haccp 導入が義務化されます! - 岩手県...haccp...
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我が国の食を取り巻く環境の変化や国際化などに対応して食品の安全を確保するため、平成
30 年 6 月 13 日、食品衛生法のほか、と畜場法、食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関す
る法律を含む食品衛生法等の一部を改正する法律が公布されました。
主な改正ポイントは 7 つですが、これらのうち、HACCP に沿った衛生管理の制度化は、今回の
改正の目玉で、これにより、原則としてすべての食品等事業者、と畜業者及び食鳥処理業者は一
般衛生管理に加え、HACCP に沿った衛生管理の実施が義務付けられることになりました。
施行は公布から 2年以内で、さらに 1年の猶予期間が設けられることになっています。
HACCP 導入の義務化により、と畜場・食鳥処理場の衛生管理レベルが一段と向上し、食肉・食
鳥肉による食中毒等の健康危害が減少することが期待されます。
と畜場法、食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律を所管する食肉衛生検査所と
しても、HACCP の制度化に適切に対応し、より安全で安心な食肉の確保に努めていきたいと考え
ています。
岩手県食肉衛生検査所
TEL:019-672-4760
FAX:019-672-4717
〒028-3311 岩手県紫波町
犬渕字南谷地 57-20
平成30年度 第1号 平成30年8月発行
と畜場・食鳥処理場への HACCP導入が義務化されます!
去る 7 月 6 日、食鳥処理場工場長会議を当所会議室で開催しました。本会議には県内の各
食鳥処理場の工場長や、品質管理担当者等、計 18名が参加しました。
今年度の議題は以下のとおりです。
(1)食鳥肉安全性確保検査等について
(2)食鳥肉の安全性確保をめぐる最近の話題
①食鳥処理場等への HACCP導入の義務化について
②カンピロバクターのリスクプロファイル(改訂版)の概要について
③カンピロバクター食中毒事案に対する告発について
(3)高病原性鳥インフルエンザ対応について
大きなトピックスとしては、食品衛生法等の一部を改正する法律が改正(平成 30 年 6 月 13 日
公布)されたことにより、大規模食鳥処理場への HACCP 導入が義務化されたことが挙げられます。
県内の食鳥処理場の多くは HACCP 導入済ですが、HACCP は導入してからが始まりということを忘
れずに衛生管理を行っていただきたいと思います。また、未導入の食鳥処理場については、できる
だけ早期に導入することができるよう、当所とし
ても支援に努めてまいりたいと思います。
高病原性鳥インフルエンザ対応については、
宮崎県での発生事例を参考に、大規模食鳥処
理場におけるリスク管理について、発生した場
合を想定して日頃から準備をしておくことの重要
性について確認し合いました。
去る 6 月 12 日に、岩手県立大学盛岡短期大学部の生活科学科食物栄養学専攻の 2 年次
24 名が、当所の施設見学に訪れました。検査指導課長が講義を担当し、当所業務の説明を行い
ました。講義の主な内容は、①と畜場で処理される家畜(牛、馬、豚、めん羊、山羊)が病気にか
かっていないかを獣医師(と畜検査員)が 1 頭ごとに検査していること、②食鳥処理場で処理され
る食鳥(ブロイラー等)についても 1 羽ごとに検査をしていること、③食肉に残留してはならない薬剤
が含まれていないか検査をしていること、④食肉
が食中毒菌により汚染されていないか検査をして
いること、⑤と畜場や食鳥処理場の衛生管理につ
いて指導を行っていること等、食肉の安全安心を
確保するための各種取組について学んでもらいま
した。その後は、当所の精密検査室(微生物検査
室、理化学検査室、病理検査室)に足を運び、精
密検査の概要についても学んでもらいました。栄
養士を目指す学生さん達だけあって、食肉に対す
る関心も高いようで、皆さん熱心に耳を傾けていま
した。
岩手県立大学盛岡短期大学部の学生さんが施設見学に訪れました
食鳥処理場工場長会議を開催しました
去る 6 月 11 日から 7 月 6 日までの 4 週
間、埼玉県和光市の保健医療科学院で「食
肉衛生検査研修」を受講してきました。この
研修は、「食肉の安全確保及びその処理加
工の現場における衛生管理の向上を図るた
め、最新の専門的知識・技術及び行政遂行・
