integration of pharmacokinetics and pharmacodynamics ......139 fig. 1. schematic representation of...

14
137 静岡県立大学大学院薬食生命科学総合学府薬学研究院 薬食研究推進センター(〒422 8526 静岡市駿河区谷田 52 1e-mail: yamadau-shizuoka-ken.ac.jp 本総説は,平成 25 年度退職にあたり在職中の業績を中 心に記述されたものである. 137 YAKUGAKU ZASSHI 135(1) 137150 (2015) 2015 The Pharmaceutical Society of Japan Review生体内での薬物受容体結合を基盤とした薬物動態と薬効の統合的解析 山田静雄 Integration of Pharmacokinetics and Pharmacodynamics Based on the in Vivo Analysis of Drug-receptor Binding Shizuo Yamada Center for Pharma-Food Research (CPFR), Graduate School of Pharmaceutical Sciences, University of Shizuoka; 52 1 Yada, Suruga-ku, Shizuoka 422 8526, Japan. (Received August 27, 2014) As I was deeply interested in the eŠects of drugs on the human body, I chose pharmacology as the subject of special study when I became a 4th year student at Shizuoka College of Pharmacy. I studied abroad as a postdoctoral fellow for two years, from 1978, under the tutelage of Professor Henry I. Yamamura (pharmacology) in the College of Medicine at the University of Arizona, USA. He taught me a variety of valuable skills such as the radioreceptor binding assay, which represented the most advanced technology developed in the US at that time. After returning home, I engaged in clarifying receptor abnormalities in pathological conditions, as well as in drug action mechanisms, by making the best use of this radioreceptor binding assay. In 1989, following the founding of the University of Shizuoka, I was invited by Professor Ryohei Kimura to join the Department of Pharmacokinetics. This switch in discipline provided a good oppor- tunity for me to broaden my perspectives in pharmaceutical sciences. I worked on evaluating drug-receptor binding in vivo as a combined index for pharmacokinetics and pharmacological eŠect manifestation, with the aim of bridging phar- macology and pharmacokinetics. In fact, by focusing on data from in vivo receptor binding, it became possible to clearly rationalize the important consideration of drug dose-concentration-action relationships, and to study quantitative and kinetic analyses of relationships among pharmacokinetics, receptor binding and pharmacological eŠects. Based on this concept, I was able to demonstrate the utility of dynamic analyses of drug-receptor binding in drug discovery, drug fostering, and the proper use of pharmacokinetics with regard to many drugs. Key wordsdrug-receptor binding; pharmacokinetics; pharmacodynamics; positron emission tomography; overac- tive bladder; anicholinergics はじめに―43 年間の研究生活を振り返って 私は薬物の身体に及ぼす作用に興味を抱き,静岡 薬科大学 4 年生からの課題研究は薬理学を専攻し た.医師であった恩師の故 林 栄一先生(静岡薬 科大学薬理学教室初代教授)より医学・薬学におけ る薬理学の重要性,そして研究面では病気の原因解 明や創薬研究を学ぶことで,大学院に進学し,海ツ ボの食中毒の原因物質(スルガトキシン)の薬理作 用の解明により薬学博士の学位を取得した.その 間,大学院生として約 6 ヵ月間,英国のノッティン ガム大学医学部(生化学,J. N. Hawthorne 教授) とロンドン大学薬学部(薬理学,D. A. Brown 授)の研究室に共同研究のために短期留学した.そ の後,昭和 531978)年から 2 年間,米国アリゾ ナ大学医学部の H. I. Yamamura 教授(薬理学)と W. R. Roeske 教授(内科学)の研究室に留学した. 二人の恩師には,当時米国で開発された最先端のテ クノロジーであった受容体結合測定法の修得に加 え,サイエンスの面白さ,研究者としての心構えや 人間性など多くを学び,そして多くの友人ができた ことはその後の研究者としての礎となった.帰国後 は,受容体結合測定法を駆使して,病態における脳 神経系や末梢組織の受容体異常や薬物の作用機構の 解明に従事した.また,昭和 601985)年 6 月か らは,第 2 代薬理学教授として着任された中山貢一 先生の御指導の下で,冠動脈などの血管系における

Upload: others

Post on 24-Sep-2020

3 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: Integration of Pharmacokinetics and Pharmacodynamics ......139 Fig. 1. Schematic Representation of Drug-receptor Binding in Relation to Pharmacokinetics and Pharmacodynamics Vol. 135

137

静岡県立大学大学院薬食生命科学総合学府薬学研究院

薬食研究推進センター(〒4228526 静岡市駿河区谷田

521)

e-mail: yamada@u-shizuoka-ken.ac.jp

本総説は,平成 25 年度退職にあたり在職中の業績を中

心に記述されたものである.

137YAKUGAKU ZASSHI 135(1) 137―150 (2015) 2015 The Pharmaceutical Society of Japan

―Review―

生体内での薬物受容体結合を基盤とした薬物動態と薬効の統合的解析

山 田 静 雄

Integration of Pharmacokinetics and Pharmacodynamics Based on the

in Vivo Analysis of Drug-receptor Binding

Shizuo Yamada

Center for Pharma-Food Research (CPFR), Graduate School of Pharmaceutical Sciences, University of Shizuoka;521 Yada, Suruga-ku, Shizuoka 4228526, Japan.

(Received August 27, 2014)

As I was deeply interested in the eŠects of drugs on the human body, I chose pharmacology as the subject of special

study when I became a 4th year student at Shizuoka College of Pharmacy. I studied abroad as a postdoctoral fellow for

two years, from 1978, under the tutelage of Professor Henry I. Yamamura (pharmacology) in the College of Medicine

at the University of Arizona, USA. He taught me a variety of valuable skills such as the radioreceptor binding assay,

which represented the most advanced technology developed in the US at that time. After returning home, I engaged in

clarifying receptor abnormalities in pathological conditions, as well as in drug action mechanisms, by making the best

use of this radioreceptor binding assay. In 1989, following the founding of the University of Shizuoka, I was invited by

Professor Ryohei Kimura to join the Department of Pharmacokinetics. This switch in discipline provided a good oppor-

tunity for me to broaden my perspectives in pharmaceutical sciences. I worked on evaluating drug-receptor binding in

vivo as a combined index for pharmacokinetics and pharmacological eŠect manifestation, with the aim of bridging phar-

macology and pharmacokinetics. In fact, by focusing on data from in vivo receptor binding, it became possible to clearly

rationalize the important consideration of drug dose-concentration-action relationships, and to study quantitative and

kinetic analyses of relationships among pharmacokinetics, receptor binding and pharmacological eŠects. Based on this

concept, I was able to demonstrate the utility of dynamic analyses of drug-receptor binding in drug discovery, drug

fostering, and the proper use of pharmacokinetics with regard to many drugs.

Key words―drug-receptor binding; pharmacokinetics; pharmacodynamics; positron emission tomography; overac-

tive bladder; anicholinergics

はじめに―43 年間の研究生活を振り返って

私は薬物の身体に及ぼす作用に興味を抱き,静岡

薬科大学 4 年生からの課題研究は薬理学を専攻し

た.医師であった恩師の故 林 栄一先生(静岡薬

科大学薬理学教室初代教授)より医学・薬学におけ

る薬理学の重要性,そして研究面では病気の原因解

明や創薬研究を学ぶことで,大学院に進学し,海ツ

ボの食中毒の原因物質(スルガトキシン)の薬理作

用の解明により薬学博士の学位を取得した.その

間,大学院生として約 6 ヵ月間,英国のノッティン

ガム大学医学部(生化学,J. N. Hawthorne 教授)

とロンドン大学薬学部(薬理学,D. A. Brown 教

授)の研究室に共同研究のために短期留学した.そ

の後,昭和 53(1978)年から 2 年間,米国アリゾ

ナ大学医学部の H. I. Yamamura 教授(薬理学)と

W. R. Roeske 教授(内科学)の研究室に留学した.

二人の恩師には,当時米国で開発された最先端のテ

クノロジーであった受容体結合測定法の修得に加

え,サイエンスの面白さ,研究者としての心構えや

人間性など多くを学び,そして多くの友人ができた

ことはその後の研究者としての礎となった.帰国後

は,受容体結合測定法を駆使して,病態における脳

神経系や末梢組織の受容体異常や薬物の作用機構の

解明に従事した.また,昭和 60(1985)年 6 月か

らは,第 2 代薬理学教授として着任された中山貢一

先生の御指導の下で,冠動脈などの血管系における

Page 2: Integration of Pharmacokinetics and Pharmacodynamics ......139 Fig. 1. Schematic Representation of Drug-receptor Binding in Relation to Pharmacokinetics and Pharmacodynamics Vol. 135

138138 YAKUGAKU ZASSHI Vol. 135 No. 1 (2015)

受容体研究に着手した.

