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リチウムイオン伝導性ナノファイバーからなる全固体型二次電池用電解質の開発 リチウムイオン伝導性と二次電池特性に与えるリチウムイオン伝導性ナノファイバー形態の影響 (首都大院 都市環境) 渡辺司、田中学、◯川上浩良 (神奈川大) 望月康正、松本太 3Pc077[042-677-1111 () 4972, [email protected]] 首都大学ではこれまで、プロトン伝導性を付与した機能性高分子ナノファイバーからなるナノファイバーフ レームワーク(NfF)を用いた燃料電池用複合電解質膜が、NfF の有する優れたプロトン伝導性、力学強度によ り、高い発電特性、膜の超薄膜化、低コスト化を実現できることを報告してきました。我々は、この NfF 基本骨格とした新しい電解質膜の作製法を用いて、現在は様々な電子デバイスへの応用を目指しています。 リチウムイオン電池をはじめとする二次電池は、既に我々の生活において幅広く利用されています。しかし、 現在のリチウムイオン電池の電解質材料には可燃性有機電解液が広く用いられているため、液漏れによる発 火・爆発事故が起こるなど、安全性への問題が指摘されています(表)。その解決案として、電解質液体の固 体化、すなわち固体高分子電解質(SPE)の開発が望まれています。全ての電池部材を固体材料のみで形成した 全固体型二次電池は、①液体を含まないため安全性の著しい向上、②強固なパッキング加工が不要となり軽量 化、③電池のスタック(重ね合わせ)により高電圧化、高寿命化の達成が期待されるため、次世代型二次電池と して注目されています。しかし、既存の SPE は、SPE 内のイオン伝導性、電極—SPE 間のスムーズなイオン 輸送、さらには熱的・化学的安定性などに解決すべき課題が残されています。 そこで我々は、新たにナノファイバー形成能とリチウムイオン伝導性を有する SPE を設計・合成し、その ナノファイバー化に成功しました。また得られたナノファイバーが、従来の膜形態と比較し高リチウムイオン 伝導性を有することに加え、優れた力学強度、熱的・化学的安定性、薄膜加工性など、SPE で求められる性 能をもつことを、今回初めて実証することに成功しました(図1)。これは、ナノファイバーが元来有する優 れた強度に加え、ファイバー形成過程で結晶化が抑制されスムーズなイオン輸送パスが形成したことに起因す ると考えられます。 " " × × ! ! × # # ! NfF # ! " " " +)'*&(,%

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Page 1: H27 高分子討論会 広報 改訂版0821main.spsj.or.jp/koho/64t/64t_9.pdf>図1 >高リチウムイオン輸送能を有するSPEナノファイバーおよびNfF複合膜の開発

リチウムイオン伝導性ナノファイバーからなる全固体型二次電池用電解質の開発  

 

リチウムイオン伝導性と二次電池特性に与えるリチウムイオン伝導性ナノファイバー形態の影響

(首都大院 都市環境) 渡辺司、田中学、◯川上浩良 (神奈川大) 望月康正、松本太

[3Pc077]

[042-677-1111 (内) 4972, [email protected]]

首都大学ではこれまで、プロトン伝導性を付与した機能性高分子ナノファイバーからなるナノファイバーフ

レームワーク(NfF)を用いた燃料電池用複合電解質膜が、NfFの有する優れたプロトン伝導性、力学強度によ

り、高い発電特性、膜の超薄膜化、低コスト化を実現できることを報告してきました。我々は、この NfFを

基本骨格とした新しい電解質膜の作製法を用いて、現在は様々な電子デバイスへの応用を目指しています。 リチウムイオン電池をはじめとする二次電池は、既に我々の生活において幅広く利用されています。しかし、

現在のリチウムイオン電池の電解質材料には可燃性有機電解液が広く用いられているため、液漏れによる発

火・爆発事故が起こるなど、安全性への問題が指摘されています(表)。その解決案として、電解質液体の固

体化、すなわち固体高分子電解質(SPE)の開発が望まれています。全ての電池部材を固体材料のみで形成した

全固体型二次電池は、①液体を含まないため安全性の著しい向上、②強固なパッキング加工が不要となり軽量

化、③電池のスタック(重ね合わせ)により高電圧化、高寿命化の達成が期待されるため、次世代型二次電池と

して注目されています。しかし、既存の SPE は、SPE 内のイオン伝導性、電極—SPE 間のスムーズなイオン

輸送、さらには熱的・化学的安定性などに解決すべき課題が残されています。

                 

 

 

そこで我々は、新たにナノファイバー形成能とリチウムイオン伝導性を有する SPE を設計・合成し、その

ナノファイバー化に成功しました。また得られたナノファイバーが、従来の膜形態と比較し高リチウムイオン

伝導性を有することに加え、優れた力学強度、熱的・化学的安定性、薄膜加工性など、SPE で求められる性

能をもつことを、今回初めて実証することに成功しました(図1)。これは、ナノファイバーが元来有する優

れた強度に加え、ファイバー形成過程で結晶化が抑制されスムーズなイオン輸送パスが形成したことに起因す

ると考えられます。  

 

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  図1   高リチウムイオン輸送能を有する SPE ナノファイバーおよび NfF 複合膜の開発  

さらに、ナノファイバー同士の空隙にマトリクスとなる高分子を充填した NfF複合膜は(図1)、低温度域

において起こる高分子の結晶化を抑制し、これはグラフト PEO鎖長の増大により、さらに顕著に観察されま

した(図2)。これより NfFは、それ自身の優れた特性に加え、マトリクス材料にも影響を与えることが明ら

かとなりました。NfF複合膜はナノファイバー材料やマトリクス材料を自由に選定できるため、使用目的に応

じた電池材料の設計が行い易く、これまでにない新しい二次電池特性を実現できる可能性があります。

 

 

 

 

 

 

図2   NfF 複合膜のイオン伝導度測定結果とグラフト鎖長と伝導性の関係性  

〈適用分野〉  

リチウムイオン伝導性高分子ナノファイバーを利用した SPE ナノファイバーは、その優れたイオン伝導性

に加え、NfF複合膜化により加工性、軽量性、高強度化、薄膜化が可能となり、全固体型リチウムイオン電池、

リチウム-空気電池、バイポーラ電池、電気自動車、再生エネルギーの蓄電池、さらには折り曲げ可能なフレ

キシブル電池やウェアラブル機器への電源などへの応用が期待されます。

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