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HeartModelA.I.
Rob Schneider, PhD
Ultrasound
Health Systems
3D容積を ルーチン検査に
はじめに心機能の評価には、1つまたは複数のイメージングモダリティを使用した方法がいくつかあります。超音波検査は、動きの速い心内構造物を非侵襲的にリアルタイムで評価できる、コスト効率と精度に優れた検査法です。一般に、左室や左房の容積や心拍出量などの計測には2次元心エコー 図画像(2D画像)が用いられてきましたが、これらの計測は2次元(2D)の画像に描出されているものだけを基にするため、3次元(3D)の形状を幾何学的に仮定する必要がありました。このような仮定は、対象となる構造が実際にどのような立体構造であるか、またその立体構造に対して2D画像が適切に描出されているかどうかによって、計測の精度に大きく影響する可能性がありました。この問題を解決するために、3Dエコーから心内腔容積を計測することも提案されてきましたが、3D画像の取り込みと3D計測は、時間がかかることや高度な技術を要することが障壁となって、ルーチン検査で広く受け入れられるには至っていません。フィリップスのHeartModelA.I.アプリケーションは、このような問題を解決するために開発された、効率的で精度の高い手法であり、3Dによる左室容積、左室駆出率、左房容積の 自動計測に対応しています。
HeartModelA.I.アプリケーションは、ナレッジベースのセグメンテーションアルゴリズムであり、一般的な心臓構造のレイアウト、取り込んだ3D画像内における心臓の位置のバリエーション、心臓の形状のバリエーション、超音波によって心臓がどう描出されるか、に関する予備知識(ナレッジベース)を備えています。このナレッジベースには、さまざまな心臓の形状 /大きさや画質が異なる約 1,000例の3Dエコー画像を用いたトレーニングが実施され、データベース化されています。HeartModelA.I.アプリケーションのモデルが、さまざまな臨床症例に広く適応可能であるのは、この徹底したトレーニングを経ているからです。ただし、HeartModelA.I.アプリケーションは、先天性心疾患に見られるような大きな構造異常や非常に特殊な形状の心臓(大型の動脈瘤を呈している場合など)に適応できません。このため、特殊な形状にも対応できるよう、柔軟に修正が可能なインターフェースが用意されています。
図1 HeartModelA.I. アプリケーションで用いられる心臓モデルこのモデルには左室心外膜、左室心内膜(血液組織側の境界と心筋緻密層側の境界)、左房、右室心内膜、右室心外膜、右房、およびそれらに繋がる血管構造(動静脈)が含まれる。
実際のルーチン検査では、左室の心内膜の境界がユーザーの主観に左右され、心内膜の境界の定義(位置)がユーザーによって異なることも多々あります。こうしたユーザーによるばらつきに対応するために、HeartModelA.I.は2つの心内膜の境界を自動で検出するよう設計されています。2つの境界は、より確実に認識できる心筋組織の内側(血液組織の界面)と外側(心筋緻密層)の範囲を自動で検出します。心筋組織の内側と外側の範囲(図2ではそれぞれ緑と赤の境界で示す)をセグメント化する際に、目的に合わせてどちらか一方の心内膜境界を基準とする相対位置を選択することで、中間の位置をより明確に定義することが可能となります。
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図2 血液組織境界側(緑)と心筋緻密層境界側(赤)の心内膜境界位置これらの境界はHeartModelA.I.アプリケーションにより自動的にセグメント化されたものであり、この2つの境界位置とユーザー入力による調整を経て、容積計測のための心内膜境界が適切に描出される。
図3 基本的な心尖部四腔像から取り込まれた左室および左房の3Dボリューム画角の幅と奥行きは左室と左房がちょうど入る大きさで、3Dボリュームの中心に左室と左房があり、ASE 17セグメント中の少なくとも14セグメントが視認できる。これらはHeartModelA.I.アプリケーションを使用して左室および左房を計測する場合の推奨事項となる。
図4 心時相検出の概要EDはR波ピーク時のフレームとして推定され、ESは僧帽弁輪の位置がトランスジューサに向かって最高点に達したときのフレームとして推定される。どちらも前後のフレームを確認することによりさらに絞り込まれる。
画像の取り込みHeartModelA.I.は、左室と左房が画角の中心に描出された基本的な心尖部四腔像から取り込まれた3Dボリュームから 心臓の位置を検出します。左室の長軸がやや偏位した程度の画像であればHeartModelA.I.のパフォーマンスが損なわれることはありませんが、大きく偏位した心尖部四腔像が描出されると、HeartModelA.I.の精度は低下します。3Dボリュームの画角には左室および左房の心腔全体を含むことができる幅と奥行きが 必要ですが、フレームレートがあまり低下しない様、幅と奥行きを調整する必要があります。HeartModelA.I.は、ASEの17セグメント中の少なくとも14セグメントが視認できる画像を対象として設計・検証されています。14セグメント未満しか視認できない画像は、見えていない領域が大きく容積の精度を確保できないため、HeartModelA.I.アプリケーションの使用や左室容積の計測は避けるべきです。
