~景気の現状点検と今後の展望~ 2015.10 - mizuho bank · 2016-05-09 · 《要旨》...

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【 緊急リポート 】 不安定感を強める中国経済 ~景気の現状点検と今後の展望~ 2015.10.9 Copyright Mizuho Research Institute Ltd. All Rights Reserved.

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【 緊急リポート 】

不安定感を強める中国経済~景気の現状点検と今後の展望~

2015.10.9

Copyright Mizuho Research Institute Ltd. All Rights Reserved.

《 要 旨 》

○ 中国では、2015年6月中旬に株価が急落し、続く8月中旬には人民元の実質切り下げが行われるなど、金融市場に変調が生じ、実体経済の先行きに対する不安も惹起

○ 実質GDP成長率は4~6月期+7.0%と前期から横ばいとなったが、主要経済指標は実体経済の自律的回復力の弱さを示唆

○ 昨今の中国経済減速の背景には、4兆元の景気刺激策を契機に過剰となった資本ストック・債務の調整圧力が存在。中国政府はニューノーマルを標ぼうし、一定の成長率を維持しつつも 緩やかに成長の鈍化を目指す方針を維持しつつも、緩やかに成長の鈍化を目指す方針

○ 足元は、金融緩和および財政政策による下支えが行われている状況。これら景気下支え策に頼りつつ 2016年にかけて+6%台後半の成長を続ける見込みえ策に頼りつつ、2016年にかけて+6%台後半の成長を続ける見込み

○ 当面は、金融・財政が比較的良好であることを背景に、政策運営の余力は残されるものの 次第にその余力が失われていく恐れあり 経済の健全性の維持・向上と 一定ののの、次第にその余力が失われていく恐れあり。経済の健全性の維持・向上と、 定の成長維持を両立できるか、また長期の成長基盤の形成に向け、制度改革等を履行できるか、2020年までが習近平政権の正念場に

1

《 構 成 》

1.不安定感を強める中国経済 P 31.不安定感を強める中国経済 P 3~ 金融市場の動揺と実体経済の先行きに対する不安 ~

2.実体経済の現状点検 P 8実体経済 現状点検

~ 自律的回復力の弱い状況が継続 ~

3.中国経済減速の構造的背景 P 17~ 過剰資本・債務の調整圧力とニューノーマルへの移行 ~

4.短期展望 P 27~ 景気下支え策により+6%台後半の成長を維持 ~

5.中長期展望 P 43~ 成長と健全性のバランス維持が政策運営の課題に ~

2

1.不安定感を強める中国経済

~ 金融市場の動揺と実体経済の先行きに対する不安 ~金融市場の動揺と実体経済の先行きに対する不安

3

1.( 1 ) 株価の急落

○ ンダメンタルズから乖離し高騰していた株価が 6月中旬以降急落 月9日には上海総合指数が 時3 3 4にまで下落○ ファンダメンタルズから乖離し高騰していた株価が、6月中旬以降急落。7月9日には上海総合指数が一時3,374にまで下落

・ 上海総合指数は、2015年に入り、実績PER(株価収益率)が2007~2008年のバブル期を含む過去10年の平均値を上回るほどに高騰。信用取引の拡大が株価高騰を後押し

・ しかし、新規株式公開(IPO)の増加による需給悪化観測、信用取引規制の強化案発表等を契機に、株価が急落、新規株式公開( ) 増加 る需給悪化観測、信用取引規制 強化案発表等を契機 、株価 急落

○ 上海総合指数は足元3,000付近で持ちこたえているも、政府による株式買い支え、空売りに対する取り締まり強化などによる面も否めず。不安定さは残存

【 上海総合指数の推移 】 【 信用取引残高 】(1990年12月19日=100) (倍)

50

60

5,000

6,000 上海総合指数(左目盛)

実績PER(右目盛)

過去10年平均実績PER(右目盛)

(倍)

6/12終値:5,166

4.0

5.0

20,000

25,000(%)(億元) 信用取引残高(左目盛)

対時価総額比率(右目盛)

30

40

3,000

4,000

7/8終値:3 507

3.015,000

,

10

20

1,000

2,000

7/8終値:3,5077/9:一時3,374

8/26終値:2,927

1.0

2.0

5,000

10,000

(注) 過去10年平均実績PERは2005~2014年平均。上海総合指数、実績PERの直近値は2015年9月30日。

(注)時価総額は、上海・深圳証券取引所A株市場の合計、流通株ベース。直近値は2015年9月29日。

002014/7/1 2014/10/1 2015/1/1 2015/4/1 2015/7/1 (年/月/日)

0.00 2014/07/01 2015/01/01 2015/07/01

(年/月/日)

4

年 月 日。(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成

月 日。(資料)上海証券取引所、深圳証券取引所、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

○ 2014年末頃から資本流出傾向が強まり 人民元安圧力が高まるように

1.( 2 ) 資本流出圧力の強まり

○ 2014年末頃から資本流出傾向が強まり、人民元安圧力が高まるように

・ 銀行による人民元転・外貨転取引状況をみると、2014年末頃から人民元から外貨への転換が増えており、中国国内からの資金流出圧力が強いことを示唆

・ その結果、同時期から人民元対ドルレートは変動幅の下限(基準値対比+2%)に近い元安水準で推移するように。このそ 結果、同時期 民元対 変動幅 下限(基準値対比 ) 近 元安水準 推移する う 。状態を解消するため、8月11日に人民銀行が基準値を切り下げたことで、実勢値は13日にかけて10日対比で約3%下落

・ それが更なる元安期待を惹起したことなどから、資本流出圧力はその後も残存。介入により相場の安定を図っている模様

【 人民元対ドルレートの推移 】【 銀行の人民元転・外貨転取引 】

80

100

120(10億ドル)

人民 転

5.95

6.05

(人民元/ドル)

基準値

(変動幅上限)

20

40

60

80人民元転

多い6.15

6.25

基準値

元高

▲ 40

▲ 20

0

顧客代行取引

自己取引 外貨転

6.35

6.45

終値(変動幅下限)

元安

(注)直近値は2015年9月30日。(注)銀行による決済目的の人民元転取引額から外貨転取引額を引いた数値。

▲ 80

▲ 60

2010 11 12 13 14 15

自己取引

合計

(年)

外貨転多い

6.45

6.55 2014/07/01 2015/01/01 2015/07/01

(年/月/日)

5

(資料)bloombergより、みずほ総合研究所作成(資料)中国国家外貨管理局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成(年/月/日)

○ 株価下落や資本流出の背景には 実体経済の先行きに対する不安が存在

1.( 3 ) 実体経済に対する先行き不安 : PMIの悪化

○ 株価下落や資本流出の背景には、実体経済の先行きに対する不安が存在

・ 例えば、製造業PMI(購買担当者景気指数)は、国家統計局版、財新版いずれも50割れ

――― 中堅中小企業のウエートが高いとされる財新版は47.2(2015年9月)と約6年半ぶりの低水準に

【 製造業 】【 製造業PMI 】

〔国家統計局版〕 〔財新版〕60 60

54

56

58

54

56

58

50

52

54景気拡大

50

52

54景気拡大

46

48景気縮小

46

48景気縮小

(注) 1.春節などの季節性が完全には除去されていない点に注意。2.国家統計局版の製造業PMIのサンプル数は、2013年1月に、従来の820社から3,000社に拡大。財新版のサンプル数は420社。

4410/01 12/01 14/01 (年/月)

4410/01 12/01 14/01 (年/月)

6

国家統計局版 製造業 数 、 年 月 、従来 社 , 社 拡大。財新版 数 社。

(資料)中国国家統計局、CEIC Data、Windより、みずほ総合研究所作成

1章のまとめ

○ 中国株式市場では 2015年6月半ばに株価が急落して以降 不安定な動きが継続○ 中国株式市場では、2015年6月半ばに株価が急落して以降、不安定な動きが継続

○ 2014年末から資本流出傾向が強まり、対ドルで人民元安圧力が高まるように。同年8月

11日には人民銀行が人民元を実質的に切り下げ11日には人民銀行が人民元を実質的に切り下げ

○ 株価下落や資本流出の背景には、PMIの悪化などに代表される実体経済の先行きに対

する不安の存在もする不安の存在も

7

2.実体経済の現状点検

~ 自律的回復力の弱い状況が継続 ~自律的回復力の弱い状況が継続

8

2 .( 1 ) 概観 : 成長率は2期連続+7.0%となるも自律的回復力は弱い

○ 実質G 成長率は 201 年1 3月期 4 6月期ともに前年比+ 0%と横ばい推移○ 実質GDP成長率は、2015年1~3月期、4~6月期ともに前年比+7.0%と横ばい推移

・ 鉱業・製造業を主とする第2次産業の減速が鮮明な一方、第3次産業は伸びを高める

――― ただし、2015年に入ってからの第3次産業の成長は、株式市場の活況を受けた金融業の好調な業績という一時的要因に支えられている側面も

(前年比 %)

【 実質GDP成長率 】

要因 支 れ る側面も

・ 輸入の減少が純輸出増となって成長を押し上げている面もあるとみられ、需要の伸びは+7.0%よりも低い可能性あり

【 実質GDP成長率(産業別) 】

(前年比 %)

8

9(前年比、%)

10

12第1次産業 第2次産業

第3次産業

(前年比、%)

7

8

6

8

62

4

5 2012 2013 2014 2015

(年)

(資料)中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成 (資料)中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

0 2012 2013 2014 2015

(年)

9

2 .( 2 ) 投資 : インフラ投資による下支えが図られるも減速に歯止めはかからず

○ 減速傾向が顕著なのが投資 固定資産投資は 2013年から減速傾向○ 減速傾向が顕著なのが投資。固定資産投資は、2013年から減速傾向

・ 2015年7~8月期の固定資産投資の実質伸び率は、前年比+11.1%にまで減速(4~6月期は同+11.8%)

・ インフラ投資は相対的に高い伸びを維持するも、製造業の設備投資や不動産開発投資の減速が顕著

60

(前年比、%)

固定資産投資

【 業種別固定資産投資 】

40

50

60 固定資産投資

製造業

不動産業

インフラ

10

20

30

▲ 10

0

10

2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 20152008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015(年)

(注)1.インフラは、交通運輸・倉庫・郵政、電力・ガス・水道、水利・環境・公共施設管理の3業種の合計。2.固定資産価格指数により実質化した伸び率(みずほ総合研究所推計値)。3.直近のデータは、2015年7~8月期の前年比伸び率(同年4~6月期の固定資産価格指数により実質化)。

