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1 タイ王国 Kingdom of ThailandⅠ 監督機関等 1 デジタル経済社会省(Digital for Economy and Society Ministry / MDES所掌事務 2016 9 月、省庁再編に伴い設立された。前身である情報通信技術省(MICT)ら概ねすべての部局と権限を引き継ぎ、 ICT 政策を所掌する。大臣室、事務次官室、 気象局、統計局、国家災害情報警報センターで構成され、ソフトウェア産業促進庁、 電子商取引開発庁、TOT Corporation Public Company Limited TOT)、CAT Telecom、タイ郵便会社を監督するほか、ICT 政策担当省として以下を所掌する。 ・電子関連産業及び企業の電子化 ICT 関連産業の振興 ・電子政府化による政府業務の効率化 2 情報通信技術省(MICTMinistry of Information and Communication Technology Tel. / Fax 66 2 141 6747 66 2 143 809 URL http://www.mict.go.th/ 所在地 The Government Complex Bldg B, 6-9 Floor, Chaeng Watthana Road, Laksi Bangkok 10210, THAILAND 幹 部 Pornchai Rujiprapa(大臣/Minister所掌事務 2002 10 月、省庁再編に伴い設立された。MICT は、旧運輸通信省から通信関 係部局を引き継ぎ、ICT 政策を所掌していたが、2014 12 月には議会において、 デジタル経済について担当する国家委員会 (the National Digital Economy Committee)を創設する法案と、MICT を改組し、デジタル経済社会省(Digital for Economy and Society Ministry)を設置する法案の二つの法案が承認された。 2016 9 月にこれらの組織が新設され、MICT は解散した。 3 国家放送通信委員会(NBTCNational Broadcasting and Telecommunications Commission Tel. / Fax 66 2 271 0151 66 2 271 3516 URL http://www.nbtc.go.th/

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タイ王国 (Kingdom of Thailand)

通 信

Ⅰ 監督機関等

1 デジタル経済社会省(Digital for Economy and Society Ministry / MDES)

所掌事務

2016 年 9 月、省庁再編に伴い設立された。前身である情報通信技術省(MICT)か

ら概ねすべての部局と権限を引き継ぎ、ICT政策を所掌する。大臣室、事務次官室、

気象局、統計局、国家災害情報警報センターで構成され、ソフトウェア産業促進庁、

電子商取引開発庁、TOT Corporation Public Company Limited(TOT)、CAT

Telecom、タイ郵便会社を監督するほか、ICT政策担当省として以下を所掌する。

・電子関連産業及び企業の電子化

・ICT関連産業の振興

・電子政府化による政府業務の効率化

2 情報通信技術省(MICT)

Ministry of Information and Communication Technology

Tel. / Fax +66 2 141 6747 +66 2 143 809

URL http://www.mict.go.th/

所在地 The Government Complex Bldg B, 6-9 Floor, Chaeng Watthana

Road, Laksi Bangkok 10210, THAILAND

幹 部 Pornchai Rujiprapa(大臣/Minister)

所掌事務

2002年 10月、省庁再編に伴い設立された。MICTは、旧運輸通信省から通信関

係部局を引き継ぎ、ICT 政策を所掌していたが、2014 年 12 月には議会において、

デジタル経済について担当する国家委員会 (the National Digital Economy

Committee)を創設する法案と、MICTを改組し、デジタル経済社会省(Digital for

Economy and Society Ministry)を設置する法案の二つの法案が承認された。2016

年 9月にこれらの組織が新設され、MICTは解散した。

3 国家放送通信委員会(NBTC)

National Broadcasting and Telecommunications Commission

Tel. / Fax +66 2 271 0151 +66 2 271 3516

URL http://www.nbtc.go.th/

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所在地 87 Phaholythin 8 (Soi Sailom), Samsen Nai, Phayathai, Bangkok

10400, THAILAND

幹 部 Thares Punsri(委員長/Chairman)

所掌事務

NBTC の前身である国家通信委員会 ( National Telecommunications

Commission:NTC)は「1997 年タイ国憲法」第 40 条とそれを受けて 2000 年 3

月に公布された「NTC-NBC 法」(Ⅱ-1の項参照)に基づき、2004 年 10 月に設

立、同年 11 月 1 日より業務を開始した。2010 年 12 月には、通信事業と放送事業

を監督する NBTCの設置を規定する法律「NBTC法」(Ⅱ-1の項参照)が施行さ

れ、2011年 9月にはNBTCの委員が選出された。NBTCの主な所掌事務は以下の

とおりである。

・政策立案及び電気通信部門のマスタープランの策定

・無線周波数の利用免許付与及び規制

・電気通信事業の免許付与及び規制

・電気通信サービスのための標準化と技術仕様の決定

・相互接続の規則及び手続の規定の策定

・消費者保護の規則と手続の規定の策定

・公正で自由な競争のための規定の策定

NBTC は 2016 年 10 月現在では 7 名の委員で構成され、委員の定年は 70 歳で、

任期は 6年。委員の選出は議会(上院)によって行われ、国王が任命する。

Ⅱ 法令

1 無線周波数割当並びにラジオ・テレビ放送事業及び電気通信の規制を行う

組織に関する法律(Act on Organizations to Assign Radio-Frequency

Spectrum and to Regulate Sound Broadcasting, Television

Broadcasting and Telecommunication Services/通称:NBTC 法)、

2010年改正、旧「NTC-NBC 法」(2000 年)

