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Japan Oil, Gas and Metals National Corporation 日本国内 油・ガス田 特集 トピックス オピニオン 福島敦子氏 - エネルギーの大切さを子どもたちが体感できる場の提供を データファイル 石油開発における新興勢力国の台頭 Q&A 「オイルサンド」って何? J. LETTER JOGMEC からのお知らせ Interview バクテリアを生かした技術で環境修復 「バイオリーチング」の研究開始~ 金属資源技術研究所 バクテリアを使って効率よく金属を溶かし出す バクテリアが地球を救う ! ~ 旧松尾鉱山新中和処理施設 バクテリアを活用した有害な坑廃水の中和 小さな怪物! バクテリア 金属資源

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J a p a n O i l , G a s a n d M e t a l s N a t i o n a l C o r p o r a t i o n

日本国内の油・ガス田

特 集

トピックス

オピニオン ■ 福島敦子氏-エネルギーの大切さを子どもたちが体感できる場の提供をデータファイル ■ 石油開発における新興勢力国の台頭

Q&A ■ 「オイルサンド」って何?

J. LETTER ■ JOGMECからのお知らせ

Interview -バクテリアを生かした技術で環境修復

「バイオリーチング」の研究開始~金属資源技術研究所バクテリアを使って効率よく金属を溶かし出す

バクテリアが地球を救う ! ~旧松尾鉱山新中和処理施設バクテリアを活用した有害な坑廃水の中和

小さな怪物!バクテリアと金属資源

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2 JOGMEC NEWS JOGMEC NEWS 32 JOGMEC NEWS

