-大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 ·...

38
大阪府政策企画部青少年・地域安全室治安対策課 -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト-

Upload: others

Post on 19-Jan-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 0 -

大阪府政策企画部青少年・地域安全室治安対策課

-大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト-

Page 2: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 1 -

は じ め に

これまでに犯罪被害に関して、お考えになられたことはありますか?被害にあった人が

身近にいなければ、なかなか現実のこととして実感できないかもしれませんが、犯罪によ

る被害は、いつ・どこで・誰があうかは予測できません。

平成 24年中の大阪府の刑法犯認知件数は、約 14万7千件あり、中でも、殺人や強盗と

いった凶悪犯の認知件数は、1千件を超えています。また、交通事故は、約4万8千件発

生しており、180人以上が亡くなっているのが現実です。誰もが被害者やその家族・遺族に

なる可能性があります。

犯罪被害者やそのご家族等は、それまでの平穏な生活が、ある日突然に急変すること

となります。そのようなとき、周囲の理解や支援がとても重要です。そこで、大阪府では、府

民の皆様に被害者の方々の現状を知っていただき、犯罪被害について、考え、理解し、行

動していただけるよう、様々な施策を推進していますが、被害者やその家族が求められる

支援の多くは、生活に密着した事柄です。

このため、日ごろから住民の身近なところで活動されている市役所や町・村役場の職員、

自治会の役員、民生委員・児童委員などの方々の理解と支援が不可欠であり、そういった

方々に迅速かつ的確な支援を行っていただけるよう、犯罪被害に関する基本的な事項を

本冊子にまとめました。

最終章には、「被害者の声」として、犯罪被害にあわれた方のご家族やご遺族の方に、

地域社会や行政に求めることを執筆していただきました。この冊子が被害者支援を実施さ

れる多くの方々のテキストとして活用され、犯罪被害者への支援が深まることを期待して

います。

平成 25年 12月

大阪府政策企画部青少年・地域安全室治安対策課

Page 3: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 2 -

目 次

1 犯罪被害者等が置かれている状況、権利確立の歩み ………………… 3頁

<資料>犯罪被害者等の権利確立の歩み

2 犯罪被害等が与える影響(二次的被害について) ………………… 6

3 犯罪被害者等が必要とする支援(内閣府調査) ………………… 9

4 相談機関等関係機関 …………………10

5 被害者等の声(社会や行政に、何を求めるのか) …………………14

被害者等の声(被害者団体役員等)

各団体における声の集約

<資料>・犯罪被害者等基本法(抄) …………………30

・第2次犯罪被害者等基本計画(概要)

・大阪府犯罪被害者等支援のための取組指針(体系)

・犯罪等発生状況

■用語の定義 (1)「犯罪被害者等」

犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族をいう。(犯罪被害者等基本法 第2条第2項) ・害を被ることになった犯罪等の種別、故意犯・過失犯の別、事件の起訴・不起訴の別、解決・未解決の

別、犯罪等を受けた場所そのほかによる限定をするものではない。 (2)「犯罪等」

犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為をいう。(犯罪被害者等基本法 第 2条第 1項) ・「犯罪」とは、殺人、強盗、放火、強姦、傷害、業務上過失致死傷(人身事故)等、刑法その他わが国

の刑罰法令に触れる行為を意味する。 ・「これに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為」とは、「犯罪」ではないが、これに類する同等の行為

であって、行為の相手方の心身に有害な影響を及ぼすような性質を有する行為をいう。

Page 4: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 3 -

1 犯罪被害者等が置かれている状況、権利確立の歩み

犯罪被害者等に関わる様々な問題は、誰もが考えていくべきものであるが、犯罪被害

者等が受ける被害についての理解が十分なされていないのが実情であり、支援について

の社会の関心は、まだまだ高いとはいえない状況にある。

犯罪被害者等は、突然、生命を奪われ、家族を失い、傷害を負わされ、財産を奪われる

といった直接的被害に遭い、それらによる重大な精神的被害を負うとともに、周囲の好奇

の目、誤解に基づく中傷、無理解な対応や過剰な報道等の副次的な被害に苦しめられる

ことが少なくなかった。

これまでの犯罪被害者等の権利確立の歩みについては、次ページの資料のとおりで

あり、総合的な取組を求める犯罪被害者等の声に応えるべく、平成 16年 12月1日、

犯罪被害者等基本法が議員立法により成立、平成 17年4月1日に施行され、被害に

遭われた方々に対する支援等に関し、国、地方公共団体及び国民の責務が明記されるこ

とによって、各種関連法の改正をはじめ、現在も様々な支援施策が実施、検討されてい

る。

大阪府では、これまでも、犯罪のない都市をめざして、大阪府警察と連携し、安全なまち

づくりに取り組んできているが、街頭犯罪や凶悪犯罪の発生状況は、依然として厳しい状

態にある。そこで、こうした様々な犯罪等が跡を絶たず、府民のだれもが犯罪被害者等と

なる可能性がある中で、大阪府は、だれもが安心して暮らすことができる社会の実現をめ

ざすため、『大阪府犯罪被害者等支援のための取組指針』を平成 18年 12月に策定し、犯

罪被害者等に関する施策を総合的・体系的に推進しているところである。

Page 5: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 4 -

<資料>

犯罪被害者等の権利確立の歩み

年 月 被害者支援に関する出来事

昭和 42 年 6月 「殺人犯罪の撲滅を推進する遺族会」結成 (市瀬氏による)

昭和 48 年 5月 「被害者補償制度を促進する会」結成 (会長:大谷氏)

昭和 49 年 8月 11 月

三菱重工ビル爆破事件 犯罪被害給付制度の必要性が議論となる

新たに「被害者補償制度を促進する会」結成 (市瀬氏、大谷氏が両会を統合)

昭和 55 年 5月 犯罪被害者等給付金支給法を制定 (56 年 1 月施行)

平成 7 年 3月 地下鉄サリン事件

平成 8 年 2月 4月

警察庁「被害者対策要綱」策定 被害者対策が警察の本来業務であること、警察は被害者を保護する立場である

ことを明確化 「大阪被害者相談室」設立

(現:特定非営利活動法人 大阪被害者支援アドボカシーセンター)

平成 9 年 2∼5 月 12 月

神戸連続児童殺傷事件 「少年犯罪被害当事者の会」結成

平成 11 年 3月 「TAV交通死被害者の会」結成

平成 12 年 1月 5月 11 月

「全国犯罪被害者の会」(通称:あすの会)結成 「刑事訴訟法及び検察審査会法」の一部改正(11 月施行)

証人への付添い、遮蔽措置の導入、公判廷における被害者等の意見陳述、ビデオリンク方式の導入(13 年6月施行) 等

「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」の制定 (11 月施行) 「少年法」の一部改正(13 年4月施行)

被害者等の申出による意見の聴取、被害者通知制度、記録の閲覧・謄写可能 等

平成 13 年 4月 12 月

「犯罪被害者等給付金支給法」の一部改正(7月施行) 名称を「犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律」に改正 重傷病給付金創設、障害給付金の支給対象範囲拡大 犯罪被害者等早期援助団体指定制度創設(14 年4月施行) 等 「刑法」の一部改正(同月施行) 危険運転致死傷罪の新設

平成 16 年 12 月 「犯罪被害者等基本法」制定(17 年4月施行) 犯罪被害者等のための施策に関する基本理念を規定 国・地方公共団体・国民の責務、施策の基本事項を規定

平成 17 年 12 月 政府「犯罪被害者等基本計画」策定

平成 18 年 3月 「犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律施行令」「同施行規則」の一部改正(4月施行)

重傷病給付金の支給要件緩和、親族間犯罪における支給制限緩和

Page 6: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 5 -

平成 19 年 5月 6月

「刑法」の一部改正(6月施行) 自動車運転過失致死傷罪の新設 危険運転致死傷罪の適用を自動二輪、原付まで拡大

「少年法」の一部改正(11 月施行) 警察の調査権限規定、少年院に収容できる少年の年齢引き下げ(概ね 12 歳以

上) 「更生保護法」制定(12 月施行) 仮釈放等の審理において犯罪被害者等から意見等を聴取する制度 犯罪被害者等の心情等を保護観察中の加害者に伝達する制度新設 「道路交通法」の一部改正(9月施行) 飲酒運転・ひき逃げの罰則強化 「刑事訴訟法」の一部改正(20 年 12 月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

意見陳述 等) 「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続きに付随する措置に関する法律」の一部改正(20 年 12 月施行) 名称を「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続きに付随する

措置に関する法律」に改正。損害賠償請求に刑事手続きの成果を利用

平成 20 年 4月 「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続きに付随する措置に関する法律」の一部改正(12 月施行) 被害者参加制度を利用する被害者等に対し、その資力に応じ、国選弁護制度を

利用

平成 20 年 6月 「少年法」の一部改正(12 月施行) 少年審判への被害者側の傍聴(加害者 12 歳以上)

平成 22 年 4月 「刑法」及び「刑事訴訟法」の一部改正(同月施行) 重大事件の公訴時効を廃止・延長

平成 23 年 3月 政府「第2次犯罪被害者等基本計画」策定

平成 25 年 6月

「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続きに付随する措置に関する法律」の一部改正(12 月施行)

被害者参加制度を利用する被害者等に対し、出廷時の交通費や宿泊費を支給、国選弁護制度の資力要件の緩和

「道路交通法」の一部改正(12 月施行) 無免許運転の罰則強化

Page 7: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 6 -

2 犯罪被害等が与える影響(二次的被害について)

