imo(国際海事機関)imo(国際海事機関) 総会 第23 回 議題項目19 a 23/res.962...

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IMO(国際海事機関) 総会 23 議題項目 19 A 23/Res.962 2004 3 4 原文:英語 決議 A.962(23) 採択 2003 12 5 (議題項目 19船舶のリサイクルに関する IMO ガイドライン 総会は、 海上の安全、船舶による海洋汚染の防止と規制、および海洋環境に対する船舶の影響に 関する他の問題の規則とガイドラインに関連した総会の機能について、国際海事機関条 約第 15(j)条を勘案し、 船舶リサイクル業界における環境上の安全、健康および福祉に対する増大する懸念、船 舶リサイクルに関連する環境上、職業上の健康および安全リスクを低減する必要性に留 意し、同時に、寿命の終わりに達した船舶の円滑な使用の中止を確保しつつ、 国際労働機関、バーゼル条約、および船舶リサイクルの他の利害関係者の役割にも留意 し、 バーゼル条約会議参加国による第 6 回会議で採択された「船舶の全体的および部分的解 体に対する環境上適正な管理のための技術ガイドライン」、国際労働機関(ILO)によ り制定された「船舶解体における安全衛生のガイドライン」を考慮し、 船舶業界がリサイクル向けの船舶について採用する最適な実施方法を制定するために 開発した「船舶リサイクルに関する業界実施要綱」も考慮し、 1

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IMO(国際海事機関) 総会 第 23回 議題項目 19 A 23/Res.962 2004年 3月 4日 原文:英語 決議 A.962(23) 採択 2003年 12月 5日 (議題項目 19) 船舶のリサイクルに関する IMOガイドライン 総会は、 海上の安全、船舶による海洋汚染の防止と規制、および海洋環境に対する船舶の影響に

関する他の問題の規則とガイドラインに関連した総会の機能について、国際海事機関条

約第 15(j)条を勘案し、 船舶リサイクル業界における環境上の安全、健康および福祉に対する増大する懸念、船

舶リサイクルに関連する環境上、職業上の健康および安全リスクを低減する必要性に留

意し、同時に、寿命の終わりに達した船舶の円滑な使用の中止を確保しつつ、 国際労働機関、バーゼル条約、および船舶リサイクルの他の利害関係者の役割にも留意

し、 バーゼル条約会議参加国による第 6回会議で採択された「船舶の全体的および部分的解体に対する環境上適正な管理のための技術ガイドライン」、国際労働機関(ILO)により制定された「船舶解体における安全衛生のガイドライン」を考慮し、 船舶業界がリサイクル向けの船舶について採用する最適な実施方法を制定するために

開発した「船舶リサイクルに関する業界実施要綱」も考慮し、

1

船舶リサイクルの改善に貢献するには、船舶のライフサイクル全体を通じて船舶を考慮

する必要があることを認識し、 船舶の安全と運転効率を犠牲にすることなく、船舶の設計、建造、および保守で有害物

質の使用を最小限度に抑える必要があること、また、実現可能な限り、環境上および安

全上のリスクと健康と福祉の懸念を減らす方法でリサイクル用船舶を準備する必要が

あることも認識し、 海洋環境保護委員会が第 49回の会議で推奨した事項を考慮し、 1. 本決議の付属書に規定されている「船舶リサイクルに関する IMO ガイドライン」を採択する。 2. 造船および船舶リサイクル業界への普及など、付属書のガイドラインを適用す

る迅速な措置を講じるように、またその運用で得られた経験について海洋環境保護委員

会に報告するように各国政府に求める。 3. 将来さらにガイドラインを発展させるために、この事案の検証を続けるよう海

洋環境保護委員会に求める。 4. 加えて、ガイドラインが所定の目的を達成しているかその進捗を確認すること

を含め、ガイドラインの運用を促進する最も適切な手段を海洋環境保護委員会が考慮す

るように求める。 5. 国際労働機関およびこの分野におけるバーゼル条約の該当する組織と継続し

て協力し、他の利害関係者の関与を奨励するように海洋環境保護委員会に要請する。 付属書 船舶のリサイクルに関する IMOガイドライン 目次 第 1条-序文 第 2条-適用

2

第 3条-定義 第 4条-潜在的に有害な物質の識別 第 5条-グリーンパスポート 第 6条-船舶のリサイクルに関連する新規船舶の手順 6.1 新規船舶とその設備に使用される有害物質の最小化 6.2 リサイクルの促進と有害物質の除去を促進するための船舶および船舶設備の

設計 6.3 グリーンパスポートの準備 6.4 潜在的に有害な物質の使用の最小化 6.5 発生する廃棄物の最小化 第 7条-船舶のリサイクルに関連する既存の船舶の手順 7.1 グリーンパスポートの準備 7.2 潜在的に有害な物質の使用の最小化 7.3 発生する廃棄物の最小化 第 8条-船舶リサイクルの準備 8.1 リサイクル施設の選択 8.2 リサイクル施設への船舶の配送 8.3 船舶リサイクルの準備 8.3.1 全般 8.3.2 船舶のリサイクル計画 8.3.3 汚染を防止するための準備 8.3.4 労働衛生および安全を保護するための準備 第 9条-利害関係者および他の団体の役割 9.1 全般 9.2 旗国の役割 9.2.1 「リサイクル準備完了」条件の基準 9.2.2 運用 9.3 寄港国の役割 9.3.1 リサイクルに向かう船舶のポートステートコントロール手順 9.3.2 運用 9.4 リサイクル国の役割 9.4.1 全般 9.4.2 船舶で発生した廃棄物の受け入れ施設

3

9.4.3 リサイクルに配送される船舶の管理のための措置 9.4.4 リサイクル施設の管理のための措置 9.5 バーゼル条約の役割 9.5.1 環境上適切な船舶の解体 9.5.2 通知および書面による事前の同意の原則 9.6 国際労働機関の役割 9.7 ロンドン条約 1972/1996議定書 9.7.1 船舶の投棄 9.7.2 船舶の遺棄 9.7.3 海底への船舶の「配置」 9.7.4 ロンドン条約に基づく船舶投棄の報告 9.7.5 廃船の廃棄に関するオプション 9.8 造船業界の役割 9.8.1 船舶リサイクルに関する業界実施要綱 9.8.2 リサイクル用船舶の販売または購入の契約 9.9 船舶リサイクル業界の役割 9.10 他の利害関係者の役割 第 10条 技術協力 付録 1-船舶リサイクルに関連する有害な廃棄物および物質のリスト(「船舶の全体的および部分的解体に対する環境上適正な管理のための技術ガイドライン、2002」の付録 Bに基づく) 付録 2-リサイクル施設に配送される船舶上に存在する可能性がある潜在的に有害な物質(「船舶リサイクルに関する業界実施要綱、2001年 8月」の付属書 1に基づく) 付録 3-船舶内の潜在的に有害な物質の在庫 付録 4-すべての種類の船舶上における火気作業の原則のリスト 付録 5-船舶内の密閉空間に立ち入る場合の推奨事項 1 序文 1.1 船舶は、一定の段階でその寿命の終わりに達する。ほとんどの船舶のライフサ

4

イクルは、「揺りかごから墓場まで」、つまり「メーカーから破砕機まで」20~25 年以上の使用寿命である。2001年に、OECDは特にばら積み船とタンカーについて、継続して運転されている旧型船舶での犠牲者の比率が増加していると通知している。旧型

船舶の着実な使用廃止および新しい船舶への置き換えは、安全で環境上適切な設計、す

ぐれた運転効率、および海上危険の全般的な低減をもたらす機会を提供する自然な商業

プロセスである。 1.2 通常、リサイクルは持続的な発展の基本原則の 1つである。使用期間を満了した船舶の場合、リサイクルの代替案は少なく、係船しておくのは単に問題を先延ばしに

するだけである。保管施設、防波堤、または観光名所などの他の用途に船舶を転換する

機会は限られている。ロンドン条約で厳格に管理されている船体に穴を開けての沈没で

は、船舶の鋼や他の材料および設備をリサイクルする機会が得られない。 1.3 したがって、使用期間を満了した船舶にとって最適な選択肢は一般にリサイク

ルである。加えて、MARPOL条約で規定された新しい国際的要件に適合していない船舶、特に石油タンカーがその商業的寿命の終わりに達するにつれて、船舶のリサイクル

に対する需要は近い将来高まることが予想される。 1.4 船舶リサイクルの原則が適正であることに対し、リサイクル施設の作業要領と

環境標準には遺憾な点が多い。リサイクル施設内の条件に対する責任は施設が存在する

国が負うべきであるが、他の利害関係者もリサイクル施設における健康、安全および環

境保護に関連する潜在的な問題の最小化に貢献することができ、また当該ガイドライン

を適用する必要がある。 1.5 当該ガイドラインは、船舶リサイクルプロセスのすべての利害関係者を指導す

るために開発されている。これには、旗国、寄港国およびリサイクル国、造船管轄機関

および海事設備供給国ばかりでなく、関連する政府間組織や、船舶所有者、造船会社、

船舶設備メーカー、修理およびリサイクル施設などの商業団体も含まれる。他の利害関

係者には、作業者、地域社会、環境団体および労働団体がある。 1.6 当該ガイドラインは以下を目指すものである。 .1 寿命を終えた船舶を廃棄する最適な手段としてリサイクルを奨励する。 .2 リサイクルのための船舶の準備、および船舶の寿命期間内に使用する潜在的に

有害な物質とそこで発生する廃棄物の最小化について指導を行う。

5

.3 諸機関間の協力を醸成する。 .4 すべての利害関係者が船舶リサイクルの課題に対応するように奨励する。 1.7 一般に、当該ガイドラインでは、船舶リサイクル施設の環境および作業者の保

護に対する義務はリサイクル施設自体およびリサイクル施設が運転される国の管轄機

関に責任があることを認めている。しかしながら、船舶の所有者と他の利害関係者もま

た、関連する問題に対応する責任を負うものと認識している。 2 適用 2.1 当該ガイドラインは、船舶のライフサイクル全体に及ぶ船舶リサイクルプロセ

スを考慮した「最善の実施方法」について、旗国、寄港国およびリサイクル国、船舶所

有者、造船会社、船舶設備サプライヤ、リサイクル施設を指導するために開発された。 2.2 当該ガイドラインは、「船舶リサイクルに関する業界実施要綱」を考慮し、こ

の課題に対応している他の国際的ガイドライン、特に、船舶リサイクル施設に関連する

課題に焦点を当てている「有害物質と廃棄物の国境を越える移動の規制に関するバーゼ

ル条約締約国会議」によって制定されたガイドライン**、およびリサイクル施設の作業条件に対する国際労働機関のガイドライン***を補足している。これらのガイドラインに関する詳細は、当該ガイドラインの第 9.5項、第 9.6項に示されている。他の国際的な法律の規定または管理機関の作業は、当該ガイドラインで扱われている船舶のリサイ

クル活動に適用できる。関連する条約には、オゾン層を破壊する物質に関するモントリ

オール議定書、残留性有機汚染物質(POP)に関するストックホルム条約、廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約(ロンドン条約 1972年)、国連海洋法条約がある。 3 定義 当該ガイドラインの目的は以下のとおりである。 「主官庁」とは、船舶の運航を許可している国の政府をいう。旗国の船舶に関しては、