バクテリアの秘めた力

特集「小さな怪物! バクテリアと金属資源」特集「小さな怪物! バクテリアと金属資源」2 JOGMEC NEWS

特 集

小さな怪物!バクテリアと金属資源

「バクテリア」と「金属」。ほとんど縁が

ないと思われているこの二つの物質と生

物が、意外なところで結びついています。

金属のもとになる地金を生産したり、鉱

石を掘り出した後に出る有毒の坑廃水を

中和させたりするのに、バクテリア(細

菌)が活躍しています。なぜバクテリア

と金属なのか、その不思議さを専門家に

お聞きしました。また、バクテリアが活

躍する二つの現場をご紹介します。

地球環境を変えた微生物「バクテリア」などに代表される微

生物は、地球上に出現してから35

億から40億年が経とうとしていま

す。その間に微生物は、地球環境を

大きく変えてきました。

太陽の光を使って光合成する微生

物は、地球を酸素の富んだ状態にし、

高等生物が生息できる環境に変えま

した。その一方で、酸素に弱い微生

物は死滅し、またある微生物は酸素

を回避して生き延びるなど、微生物

は世の中を変えたり、世の中の変化

に合わせたりしながら、生き延びて

きたのです。

現代でも、微生物は地球上の様々

な環境下で生息しています。極地の

氷の中、火山や温泉などの高温環境、

数百気圧もの圧力がかかる深海底、

塩田など塩濃度の高い水の中、胃酸

と同じくらい酸性の強い水の中……。

これらの場所で、私たちの想像を超

えた働きをしている微生物も、きっ

といるはずです。

ところで地球ができた時、大気に

は酸素はなく、無機物ばかりのいわ

ば現在の火星のような状態でした。

無機物の世界で微生物が生きるため

には、無機物を利用して成長しなけ

ればなりません。その無機物の一つ

が「金属」でした。

無機物である金属のエネルギーを

取り込みながら作用する微生物。そ

の力を利用した技術が、資源の分野

で応用されています。

金属とかかわるバクテリアバクテリアの様々な力を生かそう

と、近年関心が高まっているのが、

バクテリアを利用して汚染された環

境を修復する技術です。

汚染場所の生態系が本来もってい

る浄化能力を人為的に強化して、汚

染物質を分解していきます。多くの

エネルギー投入を必要とせず、二次

汚染の心配もないため、地球に優し

い環境修復技術として注目されてい

ます。強酸性の坑廃水中に住むバク

テリアの力を利用し、河川浄化に取

り組んでいる旧松尾鉱山新中和処理

の取り組みは、まさにこの一例です。

そのほか、最近の例では、タンカー

の座礁により海に流れ出た重油の分

解や、地下水や工場排水中にある有

機物の分解などが挙げられます。

金属資源技術研究所で始まった金

属を生産するための「バイオリーチ

ング(bio-leaching)」技術なども、

実は松尾の中和処理と同じ種類のバ

クテリアを使い、同じ作用をさせる

ことで、資源開発に役立てているの

です。バイオリーチングの特徴も、

多くのエネルギー投入を必要としな

い環境保護の点にあります。

このほか、重金属で汚染された

土壌を浄化したり、スクラップの中

に含まれる金属を回収するなど、バ

クテリアは幅広い分野で金属とかか

わっているのです。

バクテリアを生かした技術で環境修復

井上 千弘 東北大学大学院環境科学研究科助教授いのうえ・ちひろ 1959年生まれ。農学博士。専門分野は、資源開発工学、環境保全、応用微生物学、応用生物化学。研究課題は、「微生物による環境修復ならびに湿式製錬の研究」「地下水、土壌汚染の修復」「独立栄養微生物の反応機構の解明およびその利用」。