犯罪被害者等は、一次的被害(犯罪による直接的な被害)だけではなく、その結果として

生じる精神的被害や経済的被害など、長期にわたっていろいろな問題に悩まされる。これ

が、「犯罪による二次的被害」である。

例えば、家族を失ったことによる精神的ショックや、それに伴う体調不良、働き手を失っ

たことによる経済的困窮、警察の捜査や裁判による精神的・時間的負担、周囲の無責任

なうわさ話や過剰取材・報道によるストレスなどが挙げられる。

この他、大怪我をした場合は、医療費の負担、放火の場合などは、住居が必要になる。

また、精神的ショックなどで、会社に行けなくなったり、周囲のうわさ話に耐えられず、転居

を余儀なくされたりと、被害は多方面に広がる。

周囲からの言葉や態度で配慮が欠けていた場合、二次的被害の一つとなる。周囲の人

にとってはささいな一言であったり、善意のつもりでしたことであったとしても、被害者等の

心情を理解していなかった場合には、精神的な負担を与えることになっている場合があ

る。

被害者等は、未だ深い恐怖や不安を持っていたり、自ら犯罪に遭遇したことを逆に恥じ

たり、また犯罪を避けることができなかったことについて、自分を責めたりすることがある。

そこで、被害者等の罪悪感を助長したり、感情や考えを押さえつけることとなれば、被害

者等の心はさらに傷つけられることになりかねない。被害者等からの相談では、二次的被

害を生むということがないように、十分、注意を払う必要がある。

二次的被害を防止するためには、被害者等の複雑な心理状態を理解しようとする姿勢

を持ち続け、被害者等の体験や感情を尊重し、話をせかさず、結論を先取りするのではな

く、まず、その心情を受け止めることが求められる。

Page 8: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 7 -

<被害者の心理>

被害者の方が抱える問題の中でも、精神的被害は深刻である。犯罪の被害を受けた後

は、一種のショック状態が続き、身体にも心にも変調をきたすことが多いが、これは異常な

ことではなく、突然大きなショックを受けた後では誰にでも起こり得ることである。周りの人

は、被害者の方の精神状態などを理解して接し、責めたり、無理に励ましたりすることは避

け、理解と共感と支持することが大切である。

参考―トラウマと PTSD―

トラウマ(Trauma:心的外傷)とは、一般に、犯罪や事故による被害、自然災害、戦争被害、家

族や友人の死等の個人では対処できない衝撃の大きな出来事に遭遇したときに受ける精神的

な傷をいう。トラウマの症状は遭遇した出来事によって様々であり、例えば、子どもを失った親が、

その後社会から離れて自宅に引きこもることもあれば、逆にとり憑かれたように仕事にのめり込

んだりすることもある。

PTSD(Post-traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)とは、一般に事件等の

出来事によりトラウマを受けた人が、その出来事の数週間から数か月後に

●事件等を思い出したり、その夢を見たりするなどその時の苦痛をたびたび再体験する

●事件等の現場に近づけないなど、事件等を思い出させる行為や状況を回避する

●常に緊張して眠れなかったり、びくびくしたりする状態が長期間にわたって続く

などの持続的な精神的、身体的症状を呈することをいう。

トラウマの症状が人により様々であるのに対し、PTSDの症状は、個人の性格や生活史にか

かわらず、かなり共通したものであることが明らかとなっている。

Page 9: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 8 -

★励ますつもりが、傷つけてしまうかもしれない言葉

・気持ちはよく分かる・・・経験もせずに分かるはずがない

・大丈夫、これから良くなる・・・根拠のない断定。どうしてそう言えるのか

・運が悪かった。運命だと思って・・犯人がいるのにわりきれない

・早く忘れること。時間が解決してくれる・・・時間がたっても忘れられない

・命だけでも助かってよかった・・・大変な目に遭っているのにわかってもらえない

・他にも同じような人がいる。あなただけではない・・比較などできない

・残された子どもさんのためにも元気を出さないと・・余計な心理的負担を与える

・がんばれ・・がんばりたくてもがんばれない

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

「運

が悪

った

」等

を強

調

「早

く忘

」等

を促

「い

つま

で沈

いる

んだ

」等

・激

「が

んば

ってね

」等

い感

に励

き等

を粛

と進

める

「つら

った

ょう

」等

はあ

て触

いで

り接

を見

て距

を置

を持

って

の回

を促

の他

の中

つも

%

精神的安定に繋がった言葉・態度

精神的に傷ついた言葉・態度

出典:犯罪被害者等に関する国民意識調査(内閣府)

(被害者やその家族への調査より)

Page 10: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 9 -

3 犯罪被害者等が必要とする支援

被害直後に必要とした支援

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

事件

ついての相談相手

警察

との応対

の手助

、付き添

っとしてお

いてもらう

こと

生活全般

の手伝

日常的な話し相手

病院

への付添

プライバシー等

への配慮

精神的自立

への励まし

・支援

家族

の介護

、子ども

の世話

支援団体

、自助グ

ループ等

の紹

報道機関との応対

の手助

裁判所

に行く際

の付き添

周囲

から

の支援よりも

行政主導

による公的支援が重要

その他

無回答

%

殺人・傷害等の暴力犯罪

交通事故等の犯罪

強姦・強制わいせつ等の性犯罪

出典:犯罪被害者等に関する国民意識調査(内閣府)

(被害者やその家族への調査より)

Page 11: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 10 -

4 相談機関等関係機関

相談全般

NPO法人 大阪被害者支援 アドボカシーセンター

相談・付添い等直接支援 06(6774)6365 10 時~16 時(土日祝休み)

大阪弁護士会 法律相談センター

法律相談 犯罪被害者弁護ライン

06(6364)6251 (火:15時~18時)(祝休み)

大阪地方検察庁 刑事手続き相談 被害者ホットライン

06(4796)2250 9 時~17 時(土日祝休み)

法テラス (日本司法支援センター)

犯罪被害者支援ダイヤル 0570-079714 (月~金 9時~21 時 土:17 時まで)(祝休み)

警察の総合相談 警察相談室 (大阪府警察本部)

#9110 (プッシュ回線専用) 06(6941)0030

大阪保護観察所 受刑者及び保護観察対象者に関する被害者からの相談

06(6949)6522 9時~17 時(土日祝休み)

こころの健康相談

大阪府こころの健康総合 センター

06(6607)8814 (電話相談専用) 9:30 ~17:00(土日祝休み)

大阪府保健所 各保健所については、ホームページをご覧下さい http://www.pref.osaka.jp/chikikansen/hokensyo/syozaichi.htm

各種被害相談窓口((警)は、大阪府警察本部所管)

性犯罪被害 ウーマンライン(警) (女性警察官対応)

06(6941)0110 9時~17 時(土日祝休み) 上記以外の時間帯は、留守番電話での対応

性暴力救援センター・大阪 (通称SACHICO、女性支援員対応)

072(330)0799 24 時間ホットライン

ストーカー ストーカー110番(警) 06(6937)2110

列車内ちかん被害 列車内ちかん被害相談(警) (女性警察官対応)

06(6885)1234

少年相談 グリーンライン(警) 少年からの相談や少年非行等に関する相談

06(6772)7867 9時~17 時 45 分 (土日祝休み)

暴力団被害 暴力団・拳銃110番(警) 06(6941)1166

児童虐待 大阪府子ども家庭センター 府内各地域(※)

チャイルド・レスキュー110番(警) 0120(00)7524(24時間) 06(6943)7076

配偶者暴力(DV) 大阪府女性相談センター 06(6946)7890 9時~20 時(祝休み)

ドーンセンター 06(6937)7800 火~金 17時~20 時、土日

10 時~16 時

大阪府子ども家庭センター 府内各地域(※)

Page 12: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 11 -

交通事故 (一財)大阪府交通安全協会 06(6941)6983

9時~16 時 30 分 (土日祝休み)

サイバー犯罪

サイバー犯罪相談(警) 大阪府警察ホームページから受付 (トップページ>生活安全>サイバ

ー犯罪対策)

悪質商法、高金利融資 などの相談

悪質商法110番(警) 06(6941)4592

※各地域の子ども家庭センターについては、ホームページをご覧ください

http://www.pref.osaka.jp/kodomokatei/jigyou/

雇用関係 就職困難者等就労支援 OSAKAしごとフィールド 06(4794)9198 労働相談 大阪府総合労働事務所 06(6946)2600

Page 13: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 12 -

犯罪被害給付制度

この制度は、殺人などの故意の犯罪行為により不慮の死を遂げた犯罪被害者の遺族又は重傷病若

しくは障害という重大な被害を受けた犯罪被害者に対して、社会の連帯共助の精神に基づき、国が

犯罪被害者等給付金を支給し、その精神的・経済的打撃の緩和を図り、再び平穏な生活を営むこと

ができるよう支援するものです。

給付金の種類

1 遺族給付金

支給を受けられる人は、亡くなられた犯罪被害者の第一順位遺族の方です。

支給を受けられる遺族の範囲と順位は、原則として次のとおりです。

① 配偶者 ② 子 ③ 父母 ④ 孫 ⑤ 祖父母 ⑥ 兄弟姉妹

(注):被害当時の生活状況によって順位は変わります。

犯罪被害者が死亡前に療養を要した場合は、その負傷又は疾病にかかった日から1年間におけ

る保険診療による医療費の自己負担相当額と休業損害を考慮した額の合算額を加算した給付金

が支給されます。

2 重傷病給付金

負傷又は疾病にかかった日から1年間における保険診療による医療費の自己負担相当額と休

業損害を考慮した額を合算した額が支給されます。

支給を受けられる人は、重傷病を負った犯罪被害者本人です。

「重傷病」とは、負傷等の療養期間が1か月以上で、かつ、3日以上の入院を要するものです。

* 精神疾患(PTSD等)である場合は、入院要件は必要でなく、その症状により3日以上

労務に服することができない程度であったことが要件となります。

3 障害給付金

支給を受けられる人は、障害を残った犯罪被害者本人です。

「障害」とは、負傷又は疾病が治ったとき(その症状が固定したときを含む)における身体上

の障害で、障害等級第1級から第14級に該当するものをいいます。

自治体等が発行する「身体障害者手帳」の基準等級とは異なります。

給付金の算定方法

給付金の額は、犯罪被害者の年齢や勤労による収入の額等に基づいて算定されます。

給付金の減額、調整

犯罪による被害でも次のような場合には、給付金の全額又は一部が支給されないことがあります。

・ 被害者と加害者の間に、親族関係があるとき ・ 被害者が犯罪行為を誘発したとき又は容認したとき ・ 犯罪被害について、被害者に不注意又は不適切な行為があったとき ・ 被害者と加害者との関係(金銭関係や男女関係のトラブルなど)その他の事情からみて、

