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66 全学FD研修 1 講演会の講義録及びアンケート結果 (1)大学教育の分野別質保証について ―日本学術会議の検討から― 日本学術会議「質保証枠組み検討分科会」幹事 日本大学教授 広田 照幸氏 実施日: 平成22年7月20日(火) 時 間: 16:30~18:00 場 所: 千代田キャンパス 大学校舎A棟1階155講義室 (多摩キャンパス 人間関係学部棟1階7114講義室で映像・音声配信による視聴) 司 会: 教育支援グループ 課長 杉田 学 司会:それでは、定刻となりましたので、ただ今から大妻女子大学ファカルティ・ディベロップメント委員会主催の講演会 を開催致します。今回は、日本大学教授で日本学術会議質保証枠組み検討分科会幹事であられます、広田照幸 先生に「大学教育の分野別質保証について ―日本学術会議の検討から―」というテーマでお話しいただきます。 はじめに講演に先立ちまして、当委員会の委員長である大場学長から、講師紹介を含めた開会のご挨拶を申し上 げます。 学長:皆さんこんにちは。今、杉田さんからご紹介いただきましたように、本日、日本学術会議の幹事でいらっしゃいます 広田先生に、大妻女子大学ファカルティ・ディベロップメント講演会、実際には、昨年からこの全学的な規模で言 いますと、通しでいうと三回目になるんですが、今回大学教育の分野別質保証ということについてお話をいただくと いうことで、最も適切な時期にお願いしたい先生におこしいただけたことを、広田先生にまずは心からお礼を申し 上げます。僭越ですが、先生のご経歴等を若干わたくしのほうでご紹介させていただきたいと思います。広田先生 は、広島県でお生まれになられたと伺っております。その後、東京大学の大学院教育学研究科博士課程を終了な さり、学士号として「近代日本における陸軍学校の教育社会史的研究、立身出世と天皇制教育」というテーマでの ご専門で学位をお取りになられ、ご専門の領域としては、我々が知るところで、教育社会学、教育史、社会史とい ったジャンルでのご活躍と伺っております。大学をお出になられた後、南山大学での教免をお取りになり、その後 東京大学の教育学研究科の教授を経まして、2006年から現在の現職でいらっしゃるということであります。なお、 この間、陸軍将校の教育社会史、立身出世と天皇制というこの学位をお取りになられた論文を元にした文献が三 通り学芸賞を受賞なさっているということであります。実は、わたくしは個人的に厚かましく本を読ませていただいた 後、ぜひ大妻女子大学のご講義をお願いしたいと全く面識もない広田先生にお電話さしあげて、大学院の授業を 引き受けいただけたということがありまして、その意味では既に先生に大妻女子大学でもお教えいただいたというよ うなことを、やや自慢げに申しあげるというふうなことであります。著書は数限りがございませんが、陸軍将校の教育 最近のものでは「教育学ヒューマニティーズ」という岩波書店からお出しになられたものや、「格差・秩序不安と教 育」世織書房からお出しになられたもの、あるいは年号的にだんだん遡って行きますと「教育不信と教育依存の時 代」紀伊國屋書店からお出しになられたもの、さらに「教育には何が出来ないか-教育神話の解体と再生の試み」 というようなことで、春秋社からお出しになられもの、さらにその前に「教育言説の歴史社会学」ということで、名古屋 大学出版会からもお出しになられ、そのほか数多くのこの領域でのご研究をおまとめなられておられますし、編著、 翻訳などを含めますと、多数に至っているというふうに伺います。適切なピックアップであったかどうか、先生に確認 もしないまま厚かましくわたくしの手元にある資料で、ご紹介をさせていただいた次第です。今日先生は日本学術

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Ⅱ 全学FD研修

1 講演会の講義録及びアンケート結果

(1)大学教育の分野別質保証について ―日本学術会議の検討から―

日本学術会議「質保証枠組み検討分科会」幹事 日本大学教授 広田 照幸氏

実施日: 平成22年7月20日(火)

時 間: 16:30~18:00

場 所: 千代田キャンパス 大学校舎A棟1階155講義室

(多摩キャンパス 人間関係学部棟1階7114講義室で映像・音声配信による視聴)

司 会: 教育支援グループ 課長 杉田 学

司会:それでは、定刻となりましたので、ただ今から大妻女子大学ファカルティ・ディベロップメント委員会主催の講演会

を開催致します。今回は、日本大学教授で日本学術会議質保証枠組み検討分科会幹事であられます、広田照幸

先生に「大学教育の分野別質保証について ―日本学術会議の検討から―」というテーマでお話しいただきます。

はじめに講演に先立ちまして、当委員会の委員長である大場学長から、講師紹介を含めた開会のご挨拶を申し上

げます。

学長:皆さんこんにちは。今、杉田さんからご紹介いただきましたように、本日、日本学術会議の幹事でいらっしゃいます

広田先生に、大妻女子大学ファカルティ・ディベロップメント講演会、実際には、昨年からこの全学的な規模で言

いますと、通しでいうと三回目になるんですが、今回大学教育の分野別質保証ということについてお話をいただくと

いうことで、最も適切な時期にお願いしたい先生におこしいただけたことを、広田先生にまずは心からお礼を申し

上げます。僭越ですが、先生のご経歴等を若干わたくしのほうでご紹介させていただきたいと思います。広田先生

は、広島県でお生まれになられたと伺っております。その後、東京大学の大学院教育学研究科博士課程を終了な

さり、学士号として「近代日本における陸軍学校の教育社会史的研究、立身出世と天皇制教育」というテーマでの

ご専門で学位をお取りになられ、ご専門の領域としては、我々が知るところで、教育社会学、教育史、社会史とい

ったジャンルでのご活躍と伺っております。大学をお出になられた後、南山大学での教免をお取りになり、その後

東京大学の教育学研究科の教授を経まして、2006年から現在の現職でいらっしゃるということであります。なお、

この間、陸軍将校の教育社会史、立身出世と天皇制というこの学位をお取りになられた論文を元にした文献が三

通り学芸賞を受賞なさっているということであります。実は、わたくしは個人的に厚かましく本を読ませていただいた

後、ぜひ大妻女子大学のご講義をお願いしたいと全く面識もない広田先生にお電話さしあげて、大学院の授業を

引き受けいただけたということがありまして、その意味では既に先生に大妻女子大学でもお教えいただいたというよ

うなことを、やや自慢げに申しあげるというふうなことであります。著書は数限りがございませんが、陸軍将校の教育

最近のものでは「教育学ヒューマニティーズ」という岩波書店からお出しになられたものや、「格差・秩序不安と教

育」世織書房からお出しになられたもの、あるいは年号的にだんだん遡って行きますと「教育不信と教育依存の時

代」紀伊國屋書店からお出しになられたもの、さらに「教育には何が出来ないか-教育神話の解体と再生の試み」

というようなことで、春秋社からお出しになられもの、さらにその前に「教育言説の歴史社会学」ということで、名古屋

大学出版会からもお出しになられ、そのほか数多くのこの領域でのご研究をおまとめなられておられますし、編著、

翻訳などを含めますと、多数に至っているというふうに伺います。適切なピックアップであったかどうか、先生に確認

もしないまま厚かましくわたくしの手元にある資料で、ご紹介をさせていただいた次第です。今日先生は日本学術

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会議のお立場で、この問題に取り組まれたそのお仕事の中から、わたくしどもにお話しいただく訳ですが、平成20

