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ゼンショーグループのMMDを支援する統合システム
i Magazine (以下、i Mag):IBM iビジネスを統括する日本IBMのSystem i事業部長から、ユーザー企業であるゼンショーの執行役員 グループIT本部長に転身されたのは2007年でしたね。野々下:そうです。ゼンショーグループの情報システムは、ちょうどその時期から大きく動き出しました。当グループの事業の根幹には、原材料の調達から製造・加工・物流・店舗での販売まで一貫して企画・設計し、運営する「MMD(マス・マーチャンダイジング・システム)」があります。グループ全体で国内に約4000店舗が使用する食材を調達し、全国27カ所の自社
工場で製造・加工し、26カ所の物流センターから24時間365日体制で迅速に配送する。この仕組みを一元的に支援する情報システムの構築に向けて動き出したのが2007年4月でした。i Mag:それまでは、どのようにシステムを運用していたのですか。野々下:グループ全体を運用管理する統合システムは、それまで存在しませんでした。ゼンショーでは基幹業務システムとして、FAXでの受発注を前提にしたLinuxベースの「ZEOS
(Zensho Enterprise Online System) V1」を運用していたほか、グループ内で多業態展開する約20社がそれぞれ独自のシステムを運用していました。そのためマスターも統一されず、いわば部分最適化されたシステムをバラバ
ラに利用していたわけです。そこでMMDの仕組みに沿って、調達から生産・物流、そして店舗システムまでを一元的に支援するグループ全体の情報システムとして目指したのが「ZEOS V2」です。このプラットフォームとしてIBM iを採用しています。
ExcelとIBM iの連携開発から誕生した「EVOLIO」
i Mag:開発の経緯を教えてください。野々下:最初に着手したのは調達システムです。ILE RPGとXML Bridgeを使って2007年8月にスタートし、1年かけて完成させました。グループ全体のマスター整備に予想外に時間を取られたという事情もありましたが、私
ゼンショーグループのシステム開発から誕生した「EVOLIO」グループ全体で4147店舗(2011年3月末)、売上高3704億円(2011年3月期)と、今や日本一の外食チェーンに成長したゼンショーグループ。そこでシステム構築を指揮するのは、かつて日本IBMでIBM iビジネスを統括する事業部長であった野々下信也氏だ。同グループがIBM i上で進める統合基幹システムの構築プロセスから誕生した新たな開発ツール「EVOLIO」。その開発経緯と、急成長企業のIT戦略を野々下氏に聞く。
Photo:harukichi
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野々下信也
野々下 信也(ののした しんや)氏株式会社ゼンショー 執行役員 グループIT本部 本部長株式会社グローバルITサービス代表取締役社長
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野々下:例えば生産管理システムでは、88機能のうち77機能をEVOLIOで、正確にはEVOLIOの原型となる機能群で開発しました。調達システムとほぼ同じ開発ボリュームですが、開発期間はその半分の6カ月で終了しています。また次の開発案件であった物流システムは2010年5月に開発がスタートしました。これは調達システムの延長線上にあり、取引会社までを広くサポートするため、当初はRPGとXML BridgeによるWeb対応を基本に開発を始めました。しかし開発工数の短縮を考え、途中から帳票系を中心に社内のLAN環境で運用できる機能はEVOLIOに切り替えました。約100機能のうち半分がEVOLIOで開発されており、工数も当初見込みより大幅に短縮しています。i Mag:発売元はグローバルITサービスとあり、その代表取締役社長をされていますね。これはどういった会社ですか。野々下:ゼンショーの100%子会社で、もともと取引先に向けた調達システムの運用管理を担う目的で2008年6月に設立されました。今後はIBM iビジネスに強いベル・データや日本オフィス・システムなどの有力なビジネスパートナー様とともに、IBM iユーザーの方々にご提供していきたいと考えています。i Mag:どのようなユーザーがEVOLIOに向くと考えられますか。野々下:Excelの利用が活発でスキルが蓄積されている、部門単位で多数のExcelアプリケーションを利用しておられるユーザーにお勧めです。非定型で活用しているExcelアプリケーションを定型の基幹システムへ簡単に組み入れられますし、基幹システム周辺で求められる非定型システムや情報系システムも容易に開発できます。内部統制で問題になりやすいExcelレガシーも解消できるはずです。
メーカーの視野からは見えなかったユーザーの課題
i Mag:メーカーからユーザーへの転身によって得た気づきはありますか。野々下:IBM時代は「お客様第一」で営業しているつもりでしたが、ユーザーの立場になると、メーカーからはユーザーの状況や課題がとても狭い視野でしか見えていなかったのだとつくづく感じます。またユーザー側にも、全体像を描けるような十分な情報をメーカーやベンダーに提供できていないという課題もありますね。i Mag:両方を熟知する立場からの発言は説得力がありますね。野々下:それに、要件定義フェーズでは絶対に要件は固まらないことも実感しています。実際にユーザーが利用し、そのフィードバックを繰り返す中で、本当に要件を固められるにもかかわらず、要件定義フェーズで示される要件を前提に開発を進めていく現在のSIビジネスの限界を強く感じます。IBM時代も感じていましたが、今はさらに強くその限界を意識しますね。その意味では、1つの案件のフェーズを細分化した上で発注するとともに、アジャイル型の開発が強く求められます。その課題解決にEVOLIOが少しでも役立てられればと考えています。
はこの時、1年の開発期間はちょっと長すぎると思いました。グループは急成長を続けており、店舗数も急速に増えています。できるだけ短時間で開発し、現場部門での利用をいち早く進め、ユーザー要件や事業環境の変化に即応していける開発体制が強く求められています。そこで2008年8月に始まる生産システムには、別の開発手法が必要だと考え、着目したのがExcelでした。i Mag:なぜExcelだったのですか。野々下:実はゼンショーでは、Excelを使えないと仕事ができないぐらい、Excelの活用頻度が高いのです。一般のユーザーがExcel活用の高度なスキルを備え、マクロで作成した部門単位のExcelアプリケーションが多数稼働しています。そこでフロントエンド側はサードベンダー製のMRPエンジンをベースにExcelで作り込み、IBM iのDB2と連携させようと考えました。そして接続先やテーブル、データ検索・更新、プロシージャー呼び出しなどの定義を1つ1つ作業していたのですが、生産管理システムの開発が終了したあと、それらのノウハウを集約し、汎用性を高めた形でツール化したのが、「EVOLIO(エヴォリオ)」でした。i Mag:2011年3月にリリースされた製品ですね。EVOLIOにはどんな特徴があるのですか。野々下:牛丼ではないですが、簡単に、早く、安価に開発できるのが最大の特徴です。EVOLIOはサーバー側のDBと連携するExcelアプリケーションを簡単に作成するツールで、Excelのアドインソフトと、定義情報などをサーバー側で管理する「データセンター設定ツール」の2つで構成されています。一般の開発ツールよりライセンス料が安く、Excelのスキルを最大限に活用して開発工数・コストを削減できる点がメリットですね。i Mag:ゼンショーではEVOLIOをどのように活用しているのですか。
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