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青少年期から成人期への移行についての追跡的研究 J ELS 1 2003年基礎年次調査報告 (児童・生徒質問紙調査) お茶の水女子大学21世紀 COE プログラム 「誕生から死までの人間発達科学」 Studies of Human Development from Birth to Death

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  • JELS

    第1集

    2003年基礎年次調査報告(児童・生徒質問紙調査)

    お茶の水女子大学21世紀COEプログラム「誕生から死までの人間発達科学」

    青少年期から成人期への移行についての追跡的研究

    JELS第1集

    2003年基礎年次調査報告(児童・生徒質問紙調査)

    お茶の水女子大学21世紀COEプログラム

    「誕生から死までの人間発達科学」

    Studies of Human Development from Birth to Death

  • 目 次

    はじめに Ⅰ………………………………………………………………………………………………………………………

    第1部 調査研究の概要

    A.プロジェクトの概要と構成 1………………………………………………………………………………………

    B. 青少年期から成人期への移行についての追跡的研究」

    (JELS 2003,Japan Education Longitudinal Study 2003) 3……………………………………………

    第2部 Aエリア 基礎年次報告

    第Ⅰ章 学習行動・意識 11…………………………………………………………………………………………………

    A.学習行動・意識 11……………………………………………………………………………………………………

    B.学習習慣 20……………………………………………………………………………………………………………

    C.学校外学習機会の活用 22……………………………………………………………………………………………

    D.考 察 23……………………………………………………………………………………………………………

    第Ⅱ章 生徒文化と社会観 25………………………………………………………………………………………………

    A.学校への関与 25………………………………………………………………………………………………………

    B.生徒文化 28……………………………………………………………………………………………………………

    C.社会意識 32……………………………………………………………………………………………………………

    D.考 察 33……………………………………………………………………………………………………………

    第Ⅲ章 進路意識・職業意識 35……………………………………………………………………………………………

    A.小学校6年生の進路意識 35…………………………………………………………………………………………

    B.高校3年生の進路と最終学歴の希望 42……………………………………………………………………………

    C.高校3年生の職業生活に対する意識 46……………………………………………………………………………

    D.何が進路希望を決めるのか 51………………………………………………………………………………………

    E.考 察 55……………………………………………………………………………………………………………

    第Ⅳ章 子どもの家庭状況・価値意識・自尊感情 57……………………………………………………………………

    A.目 的 57……………………………………………………………………………………………………………

    B.方 法 57……………………………………………………………………………………………………………

    C.結果と考察 58…………………………………………………………………………………………………………

    D.Ⅳ章のまとめと今後の課題 68………………………………………………………………………………………

    第3部 Bエリア 基礎年次報告

    Bエリアにおける高校生の学校生活と進路―第一次報告 71……………………………………………………………

    A.はじめに 71……………………………………………………………………………………………………………

    B.Bエリアの状況とデータの位置づけ 71……………………………………………………………………………

    C.進路の状況 72…………………………………………………………………………………………………………

    D.学校生活の状況 74……………………………………………………………………………………………………

    E.アルバイトとお小遣い・部活 77……………………………………………………………………………………

    F.成功観と将来重要だと感じること 77………………………………………………………………………………

    G.将来の職業生活に関する価値観 79…………………………………………………………………………………

    H.考 察 79……………………………………………………………………………………………………………

    基礎集計表

    付表1 小学校3年生、6年生(Aエリア) 81…………………………………………………………………………

    付表2 高校3年生(Aエリア、Bエリア) 92…………………………………………………………………………

  • は じ め に

    本報告書は、文部科学省平成14年度「21世紀 COEプログラム」研究拠点形成費によるお茶の水女子大学の「誕

    生から死までの人間発達科学」の研究のうち、プロジェクト3の研究報告(第1集)である。

    文部科学省では、平成14年度より、第三者評価に基づく競争原理により、世界的な研究教育拠点の形成を重点

    的に支援し、国際競争力のある世界最高水準の大学づくりを推進するために、「世界的研究教育拠点の形成のため

    の重点的支援―21世紀 COEプログラム―」を実施し、平成14年度は、464件(163大学)の申請のうち113件(50

    大学)が採択された。お茶の水女子大学の「誕生から死までの人間発達科学」は、「人間発達の今日的問題を扱う

    ために、発達を、誕生から死まで網羅し、家庭、学校、職場、あるいはさまざまな文化を視野に入れた生涯発達

    研究センターを構築することを目的としたプロジェクト」として、採択された。

    このプロジェクトのうち、主として青年期の問題を取り上げるプロジェクト3は、「子どもから成人へのトラン

    ジッション(移行)に及ぼす社会的文化的要因の探求」をテーマとしている。小学校から成人期への入り口を経

    て職業生活の初期段階までの子どもの諸発達態様(学力・能力、アスピレーション、進路、職業、地位達成)を、

    今後3年程度の間隔で追跡的に調査し、家族、学校教育、学校外教育、社会的文化的環境の間の相互作用を検討

    し、移行期の危機を克服するための処方箋を得ようとするものである。

    第1集としてここに報告するのは、本プロジェクトのうち中心部分を占める、縦断的研究(ベース・サーベイ)