年の5月頃ですか、文科省の高等教育局長から大学教育の分野別質保証のあり方に関する新域ということで、こ

れがわたくしにも良くわからない、どういう訳か、日本学術会議にということで、これは後で広田先生にお話しいた

だけるかと思いますが、学術会議の方にこれがご依頼あったと、そして、その中で大学の自己点検評価または第

三者評価の評価活動の充実を計る観点など視野に入れて、これについて審議をしていただきたいというふうなこと

にのって、学術会議の方での見当が始まったというふうに資料からは伺えます。大事なお時間長々とご紹介をとい

うふうなことでは失礼かと思います。先生のプロフィールの一端をご紹介させていただいて、これから先生のご講義

を伺いたいと思います。先生のご紹介を終わらせていただきます。

司会:ありがとうございました。それでは、広田先生よろしくお願い致します。

講師:広田です。皆さんこんにちは。表題のようなですね、タイトルでお話しをしますが、別に学術会議の立場を代表して

しゃべると、とてもフォーマルな話しになりますけども、わたし自身が嫌々、学術会議に付き合ってきた2年間という部分が

ありまして、そういう意味では少しこういう、なんかしゃべれと言われたら、いいこと悪いこと全部しゃべりたいような気もする

ので、あまり外へ出せないような話しもしてしまうかもしれませんけれども、基本はですね、あまりやりたくなかったんです

ね。何が分野別質保証だとかね、そういういのがあった訳です。だけども、いろんな条件の中で、状況のなかでですね、

なんらかのことをせざるを得ない、せざるを得ないとすると、何が出来るか、何をしちゃいけないか、といったことを、いろい

ろ考えながら、学術会議のなかで議論してきました。議論をしてもそうそうみんな味方になってくれるわけじゃないので、

全然違うことを主張する人もいてですね、かなりこの2年間でいろんな人に嫌われましたけども、悲しい仕事だったですね。

なんでこういうことを、分野別の質保証が問題になったかというと、直接は平成20年12月のいわゆる中教審の学士課程

投信といわれるものがスタートして、そこで日本の学士がいかなる能力を証明するものであるかと大学が掲げる教育研究

所の目的や、見学の理念はすべて抽象的であると、学士課程で学生が身につけるべき学習成果を具体化明確化してい

こうとするとどうしてもこう曖昧だ、と学士力というのを提案して、各分野の教育における最低限の共通があるべきではない

か、というふうな話しになって、それで学術会議に大学教育の分野別質保証のありかたに関する審議をしろ、というふうに

宿題が投げられたのですね。要するに中教審で分野別の質保証やるから、おまえ考えろというふうに学術会議で投げら

れた。投げられたのは、ここだけの話わたしの師匠の天野郁夫というのがいまして、天野先生が教育の質というのは、学

問の自由の問題にも関わるので、中教審で何かやるのではなくて、学術の団体である学術会議で要するに外に出して

議論させた方がいいって話しになってですね、それでまあ投げられた。投げられた話しがですね、スタートする時にわた

しのかつての先生でもあり同僚でもあった藤田ひでのり先生のところにちょっと話しがいったらしくて、それで藤田先生が

いろいろそんな分野別質保証なんか危ないぞと言ってですね、話しを日大の広田に聞け、って言ったらしいのですね。

それで、事務局の人がぼくのところに来てこういうのを作ろうと思っている、分野別質保証をやろうと思っている、って、そ

りゃ危ないですよ、って言ったら、まあそういう慎重な意見をちゃんと学術会議で言ってくれ、って言うのであの学術会議

の中に入った。でまあ、本当はやりたくない、けどもやらないといけない文脈ってあるのですね。やらないといけない文脈

はあったのです。

○大学教育の質保証をとりまく文脈

中教審が言ってきたっていうだけじゃなくて、一つはグローバル化が進む中で、学位の水準を国際的に保証しようとい

う動きが強まっているのですね、例えば学生が留学する時に、例えば大妻女子大って言って、それは本当に大学の名前

に値するのかと、大学っていう名前 university って名前はついているけど、どっかの会社のオフィスかなんかで勝手に作

ったとかね。そういうふうな話になる、そうすると、ちゃんと大学はここの大学は大学に値するっていうふうに、何らかの国

際的に発信出来るようなものが必要だと。あるいは、日本全体を見ても、そういうことは何らかの国際的に、日本の大学の

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学位はですね、留学を受け入れるのに値するとかですね。そういうのが出来るような何か枠組みが必要だと、要するに資

格のグローバル化の話しを考えると、なんか考えないといけない。二つ目にユニバーサル化が進んでいるってことですね。

要するに、底抜け大学が、登場しつつあるのかもしれない。そういう話しになってくる訳ですね。本当に大学に値するの

かと、まああんまり言わないようにしましょうか。まあ考えてみるとちょっと、大丈夫かな、っていうところはたくさんある訳で

すね。考えないといけないのは、専門学校と大学はどう違うのか、というポイントですね。資格をどんどん出していますから、

うちは大学ですよ、って言ったら、それは専門学校でも出せるじゃないか、っていう話しになりますね。じゃあ、専門学校と

は違う、大学の大学たるものは何か、ということをきちんとそれぞれのところで明示しないと危ない。ともかく、たくさん大学

が増設、新増設されていく中で、一番そこの部分はちょっともやもやしているからね、そこの部分を切って捨てる戦略もあ

るわけで、作戦もあるわけね、要するにここから下はだめ大学とか、大学という名前はもう使わせない、とかそういうふうな

話しにも出来るし、個人レベルでも出来ますね。名前言えない大学の何やら君は、四年間で、何やら大学卒業したけども、

学位はあげない。とかね、そういったことだって出来るわけです。

昔、明治のころには工部大学校っていうのがあって、工部大学校はだいたいそんなことをやっていましたからね。優等

学位からこう、ずっと順番にあってですね、で、修学はしたけど卒業はしていないっていうような、成績で切っちゃったりし

ていましたから、そんなことだって出来るからね。まあ、ともかくユニバーサル化していく中で、大学、大学生というものの

基準、そこをどう考えるかっていう問題を、何らかのことを考えなければいけない。それから、もう一つは、社会からの眼差

しが厳しくなってきたということですね、大学に対する。一昔前は学問をちゃんと教えているから、世間の人は分からなく

ても、まあそれは大学教育だろう、って言っていたのが、単なる教育サービスの一つみたいに見られてですね、それでた

くさん情報出せ、というふうな話しになってくる。資料に付けておきましたけれども、5月に中教審のほうのですね、学内情

報の公開の話しがですね、新聞に載っていたので、ちょっと資料に付けてもらいましたけど、まあともかく、学内情報をど

んどん公開しようと、それであの、組織とか教育の実情を外に発信しろという話しになっています。5月10日に出てきたの

では、こんなもんまで出させられるのか、っていうふうに思いますけれども、義務化される情報がずっと並んでいますわ。

それから情報公開の努力義務が求められるもの。それから今後公表が考えられる国際的な情報みたいな話しですね、ま

あアイデア出す方は簡単でいいですよね、これね。それを一生懸命情報作って、発信する現場の人間は大変です、これ。

こういうだから、ともかく世間に知らせろという話しの中に、教育サービスとはどういうものであるか、ちゃんと発信しろという

話しがあるわけですね。実際この中にも今の資料の中にも、学部、学科、課程、研究科、専攻ごとの教育研究上の目的、

っていうのが入っていますね。他のものもありますけれども。今日お話するのはここの部分に関わる話しをすることになり

ます。ともかく、昔と違って世間が大学にもっと情報出せ、っていう話しになってきます。そういう眼差しに答えないといけ

ない訳ですね。そういう三つの流れ、要因があるなかで、分野別の質保証は必要ない、というふうなことはなかなか言えな

い訳ですね。なかなか言えないから、何かしないといけない。それでなんか、いろいろと考えていったわけですね。

○日本学術会議について

学術会議とはどういう組織かというと、法律があってですね、日本学術会議用法というのがあってですね、科学者の代

表機関で、政府から独立して職務を行っています。人文社会科学自然科学の全分野、を包摂する組織では三つの部と

三十の分野別委員会が作っています。そこでですね、質保証の検討を始めたわけですが、どういうふうにやるかと、それ

を考えようというのが質保証枠組検討分科会で、ぼくはそこの幹事をやりました。多様な方法を検討した末に、分野別に

教育課程編成上の参照基準を作成する、それによって教育の質の保証を計るということになります。簡単に言うと。あと

二つ、教養教育、共通教育の分科会と、大学と職業の接続の分科会と、三つの分科会で議論を進めてきました。つまりこ

ういうことですね、各分野の質保証は、質保証枠組検討文化会でやる、けど大学のカリキュラムは専門教育だけじゃない

ですから、それで話しを終わらせると、大学教育が歪んでしまうわけですね。カリキュラム、ともかく専門性を強めれば良

いのだろう、というような話しになってしまう。それは大学教育としては危ない。だから、ちゃんと大学教育のなかで教養教

育の位置づけを考えないといけない。学術会議が教養教育についてどう考えるかまとめよう、という話しですね。あともう

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一つは、大学の中で解決しないですから、社会との繋がりをちゃんと考えた教育をやらないといけない。じゃあそれを学