「主官庁」とは船舶の旗国の政府をいう。沿岸国が天然資源の調査と開発のため、自らの

主権を行使する沿岸に隣接する海底および底土の調査・開発用に使用している固定式ま

たは浮動式プラットフォームに関しては、「主官庁」とは、関係している沿岸国の政府

をいう。

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「既存の船舶」とは、新規船舶ではない船舶をいう。 「有害物質」とは、人または環境に有害であることが IMDG コード、バーゼル条約、または他の国際機関または法律文書で特定されている物質をいう。 「新規船舶」とは、次の船舶をいう。

.1 2003年 12月 31日以降に建造契約が締結された船舶。または ________________________ * ICSは他の業界組織と協力し、リサイクルの前に船舶の所有者が準備すべき措置につい て ま と め た 「 船 舶 リ サ イ ク ル に 関 す る 業 界 実 施 要 綱 」 を 制 定 し た

(www.marisec.org/recyclingを参照)。 **2002年 12月 13日のバーゼル条約締約国による第 6回会議で採択された「船舶の全体的および部分的解体に対する環境上適正な管理のための技術ガイドライン」

(www.basel.intを参照)。 ***国際労働機関(ILO)により制定された「船舶解体における安全衛生のガイドライン」(www.i lo.org/public/english/protection/safework/sectors/shipbrk/index.htmを参照)。

.2 建造契約が締結されていない場合、2004年 6月 30日以降にキールが配置されるか、それと同様の建造段階にある船舶。

.3 2006年 12月 31日以降に納入される船舶。 「機関」とは、国際海事機関(IMO)のことをいう。 「リサイクル施設」とは、船舶のリサイクルに使用される場所、ヤード、または施設が

存在する国(リサイクル国)の管轄機関により、リサイクルを認可または許可された船

舶のリサイクルに使用される場所、ヤードまたは施設をいう。 「船舶」とは海洋環境で運航される任意の種類の船舶をいい、水中翼船、ホバークラフ

ト、潜水艦、浮動機器、固定式または浮動式プラットフォーム、および設備を取り外し

た船舶または曳航される船舶を含む。

7

「船舶の所有者」とは、船舶の所有者として登録されている会社または人、または登録

がない場合は船舶を所有している人または会社をいう。ただし、国が所有し、その国に

船舶の運航者として登録されている会社が船舶を運航している場合、「所有者」とは当

該会社をいう。この用語には、リサイクル施設への売却を待つ限られた期間内に船舶の

所有権を持っている者も含まれる。 「船舶リサイクル」とは、係留または引き上げ、解体、資材の回収および再処理など、

関連するすべての作業をいう。 「船舶の寿命」とは、船舶が現在の機能を発揮できる期間をいう。 4 潜在的に有害な物質の識別 4.1 船舶の基本材料(鋼、アルミニウムなど)は、人の健康または海洋汚染の観点

から最優先の懸案事項ではない。ただし、対応を要する懸念事項を引き起こす原因は多

数存在する。

.1 燃料、潤滑剤、クーラント

.2 浮揚性の材料(樹脂、発泡スチロール断熱材など)

.3 配線の絶縁材など、PCBを含む可能性がある材料

.4 スラッジ

.5 バラスト水中の有害な水生生物。および現段階では(旧型船舶における)

.6 断熱材として使用されるアスベストおよび居室パネルで使用されるアスベスト 4.2 懸念物質を含む可能性のある船舶上の品目には、次のものがある。

.1 電気設備(変圧器、バッテリー、アキュムレータなど) .2 クーラー

8

.3 気体洗浄装置 .4 分離器 .5 熱交換器 .6 製品および化学物質の貯蔵設備 .7 大量貯蔵タンクなどのタンク、ディーゼル油タンク .8 貯蔵された溶剤、および他の化学物質の貯蔵品 .9 塗料 .10 1975年以前に設置された電気ケーブル(外装樹脂材に PCBが含まれる可能性

がある) .11 電気防食用陽極 .12 消火設備および消防設備 .13 配管、弁、継手 .14 ポンプとコンプレッサ .15 エンジンと発電機 .16 油溜め .17 油圧装置 .18 照明器具および取り付け具

4.3 船舶上の潜在的に有害な物質を特定する際に、ガイダンスとして使用できる 2つの重要なリストがある。これらのリストは当該ガイドラインの付録 1と 2に記載されている。付録 1は「船舶の解体に関連するバーゼル条約における有害な廃棄物と物質のリスト」に基づいている(「船舶の全体的および部分的解体に対する環境上適正な管理

9

のための技術ガイドライン」の付録 B)。付録 2は、「リサイクルヤードに配送される船舶に存在する可能性のある潜在的に有害な物質」のリストに基づいている(「船舶リ

サイクルに関する業界実施要綱」の付属書 1)。 5 グリーンパスポート 5.1 船舶のグリーンパスポートは、潜在的に有害であることが判明していながら船

舶、船舶の機器および設備の建造に使用された物質に関する情報を提供する文書であり、

当該ガイドラインの適用を容易にするものである。この文書は船舶の寿命期間を通じて

船舶に備えておく必要がある。船舶の一連の所有者は、グリーンパスポートの正確性を

確保し、すべての関連する設計および設備変更をこれに反映させなくてはならず、最終

の所有者は船舶と一緒にこの文書をリサイクル施設に渡す必要がある。 5.2 グリーンパスポートは、少なくとも以下の情報を含む必要がある。 .1 船舶の詳細

.1 船舶の旗国名

.2 船舶がその国に登録された日付

.3 船舶がその国への登録を停止された日付

.4 船舶の識別番号(IMO番号)

.5 新規建造時の造船番号

.6 船舶の名前と種類

.7 船舶が登録された港

.8 船舶の所有者の名前と住所

.9 船舶に船級を与えたすべての船級協会の名前

.10 船舶の主要詳細(全長(LOA)、幅(成形)、深さ(成形)、自重)

.11 造船会社の名前と住所 .2 潜在的に有害であることが判明している物質の明細書。船舶上で特定された各

物質の概略数量を次のパートに分ける。

パート 1 - 船舶の構造および設備内における潜在的に有害な物質 パート 2 - 運転上で発生した廃棄物 パート 3 - 貯蔵物

10

5.3 第 5.2項で指定されている項目に関連する変更はグリーンパスポートに記録される必要がある。これにより、更新された最新の情報を変更履歴とともに提供できる。 5.4 第 5.2.1 項で指定されている船舶の詳細は、船舶の所有者によりグリーンパスポートに記入される必要がある。 5.5 パート1の潜在的に有害な物質の明細書は以下のように作成される必要がある。

.1 新規船舶については、造船業者が設備メーカーと協議し、建造段階で作成して船舶所有者へ引渡す。

.2 既存の船舶については、船舶所有者が実施可能かつ妥当な範囲で船舶の計画書、図面、マニュアル、技術仕様書、船舶保管マニフェストを参照し、造船業者、設備メー

カーおよび他の該当する業者と協議して作成する。 5.6 パート 2と 3は、リサイクル施設への最終的な配送の前に船舶所有者により作成される必要がある。 5.7 付録 3に含まれる書式は、第 5.2.2項で述べられている明細書の準備のためのモデルとして使用できる。 5.8 主官庁、設計者、造船業者、および設備メーカーはグリーンパスポートの準備

を促進する措置を講じる必要がある。 6 船舶のリサイクルに関連する新規船舶の手順 6.1 新規船舶とその設備に使用される有害物質の最小化 6.1.1 船舶リサイクルに関連する一部の問題は、船舶自体だけでなく船舶の設備に関

しても設計および建造の段階で対応できる可能性がある。最初の手順は、船舶とその設

備の構造において(第 4条を参照)ルーチンとして組み込まれる可能性のある潜在的に有害な物質を特定し、可能な場合は有害性の少ない代替材を考慮することである。 6.1.2 第 2の手順は、船舶の寿命中および寿命の終わりに発生する有害な物質を最小限度に抑えることである。造船業者は、合理的に達成できるレベルにまでエミッション

と有害な廃棄物を抑える必要性をすでに認識しているはずである。

11

6.1.3 初期段階は次の評価を含むと考えられる。

.1 船舶上で使用されている物質の種類、量、潜在的な危険、およびそれらの位置

.2 船舶の運転中に予想される活動、および発生する可能性のある潜在的に有害な廃棄物

.3 以下を考慮した、有害な廃棄物の発生に対する対応の実現可能性

.1 製品の変更-潜在的に有害性の低い物質を採用している構成部品を設

置する

.2 よりクリーンな生産技術-廃棄物の発生を減らす

.3 工程の変更-廃棄物の発生を減らす

.4 投入品の代用-潜在的な有害性が少ない消耗品または廃棄物の発生が

少ない消耗品を活用する

.5 現場での閉ループリサイクル-船舶で発生する廃棄物をリサイクルす

るシステム 6.1.4 船舶設計者と造船業者は、船舶の設計と建造時に以下を実施して船舶の最終的

な廃棄を考慮することが奨励される。

.1 安全にリサイクル可能で、かつ環境的に適切な方法で物質を使用する

.2 健康と環境に潜在的に有害であることが判明している物質の使用を最小限度に抑える 6.1.5 船舶または設備設計者は一般に、機会があれば、船舶の寿命が終わる段階で廃

棄物の発生を最小限度に抑えたり、防止したりする設計を船舶運航者に推奨する必要が

ある。同様に、船舶の所有者と運航者は、新規建造や改良の際にこうした設計上の考慮

を要請する必要がある。 6.1.6 船舶建造国の主官庁および所轄官庁は、船舶の建造において潜在的に有害な物

12

質の使用を制限するように造船業者に勧告することが奨励される。 6.1.7 船舶建造国の所轄官庁は、船舶建造時に潜在的に有害な物質の使用を抑えるた

めの研究や、安全や運転効率を損なうことなくリサイクル作業の促進に寄与する技術の

使用について奨励する役割を担う。 6.1.8 残留性有機汚染物質(POP)に関するストックホルム条約、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書、TBT 条約(船舶についての有害な防汚方法の管理に関する国際条約)などの国際条約で禁止または制限されている物質は、船舶の建

造、改造、修理で使用してはならない。 6.2 リサイクルの促進と有害な物質の除去を促進するための船舶および船舶の設

備の設計 6.2.1 船舶設計者と造船業者は、船舶の設計時と建造時に以下を考慮し、安全と運転

効率を損なうことなく船舶の最終的な廃棄について十分に考慮しなければならない。

.1 船舶のリサイクルを促進しうる構造的設計

.2 リサイクル中に船舶からの取り外しを促進する設備設計 .3 容易にリサイクル可能な構造材の使用 .4 船舶のリサイクルに最適な手法を勧告する簡単な技術的文書を新規所有者に

提供する .5 リサイクル材を船舶または設備設計で使用する .6 特定の個々の物質または成分に分離することが困難な材料の使用を制限する

.7 当該材料の除去を促進する措置を講じる

6.2.2 有害な物質を含む船舶設備のメーカーは、設備の寿命の終わりに物質の安全な

除去を促進するように設計したり、当該物質を安全に除去する方法を勧告したりするこ

とを推奨される。

13

6.3 グリーンパスポートの準備 第 5条に従って、船舶所有者と造船業者はグリーンパスポートを用意すること。 6.4 潜在的に有害な物質の使用の最小化 船舶所有者は、定期メンテナンスや大規模メンテナンスまたは大改造の際に、必要に応