(資料)中国国家統計局 より みずほ総合研究所作成

10

(資料)中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

2 .( 3 ) 輸出 : 力強さを欠く状態が続く

○ 輸出数量は 足元前年比 イナス圏での推移を続ける○ 輸出数量は、足元前年比マイナス圏での推移を続ける

・ 海外景気の弱含みのほか、実質実効為替レートや賃金の上昇等を受けた中国の輸出競争力低下なども影響

○ 一方、輸入数量も力強さを欠くものの、国内での在庫調整の緩やかな進展等を受け、足元徐々に伸びが回復。2015年7~8月期には前年比プラスに転じる

【 輸出入(数量ベース) 】

月期 前年比 ラ 転 る

(前年比、%)

【 人民元の対主要通貨レートおよび実質実効為替レート 】

(2010年1月=1)

15

20

25 輸出数量

輸入数量

(前年比、%)

1.4

1.5

1.6 対ドル 対円

対ユーロ 実質実効レート

(2010年1月 1)

5

10

15

1.2

1.3

1.4元高

▲ 10

▲ 5

0

0.9

1.0

1.1

元安

(注)四半期での推移。直近は7~8月期。(資料)中国海関総署 CEIC Dataより みずほ総合研究所作成

▲ 102011 2012 2013 2014 2015

(年)

(資料)中国国家外貨管理局、BIS、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

0.8 2010/01 2011/01 2012/01 2013/01 2014/01 2015/01

(年/月)

元安

11

(資料)中国海関総署、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成 (資料)中国国家外貨管 局、 、 り、 ず 総合研究所作成

2 .( 4 ) 個人消費 : 底堅さをみせるも力強い回復までには至らず

○ 小売売上高の伸びは緩やかな低下傾向をたど てきたが 足元小幅に回復 底堅さがみられる状態○ 小売売上高の伸びは緩やかな低下傾向をたどってきたが、足元小幅に回復。底堅さがみられる状態

○ ただし、力強い回復にまでは至っていない。足元、乗用車販売の伸びが鈍化

・ 乗用車販売台数は7~8月期に前年比マイナスに(2015年7~8月の前年比▲4.9%)。高水準の在庫を背景に価格競争が強まっており、値下げ期待による買い控えが影響している模様

15(前年比、%)

強ま おり、値下げ期待 る買 控 影響 る模様

【 社会消費品小売総額 】 【 乗用車販売台数 】

25

(前年比、%)

12

15

15

20

25

6

9

0

5

10

0

3

▲ 10

▲ 5

0

2012 2013 2014 2015

(年)(注)1.本業の年間売上高2,000万元以上の卸売業、500万元以上の小売業が対象。

2.住宅関連財は、建材、家具、家電の合計。その他は医薬品、日用品、文房具、化粧品、その他サービスの合計。

2013 2014 2015 (年)

(注)2015年7~9月期の数値は、7~8月の数値。(資料)中国汽車工業協会、 CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

12

(資料)中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

2 .( 5 ) 雇用・所得 : 比較的良好ながら陰りの兆しもあり

○ 雇用は比較的良好も 陰りの兆しもみられる○ 雇用は比較的良好も、陰りの兆しもみられる

・ 2015年1~6月期の新規都市就業者数は718万人と、通年目標の1,000万人の約70%をすでに達成

・ ただし、求人倍率が1以上を維持しているものの、2015年入ってから2四半期連続で低下し、PMI雇用指数も製造業・非製造業ともに2014年以降、悪化傾向を示すなど、雇用に陰りの兆しも

(倍) (前年比 %)【 1人当たり可処分所得 】【 求人倍率と雇用PMI 】

造業 も 年以降、悪化傾向を すな 、雇用 陰り 兆 も

・ 人力資源・社会保障部も、「地域的、構造的な失業リスクが引き起こされる可能性は排除できない」と発言(7月29日)

○ 雇用に陰りがみられることを反映し、所得の伸びもやや鈍化

55

60

1 1

1.2 求人倍率(左目盛)

10

12都市部 全国

(前年比、%)

50

55

1.0

1.1

6

8

450.9PMI雇用指数(非製造業、右目盛)

PMI雇用指数(製造業、右目盛) 2

4

400.8 2010 2011 2012 2013 2014 2015

(年)

PMI雇用指数(製造業、右目盛)

0

2

2012 2013 2014 2015 (年)(注)PMI雇用指数は、四半期平均値(国家統計局版)。

13

(資料)中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成 (資料)中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

2 .( 6 ) 住宅市場 : 持ち直すも二極化が進展

○ 住宅販売市況は緩やかに回復○ 住宅販売市況は緩やかに回復

・ 住宅販売面積の前年比は2015年春にプラスに転化。直近8月単月の前年比は約40%と急速に回復。販売価格は、2015年半ば頃からマイナス幅が縮小

・ 販売価格低下のほか、金融緩和(後述)や住宅ローンの頭金比率引き下げといった政策の効果により持ち直し販売価格低下 、 融緩和(後述)や住宅 頭 比率引き下げ 政策 効果 り持ち直

○ ただし、販売市況の回復ペースは都市間で差が生じており、二極化の様相を呈す

・ 住宅価格は、上海や深圳など大都市では前年比2桁上昇まで回復。一方、規模の小さい3級都市等では前年割れが続く

【 新築住宅の販売面積・販売価格 】 【 都市別の新築住宅販売価格 】

16

20

40

50

(前年比、%) (前年比、%)

住宅販売価格(右目盛) 15

20

251級都市

(前年比、%)

4

8

12

10

20

30住宅販売価格(右目盛)

5

10

15

▲ 4

0

▲ 10

0

住宅販売面積(左目盛)▲ 10

▲ 5

0

3級都市

2級都市

▲ 8▲ 20 2012/01 2013/01 2014/01 2015/01

(年/月)

住宅販売面積(左目盛)

(注) 住宅販売面積は後方3カ月移動平均値の伸び率。(資料) 中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

(注)1級都市は、北京、上海、広州、深圳の4都市。2級都市は、杭州、南京、青島、寧波、厦門、武漢など22都市。3級都市は、常熟、オルドス、貴陽、海口、昆山、唐山、銀川、珠海など74都市。

2011/06 2012/06 2013/06 2014/06 2015/06

(年/月)

14

(資料) Windより、みずほ総合研究所作成

2 .( 7 ) 生産 : 回復の足取りに弱さ

○ 生産は 201 年3月を底に 旦緩やかに回復に向かうも 足元では再び弱含むなど 回復の足取りは強くない 過剰生産○ 生産は、2015年3月を底に一旦緩やかに回復に向かうも、足元では再び弱含むなど、回復の足取りは強くない。過剰生産能力が指摘される素材など一部の産業での生産回復の遅れが主因とみられる

・ 不動産開発投資が減速を続けていることや、インフラ投資が2015年半ばに一度弱含んだこと等を背景に、鉄鋼や非鉄金属等の生産在庫バランスの改善が十分に進んでいない模様

【 工業付加価値生産額 】 【 生産在庫バランス 】

14/Q2 14/Q3 14/Q4 15/Q1 15/Q2 15/7月 15/8月(前年比、%)

(単位:%Pt)

▲ 5.2 ▲ 8.7 ▲ 9.1 ▲ 7.0 ▲ 6.1 ▲ 6.9 ▲ 6.3

石油・石炭 ▲ 8.7 ▲ 15.6 ▲ 12.4 ▲ 6.4 4.5 ▲ 2.5 ▲ 6.3

鉄鋼 ▲ 3.1 ▲ 10.1 ▲ 8.9 ▲ 5.7 ▲ 7.9 ▲ 14.1 ▲ 12.0

非鉄金属 8 2 4 2 ▲ 0 1 ▲ 1 0 ▲ 3 0 ▲ 6 5 ▲ 11 1素材

工業全体

8

10

12

非鉄金属 8.2 4.2 ▲ 0.1 ▲ 1.0 ▲ 3.0 ▲ 6.5 ▲ 11.1

非金属 ▲ 5.4 ▲ 6.7 ▲ 6.7 ▲ 6.0 ▲ 7.1 ▲ 4.9 ▲ 3.4

化学 ▲ 2.2 ▲ 4.1 ▲ 7.3 ▲ 4.6 ▲ 3.2 ▲ 4.5 0.2

農副食品加工 ▲ 10.7 ▲ 12.3 ▲ 8.7 4.5 9.8 7.8 6.7

素材

4

6

8

食品製造 ▲ 2.6 ▲ 7.3 ▲ 6.6 ▲ 6.1 ▲ 1.5 2.0 ▲ 0.4

紡織 ▲ 5.3 ▲ 5.7 ▲ 2.2 1.1 3.0 3.7 3.7

一般機械 ▲ 6.3 ▲ 6.6 ▲ 8.3 ▲ 6.5 ▲ 3.6 ▲ 2.6 ▲ 3.1

輸送機械 ▲ 2.6 ▲ 12.9 ▲ 12.1 ▲ 7.9 ▲ 11.4 ▲ 2.5 ▲ 1.7

軽工業

0

2

4

(注)1.実質伸び率。2.1月と2月の数値は、1~2月累計値の前年比。

(資料)中国国家統計局 より みずほ総合研究所作成

(注)1.生産在庫バランス=(生産前年比)-(在庫前年比)。2.生産は実質付加価値生産額ベース。在庫は生産者出荷価格指数により実質化。

輸送機械 ▲ 2.6 ▲ 12.9 ▲ 12.1 ▲ 7.9 ▲ 11.4 ▲ 2.5 ▲ 1.7

電気機械 ▲ 4.4 ▲ 5.3 ▲ 6.5 ▲ 1.9 ▲ 3.0 ▲ 1.8 ▲ 3.1

通信・電子機器 ▲ 10.9 ▲ 16.3 ▲ 15.1 ▲ 17.8 ▲ 20.5 ▲ 21.0 ▲ 16.0

機械0 2013/01 2014/01 2015/01

(年/月)

15

(資料)中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成 (資料)中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

2章のまとめ

○ 実質GDP成長率は、2015年4~6月期も前期同様、前年比+7.0%を記録。ただし、4~6

月期のGDPは、株式市場の活況や輸入の減少により押し上げられている面もあるとみら

れ、実態としての需要の伸びは、+7.0%を下回るとみられる

○ 減速傾向が顕著なのは投資。インフラ投資による下支えが続けられているものの、製造減 傾 顕著 投資。 ラ投資 支 続 、製業の設備投資、不動産開発投資の減速を補うには力不足

○ 輸出数量の伸びも足元マイナス圏で推移

○ 個人消費は底堅さをみせてはいるが、力強い回復までには至らず。雇用・所得は、年間雇用目標の約70%をすでに達成するなど比較的良好ながら、足元では陰りの兆しも

○ 2014年に冷え込んだ住宅市場は、2015年に入り持ち直しの動きが鮮明に。ただし、回復

のペースは、都市により二極化

○ 生産の回復の足取りにも弱さ。在庫調整が十分には進んでいないことがその背景に

16

3.中国経済減速の構造的背景

~ 過剰資本・債務の調整圧力とニューノーマルへの移行 ~過剰資本 債務の調整圧力と ュ ノ マル の移行

17

3 .( 1 ) 過剰資本ストック ~ ① 概観

○ 中国では4兆元の景気刺激策を契機に投資が急増した とで 資本スト クが過剰に蓄積されるように○ 中国では4兆元の景気刺激策を契機に投資が急増したことで、資本ストックが過剰に蓄積されるように