アルゴリズム心時相の検出現行のHeartModelA.I.アプリケーションでは、拡張末期(ED)および収縮末期(ES)での容積が計測されるため、アルゴリズムの第1段階としてEDフレームとESフレームの検出が行われます。American Society of Echocardiography(ASE)およびEuropean Association of Cardiovascular Imaging (EACVI)のガイドラインでは、EDの時相の定義を僧帽弁閉鎖後の最初のフレームまたは左室が最大となるフレームとすること、およびESの時相の定義を大動脈弁閉鎖後のフレームまたは左室が最小となるフレームとすることが推奨されていますが1容積を計測するHeartModelA.I.アプリケーションには、弁の開閉を検出するよりも、最大容積と最小容積を検出してそれぞれをEDおよびESと定義する手法が適しています。
HeartModelA.I.では、以下のようなプロセスによりEDおよびESが定義されます。EDフレームはECG波形のR波ピークの フレームとして推定され、ESフレームは僧帽弁輪の動きを観察して推定されます。この動きと心時相の間には高い相関があり、僧帽弁輪の位置がトランスジューサに向かって最高点に達したときのフレームがESフレームとして推定されます。心周期全体の解析と比較した場合、このEDおよびESの推定結果は、対象である全症例(N=120)の99%において実際のEDおよびESから1フレーム以内となっています。推定されたフレームの前後のフレームを確認し、最大容積(EDV)および最小容積(ESV)のフレームを選択することにより、EDフレームとESフレームが絞り込まれます。容積は、HeartModelA.I.の境界検出アルゴリズムを用いて計測されます。
境界の検出HeartModelA.I.アプリケーションに用いられているナレッジ ベースのセグメンテーションアルゴリズムは、図5でその概要を示すように「空間的なパターンフィッティングを用い、スケールを 段階的に細かくしていきながら行うシーケンス」と表現するのが最も適切です。
ナレッジベースによる識別1. 心臓の位置特定:最初に、大まかな空間的スケールにおいて、3D画像上で心臓全体の大まかなパターンとモデル形状との位置合わせが行われ、 心臓の位置が検出されたのち、ボリューム内でモデルの位置、 方向、大きさの調整が行われます。
2. 心腔の位置合わせ:次に、より細かな空間的スケールにおいて、モデル内の各心腔(左室、左房、右室、および右房)の位置、方向、および大きさが検出 され、各心腔の描出断面が最適化されます。
症例ごとに適応(アダプテーション)3. 局所的な位置合わせ:最も細かい空間的スケールにおいて、各心腔内で心内膜が検出され、3D画像に合うようにモデルの境界が修正されます。
4. 局所的な位置合わせ(血液プールの境界):最も内側の心内膜境界(血液組織境界)は他の境界と比較して形状のバリエーションの幅が広いため、この境界の調整はステップ3が完了してはじめて実行出来るようになります。3D画像により 一致できるよう、他のレイヤー(層)よりも柔軟に微調整できるようになっています。
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ナレッジベースの識別 症例ごとに適応(アダプテーション)
1. 心臓の位置特定 2. 心腔の位置合わせ 3. 局所的な位置合わせ 4. 局所的な位置合わせ (血液プールの境界)
パターンフィッティングのプロセスでは、3D画像に合うように モデルにさまざまな処理が加えられますが、モデルの完全性は維持されることに留意してください。つまり最終的に出来上がったモデルは、「3D画像内で検出されたパターン」と「モデル本来のナレッジベース」を折衷したものと見なすことができます。
図5 HeartModelA.I.アプリケーション用に設計されたナレッジベースのセグメンテーションアルゴリズムの概要最初に、ナレッジベースに基づき取り込んだボリューム内でモデルの位置と方向、大きさの設定を行う。次に、症例ごとに、空間的スケールを段階的に細かくしながら、3D画像の心臓に合わせてモデルを徐々に変形させる。(上段:3Dボリュームから切り出した心尖部四腔像、下段:3Dボリュームから切り出した心尖部長軸像)。
図6 HeartModelA.I.アプリケーションの6画面表示例EDフレーム(上段)およびESフレーム(下段)のそれぞれについて自動的に切り出された心尖部四腔像(左)、心尖部長軸像(中央)、 心尖部二腔像(右)が表示されている。画面左側にあるスライダを使用して、自動的に描出された心内膜境界の位置を手早く調整できる。
検証数 1 0 0例の 3 D画像を対象として、E DとE Sの左室容積の解析および E Sの左房容積の解析を目的とするHeartModelA.I.のパフォーマンスが検証されました。検証では、HeartModelA.I.の全自動アルゴリズムにより作成された内側と外側の左室心内膜境界および左房境界の全てが、複数の臨床専門家によって手動で修正された境界と比較されました。解析対象画像の分布は、地域(日本を含むアジア、ヨーロッパ、および北米)、心臓の大きさ、病変、心臓の形状、および画質においてほぼ均等でした。また、世界各地の複数施設でもHeartModelA.I.アルゴリズムの研究が行われています。検証の結果、画質の違いや画像上の心臓の大きさ/形状の違いに対するアルゴリズムの適応は、再現性・精度とも非常に優れていることが明らかとなりました。