じて他の当事者からの助力を求めつつ、貯蔵物として運搬されている物質を含む船舶上

の潜在的に有害な物質の量を最小限度に抑えるあらゆる努力をしなければならない。 6.5 発生する廃棄物の最小化 船舶運航者は、船舶の寿命期間内および寿命の終わりにおける有害な物質の発生と保有

を最小限度に抑えるように継続して努めなければならない。 7 船舶のリサイクルに関連する既存の船舶の手順 7.1 グリーンパスポートの準備 第 5条に従って、船舶所有者はグリーンパスポートを用意しなければならない。 7.2 潜在的に有害な物質の使用の最小化 7.2.1 船舶所有者は、定期メンテナンスや大規模メンテナンスまたは大改造の際に、

必要に応じて他の当事者からの助力を求めつつ、貯蔵物として運搬されている物質を含

む船舶上の潜在的に有害な物質の量を最小限度に抑えるあらゆる努力をしなければな

らない。 7.2.2 既存の船舶に搭載されている有害な物質を最小限度に抑える努力をする場合

は、新規船舶について第 6.1.3項に記載されている点を考慮すること。 7.3 発生する廃棄物の最小化 船舶運航者は、船舶の寿命期間内および寿命の終わりにおける有害な物質の発生と保有

を最小限度に抑えるように継続して努めなければならない。

14

8 船舶リサイクルの準備 8.1 リサイクル施設の選択 8.1.1 リサイクル施設は、当該施設が国家規則と関連国際条約に従った方法で購入し

た船舶をリサイクルする能力を有しなければならない。この能力は、適切な国家機関に

より監視され、特に ILO(船舶解体における安全衛生のガイドライン)およびバーゼル条約(船舶の全体的および部分的解体に対する環境上適正な管理のための技術ガイドラ

イン)で制定されている関連ガイドラインに適合しなければならない。 8.1.2 前記に関する情報は、現在広く入手できるわけではない。リサイクル国の所轄

官庁は、自国のリサイクル施設の能力を評価し、評価結果を利用できるようにしなけれ

ばならない。 8.1.3 船舶所有者は、リサイクル施設を選択する場合、リサイクル国の所轄官庁と協

議し、前記ガイドラインに照らして作業の実施および対象の船舶リサイクル施設の施設

を以下について検討すること。

.1 アスベスト、PCB、ハロン、石油製品、および他の残留物など、船舶に存在する可能性のある潜在的に有害な物質を安全に取り扱い、適切に廃棄する能力

.2 適切で十分な人員保護と安全装備の提供

.3 船舶リサイクルの全プロセスの間に、ガスフリー条件および認可された「火気作業可能」条件に船舶を維持し、監視するリサイクル施設の能力

.4 作業者の安全記録、訓練制度および作業品質の評価といった他の情報 8.1.4 一部のリサイクル施設は、「現状のまま」の条件でほとんどの船舶のリサイク

ルを行うことができる。他のリサイクル施設は、技術的にすぐれていても、発生した有

害物質や廃棄物を適切に管理できない可能性がある。この場合、船舶所有者はリサイク

ル施設との協議に続いて、当該施設が管理できない物質を取り除き、適切に廃棄する計

画を立てること。 8.1.5 調査後、選択したリサイクル施設が国の法律および関連国際条約およびガイド

ラインに準拠した方法で有害物質または廃棄物を管理する手段を持たないと評価され

15

た場合、船舶所有者はこれらの物質の除去を別の適切な施設に依頼するか、施設がその

ための技術的能力を得るように計画する必要がある。 8.1.6 リサイクル施設の選択は商業的理由やリスク管理に基づいて行われるが、船舶

所有者はリサイクルプロセスから発生するすべての関連有害物質と廃棄物を最適に管

理できる施設を選択すること。 8.1.7 前述の規定に加えて、船舶所有者は以下を考慮すること。

.1 リサイクル施設が潜在的に有害な物質の除去と適切な廃棄を行う際の手順を確立する

.2 リサイクル契約書でリサイクルの方法を指定する

.3 リサイクルプロセスを監視する権利をリサイクル契約書に織り込む

.4 関連ガイドラインに従ったリサイクルを確実にするための奨励金の支払いに関する契約上の規定 8.1.8 船舶をリサイクルするリサイクル施設を選択した船舶所有者は、適宜リサイク

ル国の主官庁および所轄官庁に通知する必要がある。 8.2 リサイクル施設への船舶の配送 8.2.1 船舶所有者は、船舶の寿命の終わりに船舶リサイクル施設との契約で規定され

ている施設に船舶を配送する責任がある。加えて、船舶所有者は当該ガイドラインで規

定されているように、船舶のグリーンパスポートと、分解に関する造船業者または設備

サプライヤからの技術的勧告(あれば)をリサイクル施設に提供すること。 8.2.2 船舶所有者は、リサイクル施設に向けた船舶の航海における対応と責任を保証

するために、適切な保険に加入する必要がある。また、船舶所有者は船舶がリサイクル

施設への航海を完了できない場合(悪天候など)、またはリサイクル施設が船舶の配送

を受け入れることができない場合(操業の停止など)に備えて、不測事態処理計画を作

成する必要がある。 8.2.3 船舶をリサイクル施設に配送した船舶所有者は、主官庁に通知して登録を解除

16

する必要がある。 8.3 船舶リサイクルの準備 8.3.1 全般 8.3.1.1 リサイクルのための船舶の準備では、リサイクル施設への最終航海の前および航海時において、労働安全衛生、環境上の課題、船舶の安全な運航に取り組むこと。船

舶所有者は、必要に応じて他の当事者の支援を求めつつ、リサイクル施設の作業者の安

全を損なう可能性のある船舶の条件を可能な範囲で特定し、改善するか、または安全上

の処置が講じられるようにリサイクル施設に報告すること。理想としては、施設は責任

を持って船舶全体をリサイクルできる能力を備えているべきである。 8.3.1.2 購入した側のリサイクル施設が潜在的に有害な物質を安全に除去し、適切に廃棄できない場合、船舶所有者は、船舶の安全な運航に相反しないように以下のいずれか

を実施する必要がある。

.1 関連する国家および国際規則と関連ガイドラインに矛盾しないやり方で船舶からこれらの物質を除去する。

.2 量的および位置的にこれらの物質を最小限度に抑え、リサイクル施設に報告し、再生、リサイクル、または廃棄のための適切な措置が講じられるようにする。 8.3.1.3 リサイクルのための船舶の準備は、大部分においてリサイクル施設の能力と当該ガイドラインの第 8.1.1項で述べられている関連する主官庁の要件により、その内容が決定する。 8.3.2 船舶のリサイクル計画 8.3.2.1 リサイクルのための船舶の準備は、リサイクル施設に船舶が到着する前に開始されるものとし、リサイクル施設は船舶所有者と協力して船舶の配送の前に必要なリサ

イクル前作業の範囲を決定すること。 8.3.2.2 リサイクル計画を作成し運用することは、船舶がリサイクル前に最大限可能な範囲まで準備され、船舶の安全が配送に先立って考慮されることを可能にする。リサイ

クル計画は、リサイクル作業中に発生する可能性のある潜在的に有害な物質、関連する

17

国家および国際要求事項、ならびに関連するリサイクル施設で利用可能な材料、処理方

法、およびリサイクルプロセス中に発生する廃棄物の廃棄について考慮し、リサイクル

施設が船舶所有者と協議して作成する必要がある。 8.3.2.3 この計画の主要目的は、環境汚染の原因になる可能性のある廃棄物、または作業者の健康と安全に対する潜在的な危険が適切に特定され、扱われるようにすることで

ある。 8.3.2.4 リサイクル計画では特に以下を考慮すること。

.1 グリーンパスポート(第 5条)

.2 造船業者からの技術的勧告

.3 明細書に記載されている、船舶の運航設備の詳細と環境に放出される可能性のある潜在的汚染物質(化学的、生物学的なものを含む)の発生源、数量、および相対的

な危険性の詳細

.4 リサイクル作業中に発生しうる作業者の安全に関わる潜在的な危険要因 8.3.2.5 リサイクル計画の運用に関する合意は船舶所有者と施設間の契約の一部であるものとする。 8.3.2.6 船舶リサイクル計画の作成を支援する技術的考慮事項には、以下が含まれるが、これらに限定されない。

.1 計画されている作業に関する提案

.2 サルベージに関する一般的注意事項

.3 清掃および運送中の船舶の安定性

.4 タンクの清掃

.5 ビルジを含む区画の清掃

18

.6 配管および継手の取り扱い

.7 設置されている機械の清掃

.8 廃棄物の取り扱いに関する提案 8.3.3 汚染を防止するための準備 8.3.3.1 リサイクルのために売却された船舶の最終所有者は、船舶の安全な運航に相反しないように以下を実施する必要がある。

.1 施設への配送時に船舶の燃料、ディーゼル油、潤滑油、作動油、その他の油および化学薬品の量を最小限度に抑える。

.2 施設に受け入れ設備が設置されていない場合は、リサイクル施設に船舶を配送する前に最終の港の受け入れ施設で廃棄物を除去する。

.3 第 5条に従って、グリーンパスポートを完備しなければならない。

.4 船舶から排出される潜在的に有害な液体を、施設が容易に管理できるような措置を講じる。

.5 関連する国際的または国家的な規格および要件に従って船舶のバラスト水が管理されるような措置を講じる。 8.3.3.2 リサイクルに先立ち、第 8.3.1 項に従って船舶所有者がリサイクル施設と協議し、船舶の安全な運航に相反しないよう考慮する項目には以下が含まれる。

.1 アスベスト、または明らかにアスベストを含む材料(ACM)、またはアスベストを含むと想定される材料(PACM)の除去と安全な廃棄

.2 認可された施設へのハロンの廃棄、リサイクル場所への最終航海のための携帯型および返却可能な消火機器の使用

.3 タンクまたは配管に残留している物質の最大限度可能な範囲までの除去(燃料、潤滑油、作動油、貨物とその残留物、グリースなど)。ドラム缶、タンク、缶入りの液

19

体またはガス剤は船舶から撤去する必要がある。除去されたすべての物質は環境的に適

切な方法(リサイクル、場合によっては陸上での焼却など)で管理すること。

.4 液状 PCBを含む機器の撤去

.5 絶縁流体を含むコンデンサおよび変圧器の特定

.6 タンクなど、燃料の保管または化学薬品の貯蔵に使用された船舶の部分から残留物を除去する(これらの区域はフラッシングし、清掃すること)。

.7 潜在的に有害な物質の明細書に記載された、船内の有害な物質の特性に関して勧告する。

.8 船舶内のその他の潜在的に有害な物質および空間を明確に表示する。 8.3.4 労働衛生および安全を保護するための準備 8.3.4.1 リサイクルに先立ち、船舶所有者は第 8.3.1 項に従って船舶の安全な運航に相反しないように以下を実施すること。 .1 船舶の配送に関連し、船舶の密閉空間について関連団体または適切な団体が発

