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「画像の認識・理解シンポジウム (MIRU2007)2007 7 固定視点下における能衣装の異方性反射モデリング 武田 祐樹 田中 弘美 立命館大学情報理工学部知能情報学科 525—8577 滋賀県草津市野路東 1—1—1 E-mail: †{takeday,hiromi}@cv.ci.ritsumei.ac.jp あらまし 能は約 600 年の歴史があり,その伝統ある能面・能衣装は貴重な文化遺産である.現在,文化遺産をデジタ ルアーカイブ化し,後世に伝える研究が行われている.本研究では,能衣装のデジタルコンテンツ化のために,高精 細な画像計測と画像解析に基づく効率的な布物体モデリングを提案する.まず,色差に基づき能衣装の特徴である刺 繍領域と金糸領域の2つに分割する.金糸領域において,各テクセルに対し法線方向に基づいた異方性反射モデリン グを行い,観測画像から提案モデルの最適化を行う.各テクセルに対し得られた最適なモデルから双方向テクスチャ 関数を生成しレンダリングを行った. キーワード 双方向テクスチャ関数,イメージベースドモデリング,イメージベースドレンダリング,ハイダイナミッ クレンジ画像,デジタルアーカイブ化,異方性反射特性 Image-based Modeling of Anisotropic Reectance of Noh Costumes under Constant View Point Yuki TAKEDA and Hiromi T. TANAKA Department of Human and Computer Intelligence College of Information Science and Engineering Ritsumeikan University Noji Higashi 1—1—1, Kusatsu, Shiga, 525—8577 Japan E-mail: †{takeday,hiromi}@cv.ci.ritsumei.ac.jp Abstract Noh is a historical play for 600 years and Noh costumes are precious cultural heritage. Currently, some researchers group grapple with digital archiving of cultural heritages to save them. We propose the ecient image-based method of cloth object modeling to create digital contents of the Noh costumes. At rst, we divide embroidery regions and golden yarn region based on its color dierence. In each region, we propose image-based anisotropic reectance modeling with the normal distribution at each pixel. We generate Bi-directional Reectance Function(BTF) from proposed model and render the Noh costume. Key words Bi-directional Texture Function, Image-based Modeling, Image-based Rendering, High Dynamic Range Image, Digital Archiving, Anisotropic Reectance 1. はじめに 最近ではコンピュータグラフィクス (CG)・コンピュータビ ジョン (CV) 研究による3次元視覚情報処理技術の進展により, 貴重な文化財や文化遺産のデジタル記録・保存,デジタルアー カイブ化・コンテンツ化の研究が精力的に進められている.博 物館等の所蔵する資料や文化財には,能衣装や衣装等の様々な 布物体が存在する.素材に固有の布物体の変形,光沢や質感は 独特であり,これを忠実に再現することが CG CV における 重要な課題である. 能衣装は絹織物で金糸・銀糸が織り込まれ,さらに植物・動 物等の刺繍が施されており,独特の光沢と様々な柄をもつ布素 材である.能衣装の反射・透過特性は入射・視方向により大き く変化するため,その光沢を表現するために従来のテクスチャ マッピングだけでは不十分である. 従来からテクスチャを持つ物体表面の反射特性は,双方向テ クスチャ関数 (BTFBidirectional Texture Function)[2] によ り記述される.BTF はテクスチャ上の任意点における,任意 光源方向からの放射照度に対する任意視点方向の放射輝度の比 として定義された.従来の BTF 表現における課題として,計 測装置の開発,計測画像数と計測時間の膨大性が問題であった. Dana らは平行光源下で放物面鏡を用いた BTF 計測装置を開 発した [3]Muller らは BTF 計測装置を開発し,計測からレ ンダリングまでの一連の方法を提案した [7].しかしいずれの装

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「画像の認識・理解シンポジウム (MIRU2007)」 2007 年 7 月