調整および編集HeartModelA.I.アプリケーションでは、アルゴリズムによって2つの左室心内膜境界が検出されますが、最終的に境界をどこに設定するかはユーザーが指定可能です。この境界の位置設定は、画面に表示されるスライダで調整します。スライダは、ED用とES用に1つずつあります。スライダの初期設定値はユーザーによる指定が可能であり、どこに境界を設定するかは、施設またはユーザーにより違ってきます2。従来、臨床の場ではさまざまな手法により心内膜境界のトレースが行われていました。HeartModelA.I.アプリケーションでは、初期設定を変更可能にし個々のユーザーのニーズに対応できるようにしたため、全自動または最小限の修正により適切な結果を得ることが可能となります。
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参考文献1. Lang, Roberto M, et al. “Recommendations for Cardiac Chamber Quantification by Echocardiography in Adults:
An Update from the American Society of Echocardiography and the European Association of Cardiovascular Imaging.” Journal of the American Society of Echocardiography 28.1 (2015): 1-39.
2. Dorosz, Jennifer L, et al. “Performance of 3-dimensional echocardiography in measuring left ventricular volumes and ejection fraction: a systematic review and meta-analysis.” Journal of the American College of Cardiology 59.20 (2012): 1799-1808.
HeartModelA.I.アプリケーションにより全自動で作成された境界は多くの症例で十分に使用できるものですが、場合によっては修正が必要なこともあります。このような場合は、全体的 (Global)または局所的(Regional)の2通りの修正機能を使用して修正を行うことができます。全体的な修正では、EDスライダまたはESスライダの値を調整し、左室心内膜境界の位置を調整します。局所的な修正では、トレースライン上のコントロールポイントを使用して、より局所的に境界を調整します。
HeartModelA.I.アプリケーションにはこのように局所的な修正機能があるため、極めて特殊な形状や不規則な形状を呈している症例にも使用できます。HeartModelA.I.アプリケーションの修正機能使用時には、基本的な心尖部四腔像、心尖部長軸像、心尖部二腔像が自動的に表示されます。3Dボリュームに対する各断層像の位置と方向は、モデルから自動で描出されます。このため、手動による各断層像の軸の設定を必要とする他の手法と比較して、操作に要する時間が短くなります。これらの断層像は、関心領域である心腔が短縮されないように、左室編集時は左室の軸、左房編集時には左房の軸に対して自動的に最大になるように調整されます。3D画像の操作に関する経験はそれほど必要ではなく、ボリュームから自動的に画像が切り出されます。これらの断層像はルーチンの超音波検査で描出するような基本的な断層像であり、表示や解析などの操作も馴染みのあるものです。
結論フィリップスのHeartModelA.I.は、現在のルーチン検査に特有のばらつきに着目し、全自動のナレッジベースのセグメンテーション法により左室および左房の容積を計測するアプリケーションです。最初から1つの境界を検出する手法とは異なり、HeartModelA.I.アルゴリズムでは、血液組織境界側と心筋緻密層境界側の2つの心内膜境界を検出し、これらを基に、ユーザーが臨床判断や診療の必要に合わせて心内膜境界を指定することができます。心臓の形状や画質がさまざまに異なる場合でも、 画像上で検出された2つの境界を容易かつ確実に識別できるため、結果として、ユーザーが特定する心内膜境界も正確で確実なものとなります。HeartModelA.I.アプリケーションは、高度な セグメンテーションアルゴリズムと、手早く容易な視覚化・修正を可能にする直観的なワークフロー/ユーザーインターフェースに より、ルーチン検査における3D容積の使用に信頼性をもたらします。
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販 売 名:超音波画像診断装置 EPIQ / Affiniti医 療 機 器 認 証 番 号 :225ADBZX00148000管理医療機器 / 特定保守管理医療機器
販 売 名:フィリップス画像診断用ワークステーション 医 療 機 器 認 証 番 号 :22000BZX00781000管理医療機器 / 特定保守管理医療機器
販 売 名:フィリップス超音波診断用プローブ X5-1 医 療 機 器 認 証 番 号 :223ACBZX00007000管理医療機器 / 特定保守管理医療機器