができた。
③各種工事管理資料作成についても、盛土施工状況データを電子化することにより省
力化が図れた。
5.おわりに
ICTを活用した情報化施工の推進については、平成20年7月に「情報化施工推進戦
略」が策定されている。情報化施工は大規模事業等には既に導入されているものの、一
般工事への普及には至っていない状況にある。 情報化施工の平成21年度試験施工としてGPS盛土締固め管理は全国64事例が行
われているものの、CCVを用いた締固め管理手法は研究段階であり、岩塊盛土評価指
標の構築のためには、盛土材料の違いによる対比や他の物性値(密度や強度の原位置
試験)との比較など、さらなるデータの蓄積や検討が必要と思われる。 当工事では、「岩塊盛土における面的な締固め品質の評価方法の可能性」について検
証を行ったものであり、この試験データが研究に有効に活用され、情報化施工の発展に
寄与することを期待したい。
図-10 トンネル掘削ズリ仮置き
図-11 路体盛土 転圧状況