術会議でどう考えるかという、そういう報告書も作りましょうと、という専門教育と、教養教育と、それから社会との繋がりを

考えた、その三つの報告書を作ることで、それを各大学に提供することで、その学術的な裏付けとですね、大学の使命

みたいなものを考えたカリキュラムを作って下さいよというふうなことが、最終的な我々が作った枠組みになるのですね。

○分野別の教育課程

質保証を考えるときのポイントは、今の日本の大学はいかに多様かということを考えなければいけない、ということです

ね。学術会議で繰り返し確認したのですね。つまり、同じ分野でも大学によって重点の置き方が違うということですね。教

育学を東大で教えるのと、日本大学で教えるのではですね、これ違いますね。それは実践的な部分にうえとか学理にう

えとかですね、そういう部分になるわけですね。つまり同じ分野でも各大学で多様性がある筈ですね。同じように、専門教

育を重視するっていう理念の大学もあるし、教養教育を重視する大学もあります。ICL なんかは典型的に教養教育重視

ですよね。そういう大学もあるし、もう1年からびっちり専門教育をやっていこう、っていうそういう大学だってあるように、何

かそれがどっちかが潰れるような枠組みを出しちゃいけないって訳ですね。両方生き残るような枠組みを考えないといけ

ない。三つ目にあの、卒業生の進路の対応ですね。何かあの、教育学を学ぶとみんな先生になるという、そういうふうな

枠組みを作ったら実際そういうふうにはならない訳ですね。ならない。そうすると、そうならないことを前提に、いろんなとこ

ろに就職する学生がある学問を学ぶということを前提にした質保証が必要だ。それからあの、社会全体に共有された分

野別の能力要求概念が不在である。ちょっと難しい言い方していますけども、要するに企業の側は、役に立つことをやっ

てくれってことを言いながら、何をやれっていうのか、というと、何もないのですよ、企業は。バイタリティとかって言ったりし

て、そりゃ学問の中身じゃないでしょう、つってね。だから、教育学で何を教えるのよ、何もないから、そういう意味では要

求されているものが無いような状態の中で、社会との接続を考えないといけないわけですね。これ結構難しいパズルです

よ、これ。いろんな分野があって、いろんな大学があってですね、実際社会とどう繋がるかもわからない中で質保証を考

えないといけない。参りましたね。であの、ここからちょっと恨み節をしゃべると、自分のアイデアを売り込む人がいるので

すよ。一つの敵はね、コアカリキュラム作りたい人がいるのね。何やら学のエッセンスを私が体系的に示すから、これを全

国の大学で教えさせろ、ということになります。特に学術会議は、何やら学の偉い人がいっぱいいますから、そうすると、

何やら学を私が、要するに体系を示してみせる、みたいなですね。そういう人がいる。それやっちゃうと、まずいですよね。

全国どこでも社会学の教室では、みんなあの、統計から入ってですね、社会調査やる、って言ったら、質的な研究がなく

なるし、理論研究がなくなる可能性がありますね。教育学だって、みんなが先生を目指す為のコアカリキュラムを全国一

斉にやっちゃったら、あのヘルバルトとか、ペスタライッチとか誰も言わなくなってしまう、誰それ、とかって言って、そんな

時代になってしまうかもしれませんね。だから、コアカリキュラムを出来る分野は部分的にはあるかもしれないですね、あ

の、医学とかは、後で出ますけど、医学とかは資格との関係でそういうのがあり得るっていう話しはしたのだけど、大学の

いろんな分野を一律コアカリキュラム作っていくという、これはだめでしょう、っていう話しをかなり議論の上ですね、やった

のですね。ここでまず一つ恨まれました。それからね、もう一つね、計りたい人がいるのですよね。教育学卒業検定テスト

みたいなやつね。法学検定とか、経済学検定とか実際にテストありますから、分野によってはですね。その検定テストや

って、質保証やれ、って結構気楽に言う人がいたわけですよ。これも問題ありますね。全国で、みんなそれぞれの学問分

野の人が、試験対策のための勉強をするというふうな話しになってしまう。試験に出ないところだからいらないでしょ先生、

と言われたりしました。逆にその、そのテストでやると、大妻女子大学の卒業生は合格率が70%とかね、残りの三割は何

やら学士は言えないとかね、そういう話しが起きてしまう。大学は卒業したけど学士じゃないとかね、そういう話しになって

しまう。これも危ないですね。これも危ない。でも結構やったら、学力テストやったら学生がまじめに勉強するようになった

のだ、とかね、だからこれをやりゃあいいのだ、とか言う人もいるのです。確かに教育の手段として一つはあり得るかもしれ

ないけど、大学の教育の質の保証の手段としてやるにはあまりにも乱暴な話しですね。ぼくの仲良しに潮木先生というね、

名古屋大学の名誉教授の先生がいて、ちょっと前の本で卒業の時のテストやれ、って書いて困ったな、って潮木先生と

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飲み屋で一杯やりながら、「先生だめですよ」って大議論したことがありますけど。やっぱり、テストで計るのは、非常に分

かりやすいので主張される部分は分からなくはないけれども、学問分野がテストに出るか出ないかという形で歪めてしまう。

それから、テストに受からなかった学生を、いわばその大学の資格を一生懸命勉強して取っても排除するというようなこと

になる。そういう意味では決していい方向ではない、というふうなことがありましてですね。でまあ、ここら辺はコアカリキュラ

ムの話しですね。医学教育のコアカリキュラムとかはあり得るけども、○○学のコアカリキュラムとかですね、○○学の最低

到達水準とかですね、そういうふうなものが、もう設定していいのかということですね。それでまああってですね、辿り着い

たところはこれですね、学問教育者の論理で自己完結した一律の基準は定められない。でまあ、こういうことをやるので

すね、多くの学生達が社会の現場で生きていくという時代にあって意味を持つものとして、学びの内容を明らかにする、

なんやら学を学ぶことがどういう意味を持つのかっていうことを明らかにしていこう、そういう方向で考えていったのです

ね。

○英国の subject benchmark statement

枠組みの考え方は、単なる思いつきじゃあなくて、このモデルがあって、イギリスのですね、QAA がやった、Quality

Assurance の subject benchmark statement の枠組みがモデルになっていますけども、いろんな分野でどういうふうな中

身がどういうふうな水準で提供されるのか、っていうことをちょっと前の57くらいの専門分野で作っている。何かというと、

具体的には分野の定義があって、身につけるべき能力やスキルがあって、教育学習評価の過程があって、学位の参照

基準があってですね、つまり、なんやら学ではですね、どういう学問でこういう風な教育が行われて、こういう風な評価が

行われると、という風なものを文章にしたものですね。それをまああの、イギリスに調査チームを送って調べながら、参考

にしたのですね。ただしあの、まあこの辺の細かな話しはやめましょうね。日本とイギリスはやっぱり仕組みが違うので、イ

ギリスのやり方はそのまま踏襲はしないと。むしろですね、イギリスは設置基準がない中で、質の保証をやれってことなの

で、結構細かなことが書いてあるのですよ。だけど日本で設置基準はあらかじめおおきな部分は縛ってあるのだから、む

しろ、基礎基本となるものを身につけるような、ちょっと哲学的な、というか事前的なものをちょっと書こうというふうなことに

なりました。今までの話をまとめるとこれですね。

○教育の質保証に関する基本的な考え方

分野別の枠組み保証をどうするかということですね、まあいろんな議論があってですね、いろんなやり方があるわけで

すよ。国家試験をやるってことがありますね、国家試験をやる。だけれども、特定な分野は国家試験をやれるけども、すべ

ての分野でそれは出来ないのですよ。出来ない。それからあの、学協会による統一試験ですね、さっき出た法学検定と

か、経済検定とかありますね。こういうふうなものを、使えという話もある、それからあの、テストの専門機関による共通テス

トですね、まああのこういうのも今開発されつつあるけれども、これもあのだから結構一般的に、特にあの細かな専門的な

ものというよりはですね、それ自体をすぐに使えるような状況ではないということですね。それからあの、分野別アクリテイ

ション、いろんな職業団体がカリキュラムの指定をする、ジャビィというのは特別な技術者に関して国際的な水準の日本

でカリキュラムを指定する枠組みですけれども、ジャビィとかですね、これ日本にもう既にあります。それからアメリカでは、

いろんな40団体以上がいろんなアクリテイションの団体として、専門職業に関わったカリキュラム認定をやっている。まあ

こういうのもあり得ると。それからあの教育改善のための学習過程のモニタリング調査、一年生の時にあなたはどのくらい

本を読みますか、って言って、四年生になってあなたはどのくらい本を読みますかって。で、四年間のうちにここの大学の

学生は、三倍本を読むようになったとかね。例えばそういうふうなもんですね。ぼくの知り合いの高等教育の関係者は結

構これが好きなのですね。学会発表の度に今度こういうのを調べてみました、って言ってやっていますけれども、まあ全

部ともかくあの、全部の分野を包括するとか、あるいはその、大学教育を弱めない、あるいは技術的に大丈夫とかいう点

に関して、どれも決して良くないという話になってくる。で、学術会議が提案しているのはこれです。各専門分野の本質的

な理念哲学に立脚した大学学士課程としての教育のあり方を考えよう。ということです。学術会議がつくる参照基準を、各

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大学で見ていただく。教育課程編成上の基本的よりどころのひとつとして見ていただく。でそれを、各大学で、教育課程