    2003年調査の第1次分析結果の1部である。ベースサーベイをわれわれは、「青少年期から成人期への移行につい

    ての追跡的研究」(Japan Education Longitudinal Study)と名づけ、以後 JELSと略称することとしている。

    JELSの目的と方法、および国内国外における研究上の意義については本文(第1章)に述べているが、アメリカ、

    イギリスなどでは国家的事業として実施されているのに対してわが国では類似の研究がなく、われわれのプロ

    ジェクトは、この欠如を埋める大規模かつ貴重な調査研究であると自負している。

    調査対象コーホートは、2003年第1回調査時点での小学校3年生、6年生、中学校3年生、高校3年生である。

    われわれは、2003年度にまず関東地方の1市内(Aエリア)のほぼすべての小学校、中学校、高等学校の上記4

    学年、それぞれ1,000名を対象に、①児童生徒質問紙調査、②学力調査(国語、算数、数学) ③担任教員質問紙調

    査を実施した。また、お茶の水女子大学附属小、中、高等学校においても同様の調査を実施した。さらに東北地

    方の1市(Bエリア)では、高等学校の高校3年生コーホートを対象に①児童生徒質問紙調査、②担任教員質問

    紙調査等を実施した。

    今後、東北地方の別の1市(Cエリア)で、Aエリアと同様の調査を実施するとともに、保護者対象質問紙調

    査を行い、家庭環境に関連するデータを加えていく予定である。

    今回の報告(第1集)は、このうちAエリア小学校3年生、6年生と高校3年生、Bエリアの高校3年生の「児

    童・生徒調査」の基本集計と第1次分析の結果である。今後われわれは、学力調査の報告を含めて2004年度中に

    6集までをまとめる予定である。

    もともと縦断的研究においては、個人を特定して追跡することがねらいであるために、児童・生徒および、家

    族、学校等のプライバシーにかかわるデータの蒐集が必要であるとともに、プライバシーの厳重な保護が不可欠

    である。このためわれわれは調査の実施に当たり、大学の COEプログラム全体として研究者の倫理的な責務につ

    いて研究倫理委員会を設けて検討を重ね、「お茶の水女子大学 COE研究倫理規定」を策定した。本研究は、デー

    タの蒐集、管理、公表等すべてについてこの規定に基づいて実施している。研究者自身が研究倫理への十分な配

    慮を行うことはもとより、調査実務はプライバシーの保護制度に適合する認定を受けている調査会社に委託し、

    個人名、学校名の保護に最大限の配慮を行っている。しかしながらこのような追跡調査は、何よりも調査の対象

    となる学校の校長先生を始め、教員、児童・生徒、および保護者の方々の、研究への理解と協力がなければ実現

  • が不可能である。

    われわれは、調査の意義を理解し、全面的に協力をしてくださったAエリアの県教育委員会、市教育委員会の

    ご協力に深甚の謝意を表するものである。また、調査対象校となった学校の校長先生、教頭先生、調査担当クラ

    スの教員の方々のご協力に心からのお礼を申し上げる次第である。また、いくつもの調査に熱心に回答をしてく

    ださった、児童・生徒の皆さんに、最大の感謝とお礼を申し上げたい。

    ご協力くださった方々に、調査の結果を順次報告し、今後の学校生活や教育指導、教育環境の改善に、有効な

    提言をしていきたいと考えている。われわれの研究は始まったばかりである。研究が実るまで、今後継続する保

    護者調査、Cエリア調査、3年後の追跡研究など、引き続き、関係者のご協力をお願い申し上げる次第である。

    2004年3月

    お茶の水女子大学 COEプロジェクト

    プロジェクト3 JELS 2003

    牧 野 カツコ

    耳 塚 寛 明

  • 第 1 部

    調 査 研 究 の 概 要

  • 調査研究の概要―JELS2003

    耳 塚 寛 明

    A.プロジェクトの概要と構成

    1)誕生から死までの人間発達科学

    この調査研究は、21世紀 COEプログラム(平成14年度採択、人文科学)である「誕生から死までの人間発達科

    学」のサブ・プログラムとして設計・実施されたものである。

    乳幼児虐待、コミュニケーション退化、学力格差の拡大、若年無業者の増加、中高年期離婚・自殺の増加―こ

    れらの人間発達の今日的課題を解明・診断し、処方箋を提出するため、時間軸としての発達を「誕生」から「死」

    まで網羅し、家庭、学校、職場、あるいはさまざまな文化を視野に入れ、生涯発達追跡研究センターを構築する

    ことが、この研究拠点の最終的な目的である。

    この目的のために、「誕生から死までの人間発達科学」は、次の4つのプロジェクトから構成されている。

    ① 発達心理学・社会心理学・認知心理学・脳神経科学> 基礎的心理発達過程の解明と教育的支援

    ② 臨床心理学・教育臨床学> 家庭・学校・地域における発達危機の診断と臨床支援

    ③ 教育社会学・家族社会学> 子どもから成人へのトランジッションに及ぼす社会・文化的要因の探求

    ④ 社会学・教育科学> 中高年期の危機的移行と社会的支援に関する長期的研究

    本拠点は、1)生涯発達過程の解明(誕生から死までの、長期的なパースペクティブに立つ)、2)縦断的追跡

    研究(横断的にとらえるのみならず、縦断的に解明する)、3)学際性(心理学、教育科学、社会学を中心とする

    各ディシプリンが、それぞれの学問的方法論によって人間発達を多様にとらえるとともに、相互に連携して複眼

    的・総合的に人間発達にアプローチする)、4)行動科学的アプローチと脳科学との統合(人間発達の基盤解明を、

    行動的データだけでなく脳神経科学的データとの照合で行う)などの特色を有する。

    2)子どもから成人へのトランジッションに及ぼす社会・文化的要因の探求

    1. プロジェクトの目的と必要性

    本報告書は、上記 COEプログラムのうち、「子どもから成人へのトランジッションに及ぼす社会・文化的要因

    の探求」(上記の③)を主題とした研究の、第一次報告である。

    この部門では、人間の生涯発達過程の中の、小学校から成人期への入り口を経て、職業生活の初期段階までの

    過程を対象とする。子どもの諸発達態様(学力・能力、アスピレーション、進路、学歴、職業、地位達成)と、

    家族、学校教育、学校外教育、社会文化的環境の間の相互作用を、子ども期から成人期へのトランジッションと

    いう包括的な枠組みによってとらえることによって、変動社会における教育危機を克服するための処方箋を獲得

    することを目的とする。

    21世紀初頭の変動社会におけるトランジッション・教育システムの危機は、①社会化(学業達成、能力・パー

    ソナリティ形成)、②人材の選抜と配分(職業世界への円滑な移行)、③社会化と選抜・配分を通した平等社会の

    実現の、いずれの次元についても見られる。たとえば学力低下や引きこもりは社会化の危機、いわゆるフリーター、

    無業者の増加は人材の選抜・配分の危機、教育達成における社会階層間の格差の拡大は、平等社会を実現する上

    での危機である。いずれも成人期への円滑な移行という観点から見て、これを阻害するあるいはそのあり方に関

    して再検討を要する現象である。子どもの発達過程について縦断的研究を蓄積することによって、これらの危機

    の諸相を家族、学校、学校外教育、よりマクロな社会文化的環境との関わりにおいて観察し、危機を克服するた

    めの教育システム等を構築する処方箋を描くのが、本研究の最終的な目的である。

    2. プロジェクトの構成

    子どもから成人へのトランジッションに及ぼす社会・文化的要因の探求」は、次の4つのサブ・プロジェクト

    から構成されている。このうち、本書が報告するのは、① Base Surveyの第一年次調査結果(JELS2003)であ

    1

  • る。

    ① Base Survey 青少年期から成人期への移行についての追跡的研究」(JELS2003,Japan Education Longi-

    tudinal Study2003)

    日本の青少年の、学力・能力、アスピレーション、進路・職業生活の統計的ポートレートを手に入れることを

    目的とする。これを、家庭的背景(社会階層、経済と文化)、学校的背景、地域的背景(労働市場を含む)などと

    の関わりにおいて把握する。学齢期から青年期にかけてのトランジションの過程を、主として縦断的方法によっ

    てとらえ、社会的・文化的要因との関わりを明らかにする。主な移行危機は、進路選択の変化と学卒無業者・フ

    リーター増加(学校から職業社会へ)、学校不適応、学力危機、などである。これらを、労働市場などのマクロな

    構造、家庭的背景と家庭環境、学校組織、学力との関わりにおいて説明し、政策的インプリケーションを得るこ

    とを目的とする。

    ② 歴史的アプローチ 戦前期における小学校・中等学校卒業者の就職と不就職」

    1920年代から40年代にかけての、就職と不就職(進学を除く)について、歴史的にアプローチする。1920年代

    頃から、企業は、中学校卒、実業学校卒の採用枠(と給与・昇進体系)を構築しはじめる(高等教育機関につい

    ても同じ)。高等小学校卒者についても雇用形態は不安定であったが、一定のルールが形成されたものと思われる。

    そういったルートに乗って就職する人たちがいる一方で、それに乗らずに独自に就職する人(コネその他)や就

    職しない人(浪人→就職、放浪、その他)もいる。企業側も、好況の時は学卒者を卒業のタイミングでかき集め

    るが、そうでない時期もある。こうした状況の中で、雇用慣行がどのように形成されたのか、またその慣行に乗

    り切れない人たちがどうしたのか、などを明らかにし、今日の青少年の学校から職業世界への移行問題にインプ

    リケーションを得る。

    ③ 思想史的アプローチ 「子どもから成人への移行概念としてのシティズンシップの変容とその思想史的文脈」

    本研究では、子どもから成人への移行期過程の今日的な変容の特徴を思想史的な視点から解明することを目的

    とする。そのための視点として、シティズンシップ概念に注目する。シティズンシップ概念は、子どもから成人

    への移行過程の変容に関するミクロ的(発達論的、ライフサイクル論的)視点とマクロ的(社会構造論的、政治

    経済学的)視点とを媒介するうえでの鍵となりうる概念である。成人期への移行の困難性という1990年代以降、

    日本や欧米で顕在化した問題を統一的に把握するための視点として、本研究ではシティズンシップに注目し、そ

    の解体と再編成の過程を解明することによって、子どもから成人期への移行に関するパラダイムの変容の過程と

    その思想史的な文脈を明らかにし、同時に、成人期への移行に関する新しいパラダイムの可能性を追求する。

    ④ 学力研究

    今日の青少年の学力の状況を新しい観点から把握するために、小学校、中学校段階を対象とした算数・数学、

    国語の学力調査問題を開発し、分析を行う。測定する認知的能力について仮説を構築して問題を開発する。算数・

    数学においては、achievement test(アチーブメント・テスト:AT)だけではなく、performance assessment

    (パフォーマンス・アセスメント:PA)という視点を含む2部構成とする。国語においては、学習指導要領の内

    容に関わる問題に加え、音声言語等を含める。

    学力調査は、JELS 2003の一部として、同じ対象について同時に実施された。その結果は、Base Surveyにお

    いて、進路選択や学歴達成、地位達成を規定する基礎的変数として利用するだけではなく、それ自身、今日の学

    力危機の状況を把握し、実践的・政策的インプリケーションを得ることを目的とする。

    3. 研究担当者

    2004年2月時点における研究担当者は次のとおりである。

    ① Base Survey 青少年期から成人期への移行についての追跡的研究」(JELS2003,Japan Education Longi-

    tudinal Study2003)

    事業推進者 牧野カツコ(お茶の水女子大学) 耳塚寛明(同左 プロジェクト・リーダー)

    COE客員研究員 堀有喜衣(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)

    研究協力者 大多和直樹(東京大学)

    RA 寺崎里水(お茶の水女子大学大学院) 中島ゆり(同左) 岩﨑香織(同左)

    JELS 第1集 (2004.3)

    2

  • ② 歴史的アプローチ 戦前期における小学校・中等学校卒業者の就職と不就職」

    事業推進者 米田俊彦(お茶の水女子大学)

    RA 鳥居和代(お茶の水女子大学大学院)

    ③ 思想史的アプローチ 子どもから成人への移行概念としてのシティズンシップの変容とその思想史的文脈」

    研究担当者 小玉重夫(お茶の水女子大学)

    RA 庄司倫子(お茶の水女子大学大学院)

    ④ 学力研究

    研究担当者 冨士原紀絵(お茶の水女子大学)

    RA 諸田裕子(お茶の水女子大学大学院) 長谷川真里(同左)

    国語 学力調査開発分析グループ> (◎教科リーダー、○COE客員研究員、肩書きは執筆当時)

    ◎○阿部昇(秋田大学) ○須貝千里(山梨大学) ○鶴田清司(都留文科大学)

    永橋和行(東京都町田市立小山田南小学校) 柳田良雄(千葉県松戸市立六実第三小学校) 京野真樹(秋田大

    学教育文化学部附属小学校) 小山恵美子(東京学芸大学教育学部附属 大泉小学校) 若林富男(お茶の水女

    子大学附属小学校) 高橋喜代治(埼玉県三芳郡三芳町立三芳中学校) 鈴野高志(茗溪学園中学校高等学校)

    小林義明(学習院女子大学非常勤講師) 上沼治美(お茶の水女子大学附属中学校)

    算数・数学 学力調査開発分析グループ> (◎教科リーダー、○COE客員研究員、肩書きは執筆当時)

    ◎○松下佳代(京都大学) 瀬山士郎(群馬大学) ○上垣渉(三重大学) 鈴木京子(日本大学)

    下田正義(京都府長岡京市立長岡第十小学校) 加川博道(和光鶴川小学校) 松井幹夫(自由の森学園非常勤

    講師) 神戸佳子(お茶の水女子大学附属小学校) ○増島高敬(自由の森学園・和光学園・法政大学非常勤講

    師) 小寺隆幸(東京都多摩市立和田中学校) 松本純一(お茶の水女子大学附属中学校)

    B. 青少年期から成人期への移行についての追跡的研究」(JELS 2003,Japan Education Longitudinal

    Study2003)