2010年 12月成立。通信事業と放送事業を監督する国家放送通信委員会(National

Broadcasting Telecommunications Commission:NBTC)の設置及びその所掌事

務等を規定している。

2 電気通信事業法(Telecommunications Business Act)(2001年)(2006

年に一部改正)

事業免許、市場競争のセーフガード、相互接続、料金、ユニバーサル・サービス、

線路敷設権に関する手続の整備等、市場競争の環境整備について規定している。

3 憲法

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2006年 9月のクーデター以降、暫定政府は新憲法制定に向けて作業を進め、2007

年 8 月 19 日に、新憲法草案の国民投票が実施され、賛成多数(57.8%)となり、

翌 20日に承認された。

新憲法の第 47 条は、放送分野及び通信分野の規律、周波数監理を行う単一の機

関の設置を規定している。これを受け、新しい規制体である NBTCを設立するため

の法律案が 2010年 11月に上下両院で可決され、翌 12月に施行された。2011年 9

月に上院において 11人の委員が選出され、国王によって任命された。

その後、2014 年 5 月の軍事クーデターにより成立した暫定政権は、同年 7 月に

暫定憲法を公布している。その後、憲法起草委員会が 2015 年 8 月に憲法草案を国

家改革評議会に提出したが、同評議会は草案を同年 9月に否決した。

2016年 1月には、新たな憲法草案が発表された。新憲法草案は 2016年 8月に国

民投票によって承認された。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

(1)事業免許

「電気通信事業法」第 7条において、電気通信分野の事業免許は、以下の 3種類

が規定されている。

事業免許種類

免許 定義

第 1種

事業免許

・非設備ベースのサービス

・自由なサービス提供が妥当と思われる性格のサービス

・NTCへの届け後、認可

第 2種

事業免許

・非設備ベース、あるいは設備ベースのサービス

・特定の利用者に提供されるサービス

・自由で公正な競争、公の利益、消費者の観点から、重大な影響の

ないサービス

・NTCが定めた免許条件に事前に完全に合致後、認可

第 3種

事業免許

・事業者が基盤として運営する設備をベースとするサービス

・一般大衆に対して提供されるサービス

・自由で公正な競争、公の利益の観点から、重大な影響のあるサー

ビス、消費者を保護する理由のあるサービス

・NTCによる審査後、認可

同法によると、NTC(現 NBTC)は以上の 3種類の免許について免許取得条件を

定め、既存事業者である TOTと CAT Telecomに免許を発行しなければならないと

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規定している。「電気通信事業法」施行以前に TOT 及び CAT Telecom と事業権契

約を結んでいた事業者については、当該契約の終了又は清算までの間、免許を要し

ない。なお、「電気通信事業法」の各免許基準については、NBTC が詳細を規定す

る。

(2)免許条件とユニバーサル・サービス基金

NBTCでは、2012 年にユニバーサル・サービス基金制度の改革を実施した。

この制度改革では、従来のユニバーサル・サービス基金を NBTC 基金(the

Broadcasting and Telecommunications Research and Development Fund for the

Public Interest)へ移管し、用途についても高速インターネットに拡大するものと

なっている。任期 3 年の 11 名の基金管理委員会がユニバーサル・サービス基金の

管理を担うことになった。旧制度と新制度の違いは以下のとおりである。

ユニバーサル・サービス基金と NBTC基金の新旧比較

旧制度(2001~2011年まで) 新 NBTC基金制度(2012年~)

・サービス提供若しくは基金への拠出

・ネットワーク事業者のみが提供・拠出

・売上げの 4%を基金へ拠出(総売上か

ら事業者間支払を引いた額から算出)

・入札プロセスを導入し、最低額を入

札した事業者がサービス提供

・すべての通信免許事業者が拠出

・最大で、総売上の 3.75%を拠出(2

年ごとに見直し)