静岡県立大学発足後の平成元年(1989)に,木村

良平教授に薬剤学教室(現薬物動態学分野)へ迎え

て頂いて以来,薬理学から薬剤学への転向は,薬学

における視野を広げる好機となった.平成 16

(2004)年 4 月より,同大卒業生の一人として母校

に貢献できることの想いと重責の念とともに,木村

教授の後任として薬剤学教室を引き継がせて頂いた.

39 歳で遅ればせながら講師のポストを拝命し,薬

理学と薬剤学の架け橋となるべく,以下に詳述する

“生体内での薬物受容体結合を基盤とした薬物動態

と薬効の統合的解析”の研究に従事した.実際に,

in vivo の受容体結合実験データを主軸に据えるこ

とで薬物の投与量濃度作用の関係を考慮する根拠

を明白とし,薬物動態と受容体結合並びに薬理効果

の関係を定量的かつ速度論的に解析する研究が可能

になった.こうしたコンセプトの下に,排尿障害治

療薬など多くの薬物で,創薬・育薬や医薬品の適正

治療における薬物受容体結合の動態的解析の有用

性を実証することができた.

私の長年の夢であった“国際学会を静岡で”も,

平成 19 年(第 5 回国際受容体シンポジウム),24

年(第 1 回薬食国際カンファレンス),26 年(第 2

回薬食国際カンファレンス)に実現の運びとなっ

た.また,次の目標であった薬食研究推進センター

の開設に向けて 3 年に亘る準備の末,本庶 佑静岡

県公立大学法人理事長,木苗直秀静岡県立大学長を

始め多くの先生方の御支援により,平成 25 年 11 月

に大学院薬学研究院附属施設として開設に尽力し

た.平成 26 年 4 月より本センター専任となり,高

齢化社会や医療費高騰において重要となる,患者視

線で医薬品のよりよい使い方や新たな機能性食品の

開発によるセルフメディケーションの普及と健康寿

命の延伸に少しでも貢献できればとの想いを胸に,

新たな気持ちで取り組んでいる.

本稿では,43 年間,大学人として教育研究に従

事した学問分野である薬理学と薬物動態学の架け橋

として,薬物の受容体結合動態を基盤とした体内動

態と薬効の統合的解析について概説する.具体例と

して,過活動膀胱治療薬の生体内での受容体結合動

態,特に作用部位となる膀胱組織への選択性につい

て,われわれの実験成績を中心に紹介する.

1. 薬物の体内動態と薬効の解析

新規薬剤の探索研究,臨床開発並びに適正な薬物

療法を行うためには,薬物の有効性や安全性を合理

的に評価し,その科学的基盤を明確にすることが不

可欠である.薬物が生体に投与されてから薬理作用

の発現に至るまでの過程は,体内動態(phar-

macokinetics; PK,薬動学)と薬効の発現(phar-

macodynamics; PD,薬力学)に大別され,薬物作

用は両者を総合した結果として発現する(Fig.

1).13) したがって,優れた薬剤の創製には,薬物

作用を PK と PD の両側面から総合的に考究するこ

とが肝要である.しかしながら,多くの場合,薬物

の PK と PD は個別に評価され,両者の関係は血漿

中薬物濃度を用いて論じられる場合が多い.近年開

発されている作用持続が長く,特定の臓器あるいは

受容体サブタイプに選択的な薬物では血漿中濃度と

薬理作用が乖離するものも多く,生体内での薬理作

用の特異性を血漿中濃度では説明できない.こうし

た問題に対して,薬物速度論的には,生体内薬物濃

度の解析に用いる薬動学モデルと,薬物濃度から薬

効を予測する薬力学モデルの両者を組み合わせた

PK/PD 解析が行われてきた.2) PK/PD 解析によっ

て,ある用法・用量で適用された薬物の作用を,薬

物濃度を介して時間的にとらえる努力がなされ,薬

効発現の基盤となっている生物学的なプロセスに対

して速度論的な視点を提供してきた.また,臨床的

には,投与量濃度作用の関係を考慮し,安全性を

確保しながら有効性を引き出すことに主眼がおかれ,

PK/PD 解析による薬物速度論的見地からの情報

は,用法・用量設定の科学的根拠を提示し,薬剤の

適正使用並びに個々の患者に最適な投与設計を決定

するうえで有用となると考えられる.しかしながら,

PK/PD 解析はあくまでも構築したモデルでの結果

を示し,解析結果が薬理作用の実体を伴わない場合

も多い.それゆえに,薬物動態を反映した in vivo

での薬理作用を特徴づけるより具体的な薬効解析学

的基盤の確立が切望された.

2. 薬物の受容体結合

現在臨床応用されている薬物の多くは生体内で受

容体などの機能性タンパク質への結合を介して作用

する.生体に投与された薬物は循環血液中に吸収さ

れた後,各組織に分布し,代謝あるいは排泄を受け

つつ,一部が標的臓器へ到達する.これらの薬物

Page 3: Integration of Pharmacokinetics and Pharmacodynamics ......139 Fig. 1. Schematic Representation of Drug-receptor Binding in Relation to Pharmacokinetics and Pharmacodynamics Vol. 135

139

Fig. 1. Schematic Representation of Drug-receptor Binding in Relation to Pharmacokinetics and Pharmacodynamics

139YAKUGAKU ZASSHIVol. 135 No. 1 (2015)

で,標的臓器に分布後,生体内で受容体などの機能

性タンパク質の結合を介して作用する薬物では,標

的臓器に分布後,受容体に結合しその結合量に依存

して薬理作用が発現することから,薬物の体内動態

(PK)は受容体近傍での薬物量を規定し,薬効の発

現(PD)はその受容体結合を基礎としている

(Fig. 1).13) 薬物の受容体結合特性(結合親和性,

臓器選択性やサブタイプ選択性)は,通常,受容体

発現細胞や生体組織の粗細胞膜標品を用いた,いわ

ゆる in vitro での受容体結合実験により評価され

る.この in vitro の方法では,上述した薬物動態学

的因子に加え,生体において受容体を取り巻く内部

環境因子や生理的神経調節機構などの因子が欠如し

ているため,薬物の薬理作用の経時変化や体内動態

との関連性を明確にすることが困難であるだけでな

く,得られた結果が in vivo での薬理作用の力価と

相関しない場合が多い.実際に,Beachump ら4)は,

13 種の合成非ペプチド性アンギオテンシン II 受容

体拮抗薬の in vitro 受容体結合活性が in vivo での

降圧効果と相関しなかったことを報告している.In

vitro での薬物受容体結合特性と,薬物の全身投与

後の生理的状況下における受容体結合動態が差異を

生じる理由として,一般的には,薬物の生物学的利

用率,血中半減期,代謝,排泄,活性代謝物の生成

などの薬物動態学的要因が重要となる.われわれ

は,これまでに,カルシウム拮抗薬,5,6) アンギオテ

ンシン受容体拮抗薬,7,8) a1 遮断薬,911) Thyrotro-

pin-releasing hormone (TRH)誘導体12)や抗コリン

薬1316)などを用いた実験から,創薬・育薬における

in vivo の薬物受容体結合の動態的解析の有用性を

実証してきた.実際に,in vivo での薬物受容体結

合実験データを主軸に据えることで,薬物の投与

量濃度作用の関係を考慮する根拠を明白とし,

PK と受容体結合並びに薬理効果の関係を速度論的

に解析することが可能となった.