    1)研究の目的と背景

    JELS2003は、「子どもから成人へのトランジッションに及ぼす社会・文化的要因の探求」のサブ・プロジェク

    トであり、その主要部分を構成するものである。

    先に述べたように、日本の青少年の、学力・能力、アスピレーション、進路・職業生活の統計的ポートレート

    を手に入れることを目的とする。これを、家庭的背景(社会階層、経済と文化)、学校的背景、地域的背景(労働

    市場を含む)などとの関わりにおいて把握する。学齢期から青年期にかけてのトランジションの過程を、主とし

    て縦断的方法によってとらえ、社会的・文化的要因との関わりを明らかにする。主な移行危機は、進路選択の変

    化と学卒無業者・フリーター増加(学校から職業社会へ)、学校不適応、学力危機、などである。これらを、労働

    市場などのマクロな構造、家庭的背景と家庭環境、学校組織、学力との関わりにおいて説明し、政策的インプリ

    ケーションを得ることを目的とする。調査の枠組みは、図表1―1のとおりである。

    わが国においては、上記の問題をそれぞれ個別的に(たとえば、学力低下についての研究や、フリーター研究、

    職業生活への移行と進路指導研究)、また一時点において取り上げた研究が大半を占める。成人期への移行という

    観点から縦断的に、また教育システムのあるべき姿を、対症療法ではなく構造的に探求した研究は皆無に近い。

    海外に眼を転じると、アメリカにおいては、青年期から成人期へのトランジッションを、国家的縦断的調査に

    よって観察するための大規模調査が存在する(たとえばNELS,High School& Beyond)。またイギリスでも同

    様に国家的縦断的調査が存在する。それらは研究者に公開され、学術論文をのみならず教育政策等の策定に資す

    る幾多の研究を生んでいる。

    このプロジェクトは、そうした国内における研究状況の欠陥を補い、また主としてアメリカ、イギリスにおけ

    る研究上のノウハウを生かしつつ、設計されたものである。

    調査研究の概要

    3

  • 2)調査の設計

    縦断的調査の設計について示したのが、図表1―2である。縦断的研究は、原則として3年目ごとに実施する。

    そのそれぞれの年次の調査を、Wave 1、Wave 2などと呼ぶ。21世紀 COEプログラムで予算措置されている(原

    則5年間)のは、Wave 2までであるが、調査の目的から考えてできるだけ継続的に調査を実施することが望まし

    い。調査費用は、その都度別途調達する計画である。

    Wave 1における調査対象コーホートは、小学校3年生、同6年生、中学校3年生、高等学校3年生の4つであ

    る。進路計画を明確にする観点から小、中、高それぞれの最終学年を対象として設定し、また初期学校生活の影

    響を明らかにするために質問紙調査が可能と考えられるもっとも早い学年である小3を対象に加えた。

    Wave 1における各対象コーホートは、Wave 2では、それぞれ小学校6年生、中学校3年生、高等学校3年生、

    20+コーホートとなる。この段階で在学中の対象者に対しては、学校を通して、あるいは郵送によって、再度質

    問紙調査、学力調査(学校通しの場合のみ)、担任教員調査を行う。

    さらに、Wave 2以降においては、Wave 1の調査対象者に加えて、当該時点における調査対象校の小学校3年

    生、同6年生、中学校3年生、高等学校3年生の調査も実施する。

    これらの調査設計によって、以下の方法的特性をこの調査は持つことになる。

    ① 縦断的調査 Wave 1の調査対象者を、学年進行とともに追跡する。

    ② 定点観測調査 Wave 1対象学校・学年の変化を、時系列的に把握する。

    これによって、世代効果(ある世代が被った、時代の社会経済的・文化的効果)と、加齢効果(年齢、学校段

    階、学年などの効果)の識別が可能となる。

    3)調査方法

    ① 児童、生徒調査 質問紙による集団自計式

    ② 学力調査 (小学校、中学校、高等学校) 国語、算数・数学

    高3コーホートについては、中3学力調査と同じバッテリーを適用。

    ③ 保護者調査 (家庭的背景、しつけ、文化的環境、教育期待、住所・連絡先など、調査協力同意書)

    2004年度に、原則として郵送調査により実施。

    ④ 担任教員調査 (教授方法、進路指導) 質問紙による自計式

    ⑤ 地域、学校の状況に関するヒアリング調査、資料蒐集

    ⑥ サブ・サンプルを対象としたトピック調査(たとえば知能検査)

    4)調査エリアと回収票、有効回収率

    1. 調査エリア

    本来 JELSのような大規模かつ子ども・家庭・学校にまたがる総合的な縦断的調査研究は、ナショナル・サン

    図表1―1 調査の枠組み

    (JELS 2003)

    4

    JELS 第1集 (2004.3)

  • プルによって実施することが望ましいが、事実上不可能に近い。そこで私たちが意図したのは、エリアを限定し

    て、エリア内で厳密なサンプリングを実施して代表性を保持しつつ、順次エリアを増やしていく研究戦略である。

    JELS 2003は、Aエリア調査を中心に、以下の3つから構成した。

    ① Aエリア調査

    関東地方の1市に所在するほぼすべての小学校、中学校、高等学校の、小3、小6、中3、高3コーホートを

    対象に、①児童・生徒質問紙調査、②同・学力調査、③担任教員質問紙調査、④保護者対象質問紙調査を実施し、

    図表1―2 調査の設計

    (JELS 2003)

    5

    調査研究の概要

  • 青少年の学力および進路形成過程を総合的に把握し、家庭的背景・文化的経済的環境と、教師のペダゴジーや進

    路指導実践との間の相互作用を社会学的に明らかにすることを試みる。

    なお、上記中④保護者対象質問紙調査は、2004年度夏までに実施、その他①~③は、中3コーホート学力調査

    を除いて、2003年10月~12月に実施した。中3コーホート学力調査は、2004年1~3月に実施。

    ② Bエリア調査

    東北地方の1市に所在する高等学校の高3コーホートを対象に、①生徒質問紙調査、②担任教員質問紙調査、

    ③教務・進路指導担当教員聞き取り調査を実施した。Aエリアとの相違は、高卒後の進路形成に焦点づけた追跡

    調査(現高3コーホートのみ対象)の初年時調査である点である。保護者対象質問紙調査、学力調査は実施しな

    い。

    2003年10月~12月に実施。

    ③ 本学附属小・中・高等学校調査

    Aエリア調査と同様の設計。今後、サブ・サンプルとしてトピック調査を継続する計画である。

    2003年10月~12月に実施。

    2. 回収数、回収率

    回収率等は、図表1―3のとおりである。

    表中、配布数は対象学級の在籍人数、回収数は質問紙調査ベースの数値を表している。

    なお、高校3年生コーホートについては、学校タイプ・ランク別に分析する際に、専門学科と普通科に分け、

    普通科をさらに、中学校卒業時の成績の自己評価によって上位校、中位校、下位校に分類した。 学校階層」等と

    称することがある。

    5)調査内容

    1. 児童生徒調査

    ① 学習行動と意識 授業の理解度 教科の選好・有用感 授業タイプ 興味・関心の所在 成績の自己評価 成

    績アスピレーション 能力評価

    ② 学校生活 遅刻・欠席の頻度 部活動参加 学校適応

    ③ 学校外生活 逸脱的な行動 文化的活動・接触 家庭学習頻度・時間 学校外学習機会(通塾等) こづかい・

    アルバイト収入 消費生活

    ④ 進路意識 卒業後の進路希望 希望する学歴 職業希望 内定進路(高3) 求職活動(高3) 進路指導の

    状況(高3)

    ⑤ 自己概念・価値観・社会観 自己尊厳 結婚観・性役割 社会観(競争、公平感など) 社会的成功の要因

    ⑥ 家庭・家庭的背景 家庭の雰囲気 文化的資本 保護者の学歴期待

    図表1―3 配布数・回収数

    配布数 回収数 回収率

    A エ リ ア 小3 1,161 1,118 96.3

    小6 1,202 1,194 99.3

    中3 1,128 1,057 93.7

    高3 3,163 1,438 45.5

    B エ リ ア 高3 1,141 1,077 94.4

    附 属 高 校 小3 118 117 99.2

    小6 127 123 96.9

    中3 135 132 97.8

    高3 118 112 94.9

    合 計 7,045 5,179 73.5

    (JELS 2003)

    6

    JELS 第1集 (2004.3)

  • ⑦ face sheet

    2. 学級担任教員調査

    ① 教育目標・指導上の課題 学年の学習教育目標 学習指導上の課題 学級運営上の課題

    ② クラスのようす

    ③ 学習指導 授業のタイプ 授業方法で重視していること 宿題指導 評価

    ④ face sheet

    6)損耗率の抑制と個人情報保護

    なお、本調査において、とくに解決を要するふたつの問題が存在する。

    第一に、縦断的研究においては、クロスセクション研究等通常の調査における実際上の留意点に加えて、調査

    対象者の損耗率の自然上昇をいかにして最小限に食い止めるかという問題が発生する。また、時系列的な調査の

    進行とともに失われたケースを、どう補って再サンプリングするかも重要な課題となる。そのため、調査対象者

    および家族への連絡(たとえば、年賀状の送付やホームページの開設)、転居等によって発生する対象者の行方の

    探索(学校や在学時の友人等を通じた探索)など、損耗率上昇を食い止めるための、格段の方策が求められる。

    第二に、個人情報の保護の問題である。およそ社会学的調査研究は、直接あるいは間接的に当該社会における

    社会的問題の解決に資する課題意識を背景として行われる。社会的問題の解決には、個人、集団、全体社会レベ

    ルで、差別や不利益を被る人々を特定し、どんな状況に彼らが置かれているのかを観察し、何がその状況をもた

    らしているのかに関する分析を必要とする。そのため、人権擁護、個人情報保護の点から、通常の社会生活にお

    いては回避されるべき「質問」を行ったり、「観察」することが、伴う。今回の調査は、学力調査、家庭的背景に

    ついての詳細な情報を収集する保護者調査を含み、また縦断的調査であるところから、以下のような個人情報、

    プライバシーに相当程度踏み込んだ情報収集を要する。

    氏名、性別、学年、学校、保護者氏名、保護者住所、国語および算数・数学の学業達成度、保護者の仕事(自

    由回答)、保護者の学歴(大卒か否か)