給付金を支給することが社会通念に照らし適切でないと認められるときなど

Page 14: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 13 -

また、労災保険や自賠責保険などの公的補償を受けた場合や加害者等から損害賠償を受けた場合

には、その額と給付金は調整されます。

申請の期限

申請は、犯罪行為による死亡、重傷病または障害の発生を知った日から2年を経過したとき、又

は当該死亡、重傷病又は障害が発生した日から7年を経過したときはできません。

ただし、当該犯罪行為の加害者により身体の自由を不当に拘束されていたことなどのやむを得な

い理由により、この期間内に申請できなかったときは、その理由のやんだ日から6か月以内に申請

をすることができます。

申請手続

給付金の支給を受けようとする方は、住所地を管轄する都道府県公安委員会に申請を行う必要が

あります。

申請の受付は、警察本部又は警察署等において、犯罪被害給付事務担当者が行います。

問い合わせ先

大阪府警察本部府民応接センター 被害者支援第2係

06-6943-1234 (内線25231、25232)

Page 15: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 14 -

5 被害者等の声(本文は、執筆者の原文どおり掲載。平成 20 年3月に寄稿されたものです。)

(1) 林 良平さん(全国犯罪被害者の会幹事)

【事件】

1995 年(平成 7 年)、阪神大震災の8日後の1月25日、私の妻は犯罪被害者と

なってしまいました。

仕事帰りの横断歩道で、見知らぬ男にいきなり出刃包丁で腰背部を根元まで突き

刺されたのです。次男の 5 才の誕生日を祝った翌日の出来事でした。

大量出血のショック状態で救急搬送され、術中の総出血量は 7955 ㏄で、最終的に

10,000cc 出血しました。かろうじて命は助かりましたが今も重い障害に苦しんでい

ます。

妻は西成区の「あいりん地区」の日雇い労働者を低額で診療する100人程の職

員のいる病院で看護師をしており、内科外来主任でした。事件から 4 日後、

「おまえの所の医者はなんや、俺を虫けら扱いしやがって。ほんまは外科の医者や

りたかったんや。」という電話が勤務先病院にかかり、それがきっかけで 2 月 4 日の

夕刊に初めて新聞に記事が掲載されました。当時のマスコミは阪神大震災一色であ

り、妻の事件は報道されませんでしたから、まさに犯人しか知り得ない内容の電話

でした。

事件から 13 年になりますが、犯人は未だに逮捕されないまま、妻は後遺症で働く

ことができず、職場からは解雇という結果になりました。

【背景】

妻も私も、共に鹿児島県の出身です。妻の両親、兄弟がとるものもとりあえず、

事件の翌日入院先の病院に集まりました。命は助かりましたが、

「なぜ、自分の娘が、妹が事件の被害者に・・・」という素朴な疑問から、

「なぜ、こんな危険な場所で働かせたんだ」という非難が私に向けられましたが、

一切弁明をしませんでした。

私は、1972 年に高校を卒業し、生活費と学費を稼ぎながら学ぶ道を選び、大阪に

来ました。親に仕送りをせねばならない環境でしたので、日曜日毎に、「あいりんセ

ンター」で飯場からの送迎バスに乗り、作業現場で「てもと」と呼ばれる職人さん

の補助作業をしていました。3,000 円弱の日当を手にするためです。その年の冬休み

には飯場生活もしました。

クリスマスイブ、20 人余りの大部屋にこの夜は自分一人しかいないと思って布団

を頭から被って寝ようとしていた所、「清しこの夜」が聞こえ見渡したら、布団の上

をふらつきながら黄色いシミが滲む下着姿でハーモニカを奏でる年老いた人がいま

した。その姿に自分の父を重ねてしまい、涙が出ました。

結婚を機に妻は勤めていた鹿児島県内の病院を辞め大阪に来たのですが、こちら

での勤務先を探していた時、この病院が募集をしており、

「看護師としての技術をこの人達のために役立ててくれないか」

と私は妻に依頼しました。

Page 16: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 15 -

妻、両親、兄弟への償いとして、また子供への償いとしての私にできる事は、「責

を死ぬまで負う」という決意だけでした。

【証拠品でしかなかった当時の犯罪被害者】

私は、この日本だから被害者には充分な補償や支援があるものと事件に遭うまで

は漠然と信じ込んでいました。

新聞や雑誌等に加害者の更正した姿などの記事が多かったからです。

しかし、全ては幻想でした。

「被疑者は国家権力から守らなければならない」という概念が全てに優先し、法

律は、法を犯した人間を被害者より崇高な人間扱いしているとわかるまで時間はか

かりませんでした。「犯罪被害者等基本法」制定以前の被害者の状況は

「全国犯罪被害者の会」(通称:あすの会)の設立趣意書に集約されています。

設立趣意書 2000 年 1 月 23 日

「犯罪被害者は、一生立ち直れないほどの痛手を受けながら、偏見と好奇の目にさらされ、ど

こから援助を受ける事もなく、精神的・経済的に苦しみ続けてきました。

国が、社会が、犯罪を加害者に対する刑罰の対象としてのみとらえて、犯罪被害者の人権や被

害の回復に何の考慮も払わなかった為です。

先駆者のご努力により、犯罪被害者等給付金支給法が制定され、犯罪被害者を支援する団体

も生まれて、ようやく犯罪被害者の権利が社会的関心を集めるようになりました。しかし、犯

罪被害者の置かれている現状は、国連被害者人権宣言の精神からも程遠いものです。

『犯罪が社会から生まれ、誰もが被害者になる可能性がある以上、犯罪被害者の権利を認め、

医療と生活への補償や精神的支援など被害回復のための制度を創設する事は、国や社会の当然

の義務である』と考えます。そして、犯罪被害者の権利と被害回復制度の確立は被害者自身の

問題ですから、支援者の方々に任せるだけでなく被害者自らも取り組まなければなりません。

そのため私達犯罪被害者は、犯罪被害者のおかれている理不尽で悲惨な現実を訴え、犯罪被

害者の権利、被害回復制度について論じ、国、社会に働きかけ、自らその確立を目指す為「犯

罪被害者の会」を設立します。全国各地の犯罪被害者が連帯し、「犯罪被害者の会」のもと、

それぞれの抱える苦しみと悲しみを生きる力に変え、今生きている社会を公正で安心できるも

のにするために心と力を尽くします。」

具体例を挙げれば、2000 年のいわゆる「犯罪被害者保護 2 法」が成立するまで、

被害者には裁判が「何時」「何処で」行われるのか、「量刑がどうなったのか」、「犯

人は何処の刑務所に入ったのか」、「何時出所するのか」さえ教えてはもらえなかっ

たのです。

【マスコミ】

被害者におかれている状況に疑念が生じ、1998 年の初め頃、朝日新聞に投書した

ところ、「こもれび」という欄に取り上げられました。

その後、私は「犯罪被害者の権利を確立する当事者の会」を立ち上げ、7 月に設立

集会を行いました。ところが 10 数人の被害者との会合を行ったその日、

Page 17: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 16 -

「和歌山カレー事件」が起こりました。

メディアスクラムが問題提起された事件でもありましたが、現実は、犯人であろ

うと思われる人物への過剰な取材に対する人権擁護が出発点だったようです。しか

し一方、このメディアスクラムが我が国で「犯罪被害者」という主体に目を向ける

機会にもなった「社会的瞬間」でもあったと思います。

前年の 1997 年 5 月、神戸連続児童殺傷事件が起こり、その被害者家族は大変なメ

ディアスクラムの被害者にもなったことは皆さんご存じでしょう。

つまり、マスコミはまだこの時点で被害者の立場についての配慮をしていなかっ

た。しかしこの和歌山カレー事件以降、マスコミの視点は大きく転換しました。犯

罪の陰に、守らねばならない被害者がいるという事実にようやく気づいてくれたの

です。マスコミ報道から受ける「報道被害」には最低でも以下の 3 つのものがある

と私は考えています。

1 つ目はメディアスクラム

2 つ目は報道されないことの不利益、例えば事件報道がされず犯人が逃亡している

3つ目は裏付けのない誤報道でもたらされる風評被害

これらについて、当時マスコミから意見を求められる度にしつこく伝えました。

今後も社会の中で共に考えてゆかねばならないものと思っています。

しかしこの時期、心ある記者の方々に「犯罪被害者の存在」を知って貰った事は

重要で、後の被害者の権利確立活動では心強い後押しをして下さいました。

私たちの心からの叫びを理解して下さったからと思います。感謝しています。

【全国犯罪被害者の会(通称:あすの会)の設立】

2000 年 1 月 23 日、東京・飯田橋の「東京ボランティア・市民活動センター」で

第 1 回シンポジウムと設立総会を開催して、あすの会は正式に誕生しました。代表

幹事は岡村勲弁護士(元日弁連副会長)です。

代表と私の最初の接点は、1998 年 12 月 10 日・読売新聞に掲載された「司法の扉

被害者に開け」という代表の論文でした。

私は「犯罪被害者の権利を確立する当事者の会」の機関紙「クライシス」にこの

論文を掲載しようと考え、なおかつ見た人が理解しやすいよう図表化し、代表に郵

送し使用許可を願ったのが、最初の出会いでした。電話で「使ってもいいよ」と言

ってくださいました。1999 年 5 月の頃でした。

同年、NHK の「生活ホッとモーニング」という番組が私の家族の状況を取材し、

9 月 29 日に放送され、それを見てくださった代表から電話がありました。

「テレビを見て涙が出た。私は立ち上がらねばならないと思う。10 月 10 日の妻の三

回忌が済んだら必ず連絡します。」と。

「それまでに被害者の方を集めてください。私の事務所で会いましょう」と。

1999 年 10 月 31 日、朝 10 時、5 件の犯罪事件被害者が東京・丸の内にある

「岡村綜合法律事務所」に集まりました。

Page 18: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 17 -

皆が自分の遭った事件の実情を語り、くやしさや不条理について涙を流しながら

問わず語りに話し合ううちに、「シンポジウムを開いて被害者の会を作ろう」という

話があっという間に纏まりました。

そこで、この 5 人が設立準備委員となり、翌年の設立総会に繋がったのです。

しかしその総会の 2 日前に、義父が無念の中、他界したため私は結局参加できませ

んでした。故郷で会が成功する事を祈っておりました。

【全国犯罪被害者の会(あすの会)の活動】

犯罪被害当事者の集まりである、あすの会の活動は、ホームページで見ていただ

く方が良いと思います。(パソコンで「全国犯罪被害者の会」あるいは「あすの会」

と入力すれば必ずヒットします) ぜひご覧下さい。

概略を紹介しますと、

1,ヨーロッパ調査

あすの会には「犯罪被害問題研究会」という法律家による被害者の権利を

研究する機関があります。そこでは欧州の犯罪被害者の権利を調査すべきと

の観点から 1 年半の準備期間の後、2002 年 9 月ドイツ・フランス・イタリア

で刑事司法の実情を調査し、犯罪被害者に司法参加が認められている事が分

かりました。その結果を「ヨーロッパ調査報告書」として上梓しました。さ

らにその翌々年には、ドイツとイギリスの犯罪被害者補償制度の実態を調べ

るために渡欧し「第 2 次ヨーロッパ調査報告書」も上梓しました。

2,署名運動

2002 年 12 月 8 日第 4 回あすの会総会にて、「被害者の為の刑事司法」「経

済的補償制度」を求める署名運動を全国展開することを決議し、また被害者

である私たち自身も全国の県庁所在地で街頭署名活動を行う事も決め、2003

年 2 月 1 日、東京新宿駅前を皮切りに 2004 年 2 月 1 日三重県で最後を締め括

りました。最終的に 557215 人の方の署名が集まりました。

3,陳情・請願活動(地方自治法 99 条に基づく意見書を国に提出して貰う為)

2004 年 3 月 3 日、大阪府・京都府・兵庫県の3つの自治体に同時に陳情し

たのを皮切りに、全国展開しました。きっかけは 2003 年秋、堺市議会で私た

ちが知らない間に、心ある議員さんが率先して議会を動かして下さった事を

後で知りました。私たちの新たな活動のヒントとなり全国展開しました。100

を超す自治体が意見書を国に提出して下さり、結果的に国会では政府案でな

く、議員立法という形で成立させようという機運が醸成されたと後で国会議

員の方からお聞きしました。ほんとうに有難いことでした。

【活動の結果】

・2003 年 7 月 8 日、「小泉首相との面会」

首相官邸で被害者の抱える問題を聞いていただきました。25 分間でしたが、

「そんなにひどいのか」とのお言葉が私の耳に残っています。そして、

「政府として検討する」「自民党としても検討する」と言ってくださいました。

Page 19: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 18 -

この言葉が基本法成立への道筋をつけた「鶴の一声」となりました。

・2004 年 12 月 1 日「犯罪被害者等基本法」成立

・2007 年 6 月 20 日「被害者参加制度」成立 (刑事司法において)

これらの全ては、署名をして下さった方々、地方議会の議員さん、マスコミの

皆さん、国会議員の方々、他、多くの方々のご理解とご協力があったからこそと

深く感謝しています。有り難うございます。

【犯罪を無くすために】

犯罪は全てを不幸にします。刑務所の年間経費約 2000 億円を考えますと、馬鹿

にならない社会的コストを私たちは負担していることになります。(被害者に関す

るコストは年間 20億円に満たない)犯罪をなくす教育が最重要課題だと思います。

1,矯正施設における教育

「被害者の視点に立った教育」が行われていますが、私たちが求める真の贖

罪教育・更正教育は行われていません。それを可能にする法がないからです。

再犯を無くす方向性の道筋をつけることが大事と思います。社会全体で考えね

ばならない今後の課題ではないでしょうか。

2,学校教育

軽犯罪を含めると、犯罪における若者の比率は低くありません。

多感な時期に命の大事さ、健康の大事さを教えることが大事であり、犯罪

の予防に繋がります。「加害者にならない教育」はできるはずです。

被害者の視点からそれを教えてゆくことも 1 つの方法論です。基本法にもこ

の事が謳ってあります。文部科学省と自治体の取り組みに期待します。

【今後の課題】

基本法成立の 1 年後、犯罪被害者等基本計画が閣議決定され、現在はそれに基づ

く施策が着々と実行されつつあるところですが、「犯罪に関しては警察の守備範囲」

「被害者問題は分からない」等を首長部局の方々から良くお聞きします。

犯罪者に関する刑事司法の観点から言えば、警察の捜査・検察送致・裁判・刑務

所収容、という一連には、当然ながら首長部局は関与しません。

しかし、被害者の権利を謳った「犯罪被害者等基本法」は、被害者の権利利益を

守るべき主体として国および地方自治体に責務を課してあります。被害者自身が地

域住民であること、隣人であること、幸福に暮らす権利を有するからです。

私たちは過去の何一つ報われない被害者の立場から、いつどこで被害に遭うか分

からない現代社会の中に必要な制度を求めて活動してきました。その制度は確立し、

あるいは確立しつつあります。今後は、この制度の執行に重点は置き換わってゆく

でしょう。自治体の取り組みの温度差による不公平が生じないことを心から願いま

す。

Page 20: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 19 -

全国犯罪被害者の会関西集会からの意見

・ 一番身近な区役所で、犯罪被害に精通した弁護士を紹介してもらえるようなシステムが

あったらよかった。

・ 介護の担い手を失ったとき、行政は、支援の手を差しのべてほしい。地域生活のサービ

ス機関として市町村は、もっと被害者家族に目を向け、生活の実状をとらえたサービスを

提供してほしい。

・ 中小企業の経営者に対して被害者の声を伝えてほしい。例えば、裁判のあるときに休みを

とるなどの理解を得ること。

・ 「人権週間」での講演会等で、被害者当人から直接話す機会を設けてほしい。

・ 役所から直接支援(相談等)を受けられる組織をつくってほしい。

・ 市町村の役割として、被害者が直接相談に行ける課(又は係)を設けてほしい。

・ たらい回しになり、窓口がわからない。

・ 広報活動をもっとするべきだ。

・ 女性職員が少ない。

・ 市町村の温度差がありすぎているので、一律にしてほしい。

・ 被害者(事件別)に話を聞くなど、職員研修をもっとすることが必要。

・ 地域で孤立せざるをえない被害者が少しでも、そういう状況でなくなるように努力をし

てほしい。

・ 上記のことに関して、周りの人たちの偏見や無理解の解消のための努力をしてほしい。

・ 犯罪被害者の現実を知ってもらうことがまず第一。社会・学校等において理解を深めて

もらうために、被害者達の生の声を聞いて考えていただきたい。

・ 少年事件では、知人、近所の方からの偏見に傷ついたので、真実などを知ってもらうと

いう意味でも啓発活動を徹底してほしい。特に学校などの教育現場において。

・ 病気などで死亡しても、その手続きや書類の提出など、役所に行くことが多い。まして、

事件、事故ともなれば警察などへもいかねばならず、その負担は多大。そういった事情を

汲んで、手続きを助けてもらえれば、ありがたい。

・ 区役所単位でちゃんと支援ができる、または対応ができるようにしてほしい。

・ 地域に居る民生委員がサポートに付くなどしてほしい。

Page 21: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 20 -

(2) 武 るり子さん(少年犯罪被害当事者の会代表)