・ 景気刺激策が終了した2010年以後も、投資の高い伸びが持続。資本ストックの過剰は解消されていないとみられ、それが投資の下押し圧力に

【 資本係数 】

3.5 2014年の資本ストックのトレンド線からの

乖離幅は 対GDP比22 8%相当

2.5

3.0乖離幅は、対GDP比22.8%相当

1.5

2.0

2008年11月:4兆元の景気刺激策実施

0 0

0.5

1.0

(注)実質値。基準年を1952年、除却率を一律5%とし、ベンチマーク・イヤー法により推計。トレンド線は、1992年~2008年。(資料)中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

0.0 1992 1997 2002 2007 2012

(年)

18

(資料)中国国家統計局、 り、みず 総合研究所作成

3 .( 1 ) ② 製造業の生産能力過剰問題

○ 過剰資本スト クの代表例は 製造業の過剰生産能力○ 過剰資本ストックの代表例は、製造業の過剰生産能力

・ 2009年をピークに、過剰生産能力は緩やかに解消されつつあるものの、過剰感は残存している模様

――― 資本ストック循環図によれば、製造業の生産能力は期待成長率+8%程度に相当する規模で、実際の製造業の成長率(約+6%)対比で過剰なことが示唆されている長率(約 )対比 過剰な 唆され る

――― 企業家向けアンケート(2013年時点)によれば、過剰感の解消時期は平均で3.1年。2014年調査では、生産能力過剰問題が更に深刻化。同問題の解決は、2017年以降にずれ込む可能性あり

【 製造業資本ストック循環図 】 【 企業家アンケート(2013年・2014年) 】40

30

35

0

(設備投資

期待成長率ライン

2005

2009 (単位:%)

非常に刻

やや刻

問題な

1年2年 3年 4年

5年平均期間

現在の生産能力過剰問題の深刻度

過剰問題の解消時期

15

20

25資額の対前年

〔20%〕 深刻 深刻 なし 以内2年 3年 4年

以上期間(年)

全産業 15.5 58.5 26.0 - - - - - -

2013年 12.8 58.3 28.9 6.9 25.4 38.3 6.7 22.7 3.1

0

5

10

年比伸び、%)

〔15%〕

〔10%〕

20142012

〔7%〕

鉱業 42.3 42.3 15.4 - - - - - -

2013年 29.6 37.1 33.3 - - - - - -

製造業 16.7 61.5 21.8 - - - - - -

2013年 14 7 62 2 23 1 8 2 24 8 37 5 6 7 22 8 3 1

(注)1.1995年を基点としてベンチマークイヤー法により推計(除却率は17%と仮定)。2.双曲線は、2006年~2013年の資本係数の平均伸び率により推計。

(資料) 中国国家統計局「第3回工業センサス(1995年実施)」 中国国家統計局より

(注)1.中国の企業経営者を対象としたアンケート調査。調査対象期間は、それぞれ2013年7~9月、2014年8~9月。有効回答数は、3,543件(2013年)、2,446件(2014年)。

2. 「平均期間(年)」=Σn*Pn/100という形で概算。ただし、Pnは「n年」との回答率。(資料)中国企业家调查系统「企业经营者对宏观形势及企业经营状况的判断﹑问题和建议」(『管理

世界』2013年第12期)、同「企业经营者对宏观形势及企业经营状况的判断、问题和建议」 (『管

28 30 32 34)

(前年の資本ストックに対する設備投資額の比率、%)

2013年 14.7 62.2 23.1 8.2 24.8 37.5 6.7 22.8 3.1

19

(資料) 中国国家統計局「第3回工業センサス(1995年実施)」、中国国家統計局より、みずほ総合研究所作成

世界』 年第 期)、同 企 营者对宏观形势及企 营状况的判断、问题和建议」 (『管理世界』2014年第12期)より、みずほ総合研究所作成

3 .( 1 ) ③ 住宅在庫の増大

○ 過剰資本スト クのもうひと の代表例が 住宅在庫の積み上がり○ 過剰資本ストックのもうひとつの代表例が、住宅在庫の積み上がり

・ 販売面積を上回るペースで施工面積が拡大しており、仕掛在庫の積み上がりを示唆。とくに、地方都市で在庫の過剰感が強まっている模様

・ 今後、生産年齢人口の減少や都市化のペース鈍化に伴って、住宅需要の伸びが緩やかに鈍化し、住宅仕掛在庫の解消今後、 産年齢 減少 都市化 鈍化 伴 、住 需要 伸び 緩 鈍化 、住 仕掛在庫 解消も長期化する可能性あり

【 住宅仕掛在庫 】

6(倍)

【 人口伸び率 】

630 住宅販売面積(左目盛)

(前年比、%) (前年比、%)

4

5

6

1級都市

2級都市

3級都市

4

5

20

25都市人口(右目盛)

2

3

2

3

10

15

0

1

2006 2008 2010 2012 2014 (年)

全国平均

0

1

0

5

199698

19992001

200204

0507

0810

1113

1416

1719

(注)1.仕掛在庫面積=施工面積-竣工面積として推計。2.1級都市は、北京、上海、広州、深圳の4都市。2級都市は、南京、杭州、合肥、寧

波、アモイの5都市。3級都市は、海口、貴陽、昆明、銀川、ウルムチの5都市。(資料)中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

(年)-98 -2001 -04 -07 -10 -13 -16 -19

(注)1.各3年間の年平均伸び率。2.2015年以降の都市人口は、国連人口予測(低位推計)および都市化の政府目標

値により推計。(資料)中国国家統計局、Population Division of the Department of Economic and Social

Affairs of the United Nations Secretariat, World Population Prospects: The 2015

20

Revision、CEIC Dataよりみずほ総合研究所作成

3 .( 2 ) 過剰債務

○ 債務に いても 資本スト クの積み上がりと同様 4兆元の景気刺激策を契機に増加が進む 過剰債務も成長の下押し○ 債務についても、資本ストックの積み上がりと同様、4兆元の景気刺激策を契機に増加が進む。過剰債務も成長の下押し要因に

・ 非金融部門の債務残高の対GDP比は、2008年末まで150%前後で推移していたのに対し、2009年以降は拡大傾向をたどり、2014年末には対GDP比240%まで上昇

・ 先進諸国・地域と比べた場合、総債務残高の対GDP比(2015年3月末時点)は米国と同程度。部門別にみると、政府や家計の債務水準は他国・地域に比べて低い一方、非金融民間企業(国有企業等も含む)の債務水準がかなり高い

【 中国の債務残高(非金融部門、国・地域別) 】【 中国の債務残高(非金融部門) 】(対GDP比、%) 非金融民間企業部門(対GDP比 %)

200

250(対GDP比、%)

総残高

103.6350

400

450

非金融民間企業部門

家計部門

政府部門

(対GDP比、%)

100

150

非金融民間

企業部門

非金融民間部門

65.9

161.3 69.5105.7

200

250

300

350

50

100

政府部門

家計部門

非金融民間企業

+家計部門 220.2

92 5 109.437.0

77.1 60.9

50

100

150

200

(注)非金融民間企業部門および家計部門の2005年以前のデータは、N/A。政府部門のデータは、総残高から非金融民間部門を控除して推計。

(注)1.2015年3月末時点。2.中国の政府部門のデータは、総残高から非金融民間部門を控除して推計。

02001/03 2004/03 2007/03 2010/03 2013/03

(年/月末)

政府部門42.2

92.5 109.4

0

50

中国 日本 米国 ユーロ圏

21

デ タは、総残高から非金融民間部門を控除して推計。(資料) BISより、みずほ総合研究所作成

、 非 民(資料) BISより、みずほ総合研究所作成

3 .( 3 ) 生産年齢人口の減少

○ 少子高齢化の進展も成長の下押し圧力に○ 少子高齢化の進展も成長の下押し圧力に

・ 国連推計(低位)によると、生産年齢人口(15~64歳)は2015年、総人口は2020年をピークに減少の見込み

――― 中国では、男性60歳、女性50歳(幹部55歳)が定年で、15~59歳の人口はすでに2012年から減少開始

・ 労働需給のひっ迫は 労働者の権益保護強化等と併せて賃金上昇圧力を高め 輸出産業の競争力低下等を招く一因に労働需給のひっ迫は、労働者の権益保護強化等と併せて賃金上昇圧力を高め、輸出産業の競争力低下等を招く 因に

――― 2009年以降、平均賃金の実質伸び率は、一貫して1人当たりGDPの実質伸び率を上回る水準で推移

・ 今後、労働投入の伸び鈍化や社会保障財政の悪化、貯蓄率低下等を通じて、少子高齢化が成長を下押しする恐れ

【 平均賃金の実質伸び率 】【 中国の年齢階層別人口予測 】

14

16実質平均賃金

1人当たりGDP

(前年比、%)

1 200

1,400

1,600(百万人)

65歳以上

0~14歳

総人口のピーク=2020年(13.9億人)

8

10

12

800

1,000

1,200 15~64歳

2

4

6

200

400

600 15~64歳人口のピーク

=2015年(10.1億人)

(注)国連人口推計2015年版の低位推計。(資料)Population Division of the Department of Economic and Social Affairs of the

United Nations Secretariat, World Population Prospects: The 2015 Revisionより、(注)実質平均賃金は、都市部の非私営企業(国有企業、株式制企業、外資企業など)の値。(資料)中国国家統計局 CEIC D より みずほ総合研究所作成

0 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013

(年)

01950 70 90 2010 30 50

(年)

22

, p p り、みずほ総合研究所作成

(資料)中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

3 .( 4 ) ニューノーマルへの移行を目指す中国政府

○ 中国政府も過度な高成長の追求の弊害は認識 また 成長率の鈍化も不可避との認識 今後は 成長率を緩やかに鈍○ 中国政府も過度な高成長の追求の弊害は認識。また、成長率の鈍化も不可避との認識。今後は、成長率を緩やかに鈍化させつつ、経済構造の転換を図る方針

・ 2014年12月開催の経済工作会議では、「ニューノーマル(新常態)」の具体的なあり方を提示

【 指導部のニューノーマルに関する認識 】【 指導部の ュ ノ マルに関する認識 】

(資料) 「中央经济工作会议在京举行 (『新华网』2014年12月11日)より みずほ総合研究所作成

23

(資料) 「中央经济工作会议在京举行」(『新华网』2014年12月11日)より、みずほ総合研究所作成

3 .( 5 ) 他方で成長の下限も政府は意識 ~ ① 雇用の安定維持の必要性

○ 他方 雇用確保等の観点から成長率の下限も設定し 成長率がそれを下回らないように経済運営を行う方針○ 他方、雇用確保等の観点から成長率の下限も設定し、成長率がそれを下回らないように経済運営を行う方針