の編成に活かしていただくという、そういう枠組みを提案しているのです。もうちょっとあとのところでですね、もうちょっとお

話します。これが学術会議の提案する枠組み、もうちょっと細かく見たものなのですけれども、教育基準編成上の参照基

準を学術会議がつくります。それを各大学で見ていただいてですね、それで各大学の教育理念とか、各大学の状況で

すね、学生の資質とか学生の進路とかを考えながら、そこであの具体的な学習目標を決めていただいて、学習方法や内

容や評価に反映させてカリキュラムを組んでいく。で、それが学術会議のものを参照して、きちんと目的を立てたものを、

きちんとできているかの結果的なモニタリングは、それぞれのところでやっていただくというものになりますね。ちょっとイメ

ージが沸かないかもしれないですね。サンプルを付けておきました。いま各分野の参照基準をつくり始めようとしていると

ころなのですけれども、まとまったサンプルはいまのところこれ一つですね。これ一つだからこれに近いかんじでいろんな

分野が出来てくると思います。そこを見ていただくと分かりますが、まずは当該分野の定義というのがありますね。まあこ

れはイギリスの benchmark statement でもここから始まるのですね、教育学とは何か。なんやら学とは何か、っていうのが

簡単に書いてある。その上、2ページへ行って当該学問分野に固有の特性について記述する、四角のなかにありますね。

まあこれは作成のための手引きの文章ですね。そこにはですね、教育学に固有の特性というセクションがあります。教育

学に固有の視点、教育学に固有の視点は人間の可変性の関心である。学問に固有の視点とは何か、それがどういうふう

な学問的特性に繋がっているかというかという話が、2ページから3ページ、4ページあたりまで書いてあって、4ページに

最後は、ほかの科学との関係がどうなのか、というふうなお話が書いてあります。5ページをちょっと見ていただくと5ペー

ジの2行目、ここでは教育学に固有の特性を4つの項に分けて論じた、規律の仕方としてはべつの柱立てもあり得る、世

界の認識の仕方、世界の関与の仕方について教育学に固有の視点と、論理的に繋がりがある規律を心がけている、とと

もに現実社会の関わりを目にするように心がけた、他分野との関係を言及することで、教育学に固有な点を明確にしたつ

もりであると、ここでも教育学内部の勢力争いを誘発させないために、規律にあたって分野を構成する学会と重ならない

よう工夫した、いろいろ配慮しながら文章が書いてあるわけですね。それから学問の特質を踏まえたうえで、3のところが

ポイントになるわけですね。次のところ。四角の中をちょっと見てくださいね。当該学問分野を学ぶすべての学生が身に

つけることを目指すべき基本的な素養ですね。これを文章化しよう。具体的にはですね、以下の項目にそって道程する、

当該分野の学びを通じて獲得すべき基本的な知識と理解、当該分野の学びを通じて獲得すべき基本的な能力、能力の

方は、分野に固有の能力と、ジェネリックスキル。こういう柱立てで考えていく。そのあとそれぞれについいての説明がず

っとありますが、まあ飛ばしますが、それで6ページは具体的に教育学を学ぶすべての学生が身につけることを目指すべ

き基本的素養についてですね、サンプルだからわたしの書き放題ですね。実際にはいろんな人が集まって、それを議論

しながら作文していきますけど、まああくまでサンプルなので、ぼくが夜中にパソコンで打ってですね、文章にしましたぐら

いの話しですけれども、1のところを見ていただくと教育学を学ぶことの本質的な意義、学生は教育学を学ぶことによって

現実の教育あるいは理論上の教育より合理的に考察し判断出来るようになる。まあこんなもんですね。これが具体的にど

ういうものか、ということがずっと展開している。現実の教育あるいは理論上の教育をより合理的に考察し判断出来るよう

になる。それは一体何か、たぶん東大生が教育学をみっちりとやって辿り着くところは結構深いかもしれない。けれども、

名前言えない大学で、教育学を一生懸命やってもそこまではたぶんたどり着けるのですね、より合理的に認識できる。つ

まり分かりますよね。学術会議がつくる参照基準というのは、コアカリキュラムとは違って、ある分野を学ぶことで、深くまで

いく学生もいるし、浅くまでしかいかない学生もいるけれども、ある分野を学ぶことで固有のものが身につくはずだ。歴史

学なら歴史学をやったら、浅い理解かもしれないし、深い理解かもしれないけれども、歴史学を学ぶことで共通の何か身

につくものがあるはずだ。教育学なら教育学で、何かきっと固有のものがあるはずだ。それは何が身につくかを、学術会

議の方で言語化してみましょう、というふうなことになりますね。具体的には7ページに例えば、獲得すべき基本的な知識

と理解があってですね、丸がついたところいくつか見ていただくと、かなりあの包括的に書いてありますから、発達学習教

育についての基本的事項とかね、これをどこまで深くやるか、というのは各大学の自由だと思うんですね。だけども、少な

くとも教育学についてきちんと学習しました、という学生は、発達学習教育の基本的なものはどこの大学でも学んでいる

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はずだろう、というふうな話しですね。それがずっとあって、最後の方は省略していますけれども、イメージを分かっていた

だくためにこういうものを準備しました。それで戻すと、つまり、いろんな分野で、学問分野で、こういう参照基準を作って

いきます。これはサンプルで、教育学をサンプルにしたものですけれども、いろんな分野でこういうものを作っていくから、

それを参照していただきながら、自分たちのちゃんとねらいや哲学がこもったカリキュラムを作ってください、それぞれのと

ころで。うちの大学のこの学科で教育学を教える、そうすると何が学ばれることになるかと、そのためにどういうカリキュラム

を私たちは用意するのかと、そういうふうなことをきちんと考えていただきたい。資料にちょっと書きましたけれども、考えて

みればカリキュラムが必ずしも十分体系的に、提供されてこなかった部分がいろんな大学であるのだと思うのですね。わ

たしのところでも、何でこの科目があるのか分からない、とかね。たしか前にいた先生が、得意にしていた科目が今でも残

っているとかですね、そんなことがあります。あのちょっと言えないけど、関西の方の私大の、私立大学の人と話していた

ら、カリキュラム改革するたびに、概論がなくなって、かわりに取れる資格が増えているのですって。分かりますよね、あの、

要するに学問の基礎っていう科目をどんどん潰してですね、かわりにどうでもいい資格を取るための、どうでもいい科目

がどんどん増えていってですね、カリキュラム改革するたびにどんどん取れる資格が増えていくっていってね、だからそう

いうのは哲学や理念のないカリキュラム作りになるのですね。そうじゃなくて、ある学問をどういうふうに学ばせるのか、そ

れによってどういう学生を作るのか、っていうそういうことをきちんと考えていただく。そういう教育を提供してもらうのが一

番の質保証だ、というのが学術会議の考え方。つまり外からシラバスをどうしているのだ、とかそういう外形的な基準で質

が高まる訳がない。そうじゃなくて、一番大事なのは水が流れている、水源ですよね、水源がきちんとしていること。それ

は何かというと、ちゃんと目的と体系性をもって、教育が提供される。それをやることが一番の質保証だ、というふうなこと、

そのために、この今サンプルであげたようなですね、ある学問を学ぶことで、ある学問の特質は何か、そのうえですべての

学生が学ぶことで身につくことは何か、といったことを学術会議でできるだけ使い手があるように文章化したい。というふう

なことなのですね。

○今後に向けて

当面30程度の分野を考えています。次の資料にあります、この太字を最初にやる、三年間で30分野。で、医学とか史

学、薬学のような、コアカリキュラムのあるようなものはもう作らない、当面あの、いろんな分野のできるだけあの広いやつ

を作っていく。だけども30で足りるのかっていう、話しもあると思います。で、大事なものはここですね、もう一つ大事なも

のはですね、学際的複合的な教育課程については、当該課程を構成する、元となる部分の参照基準を、十分に組み合

わせて活用してもらう。どんなことかというと、比較的安定性の高い分野の参照基準を組み合わせてそれぞれでカリキュラ

ムを作ってくださいよと。だから子供学で教育と、教育学も関わるし家政学も関わるし、心理学も関わる、そうするとそうい

うものを組み合わせて、うちのカリキュラムはこういうものを提供するのですよと、というふうに作って下さればいいと。だか

ら学際的な分野、新しく作られる分野は、要するにこういうものを活用しながら、組み合わせてですね、自分のところのカリ

キュラムを説明できるようになればいいと。そういうふうなものを作ってくださいと。学術会議のなかでもね、新しい分野を

ちゃんとこういった参照基準を作れという人もいたのですけどね。ちょっと知り合いの有名人の先生に言われたのだけど、

先生だめですよ、って作った瞬間にその分野は固定してしまう、新しい分野は学術会議がこれですよ、って決めちゃだめ

ですよって言ったら納得してくれました。だから割合伝統的なものを、エッセンスをいろいろ組み合わせて、新しい分野は

新しいカリキュラムを作ってくださいと、そういうことですね。それから最初の方で言いましたけれども、どうしてもこういう話

しをすると、専門、専門、というふうに言ってしまうのだけれども、大学と専門学校の大きな違いはですね、ちゃんとした教

養を与えるというところにあると思うのですよね。専門学校では良い職業人になるかもしれないけれども、幅広い何かが足

りない、そうすると、教養の方の教養教育についての、報告書を参照していただいて、いろんなエッセンスをカリキュラム

に盛り込んでいただきたい。まあこれ教養教育のあり方についてはずっとコミュニケーション能力とかですね、知識やイン

ターネットとか芸術や体育とかですね、そういうのを入れました。だから、へたにこういうのを作っちゃうと、全国で、大学で

いらないとか、学術会議に入っていなかったからいらないとか、教員のリストラの嵐が起きちゃったりすると困るので、そう

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いう意味ではできるだけこういろんなものを盛り込んでやってきた。いや結構ね、見たらおもしろいですよ、コミュニケーシ