私たち家族は、長男 孝和の事件が起こるまで普通に生活をし、警察や裁判所、弁

護士などに関わることもなく、憲法や少年法などを詳しく知らなければならないこ

ともなく過ごしていました。子供3人に恵まれ少しずつ築きあげた幸せな5人の家

族でした。それが平成8年11月3日、まったく面識のない少年の理不尽な暴力の

ため、一瞬のうちに壊されたのです。

その日は、息子の通う高校の文化祭でした。文化祭に来ていた他校生ら6人グル

ープのうちの2人に謂われのない因縁をつけられたのです。文化祭の後片付けをし

ていた息子の教室に入ってきて、何人かに「○○知らんか?」と、とても威圧感の

ある感じで言ったそうです。最後に息子にもそう言ったそうです。その部屋は、カ

ラオケをしていて、まだ音楽が流れていたそうです。

何か言われた時に後ろを向いていた息子は、よく聞こえなかったのか「えっ?」

と振り返ったそうです。すると返事が悪いと怒りだし、襟首をつかみ、なぐるまね

をしたといいます。もう一人は、いすを振り上げなぐろうとしたそうです。そして

廊下で待っていたもう一人に、「もうええやん、やばい、帰ろう」と言われ、その場

をいったん出ていったそうです。でもその後、一時間近く6人で待ち伏せしていた

のです。相手は身長 180cm 以上でがっしりしていて、とても威圧感があったといい

ます。

息子は友達の自転車に2人乗りをして逃げました。でも1km ぐらい逃げた所で追

いかけてきた相手の少年に捕まってしまいました。その場所は逃げようと言ってい

た友達の家の数メートル手前の所でした。そんな相手に関わりたくないため悪くも

ないのに教室でも謝り、門でも謝り、そして捕まった所でも謝ったと聞いています。

大切に育てた息子でした。軽症でしたけど血が固まりにくい血友病という病気を

持っていたこともあり、大きくなっていくのを楽しみに、一年一年指折り数え育て

た息子でした。過保護にならないようにもしてきました。幼稚園の年長の時、活発

さを生かせるようにボーイスカウトにも入れ、事件当時まで、それを続けていまし

た。

その年の4月に高校生となり、10月6日には、16歳の誕生日を迎えたことも

あり、ホッとした気持ちになったときのことでした。

11月3日、事件直後に病院へ連れて行ったとき、息子が「今日、約束があるか

ら行くで」と言うので、私が「何言ってんの」といつもの調子で交わした言葉が最

後の言葉になりました。その夜中からほとんど脳死に近い状態になり、12日間苦

しいことも悔しいことも何一つ言えず死んでいきました。私は何もできず、ただ命

Page 22: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 21 -

が助かることだけを必死で祈り続けました。でもその願いは届かなかったのです。

自分より先に逝かせたこと、母親として何もできず自分の無力さを責め続けるよ

うになったのです。それ以来数ヶ月、他の2人の子どものことも何もしてやれず家

事もほとんどできず泣いてばかりの毎日でした。

主人はいつも「ケンカになりそうになったらまず謝れ。それでダメなら逃げろ」と

言っていました。それでもダメならどうするんと聞く息子に「2,3発殴られても死

にはせん。とにかく関わるな。」と教えてきたのでした。昔はちゃんとルールがあっ

たということでした。息子は、そのとおり言われたことを守って死んでいきました。

主人は、そう教えてきた自分を責めていました。ようやく順調になってきた内装業

の仕事も行けず職人任せになりました。朝昼晩お酒を飲み続け、部屋に閉じこもり

壁をたたきながら泣き叫んでいました。時にはお互いを責め合うこともありました。

誕生日、入学式、卒業式……今までの喜びは、すべて悲しみに変わりました。小

さいことで言えば、4人で食事をすることも悲しみでした。5人での夕食があたり

まえだったので、その時、下の子が「おいしいね」と言っても苦しくなるのです。

そうすると2人の子供も何も言えなくなるのです。家庭も崩壊しそうになりました。

私も主人も突然に起きた、あまりの悲しみの大きさに心が押しつぶされ、精神的に

極度に不安定な状態だったからです。

それに加えて、私たちの場合、加害者が少年ということで、その当事は、警察か

らも家庭裁判所からも、事件の内容、加害者の名前、何一つ教えてもらえなかった

のです。そのことも私たちの悲しみ、怒り、苦しみをよりいっそう強くさせたので

した。(平成12年の少年法改正以降は、少しずつですが、被害者への配慮も考えら

れるようになってきています)