3. 生体内における薬物受容体結合の評価

薬物を全身投与後,各組織に存在する受容体への

結合量を評価する方法には,ex vivo 測定法と in

vivo 測定法がある.両方法のメリットとデメリッ

ト及び in vivo における薬物受容体結合に影響す

る多くの要因(生体側因子,薬物側因子)があ

る.17)

3-1. Ex vivo 測定法 Ex vivo 測定法では,薬

物(被検薬)の生体への投与後,摘出した組織の受

容体標品を用い,ラジオレセプターアッセイ法によ

り,標的受容体の放射性標識リガンドの特異的結合

量を急速吸引濾過法により測定する.対照(vehicle

投与)の特異的結合量との比較により,薬物経口投

与後の受容体結合量を見積もることができる.この

場合,種々の濃度の放射性標識リガンドを用いる飽

和実験から,その結合親和性を示す解離定数(Kd)

及び,受容体密度を示す最大結合部位数(Bmax)を

算出し,両結合パラメーターの変動から,薬物の受

容体結合の様式(競合型あるいは非競合型)や持続

Page 4: Integration of Pharmacokinetics and Pharmacodynamics ......139 Fig. 1. Schematic Representation of Drug-receptor Binding in Relation to Pharmacokinetics and Pharmacodynamics Vol. 135

140140 YAKUGAKU ZASSHI Vol. 135 No. 1 (2015)

性(受容体からの解離速度)などを予測することが

できる.13,18,19) また,薬物投与後の受容体結合の大

きさや時間推移を,薬効発現臓器と副作用発現臓器

において同時測定することにより,in vivo におけ

る薬物の標的臓器受容体への選択性を明確にするこ

とも可能である.

Ex vivo 実験の実施と結果の解釈において留意す

べき点として以下のことが考えられる.組織の受容

体標品調製時における薬物の受容体からの解離によ

る結合量の過小評価,血液や細胞間液中の薬物混入

による受容体結合量の過大評価,インキュベーショ

ン中での解離や新たな平衡状態到達の可能性が懸念

される.Ex vivo 実験系では,これらの因子の影響

を完全に回避することは技術的に不可能であるが,

それらを最小限とするための実験条件の設定が重要

となる.13,18,19) 一般的には,◯低温下での受容体標

品の調製と実験操作により受容体からの解離を

minimize できる,◯標識リガンドとのインキュ

ベーションの時間や温度を最適化することが肝要に

なる.

3-2. In vivo 測定法 In vivo 測定法は,受容

体の放射性標識リガンドを直接静脈内投与して,各

組織に集積する放射活性を測定することにより,受

容体結合活性を見積もる方法である.この場合,◯

摘出組織やその顆粒画分における放射活性を測定す

る方法,◯組織切片を用いるオートラジオグラフィ

(autoradiography; ARG)による方法,◯ポジトロ

ンエミッショントモグラフィ(positron emission

tomography; PET)による非侵襲的方法がある.17)

いずれにおいても,被検薬の薬物を前処理すること

により,対照と比べた標識リガンド集積量の減少量

から,薬物の受容体結合の大きさや時間推移を見積

もることができる.この場合,非特異的結合量の見

積もりが重要となるが,一般的には,◯ in vitro 実

験の場合と同様に,過剰量の非標識の置換薬(受容

体拮抗薬など)の前処置時の集積量,◯受容体が存

在しないか低密度の組織における集積量が用いられ

る.後者の場合,脳の受容体結合測定では小脳が用

いられる場合が多い.薬物投与後の受容体結合の大

きさや時間推移を,薬効発現臓器と副作用発現臓器

において同時測定することにより,in vivo におけ

る薬物の標的臓器受容体への選択性を明確にするこ

とも可能である.重要なことは,生体内での薬物の

受容体結合実験結果と,薬理効果の発現投与量,経

時変化や持続時間などの薬理学的プロフィールとの

整合性の検証により,その精度を確認することであ

る.

3-2-1. 摘出組織や顆粒画分を用いる方法 放

射性標識リガンドを静脈内投与して,組織を摘出し

て可溶化後に放射活性を測定するか,組織ホモジナ

イズを急速吸引濾過後の顆粒画分の放射活性を測定

することにより受容体結合活性を見積もる方法であ

る.2022) この方法により,Miller ら23)は,ヒスタミ

ン H3 受容体拮抗薬標識リガンドの[3H]-A-349821

がラット脳ヒスタミン H3 受容体を選択的に標識す

ることを報告している.

3-2-2. オートラジ オグラフィ( ARG )法

ARG 法は放射線の感光あるいは励起作用を利用

することで,生体組織における種々の生理学的情報

を三次元的に断層像として視覚化する手法であ

る.17) 受容体 ARG 法では通常,3H や14C で標識し

た放射性リガンドを実験動物に静脈内投与し,屠殺

後凍結切片を作製し X 線フィルム又はイメージン

グプレートに感光させることにより画像を得る.薬

物の前処置による標識リガンドの関心領域における

集積量の減少から,その薬物の受容体結合を定量化

することができる.しかし,3H などで標識した標

識リガンドを用いる場合の欠点として,3H 核種の

放出エネルギーが低いためプレートへの長い曝露時

間が必要となる.これに対し,11C や18F などの高

エネルギーの b+ 線放出核種の受容体標識リガンド

を用いることにより,短時間かつ高感度の画像を得

ることができると考えられる.

In vivo での ARG 法による受容体測定として,

エストロゲン,24) ブラジキニン25)や N-メチル-アス

パラギン酸(NMDA)26)などの受容体に関する報告

がある.Merchenthaler ら24)は,[125I]エストロゲン

を投与したマウスの摘出脳の ARG から,エストロ

ゲン受容体の a と b のサブタイプの分布密度を詳

細に解析し,両サブタイプがエストロゲンの生理作

用に関与することを示した.

3-2-3. ポジトロンエミッショントモグラフィ

(PET)法 PET はポジトロン放出核種で標識さ

れた放射性標識リガンドを投与し,発生する消滅 g

線を検出することにより,その体内分布を可視化,

定量化する方法で,脳血流や糖代謝などの生体内情

Page 5: Integration of Pharmacokinetics and Pharmacodynamics ......139 Fig. 1. Schematic Representation of Drug-receptor Binding in Relation to Pharmacokinetics and Pharmacodynamics Vol. 135

141

Fig. 2. Chemical Structures of Anticholinergic Agents (Oxybutynin, Propiverine, Solifenacin, Tolterodine, Imidafenacin, Fesotero-dine) Clinically Used to Treat Overactive Bladder

141YAKUGAKU ZASSHIVol. 135 No. 1 (2015)

報をリアルタイムでかつ非侵襲的に,さらに同一個

体を用いて繰り返し測定することができるというメ

リットがある.17) 薬物の in vivo 受容体結合の測定

では特定の受容体に選択的に結合する標識リガンド

を静脈内投与し,その経時的な体内集積画像を得,

コンパートメント解析により標識リガンドの受容体

結合パラメーターを算出する.さらに,薬物前処置

による標識リガンドの関心領域における集積量の変

化から,薬物の in vivo 受容体結合率を求めること

ができる.

PET や single photon emission computed

tomography (SPECT)による方法を用いて,アセ

チルコリン,2730) ドーパミン,27,28,31) セロトニ

ン,27,31,32) g-アミノ絡酸(GABA),27) アデノシン,27)

ベンゾジアゼピン,33) カンナビノイド,34) オピオイ

ド27,35)や上皮増殖因子(EGF)36)などの様々な受容

体のイメージングが行われている.これらにより,

中枢性神経系における受容体の局在や定量化,疾患

での病態解析,治療薬の作用機構や用法・用量の最

適化,新規治療薬の開発などに関する in vivo での

研究は目覚ましく進展した.

4. 過活動膀胱治療薬(抗コリン薬)の受容体結

合動態

前立腺肥大や過活動膀胱による排尿障害は,高齢

者人口の増加や食生活の欧米化とともに,その患者

数が増加しており,生命に直接影響を及ぼすことは

ないが,患者の QOL を著しく損なう疾患である.

前立腺肥大に伴う排尿困難の治療には a1 遮断薬な

どが用いられ,尿意切迫感,頻尿や尿失禁などの過

活動膀胱には主として抗コリン薬(ムスカリン性受

容体遮断薬)が膀胱排尿筋の過緊張を緩和するため

に適用になる.これらの疾患に対し,近年,標的臓

器の前立腺や膀胱に選択性の高い副作用の少ない治

療薬が開発されてきた.現在,臨床において,過活

動膀胱の治療に用いられている抗コリン薬(オキシ

ブチニン,プロピベリン,ソリフェナシン,トルテ

ロジン,ダリフェナシン,イミダフェナシン,フェ

ソテロジン)(Fig. 2)の生体内におけるムスカリ

ン性受容体結合動態について概説する.

