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© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 1 IIJmio meeting 15 「IIJの考えるフルMVNOとは」 2017/4/15 株式会社インターネットイニシアティブ 佐々木 太志

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IIJmio meeting 15

「IIJの考えるフルMVNOとは」

2017/4/15

株式会社インターネットイニシアティブ

佐々木 太志

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2016年8月30日の記者発表資料より

8月29日、NTTドコモに対し加入者管理機能の連携を申込み

フルMVNOサービス提供2017年度下期(予定)

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IIJがフルMVNOを目指した本当の理由

2. IoT時代に必要なSIM

1. 「横並び化」の進展

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「横並び化」の進展(「横並び化」とは?)

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日本のMVNOの黎明期に起きたこと

• MVNOとMNOは、本来は民間企業として、自由な契約に基づく自由なビジネスが行われることが期待される

• ただ、MVNOの黎明期、自由な事業者間の契約に基づくビジネスの成立を期待することは難しかった

– 事業を始めたいMVNOと、MVNOのために設備を貸すMNOの思惑が大きく違っていた

– MVNOの要望を全てMNOが聞くことは、現実問題として難しかった

– MVNOとしても事業モデルが未熟だった

– 事業者間協議の結果にビジネスが左右されるとなると、事業性を予測することが難しいためゴーサインが出せない

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日本のMVNO振興戦略

• MVNO事業化ガイドライン(2002年に初版が策定)

– 正式名称は「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」

• ガイドラインによるMVNOとMNOの契約関係の整理

– 事業者間接続

• 2007年2月の改定の際にガイドラインに導入

– 卸電気通信役務契約

• 2008年5月の改定の際に、「卸標準プラン」の考え方が導入

• 「卸標準プラン」とは

– (略)MVNOの新規参入に際しての予見可能性を高める観点から、MNOにおいて、(略)標準プラン(標準的なケースを想定した卸電気通信役務の料金その他の提供条件)を策定する等の情報開示を行うことが望ましい。なお、MNO及びMVNOは、当該標準プランの内容にかかわらず、協議当事者双方の間で個別に合意した提供条件に基づいて、卸電気通信役務契約の締結を行うことを妨げられない。(2008年5月改定ガイドライン)

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(参考)「接続」と「卸電気通信役務」の違い

接続(MNOが第二種指定電気通信事業者の場合)

卸電気通信役務

電気通信事業法 第34条 第29条第1項第10号

MNOへの規律 強い 弱い

• MVNOの接続要求に応じる義務 原則的にある ない(不当な差別の禁止のみ)

• 提供条件の公開 接続約款の届出、公表の義務 ない(卸標準プランの開示が望ましい)

• 提供条件の自由度 ない ある(ただ、実質的には卸標準プランに準拠のケースがほとんど)

MNOとMVNO間の料金の規定 あり• 「原価+適正な利潤」• 第二種指定電気通信設備接続料規則にて規定

ない• ただ実態としては、接続の料金を下回る価格での提供の例はほぼない(?)

MVNOに提供される機能 • データ通信 • データ通信• 音声通話機能• SMS機能• 等

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MVNO振興政策の結果

• MVNOの競争に与えた影響– 日本のMVNOは600社を超えた

– 契約数が1485万に上った

– 接続約款や卸標準プランがMNOとMVNOの提供条件のデファクト(事実上の標準)に

– MVNOの通信サービスに占めるMNO設備の比率は大きく、その提供条件がデファクト化することによりMVNOの通信サービスの横並び化が進展

– その後も競争は続いているが…

– 通信サービスにおける競争(例)• マルチキャリア

• ゼロ・レーティング

– 通信サービス以外における競争(例)• 量販店の陣取り、直営店等展開

• ポイント還元(「経済圏」)

• キャッシュバック

• テレビCM・イメージキャラクター

最近の競争はこちらが軸

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• MVNOの通信サービスにおいて、MVNOが自ら保有する設備はインターネットへのゲートウェイ部分のみに限られる

• サービス競争の前提となる設備競争が難しい

電話交換網

インターネット

コアネットワーク

IMSMSC

SPGW/P-CSCF

MME/SGWSGSN

HSS/HLR

SMS-C

通信制御サーバ

MNO

MVNOのネットワークアーキテクチャ(レイヤ2接続)

顧客管理システム

PGWGGSN

MVNO

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(参考)MVNOの過去の「横並び化」の例

• 容量制データ通信プラン

– 2012年2月にIIJmioが導入

– その後2012年に日本通信・DTI、2013年にはOCN・ビッグローブ、2014年にはmineoが相次いで参入

• 不通期間なしのMNP転入(「おうちでナンバーポータビリティ」)

– 2014年にmineoが導入(Aプランのみ)

– 2015年9月にIIJmio(タイプD)・mineo(Dプラン)・ビッグローブが導入

– 10月にOCNが導入

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IoT時代に必要なSIM

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MNOの横並び打破=IoT?