警察の人は、まずこう言いました。「日本は法治国家であり、個人の恨みをはらす

とか、仇討ちをすることは許されない。そして、少年法という法律があり、加害少

年にも人権があり、立ち直る可能性がある。」と。

家庭裁判所では、こう言われました。「ここは加害少年の将来を考えるところで、

事実関係をどうのこうのする所ではない。親御さんの心情を聞きたいわけではな

い。」というのです。

どこの言葉の中にも殺された息子のことは、まったく入っていませんでした。死

んだものはどうでもいいという扱いに感じたのでした。

こんなことを言われても私たちは強く言い返すことはしませんでした。被害者は

弱い立場にあります。ちゃんと調べてもらわなければと思うし、悪い心証を与えて

はいけないと思うからでした。少年法のことを詳しく知らない私たちは、それでも

まだ何らかの裁きがあると思っていたのです。

でも、人の命を奪ったという事実よりも加害少年の保護更生だけに重点をおいて

いる少年法があるため刑事裁判の機会さえ奪われ、もちろん裁きもなかったのです。

Page 23: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 22 -

加害者側の誠意を待ちました。審判が終わるまでの形だけの代理人を通じての接

触は3回ありましたが、気持ちのあるものではありませんでした。審判の結果がで

た後、民事裁判を起こすまでの3年間まったく謝罪も接触もありませんでした。現

在も、毎年迎えるお盆、命日に連絡をもらうことはありません。

私たちは、加害者はもちろんのこと、加害者の親さえ一度もあったこともないま

ま、民事裁判の時効が3年しかないということもあり、平成 11 年 10 月末に民事裁

判を起こしました。事実を知るため、責任をはっきりさせるため、そして国が刑罰

を与えないのであれば刑罰の意味も含めて、裁判を起こしたのです。でも、民事裁

判を起こすにもお金や時間がなければ起こすことができません。そんな人たちがた

くさんいるのを知ったのでした。幸い私たちは、被害者の親の感情、考えなどをよ

く酌んでいただける弁護士の先生方に巡り会えることができました。社会で騒がれ

ることもなく、重大事件として扱われることもなく、命を命として扱ってもらえな

かった息子の事件に弁護団まで組んでいただけたことをありがたいと思っています。

そして、2年5ヶ月かかって平成14年3月19日に判決をもらいました。

加害少年1人とその両親の責任が認められ約8千万円の判決をもらいました。そ

の振り込まれるお金と寄付を基に孝和基金をつくりました。少年犯罪の場合、やは

り民事裁判に頼ることが多いので、その費用の一部に使ってもらいたいと思って基

金をつくったんです。そして、判決が出たとしても、ほとんどが払われない現状が

あるの、私たちは、そういう現状も伝えたくて基金をつくったのです。

私と主人は、息子が事件にあったときに決めていたことがありました。息子が息

を引き取る前のことです。自分たちから新聞社にファックスを流して、何の落ち度

のない者が、一方的に因縁をつけられ暴力を振るわれる、こんな事があっていいの

か、と声を上げたのです。

主人は、混乱状態の中で私にこう言ったんです。「おれたちは見せ物パンダになっ

てもいいな」と言ったのです。「もうプライバシーもなにもないぞ」と。私は「わか

った」と返事をしました。主人はこうも言いました。「外に向けて話をするんだった

ら、都合のいい事だけ言っても伝わらない。すべてをさらけ出さないと伝わらない。

その覚悟はあるか」と言ったのです。私は「はい」と答えました。この11年間、

私と主人はすべてをさらけ出して話をしてきました。これからも変わりません。確

かに被害者の人権、プライバシーを守らないといけないと思います。たくさんの被

害者の人は、そう声を上げています。でも、私と主人のように、それもなくていい

という必死の思いで声を上げている遺族もいるということも知ってもらいたいので

す。

私は、思うのです。事件によっては、絶対に被害者の名前を出してはいけないこ

ともあります。それは守らないといけないと思います。でも、私たちの事件のよう

なものであれば、被害者の名前が出たとしても守られる社会になってほしいと思う

Page 24: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 23 -

のです。今は、情報社会です。事件にあうと、少なくとも地域にはわかってしまう

のです。だから私は、いつも話します。事件にあったとしても被害者やその家族が

守られる、法律、制度を作ってほしいと。

そして、もうひとつ大切なことは、地域の理解だと思います。

親というのは、子どもの方が先に死ぬとは思わないし、子どもがどんな状況にあ

っても親の強い思いがあれば救えると信じているものです。でも私たちは、それが

できませんでした。親として無力な自分を責め、夫婦がお互いを責め合うという毎

日が続きました。どんどん家庭が壊れていくなかで、残された下の 2 人の子どもた

ちもどんなにつらかったかと思います。

事件後、絶望の淵に落ちていくような私たちを助けてくれたのは、今まで付き合

いをしていた近所の人や亡くなった息子の友人たちでした。泣き声、怒鳴り声、物

が壊れる音が絶えないような家に「おはよう、ご飯食べた?」と、入ってきてくれ

ました。一緒にご飯を食べたり、時には、鍋でおかずを持ってきてくれたりしてい

ました。警察に行くときには、一緒に行ってもらったり、何か書類を作って家庭裁

判所に提出した方がいいとわかったときには、みんなに集まってもらい、一緒に作

ってもらったりもしました。息子の友人たちは、毎日、放課後にうちに寄って、お

線香をあげてから息子の部屋で 2人の子どもたちの遊び相手をしてくれていました。

家族 4 人になると笑うことなどなかった2人の子どもたちが、そのときだけは笑え

ていたと、そのことに気がついたときには、改めて、ありがたく涙がでてきました。

振り返れば、息子が入院しているときから、お通夜、お葬式、その後の日常生活、

そして、直後の手続きや情報集めまで、すべてを一緒にしてもらったのです。現在

では、大阪府など色々な所に被害者専属の窓口ができてきていますが、当時は、あ

りませんでした。だから、当時の私たちにとっては、周りの人たちの助けがとって

も大きな力でした。そして、私たちの家族が孤立しなかったのも、その人たちのお

かげだったと思います。初めてのことで、どうしていいかわからなかったけど、「ほ

っとけんかった」と、あとになって言われました。

私は、事件にあった直後、自分から「助けてほしい」と言えたことも良かったか

なと思っています。だから、これからは、何か困ったとき、悩んだとき、自分だけ

では抱えきれないと思ったときには、助けを求めやすい地域になっていってほしい

と思います。そしてその声に気が付いたときには、寄り添う地域になってほしいの

です。

誰かが一緒に考え、悩んだりしてくれることで、少しずつでも自分の力を取り戻

していけるようになると思うのです。

私は、息子を亡くしたことで、胸には、えぐられるような大きな穴があきました。

それは、息子を取り戻すことでしか埋められないものですから、これからも胸に抱

えたまま生きていかなければなりません。でも、事件の前も後も変わらず接してく

Page 25: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 24 -

れた周りの人たちや、事件を機に新たに知り合った人たちの関わりの中で、何か違

うものが心を埋めてきているように思います。

人の一言で救われたり、ハッと気が付いたことが何度あったことかしれません。

大切な息子の命を奪い私たち家族を苦しめたのも人だけど、それを助けてくれるの

も人なんだと、今、つくづく思います。

これからは、被害者が住んでいる身近な市町村にも、被害者専用の窓口まではい

かなくても対応してくださる誰かは居てほしいと思います。私は、当時色々な所に

相談窓口を探しましたが、「ここは違います」と言われる度につらい思いをしました。

被害者の抱えている問題は、それぞれ違っていて、確かに難しい問題が多いと思

います。でも私の周りの人たちのように、できることもたくさんあると思うのです。

だから、被害者が相談に行ったときには、誰かが、まずその声をしっかり受け止め

て、被害者と一緒に、その人が一歩でも先に進めるように考えてもらえるようなっ

ていってほしいと思います。

私は、被害者の権利がなかったことで、とても大変な思いをしました。だから、

これからも被害者の権利が確立されるように話をしていきたいと思っています。で

も権利というものは怖いものだとも思っています。権利が確立すると、それを間違

った形で振りかざす人がでてくるからです。私は、絶対に権利は振りかざしてはい

けないと思っています。

私は、これからも被害者である前に一人の人間として、そして3人の子どものお

母ちゃんとして、人間らしく生きていきたいからです。

少年犯罪被害当事者の会からの意見

私たちの会は、毎年一回10月に大阪市西区民センターで「WILL」という名前を

つけた集会を行っています。

少年犯罪で殺された子どもたちを追悼しつつ、私たちの現状を少しでも多くの人に知

ってもらいたいという想いで学生さんたちに助けてもらいながら手探りで始めたもので

す。今年で10回目になります。どうぞ一度、皆さんも参加して一緒に問題を考えてい

ただきたいと思います。

これ以上、子どもたちを被害者にも加害者にもしないために。

Page 26: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 25 -

(3) 米村 幸純さん(TAV交通死被害者の会事務局)