    これらに加え、上記の個人情報は集計の仕方によっては、地域内教育水準、学校別教育水準、学級別教育水準

    なども算出可能であって、行政や組織にとって、保護されるべき情報ともなる。

    そのため、データが漏洩され悪意をもって使用された場合の、調査対象者および地域、組織にとってのリスク

    は、社会学的調査研究の中でも最大級に甚大であると推測される。差別問題、人権問題としての調査に対する告

    発なども容易に予想できる。

    これらのリスクを回避するために、お茶の水女子大学 COE研究倫理委員会の指導および審査を経て、以下の手

    続きをとった。

    ① 調査実施時 児童生徒(あるいはその保護者)が回答を拒否する意思を持った場合、これを受容する。また、

    記入された質問紙等は、学級別に封入し、速やかに回収を行う。

    ② 調査委託会社 プライバシーマークを取得した業者に委託する。なお当該業者よりさらに委託される業務(た

    とえばデータ入力)を負う業者にあっても、同様とする。当該会社においては、個人情報保護と品質管理の社

    内規定に則って、個人情報が保護される。

    ③ 同上の調査会社においては、質問紙原票は厳重に管理される。私たち研究者にも個人情報が含まれた形で、

    原票の閲覧は許可されない。

    ④ 本学に納入されたデータには、個人を特定可能ないかなる情報も含まれない。

    ⑤ データ公表時に、地域名、学校名は、非公開とする。

    ⑥ 特殊な質的分析(たとえば学力調査における誤答分析)を除き、分析は個票単位ではなくカテゴリカルな集

    団を単位とする。質的分析を行う場合でも、個人は特定できない仕組みのデータを作成する。

    7)期待される成果とインプリケーション

    本研究の主要な目的は、小学校から成人期への入り口を経て、職業生活の初期段階までを対象とした、「人間発

    達の定点観測・追跡研究センター」として、データを蓄積するところにあるが、そうした基礎的・学術的目的と

    7

    調査研究の概要

  • ともに、さまざまな社会的意義も期待できる。

    1. 1990年代を通じて、それまで円滑だった学校から職業世界への若者たちの移行メカニズムに綻びが生じ、た

    とえば高校段階では、1割強の生徒たちが、無業者(フリーター)として学校と職業世界の狭間にさまよい出

    て行っている。そうした職業世界への移行の観点から、変動する労働市場に適合的な教育システムや指導、社

    会的支援のあり方を提言できる。

    2. マスコミを舞台として、いわゆる学力低下論が主張されている。青少年の学力の実態を継時的にとらえるた

    めの基礎的データの収集を通じて、学力低下の事実そのものを検討するとともに、家庭的背景による学力格差

    の状況と格差の出現メカニズムについて、議論に足る実証的データを提出できる。文科省ほか行政による学力

    調査は大規模ではあるが、「社会階層と学力」という視点は皆無であり、その検討は研究者にしかできない。

    3. これまでわが国では、人々の社会的地位達成のあり方を決める上での学力の重要性は認識されていながら、

    学力そのものの形成と分化における社会学的メカニズムはじゅうぶんに明らかにされてきたとは言い難い。ま

    た、初期の学力がどの程度その後の地位達成を規制する(約束する)ことになるのかについても知見が乏しい。

    学力の社会学という古くて新しい領域に関して、格段の進展が期待できる。

    4. 学力形成、学歴獲得、職業獲得、社会的地位達成にとって、「家族」は基本的な重要性を持つ。しかし、従来

    の研究の多くは、家族の経済と文化の各次元に関して、また家族構造について、きわめて限定された側面しか

    観察していない。本研究では、保護者からデータを採取することによって、信頼性の高いデータを得ることが

    できる。

    5. 現下の教育政策は、「ゆとり教育」路線と「教育自由化(規制緩和)」路線を両輪として急速に進められてい

    る。子どもの諸発達態様と、教師による pedagogy(教授内容と方法)の関連を明らかにすることによって、い

    わゆる「ゆとり教育」が子どもにどんな帰結をもたらしているのかが検討できる。教育政策のベクトルの妥当

    性を考察する基礎的データが得られる。

    6. 以上の検討を通じて、現代日本社会における人々の地位達成のあり方、社会的資源配分のあり方に関して、

    精度の高い観察と、家族、教育、職業社会を包括したインプリケーションを得ることが期待できる。仮に、学

    力や学歴の獲得における、あるいは職業的配分における社会的格差が、人々の努力の及ばないメカニズムによっ

    て生み出されているとすれば、私たちの社会はメリトクラティクは社会ではあり得ない。特権的な人々が社会

    的競争において初期的に優位な位置を占め、不利益層に過大な努力を強いる、不平等な社会にほかならない。

    こうした、幻想としてのメリトクラシー社会日本を描き出し、社会的競争の仕組み自体に検討を加えることも、

    本研究に期待されることにひとつである。

    7. 本プロジェクトは、サブ・プロジェクトとして、トランジッション問題に関する、歴史的研究および思想史

    的研究、学力に関する教授学的研究等を含んでいる。これにより、問題理解により深さを加えることが期待で

    きる。

    8. 今回の縦断的な調査においては、児童生徒および、家族、学校等に関して、相当程度プライバシーに踏み込

    んだデータ蒐集が不可欠である。そのため、社会科学研究者の倫理的な責務について検討を加え、また対象者

    (校)の人権等に配慮した調査研究のあり方を模索する。わが国では、研究者の倫理に関して、必ずしも十分配

    慮がなされているとはいえず、また人権擁護をふまえた調査研究実践が組織的に行われているとは言い難い。

    9. 本研究で実施するのは、大規模な縦断的調査である。結果は、公開を原則とする。これにより、人間発達に

    関する、広範囲にわたる学術的検討が可能となる。資源が乏しい時代における学術的調査データは、公共財で

    ある。

    8)本報告書の構成と今後の報告書刊行予定

    この JELS第1集では、Aエリア(小3、小6、高3コーホート)およびBエリア(高3コーホート)のみを

    分析対象とする。Aエリア中学校3年生コーホートを分析対象から除外したのは、調査実施時期が高校入試のた

    め2004年2~3月の時期に設定されたことによる。この JELS第1集と同時期に第2集、第3集が発行されるが、

    同様の理由から第一次報告で対象としているのは、Aエリア(小3、小6コーホート)のみである。

    2004年3月以降、次の報告書を順次刊行していく。

    8

    JELS 第1集 (2004.3)

  • ① 2003年度刊行分

    『青少年期から成人期への移行についての追跡的研究 JELS第1集 2003年基礎年次調査報告』2004年3月

    AエリアおよびBエリアにおける、児童生徒質問紙調査を中心とした第一次分析。中3コーホートを除く。

    『青少年期から成人期への移行についての追跡的研究 JELS第2集 国語学力調査報告』2004年3月 Aエリ

    ア小3・小6コーホートの、国語学力調査の第一次分析。

    『青少年期から成人期への移行についての追跡的研究 JELS第3集 算数・数学学力調査報告』2004年3月

    Aエリア小3・小6コーホートの、算数・数学学力調査の第一次分析。

    ② 以下、続刊予定

    JELS第4集 Aエリア 中3・高3コーホート 国語学力調査第一次分析

    JELS第5集 Aエリア 中3・高3コーホート 算数・数学学力調査第一次分析およびPA分析

    JELS第6集 附属学校調査(質問紙、学力、保護者を含む) 第一次分析

    JELS第7集 Aエリア 家庭・学力・進路の社会学

    9

    調査研究の概要

  • 第 2 部

    Aエリア 基礎年次報告

  • 第Ⅰ章 学習行動・意識

    中 島 ゆ り

    この章ではAエリアの小学校3年生、6年生、高校3年生の学習行動と意識について学年ごとに概観する。質

    問紙では、好きな科目や学校の授業に対する意識、新学力観や興味・関心、家での学習時間、塾・通信教育・家

    庭教師や習い事といった学校外の学習機会の活用について尋ねている。

    さらに節をあらためて、一日のうちの学習時間、週ごとの学習頻度、学校外学習機会の活用についてより詳細

    に報告する。苅谷(2000)も述べるように、学習時間への注目は「『受験のプレッシャー』を示す指標」と考える

    ことができ、学力形成の一面をとらえることができる。苅谷らの調査では高校生のみを対象としていたが、今回

    の調査では小学生、中学生にも質問しているので、児童・生徒内の学習時間や塾などの活用の差、延いては進路

    の差が、いつの時点から、どのような要因と関連して生じるのかについて、より実証的に示すことができよう。

    ここではその手始めとして、主に学年ごとに全体像を把握することを目的とする。

    A.学習行動・意識

    1)授業(小3―問1~問3、小6―問1~問3、高3―問1・問2)

    小学生が好きな授業は何であろうか(図表Ⅰ―1)。小3の児童が1位にあげたのは体育(37.0%)、図画工作

    (18.4%)、音楽(14.3%)である。この傾向は2位もほぼ変わらない。3位に総合的な学習の時間を14.2%の児

    童があげている。小6では、小3と同様、1位に体育(40.7%)、音楽(15.8%)、図画工作(11.9%)があがっ

    ている。小3と異なるのは3位に理科をあげる児童が12.7%いることだろう。また、小6では、成績が上位(「上

    のほう+真ん中より上」) だと考えている児童のうち1位に算数(17.3%)をあげる児童が体育(39.5%)のつ

    ぎに多いのも特徴的である。

    また、今回の調査ではとくに国語と算数をどのくらい好きかどうかを尋ねている(図表Ⅰ―2)。国語を「とて

    も好き+まあ好き」(高3では「そう思う+まあそう思う」)と答えた児童・生徒は、小3で66.6%、小6で53.4%、

    高3で57.4%である。同様に算数・数学が好きな児童・生徒は、小3で76.4%、小6で61.4%、高3で35.5%で

    ある。高校生になっても国語を好きな生徒がほぼ一定なのに対し、算数・数学では高校生の落ち込みが大きいの

    が特徴である。

    11

    図表Ⅰ―1 好きな授業(小3、小6)

    小3 小6

    1位 2位 3位 1位 2位 3位

    国語 3.9 4.7 6.4 2.6 5.4 6.7

    社会 1.8 4.3 5.5 6.4 7.7 9.0

    算数 13.1 12.7 11.3 10.1 12.1 10.7

    理科 3.3 8.9 12.9 4.1 6.4 12.7

    音楽 14.3 18.7 17.5 15.8 16.1 13.1

    図画工作 18.4 17.2 16.3 11.9 17.8 10.9

    体育 37.0 21.6 13.5 40.7 15.0 10.1

    総合的な学習の時間 7.1 10.6 14.2 5.6 10.8 15.4

    家庭科 ― ― ― 2.5 8.3 10.6

    無回答 1.1 1.3 2.3 0.3 0.3 0.7

    合計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0

    N 1118 1118 1118 1164 1164 1164

    注) 下線は値が大きい順に3つ。 (JELS 2003)