「微生物学」や「環境保全」などがご専門の東北大学大

学院・井上千弘助教授に、金属資源と、バクテリアを含

む微生物との関係についてお聞きしました。金属と微生

物を結び付けているキーワードは、「環境修復」でした。

(←写真)バイオリーチングの研究で使われている鉄酸化バクテリア。強酸性の環境下で生息する。【写真提供:井上 千弘助教授】

Feature

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4 JOGMEC NEWS 5JOGMEC NEWS

金属資源技術研究所

有機溶媒を利用して溶液中の金属イオ

ンを濃縮した後、電気分解によって地

金(品位99.99%)をつくる製錬方

法です。たとえば酸化銅鉱石中の銅は

硫酸液によって簡単に溶け出します

が、黄銅鉱といった硫化銅鉱石の場合

は硫酸液だけでは簡単に溶けません。

ところが、鉄酸化バクテリアという鉄

イオンを酸化する微生物を鉱石表面に

大量に繁殖させると、鉱石中の銅が溶

け出てくるのです。バクテリアの生命

活動は鉄イオンによって維持されるの

ですが、結果として、鉱石中の銅を溶

かし出してくれることとなるのです。

バイオリーチング技術が発展すれ

ば、湿式製錬を用いた鉱山開発が加速

されるものと考えられています。

技術の確立で鉱山開発を支援金属資源技術研究所では、「バクテ

リアを増殖させるための環境の把握」

や「リーチングを安定的に実施する

ための最適条件の把握」、「有用なバク

テリアの抽出」など、基礎データの

収集に取り組むとともに、将来的に

はバイオリーチングによる湿式製錬

プロセスのモデルを構築して実際の

鉱山開発へ役立てていく予定です。

特集「小さな怪物! バクテリアと金属資源」特集「小さな怪物! バクテリアと金属資源」

「バイオリーチング」の研究開始~金属資源技術研究所

バクテリアを使って効率よく 金属を溶かし出す

小さな怪物! バクテリアと金属資源特 集

探鉱意欲を高める湿式製錬金属資源技術研究所副所長 木

き だ

田 祥よしはる

治鉱床にはいろいろなタイプがあり、鉱石・品位は多種多様です。乾式製錬では経済的に

見合わない鉱床も地下にはたくさん眠っています。そのような鉱床の開発には、バイオリー

チングを活用した湿式製錬の適用が検討されることとなります。

世界で1年間に生産されている銅地金は約1,600万トン、そのおよそ2 割は湿式製錬

によるものです。そしてこの割合は、今後、さらに増していくものと考えられています。

鉱床の低品位化、開発コストの軽減化などの理由で湿式製錬による地金生産量が増加して

いるのです。

世界的に地下資源の需要が高まっている現在、湿式製錬技術の進歩は、低品位鉱床の鉱

山開発への貢献はもちろんのこと、低品位鉱床に対する探鉱意欲を高めていくことになる

のではないかと思います。

■湿式製錬のプロセス

秋田県小坂町にある「金属資源技術研究所」で、バクテリアを使った 「バイオリーチング

(bio-leaching)」による湿式製錬技術の研究が始まりました。バクテリアを利用した鉱石

からの金属回収技術は、低品位鉱床の開発を促進することにもなり、今後の研究成果が期

待されるところです。

バクテリアで反応速度を速める鉱石から金属を取り出す製錬方法

には、高温の炉の中で鉱石を熔と

かして

金属を得る「乾式製錬」と、酸やアル

カリなどの薬品を用いて鉱石を溶かす

「湿式製錬」の二つがあります。

高い採算性のもとで高品位鉱床を中

心に採用されていた乾式製錬に対し、

湿式製錬は乾式製錬法では採算がとれ

ない鉱床に対して有効なものと考えら

れています。

世界的に金属資源の需要が高まって

いる今、低品位鉱床に対応できる製錬

技術として湿式製錬に関心が集まって

います。その湿式製錬のプロセスの最

初の段階「鉱石から金属を溶かし出す」

に、微生物を利用したものが「バイオ

リーチング」です。

湿式製錬を簡単にいえば、鉱石に

硫酸液を散布して鉱石中の金属をイオ

ンとして溶かし出し(リーチングし)、

小坂町とその周辺は、かつては、金・銀・銅・鉛・亜鉛など多種類の金属に富んだ黒鉱鉱床の鉱山が数多く存在していました。現在はすべて閉山してしまいましたが、製錬所は100年にわたり今も稼動しつづけています。1991 年、この小坂町に、国・秋田県・小坂町の構想のもと、金属資源技術の開発と鉱業関連技術者の研修を目的とした金属鉱業研修技術センターが設置されました。1995年、同センターの敷地内に金属鉱業事業団技術研究所(現JOGMEC金属資源技術研究所)が建設され、生産技術、鉱害防止、資源探査などの調査研究が行われています。

〒017-0202秋田県鹿角郡小坂町小坂鉱山字古館9-3 TEL. 0186-29-3829

バイオリーチング〉 銅鉱物

溶媒抽出〉

電解採取〉

鉄酸化バクテリアが繁殖する鉱石

電気銅(地金)

「ミニカラム」と呼ばれる高さ1メートル、直径10センチほどの筒状

の試験管に、だんご状にしたサンプル鉱石(丸写真)を入れ、バクテ

リアを含んだ硫酸液を定期的に散布。どのような条件で効率よく溶け

出すかを調べる。

▲カラム浸出試験装置

八戸市

岩手県秋田県

盛岡市北上川

十和田湖

大館市

一関市一関市

秋田市

十和田湖金属資源技術研究所 小坂町小坂町

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6 JOGMEC NEWS 7JOGMEC NEWS 7

北上川を汚染した坑廃水かつて有数の鉱山国であった日本

には、現在、金属などの休廃止鉱山

がおよそ7,000近くあるといわれて

おり、そのうち鉱害防止対策が必要

とされる鉱山が約450存在していま

す。JOGMECでは 1973年(当時

金属鉱業事業団)から、休廃止鉱山

を対象にした地方自治体に対する技

術支援など鉱害防止事業に取り組ん

できました。

鉱害防止対策は大きく分け、坑廃

水を抑制する発生源対策と、発生源

対策でも流れ出てしまう坑廃水を処

理する坑廃水処理があります。坑廃

水処理では酸性排水を中和し重金属

などを除去する中和沈殿処理方式が

主流で、その代表例が、岩手県八幡

平市にある旧松尾鉱山です。

松尾鉱山はかつて、多量の硫化

鉄鉱を伴う東洋一の硫黄鉱山で、

1972年の閉山後も、多量の鉄やヒ

素を含んだ強酸性の坑廃水が流れ出

て、北上川などの河川を汚染し、社

会問題になりました。

中和処理で甦よみがえ

った清流酸性の坑廃水を処理する場合、中

和剤として一般的に消石灰が用いら

れています。しかし、消石灰の価格

が高いため、大量の坑廃水処理には

経済的に困難な面がありました。そ

の他の中和剤として、比較的安価な

炭酸カルシウムがありますが、坑廃

水中の第一鉄イオン(Fe2+)に対す

る反応が鈍く、使うことができませ

んでした。

炭酸カルシウムを使うには、坑廃

水中の第一鉄イオンを炭酸カルシウ

ムと反応する第二鉄イオン(Fe3+)