• 実のところ、横並びの悩みはMVNOだけのものではない

– MNOも、数年前から端末や料金プランなど横並び化が進展

スマートフォンの成熟化(コモディティ化)

• 横並び打破は(MVNO/MNOを問わず)通信業界全体の課題

– スマートフォンの「次」を探す取組みが活発化

IoT(Internet of Things)

• MVNOには、更に独自の課題が

– MNOが提供する(開放した)設備にサービスが縛られる(前述)

– IoTに向けたMNOの設備開放だけに期待するのでは、同じことの繰り返しになる恐れ• 自らの努力により競争が行える余地を高める努力が必要

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IoTとは

• スマートフォンの先祖は電話機– 本来、人と人を繋げることこそが電話の存在意義

– 今後もより深く人と人を繋げるための進化は続くだろうが、肝心の「人のキャパシティ」(リソース)には限界も• 「Facebookがあっても、人は友達を1万人作れる訳ではない」

• ネット疲れ、青少年の犯罪被害、ゲーム中毒etc

• 人間がボトルネックに?→通信業界だけで解決できる問題ではない

• IoTは、物と物、物と人を繋げる新しいサービスの概念– 「人間のリソース」(時間、所得、リレーション…)に依存する

サービスではなく、物と物が繋がることで人の生活や産業をより豊かに

– センサーやAIなど多様な技術が必要とされるが、ここでは「通信」と「サービス」に特化して説明

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IoTのイメージ

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IoTの課題

• 例えば「会話できるぬいぐるみ」の企画– ネットワーク側が文脈解析処理をアシストし自然な会話を実現– 定期的に新しい会話がダウンロードされてボキャブラリが成長する– スマホアプリから子供の名前を設定すると名前で呼びかける

• 他にも記念日や言語もアプリから設定可能

• 考えられる課題– WiFiで繋ぐ?モバイルデータ通信で繋ぐ?

• 家にWiFi環境がなかったら?あるいは設定が面倒だったら?• どうやってSSIDやAPNを入力させる?

– モバイルデータ通信の料金をぬいぐるみ価格に含めるとしたら?• ぬいぐるみを買った人が契約行為をしないと使えない?• SIMカードは挿して売る?別送して挿してもらう?交換可能にする意味は?• SIMカードを挿して売るとしたら、在庫期間の通信料金は誰が払う?

– モバイルデータ通信の料金を別途請求するとしたら?• クレジットカード番号や口座の情報をどうやって取る?• このぬいぐるみをオークションで販売したくなったら?新しいオーナーがぬいぐるみを

買ったら?

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課題の整理

いずれも、如何にハードルを下げるかが目的

今回は取り上げない(業界全体の課題のため)

1. センサーやAI、通信モジュールなどの課題

2. 接続までの工程の簡便化

3. 料金設計の自由度

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IIJの目指すフルMVNO

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そもそもフルMVNOとは

• 世界的には明確な定義がないが、「MNOのコアネットワークの一部を自前の設備で運用しているMVNO」くらいの意味

– コアネットワークを持たないMVNOが「ライトMVNO」

• 日本においては、「(コアネットワーク中の設備である)HLR/HSSを自前の設備で運用しているMVNO」とされることが多い

• HLR/HSSとは?

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(参考)加入者管理機能(HLR/HSS) IIJmio meeting 11資料より

• SIMカードを管理するためのデータベースのこと

– SIMカードに記録された様々なID番号(IMSI、電話番号)

– 通信の暗号化のための鍵

• 2つの機能

– 認証

• 端末が携帯電話ネットワークに接続しようとした際、その端末にどのネットワークサービスの利用を許すかを制御

– 位置登録

• 端末がどの交換機の管轄下にあるかを記録

スマートフォンタブレット

基地局

コアネットワーク

音声交換機

SIMカード

パケット交換機

HLR/HSS

認証・位置登録

認証・位置登録

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HLR/HSSをMVNOが運用するとできるようになること

1. SIMカードの自前発行

– MNOの機能開放に関わりなく、MVNOの企画でSIMカードを発行できる

2. MNCの取得

– ホストMNOのMNCではなく、MVNO自身のMNCを取得し使える

– 今回は詳しく説明しません

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なぜIIJがSIMを自前で発行したいのか?

1. 製品に適したSIMカードを供給できる

– 組込用チップSIM(MIMやeUICC)、ローエンドSIM、ハイエンドSIM、マルチFF SIM等

– 機器のサイズやバッテリー容量、防水性・耐熱性・耐振動性の要否、耐久年数やセキュリティへのニーズに合わせて、様々なSIMを提供できるようになる

2. IoTの設定面や料金面での課題を解消できる

– 設定の必要のないIoTデバイス

• SIMカードの組込みにより設定レスが実現できる

– より分かりやすい売り切りモデルや月額課金モデルの提供

• SIMカードの開通や廃止をMVNOがコントロールできるので、在庫期間中の基本料金のコスト削減が可能

• SIMカードの使い回し(廃止済みのSIMの再利用)ができるので、所有者が変わってもSIMカードの抜き差しをしなくていい

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まとめと次の課題

• IIJのフルMVNOは、接続約款や卸標準プランにないHLR/HSS開放を、事業者間協議にて達成したもの

• MVNOがより広い範囲の設備を自前で運用することにより、「通信サービスの競争」を実現

• IIJが独自にSIMカードを発行できることで、IoT製品設計の自由度が高くなると同時に、IoTのハードルを大きく下げることが可能

IoT以外の通信サービスにおいて、フルMVNOインフラによる他社との差別化をどう作っていくかは次の課題– 国際データ通信ローミングサービス

• 独自にMNCを取ることで可能となるが、今回は割愛

– 音声通話サービス