4-1. オキシブチニンの経皮吸収製剤 オキシ

ブチニンは,尿意切迫感,頻尿や尿失禁を主症状と

する過活動膀胱治療薬として汎用されている抗コリ

ン薬であるが,その経口剤の問題点として,血中半

減期が短いため血中濃度の変動が大きく頻回投与が

必要であり,標的臓器となる膀胱への選択性を欠く

ため全身的な抗コリン作用による口渇,頻脈や便秘

などの副作用が高頻度で発現することが挙げられ

る.これらを改善する目的で,ドラッグデリバリー

Page 6: Integration of Pharmacokinetics and Pharmacodynamics ......139 Fig. 1. Schematic Representation of Drug-receptor Binding in Relation to Pharmacokinetics and Pharmacodynamics Vol. 135

142142 YAKUGAKU ZASSHI Vol. 135 No. 1 (2015)

システム(drug delivery system; DDS)の概念を応

用したオキシブチニンの経皮吸収製剤が開発され,

安定した血中濃度維持による副作用の軽減や服薬コ

ンプライアンスの向上に加え,肝初回通過効果の回

避,経口投与が困難な高齢者にも使用可能などと

いった利点が期待されている.

オキシブチニンの経皮吸収製剤のラット背部貼付

後におけるムスカリン性受容体結合活性を,ムスカ

リン性受容体の選択的標識リガンドの[3 H]N-

methylscopolamine ([3H]NMS)結合パラメーター

(Kd, Bmax)の変動から精査した.Ex vivo 実験にお

いて,ラットの経皮投与の場合,経口投与のそれと

比較したところ,オキシブチニンの膀胱ムスカリン

性受容体結合は,投与方法にかかわらずそれぞれ血

漿中薬物濃度と並行して推移したが,唾液腺ムスカ

リン性受容体に対する結合動態において両製剤間で

差異が認められた.13) すなわち,経口投与による唾

液腺受容体結合は,血漿中から薬物が消失後でも長

時間持続したのに対し,経皮投与では唾液腺受容体

の持続的結合は認められず,経口投与の場合より著

しく減弱することを見い出した.加えて,受容体結

合様式にも投与方法による違いが認められ,オキシ

ブチニンの経口投与では受容体に非競合的に結合

し,かつ持続的であったのに対し,経皮投与では競

合的な結合であり,実際に経皮投与による唾液分泌

抑制作用は可逆的であった.

同様なプロトコールで行ったピロカルピン静脈内

投与による唾液分泌測定実験においても,ex vivo

実験での受容体結合実験結果と一致して,オキシブ

チニンの経口投与により持続的かつ非競合的な唾液

分泌抑制作用が認められたが,経皮投与では経口投

与の場合より軽度かつ競合的な抑制作用がみられ

た.13) この知見は,オキシブチニンの経皮投与製剤

では経口投与に比べて口内乾燥などの副作用が有意

に低減するという臨床所見37)とも符合している.

こうした副作用関連臓器の受容体結合動態が経口

と経皮の投与ルートにより違いを生じた理由とし

て,オキシブチニンの経口投与による初回通過効果

で高濃度に生成される活性代謝物の N-デスエチル

オキシブチニンの寄与に加え,血漿中薬物濃度が

徐々に上昇する経皮投与と対照的に急峻な上昇を示

す(経口投与)ことなどの薬物動態学的因子が関係

していると考えられる.N-デスエチルオキシブチ

ニンは膀胱に比べて唾液腺のムスカリン性受容体に

高い結合活性を示すことが報告され,13) 経口投与に

よる唾液腺への持続的な結合に大きく寄与している

ことが推測される.実際,オキシブチニンをラット

に経口投与した場合,N-デスエチルオキシブチニ

ンがオキシブチニンと同程度生成されるのに対し,

経皮投与ではわずかにしか検出されない.13) また,

ヒトにおいても,臨床量のオキシブチニンの経口投

与により,経皮投与に比べ,N-デスエチルオキシ

ブチニンの血漿中濃度が数倍高いことが報告されて

いる.38) したがって,オキシブチニンの経皮吸収製

剤を用いることは,頻回投与の回避や安定した薬物

濃度(薬理作用の持続)が得られるのみならず,緩

徐な血漿中薬物濃度の上昇並びに初回通過効果の回

避により,薬物の標的臓器と非標的臓器への分布速

度や分布量及び N-デスエチルオキシブチニン生成

量の違いを生じ,結果として受容体への結合動態の

差異を引き起こすものと考えられる.薬物の臨床的

経路により投与したラットにおける生体内の受容体

結合動態に関するこれらの知見から,製剤設計にお

いて,薬物の吸収や消失過程の体内動態学的操作に

よる薬物の組織分布速度や分布量の変動は,受容体

結合動態を変化させ,結果として薬効と副作用の発

現バランスを改善できることを示している.いずれ

にしても,これらの知見は in vivo での薬物受容

体結合動態の解析によってのみ明らかになることか

ら,本解析は経皮吸収製剤などの DDS 製剤などの

薬効評価に有用となる.

4-2. ソリフェナシン ソリフェナシンは過活

動膀胱治療薬として開発された新規抗コリン薬であ

る.ムスカリン性受容体サブタイプのうち,M3 サ

ブタイプに高い選択性を有することが知られ,ソリ

フェナシンのカルバコール誘発 Ca2+ 流入抑制作用

は,排尿筋細胞においてはオキシブチニンと同程度

であるのに対し,顎下腺細胞では 625 倍弱いこと

が報告されている.39) さらに,in vivo において唾液

分泌に比べて膀胱収縮を 47 倍選択的に抑制するこ

とが報告されており,標的臓器となる膀胱への高い

選択性を有すると考えられる.40)

ソリフェナシン及びオキシブチニンをマウスに経

口投与後,膀胱などの各組織のムスカリン性受容体

結合活性が認められた.14) ソリフェナシンの場合,

受容体結合活性は投与後 2 時間で最大に達し,612

Page 7: Integration of Pharmacokinetics and Pharmacodynamics ......139 Fig. 1. Schematic Representation of Drug-receptor Binding in Relation to Pharmacokinetics and Pharmacodynamics Vol. 135

143

Fig. 3. Time Course of Muscarinic Receptor Binding in Mouse Bladder and Submaxillary Gland after the Oral Administration ofTolterodine or Oxybutynin

Asterisks show a signiˆcant diŠerence from the control values, p<0.05, p<0.01, p<0.001.

143YAKUGAKU ZASSHIVol. 135 No. 1 (2015)

時間後まで持続した増加が観察されたのに対し,オ

キシブチニンでは投与後 0.5 時間以内に最大となり

直ちに漸減した.両薬物を経口投与した際,ソリ

フェナシンの血漿中濃度はオキシブチニンよりも緩

徐に上昇し長時間滞留することから,ソリフェナシ

ンの長時間持続する受容体結合活性はその体内動態

に起因することが推測された.またソリフェナシン

のムスカリン性受容体結合活性を各組織で比較する

と,顎下腺で最も強く,心臓や肺と比べて膀胱,前

立腺,結腸及び顎下腺ではより長時間持続した結合

活性が認められた.各組織におけるムスカリン性受

容体サブタイプの発現比から,ソリフェナシンの臓

器選択性は in vitro におけるサブタイプ選択性に基

づくものと考えられ,M3 サブタイプが豊富に発現

する膀胱や結腸,顎下腺のムスカリン性受容体に対

してより選択的に結合することが示唆された.