固定視点下における能衣装の異方性反射モデリング

武田 祐樹† 田中 弘美†

† 立命館大学情報理工学部知能情報学科 〒 525—8577 滋賀県草津市野路東 1—1—1

E-mail: †{takeday,hiromi}@cv.ci.ritsumei.ac.jp

あらまし 能は約 600年の歴史があり,その伝統ある能面・能衣装は貴重な文化遺産である.現在,文化遺産をデジタ

ルアーカイブ化し,後世に伝える研究が行われている.本研究では,能衣装のデジタルコンテンツ化のために,高精

細な画像計測と画像解析に基づく効率的な布物体モデリングを提案する.まず,色差に基づき能衣装の特徴である刺

繍領域と金糸領域の2つに分割する.金糸領域において,各テクセルに対し法線方向に基づいた異方性反射モデリン

グを行い,観測画像から提案モデルの最適化を行う.各テクセルに対し得られた最適なモデルから双方向テクスチャ

関数を生成しレンダリングを行った.

キーワード 双方向テクスチャ関数,イメージベースドモデリング,イメージベースドレンダリング,ハイダイナミッ

クレンジ画像,デジタルアーカイブ化,異方性反射特性

Image-based Modeling of Anisotropic Reflectance of Noh Costumes

under Constant View Point

Yuki TAKEDA† and Hiromi T. TANAKA†

† Department of Human and Computer Intelligence College of Information Science and EngineeringRitsumeikan University Noji Higashi 1—1—1, Kusatsu, Shiga, 525—8577 Japan

E-mail: †{takeday,hiromi}@cv.ci.ritsumei.ac.jp

Abstract Noh is a historical play for 600 years and Noh costumes are precious cultural heritage. Currently,

some researchers group grapple with digital archiving of cultural heritages to save them. We propose the efficient

image-based method of cloth object modeling to create digital contents of the Noh costumes. At first, we divide

embroidery regions and golden yarn region based on its color difference. In each region, we propose image-based

anisotropic reflectance modeling with the normal distribution at each pixel. We generate Bi-directional Reflectance

Function(BTF) from proposed model and render the Noh costume.

Key words Bi-directional Texture Function, Image-based Modeling, Image-based Rendering, High Dynamic

Range Image, Digital Archiving, Anisotropic Reflectance

1. は じ め に

最近ではコンピュータグラフィクス (CG)・コンピュータビ

ジョン (CV)研究による3次元視覚情報処理技術の進展により,

貴重な文化財や文化遺産のデジタル記録・保存,デジタルアー

カイブ化・コンテンツ化の研究が精力的に進められている.博

物館等の所蔵する資料や文化財には,能衣装や衣装等の様々な

布物体が存在する.素材に固有の布物体の変形,光沢や質感は

独特であり,これを忠実に再現することが CGや CVにおける

重要な課題である.

能衣装は絹織物で金糸・銀糸が織り込まれ,さらに植物・動

物等の刺繍が施されており,独特の光沢と様々な柄をもつ布素

材である.能衣装の反射・透過特性は入射・視方向により大き

く変化するため,その光沢を表現するために従来のテクスチャ

マッピングだけでは不十分である.

従来からテクスチャを持つ物体表面の反射特性は,双方向テ

クスチャ関数 (BTF:Bidirectional Texture Function) [2]によ

り記述される.BTF はテクスチャ上の任意点における,任意

光源方向からの放射照度に対する任意視点方向の放射輝度の比

として定義された.従来の BTF表現における課題として,計

測装置の開発,計測画像数と計測時間の膨大性が問題であった.