に変える(酸化させる)必要があり

ます。その役割を担うのが、坑内水

特集「小さな怪物! バクテリアと金属資源」特集「小さな怪物! バクテリアと金属資源」

「バイオリーチング」で使われている鉄酸化バ

クテリアは、鉱山から出る有害な坑廃水に対す

る中和処理にも生かされています。岩手県の旧

松尾鉱山新中和処理施設では、有害な坑廃水の

中和処理にバクテリアを活用することで、処理

効率を高め、地域を流れる河川の環境保護に貢

献しています。

小さな怪物! バクテリアと金属資源特 集

中に生息する鉄酸化バクテリアです。

旧松尾鉱山新中和処理施設では、

坑内水中の鉄酸化バクテリアを増殖

し、連続的に鉄イオンを酸化させま

す。ここに炭酸カルシウムを添加し、

空気を送り込みながら攪かくはん

拌すると、

中和処理が効率よく行われます。結

果、多量の鉄の沈殿物ときれいな水

に分けられ、そのうち、水だけを北

上川の支流である赤川に放流してい

るのです。

新中和処理施設の維持管理は年間約

5億円。仮に中和処理が停止したとす

ると、北上川流域の農業用水、工業用

水、生活用水などへの被害は約500

億円にも及ぶと予測されています。

旧松尾鉱山から流出する坑廃水は

pH2と強酸性の状態ですが、新中

和処理施設で中和処理され、赤川に

放流される時点で pH4 程度になり

ます。鉱山活動がなかった当時の水

質が確保できるので、北上川もA類

型*1の環境基準をクリアしています。

こうした新中和処理施設によって、

かつて、茶色く濁り、魚も住めない「死

んだ川」とまで言われた北上川の水

質は劇的に改善され、清流を取り戻

すことができたのです。

バクテリアが地球を救う !~旧松尾鉱山新中和処理施設

バクテリアを活用した有害な坑廃水の中和

見えないバクテリアが環境を守る松尾管理事務所所長 上

うえ だ

田 英ひでゆき

之北上川の清流化を実現したことで、身近に環境保護を学ぶことのできる場所として、こ

こ新中和処理施設には、児童・生徒さんなど、年間で1,000人くらいの見学者が訪れます。

透明で一見きれいな坑廃水は、中和処理の過程で一時的に茶色く濁った水になってしま

います。これを見た小学生などが、かえって水を汚しているんじゃないかと疑問をぶつけて

きます。これは、バクテリアが安定して生息するため、その棲み家として、中和処理によっ

て発生した鉄の殿物を利用しているからです。バクテリアは目に見えないので、理解しづら

い話かもしれませんが、その活動は、地域の環境を守っていくため、新中和処理施設の大事

な仕組みの一つなのです。

循環

恒久排水路トンネル

酸化槽 バクテリア回収槽

固液分離槽

pH4の水

放流

赤川pH2程度の強酸性水

炭酸カルシウム

貯泥ダム固液分離槽

中和槽バクテリア回収槽

酸化槽原水受槽

中和槽

旧松尾鉱山から流出する坑廃水を新中和処理施設に導水するための「恒久排水路トンネル」「酸化槽」、坑廃水を中和する「中和槽」、中和殿物と上澄水を分離するための「固液分離槽」、中和殿物を堆積するための「貯泥ダム」などからなります。岩手県が通商産業省(当時)の補助を受けて1981年に完成。JOGMECが県の委託を受け24時間・365日体制で運営管理しています。

〒028-7303 岩手県八幡平市柏台1-3-1   TEL. 0195-78-3156

旧松尾鉱山新中和処理施設

■坑廃水処理の過程

*1 A 類型=環境基本法第16条に基づき定められた生活環境の保全に関する環境基準の類型。河川では、水素イオン濃度(pH)や溶存酸素量などの値により、AAから Eまでの類型に分類されている。A類型は通常の浄水操作をおこなえば良い水道2級、貧腐水性水域の水産生物が生息する水産1級にあたる。

青森県

岩手県秋田県

山形県 宮城県 北上町追波湾

盛岡市四十四田ダダムダムダ

石巻市

太平洋

北上川

一関市一関市一関市一関市一関市一関市一関市一関市一関市一関市一関市一関市一関市一関市一関市一関市

松川

旧松尾鉱山

赤川

勇払

申川

由利原余目

鮎川八橋

東柏崎片貝南長岡

岩船沖

中条東新潟

吉井

茂原合同千葉

磐城沖

勇払

申川

由利原余目

鮎川八橋

東柏崎片貝南長岡

岩船沖

中条東新潟

吉井

茂原合同千葉

磐城沖

北海道

青森県

秋田県

岩手県

宮城県

福島県新潟県

山形県

南阿賀南阿賀

8 JOGMEC NEWS 9JOGMEC NEWS 9トピックス「日本国内の油・ガス田」8 トピックス「日本国内の油・ガス田」

Topics 日本国内の油・ガス田

■国内主要油・ガス田の生産量 (2004年度)

■操業中の主な石油・天然ガス田

日本の貴重なエネルギー資源 ~生産量も順調に推移~

■国内原油・天然ガス生産量の推移(1980~2004年度)

(2005年 7月末現在)