【1.事故について】

平成8年 12月 9日午前 8時 55分、長男泰彦(当時 20歳)がミニバイクに乗って

通学途中(大阪芸術大学)、富田林市旭丘北交差点(三叉路)を青信号で通過直後に、

信号を無視して直進してきた大型トラックに追突され転倒、左後輪で轢かれ、救急

車で搬送された近大付属病院救命救急センターにて 7 時間後に死亡しました。私が

病院についたときにはすでに脳死状態で、体にはトラックのタイヤの痕がくっきり

とついていました。「午後4時 1分」という医師の声が今も耳に残っています。

加害者が自分の信号無視を当初から認めていたため、「問題のない事故」という扱

いを受けていましたが、目撃者の出現で事態は一変しました。刑事裁判で明らかに

なった事実は、それまで「出会いがしらの事故」と説明されていたこととは大きく

異なりました。加害車両は、すでに赤信号で停車していた先行車両の後方から法定

を超える速度で接近、それを追い抜く形で右折車線に出て、信号を無視してそのま

ま直進した、ということでした。右折車線に入った時点で、交差点を通過中の息子

を見ていながら、クラクションを鳴らしたのみでブレーキを踏まず、逆にアクセル

を踏んで加速し、息子に追いついたのです。間違ったのではなく、故意に加速した

ことを加害者は「かわせると思った」と言い訳しました。検事は「未必の故意と紙

一重のこの悪質な事故を見過ごせば、今後の交通裁判は闘えない」とまで、私たち

夫婦に言いましたが、求刑はわずか 2 年、判決は禁錮 1 年 2 ヶ月で終わりました。

減刑の理由は、①老いた父親の扶養、②本人の反省と被害者への謝罪、③賠償無制

限の任意保険加入、④自ら過失を認めている ということでした。

しかし、事故後、私たちに会うことのなかった彼に謝罪する機会があるわけもな

く、裁判では「こういったことが二度と起きないことを願います」と他人事のよう

に語り、「今後、車の運転はどうする」との裁判官の問いに「これが終わったらまた

取り直す」と、事故を「これ」と表現し、平然と応えていた彼がとても反省してい

たとは思えません。トラックは会社の所有で、彼自身が任意保険に加入・支払いを

していたわけでもありません。父親の扶養については、加害者側の証人や傍聴人が

全くいない裁判では、それを客観的に証明するものは何一つなく、事実であるかど

うかもわかりません。何よりも、最終弁論で被告弁護士が「信号を無視し、交差点

に侵入してきたトラックに気がつかなかった被害者にも相応の過失がある」と発言

したことには驚き、怒りを覚えました。加害者が自分の信号無視を認めざるを得な

かったのは、事故直後に現場に駆けつけた人々の前で、息子が加害者に向かって叫

んだ「僕の方が青やったのに」という言葉のためだ、と加害者自身の法廷での証言

で知りました。病院で「警察の人に行ってこい、と言われたので来た」と私に語っ

た加害者は、その時まで、自分が死亡事故を起こしたとは思ってなく、観念して自

身の過失を認めざるを得なかったのです。

Page 27: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 26 -

私と家内は、事故の朝、なかなか出かけようとしない息子に「遅刻するから早く

行きなさい」と言ったことを今も後悔しています。もっとゆっくりと話を聞いてや

っていれば息子は殺されることはなかった、と重い十字架を背負ってこの 11年を過

ごしてきました。加害者は、刑務所での日々、そして今に至るまで、自分が奪った

息子の命についてどう考え、どう思って過ごしてきたのでしょうか、私たちほどの

苦しみを感じることはあったのでしょうか。

【2.事件を通じて感じたこと】

加害者は、嘘は言ってないけれど、すべてを語っていたわけでもなかったのです。

しかし、「自分の過失を認めた正直な人」と警察に評価されていました。過去に違反、

違法行為を何度も繰り返し、人身事故さえも起こしていて、検察庁への出頭を何度

かスッポカしてもいました。それでも裁判は、被告の刑をどれくらい軽くするかを

目的として行なわれている、と感じました。

加害者自身が「殺人と言われても仕方ない」と証言した悪質な事犯を裁いたのは、

「業務上過失致死罪」でした。故意にアクセルを踏み、わざとぶつけたとしか思え

ない事故が「過失=ミス」として裁かれたのです。死亡事故でも正式起訴され、実

刑になるのはわずかで、警察の捜査は、加害者の証言が重視され、ほとんどが加害

者有利で進められていることも知りました。事故直後、現場前のガソリンスタンド

の店員の「事故を見た」との証言を警察に伝えても、とりあってもらえず、この店

員が警察から事情を聞かれたことは最後までなかったのです。捜査を一転させたの

は、自主的に出現した目撃者の証言でしたが、そのこと自体が「奇跡」とまで弁護

士に言われました。

事故後、加害者は行政処分が決定する 1 月の中旬までトラックの運転を続けてい

たことも裁判で知りました。人を殺しても平然と運転を続けていた彼を、被告弁護

人は「この間、安全運転に努めていた」と評価しました。殺人に近い形で人を殺し

ても、車の運転を続けることができ、失った免許も簡単に再取得できるのです。

交通事故は、社会と被害者の認識に大きな隔たりがあります。「運が悪かった」「事

故だから」という認識で簡単に片付けられることが多く、「運が悪い」ということも、

被害者ではなく、加害者に当てはめている場合もあります。死亡事故の大方は違法

行為で起きていて、決してミスではなく「犯罪」です。しかし、この「事故だから」

という寛大で無責任な認識が、多くの被害者遺族を苦しめ、二次被害の要因ともな

っています。

【3.これまでの活動】

事故直後、家内の「心のケア」を求めて、「全国交通事故遺族の会」に入会しまし

た。当時、家内は家事放棄、育児放棄の状態で、受験を控えた次男、認知症で介護

の必要な実母の世話ができなくなっていました。そして、そのことに苦しみ、傷つ

いてもいたのです。会合では同じ遺族から、「それで当たり前」「みんなそうだった」

「無理をしないでいい」「がんばらなくていい」と励まされ、徐々に落ち着いていき

ました。そして、家内に付き添って会合に出ていたはずの私が、マイクを取り上げ

Page 28: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 27 -

られるまで息子のこと、事故のことを憑かれたように話していました。1999年 3月、

関西在住の遺族仲間を中心に「地元での活動」を重視し、互いに支えあうことを目

的とした「TAV交通死被害者の会」設立に参加しました。

民事裁判が終わった頃、神奈川県の鈴木共子氏が始めた「悪質な交通事犯の量刑

見直しを求める署名」を知り、大阪での街頭活動に参加、その後も自分たちの周囲

で署名を集め続けたことが縁で、2001年 7月に「生命のメッセージ展 in浜松」への

参加を誘われました。そして、同年 10月に大阪府門真市、11月には大阪市阿倍野区

での開催を担当したことで、2004 年夏まで「生命のメッセージ展」事務局を務め、

その後「TAV交通死被害者の会」事務局を担当しています。2005年 8月と 2007年の

6月には、亡き息子が作った曲を中心とした追悼コンサートを行ないました。会場で

はこれまで関わってきた被害者団体、活動の紹介をおこない、犯罪のない、犠牲者

をつくらない、命を大切にする社会を訴えました。

TAV交通死被害者の会では、奇数月の第 2日曜日に定例会、偶数月に交流会を開催

しています。また、春と秋の交通安全週間には毎年「門真運転免許試験場(大阪)」

と「平針運転免許試験場(名古屋)」にて街頭活動(啓発チラシ配り)とパネル・遺

品展示を行ない、来場する方に安全運転をお願いしています。パネルは、平成 18年、

19年の大阪府主催の犯罪被害者週間行事でも展示されました。

2005 年に国連は、11 月の第 3 日曜日を「世界道路交通犠牲者追悼の日」(世界交

通事故犠牲者の日)と定めました。TAVでは、2007年 11月に初めて大阪と名古屋で

街頭活動を行ない、会員には、それぞれの事故現場に「黄色い風車」と「白い花」

を供えることを提案しました。今後も会の定例行事として継続していく予定ですが、

交通安全対策に携わっておられる方々には、この日に合わせて「慰霊祭」を開催し

ていただくようお願いしたいと思います。厳罰化や道路整備なども急務ですが、ハ

ンドルを握るドライバーの心に訴え、啓発していくことは根本的な問題解決につな

がるものではないかと思います。

【4.問題点・課題】

署名活動は、37万人以上の市民の賛同を得て、2001年秋に国会での「危険運転致

死傷罪」可決の原動力となりました。この法律は、悪質な交通事犯は犯罪であるこ

とを社会に示すことはできましたが、「故意犯」であることの立証の難しさや、飲酒

運転の加害者がそのまま逃走(ひき逃げ)するなどの「逃げ得」が起き、その運用

面での難しさが問題となり、事故の抑止力になっていないのが現状です。TAV では、

当初四輪に限定されていた「危険運転致死傷罪」の二輪への適用と同時に、交通事

故に適用されている「業務上過失致死傷罪」の上限引き上げを求めてきました。2007

年 6 月、危険運転に当たらない悪質な交通事犯にも対応できるようにと、自動車に

よる交通死傷事件に対して「自動車運転過失致死傷罪」が新設されましたが、遺族

団体の多くが望んでいた上限 10年ないし 15年以上にはほど遠い 7年に留まり、「過

失」という文言も残りました。

2007 年 1 月に「TAV 交通死被害者の会」、「交通事故遺族の声を届ける会」、「北海

Page 29: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 28 -

道交通事故被害者の会」の推薦で法制審議会委員になり、交通事故の被害者の立場

を代弁して法改正に尽力をいただいた松本誠弁護士が、同年 6 月に事故で急逝しま