・ 2015年には、年間の新規都市就業者数1,000万人を目標として設定し、そのために実質GDP成長率+7.0%前後の達成を目指すとの方針が示される

・ 過去の実質GDP成長率と都市部での雇用創出規模の関係をもとにした推計によれば、2015年から2016年にかけて+6%過去 実質 成長率 都市部 雇用創出規模 関係をも 推計 れ 、 年 年 け台後半の実質GDP成長率を達成できれば、政府目標より厳しい目標(リストラ等による自然減以外の理由による減員を引いたベースで1,000万人の都市部雇用を創出)を設定したとしても、目標達成が可能に

【 雇用維持の成長の下限 】(前年比、%)(百万人)

6 88

9

10

11

12

13

14

15

(前年比、 )(百万人)

都市部新規就業者数①(左目盛)

5.8 5.7

6.8 6.7

4

5

6

7

8

9

10

11都市部新規就業者数①(左目盛)

都市部就業者純増数②(左目盛)

実際の実質GDP成長率(右目盛)

目標達成に必要な成長率①(右目盛)

目標達成に必要な成長率②(右目盛)

0

1

2

3

4

5

6

7

(年)

目標達成に必要な成長率②(右目盛)

(注)「都市部新規就業者数①」は、政府目標として採用されている指標で、当該年の都市部における雇用機会新規創出数から定年や病気・死亡により離職した自然減分を引いた数値。「都市部就業者純増数②」は、更にリストラ等、自然減以外の理由による減員分も引いた数値とされ、当該年末の都市部就業者数から前年末の同就業者数を引いた数値。

「目標達成に必要な成長率」は、①、②ともに1,000万人の増加に必要な実質GDP成長率。具体的には、2001~2013年の非第1次産業の実質GDP成長率と①、②の関係について回帰分析を行い、同目標の達成に必要な非第1次産業の実質GDP成長率の水準を推計し、更に、第1次産業については2014年以降も2001~2013年の年平均実質GDP成長率で成長すると仮定することで、全産業の実質GDP成長率を試算した。

2008 10 12 14 16 (年)

24

定する 、 産業 実質 成長率を試算 。(資料)中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

3 .( 5 ) ② GDP倍増目標の達成と金融システムの健全性維持の必要性

○ 成長率の下限の目安として 2020年に向けたG 倍増目標の達成も意識されている可能性○ 成長率の下限の目安として、2020年に向けたGDP倍増目標の達成も意識されている可能性

・ 2012年に開催された中国共産党第18回全国代表大会では、2020年に2010年対比でGDP倍増を目指すとの目標が示される。2014年までの成長率の実績に基づくと、2015年からの6年間で年平均+6.6%の成長率を実現する必要あり

○ このほか、金融システムの健全性維持のためにも、一定の成長率の維持が必要○ 、 融シ テ 健 性維持 も、 定 成長率 維持 必要

・ 人民銀行によるストレステストでは、実質GDP成長率が+6.5%に低下すると、主要行の中でも自己資本比率規制(9.3%超)を満たせなくなる銀行が出始めるとの結果に

【 GDP倍増計画の達成に必要な成長率 】 【 人民銀行による銀行ストレステスト結果 】

(自己資本比率への影響)

1 27

実質GDP成長率+6 5%

2014年末現在 平均13.02%

2 0

2.5

12

15

(%)

実質伸び率

(実績、左目盛) GDP(右目盛)

(2010年=1)

3

1

8

5

17

22

実質GDP成長率+5.5%

まで低下

実質GDP成長率+6.5%

まで低下平均12.64%

平均12.14%1.5

2.0

9

12 (右目盛)

7 6 15

0 4 8 12 16 20 24 28

実質GDP成長率+4.0%

まで低下

(行)

9 3%以下 9 3%超10 5%未満 10 5%以上

平均10.97%

0.5

1.0

3

6

今後6年間の所要伸び率

(左目盛)(注)調査対象となった28行は、中国工商銀行、中国農業銀行、中国銀行、中国建設銀行、交通銀行、中国郵政

儲蓄銀行、招商銀行、上海浦東発展銀行、中信銀行、興業銀行、中国民生銀行、中国光大銀行、華夏銀行、広発銀行、平安銀行、北京銀行、上海銀行、江蘇銀行、恒豊銀行、浙商銀行、渤海銀行、寧波銀行、南京銀行、天津銀行、重慶農商銀行、北京農商銀行、成都農商銀行、上海農商銀行。2014年末の財務諸表に基づくストレステスト。

(資料)中国人民银行金融稳定分析小组『中国金融稳定报告2015』中国金融出版社 2015年より みずほ総合

(注)GDPは2010年を1とした場合の規模を表す(実質値)。(資料) 中国国家統計局 CEIC Dataより みずほ総合研究所作成

9.3%以下 9.3%超10.5%未満 10.5%以上

0.00 2010 2012 2014 2016 2018 2020

(年)

(左目盛)

25

(資料)中国人民银行金融稳定分析小组『中国金融稳定报告2015』中国金融出版社、2015年より、みずほ総合研究所作成

(資料) 中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

3章のまとめ

○ 2008年末から実施された4兆元の景気刺激策を契機に、資本ストックおよび債務の過剰

感が鮮明となり、それが足元で投資の下押し圧力に

○ 生産年齢人口(15~64歳人口)が2015年をピークに減少に転じる見込み。賃金上昇によ

る輸出競争力の低下や労働投入の伸び鈍化等を通じて、中長期的な成長の下押し要因

となる可能性

○ こうした背景の下、中国政府は、ニューノーマルへの移行を標ぼう。成長率の鈍化は不可避であり、かつ、持続的成長のためには経済構造の転換が必要との認識の下、経済運営を行っていくことを強調運営を行っていくことを強調

○ ただし、雇用の安定維持、GDP倍増目標の達成、金融システムの安定などの観点から

みて許容できる成長率の下限を下回らないよう、緩やかに経済を減速させていく見込みみて許容できる成長率の下限を下回らないよう、緩やかに経済を減速させていく見込み

26

4.短期展望

~ 景気下支え策により+6%台後半の成長を維持 ~景気下支え策により+6%台後半の成長を維持

27

4 .( 1 ) 金融政策 ~ ① 相次ぎ実施される金融緩和策

○ 2014年11月に預金 貸出基準金利を引き下げて以降 人民銀行は金融緩和策を相次いで実施○ 2014年11月に預金・貸出基準金利を引き下げて以降、人民銀行は金融緩和策を相次いで実施

・ 預金・貸出基準金利の引き下げは、2014年11月、2015年3、5、6、8月の合計5回実施

・ 預金準備率の引き下げは、2015年2、4、6、9月の合計4回実施(6月は条件を満たした金融機関のみ対象)

――― 農業セクターや小規模・零細企業向け貸出などを促進するための対象金融機関を絞った引き下げも実施 農業セクタ や小規模 零細企業向け貸出などを促進するための対象金融機関を絞った引き下げも実施

・ このほか、公開市場操作による資金需給調整や、特定の期間の資金供給のために新設したツールにより流動性を供給

――― 短期:常備貸借ファシリティ(SLF)、中期:中期貸出ファシリティ(MLF)、長期:担保補完貸出(PSL)

【 貸出・預金基準金利、預金準備率 】 【 公開市場操作・資金供給ツールの実施状況 】

20

24

10

12

(%)(%)

預金準備率(大型金融機関、右目盛)

1,500

2,000

(10億元) SLM・MLF・PSLの合計残高

公開市場操作でのネット供給・吸収額

12

16

20

6

8

10

貸出基準金利(1年物、左目盛)

500

1,000<公開市場操作>

ネット供給

4

8

2

4預金基準金利(1年物、左目盛)

▲ 500

0

ネット吸収

(資料) 中国人民銀行 CEIC D より みずほ総合研究所作成

00 2012/01 2013/01 2014/01 2015/01

(年/月)(注)1.SLFは常備貸借ファシリティ、MLFは中期貸出ファシリティ、PSLは担保補完貸出。

2.SLF・MLF・PSLは残高(直近は2015年8月末)、公開市場操作はネットのフロー額(直近は2015年9月)。

▲ 1,0002013/06 2013/12 2014/06 2014/12 2015/06 (年/月)

28

(資料) 中国人民銀行、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成 (資料) 中国人民銀行、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

4 .( 1 ) ② 金融緩和実施の背景

○ 金融緩和実施の主因は 資金調達 ストの引き下げによる景気の弱含み の対応のほか 人民元安圧力を受けた為替○ 金融緩和実施の主因は、 資金調達コストの引き下げによる景気の弱含みへの対応のほか、人民元安圧力を受けた為替市場への介入(人民元買い・米ドル売り)に伴う国内の流動性減少への対応

・ 2013年後半以降、実勢実質貸出金利がインフレ率低下により上昇基調で推移していたことを受けて、利下げを実施

・ 2014年末頃から、人民銀行を含む金融機関の外貨売却額が買入額を上回る局面が増加し、人民元の供給がタイト化し年末頃 、 民銀行を含む 融機関 外貨売却額 買入額を 回る局面 増加 、 民元 供給 タイ 化やすい状況に

・ 2014年6月以降の金融緩和には、株式市場の安定を図る狙いも

【 CPI、実質預金金利、実勢実質貸出金利】 【 金融機関の外貨純買入額 】

6

8

実勢実質貸出金利 貸出基準金利(1年)

CPI 実質預金金利(前年比、%)

6,000

8,000(億元)

2

4

0

2,000

4,000

▲ 2

0

▲ 6,000

▲ 4,000

▲ 2,000

(注)実勢貸出金利は非金融企業向けの月平均値(通常3カ月おきに中国人民銀行が発表)。実質金利は、名目金利-CPI上昇率で計算。

▲ 411 12 13 14 15 (年)

(注)外貨純買入額は、中国人民銀行を含む金融機関の外国為替資金残高の前月比増減額。これらの金融機関がネットで外貨買取に投入した人民元の金額を示す。

▲ 8,00011/1 12/1 13/1 14/1 15/1 (年/月)

29

(資料) 中国人民銀行,中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成増減額。 れ 融機関 ネッ 外貨買取 投入 人民元 額を示す。

(資料)中国人民銀行、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

4 .( 1 ) ③ 金融緩和により資金供給の拡大ペースは幾分加速

○ 金融緩和により 実際に資金供給の拡大ペ スは幾分加速○ 金融緩和により、実際に資金供給の拡大ペースは幾分加速

・ M2の伸びは、2015年4月を底に、上昇基調に

――― ただし、7月以降については、株式買い支えのための資金供給により伸びが上振れた面があるとみられる

・ 2013年以降趨勢的に低下してきた社会融資総額の残高の伸びも 足元ではやや持ち直し2013年以降趨勢的に低下してきた社会融資総額の残高の伸びも、足元ではやや持ち直し

