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llllllllllllllllllllllllllll jjjjjjjjjjj jjjjjjjjjj 40 経営実務 ’11 9 月号 昨今、今後の農協経営に影響を 与えると考えられる外部環境の変 化が生じている。とくに短期的に は、今年度から実施される金融庁 検査、中長期に影響を与えると考 えられる IFRS (国際財務報告基準) とバーゼル3の動向の3つをあげ ることができる。この3つの外部 環境変化は、農協におけるリスク マネジメント実践とこれまでの農 協経営のあり方についてある意味 の変革を迫っているといえる。 とくに、実務的に影響が大きい のが IFRS による会計制度の変更 の影響である。 IFRS については、上場会社が 2017年以降の移行が言われ、連結 先行だけではなく、単体決算をど う扱うか、強制適用なのか任意な のか、非上場会社への適用、中小 企業への適用、協同組織金融機関 への IFRS の適用はどうするかな ど、論点として必ずしも現時点で は明確ではない事項もあるが、国 際標準の会計ルールへの収斂は確 実に JA にも影響を及ぼしてくる。 Ⅰ.IFRS の概要と特徴 ⑴ IFRS の特徴 1)B/S(資産価値)の重視と公 正価値 これまでの会計基準の目的は、 「財務報告期間における期間損益 の認識」にあった。しかしながら IFRS では、これまでの期間損益 といったP/L重視ではなく、B/S、 資産価値が最も重要視される。そ の資産価値とは何かと言えば、い IFRS と農協経営 IFRSの特徴と日本の会計、農協経営 しま とおる ㈳ JC 総研 主席研究員 東京農業大学客員研究員 農業経済学博士 新連載

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40 経営実務 ’11 9 月号

 昨今、今後の農協経営に影響を与えると考えられる外部環境の変化が生じている。とくに短期的には、今年度から実施される金融庁検査、中長期に影響を与えると考えられる IFRS(国際財務報告基準)

とバーゼル3の動向の3つをあげることができる。この3つの外部環境変化は、農協におけるリスクマネジメント実践とこれまでの農協経営のあり方についてある意味の変革を迫っているといえる。 とくに、実務的に影響が大きいのが IFRS による会計制度の変更の影響である。 IFRS については、上場会社が2017年以降の移行が言われ、連結先行だけではなく、単体決算をどう扱うか、強制適用なのか任意な

のか、非上場会社への適用、中小企業への適用、協同組織金融機関への IFRS の適用はどうするかなど、論点として必ずしも現時点では明確ではない事項もあるが、国際標準の会計ルールへの収斂は確実に JA にも影響を及ぼしてくる。

Ⅰ.IFRSの概要と特徴

⑴ IFRS の特徴

1)B/S(資産価値)の重視と公

正価値

 これまでの会計基準の目的は、「財務報告期間における期間損益の認識」にあった。しかしながらIFRS では、これまでの期間損益といった P/L 重視ではなく、B/S、資産価値が最も重要視される。その資産価値とは何かと言えば、い

IFRS と農協経営

IFRSの特徴と日本の会計、農協経営

加か

島しま

 徹とおる

㈳ JC 総研 主席研究員東京農業大学客員研究員 農業経済学博士

新連載

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うまでもなく時価が資産価値を表す最も正しい尺度である。 これまでの会計基準では取得原価が重視され、資産を買った時点での取得価格に付帯費用を加えて資産の価格とし、経過年数とともに減価償却費などを通じて資産の価値を減額していく方法がとられてきた。 このような期間損益重視の考え方では、例えば含み益のある資産を売却して表面的には利益が確保されているようにみせることも可能である。また、時価といった概念は、時価会計など期間の事業活動によらず金額が変動するものに関しては期間損益計算をゆがめるものとして、限られた範囲での適用にとどまっている。 IFRS では、企業の実態を表すためには期間損益よりも資産価値で示したほうがより実態を表していると考えられている。このためIFRS では、より企業の実態を表すためには B/S の資産価値が重要であるとして、取得原価主義よりも時価(公正価値)主義による資産評価に変更になってくる。 公正価値の算定は、国債や株式といったマーケットを通じて市場

価値が決まるものに関しては比較的容易であるが、明確な市場価格がない資産や負債の評価については何らかの評価モデルを用いて評価することが求められる。 JA の場合を想定すると、資産で大きなウエートを占める貸出金や負債の大部分を占める貯金に関しても、何らかの時価評価を行うことが求められることになる。