ョン能力で英語の話しと、国際共通語として英語教育を位置づけながら、同時に異文化理解の為のいろんな外国語教

育を位置づけようとかですね、そういうふうなものを出したりしていますね。それは置いといて。まあ、ということで参照基準

が基としているものはですね、短期的な何かではないです。長期に日本の大学の質を保証しよう、というふうなことを考え

ています。だから、英語になっても大丈夫な仕組みを考えておかないと危ないですね。難しいのですよ本当に、要するに、

国際的にも説明が出来て、一番底の抜けそうな大学まで助けるような、そういう枠組みを考えないといけないから、大変な

のですが、長期的にはそれぞれのところがなんらかのかたちで学術的基盤に裏打ちされたカリキュラムをちゃんと学生に

提供するとすれば、日本の大学はちゃんとしていますよと、職業のための単なる専門学校ではないですしね、単に時間

つぶしのために学生を収容している訳ではないと、ちゃんとした教育を提供していますよと、言えるようにはなるだろうと。

そういう意味では参照基準は教育機関を支援するツールでしてね、何かを判定するための評価基準ではない。これも皆

さんびくびくされていたりするのですね、学術会議が何か悪いことやっているぞ、って言ってね。あの学術会議の基準で

すねバサバサとカリキュラム切られるのではないか、って言って思っているけど、そういう使い方は出来ないのですね、こ

ういうサンプル見ていただくとこの基準に適合してるとかしてないとか、そういうレベルのもんじゃない、これをむしろ活用し

ていただくという為に作っている訳ですね。でその上で各大学の自主性自立性を尊重しつつ、大きな挑戦を求める。ア

ルカディア学報の方にわたしたちも書いておきましたけれども、下から四段目のところを見て下さいね。考えてみればで

すね、これまで○○学を教えると言いながら、その分野の教育を組み立てるための確固たる足場というべきものは存在し

てこなかった、つまり教育の目的目標という最も肝心なものを基礎づけるものがなかった。特定の科目を担当する教員が

思い思いに、○○学とはこういうもの、と自分の担当する分野のイメージを思い描いているにすぎなかった。だから、科目

の配列も授業の中身も単なる寄せ集めだったり、なんか良くわからない事情でこうなっていると、というふうなことになって

いると。で、だから、もしも参照基準をきちんと使っていただくと下の方で、その下の段の左から6行目くらいですか。うち

の学科では四年間の教育を通してこれこれこういう学生に育てよう、そのためにはこういう教育課程を編成しようというとい

うことが、それぞれの組織で明確にされることが何よりも重要で、それに沿った教育課程の改革や内容方法、評価の工夫

がなされることが望まれると、こういうやり方に対して、一部には生ぬるいという批判があるようである。ぼくの知り合いがネ

ットのコラムで生ぬるいって書いていましたよ。まあしかし、わたしはそうは思わないと。むしろ個々の組織が学生や社会

に対して自分の提供する教育の意義とその体系をきちんと説明しなければならない、という意味で、とても厳しい要求を

している。だから最初にお話しましたように世間がちゃんと説明しろという時に、教育の目的の為のカリキュラム、その為の

具体的な改善の方法、をどういう風にやっているんだっていうことを、説明できるかどうか、それを求められている、そうい

う枠組みですから何もしていないところは、おまえのところのカリキュラムは何だ、っていうふうにそこは言われてしまうんじ

ゃないかと思うんです。でまあ、今後に向けてなんですけれども、一つはですね、学術会議がその分野別参照基準を作

っていきます。同時に社会の要請に応える為にコミュニティや総合支援を作っていく、これが一番いま動いているところで

ですね、いろんな学協会とかですね、FD 団体とかですね、大学の団体とかですね、認証評価機関とかね、そこらへんが

この枠組みを共有してもらえるように、シンポジウムを開いたりインフォーマルに会合開いたりしてですね、意見交換をし

ているというところですね。まあ最初に言いましたけど、コアカリキュラムを作ってですね、各分野が全国一律に同じ内容

で教えるというふうなやり方をしたら、たぶんだめになる分野がいっぱいあると思うんです。それは避けることができました。

それから、いろんな分野で何やら学の標準テストを作ってですね、十年に一回くらいで改訂してですね、テストをやる、と

いうふうなことをやっていったら、きっとこれでだめになる分野はいっぱいあっただろうしね、だめになる大学もいっぱい出

ただろう、それも避けることができました。でもある意味で、とても遠回しな枠組みですね、今我々が提案しているものはね。

学術会議が作った、こういう文章を参照しながら、自分たちのカリキュラムをしっかり作るというふうな枠組みですから、本

当に作ってくれないと困るんですよ。皆さんの方で。そうしないと、あんな生ぬるい仕組みじゃなくて、テストやれって、中

教審のどっかの作業部会で標準カリキュラム作れとかね、そういう話しになっちゃうからね、そうならない為には、そのいろ

んなところと協議していますけれど、いずれ各大学がこういう方向で、カリキュラムをちゃんとしたものを作って下されば、

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大学の自立性、大学コミュニティの自立性は保てるんですね。だから何よりも重要なのは、それぞれのところがですね、

学術的な基盤にたって、理念と耐久性をもった教育課程を構築するというふうなこと。でまあ、そこで問われるのはですね、

四年間でどういう学生を育てようとするのかを、これ大変ですよ、学科のメンバーみんなで議論しないと出来ないですよ。

で、そうするとここで、考え方が違うとかね、いうふうな話しをいろいろしながら、でも、議論して良かったね、とか言って、そ

れなりのものが見えてきたら、ある種の体系的なカリキュラムが自信をもって説明出来る。その学問を学ぶことで、学生に

何が身につくのかが言える。だから、内部での議論や合意が大変らしいですね。カリキュラムの改善や工夫もしていかな

ないといけないし、その上で学術、対外的な説明もできるようになる。最後にちょっと見ておきますけども、アルカディア学

報の下から2段目の4行目のところをちょっと見て下さいね。こういうのを作っているって言ったら、日大文理の学生がこれ

はいい、って言ってくれました。四年間で自分が何を何故学ぶのか理解出来るようになると、だから就職活動でも部活動

で頑張っていました、じゃなくてね、教育学でこれこれが身につきました、って言えるようになるかもしれない。ぜひやって

くれって言っていました。勉強好きな学生ですけどね、これ。だからまあ、少なくとも、124単位取って、卒業しましたじゃ

なくて、どこそこ大学のなんやら学科で、なんやら学を学んだことでわたしはこれだけのことが身につきました、って学生

自身がしゃべれるようになるためにも、教える側がそういう理念を明確にした、カリキュラムを提供することが大事なんだと

思います。まあそういう意味じゃ、学生にもよろしいかなあと、まあ、こういうやり方を押していけるかどうか、まだ微妙な部

分もあります。二年間やって、もう散々いろんなひとに嫌われながらですねやってきて、ひょっとしたら、もっと別の話が突

然動き出すかもしれないですけど、少なくとも、学術会議で出した枠組みで、しばらくは行けそうな感じのところまできたん

でですね、各大学で、大妻の皆さんもですね、ぜひ三年後には30分野出来ますから、その頃に向けてですね、少しうち

の学科でどういう学生育てればいいのかと、うちのなんやら学の特色はなんだ、ということを少し同僚同士でですね、議論

していただければしっかりしたカリキュラムの体系性をですね学生に説明出来るようになる、そういうものとして、協力して

いただければ、と思います。わたしの話は以上です。ありがとうございました。

司会:広田先生ありがとうございました。それではこれより、質疑応答に移らせていただきます。質問のある方は挙手をお

願い致します。いかがでしょうか、せっかくの機会ですからどうぞ。多摩の先生方聞こえますでしょうか? どちらか

多摩の先生方でご質問がありましたらお願いします。

参加者A(多摩):悲しい話しだったかもしれませんけど、ありがとうございました。今最初に、グローバル化、ユニバーサ

ル化、社会化のまなざしという点が挙げられていましたけれど、まあ要するにですね、各大学、学部ごとに理念とい

うものを明確にするという結論ということだと思いますけれども、それだけで、グローバル化とかに対応できるかとい

う疑問があるわけですけれども、あるいは、底抜けもどうなっているのかな、ってそう言っても難しいとは思いますけ

れどもいかがでしょうか?