問題解決能力を習得すること」を目的として
おり、全国の食肉衛生検査所等から 42 名が
参加しました。
この研修の到達目標の一つに「食肉処理にお
ける HACCP を含めた衛生管理方法について、
行政の立場から検証・評価が実施できる。」と
いう項目があります。折しも、研修期間中の 6 月 13 日に改正食品衛生法が公布され、国際基準
である HACCP が制度化されたことから、“これから、所管する施設で HACCP 導入支援を行い、検
証していかなければならない”という意識で受講する研修生が多かったように思います。
研修は、講義、演習及び課題研究等、様々な形で行われましたが、第 3 週目はその殆どを
HACCP 演習に費やしました。このグループ演習は、現地確認と危害分析を行い、「重要なハザード
の管理」「CCP 設定」「HACCP プラン&SSOP」「一般衛生管理」「妥当性確認」の項目毎に評価を
行い、これらを踏まえ“施設の問題点と事業者に対する指導方法はどうすべきか”という観点で総
合評価を行うというものです。
項目毎の評価内容は概ね同じでも、総合評価については各グループの特徴がみられ、検査所
が主導し指導する方針のもの、施設に考えさせ判断させる方針のもの等、様々な捉え方があり、興
味深く発表を聞きました。
なお、今回参加した自治体の所管する施設が民間認証を取得していた割合は約 3 分の 1 でし
たが、研修生の中には、施設だけでなく、民間認証取得を主導する施設の外部コンサルタントとの
関係性を含め HACCP導入に苦労していると話す人もいました。
他の研修生との情報交換は非常に有意義でしたが、特にも、“と体外皮に検印インクをつけて、
剥皮時にどこが汚染するのか、施設と一緒に取り組んでみた”、“衛生講習会熱心にやったら、作
業員に知識はついていったが、最近は‘枝肉だと規格基準がないんでしょ’と反論される・・・”等々、
ちょっとした話題のやり取りが、予想以上に心理的効果があるようで、職場に戻ったらできることから
頑張ろう、という気持ちで研修を終えることができました。
最後になりますが、貴重な研修の機会を与えていただいたこと、この場を借りて関係者の皆様に
御礼申し上げます。(上席獣医師 奥村亮子)
国立保健医療科学院の食肉衛生検査研修に参加して
食肉衛生検査所では、食肉に抗生物質や動物用医薬品
などの有害な物質が残留していないか、精密分析機器であ
る「高速液体クロマトグラフ(HPLC)」を用いた計画的なモニタ
リング検査により確認しています。食肉には生体由来の色々
な成分が含まれているので、検査対象の物質に応じて抽出・
ろ過・濃縮など様々な処理を行い、最適な条件を設定して
機器分析を行います。
このたび当所で長年使用していた HPLC が最新機種に更
新され、性能が格段に向上し、今年度より本格稼働となりま
した。ただし高感度になるほど生体由来の微量成分の影響も大きくなるため、
より高度な前処理や機器調整が必要になります。
どんなに高性能な機器でも、何をどんな条件で分析するか設定し、結果を
どう解釈するのかは人間の判断です。機器の適正な運用のために、担当者一
同、知識と技術の習得に努めていきます。
(理化学検査担当)
編集後記
▼今年の夏は全国的に観測史上最高気温を次々塗り替える記
録的な暑さに見舞われる中、検査所だよりの第1号を無事発
行することができました。まだしばらくは残暑が尾を引きそ
うで、熱中症対策と体調管理はもはや合言葉のようになって
います。
▼健康第一といえば、最近話題の「はたらく細胞」というア
ニメがあります。細胞を完全擬人化し、「細菌・ウイルス感
染」「食中毒」「スギ花粉アレルギー」など次々ふりかかる
事態に、免疫細胞はじめ数十兆個もの細胞が、世界(人体)
を維持するためそれぞれの職務に邁進するという、笑いつつ
も色々考えさせられる内容です。
▼我々検査所も日々行われる食肉の生産・流通活動に対し、
安全性の担保を目的に様々な活動をしております。一般畜や
病畜のと畜検査、細菌や病理などの精密検査等の先にあるの
は、岩手の食肉を購入
していただいた方の安
全安心であり、これか
ら先も続く不変の目的
です。
▼さて前述のアニメで
は新人赤血球(赤血球
になりたてという設定)
が登場します。当検査
所にも新人の赤血球・
・・じゃなくて獣医師
が春より配属になって
おります。
アニメの赤血球同様に
逞しく育ってほしいと
思う今日この頃です。
(武田)
残留医薬品等検査の分析機器(HPLC)が新しくなりました
当所の新人、宮田獣医師。「盛岡さんさ踊り」8 月 2 日、
県職員チームにて。(撮影:長岡上席獣医師)