image j を用いた組織像の定量解析

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Image J を用いた Oil Red O & Hematoxylin 染色等の 染色像の定量解析 東京理科大学大学院 薬学研究科 薬科学専攻 東京理科大学 総合研究院 戦略的環境次世代健康科学研究基盤センター 小野田 淳人 ([email protected] ) 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 Oil red O Hematoxylin Area μm 2

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Page 1: Image J を用いた組織像の定量解析

Image J を用いた

Oil Red O & Hematoxylin 染色等の

染色像の定量解析

東京理科大学大学院 薬学研究科 薬科学専攻

東京理科大学 総合研究院 戦略的環境次世代健康科学研究基盤センター

小野田 淳人 ([email protected])

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

Oil red O Hematoxylin

Area µm2

Page 2: Image J を用いた組織像の定量解析

組織像の定量解析は、統計的な “違い” を示すためにも

有効な解析手法の一つです

A B

C D

ほんまに? よぅわからへんなぁ

演 者

聴 衆

D 群は、A 群とC 群に比べて

脂質蓄積量(赤)が増加したんやで

※著作権の関係上、画像は適当なものを使用しています

Page 3: Image J を用いた組織像の定量解析

D 群は、A 群とC 群に比べて

脂質蓄積量(赤)が増加したんやで

ほんまや! よーさん増えとるやんか!

演 者

聴 衆

A B

C D

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

A B C D

Red Areaµm2

組織像の定量解析は、統計的な “違い” を示すためにも

有効な解析手法の一つです

※著作権の関係上、画像は適当なものを使用しています ※著作権の関係上、グラフの数値は適当です

では、どのようにすれば定量化ができるのか、Image Jを例に見ていきましょう。

Page 4: Image J を用いた組織像の定量解析

染色像の定量化までの流れ

I. Image J の基礎(参考資料)

II. Scale の単位変換

III. 三原色の分離: Split Channels

IV. 赤色の輝度から青色の輝度を引く

V. 測定領域の指定:閾値の決定

VI. 測定領域の定量化

今回は Hematoxylin による核染色を施した Oil Red O 染色を例に

2色ある染色像の定量方法を述べていきます。

また、単染色法や免疫蛍光法などの画像を定量解析する際にも、

同様の手法を適用することができます。

Page 5: Image J を用いた組織像の定量解析

Image J の基礎:他力本願

http://www.slideshare.net/nmaro/imagej20116

バイオイメージング研究のためのImage J によるデジタル画像解析入門

朽津 夏麿(東京大学大学院)

http://seesaawiki.jp/w/imagej/d/ImageJ%A5%DE%A5%CB%A5

%E5%A5%A2%A5%EB%A1%A7%A5%C1%A5%E5%A1%BC%A5

%C8%A5%EA%A5%A2%A5%EB%A4%C8%BC%C2%CE%E3

Image J マニュアル:チュートリアルと実例

インストールから実例まで、これらの資料を読めば、

たいていのことはできるようになります。

Page 6: Image J を用いた組織像の定量解析

Image J の基礎:組織解析の注意点

組織切片における定量評価では、

絶対的な定量値にさほどの価値はありません。

大切なのは、対照群との比較解析です。

比較解析では、

染色効率が各切片で同一であることを前提にして成り立ちます。

そのため、

① 組織固定の不十分など、変性による artifact がない切片

② 染色態度を左右する固定時間、切片厚等が同一である切片

③ 基本的に、同一試薬を用いて、同じ操作で、同時に染色した切片

④ 同じ設定の同じ顕微鏡で撮影した画像* *③を満たしている場合に限る

これらの条件を満たしていることが、

染色像の定量解析には必須となります。

Page 7: Image J を用いた組織像の定量解析

Scale の単位変換

最終的に定量化するときは、基本的に『m』単位を用いますが、

Image J の初期設定では『pixel』になっています。

Image J の初期設定

Page 8: Image J を用いた組織像の定量解析

Scale の単位変換

1.Image J を起動

起動直後の画面→

2.”File” → “Open” を選択し、解析対象の画像を開く

3.虫眼鏡のマークを選び、

画像を拡大する

Page 9: Image J を用いた組織像の定量解析

Scale の単位変換

4.Straight line selections

を選択する

5.画像のスケールバーに合わせて、線を引く(黄色)

6.”Analyze” → “Measure” をクリックするとResultsウィンドウが出てくる

7.この場合、50 µmが

293.750 pixelである

ことを示している。

Page 10: Image J を用いた組織像の定量解析

Scale の単位変換

8.”Analyze” → “Set Scale” をクリックするとSet Scaleウィンドウが出る

9.Distance in pixels に先ほど測定したpixel数を、

Known distance にスケールバーの長さを、

Unit of length にスケールバーの単位を入力する

10.OKをクリックして、

Scaleの単位設定を終了する

※この時の値(○○ pixels/µm など)を

メモしておくと、後で楽になる

Page 11: Image J を用いた組織像の定量解析

三原色の分離: Split Channels

11.再度、解析対象の同じ画像を開きなおす

12.”Image” → “Color” → “Split Channels” を選択

13.Red, Green, Blue に分かれた3つの画像が表示される

Red Green Blue 初期画像

例えばRedの画像なら、赤の色調(波長)を多く含むところほど輝度が高く、 赤の色調(波長)が少ないところほど輝度が低く示される

低 高

まず、各色の輝度を抽出するために、色の分離を行います。

Page 12: Image J を用いた組織像の定量解析

赤色の輝度から青色の輝度を引く

14.今回用いた Oil red O & Hematoxylin 染色は、

赤色と青色の色調が強いため、

Redの画像とBlueの画像を残す

15.”Process” → “Image Caluculator” を

クリックして開く

16.Redの画像からBlueの画像が

減算(Subtract)されるように設定する

17.OKをクリックすると 赤の波長の強いところが白色になり、 それ以外は黒色になった画像が入手できる (場合によっては、さらに Green を減算することもある)