した。TAV設立時からの協力弁護士としてだけではなく、被害者遺族全体のよき理解

者、支えであっただけにその衝撃は大きなものでした。氏に続く被害者の立場に立

った弁護士の出現が待望されます。

【5.社会や行政に求めること】

交通事故の遺族は、犯罪被害者として扱われず、認められなかった時代が長くあ

りました。また、損害賠償制度が確立しているため、「交通事故=お金で解決」と錯

覚もされています。賠償保険は、本来は被害者を救済するためにありますが、加害

者の免罪、減刑の道具になっている事実もあります。賠償金で取り戻せる命はあり

ません。亡くした命はひとつ、決してリセットはできないのです。

飲酒に限らず、死亡事故を初めとする重大事故の多くは法律違反によって引き起

こされている犯罪です。その認識を社会がもたないと悪質な交通事犯が減ることは

ありません。ドライバーが法律を遵守さえすれば失われなかった命があるのです。

捜査段階では、先入観や勘に頼らず科学的で客観的な捜査を願っています。また、

早い段階での捜査情報の開示も望みます。

被害者は、偶然にその場にいたために命を失いますが、加害者は必然ともいえる

要因を持っていて、特に死亡事故を起こすドライバーは、事故原因について常習と

もいえる違反行為を繰り返していることが多いのです。「誰もが加害者になりうる」

のではなく、「誰もが被害者になりうる」のです。私たちは、誰一人として「犯罪被

害者等」と呼ばれる存在に好んでなったわけではありません。加害者になることは

自分の意思で防げますが、被害者は自らの意思とは無関係に被害にあいます。自動

車を運転する適正に欠ける人や、「車は人の命を奪いかねない危険な道具」という認

識に欠ける人に免許を与えることを防ぐことはできないのでしょうか、死亡事故を

起こしたドライバーの免許の再交付と同時に真剣に議論されるべき時が来ているの

ではないでしょうか。

「犯罪被害者等基本法」「基本計画」の影響を受けてか、行政や矯正施設から会員

への講演依頼が増えましたが、「なぜ遺族の話が必要か」という説明がない場合や、

成果や感想を聞かせてもらうこともほとんどありません。遺族の話が始まると担当

者が退席、施設側は誰も聞いていないということもあり、その姿勢に疑問を抱くこ

とも多くあります。日程を決めて会員を紹介したにもかかわらず、その後の連絡が

ないこともありました。遺族にとって、事故のことを話すことは大きなストレスを

感じ、簡単なことではありません。矯正施設や免許停止処分者への講話であればな

おさらで、「単に免罪符を与えるだけではないか」との葛藤が常にあります。それで

も、事故を減らし犠牲者を無くすためにと話す決心をします。事故報道があるたび、

事故時にフラッシュバックする遺族もいます。それは事故後の年数経過とは無関係

だということをぜひ理解してください。事故を減らす活動を行なうのは、それは「も

う悲惨な事故報道は見たくない」、「二度と同じ悲しみを見たくない」という思いが

Page 30: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 29 -

あるからです。遺族の話を決して使い捨てにはしてほしくないのです。

ある中央官庁を訪問した時、「役所は申請主義」「当局のホームページにすべて記

載している」「本屋に行けば交通事故処理について書籍がたくさんあるのに、何でも

聞いてくる」と言われました。誰しも、自分が被害者になることを想定し、役所の

制度に習熟しているわけではありません。簡単に「申請しろ」と言われても制度を

知らなければ何もできません。また、家族を亡くした直後に本を探しに行くことも、

読む余裕などもありません。被害にあった時、誰もが(被害者でなくてもその周囲)

すぐに気がつき、思いつく、そんなわかりやすい窓口、その周知のための広報とシ

ステムの整備を期待しています。一つの窓口ですべての手続きが完了する、といっ

たことも望みます。

自治体では、交通事故の相談窓口を設けられているところが多くあります。しか

し、加害者も被害者も同じ窓口で受けつけていることはないでしょうか。被害者支

援のためならば、双方の窓口は分けていただきたいと思います。

ある支援センターに電話をかけた会員が、「交通事故で家族を亡くした」と言った

途端に「うちは殺人等の被害者のためにある」と相談を断られたそうです。被害者

は、やっとの思いで電話をします。そこで打ち切られたらもう電話をできなくなり

ます。切り捨てられるぐらいなら、「たらいまわし」の方が、まだ次につながる可能

性があります。まず、話を最後まで聞いてください、手に負えないこと、管轄の違

うことであれば、どこがいいかを考えてください、「ここではありません」と言って

終わらないでください。専門家にとって日常のことであっても、被害者は初めての

ことであり、当たり前のことではないのです。善意から発せられる慰めの言葉で遺

族が傷つく、ということもあります。

【6.地域社会、市町村に求めること】

支援とは、WITH(振り向けば、静かに側にいて支えること)であり、GIVE(強者

が弱者を庇護という考えにたった支援)ではないと思っています。支援することを

自分のこととして考えることは、自分とその家族にとっても大切なことで、被害者

支援は、「国民の安全と生命、人権」の問題です。

遺族にとって、厳罰化とは「事態の重要性を社会に理解をしてもらう」ことでも

あり、犠牲者をこれ以上出さない、同じ悲しみを繰り返さないことが最大の願いで

す。すべての犯罪は「他人への権利侵害と命の軽視」から起きています。教育現場

での「命の重み」に対する取り組みを期待しています。

TAV交通死被害者の会からの意見

・相談できるところが全くわからなかった。

・家族のいないもの(母一人、子一人で子を亡くす)には、 身一つで動きが取れず大変だった。

・事故後の精神的混乱の時期に警察の事情聴取に付き添ってくれる人がほしい

・被害者の住む自治会等に顔見知りのサポーターがいて、直ちに駆けつけ、何か手助けできるこ

とがないか。声掛けだけでもしてくれたら、支えられていると思うことができる。

Page 31: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 30 -

<資料>

■犯罪被害者等基本法(抄) (平成16年法律第161号)

<前文> 安全で安心して暮らせる社会を実現することは、国民すべての願いであるとともに、国の重要な責務

であり、我が国においては、犯罪等を抑止するためのたゆみない努力が重ねられてきた。 しかしながら、近年、様々な犯罪等が跡を絶たず、それらに巻き込まれた犯罪被害者等の多くは、これまでその権利が尊重されてきたとは言い難いばかりか、十分な支援を受けられず、社会において孤立することを余儀なくされてきた。さらに、犯罪等による直接的な被害にとどまらず、その後も副次的な被害に苦しめられることも少なくなかった。 もとより、犯罪等による被害について第一義的責任を負うのは、加害者である。しかしながら、犯罪等を抑止し、安全で安心して暮らせる社会の実現を図る責務を有する我々もまた、犯罪被害者等の声に耳を傾けなければならない。国民の誰もが犯罪被害者等となる可能性が高まっている今こそ、犯罪被害者等の視点に立った施策を講じ、その権利利益の保護が図られる社会の実現に向けた新たな一歩を踏み出さなければならない。 ここに、犯罪被害者等のための施策の基本理念を明らかにしてその方向を示し、国、地方公共団体及びその他の関係機関並びに民間の団体等の連携の下、犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進するため、この法律を制定する。

(目的) 第一条 この法律は、犯罪被害者等のための施策に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及

び国民の責務を明らかにするとともに、犯罪被害者等のための施策の基本となる事項を定めること等により、犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進し、もって犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目的とする。

(基本理念) 第三条 すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権

利を有する。 2 犯罪被害者等のための施策は、被害の状況及び原因、犯罪被害者等が置かれている状況その他の事情に応じて適切に講ぜられるものとする。

3 犯罪被害者等のための施策は、犯罪被害者等が、被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間、必要な支援等を途切れることなく受けることができるよう、講ぜられるものとする。

(国の責務) 第四条 国は、前条の基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり、犯罪被害者等のための

施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。 (地方公共団体の責務) 第五条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、犯罪被害者等の支援等に関し、国との適切な役割分担

を踏まえて、その地方公共団体の地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

(国民の責務)

第六条 国民は、犯罪被害者等の名誉又は生活の平穏を害することのないよう十分配慮するとともに、

国及び地方公共団体が実施する犯罪被害者等のための施策に協力するよう努めなければな

らない。

Page 32: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 31 -

第2次犯罪被害者等基本計画の概要 (平成23年3月25日閣議決定)

