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ISH法を用いたEBV感染細胞同定の試み 留萌市立病院 病理診断科 仙北雅代 大西啓之 佐々木大輔 池田英之

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ISH法を用いたEBV感染細胞同定の試み

留萌市立病院 病理診断科

仙北雅代 大西啓之 佐々木大輔 池田英之

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目的 留萌市立病院 病理診断科では、これまでに組織免疫染色を樹立、さらに細胞診免疫染色を試み、樹立してきた。

このような新たな検査を、院内で行うことで、周辺技術の進歩と、様々な診断に応用してきた(次スライドにまとめあり)。

今回、新たにEBER-ISH法を、院内で樹立することにより、病理診断領域の拡大を目指した。

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2年間の細胞診免疫染色のまとめ

標本番号 材料名 免疫染色抗体名 診断

10C0250 腹水 CK7、CA125(+)CK20、CDX-2、Synaptophysin(-)D2-40(判定保留)

細胞:腹腔原発漿液性腺癌 組織:胸壁腫瘍・腸骨より同様所見

10C0369 心嚢液 CK7、HMWK、CA125(+)、CK20、(-) Ber-EP4、Calretinin(判定保留)

細胞:腹腔原発漿液性腺癌 組織:対比組織診なし

10C0764 嚢胞穿刺液 CK7(+)、CK20(-)、CEA(判定保留) ※膵癌術後

細胞:腺癌転移(膵癌転移疑い) 組織:大学にて肝転移(膵癌転移)

11C0074 腹水 CEA、CK20(+)、CK7、Calretinin(-) 細胞:大腸由来腺癌 組織:盲腸生検Group5、muc、tub1

11C0314 胸水 (セルブロック)

AE1/AE3、Vimentin、CD68(+)、CK7(+/-) MIB-I(10%+)、PE10、TTF-1、Calretinin、Ber-EP4, LCA、CD3、CD20、CD79a(-)

細胞:大細胞癌、滑膜肉腫2相型、疑い 組織:対比組織診なし

11C1765 リンパ節 (セルブロック)

CK7(+)、CK20(-) HMWK、TTF-1、PE10、ER、PgR(判定保留)

細胞:腺癌転移(乳癌・甲状腺癌・肺癌) 組織:非小細胞癌転移(肺癌原発)

11C2230 腸腰筋 CD34(+)Vimentin、MIB-I(判定保留) ※組織診免疫染色の結果より

細胞:CD34(+)非上皮性腫瘍 組織:C-kit(-)CD34(+)GIST、SFT疑い ※大学で腸腰筋・S状結腸:高分化脂肪肉腫

12C0791 胸水 CA125(+)、PE10、Calretinin(-) TTF-1(判定保留)

細胞:胸腔原発腺癌 組織:対比組織診なし

12C0877 乳腺 CEA(+) ※血清CEA高値の結果より

細胞:乳頭腺管癌・充実腺管癌 組織:充実腺管癌

12C0910 胸水 (セルブロック)

CEA、CK7、TTF-1(+)HMWK(-/+)PE10、CK20、Calretinin、Synaptophysin、CD56、CGA(-)

細胞:肺原発低分化腺癌 組織:対比組織診なし

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今回の実験に用いた方法

1. PNAプローブ*を用いたEBER (EBV-encoded small RNA) in situ hybridization (EBER-ISH)法に、検出感度増感法(CSAⅡ法)を追加して施行(DAKO)。発色は通常のDAB法を用いた。

2. 過去にEBウィルス関連疾患を疑い外注してEBER-ISH陽性であったものを対照として比較した。

3. 実験に用いる一次抗体の濃度、CSAII法の増感度を検討した。

*PNAプローブは、ペプチド骨格に核酸塩基を持つ、ペプチド核酸(PNA)による合成プローブ。DNA, RNAと塩基配列特異的に2-3本鎖を形成し、PNA/RNAは(従来ISH用に用いられて来た)DNA/RNAよりも安定。

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EBER in situ hybridization(ISH)法 反応原理

FITC標識PNAプローブをhybridize

EBER

EBER PNAプローブ/FITC

ブロッキング試薬1

ブロッキング試薬2

一次抗体(抗FITC抗体)