行したガスフリー証明書、または火気作業安全証明書のいずれかを提出または用意する

(当該証明書は発行された時点でのみ有効であって、船舶リサイクル施設が証明書に示

された当該区域の検査を行うのを妨げるものであってはならないことを認識する必要

がある)。 .2 船舶の空気中の酸素が欠乏している区画はその旨が明確に表示されるように

し、施設はこれらの区画や他の危険な密閉空間について十分に通知されるようにする。

(これはリサイクル施設が同様の検査を行うのを妨げるものであってはならない)。 .3 構造の完全性に問題がある(衝突による損傷など)可能性のある船舶の区域を

特定し、その位置を指示して崩壊や事故を確実に防止するようにする。 .4 事故による崩壊を防ぎつつ取り除かなければならない重要な支持構造のある

船舶の区域を特定し、その位置を示す。

20

8.3.4.2 MSC/Circ.案 1084「すべての種類の船舶における火気作業の原則」および総会決議 A.864(20)「船舶の密閉空間に入るときの推奨事項」で規定されている火気作業の安全な実施と手順、および船舶の密閉空間に入るときのガイドラインは、当該ガイド

ラインの付録 4および 5に示されている。 9 利害関係者および他の団体の役割 9.1 全般 9.1.1 近年、一部の政府および他の団体は、環境的に適切な方法で運航される品質の

高い船舶輸送を促進するために奨励制度やプログラムを制定して運用している。ロッテ

ルダム港を通じて制定された「グリーンアワード」はその一例である。多くの場合、船

舶の寿命期間中の有害物質の削減と最小化はこれらの奨励制度の鍵となる部分である。

このような制度はリサイクル施設が船舶の寿命の終わりに管理しなければならない有

害物質を削減することに寄与する。 9.1.2 奨励制度のもう 1つの例は、十分に環境要件を満たすリサイクル施設に対する財政上の利点である。たとえば輸入税の低減は、「グリーンな施設」の競争力を高め、

人の健康と環境面を重視した船舶所有者の施設選択を容易にする。 9.1.3 よりクリーンな船舶の運航を目指した政府および他の団体による奨励制度の

制定は、当該ガイドラインの運用を大いに支援するものである。主官庁および他の利害

関係者は当該制度を考慮する必要がある。 9.2 旗国の役割 主官庁の役割は船舶の寿命全体(最終航海を含む)に及ぶ。また、主官庁は船舶が運航

可能である限り、それが適用可能な IMO条約と他の関連要求事項に適合しているようにする必要がある。主官庁は当該ガイドラインの適用を促進する必要がある。 9.2.1 「リサイクル準備完了」条件の基準 主官庁は船舶の「リサイクル準備の完了」を宣言する基準を制定する必要がある。基本

的な基準は、当該ガイドラインの第 8条で規定されている、船舶のリサイクルを準備する作業が完了することである。

21

9.2.2 運用 主官庁は以下を実施する。 .1 当該ガイドラインに記載されているすべての関連する環境、健康、および安全

考慮事項が十分に考慮されるよう、BIMCO の標準契約書である DEMOLISHCON など船舶リサイクルに関する販売および購入契約書の利用を促進する。 .2 リサイクル国と協力して、ガイドラインの運用を促進する。 9.3 寄港国の役割 寄港国は、港での外国船舶の検査により、船舶とその設備の条件が国際的規則の要件に

適合していること、および船舶がこれらの規則を順守して人員配置され、運航されてい

ることを検査し、船舶が国際的な海洋条約を順守していることを確認する役割を担う。

寄港国は、ポートステートコントロールを実施することにより、旗国の管理の補足とし

て船舶のリサイクルにも関与する。 9.3.1 リサイクルに向かう船舶のポートステートコントロール手順 9.3.1.1 リサイクルに向かう船舶は、他の船舶と同様に適用可能な国際的規則に従って現在のポートステートコントロール手順による検査を受ける。 9.3.1.2 船舶が関連するすべての IMO 要件および他の適用可能な要件に常時適合するように、寄港国と旗国間の協力が奨励される。 9.3.2 運用 寄港国は以下を実施する必要がある。

.1 業界内で当該 IMOガイドラインが広範囲に利用されるように促進する。

.2 旗国およびリサイクル国と協力し、ガイドラインの運用を促進する。 9.4 リサイクル国の役割

22

9.4.1 全般 9.4.1.1 リサイクル国の役割は、作業者の安全、健康、福利厚生、および船舶リサイクル業界の環境の保護、特にリサイクル施設で扱われる有害な廃棄物および他の廃棄物に

ついて、国際的義務および国家規則を執行することである。 9.4.1.2 リサイクル国は、リサイクル向けに購入した船舶の購入時および配送時の条件に関して国家規則を導入する必要がある。実際には、リサイクル国は船舶のリサイクル

を受け入れる前に、必要と考えられる条件をすべて規定する必要がある。 9.4.1.3 潜在的に有害な物質の明細書を含むグリーンパスポートは、船舶の最終所有者によりリサイクル施設に届けられなければならない。グリーンパスポートは船舶内の物

質についてリサイクル国が必要とする情報を提供する。リサイクル国は、リサイクル向

けの船舶を受け入れる前に、リサイクル作業中に発生しうる潜在的に有害な廃棄物を安

全に処理することが可能であることを確認する必要がある。 9.4.1.4 船舶を受け入れた後、リサイクル国はリサイクルプロセスの間に発生した有害物質が安全に処理されることを監視する責任がある。 9.4.1.5 リサイクル国の所轄官庁は、自国のリサイクル施設の能力を評価し、評価の結果を入手可能なものにしなければならない。 9.4.2 船舶で発生した廃棄物の受け入れ施設 9.4.2.1 MARPOL 73/78 の規定では、各当事者の政府は適切な港湾受け入れ施設を遅滞なく設置する必要がある。たとえば、MARPOL 73/78の付属書 1の規則 12(1)では、「オイル積み込みターミナル、修理港、および船舶が油状の残留物を排出できるその他

の港」に「港を利用する船舶のニーズを十分に満たす」受け入れ施設を設置することを

各国政府に要求している。この規則は、規則 12(2)(c)で「船舶の修理ヤードまたはタンク清掃施設があるすべての港」にまで拡張されている。 9.4.2.2 MARPOL 73/78の付属書 VIの規則 17(l)(c)は、1997年の議定書に調印した各当事国政府に対し、船舶から除去したオゾン層破壊物質および当該物質を含む設備を受

け入れるための、船舶リサイクル施設のニーズを十分に満たす港湾受け入れ施設を設置

するように要求している。

23

9.4.2.3 リサイクル施設に受け入れ施設を設置するよう明確に要求しているのはMARPOL 73/78 の付属書 VI のみであるが、リサイクル国の政府はリサイクル活動を許可するうえで適切な受け入れ施設が設置されるようにする必要がある。 9.4.2.4 「港湾受け入れ施設の IMO マニュアル」は、船舶で発生した廃棄物を管理するための詳細な指導内容が示されている。また、バーゼル条約締約国会議により採択さ

れた「船舶の全体的および部分的解体に対する環境上適正な管理のための技術ガイドラ

イン」にも指導内容が示されている。 9.4.3 リサイクルに配送される船舶の管理のための措置 9.4.3.1 リサイクル国は、リサイクルのための輸入品として国に受け入れられる可能性のある船舶の条件を国の法律で規定し、同様に適切な労働安全衛生要件を定義し、執行

する必要がある。 9.4.3.2 リサイクル国は、リサイクルされるすべての船舶に対し、その密閉空間について関連する適切な団体が発行したガスフリー証明書または火気作業証明書のいずれか

を備えるように要求する法律を導入し、執行する必要がある。 9.4.3.3 当該ガイドラインに記載されているすべての関連する環境、健康、および安全考慮事項が十分に考慮されるよう、リサイクル国は、リサイクル施設を代行してリサイ

クル向けの船舶を購入している者が BIMCOの標準契約書である DEMOLISHCONなど標準の船舶リサイクル契約書を活用することを推進する必要がある。 9.4.3.4 リサイクル国は、リサイクル用に船舶を受け入れる前にすべての船舶を検査するようにリサイクル施設に求めること。この検査では、船舶の実際の条件が当該ガイド

ラインや関連する他の国際的ガイドライン、購入契約書に整合していることを確認し、

その国の要件が満たされるようにする必要がある。リサイクル施設がリサイクルのため

に船舶の所有権を受け入れた瞬間から、発生した廃棄物の適切な取り扱いの責任はリサ

イクル施設が負うものとする。 9.4.4 リサイクル施設の管理のための措置 9.4.4.1 リサイクル国は、リサイクル施設の認可またはライセンスの付与を行う措置など、船舶のリサイクルに関する適切な法律その他の要件を導入、運用、執行する必要が

ある。この目的を達成するために、リサイクル国は国の法律または要件、適用可能な国

24

際的に制定されている条約、さらには当該ガイドラインや ILO、バーゼル条約により規定されたガイドラインなど、船舶リサイクル業界に関連した推奨事項やガイドラインを

検証し、必要に応じて採用する必要がある。 9.4.4.2 リサイクル施設を管轄する当局は、リサイクル施設への船舶の到着前または後にかかわらず、アスベスト、油、および他の有害物質の取り扱いと廃棄が妥当な方法で

実施されたことを確認する必要がある。 9.4.4.3 また、リサイクル国は、リサイクルのために船舶を受け入れるかどうかの判定の際に自国の施設を支援する用意ができている必要がある。施設は船舶の取り扱い、な

らびにリサイクル作業が国の法律と他の国家的要件に適合していることに関して責任

を負う。 9.5 バーゼル条約の役割 有害廃棄物の国境を越える移動およびその処分の規制に関するバーゼル条約は、1989年に採択され、1992 年に発効した。この条約の主な目的は、有害な廃棄物および他の廃棄物の発生、不適切な管理、および国境を越えた移動により生じた有害な影響から、

人の健康と環境を保護することである。バーゼル条約の根本的な狙いの 1つは、有害な廃棄物や他の廃棄物が環境上適切な方法(ESM)で管理されるようにすることである。条約の第 2条第 8項では、ESMを「有害な廃棄物や他の廃棄物が原因で生じる悪影響から人の健康と環境が保護されるように、これらの廃棄物を管理する実施可能な手順を

すべて実施すること」と定義している (条約および条約で課される義務の詳細については、バーゼル条約 Web サイト:www.basel.intを参照のこと)。 9.5.1 環境上適切な船舶の解体 9.5.1.1 リサイクル施設を設置する必要がある、または設置を希望する国を支援するために、2002年 12月のバーゼル条約の締結国の第 6回会議で「船舶の全体的および部分的解体に対する環境上適正な管理のための技術ガイドライン」が採択された。この技術

ガイドラインは、条約の環境上適切な管理に適合するよう実施する必要のある手順、プ

ロセス、業務に関して情報と推奨事項を規定している。 これらの技術ガイドラインは、船舶の解体が行われる際に当事者が条約で規定された義

務を果たすうえでの指導内容を示すものである。

25

9.5.1.2 本技術ガイドラインは、既存のリサイクル施設ばかりでなく新規のリサイクル施設にも適用できる。このガイドラインには、船舶解体の環境上適切な管理、船舶リサ

イクル施設における環境管理手順の適切な実施、船舶リサイクル施設の設計、建造、運

用の適切な実施、さらには環境および人の健康の保護を達成する方法が含まれる。また、

バーゼル条約では、船舶リサイクル活動*に関連する可能性のある特定の作業および特定の廃棄物に関して他の技術的ガイドラインも制定された。 9.5.2 通知および書面による事前の同意の原則 9.5.2.1 バーゼル条約は、有害廃棄物の国境を越えた移動を扱っている。バーゼル条約では、リサイクルに向かう船舶の法的側面について考慮しているが、その規定はリサイ