講師:ありがとうございます。えっと一つはですね、こういう枠組みで日本は大学で質保証を行っているという説明ができ

る。つまり個々の大学がなんか自分たちの文章を英語にして説明する、というふうな前に、日本の大学はすくなくと

もこうやって、大学コミュニティが学術的な質を十分保っておるというふうなことを言うことが出来るんですね。で、実

際に参照基準もあの英訳してですね、世界に発信すれば、なるほど日本の教育学の教育で考えられているのはこ

ういうものなんだ、っていう、そこの説明は出来ます。その上で、各大学がグローバル対応できるか、っていうのはも

うカリキュラム対応だと思いますね。どこまでその、国際的な人材を作ろうと考えるか、違うと思いますけれども、少な

くとも仕組みとしては、グローバル対応でいけると思います。というふうなところでいいのかな?どうでしょう?

参加者A(多摩):はい、ありがとうございました。

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司会:ほかにご質問は?

参加者B(千代田):どうもありがとうございました。わたしもこのところロシアのほうに出かけていろいろ話しを聞く機会が多

いんですけれども、やはりあちらに行ってもすぐに PISA の話しが出てきて、学力問題、それからまあ、ロシア連邦の

なかでも、いろんな国内的な統一学力テストが企画されてはいるんですが、その一方で、いろいろ不正も報告され

て、まあこれはあの、日本みたいなところはあると思うんですが、OECD はそのうちに学生を対象にした成人のリテ

ラシーの方にも、目を向けたそういった評価を、あるいは調査をしようという、そういった中で、やはりあのわたしが

気になっているのは、ロシアの方でもずいぶん OECD に揺さぶられている、というか、かつてはまあ、ロシア語をや

ってれば良かった、それに英語が入ってくる、そして民族語との相関関係の中で、グローバニズム、ユニバーサリ

ズムのまさに顕著なコンフリットが生じている訳ですけれども、そこらあたりの今後の日本が発信する、コアと言いま

すかね、あの、広田先生が考えられている、こういったことをベースに発信していくべきだ、というそういったフィロソ

フィーというか、理念をお持ちでしたら、教えていただきたいのですが。

講師:まああの、OECD とかですね、は、いまの AHELO って話しは動いていますけれども、いろんな分野別のですね、

測定をやってみようか、っていうところで動いていたりしますけど、あのね、グローバルに通用するっていうか、一番

分かりやすいのはグローバルに共通に測定する、っていうことなんですけれどもね。共通の基準でね。測定という

のは、まだ技術的には全然よくないですわ。測定されたもので、質を保証するっていうかたちで分野別のものを動

かせるようなかたちではないですね。だからまあ、むしろだから、地味だけど、じっくりしたかたちで大学教育の質を

いいものにしていってですね、そのなかで、まあいろんな大学がですね、教育で人材を出すとかね、研究で成果を

出すとかですね。そうやって発信していくことを考えたほうがいいと思います。今動いている分野別質保証というの

は、全体を包括して、その単一の枠組みで何が出来るかという宿題が出てきた訳ですから、それにはこういうふうな

やり方をしますけど、各大学で、研究をいかに高度化するか、各大学で、教育をいかに高度化するか、っていうの

は全く違う戦略でね、併用してやっていくべきものだと思う。これを使って、底がけしようと言ったら、そういうふうなも

のをやらない方がいいんだと思うんです。国際的には。

参加者B(千代田):はい、わたしも全く同感なんですが、結局かつての社会主義がもっていた一つの理念なり、社会制

度なり保証していく質を様々なものの均等性を保証してきた社会が崩壊して、どうやっていいか分からないかなり

混迷の時期にあって、教育そのものがかなり揺さぶられているという感じがするんでね、だからそういうものって、と

かく数量化されますよね、質的なものではなくてだからこそ今日、質ってことを強調されたと思うんですけれども、そ

ういったなかで、わたしはまあ海外に何回か行ってみてですね、そこらあたりの OECD の教材と言いますか、あの、

量で計ろう、っていう必ずランキングが出ますよね、そういった本当のリテラシーに成り得るのか、統一基準で計ら

れる能力っていうのが果たして人間の能力全てでは全くない訳ですから、っていうことを問い返すことが、これから

質の保証に繋がっていくと、わたしは思います。その点は全く同感です。ありがとうございました。

講師:あの、さっき、潮木先生と飲み屋で戦っていた話しをしましたけど、この間結構仲良く飲んだのですけど、ヨーロッ

パの方であの最初に EU に統合のなかで、年限を共通にしようという話しが動いていて、その後に単位の互換をや

ろうって話しになって、そこまで進んできて、今度はあの、内容のすり合わせをやろうって話しになって、ドイツの大

学学長会議かなんかで大議論になって、こんなもん全然だめだ、っていう話しになったとかって言っていましたわ。

つまりあの、標準化できる部分っていうのはかなり外側の部分なのです。それをなんか、測定論者もコアカリキュラ

ム論者もなんかなり、あまりにシンプルに標準化を図ろうとするから、国際的にも国内的にももう少し質をそれぞれ

のところで最適な質っていうところをね、きちんと考えた仕組みを作らないと、研究も教育もだめになると思います。

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参加者C(多摩):複合学部の場合について広田先生が複合的な教育課程については当該過程を構成する基となる分

野の参照基準を柔軟に組み合わせる、と書いてありまけど、この柔軟にっていう意味は必要なところだけ適当に持

ってきて組み合わせて、という意味なのでしょうか?

講師:それでいいのです。つまりあの、どういう学問的なルーツの上に、このカリキュラムが成り立っているか、っていうこと

がちゃんと了解されていればいい、っていうことですよね。ものさしを、そのまま評価にあててなんとか、というよりは、

ちゃんとした根拠というか、考えの上でね、学問的な足場を持ったカリキュラムを提供しているということが証明出来

ればいい、というふうに考えます。だから出来るだけ抽象的な言い回しがあるのは、自由自在に解釈してもらうため

なのですね。

司会:はい、ほかに先生方いかがでしょうか?多摩の先生方いかがですか?

参加者D(千代田):さっき潮木先生とのお話し聞かせていただきましたけれども、たとえばこの、グローバル化、ユニバー

サル化、社会のまなざしと先生挙げられましたけれども、グローバル化に対応するためのこういった動きというのは

日本以外の国ではどういう風に進んでいるのかいないのか、これはいかがでしょう?

講師:えっとまあ、だからイギリスはいろんなことやっていますから、QA の枠組みだけじゃなくて、いろんなことを考えてい

る。それから、測定の話しでいうとオーストラリアとかですね、アメリカなんかではかなりいろんな試みはやられてい

ますよ。でも、全国一律にととかっていうかたちじゃなくて、個別の大学とか大学連合とかですね、或いは個別の職

業団体がテストを開発とかね。まあ、そういう個別てきなものがいろいろなされている、というのがアメリカの動きだと

思いますね。あとだから、ヨーロッパのほうは、さっきも言いましたように、本当にバラバラな仕組みで動いてきたや

つを、少しずつそろえられるところをそろえようというので、年限とか単位互換とかね、そこらへんまできた、っていう

話しになっていますから、質保障を徹底してやらないといけない、って言ってどんどんそっちの方向いくか、ってい

うのはぼくとしてはあんまり良くわからないところですね。ちょっと国際的に目に見える仕組みは作られるかもしれな

いけど、いまはまだいろんな所でいろんな試みがなされている段階だと思います。

学長:大場ですが聞きたいことがあります。資料で、コピーしていただいたものの3ページに、散文家会報告案から、委員

会報告書へ、っていうことでここはちょっと先生のお話しでお触れいただけてなかったと思います。ですが、まだ、こ

の検討の最中にこの委員会報告書に収れんされていく中のキーワードに共同する知性を慣用するという言葉が出

てまいりますが、この辺をもう少し伺っておきたいと思います。よろしくお願いいたします。

講師:その、まとめるものは何かというと、大学が社会にとってどういうその、指名を持つのかというふうなことがあると思うの

ですね。質を保証するっていうのは、単になんか職業に役立つこんな便利なものを伝えました、という話しではなく

て、きっと21世紀のいろんな社会、現代社会の抱える問題に向けて、必要な人材を作っていくというですね。そう

いう部分が、大学の使命としてあるはずだと、そこで、今日はあまり言いませんでしたけども、教養教育、共通教育

を考える時の、ポイントのひとつはそこで、単に専門が使えるというわけではなくて、専門を使ってどういう風に社会

と関われるか、ということでね、大学教育が考えさせるということが大事なことだ、とかね。そういう上で、最後は分野

を越えたですね、いろんな共同のあり方ですね、が、できるようなですね。そして、我々が、直面している大きな課

題ですね、みんなで取り組んでいけるような大学を作りましょう、っていうのが報告書の最後に収れんするところに

なっているんで、それは報告書を見ていただければいいと思います。単にあのなんか、誤用学的にですね質保障

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をやりましょう、ではなくて本当にあの、我々が生きている世界にとって意味のある質をみんなで追求しましょうよっ

ていうふうな姿勢で、報告書は作っています。

学長:ありがとうございました。

司会:ほかに何かございますでしょうか?多摩の先生方いかがでしょうか?