【 M2 】

(前年比、%)

【 社会融資総額(残高) 】

銀行貸出以外(前年比 %)20(前年比、%)

20

25銀行貸出以外

銀行貸出

社会融資総額

(前年比、%)

10

15

10

15

5

10

0

5

(資料)中国人民銀行、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

2013/04 2013/10 2014/04 2014/10 2015/04

(年/月)(注)1.社会融資総額は、銀行貸出(人民元・外貨)、委託貸出、信託貸出、銀行引受手形、

社債、株式発行による資金調達の規模。2.月次の残高は推計値。

(資料)中国人民銀行 CEIC D より みずほ総合研究所作成

2013/01 2013/07 2014/01 2014/07 2015/01 2015/07(年/月)

30

(資料)中国人民銀行、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

4 .( 2 ) 財政政策 ~ ① 赤字幅拡大により景気下支えを強化

○ ただし 過剰資本スト ク 債務を企業が抱えているため 金融緩和の景気浮揚効果は限定的となりやすい うしたなか○ ただし、過剰資本ストック・債務を企業が抱えているため、金融緩和の景気浮揚効果は限定的となりやすい。こうしたなか、中国政府はより直接的な景気下支え効果を持つ財政政策を強化

・ 2015年の財政赤字の対GDP比(予算ベース)は2.3%に拡大。財政余剰資金等の活用も考慮すると2.7%に

――― 財政部副部長が赤字幅を更に拡大させる可能性を示唆した、との報道も財政部副部長 赤字幅を更 拡大さ る可能性を 唆 、 報道も

・ インフラ投資に関わる計画の発表・承認を急ぐ動きもみられるように

――― 財政部部長が、2016年に予定されている投資プロジェクトの前倒しでの実施についても言及

【 財政赤字の額と対GDP比 】 【 2015年に入り公表されたインフラ投資関連の主な政策 】

発表日 発表機関 政策名 概要

3月28日発展改革委員会

外交部商務部

「一帯一路」共同建設に関するアクションプラン

シルクロード沿線地域における、交通インフラ(道路、港湾、航空)、エネルギーインフラ(石油・天然ガスパイプライン、電力網)、通信インフラなどの建設を促進。

18,0003.0

(億元)

財政赤字(右目盛)

財政赤字対GDP比(左目盛)(GDP比%)

4月6日 国務院長江中流都市群発展計画

長江中流都市群における、①都市部と農村部の発展の一体化、②インフラ施設の相互連結、③産業の協調発展、など6つの計画を発表。

合計1 043項目 総額1 97兆元のPPPプロ9,000

12,000

15,000

1.5

2.0

2.5

5月25日 発展改革委員会 PPPプロジェクトリスト合計1,043項目、総額1.97兆元のPPPプロジェクトのリストを公表。

6月30日 発展改革委員会 4大インフラプロジェクト①都市軌道、②現代物流、③新興産業、④製造業競争力強化、の4分野で投資を促進。

月 日 国務院都市地下総合パイプライ 建設に関する指導

都市部における地下パイプライン(電気・ガ0

3,000

6,000

0 0

0.5

1.0

(注)2015年の値は予算ベース。(資料)中国財政部 より ずほ総合研究所作成

8月10日 国務院 イン建設に関する指導意見

都市部における地下パイプライン(電気 ガス、通信・放送、給排水など)を建設。

5月~9月 発展改革委員会地方インフラ投資プロジェクトの承認

鉄道や空港、都市軌道等の地方インフラプロジェクトを承認。プロジェクトの総額は、5月4,670億元、6月2,570億元、7月230億元、8月228億元、9月4,200億元。

▲ 3,000

0

▲ 0.5

0.0

2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014(年)

31

(資料)中国財政部、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成 (資料)中国国務院、国家発展改革委員会、各種報道より、みずほ総合研究所作成

4 .( 2 ) ② 資金調達の制約に直面した中国政府

○ ただし 地方政府が財政資金の調達難に直面 それが 財政政策実施のネ クに○ ただし、地方政府が財政資金の調達難に直面。それが、財政政策実施のネックに

・ 地方政府の重要な財源のひとつが政府基金収入の大半を占める土地使用権譲渡収入。しかし、2014年来の住宅市況の冷え込みを受け、2014年10~12月期以降、土地使用権譲渡収入が前年比で減少を続ける

・ また、地方政府の野放図な資金調達による債務急拡大を抑えるため、2015年から地方政府による債務性資金の調達をま 、地方政府 野放図な資 調達 る債務急拡大を抑 る 、 年 地方政府 る債務性資 調達を中央政府が厳格化。これにより、地方政府が融資平台(※)に暗黙の政府保証を与えて資金調達をすることも困難に

(※)地方政府が公共投資プロジェクトの資金調達・実施等を目的として、財政資金や土地使用権等で出資して設立した機関

【 財政収入の名目伸び率(種類別寄与度) 】 【 新規の地方政府債務に関する制度改革方針 】

15

20

25 財政収入全体

(前年比、%)

○ 傘下の融資平台等を通じて間接的に借り入れ

○ 借入主体は地方政府本体のみ

借入

これまで 2015年以降

5

10

15 予算内収入 ○ 調達手段は主に銀行借入。社債や信託なども利用

○ 調達手段は地方債発行のみ

○ 使途に関する規定は存在せず○ 使途は公益性の高い資本支出と

既存債務返済に限定

借入

使用・管理

▲ 10

▲ 5

0

政府基金収入

○ 予算計上されず、各借入主体が個別に管理

○ 債務は、地方政府予算に計上して一括管理

返済○ 返済責任の所在が曖昧

借 主体 方政府 等

○ 地方政府の返済責任範囲を明確化。また「地方政府が返済責任を負 央政府 救済 な

使用 管理

(注)予算内収入は主に税収、政府基金収入は主に土地使用権譲渡収入。(資料) 中国財政部 CEIC D より みずほ総合研究所作成

▲ 152013 2014 2015

(年)

政府基金収入

(資料) 中国国務院より、みずほ総合研究所作成

返済(借入主体か、地方政府か、等) 負い、中央政府は救済しない」と

の原則を明示

32

(資料) 中国財政部、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

4 .( 2 ) ③ 資金調達支援策を矢継ぎ早に公表

○ 資金制約の緩和に向けて 201 年春以降 イン ラ投資向けの資金調達支援策を強化○ 資金制約の緩和に向けて、2015年春以降、インフラ投資向けの資金調達支援策を強化

・ 融資平台向け銀行貸出の緩和、企業債発行の要件緩和、保険資金や民間資金の活用、借換債発行による地方政府の利払い負担軽減、財政余剰金の活用、政策性金融機関の資本増強など

【 2015年に入り公表されているインフラ投資関連の主な資金調達支援策 】【 2015年に入り公表されているインフラ投資関連の主な資金調達支援策 】

政策概要

2014年9月21日前に着工し、2014年12月末までに貸借契約が結ばれたプロジェクトのうち、①返済期限が到来していない貸出については 一定の条件の下 貸出を継続 ②返済期限が到来し

主な資金調達方法

銀行貸出の継続 済期限が到来していない貸出については、一定の条件の下、貸出を継続、②返済期限が到来したものの、元利金返済が難しいものについては、契約額を超えない限りにおいて再契約を許可

地方債地方政府による借換債の発行を3.2兆元まで許可。公募発行に加えて特定の銀行等に対して発行する方式も採用し、発行しやすい環境も整備。

銀行貸出の継続

債券発行の促進・審査緩和

企業債格付が一定基準を満たす企業債等について、重点プロジェクトやPPPプロジェクト向け債券の発行要件を緩和、発行上限も撤廃。銀行借入の返済資金や経常資金としての利用も許可

インフラ建設向けに保険会社の資金を活用するための基金(3,000億元)を設立

2015年6月末時点で中央政府および地方政府合計で総額2 15兆元のPPPプロジェクトを公表(中

審査緩和

保険資金の活用

2015年6月末時点で中央政府および地方政府合計で総額2.15兆元のPPPプロジェクトを公表(中央1,800億元、地方1兆9,700億元。ただし、調達済みの金額ではなく、主に資金を募集するプロジェクトの規模)。民間資金の呼び水とするため、PPP基金も設立(1,800億元)

地方政府等において過去に予算に計上されたものの未使用となっている資金を回収し、重点プロジェクト等に充てることを促進

PPPの導入促進

財政余剰金の活用

外貨管理局が、外貨準備を用いて国家開発銀行と中国輸出入銀行の資本を増強。資本の注入額は、それぞれ480億ドル、450億ドル。

一部投資プロジェクトの立ち上げに必要な資本金比率を引き下げ

政策性金融機関の資本増強

その他

33

(資料)中国国務院、中国国家発展改革委員会、中国財政部より、みずほ総合研究所作成

4 .( 2 ) ④ 徐々に進展する資金調達

○ 資金調達支援策の発動により 資金調達が徐々に進展○ 資金調達支援策の発動により、資金調達が徐々に進展

・ 地方債は、2015年発行予定額の約3.8兆元のうち、9月末時点で2.5兆元をすでに発行済み。城投債(融資平台が発行する債券等の総称)も、2014年前半から2015年初頭にかけて発行が減少していたが、2015年春以降は着実に発行が進む

・ 未使用の財政資金については、8月末時点で約3,000億元が回収済みで、緊急を要する分野に充てられる方針未使用 財政資 、 月末時点 約 , 億元 回収済 、緊急を要する分野 充 れる方針

○ ただし、PPPについては、まだ民間資金を十分に導入できていない恐れあり

・ 呼び水となり得るPPP基金が、どの程度機能するかが今後のポイントに

【 地方債の発行状況 】 【 城投債の発行状況 】【 方債 発行状況 】 【 城投債 発行状況 】

8 000

10,000(億元)

2015年5~9月で

合計約2.5兆元発行

(1~4月は発行無し)

3,000(億元)

6,000

8,000

2,000

2,000

4,0001,000

(注) 新規および借換の地方債。2013年および2014年は通年のデータ。 (資料) Windより、みずほ総合研究所作成

02015/0915/0815/0715/062015/0520142013

(年/月)

02013/10 2014/04 2014/10 2015/04 (年/月)

34

(資料) Windより、みずほ総合研究所作成

4 .( 3 ) 人民元の大幅切り下げによる輸出振興は控えられる公算大

○ 月11 1 日 人民銀行は人民元対ドルレ ト基準値を10日対比 %切り下げ それに伴い 実勢値は約 %の元安に○ 8月11~13日、人民銀行は人民元対ドルレート基準値を10日対比4.7%切り下げ。それに伴い、実勢値は約3%の元安に