Red - Blue

18.”File” → “Save as” で

任意のフォルダに保存する

定量したい色の輝度から不要な色の輝度を減算します。

Page 13: Image J を用いた組織像の定量解析

赤色の輝度から青色の輝度を引く:簡単な原理

Blue

Red

Red-Blue

初期画像

Split

Subtract

赤(Oil red O)

青(Hematoxylin)

白(血管腔)

赤の波長が強い赤色と白色の輝度が高い

青の波長が強い青色と白色の輝度が高い

赤の輝度大ー青の輝度小= 輝度大(白で示される)

赤の輝度小ー青の輝度大= 輝度は負の値(黒)

赤の輝度大ー青の輝度大= 輝度小(黒)

赤の輝度ー青の輝度= 減算後の輝度

結果的に、減算後の画像では赤色の部分だけが高い輝度(白色)で示される

Page 14: Image J を用いた組織像の定量解析

測定領域の指定:閾値の設定

19.減算によって得られた画像を開く

20.”Image” → “Adjust” → “Threshold”を

クリックして開く

21.閾値となる値を設定する(次スライド参照)

※比較解析をするためには、この値を定量する全てのFigにおいて

同一にしなければならない。値はもとの画像と比較して熟考する。

22.値を決定した後、

Applyをクリックして適用する。

23. ”File” → “Save as” で

任意のフォルダに保存する

※この画像は

手法を示す際に、もとの画像と比較して

論文に使用されることが多い

数値化する領域を決定するために閾値を定めます。

Page 15: Image J を用いた組織像の定量解析

測定領域の指定:閾値の決定

21.閾値となる値を設定する

※比較解析をするためには、この値を定量する全てのFigにおいて

同一にしなければならない。値はもとの画像と比較して熟考する。

10 25 40

Page 16: Image J を用いた組織像の定量解析

測定領域の指定:閾値の決定

21.閾値となる値を設定する

※比較解析をするためには、この値を定量する全てのFigにおいて

同一にしなければならない。値はもとの画像と比較して熟考する。

重ね合わせた結果、25-255の値が実際の Oil Red O 陽性脂肪滴に近いため、この画像をもとに定量することができる。この実験系の全ての画像に対して25-255を適用しなければ、適切な比較解析はできない。

Page 17: Image J を用いた組織像の定量解析

測定領域の定量化

24.再び、減算後の画像を開く

※ “Threshold” 後の画像を

利用してもよいが、使いにくい

25.再び ”Image” → “Adjust” → “Threshold”を

クリックしてThresholdを開く

26.決定した閾値を入力する

27.指定した部分が赤くなる

28. ”Analyze” → “Set Scale” を開いて

スケールを確認する

※場合によっては、

最初にメモした値を入力し直す

指定した領域を定量化します。

Page 18: Image J を用いた組織像の定量解析

測定領域の定量化

29. ”Analyze” → “Set Measurement” を

クリックして、測定項目と範囲を選択する

30.まずは、画像全体の面積を測定するため、

“Area” のみにチェックを入れる

31. ”Analyze” → “Measure” をクリックすると

指定した範囲の面積が示される

※この場合は画像全体の面積が示される

Page 19: Image J を用いた組織像の定量解析

測定領域の定量化

32. ”Analyze” → “Set Measurement” を

クリックして、測定項目と範囲を選択する

33.指定した領域の面積を測定するため、

“Area” と ” Limit to Threshold” に

チェックを入れる

34. ”Analyze” → “Measure” をクリックすると

指定した範囲の面積が示される

※この場合は指定した領域(赤い部分)の

面積が示される

35.研究内容に応じて、定量値をそのまま、

あるいは面積比を算出して用いる。

Page 20: Image J を用いた組織像の定量解析

ちなみに:各閾値の場合の定量値

10 25 40

22074.669 12056.887 6793.291

同じ画像からでも閾値に応じて異なる結果が得られるので、 細心の注意をはらって閾値を決定する

Page 21: Image J を用いた組織像の定量解析

測定領域の定量化

36.Resultsのウィンドウを消去する際に保存するか問われるため

“Yes” を選択する

37.保存されるファイルは .xls 形式なのでエクセルとして使用可能

38.得られた数値をもとにFigure、あるいはTableを作成し、

論文に用いる

39.Accept される

Page 22: Image J を用いた組織像の定量解析

おわりに

今回は Hematoxylin による核染色を施した Oil Red O 染色を例に

2色ある染色像の定量方法を述べましたが、

単染色法や免疫蛍光法などの画像を定量解析する際にも、

同じ手法を適用することができます。

また、

3種以上の色が存在する場合、

黄色や緑、茶色等、原色から遠い色を定量化する場合など、

条件が厳しい画像の際、Image J による定量化の前に

Photoshop を用いて画像編集を施すことで

定量化が可能になる場合があります。

そちらの方は、またの機会にお話しできればと思います。

何か、ご質問等のある方はこちらまで連絡を下さい。

[email protected]