2)利益概念と会計のリスク管理

への接近

 資産価値や時価、公正価値主義から派生してくるのが収益の認識や利益概念の違いである。IFRSでは、利益概念に包括利益といった概念を用いる。また、その利益概念に介在するのが、資産の時価を重視するということである。 IFRS で用いられる包括利益とは、時価を基本に資産価値の変動から負債価値の変動を引いたものである。このため、包括利益は企業価値の変動(資本の部の変動)

を表し、これまでの期間損益に加えて資産、負債の含み損益を加えたものとして表される。 資産や負債の価値とは、資産、負債の評価は、すなわち事業その

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ものの価値評価を見積もる(バリ

ューエーション:適正価値の算定)

を意味する。価値の変動は価値のコントロールでこれはリスク管理におけるリスク・コントロール、リスクが発現することで価値が変動するコントロールそのものである。 すでにほとんどのリスク管理の分野が将来のキャッシュフローを基本に体系がつくられている。価値の評価やリスク管理におけるリスク量も将来キャッシュフローが基本であり、会計がキャッシュフローを基本としていたリスク管理の考え方を取り入れ、一体化する方向に進んできていると考えていい。 一例を挙げると、金融商品会計における資産である貸出債権や貯

金といった負債も、償却原価といった考え方が基本になる。原則的に IFRS では、資産や負債の価値を見積もるため貸出や貯金についても価値(時価)を見積もる必要がでてくる。 価値の尺度となるのは将来のキャッシュフローである。貸出は繰上償還や債務不履行で、貯金も中途解約によって将来の利息やキャッシュフローに影響を与える。将来のキャッシュフローはこれらの要因を加味し、価値を算定する。 リスク・コントロールの基本はキャッシュフローの把握と制御である。貸出のポートフォリオも、繰上償還やデフォルト(債務不履

行)などの実態も十分把握し、キャッシュフローを基本とした経営判断やリスク・コントロールが前

図-1 IFRSの包括的利益概念包括利益= 企業価値の変動(資本の部の変動)

期間損益+含み損益

= 資産価値の変動-負債価値の変動

資料:さくら情報システム FIT2010 セミナー資料より

注 1:Valuation とは適正価値(フェアバリュー)の算出を示す。

注 2:上下の矢印は適正価値(フェアバリュー)時価の変動を示す。

資産 負債

資本

包括利益 Valuation Risk

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提になっている。 こうした将来のキャッシュフローを把握し、価値を算定してコントロールするリスク管理手法は、すでに技術的なベースが成熟段階にあることを背景にして、新たな会計制度の提案がなされているとみることができる。

3)細則主義から原則主義へ

 日本の会計基準や米国の会計基準は、細則主義、いわゆる細かなルールを設けてそのルール(ルー

ル・ベース)にあっているかどうかで正しいかどうかを判断する。IFRS は、細則主義ではなく原則主義の会計と言われている。IF-RS では基本的な会計処理上のプリンシパル(原則)のみが決められており、個々の取引の会計処理については、各法人が自社の経営実態にあわせて自分で選択することになっている。開示内容の正確な理解のためには、注記などの開示情報において「なぜその会計処理を選択したのか」の理由を利用者に開示することが求められる。 このため、すでに IFRS による開示が始まっている欧州では、IFRS 移行前と後では開示のペー

ジが1.5倍程度になったという報告もある。IFRS は原則主義の会計(プリンシプル・ベース)であるため、注記に相当のページをさく必要がでてくる。 原則主義の会計の例として、負債と資本の区分に関してIAS32「金融商品-表示」をみてみよう。 日本基準では通常、法的形式が株式であれば資本に計上し、それ以外であれば負債に計上することになっている。しかしながら IF-RS では、発行者の観点からの金融商品の負債と資本の区分を定めており、負債と資本は法的形式ではなく、契約の実質、および国際的な定義に従って区分しなければならないとされている。 例えば、一定の日に現金により償還される優先株式や、一定の日に変動する普通株式に転換される優先株式は、IFRS では資本ではなく負債に区分される可能性がある。こうした資本や負債の定義に従えば、加入脱退が自由な協同組合の資本は絶えず増減するため、原則的に考えれば負債であるが、協同組合の資本も譲渡可能として資本カウントができるようになっている。しかし、今後の日本の会

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された IFRS 1~9の各基準書の集合体を総称して IFRS と呼ばれている。このため IAS と IFRS を総称して IFRS’s とも呼ばれる。