4-3. トルテロジン トルテロジンはムスカリ

ン性受容体サブタイプに対する選択性は示さないが,

in vitro 受容体結合実験において未変化体及び活性

代謝物の 5-ヒドロキシメチルトルテロジンはとも

にムスカリン性受容体に対し高い結合活性を示し,

さらに顎下腺と比べて膀胱のムスカリン性受容体に

親和性が高いことが報告されている.41) 薬理学的に

は,唾液分泌より膀胱平滑筋収縮を低濃度で抑制す

ることが報告され,優れた組織選択性を有すること

が示唆されている.42)

トルテロジンをマウスに経口投与すると,膀胱,

顎下腺を含む各組織のムスカリン性受容体に対する

結合活性が認められ,その結合動態はオキシブチニ

ンの場合と比較してより緩徐かつ持続的であっ

た.41) さらに興味深いことに,トルテロジンの経口

投与によりオキシブチニン経口投与後にみられるよ

うな顎下腺への顕著な結合活性は認められず,反対

に標的臓器である膀胱のムスカリン性受容体に対す

る結合活性が有意に大きいことが明らかとなった

(Fig. 3).また,低用量のトルテロジンは顎下腺の

ムスカリン性受容体には結合活性を示さないにもか

かわらず膀胱ムスカリン性受容体に結合し,顎下腺

に対し膀胱のムスカリン性受容体により選択的に結

合することが示唆された.このような組織選択性の

機序についてはいまだ明らかではないものの,

[14C]トルテロジンをマウスに経口投与すると胆

嚢,膀胱,腎臓,肝臓,肺などの排泄臓器に選択的

に分布することが報告されている.43) よって,in

vitro における膀胱ムスカリン性受容体に対する高

い結合活性に加え,トルテロジン及び 5-ヒドロキ

シメチルトルテロジンの膀胱への優れた組織移行性

が,トルテロジンの膀胱選択性の要因となっている

ことが推察された.

4-4. プロピベリン プロピベリンの薬理作用

として,抗コリン作用とカルシウムチャネル遮断作

用を併せ持つことが知られている.44,45) さらに,経

Page 8: Integration of Pharmacokinetics and Pharmacodynamics ......139 Fig. 1. Schematic Representation of Drug-receptor Binding in Relation to Pharmacokinetics and Pharmacodynamics Vol. 135

144144 YAKUGAKU ZASSHI Vol. 135 No. 1 (2015)

口投与されたプロピベリンは肝臓において活性代謝

物である DPr-P-4, P-4 (N→O), DPr-P-4 (N→O)

へと代謝され,これらがプロピベリン経口投与後の

薬効に一部寄与していると考えられている.46,47)

プロピベリンの経口投与後の血漿中薬物(未変化

体と活性代謝物)濃度及び膀胱と唾液腺ムスカリン

受容体結合を経時的に測定したところ,血漿中には

未変化体とともに抗コリン作用を有する代謝物の

N-オキシド体(DPr-P-4 (N→O))の生成が認めら

えた.47) プロピベリン経口投与後の血漿中薬物濃度

推移と比べ,膀胱及び唾液腺受容体結合の発現と消

失には時間的な遅れが認められたため,薬効コン

パートメントを仮定した速度論的モデル解析を行う

と同時に,薬理効果を非線形混合効果モデルにより

予測した.この PK/PD 解析により,膀胱において

未変化体のプロピベリンは持続的に,DPr-P-4 (N

→O)は即効的に抗コリン作用の発現に寄与するこ

とが示唆された.一方,唾液腺においてはプロピベ

リンによる抗コリン作用の消失が膀胱よりも速く

DPr-P-4 (N→O)の寄与率は小さいことが推定さ

れた.プロピベリン経口投与による抗コリン作用に

は,膀胱ではプロピベリンと DPr-P-4 (N→O)の

双方が関与するのに対し,唾液腺では主にプロピベ

リンが寄与し,その作用の消失は膀胱よりも速いこ

とが仮定された.また,プロピベリン経口投与ラッ

トの組織中薬物濃度から,実際に DPr-P-4 (N→O)

の膀胱組織内濃度が唾液腺濃度より著しく高いこと

が分かり,活性代謝物がこの薬物の膀胱選択性の発

現に寄与していることが示唆された.

4-5. ダリフェナシン ダリフェナシンは,欧

米では過活動膀胱治療薬として臨床応用されている

が,わが国ではいまだ臨床的には用いられていな

い.ムスカリン性受容体サブタイプ発現細胞を用い

た in vitro 受容体結合実験において,ダリフェナシ

ンは膀胱収縮に関与するムスカリン性受容体の M3

サブタイプに高い親和性及び選択性を示すことが報

告されている.これに関連して,マウスやヒト組織

を用いた in vitro 受容体結合実験においても,ダリ

フェナシンは心臓や膀胱に比べ M3 受容体サブタイ

プが豊富に発現する唾液腺に対してより選択的に結

合することが知られている.48)

ダリフェナシンをマウスに経口投与後,各組織に

おけるムスカリン性受容体結合活性を測定したとこ

ろ,心臓や結腸ではわずかな結合しかみられなかっ

たのに対し,顎下腺や膀胱,前立腺では強く持続的

な結合が認められた.49) 顎下腺では M3 受容体サブ

タイプが優位に発現し,膀胱や前立腺においても中

程度の M3 受容体サブタイプが発現していることが

知られている.50) したがって,ダリフェナシンの膀

胱や顎下腺に対する顕著な結合活性は,主に in

vitro におけるサブタイプ選択性を反映しているこ

とが推測される.また,ダリフェナシン経口投与後

ピロカルピン誘発唾液分泌の抑制作用が認められ,

その時間推移は顎下腺ムスカリン性受容体に対する

結合活性の時間推移と良好に相関することを明らか

にしている.以上より,ダリフェナシンは in vitro

におけるサブタイプ選択性により,in vivo におい

ても M3 受容体サブタイプが豊富に発現する臓器に

より選択的に結合することが示唆された.

4-6. イミダフェナシン イミダフェナシンは

近年わが国において開発された新規過活動膀胱治療

薬で,唾液腺より膀胱に選択的に薬理作用を示すこ

とが報告されている.51) また,イミダフェナシンは

ムスカリン性受容体サブタイプのうち M3 及び M1

受容体サブタイプへ高い選択性を示し,膀胱収縮抑

制作用に加えて,神経終末の M1 受容体サブタイプ

を遮断することでアセチルコリン遊離抑制作用を有

することが知られている.52)

イミダフェナシンはラットへの経口投与により,

膀胱のムスカリン性受容体に結合し,その結合活性

は顎下腺などの他の臓器に比べ,持続的かつ低用量

において発現した(Fig. 4).16) また,イミダフェナ

シン経口投与後の組織内薬物濃度の測定では,血清

や顎下腺と比較して膀胱に高濃度かつ持続的に分布

することが明らかとなった.イミダフェナシンは,

未変化体の尿中排泄率が高い53)ため,血中からだけ

でなく尿中から膀胱組織に移行して粘膜や平滑筋の

ムスカリン性受容体に結合することが推測され,こ

のことが膀胱受容体への選択的な結合を示す一因に

なっていると考えられる.実際に,われわれは,イ

ミダフェナシンのラット膀胱内投与により,膀胱ム

スカリン性受容体結合活性が認められることを明ら

かにしている.また,[3H]イミダフェナシンの静

脈内投与によるラット膀胱ムスカリン性受容体結合

量は,両側性尿管結紮により顕著に減少した(未発

表データ).このように,イミダフェナシンの膀胱

Page 9: Integration of Pharmacokinetics and Pharmacodynamics ......139 Fig. 1. Schematic Representation of Drug-receptor Binding in Relation to Pharmacokinetics and Pharmacodynamics Vol. 135

145

Fig. 4. Muscarinic Receptor Binding (Increase Rate (%) in Kd) in the Bladder, Salivary Gland (S. gland), Heart, Colon, Lung andCerebral Cortex of Rats at 1 to 12 h after Oral Administration of Imidafenacin

Asterisks show a signiˆcant diŠerence from the control values, p<0.05, p<0.01, p<0.001.

145YAKUGAKU ZASSHIVol. 135 No. 1 (2015)

選択的な薬理作用には,未変化体の尿中排泄による

膀胱組織への直接的分布などの体内動態の寄与が大

きいと推測される.