国が総合的かつ長期的に講ずべき犯罪被害者等のための施策の大綱

4 つ の 基 本 方 針

尊厳にふさわしい処遇を 権利として保障すること

個々の事情に応じて

適切に行われること

途切れることなく

行われること

国民の総意を形成

しながら展開されること

① 損害回復・経済的支援等への取組 基本法第12・13・16・17条関係 34の施策

□弁護士等との打合せにカウンセラー等を同席させることに対する支援についての検討

□犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設に関する検討

□カウンセリング等心理療法の費用の公費負担についての検討

□地方公共団体による見舞金制度等の導入促進

□生活保護制度における犯罪被害者等給付金の収入認定除外についての検討

□性犯罪被害者の医療費の負担軽減

□公営住宅への優先入居等の促進

□緊急に居住場所を確保するために要する費用の負担軽減 □被害回復のための休暇制度の周知・啓発 等

④ 支援等のための体制整備への取組 基本法第11・21・22条関係 73の施策

□市町村における窓口部局の確定状況の定期的な確認等

□男女共同参画センターにおける性犯罪被害者支援の取組みの促進

□性犯罪被害に遭った児童生徒の対応の充実

□コーディネーターとしての役割を果たせる民間支援員の養成への支援

□更生保護官署と保護司との協働による刑事裁判終了後の支援の充実

□民間団体の財政的基盤充実への協力

□「研修カリキュラム・モデル案」の内容の充実 □地方公共団体と民間の団体との連携の促進 等

推進体制

□国の行政機関相互の連携・協力 □地方公共団体との連携・協力 地方公共団体に対する総合的な対応窓口の設置を要請

□その他様々な関係機関・関係者との連携・協力 □犯罪被害者等の意見の施策への適切な反映 □施策策定過程の透明性の確保

□施策の実施状況の検証・評価・監視 □基本計画の必要な見直し 等

計画期間 5年

(平成 27年度末まで)

合計241の施策

② 精神的・身体的被害の回復・防止への取組 基本法第14・15・19条関係 69の施策

□PTSD(外傷後ストレス障害)治療の可能な医療機関についての情報提供

□精神保健福祉センターに対する犯罪被害者等支援業務についての理解促進

□交通事故による重度後遺障がい者に対する医療の充実等

□警察における性犯罪被害者に対するカウンセリングの充実

□医療機関における性犯罪被害者への対応体制の整備

□性犯罪被害者のためのワンストップ支援センターの設置促進

□配偶者等からの暴力被害者の安全確保の強化についての検討 等

③ 刑事手続への関与拡充への取組 基本法第18条関係 37の施策

□被害者参加人への旅費等の支給及び国選弁護制度における資力要件に関する検討

□仮釈放等審理における意見陳述に資する情報提供の拡大についての検討 等

⑤ 国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組 基本法第20条関係 28の施策

□学校における生命のかけがえのなさ等に関する教育の推進

□「犯罪被害者週間」に合わせた集中的啓発事業の実施 □地方公共団体に対する犯罪被害者等が参加・協力する啓発事業実施の要請 等

Page 33: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 32 -

2 犯 罪被 害者 等を 支え る

社会づくりのために

〈関連施策例〉

○犯罪被害者等の置かれた現状について知る学習機会の提供

○「犯罪被害者週間」(11月25日~12月1日)における関係機関・

団体等と連携した効果的な啓発活動の実施 他

〈関連施策例〉

○犯罪被害者等に関する問題についての理解を深めるための、

府職員を対象とする各種研修機会の充実

○人材養成支援のための研修プログラム教材等の開発・提供 他

犯罪被害者等に関する施策推進のための体制整備

■大阪府警察本部、民間団体、国、市町村等との役割分担と連携によるオール大阪での推進

■大阪府における横断的な庁内推進体制の強化

〈関連施策例〉○独自の活動を展開している民間団体との連携・協働を重視した取組の推進 ○大阪府犯罪被害者支援庁内対策会議の設置

大阪府犯罪被害者等支援のための取組指針の体系

基本目標

犯罪被害者等に関する問題を社会全体で考え、ともに支えあう、

だれもが安心して暮らすことができる大阪の実現

大阪府が将来に向けて目指す姿

幅広い分野にわたる府の施策の

横断的・効果的に組み合わせた支援の実施

視点1

<推進にあたっての重点的な取組方針>

深刻な状況にある犯罪被害者等に対する

平穏な日常生活への復帰支援

犯罪被害者等の視点に立って行動し、

支えていくマンパワーの育成

視点2

<推進にあたっての重点的な取組方針>

一人ひとりが主体となって取り組んでいく

ための広報啓発・教育・人材養成等の推進

(1)府民の理解増進のための広報啓発・教育の充実

(2)犯罪被害者等を社会で支える人材養成の推進

b 民間団体、市町村等に対する人材養成支援の実施

a 犯罪被害者等の置かれた現状等についての広報・啓発の実施

b 学校・地域等における教育・学習機会の充実

a 大阪府職員の資質向上に向けた研修の充実

1 犯罪被害者等の平穏な日常生活への

復帰を支援するために

〈関連施策例〉

○犯罪被害者等支援施策の総合調整を担う専門セクションの設置

○大阪府庁全体での各種情報提供体制の整備

○各種相談機関の連携と相談員の資質向上の推進 他

〈関連施策例〉

○関係機関の連携によるPTSD等に対する心のケア支援

○就業支援施策や経済的理由により就学困難な生徒のための支援

制度、府営住宅の一時使用等、府の制度等を活用した支援の実施

a 総合的な情報提供・相談窓口の整備

b 被害者のニーズに対応した各種情報の提供体制の整備

c 犯罪被害等の状況に応じた相談体制の充実

(2)深刻な犯罪等被害からの回復支援

b 日常生活への復帰に向けた支援

a 心身の被害の防止・回復に向けた支援

(1)早期からの支援実施のための相談・情報提供の充実

Page 34: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 33 -

<参考>

全国

H15年 H16年 H17年 H18年 H19年 H20年 H21年 H22年 H23年 H24年 H24年

刑法犯

総数

285,307 255,697 249,511 232,451 216,303 201,816 182,537 164,096 155,206 146,966 1,382,121

凶悪犯 1,645 1,730 1,520 1,255 1,115 959 944 978 897 1,012 6,961

殺人 140 147 160 136 102 119 115 132 128 114 1,030

強盗 1,016 1,117 933 720 679 543 593 576 502 619 3,658

放火 253 194 219 192 134 144 113 151 149 130 1,033

強姦 236 272 208 207 200 153 123 119 118 149 1,240

粗暴犯 8,543 8,038 7,639 7,212 6,669 6,049 5,661 5,594 5,717 6,166 67,183

暴行 2,244 2,254 2,252 2,344 2,044 1,933 1,872 1,820 1,890 2,109 31,802

傷害 4,313 4,173 4,030 3,829 3,630 3,207 3,042 3,016 3,163 3,268 27,962

恐喝 1,707 1,340 1,080 797 770 680 546 529 452 485 4,172

窃盗犯 233,185 204,337 199,279 185,792 171,699 161,111 145,841 130,028 121,067 113,939 1,040,447

知能犯 9,991 9,869 9,450 8,035 7,055 7,500 5,778 4,569 4,340 3,941 40,097

詐欺 7,272 7,176 7,917 6,533 5,698 5,588 4,297 3,469 3,445 3,232 34,678

風俗犯 1,584 1,288 1,218 1,231 1,156 1,100 1,159 1,417 1,660 1,707 11,924

強制

わい

せつ

1,250 1,001 932 946 878 780 849 1,078 1,251 1,251 7,263

その他 30,359 30,435 30,405 28,926 28,609 25,097 23,154 21,510 21,525 20,201 215,509

大阪の罪種別刑法犯認知件数

Page 35: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 34 -

(単位:件数)

年次

全国 大阪府

総数 凶悪犯 総数 凶悪犯

平成 15 年 2,790,136 13,658 285,307 1,645

平成 16 年 2,562,767 13,064 255,697 1,730

平成 17 年 2,269,293 11,360 249,511 1,520

平成 18 年 2,050,850 10,124 232,451 1,255

平成 19 年 1,908,836 9,051 216,303 1,115

平成 20 年 1,818,023 8,581 201,816 959

平成 21 年 1,703,044 8,314 182,537 944

平成 22 年 1,585,856 7,576 164,096 978

平成 23 年 1,480,760 6,996 155,206 897

平成 24 年 1,382,121 6,961 146,966 1,012

(単位:件数)

殺人 強盗 放火 強姦 合計

全国 1,030 3,658 1,033 1,240 6,961

大阪府 114 619 130 149 1,012

全国に占める割合(%) 11.1% 16.9% 12.6% 12.0% 14.5%

過去 10年間の刑法犯認知件数の推移

Page 36: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 35 -

(単位:件)

全国 大阪府

発生件数 発生件数

H20 年 766,382 53,769

H21 年 737,628 51,696

H22 年 725,903 51,292

H23 年 692,056 49,644

H24 年 665,138 48,212

(単位:人)

全国 大阪府

総計

総計

負傷者数 死者数 負傷者数 死者数

H20 年 950,900 945,703 5,197 64,488 64,290 198

H21 年 916,183 911,215 4,968 62,047 61,842 205

H22 年 901,216 896,294 4,922 61,670 61,469 201

H23 年 859,273 854,610 4,663 59,686 59,489 197

H24 年 829,807 825,396 4,411 57,986 57,804 182

交通事故総数

Page 37: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 36 -

Page 38: -大阪府犯罪被害者等支援者用テキスト- · 2019-04-26 · 「刑事訴訟法」の一部改正(20年12月施行) 犯罪被害者等の刑事裁判への直接参加(証人尋問、被告人質問、弁論としての

- 37 -

政策企画部青少年・地域安全室治安対策課

〒540-8570 大阪市中央区大手前 2丁目

TEL06-6944-6512 平成 25年 12月発行

ホームページ http://www.pref.osaka.jp/chiantaisaku/index.html