Dana らは平行光源下で放物面鏡を用いた BTF 計測装置を開

発した [3].Muller らは BTF 計測装置を開発し,計測からレ

ンダリングまでの一連の方法を提案した [7].しかしいずれの装

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置も観測可能な入射・視方向は限られている.一方 ����� ら

は多数の光源・カメラを設置した装置を開発し �次元形状及び

���を獲得した ��� .しかし ���を記述するためには膨大な

観測画像を必要とする. �����らは獲得した ���データの各テ

クセルを ���� ���モデル ���でフィッティングし,圧縮 ���

データからレンダリングした � �.!�"����は ��� データに

対し #�$を用い分析・圧縮してリアルタイムにレンダリング

した �%�.関根らが提案した手法はセーターや花柄のタオル生地

といった光沢の少ない布素材を対象とし,マクロ柄に対しテク

スチャ生成を行った �&'�. いずれの手法も対象物体が規則的な

柄を持つため,対象物体の一部のテスクチャに注目し反射光を

計測すればよい.

我々は複雑な柄を持ち,微細な細工が施された能衣装を対象

とし,高精細な ��� を生成することを目的とする.能衣装は

絹糸の基礎地に反射が強い金糸と刺繍糸が織り込まれており,

全体として色彩が鮮やかな配色が多い.この配色を利用し,ま

ず色差に基づき色ごとに領域分割を行う.視点を固定し各領域

の位置情報を獲得後,任意光源方向の観測画像を獲得する.獲

得した画像から各色領域において反射特性をモデル化し,���

を生成する.

�� 双方向テクスチャ関数 �����の獲得

物体表面の任意の点における反射特性は双方向テクスチャ

関数 ����( ����� ����� ��� �� ���� ���� で表現できる.

図 &に ��� の幾何関係を示す.��� は球座標系で定義され,

物体表面上の任意の点であるテクセル ��� �� において,入射

方向 � ) ���� ��� からの放射照度 ������ に対する視方向

� ) ���� ���への放射輝度 �������の比として定義される.

����� ��� ��� ��� �� �� )������� ��� ��� ��� �� ��

� ����� ��� �� ��� �&�

ただし,�を法線ベクトル,布平面上の基準ベクトルを �

とし,入射角 �� は�と �のなす角,入射方位角 �� は *+平

面上で � から � の角度,視角 �� は � と � のなす角,視方

位角 �� は *+平面上で �から � の角度とする.なお,物体

表面上の一点における反射特性は双方向反射分布関数 ��,��(

����� ����� ,�-�� ���� ��. �/� ��� ���� ���� �&&� で表現

できる.�,��は ���の表現の内,点 ��� ��に注目した関数

����� ��� ��� ���であると考えることができる.

��� を計測データから得るためには,任意の入射方向,視

方向に加えテクスチャ上の任意位置に対する反射光データを獲

得する必要がある.能衣装のように微細かつ精巧に作られたも

のは高精細な解像度も必要である.よって能衣装の ��� を獲

得するためには膨大な観測画像を必要とする.

図 �に,本研究の���獲得のために使用した全方位型光学異

方性反射測定装置 �0��( 0� ���� �1� ���.���2 ���"����

を示す.画像計測には解像度 �333× ��%�ピクセル,有効画素

数約 3'' 万画素のデジタルカメラ ����� 40! 5�.. ��2� �� *

を使用した.光源には朝日分光 �株� のキセノン光源 ���6&'�

を使用した.0�� は,光源 � 軸7 カメラ & 軸7 ステージ & 軸7

図 � ��� 幾何

���� � ����� � ����

図 � 全方位型光学異方性反射測定装置 �����

���� � ������� � � �������� ������������

図 � 能 衣 装

���� � � �� ������

合計 軸の回転自由度を持つ.これらの自由度を組み合わせる

ことにより,対象物に対しあらゆる入射方向7 視方向からの反

射光計測が可能である.

�� 能衣装の観測画像

図 �に示す能衣装の断片は,朱色糸の基本地に金糸が織り込

まれ,さらに青・緑・白色等の糸で花・葉・枝の刺繍が施され

ている.能衣装布は本来のテクスチャサイズは数十 �8×数十

�8から数十 �8×数 8ある.しかし,これまでの ���に関

する研究 ���~� �7 ���7 ���7 �%�7 �&'� では数 �8 ×数 �8 のテクス

チャサイズを扱い,能衣装布のテクスチャサイズは大きく対象

外である.テクスチャサイズの大きさのため,計測時間の長さ

と計測データの膨大さが問題点となる.