ペルオキシダーゼ標識二次抗体

増幅試薬 (FITC標識タイラマイド)

ペルオキシダーゼ標識抗FITC抗体

DAB

内因性ペルオキシダーゼ゙のブロッキング

非特異的タンパクのブロッキング

一次抗体の反応

二次抗体の反応

ペルオキシダーゼ標識抗FITC抗体の反応

増幅試薬(FITC標識タイラマイド)の反応

発色基質溶液(DAB)の反応

1日目

2日目

Hybridization

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院外、院内の検査の流れ

外注の場合

各科からの依頼

標本作製

診断

外注先へ標本ブロック郵送

EBウィルス検出染色

外注先からの返送

診断・報告

院内の場合

各科からの依頼

標本作製

診断

EBウィルス検出染色

診断・報告

<4-6日間> <2日間>

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クリーンベンチで実験中の発表者

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症例(11B888)

82歳、男性

臨床診断:リンパ腫疑い

現症:微熱の持続。CTにて、縦隔および頚部に多発リンパ節腫大を認める。

既往歴:胃癌(2007年)

リンパ腫疑いにて右頚部リンパ節を生検。

[その他検討した症例は、盲腸のB細胞性リンパ腫(11B979)]

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リンパ節 (HEx100, 200), H-RS細胞++

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診断 Hodgkinリンパ腫 所見:HEで、大型H-RS細胞を散見する。H-RS細胞はCD30陽性、CD20-/+ JH遺伝子再構成陰性 血清EBV抗体高値、EBER-ISHを検討した。

検査項目 結果値 基準値

EB-抗VCA-IgM(EIA) 0.0(-) 0 - 0.5

EB-抗VCA-IgA(FA) <10.0 0 - 10

EB-抗EBNA(FA) 20.0 0 - 10

EB-抗VCA-IgG(FA) 80.0 0 - 10

可溶性IL-2R 6370 145 - 519

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〔結果1〕 EBER-ISH

x100

外注

院内

CD30 x100

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〔結果2〕 EBER-ISH

x200

外注

院内

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結果と考察 1. 院内EBER-ISH法を施行、リンパ腫疑いの症例においてH-RS細胞を同定した。 2. CSAII法は、極めて高感度であった。暫定的に一次抗体濃度を決定した。 一次抗体濃度:1000倍希釈 増感度:1000/25=40倍以上 3. 非特異的染色(back)が強く、条件決めの追加実験が必要と考えた。

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考察2 EBウィルス(Epstein-Bar virus)とは?

1.ヒトヘルペスウィルス科に属する2本鎖DNAを持つウィルス 2.初感染は、通常乳幼児期で、不顕性感染が多い。成人日本人の95%以上が既感染者 3.関連疾患として伝染性単核球症、リンパ腫、鼻咽頭癌、胃癌など、多岐にわたる(次のスライドにまとめあり)

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EBウィルス関連疾患

EBウィルス関連疾患

急性感染症 伝染性単核球症、急性肝炎、リンパ節炎

慢性~重症感染症 慢性活動性EBV感染症、血球貪食症候群(EBV-HLH)、 NKリンパ増殖症

免疫不全関連疾患 ダンカン病(XLP)、移植後リンパ増殖症、Chediak・東症候群(accelerated phase)

悪性腫瘍 バーキットリンパ腫、鼻性NK/Tリンパ腫、血管免疫芽球型T細胞リンパ腫(AILT)、ホジキンリンパ腫 膿胸関連リンパ腫(PAL)、原発性滲出性リンパ腫(PEL)、上咽頭癌、胸腺癌、胃癌、肝細胞癌

血液疾患 顆粒リンパ球増多症、特発性血症板減少性紫斑病

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その他 1. 2011年度のEBER-ISH検査数:4件 (VCA-IgG高値症例は対象となるか?) 2.保険収載はされていない。一回あたりのcostは5500円、G-labでは1検体/1万円

参考文献

1.病理と臨床、臨時増刊号vol29, p21, p217, p222. 2.http://pathol.umin.ac.jp/fukayama/EBVaGC.htm

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謝辞 今回の発表におきまして、症例をご提供い ただいた内科、外科の皆様に感謝いたしま す。

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