  • さらに、小6の児童と高3の生徒には国語と算数・数学が「だれにとっても大切だ」と思うか、「将来役に立つ

    と思う」かをたずねている(図表Ⅰ―3)。国語では小6の児童の83.6%、高3の生徒の75.1%が「だれにとって

    も大切だ」と思っており(「そう思う+まあそう思う」)、小6の89.6%、高3の79.4%が「将来役に立つと思」っ

    ている(「そう思う+まあそう思う」)。一方、算数・数学では小6の児童の85.5%が「だれにとっても大切」であ

    り、92.3%が「将来役に立つと思」っている(「そう思う+まあそう思う」)のに対し、高3では「だれにとっても

    大切だ」と思っているのは39.0%であり、「将来役に立つと思」っているのは47.7%のみであった。

    このような傾向は児童・生徒が国語と算数・数学の授業をどのくらいわかっているかという質問にも現れてい

    る(図表Ⅰ―4)。

    JELS 第1集 (2004.3)

    図表Ⅰ-4 国語、算数・数学の授業の理解度

    ほとんどわ

    かっている

    まあわかっ

    ている

    半分くらいわ

    かっている

    あまりわかっ

    ていない

    ほとんどわ

    かっていない無回答 合計 N

    国語 小3 21.5 40.2 28.4 6.4 1.9 1.7 100.0 1118

    小6 21.6 48.2 22.9 4.9 0.7 1.7 100.0 1164

    高3 10.7 36.0 29.8 15.1 7.3 1.2 100.0 1438

    算数・数学 小3 38.4 34.5 18.9 4.1 2.1 2.1 100.0 1118

    小6 29.6 36.1 21.9 8.4 1.7 2.2 100.0 1164

    高3 6.7 21.3 25.5 26.6 18.4 1.5 100.0 1438

    注) 下線は最頻値。 (JELS 2003)

    図表Ⅰ―3 国語観、算数・数学観

    (JELS 2003)

    図表Ⅰ―2 国語、算数・数学が好きである

    (JELS 2003)

    12

  • 国語の授業を「ほとんどわかっている+まあわかっている」と答えた小3の児童は61.7%、小6では69.8%、

    高3では46.7%である。これに対し、算数・数学の授業をわかっていると答えた児童・生徒は小3では72.9%、

    小6では65.7%、高3では28.0%であった。今回、中学生の傾向はわからないものの、算数・数学の授業は学年

    を重ねるに従いわからなくなっているという傾向が予想できる。

    授業がわからないから算数・数学を好きになれず大切だと思えなくなるのか、もしくは、算数・数学が好きで

    はなく大切だと思えないので授業もわからなくなってくるのか、その因果関係は今回の分析ではわからないが、

    算数・数学を「ほとんどわかっている」と回答した児童・生徒のほうが、算数・数学を好きか、だれにとっても

    大切か、将来役に立つと思うかという質問に肯定的に答えている割合が多い。たとえば算数・数学を「ほとんど

    わかっている」児童・生徒のうち、算数・数学を「とても好き」と答えたものは、小3で70.2%、小6で66.1%、

    高3で70.1%であった。これに対し、「ほとんどわかっていない」児童・生徒のうち、「とても好き」と答えたも

    のは、小3で21.7%、小6で0.0%、高3で2.6%である。このように授業の理解度と算数・数学観の間には関連

    があると予想できる。

    2)授業方法(小3―問4、小6―問4・問6、高3―問3・問5)

    ところで学校では児童・生徒の習熟度の差が大きくなっているとされ、習熟度に応じてクラスを分けようとい

    う試みが全国で取り組まれてきている。このような取り組みを、児童・生徒はどのように考えているのだろうか。

    図表Ⅰ―5は、小6の児童と高3の生徒にとって、「勉強のおくれている人に進んでいる人が勉強を教える」「勉

    強がおくれている人がいても、とりあえず授業を進める」「勉強のおくれている人と進んでいる人を、別々のクラ

    スに分けて授業をする」のが望ましいかどうかを示している。

    第Ⅰ章 学習行動・意識

    図表Ⅰ―5 のぞましい授業のやり方

    のぞましいまあのぞま

    しい

    あまりのぞ

    ましくない

    のぞましく

    ない無回答 合計 N

    進んでいる 小6 40.1 43.6 11.3 4.0 0.9 100.0 1164

    人が教える 高3 24.9 48.7 15.7 8.6 2.0 100.0 1438

    とりあえず 小6 5.8 20.4 49.3 23.5 0.9 100.0 1164

    授業を進める 高3 6.6 26.6 43.9 20.8 2.0 100.0 1438

    別々のクラ 小6 21.6 21.0 24.7 30.8 1.8 100.0 1164

    スに分ける 高3 22.3 26.8 24.9 23.7 2.2 100.0 1438

    注) 下線は最頻値。 (JELS 2003)

    図表Ⅰ―6 別々のクラスに分けて授業するのがのぞましい(成績、高校の学科・ランク別)

    のぞましいまあのぞま

    しい

    あまりのぞ

    ましくない

    のぞましく

    ない無回答 合計 N

    小6 成績上位 31.7 21.6 20.7 24.8 1.2 100.0 347

    成績中位 17.6 21.6 28.1 31.3 1.4 100.0 499

    成績下位 16.3 19.0 24.0 38.0 2.7 100.0 258

    高3 上位校 44.0 34.9 13.8 6.4 0.9 100.0 109

    中位校 21.6 29.1 26.9 20.5 1.9 100.0 584

    下位校 17.1 25.3 25.1 29.5 3.0 100.0 427

    専門校 23.3 22.0 24.8 27.7 2.2 100.0 318

    注) 下線は最頻値。 (JELS 2003)

    13

  • 別々のクラスに分けて授業をする」のがのぞましいと考えている児童・生徒は小3で42.6%、高3で49.1%い

    る。しかしながら図表Ⅰ―6が示すように、この傾向は小6では自分の成績が上位だと考えている児童ほどより

    強くなっている(上位53.3%、中位39.2%、下位35.3%)。同様に高3でも進学者の多い「上位校」ほどクラスを

    分けることがのぞましいと考えている(上位校78.9%、中位校50.7%、下位校42.4%、専門校45.3%) 。このよ

    うに、成績上位の児童・生徒とそれ以外では授業方法ののぞましさについて考え方が異なっている。また、「勉強

    のおくれている人に進んでいる人が勉強を教える」にのぞましい(「のぞましい+まあのぞましい」)と答えた児

    童・生徒は小6で83.7%、高3で73.6%、「勉強が遅れている人がいても、とりあえず授業を進める」では小6で

    26.2%、高3で33.2%であった。

    さて、学校では実際、どのような授業をすすめているのだろうか。小中学校では2002年度から、高等学校では

    2003年度から総合的な学習の時間が本格的に実施されるようになったが、調べたり発表したりする授業ははたし

    て多いのだろうか。図表Ⅰ―7は現在、学校では児童・生徒の側から見て、どのような授業方法が多くとられて

    いるのかを示したものである。

    図表Ⅰ―7 授業方法

    よくあるときどき

    ある

    あまり

    ない

    ほとんど

    ない無回答 合計 N

    ■国語

    教科書や黒板を使っ 小3 80.4 14.8 3.0 0.4 1.3 100.0 1118

    て先生が教える授業 小6 88.0 9.2 2.1 0.3 0.4 100.0 1164

    高3 88.1 6.5 2.4 1.8 1.3 100.0 1438

    ドリルや小テストを 小3 23.2 58.1 13.8 3.1 1.9 100.0 1118

    する授業 小6 36.2 47.2 12.2 3.6 0.9 100.0 1164

    高3 13.9 28.5 26.6 29.3 1.6 100.0 1438

    宿題が出る授業 小3 31.8 28.1 18.6 18.9 2.6 100.0 1118

    小6 19.2 35.9 26.8 17.0 1.0 100.0 1164

    高3 1.9 8.8 23.3 64.2 1.8 100.0 1438

    自分で考えたり、調 小3 21.7 45.3 23.0 6.4 3.6 100.0 1118

    べたりする授業 小6 25.2 52.6 17.0 3.7 1.5 100.0 1164

    高3 9.0 28.0 31.5 29.8 1.8 100.0 1438

    自分たちの考えを発 小3 37.1 38.3 16.5 5.9 2.2 100.0 1118

    表したり、意見を言 小6 29.4 47.0 18.1 4.8 0.7 100.0 1164

    い合う授業 高3 2.3 9.6 22.7 63.4 2.0 100.0 1438

    ■算数・数学

    教科書や黒板を使っ 小3 86.1 10.3 1.6 0.3 1.7 100.0 1118

    て先生が教える授業 小6 93.5 4.0 1.6 0.3 0.7 100.0 1164

    高3 79.6 6.7 2.9 7.4 3.5 100.0 1438

    ドリルや小テストを 小3 16.8 59.7 17.3 4.5 1.7 100.0 1118

    する授業 小6 29.1 52.4 15.0 2.6 0.9 100.0 1164

    高3 16.6 29.6 21.5 28.5 3.8 100.0 1438

    宿題が出る授業 小3 23.6 28.4 22.4 22.4 3.3 100.0 1118

    小6 17.0 38.1 25.3 18.2 1.3 100.0 1164

    高3 4.7 18.0 23.4 50.0 3.9 100.0 1438

    自分で考えたり、調 小3 15.8 34.4 26.7 19.9 3.1 100.0 1118

    べたりする授業 小6 17.4 30.1 32.3 18.6 1.6 100.0 1164

    高3 17.2 22.2 18.9 37.9 3.8 100.0 1438

    自分たちの考えを発 小3 25.4 32.0 22.9 17.3 2.4 100.0 1118

    表したり、意見を言 小6 19.2 29.0 30.2 20.1 1.5 100.0 1164

    い合う授業 高3 2.6 5.9 14.7 72.9 3.9 100.0 1438

    注) 下線は最頻値。 (JELS 2003)