図 に図 �に示した布の刺繍による凹凸部を示す.朱色の基

本地に各色糸による刺繍が施され,花・枝葉が表現されている.

近接において凹凸部による影や刺繍内の糸の向きが確認できる.

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図 � 能衣装の接写画像

���� � ��� ���� �� ���� � � �� ������

�� � ハイダイナミックレンジ ���画像の獲得

対象とする能衣装は絹糸部分に比べ金糸部分の反射光が強

く,一重露光時間の観測では両反射光を正確に獲得することが

困難である.絹糸部分に注目し露光時間を調整すると金糸部分

においてサチュレーションが起こる.また金糸部分に注目し露

光時間を調節すると絹糸部分が暗く,色解析が困難である.本

研究の実験で行う画像獲得では,多重露光時間で観測を行った

画像を組み合わせたハイダイナミックレンジ �9�,�画像を獲

得する:

��/�;��らが市販されているデジタルカメラにおける 9�,

画像の獲得方法を提案した �3�.一般に市販されているデジタル

カメラは ,��の色素子が並べられた ���を内蔵し,色感知・

カラー画像生成を行っている.生成されるカラー画像は ,��

各チャンネルでは 3/� ����階調�のレンジがある.しかし,現

実世界に存在する光のレンジは 3/� よりはるかに広いため,一

重露光時間による観測画像にはサチュレーションが起こること

がある.一方,多重露光時間による観測によりデジタルカメラ

の観測可能レンジを広げることが出来る.しかし,デジタルカ

メラの色感度特性が入力の入射輝度と非線形であるため,単純

に多重露光時間による観測画像を組み合わせても,現実世界中

の光を正確に表すことができない.��/�;��らはデジタルカメ

ラの非線形な色感度特性を獲得する方法を提案した.本研究で

は,��/�;��らの提案手法による 9�,画像の獲得を行う.

�� � 多視点画像の獲得における問題点

従来の ���生成のため多視点画像獲得システム ���では,物

体を回転台に上下から押さえ固定し,マーカーにより物体姿

勢・位置を獲得していた.しかし,貴重な文化財に対しては,

劣化の少ない非接触が求められており,本研究で扱う能衣装も

例外ではない.我々は,多視点観測のために 0��を用いカメ

ラチャリブレーションを行い,画像変換行列を求め,正面画像

に変換を行うシステムを構築した.観測時は能衣装布を 0��

の中央にある回転台に対象物体を載せるだけである.しかし,

変換誤差が数 88残っており多視点観測による能衣装の ���

生成には問題がある.なぜなら能衣装に織り込まれた金糸の太

さが約 &88であるからである.これより,本研究では固定視

点下において光源方向の変化に対する観測画像から,任意視点

下における任意光源方向における ���を生成する.

図 ! "#�#$#色空間の色分布

���� ! ��� ��� %�����$���� �� "#�#$# ��� ������

� 固定視点下における金糸の異方性反射モデリング

能衣装布の観測画像から各色領域の反射特性を抽出し,モデ

リング法を述べる.能衣装は金糸・銀糸や原色の糸等による鮮

やかな配色がされている.このため使用されている各色間に大

きな色差があるため,この色差に基づいた領域分割を試みる.

図 �に示した能衣装に対して色差を用いて領域分割を行い,各

色領域で反射モデリングを行うことで,��� 表現のための画

像データを削減する.

� � 色領域分割

本研究では,領域分割の手法として色差に基づきマハラノビ

ス距離を評価しクラスタリングを行った.図 �に示すような能

衣装は色彩が鮮やかで,隣り合う色領域には大きな色差が見

られる.色差に基づき領域分割をするために,各色領域で色分

布を調べた.図 � に示すように,図 � の花模様の能衣装に対

し白色 $$$昼白色の蛍光灯で均等に光を当て観測した画像を

�<�</<空間に変換したものである.各色で分布位置が分かれ

ており,色差に基づいてクラスタリング可能である.クラスタ

リングはマハラノビス距離を評価基準とする.図 �に示した色

空間上の各色の点は,=68���法ではクラスタリングが困難で

ある.我々はマハラノビス距離を用いて,色の分布形状に依ら

ないクラスタリングを行う.以下にクラスタリングの手順を記

述する.