勇払油・ガス田(北海道苫小牧市)道内初の本格的油ガス田。同油ガス田の位置する

苫小牧北東部地域での探鉱活動は1961年から開

始。89年、初めて本格的な原油・天然ガスの産出

に成功。ガスに随伴する油の量が多いことが特徴。

【写真提供:石油資源開発株式会社】

磐城沖ガス田(福島県楢葉町沖)沖合約40キロ、水深154メートルの海底

下に位置する太平洋側初の本格的商業生産ガ

ス田。写真は海上のプラットフォーム。

【写真提供:帝国石油株式会社】

0

200

400

600

800

1,000

1980 85 90 95 2000 04 1980 85 90 95 2000 040

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

(年) (年)

国内生産量

国内生産量

原 油 天然ガス(千㎘) (百万㎥)

勇 払岩船沖南長岡東新潟由利原吉 井南阿賀片 貝申 川八 橋その他

ゆ う ふ つ

いわふねおき

みなみながおか

ひがしにいがた

ゆ り は ら

よ し い

みなみあが

か た か い

さ る か わ

や ば せ

北海道新 潟新 潟新 潟秋 田新 潟新 潟新 潟秋 田秋 田

2371601109374353030281648860

27.518.612.810.88.64.03.53.53.31.85.6

100.0

12345678910

順位 油田名 道県名 構成比(%)

生産量(千㎘)

合 計

南長岡勇 払片 貝磐城沖東新潟吉 井茂 原岩船沖合同千葉東柏崎その他

みなみながおか

ゆ う ふ つ

か た か い

いわきおき

ひがしにいがた

よ し い

 も ば ら

いわふねおき

 ごうどうちば

ひがしかしわざき

新 潟北海道新 潟福 島新 潟新 潟千 葉新 潟千 葉新 潟

77635131323923420718616411247328

2,957

26.311.910.68.17.97.06.35.53.81.611.1100.0

12345678910

順位 ガス田名 道県名 構成比(%)

生産量(百万㎥)

合 計※は水溶性天然ガス

原 油

天然ガス

(出典:「エネルギー生産・需給統計月報」)

南長岡ガス田(新潟県長岡市)国内最大級の埋蔵量、生産能力を誇る大型ガス田。

1984年9月から生産開始。写真は越路原プラント。

【写真提供:帝国石油株式会社】

■国内の石油・天然ガス資源は

石油や天然ガスのほとんどを輸入に

頼っている日本ですが、日本国内でも

いくつかの油田・ガス田が発見され、

原油や天然ガスが生産されています。

2004年度の国内原油生産量は86万

キロリットル。天然ガスは30億立方

メートル(原油換算300万キロリッ

トル)が国内生産されています。

国内で供給される天然ガスは、国内

ガス消費量のわずか4%に過ぎません

が、仮に都市ガスとして家庭用に使用

すれば、国民すべてが約3週間使用で

きる量に相当するガスが生産されてお

り、決して少ない量とはいえません。

年間の生産量も、原油、天然ガスとも

一定レベルを維持しています。

資源のほとんどを海外からの輸入に

頼っている日本にとって、国内の石油・

天然ガス資源は、エネルギー安全保障

上、最も安定したエネルギー供給源と

いえます。

■新潟以北に多い国内の油・ガス田

現在、国内で操業されている油田・

ガス田の中で、生産量の多いところを

右ページの地図に表します。

これを見ても分かるように、国内の

油田・ガス田は新潟以北の日本海側に

多く存在しています。その歴史は古

く、『日本書紀』には、「天智7年(西

暦668年)に越の国(現在の新潟県)