・ 人民銀行は、基準値に市場実勢をより反映させることで、長期化していた基準値と実勢値の乖離をすでに是正したと説明

――― それまでは、基準値対比での変動幅下限に近い水準で実勢値が推移。介入により支えていた模様

○ 人民銀行は急激な元安の場合には介入することを示唆 今般の基準値算出方法見直しについては 輸出下支えの思惑

【 人民元レートの水準・方向性に関する 近の主要発言 】

○ 人民銀行は急激な元安の場合には介入することを示唆。今般の基準値算出方法見直しについては、輸出下支えの思惑よりも、人民元のSDR(通貨引出権)構成通貨入りをにらんだ為替レートの市場化推進と価値安定に軸足がある模様。大幅切り下げによる外貨建て債務返済負担の高まりも警戒か。実際、実勢値は安定的に推移

【 人民元対ドルレートの推移 】

水準に関する発言

IMF(6月29日)

・人民元の実質実効レートは、もはや過小評価されていないと推察される

5.95

6.05

(人民元/ドル)

基準値

(変動幅上限)

人民銀行(8月13日)

・基準値の調整を経て、3%前後の累積的な減価圧力は解消され、歪みの修正が基本的に完了したといってよい

相場の方向性に関する発言

人民銀行 ・長期的にみて人民元は増価する。経常黒字の長期持続、

6.15

6.25

基準値元高

人民銀行(8月13日)

長期的 み 人民元 増価する。経常黒字 長期持続、経済の先行きの明るい兆候の出現等が理由

・上記歪みの修正後、将来人民元は再び増価基調に転じる・輸出促進のため10%の元安が必要との意見に根拠なし。

今年1~7月の貿易黒字は3,000億ドル強と大きい・市場の変動が過度に大きい場合、人民銀行は有効な管

6.35

6.45

終値(変動幅下限)

元安

(資料)IMF, “2015 External Sector Report - Individual Economy Assessments,” June 29, 2015, 「央行举行关于完善人民币兑美元汇率中间价报价吹风会」2015年8月13日より、

理を行う・人民銀行は均衡のとれた水準で人民元の基本的安定を

維持することができる

(注)直近値は、2015年9月30日。資 ず

6.55 2015/01/05 2015/04/05 2015/07/05

(年/月/日)

35

央行举行关于完善人民币兑美元汇率中间价报价吹风会」 年 月 日より、みずほ総合研究所作成(資料)bloombergより、みずほ総合研究所作成

4 .( 4 ) 短期経済見通し : 景気てこ入れに頼る形で+6%台後半を維持する展開に

○ れまでにみてきたように 過剰投資 過剰債務を抱えているため 投資の自律的な回復力は今後も弱い状態が続く見込○ これまでにみてきたように、過剰投資、過剰債務を抱えているため、投資の自律的な回復力は今後も弱い状態が続く見込み。また、輸出や消費にも力強い回復は期待しにくい状態

○ こうした状況下、中国政府はインフラ投資に必要な資金の調達支援策の発動など、景気のてこ入れを一段と強化することで、景気の減速スピードを緩やかなものに抑えていく見込み

【 2016年までの成長率見通し 】

(前年比、%) 予測

○ 実質GDP成長率は、2014年の実績+7.3%から、2015年には+6.9%、2016年には+6.6%に低下すると予測

11

12

13(前年比、%)

8

9

10

6

7

8

4

5

08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年)

36

(資料) 中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

( 補足 ) 株価急落の実体経済への影響 ~ ① 概観

○ 経済の悪化 外的シ クの他 株価維持策の縮小観測などを契機に 株価が再び大幅に下落するリスクは残存○ 経済の悪化、外的ショックの他、株価維持策の縮小観測などを契機に、株価が再び大幅に下落するリスクは残存

・ 香港H株市場・中国A株市場に同時上場している銘柄の株価を比較したAHプレミアムをみると、香港株が売られすぎている可能性もあるものの、依然として中国A株市場の方が割高な状態

○ 近の上海総合指数(3,000程度)は、株価が急上昇しはじめた昨年末時点とほぼ同水準。現時点での経済への影響は○ 近 海総合指数( , 程度) 、株価 急 昇 昨年末時点 同水準。現時点 経済 影響比較的軽微とみられる。ただし、急上昇前の水準を大きく下回るようになれば、経済への悪影響が顕在化する恐れも

・ 家計や企業のバランスシート悪化に伴う消費や投資への下押し圧力の発生や、金融機関の経営悪化など

【 ハンセン中国AHプレミアム指数 】 【 株価下落時に想定されうる経済への悪影響の経路 】160

家計・企業のバランスシートの悪化

・逆資産効果・純債務拡大に伴う返済負担の高まり

株 担保 値 落 資金 達

140

150

160

・株式担保価値の下落による企業・家計の資金調達力の低下

金融機関の経営悪化

110

120

130

A株割高

●個人消費への下押し圧力●投資への下押し圧力

90

100

110株 高

A株割安

(注) A株市場、H株市場双方に上場している銘柄を選び、両市場におけるこれらの銘柄の株価の高低を比較した指数。100を超えると、A株がH株に対し割高であることを意味する。直近値は2015年9月30日。

●投資への下押し圧力●流動性リスク・信用リスクの高まりによる

金融不安の発生802014/7 2014/10 2015/1 2015/4 2015/7 (年/月)

株割安

37

直近値は 年 月 日。(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成 (資料)みずほ総合研究所作成

( 補足 ) ② 家計への影響

○ 株価が大きく底割れした場合 従来と比べれば 逆資産効果や インド悪化により幾分個人消費が減速しやすくな てい○ 株価が大きく底割れした場合、従来と比べれば、逆資産効果やマインド悪化により幾分個人消費が減速しやすくなっている恐れがあるため、注意が必要

・ 家計の金融資産に占める株式・理財商品・信託・保証金・ファンドのシェアは2014年末時点で35%に拡大。このうち、株式以外で運用されている金融商品を除くと、その割合は11%程度に(概算)

・ 所得に対するリスク資産残高の規模は拡大傾向。従来よりは逆資産効果やマインド悪化が起きやすい状況になっている恐れはあり

【 家計の金融資産の内訳 】 【 リスク資産残高の対可処分所得比 】

(倍)(%)

1.0

1.2

1.4(倍)

80

100( )

保証金

理財商品

信託

0.4

0.6

0.8

60

債券

ファンド

株式

0.0

0.2

0.4

2004 2006 2008 2010 2012 2014 (年)20

40

預金

保険

(注) 1.都市部1人当たり可処分所得、農村部1人当たり純収入にそれぞれの地域の人口をかけ、全国の年間可処分所得とみなした。

2.リスク資産は、左図のうち、債券、株式、ファンド、保証金、理財商品、信託。理財商品等のうち一部は預金等の安全資産で運用されている点に留意(例えば理財商品の預金での運用比率は2014年末時点で26.6%)。

(資料) 中国国家統計局、社会科学院『中国国家资产负债表2015』 より、みずほ

02004 2006 2008 2010 2012 2014 (年末)

現金

38

(資料)社会科学院『中国国家资产负债表2015』より、みずほ総合研究所作成(資料) 中国国家統計局、社会科学院『中国国家资产负债表 』 り、 ず

総合研究所作成

( 補足 ) ③ 企業への影響

○ 株価の底割れによる企業 の影響としては 財テク収入の減少や保有株式の含み損発生による収益悪化が想定される○ 株価の底割れによる企業への影響としては、財テク収入の減少や保有株式の含み損発生による収益悪化が想定される

・ 工業部門では、本業が低迷するなか、投資収益により利益が押し上げられていた可能性も。なお、企業の金融資産構成は、統計の制約により不詳ながら、株式のシェアは2014年末時点で10%前後の模様

○ 株式市場からの資金調達等の滞りによる投資の落ち込みも想定されるが、その影響は限定的となる可能性大○ 株式市場 資 調達等 滞り る投資 落ち込 も想定される 、そ 影響 限定的 なる可能性大

・ 株式担保融資の残高は5,000億~1兆元程度の模様であり、2014年の固定資産投資対比で1~2%程度と大きくない。IPOの一時見送りの影響についても、2015年上期のIPOによる調達額(A株市場)が固定資産投資対比0.6%と、限定的

【 企業部門の保有金融資産(2014年末時点の推計値) 】【 工業企業利益の内訳(推計) 】

預金100

200(前年比、億元)

預金32%

その他55%

▲ 100

0

株式11%

信託

▲ 300

▲ 200 その他利益

投資収益

利益

(注)預金は、企業預金残高。株式保有残高は、上海・深圳証券取引所の2014年時点の株式時価総額(流通株)に、上海証券取引所における2013年の企業の保有シェアを乗じて算出。信託残高は、2014年末の残高に、同年6月末時点の非金融機関・富裕層のシェア(30.85%)を乗じて算出。金融資産総残高には、社会科学院の推計値を利用。

(資料) 中国人民銀行、上海証券取引所、深圳証券取引所、中国国家統計局、社会科学院

2%

(注)利益総額には中国国家統計局の公表値、投資収益には国家統計局職員の解説で挙げられた値を用い、差額をその他利益とした。なお、2015年5月の内訳は不明。

▲ 4002015/01 2015/03 2015/05 2015/07

(年/月)

39

(資料) 中国人民銀行、 海証券取引所、深圳証券取引所、中国国家統計局、社会科学院『中国国家资产负债表2015』等より、みずほ総合研究所作成

挙げ れ 値を用 、差額をそ 他利 。なお、 年 月 内訳 不明。(資料)中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

( 補足 ) ④ 金融機関への影響

○上海総合指数が2 000に落ちた際の信用取引の損失額は 大3 000億元(光大証券試算) 証券業全体で赤字となる恐れも○上海総合指数が2,000に落ちた際の信用取引の損失額は 大3,000億元(光大証券試算)。証券業全体で赤字となる恐れも(昨年の証券会社の純利益は966億元)。ただし、自己資本は今年6月末で1.3兆元あり、大量破たんの可能性は低い

○ 銀行から株式市場への資金流入はあるが、その規模は限定的。株価下落のみで金融不安が著しく高まる可能性は低い

・ 光大証券の試算等に基づくと、銀行に発生し得る損失は約3,600億元。銀行から場外信用取引への資金流入は不明なが光大証券 試算等 基 く 、銀行 発 得る損失 約 , 億元。銀行 場外信用取引 資 流入 不明なら、それが大量損失を出しても、商業銀行の貸倒引当金2.1兆元(今年6月末)の範囲内に収まる見込み