クルへ向かう船舶の最終航海に関する国境を越えた懸念を扱ううえで役に立つ概念を

提供している。 9.5.2.2 バーゼル条約の運用で鍵となる部分は、条約で規定された有害物質と他の廃棄物の国境を越えた移動が、書面による事前の通知と輸出国の通知に対する輸入国の同意

により発生することである。バーゼル条約の基本手順では、輸出者が自国の政府(輸出

国)に対象とされる移動について通知し、輸出国は輸送について通知を行う。輸入国は

同意または拒否、または書面による同意を発行する前に追加の情報を求めて輸出国の通

知に応答する。 9.6 国際労働機関の役割 9.6.1 ILOは、陸上ベースの業界の作業者が事故率の高い極めて危険な作業環境にさらされる可能性のある船舶リサイクルについて懸念している。船舶リサイクルには、化

学的、身体的、生物学的、人間工学的、および心理社会的リスクといったすべての主要

な職業上のリスクが存在する。船舶リサイクルを念頭に置いて制定されたわけではない

が、かなりの数の既存の ILO 条約、勧告、および行動規準を適用して、船舶リサイクル**で発生する多くの労働安全衛生上の危険や作業者保護の課題に対応することができる。IMOが担う作業に対する補足として、またバーゼル条約に基づいて、ILOは「船舶解体における安全衛生のガイドライン」を採択した。 9.6.2 ILOは「船舶解体における安全衛生のガイドライン」を運用する国を支援するために勧告とガイダンスを提供し、これによりリサイクル施設における作業者の条件を

改善する。また、政府の認可を得るため、ガイドラインの規定どおりに一定の最小要件

を満たしている施設を判断する基準を主官庁が制定する際の支援も行う。ILOは、船舶

26

リサイクル施設の作業条件の改善に対して注意を喚起するための施策を継続して開発

することを求められている。 *www.basel.int **www.ilo.org 9.7 ロンドン条約 1972/1996議定書 9.7.1 船舶の投棄 9.7.1.1 「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約 1972」(ロンドン条約 1972 年)とロンドン条約 1972 に対する議定書 1996 の基本機能は、廃棄物その他の海洋投棄を規制することである。ロンドン条約では、産業廃棄物および放射性

廃棄物の海洋投棄を禁止しているが、ロンドン議定書では海洋での「一切の」投棄を一

部の例外を除いて禁止している。これらの条約と議定書は、原則として廃船の海洋投棄

を許可している。ただし、これらの条約と議定書の公式の解釈として 2000年に採択された「船舶の評価に関する特定のガイドライン」*に従って、リサイクルが廃棄の代替案の 1つと考えられる場合は海洋投棄の申請について評価を行う必要がある。 9.7.1.2 「船舶の評価に関する具体的ガイドライン」は、最初のステップとして海洋投棄に対する代替案を包括的に検証するプロセスを扱っている。所有者が船舶をリサイク

ルする選択肢を選択した場合、海洋投棄の評価手順は停止される。しかし、この手順は

海洋投棄を選んだ場合と同様に実施すれば、リサイクルに向けた船舶を準備するうえで

も役に立つ。前述のガイドラインは、廃棄前に撤去する必要がある船舶の設備と汚染物

質を詳細に説明している。この手順は、リサイクル施設向けまたは最終航海の船舶を準

備するときの船舶所有者、旗国およびリサイクル国に対するガイドとして使用できる。 9.7.2 船舶の遺棄 9.7.2.1 船舶リサイクルに関連する懸念の 1つは、最終の船舶所有者がリサイクル費用(清掃、最終航海のための構造的補修、曳航、保険など)を避けるために船舶を海洋ま

たは港で遺棄する可能性があることである。廃棄を目的とする「海洋での」船舶の遺棄

は不法な投棄行為となる。従って、ロンドン条約/議定書に違反しているものと見なし、

関連当事者の捜査に続いて強制執行の対象とする必要がある。「港での」船舶の遺棄は

乗組員を含むか否かにかかわらずロンドン条約/議定書で規定されていないが、寄港国

にとって旗国および船舶所有者を相手に取り組むべき責任問題である。乗組員も遺棄さ

27

れる場合、寄港国は乗組員のケアと母国、市民権を有する国、または居住する国への彼

らの安全な帰国を保証し、「船員の死亡、傷害、遺棄対する責任と保証」に関する

IMO-ILO アドホック専門家作業グループが現在討議している関連国際規格に従って、遺棄に対して責任がある当事者と当該措置費用の回復に取り組むよう奨励される必要

がある。 9.7.3 海底への船舶の「設置」 船舶またはその一部分は人工岩礁の建造に利用される場合や、海洋生物の生育場所の増

強およびダイビングスポットの構築のために特定の場所に設置される場合がある。「単

なる廃棄以外を目的とする物体の設置」は、当該配置が条約/議定書の主旨に反しない

ことおよび廃棄物の海洋投棄の言い訳として使用されないことを条件に、ロンドン条約

と議定書の両方で規定されている「投棄」の定義から除外される。「投棄」と「設置」

の明確な区別にかかわらず、船舶は実際問題として当該作業のために十分に準備し、清

掃する必要がある。 *「www.londonconvention.org/4-Vessels.pdf」を参照。 一部の国の主官庁は、船舶を利用した人工岩礁の建造についても投棄のためのライセン

スシステムを適用し、このような建造に使用する資材を管理している。 9.7.4 ロンドン条約に基づく船舶投棄の報告 船舶の海洋投棄の契約当事者が発行した許可に関連してロンドン条約事務局が受け取

ったほとんどの報告には、すべての浮揚性の物質の除去が記載され、すべての燃料、油、

液体、化学物質の除去、および配管のフラッシングなどが記載されている。 一部の国の主官庁は、ダイビングスポットとして浅瀬に船舶を投棄することに焦点を当

てて、廃船の詳細なクリーンアップ規格を制定した。これらの規格では、アスベストは

海洋環境に有害ではないため、標準的なやり方としては船舶から取り除かれないが、ダ

イバーがさらされる可能性がある場合は撤去される。 9.7.5 廃船の廃棄に関するオプション ロンドン条約/議定書に基づく廃船の管理された海洋投棄作業、国家規則に従った当該

船舶の海底への管理された設置行為、および陸上での廃船のリサイクルは、海洋環境の

汚染防止という同一の目標を有している。ただし、廃船の陸上でのリサイクルは、可能

28

な場合、ロンドン条約/議定書の観点から望ましい選択肢である。 9.8 造船業界の役割 リサイクル作業の前および途中における船舶所有者とリサイクル施設との協力は、船舶

のリサイクルに関連する問題に対応し、それを最終的に解決するうえで不可欠である。

船舶所有者とリサイクル施設はこの協力関係を発展させる必要がある。 船舶業界は、安全で環境上適切な方法で船舶を廃止する計画の改善に向けて、他の利害

関係者との協力を続ける必要がある。 9.8.1 船舶リサイクルに関する業界実施要綱 9.8.1.1 「船舶リサイクルに関する業界作業部会」は、次に示す項目に対する政府、環境グループ、および業界自体の高まる懸念に対応し、1999 年 2 月に国際海運会議所(ICS)の調整により設立された。

.1 リサイクルのために販売された船舶内の潜在的に有害な物質に関する法的位置付け

.2 リサイクル施設の作業者の作業条件および安全対策

.3 リサイクル施設における環境管理 9.8.1.2 この業界グループは種々の当事者の懸念を認識し、「実施要綱」を制定した。この実施要綱は、リサイクルに向かう船舶に関して「適切な実施方法」を実現する一連

の推奨事項を示している。この実施要綱は業界作業部会の参加者*から入手できる。 9.8.1.3 造船業界は、作業について今後定期的に同組織からの同意とコメントを求め、「船舶リサイクルに関する業界実施要綱」を引き続き発展させることが奨励される。 9.8.2 リサイクル向け船舶の販売または購入の契約 船舶所有者は、船舶の寿命の終わりに、当該ガイドラインに従ってすべての文書を用意

することを含め、契約書で規定されているように船舶を配送する責任がある。契約上の

問題は関係当事者の権限の範囲であるが、販売者(船舶所有者)と購入者(リサイクル

施設)はすべての関連する課題を扱っている標準契約書を使用することを推奨される。

29

BIMCO はリサイクル用船舶の販売を扱う標準契約書 DEMOLISHCON を改訂し、前述の「船舶リサイクルに関する業界実施要綱」を参照することを標準条件として組み込

んでいる。BIMCO には、当該ガイドラインを踏まえた DEMOLISHCON の改訂を考慮することが求められている。 9.9 船舶リサイクル業界の役割 9.9.1 船舶リサイクルに携わり、沿岸に拠点を置く各業界の作業標準と方法は IMOの付託範囲に収まらないが、船舶リサイクル業界は当該ガイドラインの採用と運用に責

任を持つ重要な利害関係者である。しかしながら、船舶リサイクル業界は、使用済み船

舶の安全で環境上適切な廃棄に貢献できるような施設内管理基準を各業界が確立する

うえで重要な役割を有している。 9.9.2 船舶リサイクル業界は以下を実施する必要がある。

.1 ILOおよびバーゼル条約の参加国により採択されたガイドライン、国家機関**や認可組織***が制定したガイドラインなど、船舶リサイクルに関する利用可能な技術的ガイドラインに注意を払う。

.2 リサイクル施設の沿岸に拠点を置く活動に関連する作業ガイドラインとして、その業界に適した実施要綱を制定し、受け入れ可能な環境規則および安全衛生規則を確

保して、その適用を監視する。

.3 そうした業界実施要綱を承認するよう該当する国際組織に働きかける

.4 有害物質(アスベスト、PCB および PAB、ハロン/フレオン、油状の在留物など)の安全な取り扱いおよび密閉空間での作業方法に関して、選択した方法の手順に

ついて詳細を公開するようリサイクル施設に働きかける。 *www.marisec.org. **EPA、「船舶解体業者のガイドライン」、「法令順守のヒント」、2000年夏 ***技術報告書 DNV RN 590、船舶の廃止措置、環境基準、廃止措置ガイドライン、GUIDECアプローチ。

.5 関連技術ガイドラインで提案された措置の運用や、作業員の能力および設備品質の向上により、リサイクル施設の品質管理制度を改善する。

30

.6 適切な廃棄物管理制度を確立する。 9.10 他の利害関係者の役割 他の利害関係者は船舶リサイクルに関連する問題に対応することが推奨される。 10 技術協力 10.1 船舶リサイクルは、環境上適切で安全な方法で実施された場合には、環境全体

と特定の国家および地域の経済に肯定的な利益をもたらし、大部分の使用済み船舶の廃

棄にとって最も実行可能な方法になる。したがって、施設や作業方法を改善するために

技術移転または資金援助が必要な場合には、経済支援のための資金を入手できる組織や

国の団体は、実際の社会資本プロジェクトについてリサイクルに関係する政府と協力す

る必要がある。 10.2 国家または地域組織は、技術移転や資金援助に関係するプロジェクトについて

船舶リサイクル国の政府および他の関係当事者と協力し、リサイクル施設の設備と作業

方法を改善する必要がある。

31

A 23/Res.962 付録 1 船舶リサイクルに関連する有害な廃棄物および物質のリスト (「船舶の全体的および部分的解体に対する環境上適正な管理のための技術ガイドライ