参加者E(多摩):広田先生ありがとうございました。今、本学のほうでも、各学部で、どのような学生を育てるか、という課

題をいまちょうど検討しているところでございまして、いくつかの示唆をいただいたのかな、と思っております。とても

基本的なご質問させていただきたいと思っております。また、先ほど大場先生からのご質問にもしかしたら、広田先

生がお答えになられたこと自体がもしかしたらこの解答になるかもしれない、と感じながらのあえての質問なんです

けれども、三つの分科会の設置ということで今回、質の保証の枠組みの検討分科会のお話をしていただいたかと

いうふうに思っております。それに合わせたかたちで、レジメのほうの5ページ等を見ますと、教育の質の保証を図

る努力をしてもということでの、大学と職業との接続検討文化会の課題をこう、ちょっと触れていただいたというふう

に感じております。で、どのように表現をしていいのかというのが分からないのですが、その専門学校との違い大学

の質の違い、教育の違いということのご指摘のなかで、少し、現実問題として揶揄にするようなかたちで、資格をふ

やしていくような大学カリキュラムの改変があるというような、ご指摘も多少頂戴したかと思うのですけれども、質問さ

せていただきたいことはですね、大学の質の保証を図る努力の部分と職業との接続と言うのでしょうか、職業的意

義の向上の重要性とのリンクに関して、少し示唆をいただければと思います。特に本学部のほうが国家資格を目指

すような学部でございまして、そことの、もしかしたらご批判いただくような方向性にカリキュラム編成がいっているの

ではないかと、で今後の我々がどの方向を目指していけばいいのかということでのご示唆をいただきたいと思って

おります。お願い致します。

講師:まあ職業に有用であってはけしからん、ということでは全然なくてね、だから教養のことをきちんと考えよう、職業との

つながりもきちんと考えよう、というふうな、それが第二部と第三部の報告書の枠組みなんですね。だから、職業と

のつながりがちゃんと出来ているところはむしろ教養を、じゃあどのように保証するか、というふうなことを考えていた

だければいいし、教養を売り物のポイントにしているところだと、職業との関係はじゃあどうなるんだろう、と考えても

らえれば、きっとバランスは取れるんだと思うんですね。あの、三部の報告書はですね、一つは職業的なレリバンス、

有用性をどういうふうに考えるか、というふうなことも求められますよ、ということはかなり強調しているんですね。で、

あの先ほどの見本のところにもありましたように、ちょっと見本を見ていただくとそれが反映しているんですが、5ペ

ージのところを見ていただくとですね、6ページを見ていただいたほうがいいですかね、まあ基本的な能力というふ

うなものを分野の教育を通して身につく固有の能力を、どう考えるかということで、6ページの四角の中にいろいろ

書いてあると思います。で、たとえばその、真ん中らへんですね、職業生活の局面もあれば、公共的な課題に関わ

る市民の生活の局面もあり、とかですね。そこから、もうちょっと下へいくと、3の1のところを見ましょうかね、分野に

固有の知識や理解の活用能力はそのまま特定の職業にとっての専門能力となる場合、とかですね。それからその、

緩やかなかたちで職業上の有用性を持つ場合、それから3の3だと、その分野に固有の知識や理解に依存しない

能力、これは中身とは直接関係ないけども、一般的汎用的に服用性の上の有用性を持つ場合、そういうグレードを

つけてですね、有用性の問題を考えようというふうにしています。だから、カリキュラムが直接特定の職業に役に立

つ、なんやら学を学ぶことが、直接に職業にそのまま役に立つという側面もあるし、なんやら学であろうが、ぜんぜ

ん違う学であろうが、結構やる作業は一緒なわけですね。まあ、みなさんもご存じだろうと思いますけれどもね。い

ろんな情報を集めてきて、それを批判的に吟味して、組み合わせて発信するとかね。なんやら学の中身とは違うと

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ころで共通に職業的に役に立つというふうな部分もあるわけなんですね。だから、職業との関連をどういうものとし

て、位置づけるかは、きっとカリキュラムを作るときに意識して下さいと、その時に有用性が確保できる分野もあれば、

有用性ではないところで職業とのつながりが出来るんだ、っていうような分野もある、哲学はどうですか、っていった

って、哲学は職業上有用なんだと思います。だから、それを言語化しようというふうなことになるね。そういうふうなこ

と。だから、もう一つ言うと職業の報告書で怒りをもって書いてるのは就活なんとかしろ、というあの企業が青田刈り

で、どんどん早くなるから、それなんとかしてくれ、っていう話しは、それは報告書に書いてありますけれど、それは

あんまり本質的な事は言えないですけど。まあ、そんな感じです。

参加者E(多摩):はい、ありがとうございました。先生がさきほどおっしゃっていました、企業のほうがバイタリティがどうの

こうの、っていう話しをすこしされていたかと思うんですけれども、わたしもよく、現在、就職先の企業のほうからよく

言われることが、人間関係能力をなんとか身につけさせろと、大学の中で、身に付けてから出せ、っておっしゃるん

ですけれども、今おっしゃっていただいた内容を踏まえて、少しもしかしたら我々の場合でしたら、教養科目等、そ

の教養のなかでの人間関係性である基本的な部分から取り組みなんかも、もしかしたら、というふうにご指定いただ

いたかと思います。本当にありがとうございました。

司会:はい、それではまだご質問もあるかと思いますけれども、そろそろお時間が参りましたので、最後に、家政学部 FD

委員長の酒井先生から、閉会のご挨拶をお願い致します。

酒井家政学部 FD 委員長:どうも、あの、最初にわたし FD 委員長では今年はないので、わたしがお話していいのか分か

らないんですが、今日は本当に、先生ありがとうございました。この暑いなか市ヶ谷からお歩きいただきまして。本

当にお忙しい先生にも関わらず、こんなところでこうやっていろんなお仕事をお引き受けいただきまして、誠にあり

がたいと思っていますが、どうぞ、お体をお大事にと言いますか、思いますが。いや、ここからが感想でして、いや

宿題聞かなきゃ良かったかなと思いまして、要するに各学科、各大学でしっかり考えろ、っていうことを、その、日本

学術会議の看板しょって言いに来た、という感じでお伺いしまして、いやあ、ここに学長がいらっしゃるので、大変

ですね、って思いますけれども、FD の活動としてやはりこちらも考えなければいけないんだろうなと。で、今、ちょっ

とぐちゃぐちゃ言いましたけれども、この話は結構難しい話しで、学科、学部、大学というところで、それぞれのレベ

ルで、いろんな方向を向いているところでそれを話さなければいけない、っていうことをたぶんおっしゃっている訳

ですよね。で、もう一つはある種自己評価をしなければいけない、外部評価はないんだよ、自己評価で頑張りなさ

い、自己責任の論理というところで、たぶんお考えになられていて、いや、そういうんですか、っていう感じで聞いて

いたけども、それからもう一つはこれ、中教審からの諮問で、来ているはなしで、最終的には中教審にだしていく、

っていう話しで、是非頑張って下さい、と言いますか、この線で頑張って欲しいなと思っております。本当に今日は

ありがとうございました。

司会:それでは、これを持ちまして、本日の講演を全て終了させていただきます。広田先生にもう一度大きな拍手をお願

い致します。広田先生ありがとうございました。

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ファカルティ・ディベロップメント講演会

アンケート集計結果

< 実施日 > 平成22年7月20日(火)

< 時 間 > 16:30~18:00

< 場 所 > 千代田キャンパス 大学校舎A棟1階155講義室

(多摩キャンパス 人間関係学部棟1階7114講義室で映像・音声配信による視聴)