○ ただし、過剰投資の結果、不良債権拡大ペースがそもそも速まっている中、その処理余力を弱めることになる恐れはあり

【 証券会社・銀行からの株式市場への資金流入経路 】

正規信用取引 傘型信託 場外信用取引 株式担保融資 消費者 商工ロ ン正規信用取引 傘型信託 場外信用取引 株式担保融資 消費者・商工ローン

資金の主な供与主体 証券会社 銀行理財資金 民間融資会社銀行、証券会社、信託、企業など

銀行

資金提供規模 2兆元 8,000億元 1~1.5兆元 6,000億~2兆元 1.3~2.5兆元

レバレッジ比率 2倍前後 2~3倍 5~6倍 - -

証拠金率資金借入25~150%

N/A N/A証拠金率証券借入50~140%

N/A N/A - -

マージンコール(一例) N/A 投資総額の69~90% 貸出額の110~113% - -

ロスカット(一例) N/A 投資総額の64~85% 貸出額の104~108% - -

その他 - - - 担保掛目:0.5以下 -

銀行・銀行理財からの流入資金

2,000億~1兆元 8,000億(15年6月末) N/A 4,000億~5,000億元 1.3~2.5兆元

概要

流入資金

証券会社に生じる損失

レバレッジ比率3倍との仮定に基づく推計でも、発生する損失は3,000億元程度で、倒産には至らず

- - - -

2015年1~6月の新規貸出

上海総合が2,000まで下落した場

・光大証券の試算等に基づくと、銀行に発生し得る損失は傘型信託、株式担保融資、消費者・商工ローン合計で約3,600億元

・銀行から場外信用取引への資金流入は不明ながら、それが大量損失を出しても、商業銀行の貸倒引当金2.1兆元(今年6月末)の範囲内に収まる見込み

(注)資金提供規模については、正規信用取引は2015年6月末時点、その他は2015年5月~6月時点の推計値。損失額の推計は、消費者ローンを除き光大証券の損失率推計に基づく。

銀行に生じうる損失規模

証券会社が倒産しないため、銀行への損失は発生せず

レバレッジ比率4倍との仮定に基づく推計で、1,400億元程度

-不良化率は相対的に低い10%と仮定し、800億元

2015年1 6月の新規貸出額のうち株式投資に利用された分(総額の1割と仮定)が全額返済不能になったと仮定した場合、推計1,400億元程度

下落した場合の損失の

推計

40

(注)資金提供規模に いては、正規信用取引は 5年6月末時点、その他は 5年5月 6月時点の推計値。損失額の推計は、消費者 ンを除き光大証券の損失率推計に基 く。(資料)国泰君安証券、申銀万国証券、光大証券、Credit Suisse資料、上海・深圳証券取引所、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

( 補足 ) ⑤ 懸念される株価維持策の副作用

○ 中国政府は 株価の底割れを防ぐため 中国証券金融などを使 た株価維持策( O)に加え 証券 保険会社等 の株○ 中国政府は、株価の底割れを防ぐため、中国証券金融などを使った株価維持策(PKO)に加え、証券・保険会社等への株式購入促進策や、大株主等への売却禁止措置など強硬な対策も実施

・ 買い支え規模は不明。9,000億元(政府のみ、ゴールドマン・サックス試算)~5兆元(官民合計、ロイター試算)等の見方も

○ 株価がPKOを開始した時点の水準(上海総合指数で3,300台)を大きく下回った場合、PKOに関わった金融機関のバランス○ 株価 を開始 時点 水準( 海総合指数 , 台)を大きく下回 場合、 関わ 融機関 ラシートが悪化したり、その損失補てんのための財政支出を余儀なくされ、財政の健全性を損なったりする恐れあり

○ 他方、PKOが長期にわたれば、モラルハザードが続き、資本市場の健全な発展が損なわれることに

【 主要な株価維持策 】

実施主体 内容実施主体 内容

中国証券金融 ・7月8日、証券会社の自己勘定での株式購入用に、株式担保貸出の形で2,600億元の信用枠を設定・8月6日、中国証券金融が確保済みの3兆元の他、更に2兆元の資金確保を目指していると、ブルームバーグが報道

証券会社21社 ・7月4日、①6月末の純資産の15%、すなわち1,200億元以上を優良銘柄で構成される上場信託投信(ETF)の購入に充て、上海総合指数が 以下の時は売却せず 適時買い増す ②自社株買いを積極的に行い 大株主の買い増しを促す等の方針を発表合指数が4,500以下の時は売却せず、適時買い増す、②自社株買いを積極的に行い、大株主の買い増しを促す等の方針を発表

中央匯金投資 ・7月5日、ETFを購入したと発表(金額未発表)。7月8日、保有する上場企業株を売却しないことなどを発表

投資信託会社57社 ・7月7日、21.6億元の自己資金を用い、株式ファンドに投資すると発表

中央国有企業 ・7月8日、株価が自社の価値から大きく乖離した場合に自社株買いを強めるとの方針などを発表中央国有企業 7月8日、株価が自社の価値から大きく乖離した場合に自社株買いを強めるとの方針などを発表

国有金融機関 ・7月8日、株式市場に異常な動きがみられた場合、国有金融機関による上場企業株の買い増しを支援すると発表

保険会社 ・7月8日、保険監督管理委員会が、条件を満たした保険会社に対し、株式等の有価証券投資の総資産比率の上限を引き上げ。それにより 大1兆元超の優良株への投資積み増しが可能に

月 証券監督管理委員会が投資枠を 億ド から 億ド 拡大すると発表( 億 強 投資枠増加)QFII ・7月3日、証券監督管理委員会が投資枠を800億ドルから1,500億ドルに拡大すると発表(4,000億元強の投資枠増加)

基本養老保険基金(年金基金)

・6月29日、人力資源・社会保障部、財政部が、年金基金に対して純資産の30%を上限に株式市場での運用を解禁するとの草案を発表。8月23日に法規を公布、1兆元強の資金を株式市場で運用可能に

証券監督管理委員会 ・7月8日、証券監督管理委員会が、持ち株比率5%以上の大株主や企業役員に対して、持ち株の6カ月間売却禁止を公表

41

(資料)各種報道、上記機関ウェブサイトより、みずほ総合研究所作成

4章のまとめ

○ 金融政策については、2014年11月に利下げを実施。それ以降、景気弱含みや元買い介

入に伴う国内の流動性のタイト化等に対処するため、利下げ、預金準備率引き下げ、市

中への資金供給など様々な手段で金融緩和を強化。徐々にその効果が現れている模様

○ 更に、中国政府はより直接的な景気下支え効果をもつ財政政策を強化。2015年に財政

赤字の対GDP比を拡大させる方針。インフラ投資は、地方政府による資金調達制約の強

まりにより、同年初頭に一時停滞するも、資金調達支援措置を講じて対処。足元では

徐々に資金の調達が進んでいる模様徐々に資金の調達が進んでいる模様

○ このように、自律的回復力の弱さを、財政・金融政策による景気てこ入れ強化で補う形で、

2015年には+6 9%の成長 2016年に+6 6%の成長を確保すると予測2015年には+6.9%の成長、2016年に+6.6%の成長を確保すると予測

○ 株価の一段の底割れが実体経済に与える影響については、家計や企業のバランスシート悪化に伴う消費や投資への下押し圧力の発生や 金融機関の経営悪化などが想定さト悪化に伴う消費や投資への下押し圧力の発生や、金融機関の経営悪化などが想定されうる。ただし、現在の株価(上海総合指数で3,000程度)が保たれるなら、影響は限定的となる見込み

42

5.中長期展望

~ 成長と健全性のバランス維持が政策運営の課題に ~成長と健全性のバランス維持が政策運営の課題に

43

5 .( 1 ) 政策運営の余力と課題 ~ ① 金融システムの健全性は徐々に悪化

○ 金融システムの健全性は 現時点では比較的良好も 徐々に悪化する傾向○ 金融システムの健全性は、現時点では比較的良好も、徐々に悪化する傾向

・ 商業銀行の不良債権比率は、2016年6月末時点で1.5%と低水準も、2012年半ばから上昇の一途をたどる。要注意先も含めれば5.1%になる。引当金カバー率も、同時点で約200%と高水準ながら、低下を続ける

・ 債券市場でのデフォルト発生が抑制されているなど、上記の数値が示すよりも金融システムの健全性は高くない可能性も債券市場 デ ォ 発 抑制され るな 、 記 数値 す りも 融シ テ 健 性 高くな 可能性も

○ 今後、過剰生産能力の淘汰等の構造調整の過程で、不良債権増大圧力が高まり、金融システムの健全性確保がより大きな課題となる可能性

【 商業銀行の不良債権比率とカバー率 】 【 社債のデフォルト発生件数 】

250

300

5.0

6.0(%)(%)

4(件)

150

200

3.0

4.0

不良債権カバー率

(右目盛)

要注意先比率

(左目盛)2

3

50

100

1.0

2.0

(左目盛)不良債権比率

(左目盛)

0

1

00.0 2010/03 2011/03 2012/03 2013/03 2014/03 2015/03

(年/月末) (資料) Windより、みずほ総合研究所作成

02014/07 2014/10 2015/01 2015/04 2015/07

(年/月)

44

(資料) 中国銀行業監督管理委員会、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

/

5 .( 1 ) ② 景気対策や金融不安回避策を打てるだけの財政余力は当面あり

○ 景気下支えの継続や 不良債権処理支援など金融不安回避の取り組みに必要な財政余力は 当面はあり○ 景気下支えの継続や、不良債権処理支援など金融不安回避の取り組みに必要な財政余力は、当面はあり

・ 2014年末時点で政府債務残高の対GDP比は約53%と、他国に比べて高い水準とは言えず、経常黒字も持続。財政の健全性維持をある程度犠牲にすれば、国債の発行とその国内消化の余地がまだ存在

・ また、2000年代前半に実施したように、豊富な外貨準備を用いた金融機関の救済なども可能ま 、 年代前半 実施 う 、豊富な外貨準備を用 融機関 救済な も可能

――― 外貨準備高は短期対外債務(1.2兆ドル)の約3倍と潤沢(1倍以上が安全水準とされる)

【 経常収支と外貨準備高 】【 一般政府債務の対GDP比(2014年末時点) 】

(GDP比%)(億ドル) (兆ドル)

246.4250

300(GDP比%)

10

12

5,000

6,000

( 比 )(億ドル)

3

4

(兆ドル)

104.8

73 1100

150

200

4

6

8

2,000

3,000

4,000

2

52.873.1

17.9

65.2 65.0

0

50

100

中国 日本 米国 ドイツ ロシア ブラジル インド

0

2

0

1,000

2000 2004 2008 2012 (年)0

1

2004 2008 2012

(注)経常収支の直近値は2015年1~6月。外貨準備高の直近値は同年6月末時点(対GDP比は2014年7月~2015年6月までのGDPにより算出)。

(注)中国の政府債務残高のうち、地方政府債務残高は偶発債務も含む。(資料)中国財政部、全国人民代表大会、IMF Fiscal Monitor, April 2015、 CEIC Dataより、

みずほ総合研究所作成

中国 日本 米国 ドイツ ロシア ブラジル インド 2000 2004 2008 2012 (年)