ン、2002」の付録 Bに基づく) 本リストは、船舶の構造に本質的に含まれる潜在的に有害な物質および船舶に積載され

ている潜在的に有害な物質(第 4、6、および 7 章を参照)の識別に使用することを目的とし、グリーンパスポートの一部を構成するものではない。 表の番号は、バーゼル条約の付属書 VIIIに対応する。 表 1 船舶の構造に本質的に含まれる可能性がある廃棄物と物質 廃棄物 船舶上で可能性のある廃棄物の位置 廃棄物 船舶上で可能性のある廃棄物の位置 A1 金属および金属を含有する廃棄物 A1010 金属廃棄物および以下の金属の合金で構成される廃棄物

アンチモン* 鉛蓄電池の鉛を含む合金、はんだ ベリリウム* 合金の硬化剤、燃料容器、ナビゲーション

システム カドミウム* ベアリング 鉛 コネクタ、カップリング、ベアリング 水銀 温度計、ベアリング圧力センサー テルル* 合金 A1020 塊状の金属廃棄物を除き、成分または混入物として以下の金属を含む廃棄

アンチモン、アンチモン化合物* プラスチック、織物、ゴムなどの難燃化物

質 カドミウム、カドミウム化合物 電池、陽極、ボルトナット

32

鉛、鉛化合物 電池、ペイント塗料、ケーブル絶縁物 A1030 以下の金属を成分または混入物として含む廃棄物

ヒ素、ヒ素化合物 船舶構造部の塗料 水銀、水銀化合物 温度計、照明器具、レベルスイッチ A1040 以下の金属を成分として含む廃棄物

六価クロム化合物 船舶構造部の塗料(クロム酸鉛) A1080 付属書 III の特性を示すのに十分な鉛とカドミウムを含む、リスト Bに含まれていない亜鉛残留物の廃棄物 陽 極

(Cu、Cd、Pb、Zn)

A1160 鉛蓄電池全体または破砕された鉛蓄電池廃棄物

電池:非常用ラジオ、火災報知機、始動、

救命ボート A1180** リスト Aに含まれる電気および電子機器廃棄物またはスクラップ

を含むアキュムレータなどの構成部品お

よび他の電池、水銀スイッチ、陰極線管の

ガラスおよび他の活性ガラス、PCB コンデンサ、または付属書 III(リスト B B1110)に含まれる特性を備える範囲で付属書 Iの混入物(例、カドミウム、水銀、鉛、ポリ塩化ビフェニル)で汚染されたも

レベルスイッチ、照明および照明器具(コ

ンデンサ)、電気ケーブル

A2 主に無機成分を含む廃棄物で、金

属および有機物質を含む可能性があるも

A2010 陰極線管および他の活性ガラスの廃棄物

TVおよびコンピュータ画面

A2050 アスベスト廃棄物(ほこりおよび繊維)

断熱材、表面材、防音材

A3 主に有機成分を含む廃棄物で、金

属および無機物質を含む可能性があるも

33

A3020 本来の使用目的に不適切な鉱油廃棄物

油圧作動油、油溜め(エンジン、潤滑油、

ギヤ、セパレータなど)、オイルタンク残

留物(貨物残留物) A3140 非ハロゲン化有機溶剤廃棄物、ただしリスト B で指定されている廃棄物を除く

不凍液

A3180 ポリ塩化ビフェニル(PCB)、ポリ塩化テルフェニル(PCT)、ポリ塩化ナフタリン(PCN)、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、またはこれらの化合物のポリ臭素化類似体を 50mg/kg以上の濃度で含む、またはこれらの化合物で汚染された廃棄

物、物質、物品

照明器具のコンデンサ、オイル残留物中の

PCB、ガスケット、カップリング、配線(船舶の構造部に本質的に含まれるプラスチ

ック)

A4 無機または有機成分を含む可能

性がある廃棄物

A4030 殺虫剤および治療薬の生産、配合、使用により発生した廃棄物、規格外、

期限切れまたは本来の使用目的に不適切

な殺虫剤および除草剤を含む 船底の

塗料および防錆剤、スズベースの汚損防止

A4060 オイル/水、炭化水素/水混合剤、乳濁液の廃棄物

スラッジ、水中の薬品、タンク残留物、ビ

ルジ水 A4070 インク、染料、顔料、塗料、ラッカー、ワニスの生産、配合、使用により発

生した廃棄物。リスト Bで指定された廃棄物を除く(リスト B B4010 の関連項目を参照)

船舶構造部の塗料およびコーティング剤

A4080 爆発性の廃棄物(ただしリスト Bで指定されている廃棄物を除く)

圧縮ガス(アセチレン、プロパン、ブタン、

貨物残留物(貨物タンク) A4130 付属書 III の有害な特性を示すのに十分な濃度で付属書 Iの物質を含む梱包材およびコンテナ廃棄物

貨物残留物

脚注:

34

*成分が存在する場合、合金の中に閉じ込められているか、極めて低い濃度で存在する可能性が高い。 **船舶の構成部品は、他のリスト A項目でも扱われている(重複している)。 表 2 船舶に積載されている可能性がある廃棄物と物質 廃棄物 廃棄物が発見される可能性がある製品 A1170 未選別の電池廃棄物、リスト B電池の混合物を除く。有害性を示す範囲で付

属書 Iの成分を含むリストBで指定されていない電池廃棄物

携帯ラジオ、トーチ

A3140非ハロゲン化有機溶剤廃棄物、ただしリスト Bで指定された廃棄物を除く

溶剤とシンナー

A3150 ハロゲン化有機溶剤廃棄物 溶剤とシンナー A4010 医薬品の生産、準備および使用による廃棄物、ただしリスト Bで指定されている廃棄物を除く

種々の医薬品

A4030 殺虫剤および治療薬の生産、配合、使用により発生した廃棄物、規格外、

期限切れまたは本来の使用目的に不適切

な殺虫剤および除草剤を含む

殺虫剤スプレー

A4070 インク、染料、顔料、塗料、ラッカー、ワニスの生産、配合、使用により発

生した廃棄物。リスト Bで指定された廃棄物を除く(リスト B B4010 の関連項目を参照)

塗料およびコーティング剤

A4140 付属書 Iカテゴリに対応し、付属書 II の有害な特性を示す、規格外または期限切れの薬品で構成されるまたはそれ

らの薬品を含む廃棄物

消耗品

表 3 船舶のリサイクルに関連し、バーゼル条約のリスト A に含まれない構成部品廃棄物 バーゼル条約のリスト A で扱われていない潜在的に有害な物質:

船舶構成部品

35

CFC(R12-ジクロロジフルオロメタンまたは R22-クロロジフルオロメタン)

冷媒、発泡スチロール

ハロン 消火設備 放射性物質 液面指示器、煙感知器、緊急信号 微生物/沈殿物 バラスト水設備 (タンクを含む) 燃料油、ディーゼル油、ガス油 付録 2 リサイクル施設に配送される船舶上に存在する可能性がある潜在的に有害な物質 (「船舶リサイクルに関する業界実施要綱、2001年 8月」の付属書 1に基づく) 本リストは、船舶に積載されている有害物質(第 4、6、および 7 章を参照)の識別に使用することを目的とし、グリーンパスポートの一部を構成するものではない。 A. 運転に関連する物質および消耗品 1. スロップを含む貨物残留物 2. 乾燥タンク残留物 3. 燃料油、ディーゼル油、ガス油、潤滑油、グリースおよび焼き付き防止剤 4. 油圧作動油 5. 廃油(スラッジタンクの内容物) 6. 不凍液 7. ケロシンおよび揮発油 8. ボイラーおよび給水処理用薬品 9. ボイラーおよび給水試験試薬 10. 純水装置再生用薬品 11. 蒸発器の供給およびデスケーリング用酸 12. 給水処理用薬品 13. 塗料および錆安定剤 14. 溶剤とシンナー 15. 冷媒(R12または R22) 16. ハロン 17. CO2(ボンベ-エンジンルーム消火装置) 18. アセチレン、プロパン、ブタン

36

19. ホテルサービスクリーナー 20. 鉛蓄電池 21. 電池電解質 22. 50mg/kg以上の濃度の PCB、PCT、PBB 23. 水銀 24. 放射性物質(液面指示器) 25. 種々の医薬品 26. 殺虫剤スプレー 27. アルコール、変性アルコール、エポキシ樹脂など、その他の薬品 28. MARPOL条約で扱われているプラスチック 29. 生の汚水および処理された汚水 30. パーフロロカーボン(PFC) B. 有毒物質(船舶構造の一部として) 1. アスベスト 2. 船舶構造部の鉛ベース塗料 3. 船底のスズベースの汚損防止剤 4. その他 付録 3 船内の潜在的に有害な物質の在庫 (「船舶リサイクルに関する業界実施要綱、2001年 8月」*の付属書 2に基づく) このモデル在庫は、船舶のグリーンパスポート(第 5章を参照)の一部であり、有害なことがわかっていて船舶の構造、装置および設備で使用される物質に関する情報を提供

している。本書に記載されている潜在的に有害な物質の特定のカテゴリに関する技術情

報により、特に適切な除去と取り扱いに関してこのモデルを適宜補足することができる。 * www.marisec.org/recycling パート 1-船舶の構造と設備の潜在的に有害な物質 1A. アスベスト (注意:アスベストを含むすべての材料(ACM)、またはアスベストを含むと想定さ

37

れる材料(PACM)は、その旨を明確に表示する必要がある。) アスベスト材の種類(含ま

れるボード、配管被覆) 場所 概略数量/体積

エンジンルーム/機械室 蒸気供給配管および吊り具(全般) 蒸気排出配管および吊り具(全般) 逃し弁および安全弁(全般) 種々の配管の外装被覆材と吊り具

(全般)

水配管と吊り具(全般) HPタービン断熱材(全般) ボイラードラムとケーシング(全

般)

ヒーター、タンクなど(全般) その他(全般) 特定の機械の場所。例、ポンプ室、

ボイラー室

宿泊設備 トイレおよび食堂(全般) 内装デッキ。下敷など(全般) 蒸気および排気配管(全般) 冷凍機配管(全般) 空調ダクト(全般) ケーブルダクト(全般) 外部バルクヘッド(全般) 内部バルクヘッド(全般) 外部デッキヘッド(全般) 内部デッキヘッド(全般) デッキに隣接する機械スペース

(全般)

38

その他(全般) 特定の宿泊施設の場所 デッキ 蒸気供給配管(全般) 排気配管(全般) タンククリーニング配管(全般) ストリッピングポンプ(全般) その他(全般) 特定のデッキの場所 機械 ブレーキライニング 注意:アスベストを含む材料(ACM)は、アスベストを含んでいない材料の下に存在する可能性がある。 1B. 塗料(船舶構造部)-添加剤 添加剤(鉛、すず、カドミウム、有機スズ

(TBT)、ヒ素、亜鉛、クロム、ストロンチウム、(その他)