・2,000万 THB以下の売上高の事業者

は拠出を免除

出所:NBTC

また、NBTCでは、2012年から 2016年の 5年間の期間を対象とする「ユニバー

サル・サービス義務マスタープラン(Universal Service Obligation Master Plan)」

を策定、以下のような 10の目標を掲げた。

①人口の 95%が音声サービスにアクセス可能にする。

②対象地域の村ごとに 1~2台の公衆電話を敷設する。

③人口の 80%以上が 2Mbps以上の高速インターネットにアクセス可能にする。

④対象地域のコミュニティ、学校、公衆ヘルス・センターに 2Mbps 以上のアク

セスが可能なインターネット・センターを設置する。

⑤対象地域の 5万世帯で高速インターネットを利用可能にする。

⑥障がい者、若者、高齢者、少数民族向けに 2Mbps 以上のインターネット・セ

ンターを 500か所に設置する。

⑦10万人以上の障がい者向けに特別コミュニケーション・システムを提供する。

⑧インターネット・コンテンツの開発を促進する。

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⑨緊急通報番号を提供する。

⑩基礎電気通信サービスとユニバーサル・サービス制度の研究開発を促進する。

(3)外資規制

「電気通信事業法」では、第 2種免許及び第 3種免許の事業者の外資規制は、25%

と規定されていた。しかし、2002 年 5 月、同法を改正し、外資規制の上限を 49%

に引き上げることが閣議決定された。同法案は2003年10月に下院が審議を開始し、

上院では 2005 年 11 月に可決、翌 2006 年 1 月に同改正が発効している。2006 年

12月、当時の暫定軍事政権が国内の電気通信事業における外資の議決権に関し、直

接及び間接投資どちらも 49.9%の上限を設定すると発表したが、2007 年 1 月、こ

の外資規制は電気通信事業には適用されないと発表した。2007年 4月、内閣は「外

国人事業法(Foreign Business Act)」に対する改正案を承認し、外資規制の対象か

ら電気通信事業を除外し、引き続き、議決権の大多数を外資が保有することを認め

た。最近の動きとして、2012 年 7 月、NBTC は外資規制に関する規制の改正を承

認し、電気通信事業における外資の優越の防止を図った。その一方で、国内の電気

通信事業に対して、「電気通信事業法」及び「外国人事業法」を順守し、改めて外資

の上限比率が 50%未満に設定されているという指針を示した。

(4)「2012年電気通信事業基本計画」

同計画は、公示から 5年間に適用されるもので、電気通信事業の開発に注力する

ことや、情報技術へのアクセスの格差是正、国の競争力強化等を図るとしている。

また、同計画で掲げられた六つの目標は、以下のとおりである。

・国民が、良質な通信サービスをあまねく適切かつ公平な価格で利用可能にする。

教育、保健衛生、文化、国家安全保障等の公共分野における国民の利益最大化

を考慮する。

・既存事業者と新規参入事業者間を含めた事業者間の自由で公正な競争を促進す

る。

・通信資源の効率的使用の促進、平時と緊急・災害時等の両方のニーズに十分対

応可能なものとする。

・音声サービスとブロードバンド・サービスの固定通信サービスへのアクセス機

会を拡大する。

・消費者の権利意識と知識向上を図り、消費者保護制度のメカニズムの開発を行

う。

・国際レベルでの国の競争力を強化する。

(5)仮想移動体通信事業者(MVNO)のライセンス条項

2012年以降、NBTCはMVNOに対して以下の項目を遵守することを要求してい

る。

・すべてのMVNOは第 1種事業免許(非設備ベース)に分類される。

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・標準的なMVNOの免許期間は 5年かつ更新可能。

・MVNO は毎年免許料を支払う。また、ユニバーサル・サービス基金への支払

いも行う。

・MVNOは免許を取得してから 1年以内にサービスを開始することが望ましい。

ただし、サービスを開始しないMVNOに対して NBTCから措置があったとい

う事例はない。

・MVNO はユーザの名前、住所、身分証明書に記載された詳細な情報などにつ

いてデータベースを用いて管理することが要求される。ユーザの ID 登録が義

務付けられている。

・MVNOが通信回線の管理に関わることを一切禁止する。

・MVNOは顧客を差別しない通信サービス計画を用意する義務がある。

・MVNOが新しい設備を導入する際は NBTCに通知する義務がある。

・MVNOは 6ヶ月ごとにサービスの運営成績を NBTCに報告する義務がある。

・MVNO は消費者のサービス利用に対する請求金額と支払いシステムを整備す

る義務がある。一連の手続きと報告は会計監査を受ける。

・MVNO がユーザに対してサービスを継続して提供することができなくなった

場合、代替サービスを提供する義務がある。

2 競争促進政策

チュアン政権時の 2000年 9月に、TOTと CAT(当時)を会社化する方針が決定

された。TOTについては株式会社化、CATについては CAT Telecomとタイランド・

ポストに分割した上で株式会社化し、3 社の株式のすべてを財務省が保有すること

になった。株式会社化については、TOTは 2002 年 7月に、CATは 2003 年 8月に、

CAT は電気通信と郵便の 2 社の株式会社に分割され、株式会社化された。2016 年

10月現在、TOT、CAT Telecomの株式のすべてを財務省が保有している。

3 ICT 政策

タイにおける ICT 分野の振興政策の長期的枠組としては、「ICT2020」があり、

その実行計画として4年ごとの期間を対象とするマスタープランが策定されている。

その他、2011年には、国家ブロードバンド政策が導入されている。これまでの ICT

分野の振興政策の概要は以下のとおりである。

(1)「国家ブロードバンド政策」(National Broadband Policy)

2010 年 11 月に閣議決定。ブロードバンドの人口普及率を 2015 年までに 80%、

2020年までに 95%とする目標を設定している。

(2)「ICT2020」(2011~2020年)