から燃える土と燃える水を天智天皇に

献上」したという記録が書かれていま

す。また、江戸時代は石油のことを「く

そうず」と呼んでいましたが、新潟に

は今も「草生津」「草水」などの地名

が各地で残されています。

では、なぜこの地方で油田・ガス田

が多いのでしょうか? その理由とし

て、この地方の泥質岩は有機物に富み、

石油・天然ガスの生成に優れた岩石(根

源岩)であること、新生代第三紀の海

底火山活動によって噴出・堆積した緑

色のグリーン・タフと呼ばれる岩石が

石油・天然ガスを貯えるのに好都合な

岩石(貯留岩)であることなどが挙げ

られています。

天然ガスのうち、地下の比較的浅い

所でバクテリアの作用によって生成さ

れ、水にサイダーのように溶け込んだ

ものを水溶性天然ガスといい、千葉県

での生産が盛んです。

■基盤整備や自主開発にも寄与

これらの国内陸域や周辺の海域で

は、油・ガス田の発見を目指した試掘

や物理探査が実施されています。

一方、国内での石油・天然ガス開発

事業は、産出地域である北海道内や、

信越、関東圏での長距離天然ガスパイ

プラインの建設促進につながってお

り、長期安定供給とガス輸送能力、需

給調整機能の強化といったエネルギー

供給基盤の整備に寄与しています。さ

らに、国内での開発を積極的に手掛け

ることで、企業などが海外で自主開発

を行うための技術力向上や経営基盤の

形成にも発展するなど、様々な効果も

生まれています。

JOGMECでは日本政府からの委託

を受け、物理探査や試しす い

錐といった基礎

調査を実施するなど、国内有望油・ガ

ス田の探査・開発を支援しています。

茂原ガス田(千葉県茂原市)国内水溶性天然ガス田として最大規模を誇る

南関東ガス田群の中でも埋蔵量が豊富。

【写真提供:関東天然瓦斯開発株式会社】

最も安定した供給源

天然ガス1位

原油1位・天然ガス 2位

海上プラットフォーム

水溶性ガス田

(出典:天然ガス鉱業会資料)

10 JOGMEC NEWS 11JOGMEC NEWS

エネルギーの大切さを子どもたちが体感できる場の提供を

各界の著名人に、資源やエネルギーにまつわる思いやエピソードを語っていただくコーナーです。

最近、新聞などのニュー

スで「オイルサンド」とい

う言葉をよく目にするようになりまし

た。オイルサンドとは、地下に堆積し

ている砂の表面に油が付着しているも

のを指します。これは、石油を含んだ

油層が地殻変動で地表近くに移動し、

地下水との接触や生化学反応によっ

て、軽質分を失ったものと考えられて

います。

通常の原油生産よりコストと手間が

かかることから、石油資源としてこれ

まであまり注目されませんでしたが、

近年の原油高や生産技術の向上で脚光

を浴びるようになりました。

オイルサンドは主に、カナダで産出

されます。オイルサンドから取れる油

は、粘り気が非常に強いのが特徴で、

パイプラインでは流れません。そのた

め、希釈剤を添加して出荷したり、あ

るいは熱や水素を加えて、軽い合成原

油に転換して出荷します。

オイルサンドから油を回収する方法

は、大別して「露天掘り法」と「in‐

situ 採収法(地下採収法)」の二つ。

前者は、砂ごと採掘し熱湯を注いで

油を加温して流出させ、湯と重力分離

する方法で、比較的浅い鉱床のオイル

サンドに向いています。後者は、油層

に水蒸気を圧入して回収する方法で、

地下深い場所に存在するオイルサンド

に適用されます。

オイル・アンド・ガス・ジャーナル誌

によると、アルバータ州に広大なオイ

ルサンドを有するカナダの確認埋蔵量

は1,790億バレルとなり、カナダはサ

ウジアラビアに次いで第2位に躍り出

ています。

データファイル | Q&A

Answer

採算性や生産技術の向上で脚光を浴びる石油資源

「オイルサンド」って何?

近年、経済成長が著しくエネルギー需要が大幅に増加している中国やインドが、政府による資源外交や国営石油企業の活躍などで、石油開発をはじめとした資源獲得に積極的な動きをみせています。世界第2位の石油消費国中国と同6位のインド。海外からの石油輸入依存度をみても、1993年の輸入依存度・中国1%、インド53%に対し、2004年の輸入依存度・中国48%、インド68%と割合を高めています(左下グラフ参照)。今後もエネルギー需要の増加が見込まれる両国では、積極的に海外の石油ガス資産獲得に乗り出しています。中国は2004年のAPEC首脳会談を機に、ベネズエラやコ

ロンビアなどの中南米諸国とエネルギー開発協定を締結したのをはじめ、カザフスタンから中国への原油パイプライン建設に伴う両国提携など、政府による資源外交を活発に行っています。資源外交を行うことで中国国有石油企業の海外進出件数も年々増えており、近年では中東やアフリカ、ロシアやカナダにおいて、業務提携や買収などの動きを見せています(右下グラフ参照)。一方、インドでも、ミャンマーやイランからの天然ガス輸入のためのパイプライン建設のほか、イランでのインド企業の石油上流事業への参加の動きなどもあります。世界市場におけるこれらの国の動向は影響が大きいことから、日本としても、両国の今後の動きを注視していく必要があります。