4-7. フェソテロジン 新規過活動膀胱治療薬

であるフェソテロジンは,トルテロジンの活性代謝

物である 5-ヒドロキシメチルトルテロジン(5-

hydroxymethyltolterodine; 5-HMT)のプロドラッ

グとして開発された薬物である.トルテロジンは

CYP2D6 により代謝されるのに対し,フェソテロ

ジンは生体内に普遍的に存在する非特異的エステ

ラーゼにより代謝され,いずれも 5-HMT となり薬

理作用を発現する(Fig. 5).フェソテロジン,

5-HMT 及びトルテロジンのヒト膀胱並びに耳下腺

組織のムスカリン受容体への結合活性を精査し

た.54) ヒト膀胱排尿筋及び膀胱粘膜において,ほぼ

同等の密度のムスカリン性受容体の存在が示され

た.また,フェソテロジンは排尿筋,膀胱粘膜及び

耳下腺におけるムスカリン性受容体結合活性を示し

た.フェソテロジンの排尿筋及び膀胱粘膜のムスカ

リン性受容体に対する結合親和性は,耳下腺のそれ

と比較してそれぞれ 20.5 倍,7.3 倍高かった.同様

に,5-HMT 及びトルテロジンも耳下腺と比較して

膀胱のムスカリン性受容体に対しそれぞれ 2.310.6

倍,1.63.1 倍高い結合親和性を示した.これより,

フェソテロジン及び 5-HMT は,ヒト耳下腺に比べ

排尿筋と膀胱粘膜のムスカリン性受容体に対して高

い結合親和性を示すことが明らかになった.また,

5-HMT は,トルテロジン及びフェソテロジンよ

り,ヒト膀胱組織などのムスカリン性受容体に有意

に高い結合親和性を示した.以上より,フェソテロ

ジンは,過活動膀胱患者における排尿筋及び膀胱粘

膜のムスカリン性受容体に結合し,膀胱選択的な薬

理作用を示すことが示唆された.

次に,ラットにフェソテロジン経口投与後,膀

胱,顎下腺,心筋,肺においてムスカリン性受容体

結合活性が認められ,その作用は膀胱で持続的で

あった.一方,結腸及び大脳皮質におけるムスカリ

ン性受容体結合活性はみられなかった.これより,

フェソテロジンは,経口投与により,結腸及び大脳

皮質を除く各組織ムスカリン性受容体に結合し,膀

胱ムスカリン性受容体への結合活性は他の組織と比

較して持続的であることが示された.この持続的な

膀胱ムスカリン性受容体結合動態は,イミダフェナ

シンの場合と同様に,フェソテロジン経口投与によ

り,5-HMT の尿中排泄率が高いため,この活性代

謝物が血中からだけでなく尿中から膀胱組織に移行

して粘膜や平滑筋のムスカリン性受容体に結合する

ことが推測され,このことが膀胱受容体への選択的

な結合を示す一因になっていると考えられた.実際

に,臨床量のフェソテロジンの経口投与したヒト尿

Page 10: Integration of Pharmacokinetics and Pharmacodynamics ......139 Fig. 1. Schematic Representation of Drug-receptor Binding in Relation to Pharmacokinetics and Pharmacodynamics Vol. 135

146

Fig. 5. Enzymatic Conversion of Fesoterodine and Tolterodine (Tolt) to 5-Hydroxymethyltolterodine (5-HMT) by Esterase andCYP2D6

146 YAKUGAKU ZASSHI Vol. 135 No. 1 (2015)

中に排泄される濃度の 5-HMT のラット膀胱内投与

により,膀胱ムスカリン性受容体への有意な結合活

性が認められた.このように,フェソテロジンの活

性代謝物の 5-HMT は,膀胱ムスカリン性受容体へ

の高い結合親和性とともに,尿中排泄による直接的

な膀胱組織分布により,膀胱選択的な薬理作用を示

すと推測される.

5. 分子イメージング法による脳内ムスカリン性

受容体結合の評価

脳におけるムスカリン性受容体は学習・記憶など

の脳高次機能に関与することから,抗コリン薬の長

期服用により,これらの機能低下が,特に高齢者に

おいて懸念される.55) われわれは,ムスカリン性受

容体の PET 用標識リガンドである(+)N-[11C]

methyl-3-piperidyl benzilate (3-MPB)を用いるラ

ット脳ムスカリン性受容体の定量的 ARG におい

て,過活動膀胱治療薬である抗コリン薬の脳受容体

への結合動態を検討した.15) その結果,オキシブチ

ニン,プロピベリン,ソリフェナシン及びトルテロ

ジンなどの抗コリン薬の静脈内投与により,[11C]

(+)3-MPB の脳内集積量が用量依存的に抑制され

た(Fig. 6).オキシブチニンの静脈内投与により,

脳各部位における[11C](+)3-MPB の分布は投与量

に依存して有意に減少した.この減少率は,大脳皮

質で 23.647.1%,線条体で 17.046.7%,海馬で

19.041.6%,扁桃体で 18.445.0%,視床で 22.0

39.4%,視床下部で 24.638.3%,橋で 15.229.4%

であった.またダリフェナシンは,高投与量で視

床,視床下部及び橋において[11C](+)3-MPB 分布

の減少が認められたが,その他の部位では対照と比

べ変化がなかった.薬効発現量のイミダフェナシ

ン,脳内ムスカリン性受容体に有意な結合活性を示

さなかった.56) これらの結果は,イミダフェナシン

及びダリフェナシンがオキシブチニンに比べて中枢

性副作用の発現が少ないという臨床報告5760)と符合

した.また,これより算出した各薬物の脳ムスカリ

ン性受容体占有活性と膀胱における薬理活性(ID50)

の比から,脳に対する膀胱選択性は,オキシブチニ

ンが最も低く,ソリフェナシンなどの新規抗コリン

薬では比較的高いことが示され,これらの知見は受

動回避反応などの行動薬理学的実験結果と良好に相

関した.15)

次に,麻酔ラットにおける PET 測定により,大

脳皮質と線条体における[11C](+)3-MPB の bind-

ing potential (BP)を算出した.[11C](+)3-MPB

は,ムスカリン性受容体が豊富に発現しているとさ

Page 11: Integration of Pharmacokinetics and Pharmacodynamics ......139 Fig. 1. Schematic Representation of Drug-receptor Binding in Relation to Pharmacokinetics and Pharmacodynamics Vol. 135

147

Fig. 6. (A) Representative Autoradiographic Images (Distri-bution of Radioactivity) in the Brain of Rats Given an In-travenous (i.v.) Injection of [11C](+)3-MPB, and (B)EŠects of i.v. Injection of DiŠerent doses of Oxybutynin,Propiverine, Solifenacin, Tolterodine and Darifenacin onAutoradiographic Images of [11C](+)3-MPB in the RatBrain

Fig. 7. Typical MRI and Temporal Change of Parametric PET Images of [11C](+)3-MPB Binding pre and post Oxybutynin (0.1,0.3, 1.0 mg/kg, p.o.) in the Monkey Brain

Each ROIs of dorsolateral prefrontal cortex (light blue), inferior temporal cortex (green), parietal cortex (orange), occipital cortex (yellow), hippocampus

(black), thalamus (red), brainstem (purple), striatum (blue), and cerebellum (white) were superimposed on the MRI image. Parametric maps of BPND of [11C]

(+)3-MPB were calculated by the Logan plot reference tissue method using the cerebellum as reference region.

147YAKUGAKU ZASSHIVol. 135 No. 1 (2015)

れる線条体及び大脳皮質に高い集積性を示し,小脳

においてはほとんど集積が認められなかった.これ

より,ARG の結果と一致して,オキシブチニンの

静脈内投与は用量依存的に[11C](+)3-MPB の脳内

分布を抑制したのに対し,イミダフェナシンの静脈

内投与では[11C](+)3-MPB の脳内分布にほとんど

影響しなかった.56)

われわれは,浜松ホトニクス株の塚田秀夫博士ら

と共同で,アカゲザルを用いた PET 測定の実験に

より臨床用量のオキシブチニンが脳ムスカリン性受

容体を 4060%占有することを明らかにした(Fig.

7).61) さらに同投与量において,オキシブチニンが

アカゲザルの短期記憶機能を低下させることを明ら

かにし,上記の ARG による実験結果と同様,オキ

シブチニン治療による中枢性副作用リスクが高いこ

とが示唆された.一方,イミダフェナシンは,アカ

ゲザルの PET 試験において,脳ムスカリン性受容

体占有活性は小さく,短期記憶機能にもほとんど影

響しなかった.