2011年 5月に内閣承認。同政策枠組では以下の目標が掲げられた。

・ユニバーサル・ブロードバンド・アクセスの実現(国家ブロードバンド計画の

目標と同じ数値目標を掲げている)。

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・知識経済化に対応する人材育成(人口の 75%が情報リテラシーを身に付け、ICT

専門家を人口 3%の割合まで高める)。

・ICT産業を GDPの 18%を占めるまでに成長させる。

・国際的なタイの ICTレディネス・ランキングの順位をトップレベルまで向上さ

せる。

・新たなインターネット・ベースの雇用を創出し、恵まれない層の生活の質の向

上を図る。

・環境に配慮しつつ、ICT の利活用を進め、人口の 50%が ICT の重要性を認識

するようにする。

このビジョンについて、「ICT2020」では、「スマートタイランド構想(The “Smart

Thailand 2020” vision)」と命名している。同構想の実現に向け以下の七つの戦略

が策定された。

・戦略 1:ユニバーサルでセキュアな ICTとブロードバンド基盤構築

・戦略 2:ICT分野における人材育成と競争力のある労働力の育成

・戦略 3:ICT産業の競争力強化と ASEAN諸国におけるリーダーの地位獲得

・戦略 4:ICT採用とグッド・ガバナンスのためのスマート・ガバメントの実現

・戦略 5:タイの競争力強化と活力ある経済のための ICT

・戦略 6:社会の公平性実現のための ICT利活用(デジタル・ディバイド解消等)

・戦略 7:グリーン ICTの推進

(3)「第 3次国家 ICTマスタープラン」(The Third Thailand Information and

Communications Technology Master Plan)(2014~2018年)

同マスタープランにおける八つの目標は以下のとおり。

・高度なセキュリティを持つインターネットのアクセシビリティ向上に向けたブ

ロードバンド基盤開発支援

・ICT基盤開発戦略を推進するための十分な人材育成

・サービス産業とクリエイティブ産業を効率的に開発

・ICT産業による経済成長を促進

・電子政府サービスのイノベーションを推進

・内部管理とデータの相互運用性を高めるためのスマート・ガバメントの開発

・ICTを経済に適用し、包括的な成長を促進

・サイバー・セキュリティの向上

4 SIM カードの登録制度

NBTCは2015年2月にプリペイドSIMカードのユーザ登録を行う制度を開始し、

同年 8月にユーザ登録を完全義務化した。この制度により事業者は、登録されてい

ないプリペイド SIMカードの端末に対し、通話やメールなどを使用できないように

措置を講じる必要がある。なお、既存ユーザの登録期限である 2015 年 7月 31日ま

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でに、AISでは利用者の 83.5%、DTACでは 79.9%、True Corpでは 76.8%につい

て登録が完了した。

5 海底ケーブル敷設計画

2014年 8月にNCPOは海底に光ファイバーケーブルを敷設する 3つのプロジェ

クトの予算を発表した。

・アジア-アフリカ-ヨーロッパ(AAE-1)、予算 14億 THB、2016年第 4四半期に

サービス開始予定

・東南アジア-中東-西ヨーロッパ 5(SEA-ME-WE 5)、予算 13 億 THB、2016 年

第 4四半期にサービス開始予定

・東南アジア-日本(SJC)、予算 22億 7000万 THB、2013年 6月にサービス開始

(ただしタイではサービスが開始していない)

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

「電気通信事業法」及び「無線通信法」の規定に基づいて、NBTCが電気通信機

器の技術規則の制定を行う。NTC(現 NBTC)は 2007年に無線機器を含む電気通

信機器の新しい基準認証制度を発表した。機器は NBTCが定める技術規則を満たし

たことを NBTC 又は外部の試験認証機関によって証明された後、NBTC による登

録(Class A)又は認証(Class B)を受けて市場に出される。また、短距離無線機

器などの簡易な機器については、供給者適合宣言(SDOC)での販売が可能である。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

従前、国内通信は TOT、国際通信は CAT Telecomがサービスを提供してきた(た

だし、マレーシア、ラオス、カンボジア、ミャンマー向けの国際通信については、

TOT が提供)。両社は独占権を維持しながら、Built-Transfer-Operation (BTO)

事業方式で民間企業に事業権を付与し、電気通信網の建設・運営を委託してきた。

TOT は、1991 年に 200 万回線と 1996 年に 60 万回線の建設をテレコム・アジア

(Telecom Asia:TA、現 TrueMove)に、1992 年に 100 万回線(地方)と 1995

年に 50万回線の建設を TT&Tに認め、それぞれ 25年間の BTO事業免許を付与し

ている。現在では、国内・国際といった両社間の事業区分はなくなっており、また、

民間通信事業者も NBTCから免許を受けて国際通信等のサービスを提供している。

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タイにおける固定電話回線数は減少傾向にあり、2014年末現在、国内全体の固定