Data File |「インド」と「中国」――政府や国営企業が積極的な動き

キーワード「 石油開発における新興勢力国の台頭」

なんでも

Q&A Question

不安定な基盤の上にある日本の豊かさ

昨年の原油価格の高騰は、改めて私た

ちに資源・エネルギーの問題を考えさせ

てくれました。70年代のオイルショッ

クのときは、私はまだ子どもでしたが、

皆がトイレットペーパーなどを買いに

走ったという記憶が残っています。その

後、あのようなパニックは起きていませ

んが、石油などの資源が快適な生活を支

えてくれる基盤であることは変わりませ

ん。しかし、その価格は投機など様々な

要因に左右される。つまり、日本の豊か

さは非常に不安定な基盤の上に成り立っ

ているわけです。

エネルギーの問題は、国家の安全保障

にかかわることですから、国の戦略とし

て、いろいろな国々とのネットワークや

信頼関係を築いていってほしいですね。

停電を知らない子どもたち

昔は、時々停電がありました。家の中

が真っ暗になると、子ども心に電気は無

限にあるものではないことを実感したも

のです。ところが今の子どもたちは、停

電を経験していないこともあり、電気は

いくらでもあるものだと思いがちです。

実際にはエネルギーは有限なもので、

しかも日本はそのほとんどを海外に依

存しています。企業ではCSR(社会的

責任)の一環として、エネルギーの効

率化や環境問題に取り組むところが増

えていますが、私たち一人一人もこう

したことを生活者として常に意識する

とともに、子どもたちに伝えていくこ

とが必要です。

子どもは感性が柔軟ですので、いい

なと思ったことや感動したことは、す

ぐに行動に移します。環境教育という

と大げさかもしれませんが、自然がい

かに貴重で素晴らしく、大切にしなけれ

ばならないものかを、実感、体験でき

る場を子どもに提供していくことが必

要です。いくら言葉で環境やエネルギー

の大切さを話しても、体感できること

がないとなかなか伝わりません。

社会資本整備には付加価値をプラスして

以前、広島市のゴミ焼却場を取材し

たのですが、そこはそれまでの処理場

の概念とはまったく異なるものでした。

街の中心から近い場所にあり、ガラス

とステンレスを使ったモダンな建物で

見学もできます。広い通路の両側から

は、ガラス越しにゴミを焼却するプラ

ントを見ることができたり、所々に置

かれた情報提供ボックスでは、一日の

ゴミの量や、この十年間でどのくらい

ゴミが増えたかなどを、ボタン操作で知

ることができたりします。見学通路を

抜けると、そこは瀬戸内海を望む広場。

まるで博物館のようでした。

こうした付加価値のある社会資本整備

はコストもかかりますが、小・中学生

の課外授業にも利用されるなど、まさに

体感できる教育の場にもなっています。

JOGMECさんも「カエル探偵局」と

いう子ども向けパンフレットシリーズ

を作り、60万部以上配布されているそ

うですね。今後とも、エネルギー施設を、

もっと子どもたちに親しんでもらえる

ものにしたり、資源の大切さを体感で

きるような工夫が求められていると思

います。

キャスター・エッセイストふくしま・あつこ 中部日本放送を経て1988年、独立。NHK、TBS、テレビ東京など

で報道番組を担当。テレビ以外でも「サンデー毎日」で250人に及ぶ企業トップとの対談

をするなど、数多くの企業、経営者への取材を行っている。コミュニケーション、環境、地

域再生、農業など、現代社会の問題をテーマにした講演やフォーラムでも活躍。著書に「そ

れでもあきらめない経営」「ききわけの悪い経営者が成功する」「就職・無職・転職」など。

Opinion

vol.3福島 敦子

オピニオン

■国別石油確認埋蔵量 (2005年1月1日)

2002年

2003年

2004年

2005年(1~8月)

5 10 15 200 (件)

北米

東南アジア

中南米

アフリカ

ロシアCIS

中東

2 2 2 5

2 1

1 2

2 2

1 1 4

4 3 6

■中国国有石油企業の国外進出件数の推移

0

1000

2000

3000

4000

0

500

1000

1500

2000

0

10

20

30

40

50

60

1993 2000 0495 1993 2000 04950

40

50

60

70

中国 インド

(年) (年)

(%)(%)(千バレル/日) (千バレル/日)

輸入量

依存度

(出典:2005年BP統計から作成)

■インド・中国の石油の輸入量および依存度の推移

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000

1位2位3位4位5位6位7位8位9位10位

サウジアラビア

カナダイランイラククウェートアラブ首長国連邦ベネズエラ

ロシアリビアナイジェリア

(億バレル) (出典:『オイル・アンド・ガス・ジャーナル誌』から作成)