場所

39

1C. プラスチック材 タイプ 場所 概略数量/体積 1D. 50mg/kg以上の濃度の PCB、PCT、PBBを含む物質 材料 場所 概略数量/体積 1E. 船舶の設備または機械で密閉されている気体 タイプ 場所 概略数量/体積 冷媒(R12または R22) CO2 アセチレン プロパン ブタン 酸素 その他(指定のこと) 1F. 船舶の設備または機械の薬品 タイプ 場所 概略数量/体積 焼き付き防止剤 エンジン添加剤 不凍液 ケロシン 揮発油 ボイラー/水処理 純水装置再生 蒸発器供給およびデスケー

リング用酸

塗料/錆安定剤 溶剤/シンナー 化学冷媒 電池電解質 ホテルサービスクリーナー

40

その他(指定のこと) 1G. 船舶の機械、設備、または器具に固有の他の物質 タイプ 場所 概略数量/体積 潤滑油 油圧作動油 鉛蓄電池 アルコール 変性アルコール エポキシ樹脂 水銀 放射性物質 その他(指定のこと) パート 1.作成者 日付 パート 2-運転で発生した廃棄物 2A. 乾燥タンク残留物 残留物の説明 場所 概略数量/体積

41

2B. バルク(オイル状以外)廃棄物 タイプ 場所 概略数量/体積 バラスト水 生の汚水 処理された汚水 ごみ(プラスチックを含む) くず 調理室廃棄物 その他(指定のこと) 2C. オイル状廃棄物/オイル状残留物 タイプ 場所 概略数量/体積 貨物残留物 燃油庫:燃料油 ディーゼル油 ガス油 潤滑油 グリース 油圧作動油 廃油(スラッジ) オイルが混ざった水 オイル状スラッジ/汚染ス

ラッジ

オイルが付着したラグ/汚

染ラグ

その他(指定のこと) パート 2.作成者 日付 パート 3-貯蔵物 3A. 貯蔵気体 タイプ ボンベの数と大き

さ 場所 概略数量/体積

42

冷媒(R12 またはR22)

ハロン CO2 アセチレン プロパン ブタン 酸素 その他(指定のこ

と)

3B. 貯蔵されている薬品 タイプ 場所 概略数量/体積 焼き付き防止剤 不凍液 ケロシン 揮発油 ボイラー/水処理 純水装置再生 蒸発器供給およびデスケー

リング用酸

塗料/錆安定剤 溶剤/シンナー 冷媒 電池電解質 ホテルサービスクリーナー その他(指定のこと) 3C. 貯蔵されている他の梱包品 タイプ 場所 概略数量/体積 潤滑油 油圧作動油 鉛蓄電池 医薬品

43

殺虫剤スプレー アルコール 変性アルコール エポキシ樹脂 塗料 消火用布、装置(例、毛布) その他(指定のこと) パート 3.作成者 日付 付録 4 すべての種類の船舶上における火気作業の原則のリスト (MSC/Circ.1084付属書「すべての種類の船舶における火気作業の原則」) 1 全般 1.1 火気作業とは、船舶内の作業場所にかかわらず、電気アークまたはガス溶接装

置、切断バーナー装置、他の形式の裸火および加熱工具またはスパーク発生工具を使用

する必要がある作業をいう。 1.2 船舶の安全管理制度(SMS)は、火気作業の管理に関する適切な指導を含む必要があり、法令が順守される程度に十分強固なものでなければならない。指導が含まれ

ない安全管理システムは、承認されておらず使用禁止と見なす必要がある。 1.3 条件が安全と考えられる作業場などの空間は、可能な場合はいつでも火気作業

の作業場所として指定される必要があり、火気作業を実施する場合は最初にその空間を

作業場所として考慮する必要がある。 1.4 前述の空間以外で実施される火気作業では、以下の事項を考慮する必要がある。 2 指定された空間外での火気作業 2.1 監督者または指定された安全担当者は、火気作業が理にかなっているかどうか

44

および火気作業を安全に実施できるかどうかを判定する責任を負う必要がある。 2.2 火気作業許可制度を採用する必要がある。 2.3 火気作業手順では、国の法律または規則、国の他の安全衛生規則を考慮する必

要がある。 2.4 安全手順が順守されるように火気作業に関係のない担当者を指定する必要が

ある。 2.5 作成された作業計画には、火気作業に関係する責任を持つ全員が同意する必要

がある。 2.6 作業区域を慎重に準備し、火気作業の開始前に隔離する必要がある。 2.7 消火器具の準備、隣接する区画またはエリアへの火災監視者の配置、消火措置

など、火災安全上の予防措置を確認する必要がある。 2.8 火災の危険が存在しなくなるまで、継続して作業エリアの隔離と火災予防措置

を講じる必要がある。 付録 5 船舶内の密閉空間に立ち入る場合の推奨事項 (総会決議 A.864(20)の付属書) 序文 本推奨事項の目的は、酸欠雰囲気、可燃性雰囲気および毒性雰囲気が存在する可能性が

ある密閉空間に立ち入る船舶の要員の犠牲者を防止することを目的とした安全手順の

導入を奨励することにある。 犠牲者が発生した状況の調査によると、船舶内の事故は、多くの場合指導不足ではなく、

予防措置を講じる必要性についての不十分な知識または無視によって発生している。

45

次の実施上の推奨事項は、すべての種類の船舶に適用され、船舶の乗員に指導を提供す

る。たとえば、特定の旅客船または小型の汎用貨物船など、めったに密閉空間に立ち入

ることがない船舶では、危険の意識が希薄になる可能性があり、適宜警戒心を高める必

要性がある。 推奨事項は、国の法律または規則、一般に認められた規格または特定の取引、船舶また

は操縦法に存在する可能性がある特別の手順を補足することを目的としている。 一部の推奨事項は、特定の状況に対して適用できない可能性がある。この場合、推奨事

項の意図を順守するためにあらゆる努力を尽くし、その状況に関連するリスクに注意を

払う必要がある。 1 序論 密閉空間の雰囲気は酸素が不足しているか、可燃性または有害な気体、あるいは蒸気を

含む可能性がある。このような安全でない雰囲気は、以前は安全であることが明らかで

あった空間でも発生する可能性がある。安全でない雰囲気は、有害であることが明らか

な空間に隣接する空間にも存在する可能性がある。 2 定義 2.1 密閉空間とは、以下の特性のいずれかを有する空間をいう。

.1 出入り口の数が限られている

.2 不適切な自然換気

.3 作業者が継続して使用するように設計されていない および貨物空間、二重底、燃料タンク、バラストタンク、ポンプ室、圧縮機室、コッフ

ァーダム、船内空所、ダクトキール、障壁間空間、エンジンクランクケース、汚水タン

クを含むが、これらに限定されない。 2.2 有資格者とは、十分な理論的知識と実際の経験を有する者をいう。危険な雰囲

気が存在する可能性または空間にそれ以降危険な雰囲気が発生する可能性について学

識に基づいた評価を行う者をいう。 2.3 責任者とは、密閉空間の中に立ち入ることを許可され、従う手順について十分

な知識を有する者をいう。

46

3 リスクの評価 3.1 安全を確保するために、有資格者は以前輸送した貨物、空間の換気、空間の塗

装および他の関連要因を考慮して、立ち入る空間の潜在的な危険の事前評価を常に実施

する必要がある。有資格者による事前評価では、酸欠、可燃性または有毒雰囲気の存在

の可能性を判定する必要がある。 3.2 空間の雰囲気の試験および立ち入りで従う手順は事前評価を基盤にして決定

する必要がある。この手順は、事前評価で以下の結果が示されるかどうかによって異な

る。 .1 空間に立ち入る要員の健康と生命に対して最小のリスクがある。

.2 健康と生命に差し迫ったリスクはないが、空間での作業進行の間にリスクが発

生する可能性がある。

.3 健康または生命へのリスクが特定されている。 3.3 事前評価で健康または生命に対する最小のリスク、または空間での作業進行の

間にリスクが発生する可能性が示された場合、第 4、5、6、7項に記載されている予防措置に適宜従う必要がある。 3.4 事前評価で健康または生命に対するリスクが特定され、その空間に立ち入る場

合は、第 8項で指定されている追加の予防措置にも従う必要がある。 4 立ち入りの許可 4.1 監督者または指名された責任者が許可しない限り、かつ特定の船舶に規定され

た適切な安全手順に従わない限り、密閉空間を開放したり、立ち入ったりしてはならな

い。 4.2 密閉空間への立ち入りは計画を立てる必要があり、チェックリストの使用を含

め、立ち入り許可制度の使用を推奨する。「密閉空間立ち入り許可証」は、監督者また

は指名された責任者が発行する必要があり、空間に立ち入る前に立ち入る者が作成する

必要がある。「密閉空間立ち入り許可証」の例については、付録を参照のこと。 5 全般予防措置

47

5.1 監督者または責任者は、以下を確保して密閉空間への立ち入りが安全であるこ

とを判定する必要がある。

.1 評価で潜在的な危険性が特定され、可能な限りそれらの危険性を隔離し、安全にする

.2 自然換気または機械的手段により空間を十分換気して有害な気体または可燃性の気体を除去して、空間全体で適切な酸素の濃度を確保する。

.3 正しく校正された装置を使って空間の雰囲気を適切に試験し、酸素濃度および可燃性または有害な蒸気の濃度が許容レベルであることを確認する。

.4 立ち入らないように空間を保護し、適切な照明を設置する。

.5 立ち入り中、すべての当事者間で使用する適切な通信システムが同意され、試験を終えている。

.6 係員は、人が密閉空間を使用している間に、空間の入り口に残るように指示されている。

.7 空間の入り口に使用の準備が整った救助および救急蘇生装置を配置し、救助計画が同意されている。

.8 要員は適切な服を着用し、立ち入りおよびそれ以降の業務のための装備を整えている。

.9 立ち入りを許可する許可証が発行されている。 5.1.6 および 5.1.7 の予防措置は、この項で説明されているすべての状況に適用できるわけではない。立ち入りを許可する担当者は、空間の入り口に係員および救命器具が必

要かどうかを判定する必要がある。 5.2 立ち入る業務を割り当てられる要員、係員として働く要員、またはレスキュー

チームのメンバーとして働く要員には、訓練を受けた要員だけを割り当てる必要がある。

船舶の船員は、救護および応急処置の訓練を定期的に受ける必要がある。

48

5.3 立ち入りに関連して使用されるすべての機器は良好な作動条件であり、使用前

に点検される必要がある。 6 雰囲気の試験 6.1 空間の雰囲気の適切な試験は、正しく校正された機器を使って、機器の使用の

訓練を受けた要員により実施される必要がある。メーカーの手順書に厳密に従うこと。

試験は、人が空間に立ち入る前に実施される必要があり、それ以降もすべての作業が完

了するまで定期的に実施される必要がある。空間の雰囲気の代表的なサンプルを取得す

るためにできるだけ異なる高さで空間の試験を行う必要がある。 6.2 立ち入り目的の場合は、以下の安定した読み値が得られる必要がある。

.1 酸素濃度計により体積で 21%の酸素、および

.2 事前評価で可燃性ガスまたは蒸気が存在する可能性が判定された場合、適切な感度のガス検定器で可燃性ガス燃焼下限界値 1%(LFL)を超えない。 これらの条件が満たされない場合、空間で追加の換気を行い、適切な間隔で再度試験を