電話回線数は約 570万回線となっている。2014 年末現在、TOTが依然として最大

の事業者となっており、PSTN市場全体の約 61%に当たる 350万回線を保有する。

主な固定電話事業者の事業分野は以下のとおりである。

2 移動体通信

タイでは、2008年上半期に AISが 3Gサービスを試験的に開始、2008年 8月に

既存周波数帯(850MHz帯及び 900MHz帯)における 3G免許がNTCからAdvance

Info Service(AIS)、Digital Total Access Communications(DTAC)、True Move

の 3 社に付与された。2011 年 7 月には AIS、8 月には DTAC、True Move が正式

な商用 3G サービスを立ち上げた。2012 年に、3G 周波数免許のオークションが実

施されたことを受け、3G 加入者数が増加している。AIS、DTAC、TrueMove が、

2012 年のオークションでそれぞれ 3 ブロック(1 ブロックは 2×5MHz)を落札、

3G サービスを開始している。2014 年末現在で 3G 契約者数が 8,298 万契約を超え

るなど急速に普及している。

2015年 2月から開始されたプリペイド SIMカードの登録制度の影響により、同

年 1月から 9月までにかけて移動体通信の市場規模は大きく縮小した。この 9ヶ月

間で大手民間 3社(AIS, DTAC, True)は合計 1483万の顧客アカウントを喪失した。

ところが、タイ全体の顧客アカウント数は依然として 8200 万程度存在し、携帯電

話の普及率も 120%と高いことから、タイ国民の多くが既に複数の端末を所有して

いることが伺え、さらに市場が成長していくことが見込まれる。

国営の TOTと CATは、軍事政権下の政府の方針によって消費者に直接サービス

を提供する事業から民間事業者への回線の卸売を行う事業へシフトすることを余儀

なくされ、2014年 9月に合計 110万あった顧客数が 2015年 9月に 45万にまで減

少した。

国内初の商用 LTEサービスは、TrueMoveが 2013年 5月に 2.1GHz帯を利用し

て開始した。

AIS は 2016 年 1 月、1800MHz 帯および 2100MHz 帯の 4G LTE-Advanced

(LTE-A) サービスを開始した。AIS の LTE-A サービスは開始時点でバンコクおよ

び 42のチャンワット(県)を網羅し、全国への展開を目指す。同月に Trueは商用

LTE-A サービスを開始し、タイ人口の 97%をカバーすることを目標とする計画を

発表した。一方、DTACは 2015年 11月に従来の 2100MHz帯の 4Gサービスを拡

張し、首都バンコク内で 1800MHz帯の 4G LTEサービスを開始したが、DTACの

1800MHz帯の免許は 2018年 9月に失効する予定である。

2016 年 2 月、AIS と DTAC は、AIS の 2G サービス利用者が DTAC の 1.8GHz

帯を使用できるようにするローミングサービスを契約した。また、2016 年 9 月、

TOTと AISは 6ヶ月の間、AISの子会社である AWNが TOTの 2.1GHz帯を使用

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するローミングサービスを契約した。

主な移動体通信事業者の概要は以下のとおりである。

3 インターネット

インターネット接続は、アクセス回線によるダイヤル・アップの加入者数が大部

分を占め、ブロードバンド加入者の多くは首都に集中している。

その他、MICT がバンコク首都圏において無料公衆 Wi-Fi のホットスポットを 2

万か所に導入し、インターネットアクセスの促進とデジタル・ディバイド解消を図

るプロジェクトを実施している。同プロジェクトは、2011年 12月に開始され、2015

年までに合計 25 万か所の Wi-Fi ホットスポットの整備を実施する計画であった。

同プロジェクトの予算は、2012年から 2015年までの 3年間で 300億 THBとなっ

ており、TOTと CAT Telecomが協力した。2013 年 8月現在、12万か所へのWi-Fi

ホットスポットの導入が完了している。しかし、2014 年 8 月の報道によると、上

述の全国Wi-Fi敷設プロジェクトは、期限内に敷設数を満たすことができず、拠出

された金額は返金された。

2015年 12月時点では National Backbone Holding Co を設立し、TOTと CAT

Telecom の提供するネットワーク回線や公共事業ネットワーク回線などを統合する

計画が持ち上がっている。計画では、統合後の光ファイバーケーブルの総距離は 15

万キロメートル、タイ王国発電公社などのケーブルも加われば 20 万キロメートル

になると試算される。National Backbone Holding Co はネットワーク回線レンタ

ルサービスを提供すること及び、グループ内に新たに 2社(Telecom Tower Co お

よび Fibre-Optic Network Co)を新設することが計画されている。

2016年 1月に内閣はユニバーサル・サービス基金から 200億 THBを、国内すべ

ての村でブロードバンドのインフラ整備を行うプロジェクトに割り当てた。このプ

ロジェクトは TOTと CATが主導、MICT(2016年 9月に解散)が監督し、地方の

低収入世帯にも高速なインターネットサービスを提供できるようにする狙いがある。

2016年 1月時点では、タイ国内ではおよそ 79,000の村が存在するが、そのうち

40,000の村では何らかの形でブロードバンドインターネット接続が可能になってい

ると報じられている。

ブロードバンドインターネット接続サービス事業者としては、2015 年 9 月時点

では Triple T Broadbandが提供する 3BBブランドの市場占有率が TOTを上回り

首位になっている。

2016年 1月現在、タイ国内では 123のインターネット接続提供事業者が存在し、

3年前より 27増加したが、小規模でニッチなサービスや地方の事業者などが多い。

光ファイバーの導入については、True Corp は 2016 年末までに首都バンコク内

で 400 万戸、タイ全国で 1000 万戸への光ファイバーケーブルの導入を目指してい

る。2015年 9月時点ではおよそ 70のチャンワット(県)で 560万戸への導入を完

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了し、Triple T Broadbandが提供する 3BBブランドを追い上げている。また、AIS