    14

    JELS 第1集 (2004.3)

  • 国語も算数・数学も、小3、小6、高3のすべてで「教科書や黒板を使って先生が教える授業」が「よくある+

    ときどきある」と答えた児童・生徒が80%から90%以上と最も多い。これに対し、調べたり発表したりする授業

    は高3ではかなり減少する傾向が見られる。「自分で考えたり、調べたりする授業」が国語で小3、小6、高3そ

    れぞれ67.0%、77.8%、37.0%、算数で50.2%、47.5%、39.4%、「自分たちの考えを発表したり、意見を言い合

    う授業」は国語で75.4%、76.4%、11.9%、算数で57.4%、48.2%、8.5%である。学年が上がるにつれ授業方法

    に変化が生じている。また、宿題が出ると答えた生徒は高3では非常に少ない。小3、小6では国語、算数とも

    半数以上が宿題が「よくある+ときどきある」と答えているのに対し、高3では国語で10.7%、数学で22.7%で

    あった。

    3)成績(小3―問6・問7、小6―問7・問8、高3―問6~問10)

    児童・生徒は自分の成績をどのように見ているのだろうか。今回の調査では小3、小6の児童にクラスの中で

    の成績とどのくらいの成績がとれたらいいと思うかを尋ね、高3の生徒には学年の中での成績とどのくらいの成

    績がとれたらいいと思うかに加え、小学校と中学校卒業時の成績、「いまの成績は別として、あなたの本当の能力

    からすると、あなたの成績は学年の中で、どのくらいだと思いますか」という質問をしている。順に見てみよう。

    図表Ⅰ―8は小3、小6の児童が自分の成績がどれくらいだと思うかの割合を示している。

    小3、小6とも児童の成績に対する認識は「真ん中」より上に片寄っており、それは小3で8割以上、小6で

    7割以上である。小学校では絶対評価ということもあり、自分の成績がクラスでどのくらいかということはあま

    り考えることはないだろう。しかし、どのくらいの成績をとりたいかと聞くと、小3で84.6%、小6で82.6%の

    児童が「真ん中より上」以上の成績をとりたいという意欲を示している。

    高3では、高校の学科・ランクによって、成績についての意識に差が見られる(図表Ⅰ―9)。まず、学年の中

    で「とれたらいいなあと思」う成績では、上位校の生徒のうち67.0%が「上のほう」をとりたいと考えているの

    に対し、下位校、専門校では3割程度である。これは上位校の生徒の進学アスピレーションが関わっていると考

    えられる。「本当の能力からすると、あなたの成績は学年の中で、どのくらいだと思いますか」という問いでは、

    どの学科・ランクの高校でも実際の学年での成績を聞いたときよりも「真ん中」以上だと答えた生徒が多い。両

    者のずれは、学校の「成績」と「本当の能力」といったものを別のものとして捉えているさまを表している。こ

    のようなさまは、つぎの「新学力観」への関心と結びついていると考えられる。

    4)興味・関心、「新学力観」(小3―問5・問10、小6―問5・問13、高3―問4・問15)

    興味・関心、「自ら考え・自ら学ぶ」態度とは、従来のペーパーテストによって測られるような知識の詰め込み

    偏重の狭い意味での「学力」を越えて、「新学力観」とも捉えられるものである。

    さて、児童・生徒は日ごろの授業や生活の中でどのようなことに興味・関心をもっているのだろうか。本調査

    では国語・理科・社会・算数(小6のみ)に関連することを調べたり考えたりするのが好きかどうか、自分の気

    持ちや考えを伝えたいかどうかを聞いている(図表Ⅰ―10)。

    教科書や本を読んでいて、登場人物や書いてある内容に興味がわいてくる」に「よくある+ときどきある」と

    回答した児童・生徒はどの学年ともに7割近くいる。これに対し「生きものや科学のことを調べたり考えたりす

    るのが好きだ」という児童・生徒は小3で70.8%、小6で58.9%、高3で41.8%と学年の進行につれ減る傾向に

    図表Ⅰ―8 クラスでの成績ととりたい成績(小3、小6)

    上のほう真ん中

    より上真ん中

    真ん中

    より下下のほう 無回答 合計 N

    小3 クラスでの成績 16.5 30.3 33.7 9.2 5.1 5.2 100.0 1118

    とりたい成績 65.9 18.7 8.1 2.0 2.0 3.3 100.0 1118

    小6 クラスでの成績 10.1 19.7 42.9 15.2 7.0 5.2 100.0 1164

    とりたい成績 43.6 39.0 12.9 1.5 1.5 1.5 100.0 1164

    (JELS 2003)

    15

    第Ⅰ章 学習行動・意識

  • 図表Ⅰ-9 成績と成績についての意識(高3)

    上のほう真ん中より

    上真ん中

    真ん中より

    下下のほう 無回答 合計 N

    学年での成績

    上位校 13.8 27.5 26.6 15.6 14.7 1.8 100.0 109

    中位校 12.0 23.1 25.9 17.1 17.6 4.3 100.0 584

    下位校 13.3 18.3 31.1 17.1 14.5 5.6 100.0 427

    専門校 16.7 21.7 22.3 17.9 18.6 2.8 100.0 318

    とりたいと思う学年での成績

    上位校 67.0 23.9 7.3 0.0 0.9 0.9 100.0 109

    中位校 44.9 31.7 19.3 0.9 0.9 2.4 100.0 584

    下位校 31.4 31.4 26.5 3.0 3.5 4.2 100.0 427

    専門校 34.6 32.4 20.8 3.8 6.3 2.2 100.0 318

    本当の能力での成績

    上位校 19.3 27.5 25.7 11.9 13.8 1.8 100.0 109

    中位校 14.9 27.9 37.7 8.2 6.0 5.3 100.0 584

    下位校 12.9 16.4 40.7 13.3 9.1 7.5 100.0 427

    専門校 17.9 17.9 34.3 15.7 11.6 2.5 100.0 318

    中学校卒業時の学年での成績

    上位校 80.7 14.7 1.8 0.0 1.8 0.9 100.0 109

    中位校 17.6 42.8 29.3 5.3 1.7 3.3 100.0 584

    下位校 1.6 9.6 29.7 32.1 21.3 5.6 100.0 427

    専門校 5.7 12.6 27.0 28.3 23.9 2.5 100.0 318

    小学校卒業時のクラスでの成績

    上位校 68.8 16.5 9.2 0.9 2.8 1.8 100.0 109

    中位校 25.9 25.7 31.7 7.4 3.4 6.0 100.0 584

    下位校 8.4 13.1 39.8 18.5 12.2 8.0 100.0 427

    専門校 15.1 18.2 35.5 16.0 11.9 3.1 100.0 318

    注) 下線は最頻値。 (JELS 2003)

    図表Ⅰ-10 勉強していて感じること

    よくあるときどき

    あるあまりない

    ぜんぜん

    ない無回答 合計 N

    教科書や本を読んでいて、登場人物や書いてある内容に興味がわいてくる

    小3 30.6 37.5 21.3 8.5 2.1 100.0 1118

    小6 22.4 44.7 25.7 6.5 0.7 100.0 1164

    高3 24.2 45.0 18.8 10.4 1.6 100.0 1438

    生きものや科学のことをしらべたり考えたりするのが好きだ

    小3 41.9 28.9 20.4 6.8 2.1 100.0 1118

    小6 29.0 29.9 31.3 8.7 1.2 100.0 1164

    高3 16.4 25.4 33.7 22.5 1.9 100.0 1438

    社会や歴史のできごとを調べたり考えたりするのが好きだ

    小3 28.7 29.9 25.9 12.4 3.0 100.0 1118

    小6 32.5 30.8 24.9 10.5 1.3 100.0 1164

    高3 20.0 28.2 29.8 20.1 1.9 100.0 1438

    自分の気持ちや考えをうまく伝えられたらいいなと思う

    小3 45.5 29.8 15.6 6.4 2.7 100.0 1118

    小6 40.4 36.1 16.4 5.8 1.3 100.0 1164

    高3 48.6 29.6 13.1 6.7 1.9 100.0 1438

    算数の問題の解き方を考えたり工夫したりするのが好きだ

    小6 20.3 29.2 35.0 13.9 1.6 100.0 1164

    注) 下線は最頻値。 (JELS 2003)

    16

    JELS 第1集 (2004.3)