< テーマ > 大学教育の分野別質保証について ―日本学術会議の検討から―

< 講 師 > 日本学術会議「質保証枠組み検討分科会」幹事 日本大学教授 広田 照幸氏

◎参加人数・アンケート回収数等

キャンパス 講演会参加者数 アンケート提出者数(回収率)

千代田校 54 人 40 人(74%)

多 摩 校 11 人 9 人(82%)

合 計 65 人 49 人(75%)

以下、提出されたアンケートの集計結果(アンケート回収総数49人分を対象)

問1 この講演会の内容・運営等についてのご意見をお聞かせください。

【講師は】

41%

33%

43%

43%

45%

43%

16%

22%

14%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

全体

多摩

千代田

1とてもよかった 2よかった      3普通

4あまりよくなかった 未回答

選択肢 千代田 多摩 全体

1とてもよかった 17 (43%) 3 (33%) 20 (41%)

2よかった 17 (43%) 4 (45%) 21 (43%)

3普通 6 (14%) 2 (22%) 8 (16%)

4あまりよくなかった 0 (0%) 0 (0%) 0 (0%)

未回答 0 (0%) 0 (0%) 0 (0%)

Page 22: H22全学FD活動報告書 原稿 20110615東京大学の教育学研究科の教授を経まして、2006年から現在の現職でいらっしゃるということであります。なお、

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【内容は】①期待どおりでしたか 選択肢 千代田 多摩 全体

1期待していた以上だった 8 (20%) 1 (11%) 9 (18%)

2期待どおりだった 25 (62%) 7 (78%) 32 (66%)

3期待していたほどではなかった 4 (10%) 1 (11%) 5 (10%)

4期待はずれだった 0 (0%) 0 (0%) 0 (0%)

未回答 3 (8%) 0 (0%) 3 (6%)

18%

20%

66%

78%

62%

10%

11%

10%

6%

8%

11%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

全体

多摩

千代田

1期待していた以上だった  2期待どおりだった

3期待していたほどではなかった 4期待はずれだった

未回答

意見等

• FDとは若干問題の立て方が違うように思った

②今後のFD活動の参考になりましたか

選択肢 千代田 多摩 全体

1非常に参考になった 8 (20%) 1 (11%) 9 (18%)

2参考になった 25 (62%) 7 (78%) 32 (66%)

3あまり参考にならなかっ

た 3 (8%) 0 (0%) 3 (6%)

4参考にならなかった 0 (0%) 0 (0%) 0 (0%)

未回答 4 (10%) 1 (11%) 5 (10%)

18%

11%

20%

66%

78%

62%

6%

8%

10%

11%

10%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

全体

多摩

千代田

1非常に参考になった 2参考になった 3あまり参考にならなかった

4参考にならなかった 未回答

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【開催時期は】

選択肢 千代田 多摩 全体

1よい 34 (85%) 6 (67%) 40 (82%)

2別の時期がよい 2 (5%) 2 (22%) 4 (8%)

未回答 4 (10%) 1 (11%) 5 (10%)

82%

67%

85%

8%

22%

5%

10%

11%

10%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

全体

多摩

千代田

1よい 2別の時期がよい 未回答

意見等

• 5~6月頃、学期末の忙しい時期なので、もう少し前の方が良い。

• 4 月頃

• 6 月頃

【時間は】 選択肢 千代田 多摩 全体

1ちょうどよい 36 (90%) 7 (78%) 43 (88%)

2短すぎる 1 (3%) 1 (11%) 2 (4%)

3長すぎる 0 (0%) 0 (0%) 0 (0%)

未回答 3 (7%) 1 (11%) 4 (8%)

88%

78%

90%

4%

11%

3%

8%

11%

7%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

全体

多摩

千代田

1ちょうどよい 2短すぎる 3長すぎる 未回答

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【会場は】 選択肢 千代田 多摩 全体

1よい 38 (95%) 7 (78%) 45 (92%)

2別の会場がよい 0 (0%) 1 (11%) 1 (2%)

未回答 2 (5%) 1 (11%) 3 (6%)

92%

78%

95%

2% 6%

11%

5%

11%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

全体

多摩

千代田

1よい 2別の会場がよい 未回答

意見等 • 空席が目立つから(多摩)

問2 今後のFD講演会で希望されるテーマ・内容をお書きください。

• FDの実質化(具体化)に関連する講演 (3)

• 入口から出口まで、一貫した理念でカリキュラムをどう編成していくか。大学での学問と実社会とのつながりについて

(2)

• 教養・教育の在り方について、学生の基本的学力の問題への対応

• 買取市場時代の就職活動が健全であるためには

• 大学内の教員研修の内容とその効果

• 大学横断的なFD団体について

• 具体的授業改善例を紹介してくれるような講師

• 校舎・キャンパスのあり方と学びの関係(これも大切なFD問題)

問3 今回の講演会で、お気づきの点、記憶に残った点、ご意見などございましたらお書きください。

• 学科内で何を話さなければいけないかということがわかった。前向きにとりくんでいければと思った。

• 講演内容が明確で非常にわかりやすかった。学科のカリキュラム変更の時に今回のお話を是非生かしていきたい。

• どのような学生を育てたいのか、現状は抽象的で広報的な意味づけであるが、直接教育にかかわる教員たちが、話し

合い意識化することの必要性を強く感じた。今後このことを実現させたい。

• ①各学部で学問的根拠をもったカリキュラムを編成することの重要性 ②質の保証をどういう基準で評価していくのか、

考えさせられた。

• 自分の所属している専攻はカリキュラムの方針について専任教員の間でしっかりと話しあっていると思った。広田先生

の話をうかがってカリキュラムについて少し自信が持てた。

• 「目的・体系性を持ってカリキュラムが提供される」という広田氏の言葉は当然でありながら、本学でも再考すべき時期

に来ていると考える。又、4年間でどういう学生を育てようとするかは、考えるべき課題であろう。

• トップダウンでないボトムアップのシステムづくりとして大変勇気づけられる内容であった。自らが大学をつくりあげてい

く必要性を痛感した。

• 大学教育の自覚化、文字化の必要性を強く感じた。

• 今、何故このテーマについて議論がすすめられてきているのか、良く理解できた。どうにかしなければならないことは、

理解できますが、その方法論を導き出すことは、とても難題であると感じた。今後の考えていくべき方向性は理解でき

た。

• 社会の中で機能する、専門教育、教養教育の重要性を痛感した。

• 職業教育や、人間教育などに入り求めていたところを説明して頂き、納得する部分が多かった。

• 第2回目の第三評価には、「分野別評価」が間に合わないことを知ることが出来たこと。

• 学術会議の中で、外形的な規制のような方向性に意識的に抵抗する人が活動していることに力づけられた。とくに教

養教育重視の視点はすばらしかった。

• 学問分野を超えた大学の質保証という難題に対して挑んでおられる広田先生に敬意を表します。

• 質保証の問題について最前線の話しを聞くことができてとても参考に。質疑応答もたいへん活発で問題を自分のなか

で深化させることに役に立った。

Page 25: H22全学FD活動報告書 原稿 20110615東京大学の教育学研究科の教授を経まして、2006年から現在の現職でいらっしゃるということであります。なお、

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• 学術会議で行われている内容について理解が深まった。大人心でカリキュラムについて議論されている方向性が、広

田先生のご説明と符合している点があり示唆を得たように思う。

• 質保証が各大学でどこまで達成できるか浸透するかが問題である

• 教員の出席率の低さ(特に多摩)は何を示しているのでしょうか?

• 内容的にはかなり高度なレベルであり職員には難しい。

問4 最後に、ご自身の所属についてお聞かせください。

【所属】 選択肢 千代田 多摩 全体

1家政学部 9 (22%) 0 (0%) 9 (18%)

2文学部 7 (18%) 0 (0%) 7 (14%)

3社会情報学部 1 (3%) 2 (22%) 3 (6%)

4人間関係学部 2 (5%) 4 (45%) 6 (13%)

5比較文化学部 0 (0%) 0 (0%) 0 (0%)

6短期大学部 9 (22%) 0 (0%) 9 (18%)

7事務職員 10 (25%) 3 (33%) 13 (27%)

未回答 2 (5%) 0 (0%) 2 (4%)

1家政学部 18%

2文学部 14%

3社会情報学部 6%4人間関係学部13%

6短期大学部 18%

7事務職員 27%

未回答 4%

以下、多摩キャンパスで映像による視聴をされた先生方に伺います。

問5 映像や音声等につきましていかがでしたでしょうか。

【画像】 選択肢 多摩

1見やすかった 6 (67%)

2見にくかった 1 (11%)

未回答 2 (22%)

意見等

• 画面が小さい

• 特に問題ありません。ノイズも無くよかった。

【音声】 選択肢 多摩

1聞きやすかった 7 (100%)

2聞きにくかった 0 (0%)

未回答 0 (0%)