は 2015 年 4 月に光ファイバー通信サービスに参入し、ベンチャーを通してブロー

ドバンド、VoIP、IPTV、3G/4G の4種類のサービスをバンコクと 7 つのチャンワ

ットで開始し、2016 年 1 月までに 30 万戸に対し FTTH/FTTB/VDSL 接続サービ

スを導入している。

衛星ブロードバンドについては、2005年 8月 12日、Shin Satellite(現 Thaicom)

の iPSTAR(Thaicom 4)が打ち上げられた。アジア・太平洋地域をカバーする世

界最大のブロードバンド衛星の iPSTAR は、45Gbps の伝送能力を有している。

iPSTARは、2015年 11月現在、アジア・太平洋地域の 14か国をカバーしている。

4 新成長サービス

モバイル放送については、AISが 2013年第 2四半期に、3G加入者向けの付加価

値サービスで、ライブストリーミングでコンテンツ配信を行う「GMMZ on AIS」

の開発、2013年 7月にサービス提供を開始した。

5 仮想移動体通信事業者(MVNO)

2016 年 1 月までに NBTC は 39 の事業者を MVNO として登録したが、2016 年

1 月時点でサービスを開始したのは 6 事業者のみである。また、9 つの事業者にお

いて免許の期限が切れ、そのうち 6つの事業者の免許は更新されていない。

民間のMNO (AIS, DTAC, True)はネットワーク回線容量の 10%をMVNOに提

供することが義務付けられているが、2016 年現在、国営の MNO である TOT と

CAT Telecomが国内のほとんどのMVNOに対してネットワーク回線の提供を行っ

ている。

True Corp の子会社である Real Move は、MVNO の免許を取得して True の

850MHz 帯 3G 通信サービスを提供しているが、850MHz 帯のサービスは True が

直接提供する 2100MHz帯のサービスに統合されているため、MVNOサービスとし

て扱われていない。

AISは 2015年 12月にMVNOの免許を取得し、ネットワーク回線容量のリース

やシェアなどについて TOTと提携すると思われる。新規MNOの Jas Mobileを子

会社に持つ Jasmine International もMVNOの免許を取得した。

6 VoIP

タイでは、1999年 12月に CATが VoIPによる国際電話サービスを開始した。そ

の翌年には、TOTが VoIPによる国内長距離電話サービス‘Y-tel 1234’を開始し、

サービスはやがて国際電話まで拡張された。

2006 年 1 月より NTC(現 NBTC)は民間事業者に対し、消費者向けの VoIP サ

ービスを開始する際に NTCから認定を受けることを義務付けている。

2007年から電話同士の VoIPサービスが開始され、「06」から始まる VoIP電話番

号が固定電話に割り当てられた。2007 年、2008 年には CAT、True などが主導し

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て商用 VoIPサービスを開始し、2009年には Triple T Broadbandも VoIPサービス

を開始した。

7 海底ケーブル

NCPOが計画する海底ケーブル敷設計画のうち、SJCと SEA-ME-WE 5は TOT

が主導して実行している。一方、CATはタイと接続する 6つの海底ケーブルシステ

ムに関与している。また、国外企業が主導する Asia Pacific Gateway が 2016年第

2四半期に、DTACが主導するMalaysia-Cambodia-Thailand (MCT) Cableが 2016

年第 4四半期にそれぞれサービスを開始する予定である。

Ⅵ 運営体

1 TOT

TOT Corporation Public Company Limited

Tel. +66 2240 0701

URL http://www.tot.co.th/index/#

所在地 89/2 Moo 3 TOT Public Company Limited Building 9,

Chaengwattana Road, Laksi Bangkok, 10210, THAILAND

幹 部 Varut Suwakorn(代表取締役社長/President)

概要

市内・長距離通信サービス、データ通信サービスを提供している電気通信事業者。

2002 年 7 月に株式会社化した。なお、IPO は延期されており、株式のすべてを財

務省が保有している。

2 CAT Telecom

Tel. / Fax +66 2104 3000 +66 2104 3088

URL http://www.cattelecom.com/

所在地 99 Moo 3 Chaengwatthana Rd., Lak Si, Bangkok 10210-0298,

THAILAND

幹 部 Kitisak Sriprasert(社長/President)

概要

1977 年設立。2003 年 8 月、株式会社化された。なお、IPO は延期されており、

株式のすべてを財務省が保有している。国際電気通信サービスを提供している。ま

た、衛星や海底ケーブル経由の国際電話回線及び無線電信サービスも提供している。

3 INTOUCH

Tel. +66 2 299 5000 +66 2271 1058

URL http://www.intouchcompany.com/

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所在地 INTOUCH Tower, 414 Phahoyothin Rd. Phayathai, Bangkok,