( &) 能衣装布の観測画像の各画素値を ,�� 表色系から

�<�</<表色系に変換する.

( �) 全画素から色差> が>� 未満の集合群 !を形成する.

また >� ) >� ? &とする.

( �) ! の内,メンバ数の多い集合を上位 � 番目まで取り

出す.

( ) �個の集合に対し,各集合の平均色を比較し,色差>�

未満であれば統合し,>� ) >� ? &とする.

( �) 集合の数が �個になるまで2~4を繰り返す.

( �) �個の集合を初期集合とし,マハラノビス距離を用い

て上位 �番目以降の集合をクラスタリングし領域を抽出する.

ただし,今回の実験では �を &'',図 �の花模様の能衣装に

対しては �を �とした.

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��� 計測した ��� を用いた場合 �$� 平滑化した ��� を用いた

場合

図 & 平滑化の前後における金糸領域の質感比較

���� & ��� ��� ������� � ��%�� ����

� � 金糸領域の ���モデリング

領域分割後,抽出した金糸領域における ���モデリングに

ついて述べる.図 に示したように,金糸領域は朱糸による基

礎地の横糸方向に沿って金糸が織り込まれている.朱糸領域は

直交に織られた布であり,織布は糸に沿った方向とそれに直交

する方向に法線分布が現れる �&&�7 �&��.また,金糸領域も金糸

が朱糸の横糸方向に沿って弓型をしており,直交する法線分布

をしていると考えられる.直交する法線分布に基づき,異方性

反射モデリングを行う.

我々は,固定視点下において光源方向を任意に変化させ観測

した画像から,テクセル位置を基準に異方性反射特性を抽出

し,モデリングを行う.まず,任意光源方向における観測画像

群を,同一テクセル位置ごとに抽出する.次に,各テクセル位

置のデータを光源方向の変化に対し平滑化する.最後に,各テ

クセル位置の平滑化データに基づき提案モデルの最適化を行う.

任意光源方向における観測画像の平滑化

観測画像の反射光データに提案モデルの最適化時に法線方向

を安定に求めるために,反射光データの平滑化を行う.ただし

平滑化により能衣装の質感が失われないことを確認する.

平滑化では各テクセルにおける光源方向 ���� ���を変化させ

たデータを ����� ��とする.����� ��に対し,入射角 ��7入射方

位角 �� のそれぞれ最近方向のデータと平均する.

また,図 �に,����� ��から生成した平滑化の前後における

金糸領域の質感比較を示す.視覚的に質感が失われていないこ

とが確認できる

提案モデルの最適化

図 �に,光源方向 � ) ���� ���を変化させ獲得したあるテク

セルにおける反射光を示す.図 ����から � ) ��'°� & �°�にお

ける反射光が最も強く,鏡面反射光を観測したと考えられる.

また,図 �/�に �� ) & �°における反射光,���に �� ) �'°に

おける反射光を示す.いずれの方向においても,正反射方向を

基準にガウス関数に似ている.よって,金糸領域の反射特性は

�,�の各方向に直交する異方性反射特性であり,�種類のガウ

ス関数で記述できる.

我々は,以下のような金糸領域における反射モデルを提案

する.

����� ��� ��� ��� �� �� ) ������� ��� ��� ���� ���

������� ��� ��� ��� ) �����

�������

���������

����?�����������

ただし,������� ��� ��� ���を点 ��� ��における �,��,��

をスペキュラ反射光色,��を � 方向の分散,��を �方向の分

散,�� を拡散反射光色とする.点 ��� ��における法線ベクト

ルを � ) ��� ��,光源ベクトル �と視線ベクトル �の中間

ベクトルをハーフベクトル� ) ��� ��とする.