古紙配合率100%再生紙を使用しています

J.LETTERジェイ・レター

JOGMECからの様々なお知らせです。最新の事業紹介やニュース、イベントなどをご紹介します。

JOGMEC NEWS

2006.Janvo l . 3

雪景色の旧松尾鉱山新中和処理施設

 JOGMEC は、経済産業省の委託を受け

て実施している共同資源開発基礎調査アル

ゼンチン共和国マイオシーンベルト地域お

よびチリ共和国マイオシーンベルト地域

の共同調査実施契約における契約者とし

ての地位の譲渡に関する入札を11月30

日に実施しました。その結果、パンパシ

フィック・カッパー株式会社が落札。今後、

JOGMECは同社と契約を締結し、契約者

としての地位を譲渡する計画です。

 共同資源開発基礎調査は、開発途上国に

おいて資源探査実施機関と共同で、銅・亜

鉛などの非鉄金属鉱物の新鉱床発見を目指

し調査を実施するもので、成果を我が国企

業に引き継ぎ新規鉱山開発につなげること

を目指しています。本制度は平成 15年

度に創設されましたが、本件は、調査の成

果を我が国企業に引き継ぐ最初のケースで

す。当該地域は世界的な銅鉱山地帯に位置

し、これまでの調査から新鉱床発見の期待

が高まっており、今後の企業探鉱の成果が

期待されています。

JOGMECでは、ブラジル最大のエネル

ギー開発会社ペトロブラス社との間で、石

油天然ガス分野の開発事業や研究事業など

を、今後戦略的に協力し実現させていくこ

とで合意。12月16日にリオデジャネイロ

のペトロブラス社において、協力協定書に

調印しました。

協定の締結により、JOGMECとペトロ

ブラス社は、深海エリアでの浮遊式石油生

産・貯蔵・出荷システム(FPSO)の実証

研究、天然ガス資源の開発・利用などの石

油天然ガス上流部門に関する共同研究を進

め、両社がこれらの分野で保有する優れた

先進技術を効率的に融合し、発展させてい

くこととしています。また、今回の協定締

結は、両国の他の研究機関や民間企業など

の参加も視野に入れたものとなっています。

2005年10月JOGMECの総合パンフレット『Perspective』を発行

2005年11月30日制度創設以来初の非鉄金属資源の権益譲渡契約を締結

12月16日ペトロブラス社と石油天然ガス開発における協力協定を締結

新理事長に掛札勲が就任

〉〉〉 各種刊行物のご案内

JOGMECでは、日本の資源・エネルギー安全保障を確保するための様々な事業がHSE

(Health、Safety & Environment:労働安全衛生と環境)に著しい影響を与えるリスクを抱

えていることを踏まえ、探鉱・開発、備蓄および鉱害防止支援などの直接業務のほか、出融投

資・債務保証先などの企業が実施する間接事業についても、企業と協働してリスクを低減する

取り組みを進めています。具体的には、2002年8月に取得した(当時、石油公団)HSE国際認

証である「ISO14001」と「OHSAS18001」について、04年2月のJOGMEC発足後、

石油部門だけでなく金属部門でも活動を展

開し、05年 8月には、JOGMECとして

これら二つの認証を更新して、HSEマネジ

メントシステムを継続運用しています。ISO14001/OHSAS18001 認証

資源・エネルギーの最新事情をはじめ、

JOGMECの業務内容や社会的な貢献を、広

く分かりやすくお伝えする総合パンフレッ

ト『Per spective』(A4判・52ページ)を、

10月末に発行しました。

パンフレットは、

本部や技術セン

ターほか関連施設

に置いていますが、

ご希望の方は広報・

情報公開チームま

でお問い合わせく

ださい。

2006年1月1日付でJOGMECの新理事長に掛札勲が就任しました(大澤秀次郎・初代理事長は12月31日付で退任)。次号で、新理事長のご挨拶を掲載する予定です。

慶応義塾大学法学部卒。1961年、日本石油株式会社(現・新日本石油株式会社)入社。日石三菱株式会社代表取締役副社長、新日本石油精製株式会社代表取締役社長などを経て現職。

掛札 勲かけふだ・いさお

本紙に関するお問い合わせは、広報・情報公開チームまで ▶ [email protected]

表紙

HSEの認証を更新

東京都港区虎ノ門2丁目10番1号 虎ノ門ツインビルディング 〒105-0001 Tel:03-6758-8000 http://www.jogmec.go.jp