 日本における会計基準の設定主体は、財務会計基準機構の傘下の企業会計基準委員会 ASBJ と呼ばれる組織が日本における IFRS 対応の窓口になっている。

2)アドプションとコンバージェ

ンス、東京合意

 IFRS 自体は国際的な会計共通言語の創設や会計のレベルアップを図る目的から、当初は新興国での採用が主で先進国では余り普及していなかった。IFRS がグローバルスタンダードな会計基準になった背景には、2005年に欧州で欧州市場に上場している企業に対して IFRS 基準で作成した財務諸表

計基準や実態面で組合員の高齢化に伴う資本の減少など、実際の実態面や実務面においてどのように取り扱われるかが、今後の焦点といえそうだ。

⑵ IFRS の作成主体と東京宣言

1)IFRS の作成主体と日本の会

計基準設定主体ASBJ

 IFRS 基準書の作成主体は、ロンドンにある IASB(International

Accounting Standards Board 国際

会計基準委員会)によって作成されている。 IFRS は1つの基準書ではなく、IAS(国際会計基準)1~39の各基準書と IASB になってから作成

表-1 商品種別における負債と資本の区分商品種別 IAS32

普通株式 資本

永久優先株式 資本

保有者のオプションにより変動数の普通株式に転換される優

先株式

負債

特定の日または、保有者の死亡または退職以外の事象の発生に

より、変動数の普通株式への転換が強制される優先株式

負債

資料:IAS32”Financial Instrument: Presentation”トーマツ作成資料

図-2 IFRSの作成主体実務上の助言 解釈指針の提供

基準作成

IFRS’S

(国際会計基準)

IASB

(国際会計基準審議会)

IFRIC

(国際財務報告解釈指針委員会)

SAC

(基準勧告委員会)

IFRS for SME’s(中小企業国際会計基準)

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入を行った。 米国では2002年9月に米国財務会計基準審議会(FASB)が国際会計基準審議会(IASB)との間でノーウォーク合意を取り交わし、IASB と共同でコンバージェンス作業を実施している。 現在、米国では、証券取引委員会に登録している外国企業については IFRS による財務報告が認められており、国内企業については2012年に IFRS の強制適用に関する最終決定を行うこととしている。この結果、早ければ2016年~2017年より米国で IFRS の適用が開始される可能性がでてきている。 日本においては、2007年8月に企業会計基準委員会(ASBJ)がIASB と会計基準の全面共通化を合意し(いわゆる「東京合意」)、短期プロジェクトと長期プロジェクトに分けて会計基準の差異解消、コンバージェンスを進めている。 2009年6月に企業会計審議会は

「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」を公表し、これにより2010年3月期からすでに一部の企業が IFRS の任意適用を開始した。IFRS の強

を義務づけたために、主要資本市場である欧州が IFRS を採用し、一気にグローバル化が進展した。また、欧州が「同等性評価」を欧州以外の国に対して行ったことも、グローバル化の進展に貢献した。 すでに IFRS の導入国の全世界に対する GDP のウエートも大きくなり、日本や米国といった IF-RS の導入に消極的だった国に関しても IFRS を無視することができなくなってきたことが背景にある。また、韓国などアジアのライバル国も IFRS の採用を行っていることから、対外的な競争力の面でも IFRS を無視できなくなったことがあげられる。 実際の各国の IFRS の導入については、アドプションとコンバージェンスという2つの方式がある。アドプションとは従来のローカルな会計基準を完全に IFRS に置き換える方法であり、コンバージェンスはローカルな会計基準と IF-RS の差異を分析し、差異がある部分を次第に IFRS に近づけていこうという取組みである。 韓国では、従来のローカルな会計基準を完全に IFRS に置き換えるアドプションにより IFRS の導

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 とくに JA の場合には、金融商品会計や固定資産の関連に関わる会計基準、退職給付会計などについては、その動向を把握していく必要がある。

4)非上場会社の IFRSの適用

 では IFRS はどこまでが適用範囲なのであろうか。「非上場会社の会計基準に関する懇談会」が設けられ、「非上場会社に関して国際基準を適用する対象についての検討と報告」(22年8月)がまとめられている。 報告書では、非上場会社を①金融商品取引法(金商法)の対象となる非上場会社、②金商法適用会社以外の会社法の大会社、③会社法上の大会社以外の会社、の三つに分類している。 ①の上場会社以外の金商法開示企業(約1,000社)は、上場会社と同様の会計基準の適用が適当であるとしている。IFRS を強制適用した場合は、IFRS に対応する必要が出てくる。 ②は、会社法上の大会社(資本