経常収支

対GDP比

2004 2008 2012

(年末)外貨準備高

45

は 年 月 年 月までの により算出)。(資料)中国人民銀行、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

5 .( 1 ) ③ ただし財政余力は徐々に低下する見込み

○ ただし 中長期的には財政余力は徐々に失われていく見込み○ ただし、中長期的には財政余力は徐々に失われていく見込み

・ 歳入面では、経済成長の鈍化に伴って税収の伸びが鈍化する可能性があるほか、住宅市場の成長ペース鈍化により土地使用権売却収入の伸びも鈍化する見込み

・ 歳出面では、農村から都市への移住促進に伴う公共サービス支出(教育、医療・衛生、公共住宅等)の増加や、高齢化に歳出面 、農村 都市 移住促進 伴う公共サ 支出(教育、医療 衛 、公共住 等) 増加 、高齢化伴う社会保障関係費の増加などが、中長期的な財政支出の増加圧力に

【 都市化率 】 【 従属人口指数 】

120(%)

70(%)

80

100

120

日本

50

60

70

40

60

80

中国30

40

2014年時点実績

54.8%

2020年目標

60%前後

0

20

1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050

2010年

0

10

20

(注)常住人口ベースの都市化率。(資料)中国国家統計局、「新型都市化計画(2014-2020)」、CEIC Dataより、みずほ総合

研究所作成

(注)生産年齢人口(15~64歳)に対する年少・老年人口(14歳以下および65歳以上)の比率。国連人口推計2015年版の低位推計による。

(資料)Population Division of the Department of Economic and Social Affairs of the United Nations Secretariat World Population Prospects: The 2015 Revisionより、みずほ総合

1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050(年)

0 2000 2005 2010 2015 2020

(年)

46

研究所作成 Nations Secretariat, World Population Prospects: The 2015 Revisionより、みずほ総合研究所作成

5 .( 1 ) ④ 政府の資産・負債状況も悪化の傾向

○ バランスシ ト面でも 財政の健全性が悪化する兆しあり○ バランスシート面でも、財政の健全性が悪化する兆しあり

・ インフラ資本の生産性は低下を続けており、民間資本の生産性との対比でみると、やや過剰になりつつある模様。また、政府債務残高も、先述の通り、まだ高水準とはいえないものの、着実に増加している状況

・ 景気下支え等のために過度な財政支出を行えば、財政の重荷が増し、将来の財政政策の余地を狭めることに景気下支 等 過度な財政支出を行 、財政 荷 増 、将来 財政政策 余地を狭 る

【 中央・地方政府の債務残高 】

1.15

【 インフラの過不足度合い 】

地方政府偶発債務(左目盛)

地方政府債務(左目盛)(兆元) (GDP比%)

1.05

1.10 不足

50

60

50

60地方政府債務(左目盛)

中央政府債務(左目盛)

対GDP比(右目盛)

0.95

1.00

30

40

30

40

0.85

0.90

2004 2006 2008 2010 2012

過剰

0

10

20

0

10

20

(注)地方政府債務の調査対象(政府や債務種類)範囲は、2008年末および2010年末時点に比べ、2012年末及び2014末時点のほうが広い。

(資料)中国審計署、全国人民代表大会、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

2004 2006 2008 2010 2012(年)

(注) 「インフラ資本ストックの限界生産力」の「民間資本ストックの限界生産力」に対する比率をみたもの。1を上回る(下回る)水準の場合、インフラ資本ストックの限界生産力のほうが民間資本ストックの限界生産力よりも高く(低く)、インフラ資本ストックが不足(過剰)とみなすことができる。

00 2008 2010 2012 2014 (年末)

47

(資料)中国審 署、 国 民代表 、 り、 ず 総 研究所 成ック 不足(過剰) みなす きる。(資料) 刘世锦(2015)『中国经济增长十年展望(2015-2024)』より引用

5 .( 2 ) メインシナリオとリスクシナリオ

○ 過剰資本スト クや過剰債務の解消の長期化が見込まれるなか トランデ ングとG 倍増計画の達成を目指し 財○ 過剰資本ストックや過剰債務の解消の長期化が見込まれるなか、ソフトランディングとGDP倍増計画の達成を目指し、財政・金融政策による景気の下支えが続く展開に

○ ただし、その実現のためには「経済の健全性向上」と「一定の成長維持」の2つの経済政策目標のバランスを図る必要があり、従来に増して難度の高い神経質な政策運営が求められることに

○ 経済政策の軸足が「健全性向上」か「成長維持」のどちらかに過度に偏った場合、景気の腰折れ等を招く恐れも

・ 中国共産党が求心力維持のため、雇用の安定やGDP倍増目標の達成に向けて成長維持に偏らないか要注視

【 2020年までの成長率見通し 】 【 メインシナリオとリスクシナリオ 】

健全性向上と成長維持の両立に成功

(メインシナリオ)

構造調整と景気下支えを同時に進め、ソフトランディングを実現

14

16(前年比、%) 予測

健全性向上に偏り、政策運営に失敗(リ クシナリオ)

インフラ投資による景気下支え効果が想定以上に失われたり、デフォルトが多発したりし 経済の腰折れや金融不8

10

12

(リスクシナリオ)多発したりし、経済の腰折れや金融不安を招く恐れ

資本ストック調整圧力が十分に解消さ4

6

成長維持に偏り、政策運営に失敗(リスクシナリオ)

資本 トック調整圧力 十分 解消されず、財政・金融の健全性悪化によってリスク耐性も弱まることで、将来の大規模かつ長期にわたる経済調整のリスクを高める恐れ

0

2

2000 03 06 09 12 15 18 (年)

48

(資料)中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成 (資料)みずほ総合研究所作成

5 .( 3 ) 持続的発展のためには改革加速が不可欠

○ 過剰資本スト ク 債務の安定的解消や 当面の成長維持に加え 将来の持続可能な成長の基盤を作るべく改革を加速さ○ 過剰資本ストック・債務の安定的解消や、当面の成長維持に加え、将来の持続可能な成長の基盤を作るべく改革を加速させることが、不可避の課題

・ 生産年齢人口の減少、過剰資本ストックを背景に、労働や資本の投入に大きく頼った成長の継続は困難。財政余力も上述のように低下する恐れあり。生産性向上による安定成長実現のため、経済、財政、金融など多岐にわたる制度改革が必要

【 第12次五カ年計画数値目標の中間評価 】 【 第13次五カ年計画策定に関する事前研究テーマ案 】

・ 第12次五カ年計画で取り組みが相対的に遅れた資源利用効率改善や環境問題の改善なども不可欠

○ 2016年開始の第13次五カ年計画でどのような改革案を示し、実際に履行できるか、2020年までが習政権の正念場に

進捗状 数分野 テーマ

エコ文明の建設及び制度

地球気候変動への対応及びグリーン・低炭素の発展

イノベーション駆動による戦略の重点とイノベーション型国家の建設イノベーション

環境

既に達成

良好 不良

経済発展:3項目

GDP、サービス業シェア、都市化率

進捗状況(項目数)項目

3国家の建設

教育の現代化と人材強国・人材資源強国建設の推進

現代農業の発展戦略と食糧安全戦略

情報経済の発展

戦略的新興産業の発展

サービス業発展の重点とメカニズム

イノ ション

産業

シェア、都市化率

科学技術・教育:4項目

中高等教育粗就学率、R&D支出の対GDP比など

資源・環境:12項目 4

4

サ ビス業発展の重点とメカニズム

わが国の地域発展の重点と地域の協調発展メカニズム

対外開放戦略及び開放の新たな構造

住宅保障システムと不動産の健全な発展

人口の発展戦略と政策

健康の保障 発展問題

地域開発・対外開放

民生

耕地面積、水・エネルギー使用効率、汚染物質排出削減、森林育成など

国民生活:9項目

1 7

         4 ・1次エネルギー中の非化石エネルギーシェア ・GDP単位当たりエネルギー消費削減率 ・GDP単位当たりCO2排出削減率 ・NOx排出量削減率

(注)1. 国民生活の「平均余命」はN/A。2.2013年6月末時点の状況を評価したもの。

(資料) 「《中华人民共和国国民经济和社会发展第十二个五年规划纲要》实施中期评估报(注) 全25テーマの中から主なものを抜粋。分類はみずほ総合研究所による。(資料) 「第13次五カ年計画前期研究重大テ マリスト」より みずほ総合研究所作成

健康の保障・発展問題

公共サービスの重点と財政保障メカニズム

国有企業改革と非公有制経済の発展

金融市場システムの整備とリスク防止経済制度

雇用・所得、年金・医療保険加入、人口、寿命など

1 7

49

民 民 实告」2014年4月9日より、みずほ総合研究所作成

(資料) 「第13次五カ年計画前期研究重大テーマリスト」より、みずほ総合研究所作成

5章のまとめ

○ 金融システムの健全性は、現時点では比較的良好も、徐々に悪化する傾向。過剰資本

ストック・債務の処理過程で 金融システムの健全性確保がより大きな課題となる可能性ストック・債務の処理過程で、金融システムの健全性確保がより大きな課題となる可能性

○ 景気下支えの継続や金融不安回避に必要な財政余力は当面持続。ただし、成長の鈍化

による財政収入の伸び鈍化や高齢化に伴う財政支出の増加などを背景に 財政政策のによる財政収入の伸び鈍化や高齢化に伴う財政支出の増加などを背景に、財政政策の

余地は次第に狭まっていく恐れあり

が○ 過剰資本ストック・債務の解消の長期化が見込まれるなか、GDP倍増計画達成等のため、財政・金融政策による下支えが続く可能性。ただし「成長維持」と「経済の健全性維持」の2つの経済政策目標のバランスを考慮する必要あり。その難度は高く、どちらかに過度に偏 た場合 景気腰折れ等を招く恐れも偏った場合、景気腰折れ等を招く恐れも

○ また、大量の資本、労働投入に頼った成長がますます困難になるため、将来の持続可能

な成長の基盤を形成することも不可避かつ喫緊の課題に 各種制度改革や環境問題な成長の基盤を形成することも不可避かつ喫緊の課題に。各種制度改革や環境問題へ

の対応などで成果をあげることができるか、2020年までが習近平政権の正念場に

50

(※) 本資料は、みずほ総合研究所 調査本部アジア調査部中国室が作成した。

〔本資料に関する問い合わせ先〕

みずほ総合研究所 調査本部ず 総合研究所 調 本部

アジア調査部 中国室長 伊藤信悟アジア調査部 中国室 主任研究員 三浦祐介

TEL :03-3591-1385

本資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり、取引の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、弊社が信頼に足り且つ正確であると判断した情報に基づき作成されておりますが、弊社はその正確性・確実性を保証するものではありません。本資料のご利用に際しては、ご自身の判断にてなされますようお願い申し上げます。

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