10400, THAILAND

幹 部 Somprasong Boonyachai(会長/Chairman of the Group Executive

Committee)

概要

タクシン元首相が設立した総合通信事業者である。移動体通信サービスを提供す

る AIS、衛星通信サービスの Thaicom(旧 Shin Satellite)等を所有している。2006

年 1月、シンガポールの政府系投資会社の Temasek Holdingsに買収された。その

後、2013年には株式の一部をタイ証券取引所(SET)が保有する Thai NVDRが取

得した。2015年 3月現在、INTOUCHの株式は Temasek Holdings傘下の ASPEN

Holdingsが 41.62%、Thai NVDRが 21.36%を保有している。

放 送

Ⅰ 監督機関等

1 国家放送通信委員会(NBTC)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

「2007年憲法」では、通信事業と放送事業を監督する NBTCの設置が規定され、

2010 年 12 月には設置のための法律「NBTC 法」(通信/Ⅱ-1の項参照)が施行

され、放送事業の監督、周波数監理等を担うこととなった。2011年 9月には NBTC

の委員が選出された。

2 首相府広報局(PRD)

Government Public Relations Department

Tel. / Fax +66 2 618 2323 +66 2 618 2358

URL http://thailand.prd.go.th/

所在地 Rama VI Road, Soi 30, Bangkok 10400, THAILAND

所掌事務

政府の広報的役割を所掌している。ラジオ・テレビ放送、出版及びマルチメディ

ア政策を通じて政府の広報活動を行っている。教育放送的性格を有する地上テレビ

放送と国営ラジオ放送を所有している。財源は国庫交付金のほか、広告時間帯の使

用料収入である。

Ⅱ 法令

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14

1 2008年ラジオ・テレビ放送法

2008年 3月に同法が制定された。同法では、放送免許の枠組みを定めている。

2 無線周波数割当並びにラジオ・テレビ放送事業及び電気通信の規制を行

う組織に関する法律(Act on Organizations to Assign Radio-Frequency

Spectrum and to Regulate Sound Broadcasting, Television

Broadcasting and Telecommunication Services/通称:NBTC 法)

(2010 年)

(通信/Ⅱ-1の項参照)

3 憲法

(通信/Ⅱ-3の項参照)

4 公共放送機構法

同法は、2007年 10月に成立、翌 2008年 1月に施行された。同法の施行により、

国内初の公共放送であるタイ公共放送局(Thai Public Broadcasting Service:TPBS)

が設立された。同公共放送の財源としては、酒税とたばこ税の 1.5%までが、20億

THBを超えない範囲で充当される。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

「2008年ラジオ・テレビ放送法」では、放送免許を三つ(公共サービス用、地域

サービス用、商業サービス用)に分類し、免許を付与された放送事業者は公共の利

益と視聴者の利益を目的として事業を行うことと定めている。放送免許体系では、

設備免許とネットワーク免許とは別に、個別のチャンネルを提供するサービス免許

枠が用意された点が新しい。その際、設備免許を保有する事業者であっても、放送

サービスのチャンネルを提供する場合には、サービス免許も合わせて取得する必要

がある。

2 コンテンツ規制

「2008年ラジオ・テレビ放送法」では、民主主義体制、国家の安全、国民の良心、

道徳、健康を脅かす番組は禁止されている。

3 デジタル放送チャンネルオークション

NBTCは、2011年の発足後、3Gオークションと並んで放送のデジタル化を最重

要課題としている。2012 年にはデジタル放送の方式を欧州方式(DVB-T2)とする

ことを決定し、高画質(HD)バラエティ 7 局、標準画質(SD)バラエティ 7 局、

報道 7 局、子ども・教育局 3 局の合計 24 局分の放送免許がオークションにかけら

れた。2013年 12月末には、地上デジタル放送のチャンネル免許のオークションを

実施、合計 24チャンネルが合計 508億 6,000 万 THBで落札された。

4 公共デジタルテレビチャンネルの設置

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NBTC は、2014 年 10 月、初の公共デジタルテレビチャンネルの「チャンネル