金5億円以上または負債総額200億

円以上)のうち、上場会社と①を除く企業で、会社法上の大会社全

制適用については2012年に最終決定を行うこととしており、早ければ2017年以降わが国の上場企業にも IFRS の強制適用が開始される見 込 み で あ る( 当 初、2015年~

2016年)。 IFRS への会計基準の収斂化といったグローバルスタンダードの流れは、すでに避けて通れない流れになってきている。

3)わが国のコンバージェンスの

進展

 IFRS とのコンバージェンスを進めるスケジュールが ASBJ で発表(2010年12月時点)になっている。表-2をみると、大部分の会計基準の見直しのプロジェクトが2011年秋以降に ED(公開草案)を発表する運びになっており、公開草案が発表され、意見募集がなされて最終の日本の会計基準として運用される仕組みである。 公開草案 ED が提出されれば、意見募集の結果、若干の修正を行ったうえで新たな会計基準として実施される。いずれにしても2012年以降には、IFRS によるわが国の会計制度の変更が大幅に見込まれると考えてよいであろう。

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表-2 ASBJ (会計基準委員会)プロジェクト計画表

資料:ASBJ(会計基準委員会)

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Ⅱ.IFRSと農協

⑴ IFRS の農協経営への影響

 結論的にいえば、IFRS に関して JA にはかなり影響があると考えられる。金商法の対象団体であっても、大手行や地銀、信金など、同じ金融機関の間でも対応の程度は異なってくる。また、欧州と米国との間でも温度差がある。世界的な力学関係や現実の対応可能性も含めて、全面適用となるかどうかは現時点では分からない。 しかしながら、IFRS に完全に準拠するかどうかは別にしても、日本の会計制度を IFRS に近づけるといったコンバージェンスの過程においては、金融商品会計や退職給付会計、固定資産に関連した会計基準などが IFRS の影響を受けて、日本で準拠すべき会計基準が変わることが想定される。 IFRS の影響によりパーツとなる会計基準が変われば、準拠すべき処理方法が完全に異なるため、会計基準が変わることによる影響を被ると考えたほうが妥当と思われる。 IFRS は、会計の考え方が従来の会計基準と根本的な思想の部分

体で約1万社ある。ここに属する企業は会計監査人による監査は義務付けられているものの、連結財務諸表を作成する義務はない。IFRS は当初、連結財務諸表を対象に適用される(連結先行)見込みなので、IFRS に直接対応する必要はないことになる。懇談会では「上場会社に用いられる会計基準を基礎に、一定の会計処理および開示の簡略化を検討していくことが適当」としている。 ③は上場会社、①、②を除く企業で、全体で約260万社あり、多くが中小企業である。③の企業については「国際基準の影響を受けない」ものとするとされており、当面、IFRS の適用範囲ではない。 この報告書の基準に基づくと、JA も非上場であるが、非上場区分のどこに位置づけられるか。当然のことながらこの基準からいえば、JA は①の非上場法人に該当するものと思われる。IFRS の強制適用になった場合には、当然のことながら対応を行う必要がある団体に該当するといえる。

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不可欠である。 金融機関として JA を捉えた場合でも、金融商品会計やリース会計や減損会計をはじめとする固定資産関係の会計基準、退職給付会計など今後の会計基準の変更点は、現状の会計基準と比べても大きな差異が存在する。 JA の経営にとって影響する分野の会計基準について、その差異を把握し、中長期的な対応を検討していくことが重要である。

引用・参照文献企業会計基準委員会.「プロジェクト計画

表の更新について」,2010年12月.企業会計基準委員会.「非上場会社の会計

基準に関する懇談会検討結果」,2010年7月.

金融庁 企業会計審議会.「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書」,2010年6月.

で異なっているため、差異は当然のことながら存在すると考えておいたほうが良いであろう。

⑵ IFRS への対応

 会計のコンバージェンス自体は、日本の会計基準と IFRS との融合を目指す限り、避けて通れない。上場の各金融機関では、IFRS の全面適用かは別にして IFRS の導入方針を定め、マスタープランの策定、会計基準差異分析、業務への影響評価を行ったうえで、数年に亘る IFRS 導入プロジェクトによる対応を行っている。 非上場の金融機関においても、現状の会計基準と IFRS の会計基準では大きな差異があるため、その影響を理解しておくことは必要

A5判・208頁

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JA総合研究所・主席研究員

加島 徹 著