  • 図表Ⅰ―11 成績/高校の学科・ランクと勉強していて感じることとの関係

    よくある+

    ときどきある

    あまりない+

    ぜんぜんない無回答 合計 N

    教科書や本を読んでいて、登場人物や書いてある内容に興味がわいてくる

    小3 成績上位 75.3 23.5 1.1 100.0 523

    成績中位 65.8 32.6 1.6 100.0 377

    成績下位 55.6 42.5 1.9 100.0 160

    小6 成績上位 75.2 24.2 0.6 100.0 347

    成績中位 70.9 28.9 0.2 100.0 499

    成績下位 51.9 47.3 0.8 100.0 258

    高3 上位校 79.8 20.2 0.0 100.0 109

    中位校 74.1 24.3 1.5 100.0 584

    下位校 62.1 36.1 1.9 100.0 427

    専門校 66.0 32.1 1.9 100.0 318

    生きものや科学のことを調べたり考えたりするのが好きだ

    小3 成績上位 77.4 21.8 0.8 100.0 523

    成績中位 69.2 28.9 1.9 100.0 377

    成績下位 58.1 40.0 1.9 100.0 160

    小6 成績上位 66.9 32.6 0.6 100.0 347

    成績中位 57.9 41.1 1.0 100.0 499

    成績下位 53.9 44.6 1.6 100.0 258

    高3 上位校 56.9 42.2 0.9 100.0 109

    中位校 37.8 60.1 2.1 100.0 584

    下位校 39.8 58.1 2.1 100.0 427

    専門校 46.5 51.6 1.9 100.0 318

    社会や歴史のできごとを調べたり考えたりするのが好きだ

    小3 成績上位 65.8 32.7 1.5 100.0 523

    成績中位 54.4 42.4 3.2 100.0 377

    成績下位 49.4 47.5 3.1 100.0 160

    小6 成績上位 70.9 28.5 0.6 100.0 347

    成績中位 66.7 32.3 1.0 100.0 499

    成績下位 49.2 48.8 1.9 100.0 258

    高3 上位校 56.9 42.2 0.9 100.0 109

    中位校 52.1 46.4 1.5 100.0 584

    下位校 42.2 55.5 2.3 100.0 427

    専門校 46.5 51.3 2.2 100.0 318

    自分の気持ちや考えをうまく伝えられたらいいなと思う

    小3 成績上位 80.9 17.8 1.3 100.0 523

    成績中位 72.4 24.9 2.7 100.0 377

    成績下位 69.4 28.8 1.9 100.0 160

    小6 成績上位 81.6 17.6 0.9 100.0 347

    成績中位 77.2 22.0 0.8 100.0 499

    成績下位 70.9 27.5 1.6 100.0 258

    高3 上位校 86.2 12.8 0.9 100.0 109

    中位校 84.9 13.7 1.4 100.0 584

    下位校 72.6 25.1 2.3 100.0 427

    専門校 70.8 26.7 2.5 100.0 318

    算数の問題の解き方を考えたり工夫したりするのが好きだ

    小6 成績上位 72.6 26.8 0.6 100.0 347

    成績中位 46.9 51.3 1.8 100.0 499

    成績下位 25.6 72.5 1.9 100.0 258

    (JELS 2003)

    17

    第Ⅰ章 学習行動・意識

  • ある。また、「社会や歴史のできごとを調べたり考えたりするのが好きだ」という児童・生徒は、小3で58.6%、

    小6で63.3%、高3で48.2%と高3で低くなっていた。「自分の気持ちや考えをうまく伝えられたらいいなと思う」

    児童・生徒はどの学年でも75%以上いた。しかしここで考えるべきことは、いずれの学年においても、成績/高

    校ランクの下位の児童・生徒が上位の児童・生徒よりもどの項目に関しても数値が下回っているということであ

    る(図Ⅰ―11)。勉強していていろいろ感じる児童・生徒は、それに興味が出て成績にも影響するのだろうか。

    つぎに、ふだん、学校の授業や宿題以外でつぎのことをよくするかどうか4段階で聞いた(図表Ⅰ―12)。項目

    は「文学作品や小説・物語の本を読む」(小3では「お話やものがたりの本を読む」)、「美術館や博物館に行く」

    「読みたい本を本屋で探して買う(買ってもらう)」「地域の図書館で本を読んだり、借りたりする」「新聞のニュー

    ス欄を読む」(小6、高3のみ)「インターネットで調べものをする」(小6、高3のみ)である。これは「日常生

    活の中での『学習』」(ベネッセ教育研究所2002b)とも捉えられるものであり、直接的に学校の勉強に関わるもの

    ではないが、授業の理解度や「成績」、延いては進路にも影響する要因と考えられるものである。

    まず、「本を読む」のを「よくする+ときどきする」と答えたのは小3では66.2%、小6では57.2%、高3では

    43.8%、「美術館や博物館に行く」では小3は32.4%、小6は17.7%、高3は11.6%、「地域の図書館で本を読ん

    だり借りたりする」では小3は49.7%、小6では44.2%、高3では23.9%であり、これらは学年が進行するにつ

    れ、それをする人の割合が少なくなる傾向にあった。また、「読みたい本を本屋で探して買う」のは小6が最も多

    かった(小3で46.1%、小6で68.1%、高3で60.0%)。「新聞のニュース欄を読む」や「インターネットで調べ

    ものをする」のように学年が進行するにつれ増加すると予想された項目では、小6と高3の割合はほとんど変わ

    らなかった。

    5)勉強頻度・勉強時間(小3―問11・問13、小6―問14・問16、高3―問16・問18)

    勉強頻度や勉強時間というものは、児童・生徒やその保護者の教育アスピレーションを見る指標となる。テレ

    ビを見る時間は勉強時間の代価であると考えられるため、保護者の教育についての方針や児童・生徒の意欲を垣

    間見ることができよう。それではまず児童・生徒が週にどのくらい勉強しているのかを見ることにする(図表Ⅰ

    図表Ⅰ-12 興味・関心

    よくするときどき

    する

    あまり

    しない全然しない 無回答 合計 N

    文学作品や小説・物語の本を読む

    小3 33.0 33.2 17.8 14.1 1.9 100.0 1118

    小6 22.1 35.1 23.6 18.3 0.9 100.0 1164

    高3 17.7 26.1 22.7 30.9 2.6 100.0 1438

    美術館や博物館に行く

    小3 10.3 22.1 30.9 34.1 2.7 100.0 1118

    小6 3.0 14.7 35.6 45.5 1.2 100.0 1164

    高3 2.8 8.8 20.8 64.7 2.9 100.0 1438

    読みたい本を本屋で探して買う

    小3 26.0 30.1 22.0 19.5 2.3 100.0 1118

    小6 31.1 37.0 19.5 11.3 1.0 100.0 1164

    高3 27.1 32.9 18.5 18.9 2.6 100.0 1438

    地域の図書館で本を読んだり借りたりする

    小3 25.8 23.9 21.5 26.1 2.7 100.0 1118

    小6 16.0 28.2 27.8 27.1 0.9 100.0 1164

    高3 9.0 14.9 26.2 47.0 2.9 100.0 1438

    新聞のニュース欄を読む

    小6 14.5 28.6 27.7 28.0 1.2 100.0 1164

    高3 15.6 28.2 25.5 28.0 2.8 100.0 1438

    インターネットで調べものをする

    小6 36.6 26.1 17.5 18.6 1.2 100.0 1164

    高3 36.0 25.6 11.8 24.1 2.6 100.0 1438

    注) 下線は最頻値。 (JELS 2003)

    18

    JELS 第1集 (2004.3)

  • ―13、図表Ⅰ―14)。

    小3では「ほとんど毎日」勉強する児童は32.7%、小6では22.1%、高3では18.9%と、学年が上がるにつれ

    勉強する頻度が減っていることがわかる。とくに「家ではほとんど勉強しない」と答えた児童・生徒は小3で

    14.3%、小6で20.9%、高3で55.2%と、高3の生徒が圧倒的に多い。また、一日のうち家で勉強する時間では、

    小3では「だいたい30分ぐらい」が最も多く(39.0%)、「ほとんどしない」(20.9%)、「1時間ぐらい」(18.2%)

    でそれにつづく。小6も同様「30分ぐらい」が32.2%で最も多く、「ほとんどしない」(22.2%)、「1時間ぐらい」

    (21.4%)がそれにつづいている。高3では「ほとんどしない」と答えた生徒が53.5%おり、小学生よりも勉強し

    ない傾向が見てとれる。しかしながら、ここで平均勉強時間を見てみると 、小3では50.2分、小6では54.4分、

    高3では56.6分と3学年ともさほど変わらないのである。さらに平均テレビ時間は小3で124.6分、小6で152.4

    分、高3で140.5分であった。これは、高3では多くの生徒があまり勉強をしないが、一定層がより多く勉強して

    いるためだと考えられる。

    この項目に関しては、節をあらためてより詳しく見ることにする。

    6)学校外学習機会の利用―塾・習い事(小3―問12、小6―問15、高3―問17)

    最後に、現在、学校外の学習機会をどのくらい児童・生徒が利用しているかを概観する。

    図表Ⅰ-13 家での勉強頻度

    ほとんど

    毎日週に4-5日 週に2-3日

    週に1日

    くらい

    家ではほと

    んど勉強し

    ない

    無回答 合計 N

    小3 32.7 16.9 21.4 11.1 14.3 3.6 100.0 1118

    小6 22.1 16.6 25.9 13.5 20.9 1.1 100.0 1164

    高3 18.9 6.0 7.7 8.6 55.2 3.5 100.0 1438

    注) 下線は最頻値。 (JELS 2003)

    図表Ⅰ-14 一日のうちの勉強時間・テレビを見る時間

    ほとんど

    しない

    だいたい

    30分ぐらい

    1時間

    ぐらい

    1時間30分

    ぐらい

    2時間

    ぐらい

    2時間30分

    ぐらい

    3時間

    ぐらい

    3時間30分

    ぐらいそれ以上 無回答 合計 N

    小3 勉強時間 20.9 39.0 18.2 8.7 4.6 1.6 1.0 0.6 3.2 2.2 100.0 1118

    テレビ時間 4.5 10.4 18.1 13.3 12.5 6.7 6.4 4.6 20.0 3.5 100.0 1118

    小6 勉強時間 22.2 32.2 21.4 9.1 5.9 1.6 2.0 0.9 3.4 1.4 100.0 1164

    テレビ時間 1.6 3.7 9.6 11.4 18.2 9.1 14.1 5.2 25.4 1.6 100.0 1164

    高3 勉強時間 53.5 6.7 7.8 3.9 7.1 2.4 5.8 1.0 8.3 3.6 100.0 1438

    テレビ時間 6.7 5.1 12.4 6.7 18.2 5.0 16.2 3.1 23.3 3.3 100.0 1438

    注) 下線は値が大きい順に2つ。 (JELS 2003)

    図表Ⅰ-15 学校外学習機会の活用(複数回答)

    小3 小6 高3

    家庭教師 2.1 3.2 1.5

    復習塾 10.0 19.6 3.5

    受験塾 5.4 13.7 25.8

    通信教育 18.7 13.2 4.7

    習い事 76.0 68.9 10.9

    何もしていない 14.0 14.3 56.0

    無回答 4.0 3.6 5.6

    合計 130.3 136.4 108.0

    N 1118 1164 1438

    注) 下線は値の大きい順に2つ。 (JELS 2003)