行う必要がある。気体測定試験は、正確な読み値を得るために密閉空間への換気を停止

して行う必要がある。 6.3 事前評価で有害ガスまたは蒸気が存在する可能性があると判定された場合、固

定式または携帯式のガス/蒸気検出器を使用して適切な試験を実施する必要がある。こ

の計器で得られた読み値は、認められている国の規格または国際規格で指定された有害

ガスまたは蒸気に職業上さらされる限度以下である必要がある。可燃性の試験は、有害

性を測定するための適切な手段とはならずその逆もまた同様であることに注意する必

要がある。 6.4 気体の溜まり場所または酸欠の区域が存在する可能性があることを重視する

必要があり、密閉空間が立ち入りに適していると問題なく試験された場合でも常に疑う

必要がある。 7 立ち入り中の予防措置 7.1 空間に立ち入る場合は雰囲気を頻繁に試験する必要があり、条件が悪化した場

合は直ちに退去するように作業者に指示する必要がある。

49

7.2 空間に立ち入っている間および一時的な休憩の間は換気を継続して行う必要

がある。休憩後に再度立ち入る前に、雰囲気の再試験を実施すること。換気システムの

故障時は、空間にいる担当者は直ちに退去すること。 7.3 緊急時は、いかなる状況であれ、支援が到着する前および状況が評価され救援

活動を行うために空間に立ち入る者の安全が保証される前に係員メンバーが空間に入

る必要がある。 8 雰囲気が安全でないことが明らかであるか疑わしい空間に立ち入るときの追

加の予防措置 8.1 密閉空間の雰囲気が安全でないことが疑わしいか、既知である場合、実際的な

代替案が存在しない場合のみ立ち入る必要がある。立ち入りは、追加の試験、重要な作

業、生命または船舶の安全だけのために行われる必要がある。空間に立ち入る要員の数

は、実施する作業に見合うだけの最小限度にすること。 8.2 空気管式または自給式などの適切な呼吸装置を常時着用し、装置の使用の訓練

を受けた要員だけに立ち入りを許可すること。ろ過式呼吸用保護具は、空間内の雰囲気

から独立したソースから清浄な空気を得られないので、使用しないこと。 8.3 第 5項で指定された予防措置にも適宜従うこと。 8.4 レスキューハーネスを着用すること。また、実施不可能でない限り、命綱を使

用すること。 8.5 特に空間に立ち入る者の皮膚や目が有害な物質または薬品に触れる危険があ

る場合は適切な保護具を着用すること。 8.6 緊急救命活動に関して第 7.3項で指定されている勧告は、特にこの状況に関連している。 9 特定の種類の貨物に関連する危険 9.1 梱包された形式の危険物 9.1.1 危険物を含んでいる空間の雰囲気は、そこに立ち入る者の健康または生命をリ

50

スクにさらす可能性がある。危険には、酸素に置き換わる、梱包および漏れた物質に残

留する可燃性のある、有害な、または腐食性の気体または蒸気が含まれる。同じ危険は

貨物空間に隣接する空間に存在する可能性がある。特定の物質の危険性に関する情報は

IMDG コード、危険物を運搬する船舶の緊急手順(EMS)、材料安全データシート(MSDS)に記載されている。危険物の漏れの兆候または疑いが発生した場合は、第 8項に示す予防措置に従うこと。 9.1.2 流出、欠陥または損傷のある梱包の除去に対応する必要がある要員は、適切に

訓練を受け、適切な呼吸装置および防護服を着用すること。 9.2 バルク液体 タンカー業界は、大量のオイル、薬品、液化ガスの運搬に携わる船舶の運航者および船

員に対して、スペシャリスト国際安全ガイドの形式で広範囲な勧告を作成した。密閉空

間への立ち入りに関する指導の情報は、これらの推奨事項を取り上げており、立ち入り

計画の作成の基盤として使用する必要がある。 9.3 固体バルク 固体バルク貨物を運搬している船舶では、貨物空間および隣接する空間で危険な雰囲気

が発生する可能性がある。これらの危険には、可燃性、有害、酸欠、自己発熱が含まれ

るが、出荷文書で特定される必要がある。追加の情報については、「固体ばら積み貨物 に関する安全実施基準」を参照のこと。 9.4 酸欠を招く貨物および物質 当該貨物に顕著な危険は貨物の特有の形式による酸欠である。たとえば、金属および鉱

物の自己発熱と酸化、植物油、動物の脂肪、穀物および他の有機物質またはその残留物

の分解などが挙げられる。下記の物質は、酸欠を招く可能性があることが知られている。

ただし、このリストはすべての物質を網羅しているわけではない。また、酸欠は植物ま

たは動物を発生源とする他の物質、可燃性または自然燃焼性物質、多くの金属を含む物

質により発生する可能性もある。

.1 穀物、穀物製品および穀物処理からの残留物(ふすま、破砕穀物、破砕モルトまたはあら粉)、ホップ、モルトの皮、使用済みモルト

.2 脂肪種子および脂肪種子からの製品および残留物(種子搾油かす、種子ケーキ、オイルケーキ、およびあら粉)

51

.3 コプラ .4 梱包された木材、丸太、幹、パルプ材、支柱(坑道の支柱および他の支柱木材)、

木材チップ、経木、木材パルプペレット、おがくずなどの形式の木材

.5 黄麻、大麻、亜麻、シサル麻、カポック、綿および他の植物繊維(エスパルト/アフリカハネガヤ、干草、わら、ブーサ)、空袋、綿廃棄物、動物繊維、動物性およ

び植物性繊維の織物、ウール廃棄物およびラグ

.6 魚粉およびあらかす

.7 グアノ

.8 硫化鉱石および精鉱

.9 木炭、石炭、石炭製品

.10 直接還元鉄(DRI)

.11 ドライアイス

.12 金属廃棄物およびチップ、鉄削り屑、鋼その他の旋削、中ぐり、穴あけ、 仕上げ屑、やすり粉、切削屑

.13 スクラップ金属 9.5 くん蒸 船舶をくん蒸する場合は、「船舶での殺虫剤の安全な使用に関する推奨事項」に含まれ

る推奨事項に従うこと。くん蒸される空間に隣接する空間は、くん蒸される場合と同様

に扱う必要がある。 10 結論 単純な手順に従わないことで、密閉空間に立ち入るときに予期しない困難にさらされる

可能性がある。上記の原則を順守することにより、当該空間のリスク評価と必要な予防

52

措置を講じるための基盤が形成される。 *MSC/Circ.689とMSC/Circ.746で修正されたMSC/Circ.612案による海事安全委員会で承認された「船舶での殺虫剤の安全な使用に関する推奨事項」を参照のこと。 付録 密閉空間立ち入り許可証の例 この許可証は、密閉空間内への立ち入りに関連しており、監督者または担当者によりお

よび空間に立ち入る要員または認可されたチームリーダーにより作成される必要があ

る。 全般 密閉空間の場所/名前 立ち入りの理由 本許可証の有効期間 開始: 時間 日付 終了: 時間 日付

(注意 1を参照)

第 1章-立ち入り前の準備 (監督者または指名された担当者により確認を受ける) はい いいえ ・空間は十分換気されたか? ・空間は閉じられて、すべての接続配管または弁および電源/設

備を分離して隔離されているか?

・空間は必要に応じて清掃されたか? ・空間は試験され、立ち入りに安全であることが確認されている

か?(注意 2を参照)

・ 立ち入り前雰囲気試験の読み値: -酸素 %vol (21%) -炭化水素 % LFL(1%未満) -有毒ガス ppm(特定のガスおよび PEL) (注意 3を参照)

実施者: 時間:

……….. ………..

・空間が使用されている間および作業の休憩の後に、頻繁な雰囲

気チェックを行うための計画が立てられているか?

53

・空間が使用されている間および作業の休憩中に、継続して空間

の換気が行われるように計画が立てられているか?

・アクセスと照明は適切か? ・空間の入り口のそばに直ちに使用できる救助および救急蘇生装

置があるか?

・空間の入り口に継続して立ち会う担当者が指定されているか? ・計画されている立ち入りについて、監視担当者(ブリッジ、エ

ンジンルーム、貨物管理室)に連絡されているか?

・すべての当事者間の通信システムがテストされ、緊急信号が同

意されているか?

・緊急時手順および避難手順が制定され、密閉空間への立ち入り

に関係しているすべての当事者により理解されているか?

・使用されるすべての機器が良好な動作条件であり、立ち入りの

前に点検されているか?

・要員は適切な服を着用し、機器を装備しているか?S 第 2章-立ち入り前の確認 (空間に立ち入る要員または認可されたチームリーダーが確認

する) はい いいえ

・私は、監督者または指名された責任者から密閉空間への立ち入

りの指示または許可を得ました。

・この許可証の第 1章は、監督者または指名された責任者により作成されました。

・私は、連絡方法に同意し、理解しています。 ・私は、記録の報告間隔( 分)について同意しています。 ・緊急時手順および避難手順に同意し、理解しています。 ・換気装置の故障時または合意を得た安全基準からの変化が雰囲

気試験で確認された場合、空間から退避しなければならないこと

を知っています。

第 3章-呼吸装置および他の器具 (監督者または指名された責任者および空間に立ち入る要員に

より共同で確認される) はい いいえ

・空間に立ち入る者は、使用する呼吸装置の扱いに慣れている ・ 呼吸装置は次のように試験されている。 -空気供給のゲージと容量

…………………..

54

-低圧音響警報 -フェースマスク-正圧下で漏れなきこと

………………….. …………………..

・通信手段が試験され、緊急信号が同意されている ・空間に立ち入るすべての要員はレスキューハーネスおよび実施

可能な場合は命綱を装着する。

第 1、2、3章の作成完了時の署名 監督者または指名された責任者………………………日付……………時刻…………… 立ち入りを監視する責任者 ………………………日付……………時刻…………… 空間に立ち入る要員または認可されたチームリーダー ………………………日付……………時刻…………… 第 4章-立ち入る要員 (立ち入りを監督している責任者により作成される) 氏名 入った時刻 出た時刻 …………………………….. ……………………… ……………………… …………………………….. ……………………… ……………………… …………………………….. ……………………… ……………………… …………………………….. ……………………… ……………………… 第 5章-作業の完了 (立ち入りを監督している責任者により作成される) ・完了した作業 日付………………. 時刻………………. ・立ち入りに対して空間が保護された 日付………………. 時刻………………. ・正式に通知を受けた警戒担当者 日付………………. 時刻……………….

第 4、5章の作成完了時の署名 立ち入りを監視する責任者 ………………………日付……………時刻……………

55

この許可証は、空間の換気装置が停止した場合、またはチェックリストに記載された条

件が変化した場合は無効となる。 注意:

1 許可証には、有効最長期間について明確に示されている必要がある。

2 空間の雰囲気の断面を代表する値を得るには、複数のレベルまたはできる限り多くの開口部からサンプルを取得する必要がある。 換気装置は、立ち入り前雰囲気試験を行う前の約 10分間停止する必要がある。

3 ベンゼンまたは硫化水素など、特定の有害汚染物質の試験は、空間の以前の内容物の性質に応じて実施される必要がある。 密閉空間立ち入り許可証が発行されない限り、密閉空間に立ち入ってはなりません。 ストップ! 訓練は終わりましたか? 密閉空間は大変危険です。 注意を怠ると・・・・・このようになってしまいます。

56