提案モデルを各テクセルにおける ����� ��に対し最適化する.

ただし,計算コストの問題から入力データを減らすため,以下

の手順で行う.

( &) ����� ��に対し最大値をとる入射方向を探索し,この

方向を� ) �とし,法線方向 �を求める.

( �) 拡散反射光を求めるために,スペキュラ反射光の少な

い方位角 � ) � ? � で �� を求める.

( �) ����� ��から求めた拡散反射光を引き,スペキュラ反

射光を抽出する.

( ) 抽出したスペキュラ反射光に対し � を基準とし ��,

��,��を求める.

以上より,全テクセルに対し提案モデルの最適化を行う.

� 実 験

固定視点下における能衣装の観測画像を入力とし,提案手

法により金糸領域のレンダリングを行う.まず,あらかじめ蛍

光灯照明下において,能衣装の画像を観測し領域分割を行い,

金糸領域を抽出しておく.固定視点下であるため,観測画像に

対し能衣装の位置は変化しない.次に,入力として光源方向

���� ���を,�� が '度から 3'度まで �度ずつ,�� が '度から

���度まで �度ずつ変化させ,観測画像を光源方向の変化に対

し &�� 種類獲得する.ただし,各条件下において露光時間は

&@��7&@&''7&@��'7&@&'''7&@ '''�.��� の � 種類を設定するた

め,入力画像は計 �&�' 枚である.次に,多重露光時間による

画像から金糸領域の &�3�&�3 画素に対しハイダイナミックレ

ンジ �9�,�画像を生成する.生成した 9�,画像に対する各

����� ��において平滑化を行い,提案モデルの最適化を行った.

以上より生成した ��� からレンダリングを行った.図 3 に,

金糸領域のレンダリング結果を示す.�次元形状は �A�A�%&'

で計測した能衣装の �次元形状であり,金糸領域には提案手法

で生成した ���,それ以外はテクスチャを貼り付けレンダリ

ングを行った.いずれの光源方向においても,金糸の一本の形

が見え反射特性も表現できている.

�� お わ り に

我々は,固定視点下において獲得した観測画像から金糸領域

の質感表現法を提案した.まず,色差に基づき色ごとに領域分

割を行った.視点を固定し各領域の位置情報を獲得後,任意光

源方向の観測画像を獲得した.獲得した画像から金糸領域にお

いて反射特性をモデル化し,��� を生成した.実験結果より

本手法により金糸領域の質感表現が可能であることを確かめた.

今後の課題として,本実験の評価方法及び,刺繍領域に対する

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��� ����� ��

�$� �� ' ��!°における反射光

��� �� ' &(°における反射光

図 ) あるテクセルにおける反射光

���� ) *�+������� �� � ��,���

モデリングが挙げられる.

文 献-�. �� ����/���0 12 ������3��� ������� ��,�����01 4��� �((�

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-�(. 関根真弘,山内康晋,Eマクロ柄を考慮した双方向依存テクスチャの生成とマッピング,1 情報処理学会,グラフィクスと 5�8,����� �?,�((��

-��. 武田祐樹,田中弘美,E反射光解析に基づく織布の微視的表面幾何構造の復元,1 画像の認識・理解シンポジウム ��6*:� 予稿集,����(?�9�(?@,<�� �((&�

-��. 武田祐樹,フィンクァンフイヴィェト,坂口嘉之,田中弘美,Eフレネル項を考慮した多視点画像の反射光解析に基づく織布の異方性反射モデリング,1 画像の認識・理解シンポジウム ��6*:�

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��� 光源方向が右側

�$� 光源方向が左側

��� 光源方向が下側

図 ? 異なる光源方向における能衣装のレンダリング

���� ? ��� ���%����� ���� � � ���� � �� ����� �� %�H�����

����� %��������