    19

    第Ⅰ章 学習行動・意識

  • 図表Ⅰ―15によれば、習い事は小学生の多くがしており、小3では76.0%、小6では68.9%もの児童が行って

    いる。その他、小3では通信教育をとっている児童が比較的多く(18.7%)、塾や習い事はなにもしていない児童

    も14.0%いる。小6では学校の勉強の復習をする塾に行っている児童が19.6%おり、受験のための勉強をする塾

    に行っているのが13.7%、通信教育をとっているのが13.2%であった。小3と同様、何もしていない児童も14.3%

    いた。この傾向は高3では大きく異なり、受験のための塾へ行っている生徒が25.8%いるのに対し、何もしてい

    ない生徒も56.0%いた。

    つぎに、塾・習い事の組み合わせを見てみよう(図表Ⅰ―16)。

    小3では「習い事のみ」の児童が51.1%で最も多く、つぎに「通信教育、習い事」(13.1%)、「復習塾、習い事」

    (5.0%)であった。小6も同様に「習い事のみ」の児童が最も多く(37.6%)、「復習塾、習い事」(12.1%)、「通

    信教育、習い事」(8.8%)、「受験塾、習い事」(6.3%)がそれにつづく。これに対して高3では「受験塾のみ」

    が19.9%おり、「習い事のみ」をしている生徒は2番目に多いものの7.9%のみである。

    この項目に関しては C節でより詳しく見ることにする。

    B.学習習慣

    この節では、児童・生徒の家での勉強時間、週ごとの勉強頻度の差と関連する要因を探る。とくに高3の父母

    の学歴、高校の学科・ランクとの関係を見ることにする。父母の学歴が父母と児童・生徒の教育アスピレーショ

    ンに影響していることは十分予想されることである。また、学歴のちがいは家庭の経済力や具体的な教育方針・

    しつけの仕方にも影響があると考えられる。ここでは、父母の学歴は「お父さんは、大学を出ている」「お母さん

    は大学を出ている」という質問項目から「父母が大卒」「父のみ大卒」「母のみ大卒」「父母が非大卒」という4変

    数を作成した 。

    まず、父母の学歴は家での勉強頻度、一日のうちの勉強時間・テレビを見る時間と関係している。「父母が大卒」

    で「ほとんど毎日」勉強する児童・生徒は小3で41.4%→小6で37.3%→高3で36.1%であるのに対し、「父母が

    非大卒」で「ほとんど毎日」勉強すると答えたのは小3で29.6%→小6で15.1%→高3で11.1%とその差が大き

    い。また、一日のうちの勉強時間を聞いている項目でもやはり「ほとんどしない」と答えた「父母が大卒」の児

    童・生徒は小3で15.1%→小6で12.5%→高3で37.8%だが、「父母が非大卒」の児童・生徒は小3で22.7%→小

    6で26.3%→高3で63.3%である(図表Ⅰ―17)。この対称として高3で3時間30分以上勉強する生徒は「父母が

    大卒」で15.8%であるのに対し、「父母が非大卒」で5.1%となっている。一方、一日のうち3時間30分以上テレ

    ビを見るのは、「父母が大卒」の児童・生徒は小3で14.2%→小6で17.0%→高3で15.8%であるのに対し、「父

    母が非大卒」である児童・生徒は小3で21.4%→小6で27.1%→高3で28.0%と「父母が大卒」に比べ多いこと

    が明らかである。ここで父母の学歴と在籍している高校の学科・ランクを考える必要がある。進学者の多い「上

    図表Ⅰ-16 塾・習い事の組み合わせ

    小3 小6 高3

    習い事のみ 51.1 習い事のみ 37.6 受験塾のみ 19.9

    通信教育、習い事 13.1 復習塾、習い事 12.1 習い事のみ 7.9

    復習塾、習い事 5.0 通信教育、習い事 8.8 受験塾、通信教育 1.9

    通信教育のみ 2.6 受験塾、習い事 6.3 通信教育のみ 1.7

    受験塾、習い事 2.2 復習塾のみ 4.4 受験塾、習い事 1.7

    復習塾のみ 1.5 受験塾のみ 4.0 復習塾のみ 1.3

    復習塾、通信教育、習い事 1.2 通信教育のみ 2.7 復習塾、受験塾 1.3

    復習塾、受験塾、習い事 1.1 家庭教師のみ 1.0

    その他 5.2 その他 5.2 その他 1.7

    何もしてない 14.0 何もしてない 14.3 何もしてない 56.0

    無回答 4.0 無回答 3.6 無回答 5.6

    合計 100.0 100.0 100.0

    N 1118 1164 1438

    注) 図表は値の多い順に並べてある。1.0%未満のものは「その他」としてまとめた。 (JELS 2003)

    20

    JELS 第1集 (2004.3)

  • 位校」に「父母が大卒」である生徒のうちの23.7%が通っているのに対し、「父母が非大卒」である生徒は2.4%

    のみである。反対に、「父母が非大卒」のうち66.2%が進学者の少ない「下位校」か「専門校」に在籍している(「父

    母が大卒」の生徒のうち「下位校」と「専門校」に通っているのは27.8%)。

    実際、ここで高校ランクと勉強頻度・勉強時間との関係を見てみると、勉強頻度に関しては「下位校」の71.0%、

    「専門校」の74.8%が「家ではほとんど勉強しない」と答えているのに対し、「上位校」では8.3%とその差は歴然

    である。また、図表Ⅰ―18で示したように、一日の中で勉強を「ほとんどしない」と答えている生徒が「下位校」

    68.1%、「専門校」73.6%であるのに対し、「上位校」では8.3%にとどまっている。進学校である「上位校」の生

    徒は68.8%が「ほとんど毎日」勉強し、31.2%が一日3時間30分以上勉強すると答えているのである。これと対

    照的に、一日のうちテレビを3時間30分以上見ると答えている生徒は「下位校」で30.0%、「専門校」で33.6%い

    るが、「上位校」では3.7%にすぎない。また、平均勉強時間は上位校で148.9分、中位校で78.4分、下位校で27.1

    分、専門校で22.9分、テレビを見る平均時間は上位校で85.8分、中位校で132.2分、下位校で159.5分、専門校で

    150.2分とやはりばらつきが見られた。

    以上のように時間の使い方が父母の学歴、高校の学科・ランクによって異なっている。父母の学歴は子どもの

    小学校時の学習習慣とすでに関連があるようである。父母の学歴は子どもの学習環境の何に―経済力か、しつけ

    図表Ⅰ-18 高校の学科・ランクと勉強時間・テレビを見る時間との関係

    ほとんど

    しない

    だいたい

    30分ぐらい

    1時間

    ぐらい

    1時間30分

    ぐらい

    2時間

    ぐらい

    2時間30分

    ぐらい

    3時間

    ぐらい

    3時間30分

    ぐらいそれ以上 無回答 合計 N

    勉強時間 上位校 8.3 2.8 11.9 8.3 12.8 7.3 14.7 2.8 31.2 0.0 100.0 109

    中位校 40.4 6.5 10.3 4.1 10.3 2.7 9.2 1.5 11.5 3.4 100.0 584

    下位校 68.1 6.1 6.1 3.5 3.7 1.6 2.3 0.0 2.3 6.1 100.0 427

    専門校 73.6 9.1 4.1 2.5 3.8 0.9 0.9 0.6 2.5 1.9 100.0 318

    テレビ時間 上位校 8.3 19.3 24.8 11.0 19.3 1.8 11.0 0.0 3.7 0.9 100.0 109

    中位校 5.8 5.0 14.2 8.4 21.2 6.2 17.1 2.7 16.4 2.9 100.0 584

    下位校 5.9 3.3 7.3 4.2 15.2 5.2 19.4 4.2 30.0 5.4 100.0 427

    専門校 8.8 3.1 11.6 5.3 16.4 3.8 11.9 3.1 33.6 2.2 100.0 318

    注) 下線は値の大きい順に2つ。 (JELS 2003)

    図表Ⅰ-17 父母の学歴と勉強時間・テレビを見る時間との関係

    ほとんど

    しない

    だいたい

    30分ぐらい

    1時間

    ぐらい

    1時間30分

    ぐらい

    2時間

    ぐらい

    2時間30分

    ぐらい

    3時間

    ぐらい

    3時間30分

    ぐらいそれ以上 無回答 合計 N

    小3 勉強時間 父母非大卒 22.7 38.9 16.6 8.4 4.2 1.4 1.3 0.6 2.7 3.1 100.0 771

    母のみ大卒 26.8 39.0 19.5 4.9 4.9 0.0 0.0 0.0 4.9 0.0 100.0 41

    父のみ大卒 17.9 41.8 20.9 7.5 3.0 3.0 1.5 0.0 3.0 1.5 100.0 67

    父母大卒 15.1 38.5 22.2 10.5 6.3 2.1 0.0 0.8 4.6 0.0 100.0 239

    テレビ時間 父母非大卒 4.7 8.3 17.5 12.8 13.2 6.4 6.9 4.9 21.4 3.9 100.0 771

    母のみ大卒 0.0 9.8 12.2 9.8 7.3 17.1 7.3 9.8 22.0 4.9 100.0 41

    父のみ大卒 4.5 11.9 23.9 10.4 9.0 7.5 3.0 4.5 23.9 1.5 100.0 67

    父母大卒 4.6 16.7 19.2 16.3 12.1 5.9 5.9 2.5 14.2 2.5 100.0 239

    小6 勉強時間 父母非大卒 26.3 33.6 20.7 8.3 5.0 0.7 1.3 0.4 1.9 1.8 100.0 720

    母のみ大卒 24.4 44.4 17.8 4.4 4.4 2.2 2.2 0.0 0.0 0.0 100.0 45

    父のみ大卒 18.8 29.7 21.1 12.5 4.7 3.9 3.1 2.3 3.9 0.0 100.0 128

    父母大卒 12.5 27.7 24.0 10.3 9.2 3.