抗コリン薬による認知機能障害は主にムスカリン

性受容体サブタイプのうち M1 及び M2 サブタイプ

に起因することが知られている.62) イミダフェナシ

ンは M3 受容体に加え,M1 受容体にも高い結合親

和性を有する52)にもかかわらず中枢神経系への影響

が少ないことは,イミダフェナシンは血液脳関門

Page 12: Integration of Pharmacokinetics and Pharmacodynamics ......139 Fig. 1. Schematic Representation of Drug-receptor Binding in Relation to Pharmacokinetics and Pharmacodynamics Vol. 135

148148 YAKUGAKU ZASSHI Vol. 135 No. 1 (2015)

(blood-brain barrier; BBB)を通過せず,脳に分布

しない可能性が考えられた.薬物の BBB 透過性

は,一般に化合物の分子量,脂溶性並びに極性など

の物理化学的特性に依存している.63) オキシブチニ

ンは脂溶性が高く(Log Ko/w=4.7),生理的条件下

では分子型(pKa=6.4)で存在することが考えられ,

BBB を通過し易い薬物であると考えられる.一方

で,イミダフェナシンは生理的条件下では分子型

(pKa=7.5)で存在するが,脂溶性が低いため

(Log Ko/w=1.6)オキシブチニンと比較して BBB

を透過し難いことも考えられる.また,イミダフェ

ナシが脳に移行しない理由として,ダリフェナシン

で報告64)されているように P-糖タンパク質などの

排出トランスポーターの基質となり,脳内から能動

的に排出される可能性も考えられる.これらの知見

と関連して,ラットに[14 C]イミダフェナシン

(1.57 mmol/kg)を経口投与しても,脳においてほ

とんど放射活性が検出されないことが示されている

(未発表データ).

以上の結果より,イミダフェナシンは顎下腺や脳

などの他の組織に比べて膀胱のムスカリン性受容体

に選択的に結合することから,全身性副作用の発現

リスクが少ないことが示唆された.このイミダフェ

ナシンの膀胱選択性の機序として,尿中に排泄され

たイミダフェナシンが直接膀胱に作用することが考

えられた.

生体内における薬物受容体結合動態の解析は,

薬物の薬物動態と薬効の発現のための統合的指標と

して,創薬・育薬だけでなく,医薬品の適正使用を

実施するうえで極めて有用な情報を提供すると考え

られる.実際に,薬物受容体結合実験データを主

軸に据えることで,薬物の投与量濃度作用の関係

を考慮する根拠を明白とし,薬物動態と受容体結合

並びに薬理効果の関係を速度論的に解析することが

可能となる.

おわりに―若手研究者への期待

薬物濃度と薬効推移の解析は,これまでに 40 年

以上かけて基礎的な用量作用関係からより機構論

的な手法へと進歩してきた.この分野は,薬物動態

と薬物作用を統合して考え,その結果を応用してい

く分野であるので,薬理学や薬物動態学を中心とし

た多くの研究分野にまたがった視点で考え実践して

いくことが必要である.PK/PD 解析では,薬理作

用の指標として測定可能なバイオマーカーが必要と

なるが,これを選定するのに,生理学,薬理学,生

化学,対象となる疾病などの見識が欠かせない.そ

の上で薬物動態とあわせた解析モデルを構築し,応

用していく柔軟な思考力が求められる.疾病や薬に

関する専門知識を統合して活用する非常にチャレン

ジングな研究分野である.国際的な視野で見たと

き,日本では少し立ち遅れている感は否めない.米

国では Food and Drug Administration (FDA)が既

に PK/PD 解析を医薬品開発の段階から積極的に取

り入れるように指導し,実際に企業からの相談を受

け入れている.しかし,日本が全く取り残されてし

まっている訳でもなく,PK/PD 解析の理論構築の

分野では,古い論文にも日本人が先駆的研究を残し

ている.今日,PK/PD 解析は,より機構論的なモ

デル解析を採用する方向に向かっている.最新の研

究論文を手に取れば,より具体的な解析手法,実際

の応用などをもっとよく知ることができる.

薬物の体内動態と薬理作用を統合して応用するこ

とができるのは,たくさんの生命科学の分野の中

で,薬学,特に薬理学と薬物動態学である.PK/

PD 解析の研究分野は,基礎科学としての魅力と,

臨床応用を目的とした実学としての魅力,さらには

産業的な利益も視野に入っている.これらは,すべ

て国家の根幹である国民の健康と福祉を担うもので

ある.この分野を将来へと継承し,発展させ,際立

たせていくのは薬学研究者である.

薬学部では,平成 18 年より薬剤師養成は 6 年制

教育制度となり,創薬・創剤研究及び適正な薬物療

法において,「薬効を適切にひきだし,副作用を最

小に抑える」ための科学的根拠を明らかにすること

が,6 年制薬学教育における医療薬学の大きな使命

の 1 つとなる.そのためには,薬物作用を統合的に

理解し,医薬品の適正使用と優れた新薬の開発に貢

献 で き る 薬 科 学 者 ( Integrated Pharmaceutical

Scientist)の育成が重要な課題になるものと考える.

謝辞 本研究にご協力頂いた木村良平元教授

(静岡県立大学名誉教授),加藤善久教授(徳島文理

大学香川薬学部),出口芳春教授(帝京大学薬学

部),賀川義之教授(静岡県立大学薬学部),尾上誠

良教授(静岡県立大学薬学部),内田信也准教授

(静岡県立大学薬学部),黄倉 崇准教授(帝京大学

Page 13: Integration of Pharmacokinetics and Pharmacodynamics ......139 Fig. 1. Schematic Representation of Drug-receptor Binding in Relation to Pharmacokinetics and Pharmacodynamics Vol. 135

149149YAKUGAKU ZASSHIVol. 135 No. 1 (2015)

薬学部),伊藤由彦講師(静岡県立大学薬学部),藤

野(隠岐)知美元助教(静岡県立大学薬学部),瀧

優子元助教(静岡県立大学薬学部)に厚くお礼申し

上げます.また,排尿障害治療薬の研究でご指導頂

いた河邉香月先生(元東京大学医学部教授,東京逓

信病院名誉院長),竹中登一先生((公財)ヒューマ

ンサイエンス振興財団会長,元山之内製薬社長,前

アステラス製薬会長)及び塚田秀夫博士(浜松ホト

ニクス株PET センター長)にお礼申し上げます.

ご助力頂いた静岡県立大学薬学部薬物動態学分野の

共同研究者に感謝いたします.

利益相反 開示すべき利益相反はない.

REFERENCES

1) Yamada S., Deguchi Y., Kimura R.,

Farumashia, 31, 13811386 (1995).

2) Urayama A., Yamada S., ``Molecular Phar-

macokinetics,'' ed. by Sugiyama Y., Kusuhara

H., NANZANDO Co., Ltd., Tokyo, 2008,

pp. 270287.

3) Yoshida A., Fujino T., Maruyama S., Ito Y.,

Taki Y., Yamada S., J. Pharmacol. Sci., 112,

142150 (2010).

4) Beauchamp H. T., Chang R. S., Siegl P. K.,

Gibson R. E., J. Pharmacol. Exp. Ther., 272,

612618 (1995).

5) Uchida S., Yamada S., Nagai K., Deguchi Y.,

Kimura R., Life Sci., 61, 20832090 (1997).

6) Yamada S., Nakajima M., Kusaka T., Kimura

R., Life Sci., 70, 19992011 (2002).

7) Nozawa Y., Miyake H., Yamada S., Kimura

R., Pharm. Res., 15, 911917 (1998).

8) Yamada S., Takeuchi C., Oyunzul L., Ito Y.,

Eur. Urol., 55, 482490 (2009).

9) Yamada S., Ohkura T., Deguchi Y., Kimura

R., J. Pharmacol. Exp. Ther., 289, 15751583

(1999).

10) Yamada S., Okura T., Kimura R., J. Phar-

macol. Exp. Ther., 296, 160167 (2001).

11) Ohkura T., Yamada S., Deguchi Y., Kimura

R., Matsushima H., Higuchi S., Inagaki O.,

Honda K., Takenaka T., Life Sci., 63, 2147

2155 (1998).

12) Urayama A., Yamada S., Hirano K., Deguchi

Y., Kimura R., Life Sci., 70, 647657 (2001).

13) Oki T., Toma-Okura A., Yamada S., J. Phar-

macol. Exp. Ther., 316, 11371145 (2006).

14) Oki T., Sato S., Miyata K., Yamada S., Br. J.

Pharmacol., 145, 219227 (2005)

15) Maruyama S., Tsukada H., Nishiyama S.,

Kakiuchi T., Fukumoto D., Oku N., Yamada

S., J. Pharmacol. Exp. Ther., 325, 774781

(2008).

16) Yamada S., Seki M., Ogoda M., Fukata A.,

Nakamura M., Ito Y., J. Pharmacol. Exp.

Ther., 336, 365371 (2011).

17) Yamada S., Yoshida A., Ito Y., Nippon

Yakurigaku Zasshi, 134, 276280 (2009).

18) Yamada S., Yamamura H. I., Roeske W. R.,

J. Pharmacol. Exp. Ther., 215, 176185

(1980).

19) Yamada S., Isogai M., Kagawa Y., Takayana-

gi N., Hayashi E., Tsuji K., Kosuge T., Mol.

Pharmacol., 28, 120127 (1985).

20) ``Neurotransmitter Receptor Binding,'' 2nd

ed., ed. by Yamamura H. I., Enna S. J., Ku-

har M. J., Raven Press, New York, 1985.

21) Yamamura H. I., Kuhar M. J., Snyder S. H.,

Brain Res., 80, 170176 (1974).

22) Maruyama S., Hasuike N., Suzuki K., Yama-

da S., Naunyn Schmiedeberg Arch. Phar-

macol., 377, 463471 (2008).

23) Miller T. R., Milicic I., Bauch J., Du J., Surb-

er B., Browman K. E., Marsh K., Cowart M.,

Brioni J. D., Esbenshade T. A., Br. J. Phar-

macol., 157, 139149 (2009).

24) Merchenthaler I., Lane M. V., Numan S., Del-

lovade T. L., J. Comp. Neurol., 473, 270291

(2004).

25) Ongali B., Hellal F., Rodi D., Plotkine M.,

Marchand-Verrecchia C., Pruneau D., Cou-

ture R., J. Neurotrauma, 23, 696707 (2006).

26) Knol R. J. J., De Bruin K., Van Eck-Smit B.

L. F., Pimlott S., Wyper D. J., Booij J., Syn-

apse, 63, 557564 (2009).

27) Heiss W.-D., Herholz K., J. Nucl Med., 47,

302312 (2006).

28) Bohnen N. I., Frey K. A., Mol. Imaging Biol.,

9, 243257 (2007).

29) Venneri A., Magn. Reson. Imaging, 25, 953

968 (2007).

30) Ogawa M., Tsukada H., Hatano K., Ouchi

Y., Saji H., Magata Y., Biol. Pharm. Bull.,

32, 337340 (2009).

Page 14: Integration of Pharmacokinetics and Pharmacodynamics ......139 Fig. 1. Schematic Representation of Drug-receptor Binding in Relation to Pharmacokinetics and Pharmacodynamics Vol. 135

150150 YAKUGAKU ZASSHI Vol. 135 No. 1 (2015)

31) Talbot P. S., Laruelle M., Eur. Neuropsy-

chopharmacol., 12, 503511 (2002).

32) Borg J., Behav. Brain Res., 195, 103111

(2008).

33) Doorduin J., de Vries E. F., Dierckx R. A.,

Klein H. C., Curr. Pharm. Des., 14, 3297

3315 (2008).

34) Horti A. G, Van Laere K., Curr. Pharm. Des.,

14, 33633383 (2008).

35) Henriksen G., Willoch F., Brain, 131, 1171

1196 (2008).

36) Levashova Z., Backer M. V., Homg G., Felsh-

er D., Backer J. M., Blankenberg F. G.,

Bioconjug. Chem., 20, 742749 (2009).

37) Davila G. W., Daugherty C. A., Sanders S.

W., The transdermal oxybutynin study group,

J. Urol., 166, 140145 (2001).

38) Hughes K. M., Lang J. C., Lazare R., Gordon

D., Stanton S. L., Malone-Lee J., Geraint M.,

Xenobiotica, 22, 859869 (1992).

39) Ikeda K., Kobayashi S., Suzuki M., Miyata

K., Takeuchi M., Yamada T., Honda K.,

Naunyn Schmiedebergs Arch. Pharmacol.,

366, 97103 (2002).

40) Ohtake A., Ukai M., Hatanaka T., Kobayashi

S., Ikeda K., Sato S., Miyata K., Sasamata

M., Eur. J. Pharmacol., 492, 243250 (2004).

41) Oki T., Maruyama S., Takagi Y., Yamamura

H. I., Yamada S., Eur. J. Pharmacol., 529,

157163 (2006).

42) Nilvebrant L., Andersson K. E., Gillberg P.

G., Stahl M., Sparf B., Eur. J. Pharmacol.,

327, 195207 (1997).

43) P ¹ahlman I., d'Argy R., Nilvebrant L., Arznei-

mittelforschung, 51, 125133 (2001).

44) Riotte J., Mutschler E., Arzneimittelfor-

schung, 37, 300302 (1987).

45) Wada Y., Yoshida M., Kitani K., Kikukawa

H., Ichinose A., Takahashi W., Gotoh S., Ina-

dome A., Machida J., Ueda S., Arch. Int.

Pharmacodyn. Ther., 330, 7689 (1995).

46) Haruno A., Yamasaki Y., Miyoshi K., Miyake

H., Tsuchiya K., Kosaka M., Nagai M., Iriki

M., Nippon Yakurigaku Zasshi, 94, 145150

(1989).

47) Uchida S., Kurosawa S., Fujino-Oki T., Kato

Y., Nanri M., Yoshida K., Yamada S., Life

Sci., 80, 24542460 (2007).

48) Maruyama S., Oki T., Otsuka A., Shinbo H.,

Ozono S., Kageyama S., Mikami Y., Araki I.,

Takeda M., Masuyama K., Yamada S., J.

Urol., 175, 365369 (2006).

49) Yamada S., Maruyama S., Takagi Y., Uchida

S., Oki T., Life Sci., 80, 127132 (2006).

50) Ito Y., Oyunzul L., Seki M., Fujino (Oki) T.,

Matsui M., Yamada S., Br. J. Pharmacol,

156, 11471153 (2009).

51) Kobayashi F., Yageta Y., Yamazaki T.,

Wakabayashi E., Inoue M., Segawa M., Ma-

tsuzawa S., Arzneimittelforschung, 57, 147

154 (2007).

52) Kobayashi F., Yageta Y., Segawa M., Ma-

tsuzawa S., Arzneimittelforschung, 57, 92100

(2007).

53) Masuda Y., Kanayama N., Manita S., Ohmori

S., Ooie T., Biomed. Chromatogr., 21, 940

948 (2007).

54) Yoshida A., Fuchihata Y., Kuraoka S., Osano

A., Otsuka A., Ozono S., Takeda M.,

Masuyama K., Araki I., Yamada S., Urology,

81, 920 ele5 (2013).

55) Andersson K. E., Lancet Neurol., 3, 4653

(2004).

56) Yoshida A., Maruyama S., Fukumoto D.,

Tsukada H., Ito Y., Yamada S., Life Sci., 87,

175180 (2010)

57) Homma Y., Yamaguchi O., Int. J. Urol., 15,

986991 (2008).

58) Homma Y., Yamaguchi O., Int. J. Urol., 16,

499506 (2009).

59) Ancelin M. L., Artero S., Portet F., Dupuy A.

M., Touchon J., Ritchie K., BMJ, 332, 455

459 (2006).

60) Kay G., Crook T., Rekeda L., Lima R., Ebin-

ger U., Arguinzoniz M., Steel M., Eur. Urol.,

50, 317326 (2006).

61) Yamamoto S., Maruyama S., Ito Y.,

Kawamata M., Nishiyama S., Ohba H.,

Yamada S., Tsukada H., Neuroimage, 58, 19

(2011).

62) Kay G. G., Granville L. J., Clin. Ther., 27,

127138 (2005).

63) Scheife R., Takeda M., Clin. Ther., 27, 144

153 (2005).

64) Skeijanec A., Clin. Pharmacokinet., 45, 325

350 (2006).