10」の設置計画を示した。この新チャンネルの受付に関して、NBTC の Natee

Sukonrat 委員長は、執行部の実績、スタッフの能力、資金、チャンネルの方針、

目的、ビジョン、理念、戦略を基に審査するとしている。更に、一般視聴者が意見

を述べることのできる内容を放送することも、同チャンネルの運営に求められる要

素となる。付与される免許の有効期間は 4年間で、NBTCの規則に準じることを条

件に、更に 11 年間の延長が可能となっている。新チャンネルの放送局は、全体の

収入の 2%をユニバーサル・サービス基金、2%を NBTC に支払うことが義務付け

られる。

5 2012年ラジオ・テレビ放送事業基本計画

通信分野と同様に公示から 5年間の期間に適用される計画であり、通信資源の透

明かつ公平な配分や、公共の利益のための自由で公正な競争の促進を掲げている。

また、民主主義社会の基礎の構築に向け、消費者保護、通信に関する権利と自由、

多様かつ質の伴ったデータ・情報に平等かつ適切にアクセスできるようにしていく

としている。同基本計画で掲げられている目標は次の五つである。

・公正かつ効率的な周波数の使用認可とラジオ・テレビ放送事業の許可から国民

が利益を受ける。

・消費者がラジオ・テレビ放送サービスを利用できるようになり、かつ、権利が

保護される。

・あらゆる階層の国民が多様なデータ・情報に平等にアクセスする権利と自由を

持つようになる。また、公共の利益のためのラジオ・テレビ放送事業向けに周

波数が使用できるようになる。

・ラジオ・テレビ放送事業の認可された事業者が質の向上を図り、倫理基準を持

つようになる。

・ラジオ・テレビ放送事業の近代化と採算性の向上を進める。

6 STB 購入補助クーポン

NBTC は地上デジタル放送の受信が可能な STB の購入補助クーポン(690THB)

の配付を 2014 年 10 月から開始した。ところが、2015 年 7 月時点で、配付予定の

全 2,250万世帯中 1,400 万世帯にしか配付が完了していない。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

PRD傘下の National Broadcasting Services of Thailand(NBT)が運営してい

る国営放送事業者のRadio Thailandや、タイ・マスコミ公団(Mass Communication

Organization of Thailand:MCOT)が運営しているMCOT Radio Networkのほ

か、商業放送事業者、コミュニティ・ラジオ局が放送を行っている。

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国際放送は、Radio Thailand World Service が海外向けサービスとして、12言語

で「Radio Thailand World Service」を提供している。

2 テレビ

PRDが運営する NBT(旧 Channel 11)、MCOT傘下の Channel 9、国防省所有

の陸軍テレビ放送事業者である Royal Thai Army Television(Channel 5)のほか、

商業放送として Bangkok Entertainment Channel(Channel 3)と Bangkok

Broadcasting & TV(Channel 7)、公共放送の TPBSが放送を行っている。

3 衛星放送

衛星放送とケーブルテレビ・サービスを提供する大手事業者として、タイ最大規

模の複合企業である CPグループが保有する True Visionsがサービスを提供してい

る。同社は、2003年に設立された True Visionsと 1998年に設立された UBCが合

併して 2006年に設立された。同社の 2014年 3月末現在の加入者数は 235万 4,000

である。

また、メディア企業のプージャッガーンが保有する ASTV(Asia Satellite TV)

が NSS6衛星により、各種の放送を提供している。ASTVでは、規格に合致した衛

星アンテナを設置することで、国内外の放送を無料で受信できる。

4 ケーブルテレビ

ケーブルテレビ協会(Cable TV Association)に加盟している事業者は、全国に

250社、これらの事業者が運営する地方局を含めると500局以上が運営されている。

5 デジタルテレビ

デジタルテレビへの移行を促進するため、CAT Telecom は 2015 年 12 月、CAT

Telecom がケーブルテレビ事業者にインフラを提供することで NBTC と合意した。

また、2016年 1月には、Association of Cable & Satellite TV Network Providers

(CABSAT) のメンバーであるケーブルテレビ事業者が CAT Telecomの光ファイバ

ーネットワーク回線を利用できるようにすることで CABSAT と了解覚書を締結し

た。この提携には、ケーブルテレビの視聴者を CAT の提供するブロードバンドイ

ンターネットサービスに契約させることで双方が利益を得るという狙いもある。

CABSAT には 295 のケーブルテレビ事業者がメンバーになっており、合計でおよ

そ 300万世帯にサービスを提供している。そのうち 193の事業者はアナログ放送の

み提供しているが、CATはできるだけ多くのサービスを自社の光ファイバーネット

ワーク回線に接続させる予定である。

Ⅴ 運営体

1 首相府広報局(PRD)

(Ⅰ-2の項参照)

概要

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PRDが、NBT、Radio Thailandを所有している。

2 タイ・マスコミ公団(MCOT)

Mass Communication Organization of Thailand

Tel. / Fax +66 2 201 6000 +66 2 245 1854

URL http://www.mcot.net/

所在地 63/1 Rama 9 Road Huay-kwang, Bangkok 10320, THAILAND

幹 部 Duangjai Maharakaga(社長代理/Acting President)

概要

公共放送の Channel 9やラジオの AM、FM 局等を所有する。2004 年 8月 17日

付で株式会社に改組された。筆頭株主は財務大臣(65.8%)である。

電 波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

(1)情報通信技術省(MICT)

(通信/Ⅰ-1の項参照)

(2)国家放送通信委員会(NBTC)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

2 標準化機関

タイ産業標準機構(TISI)

Thai Industrial Standards Institute

Tel. / Fax +66 2 202 3400 +66 2 354 3285

URL http://www.tisi.go.th/

所在地 Rama 6 Street, Ratchathewi, Bangkok 10400, THAILAND

幹 部 Chaiyong KRITTAPHOLCHAI(事務局長/Secretary-General)

所掌事務

消費者保護、自然環境保護、産業育成、標準化の推進による貿易の推進を目的と

して、1966 年に設立された。TISI は、「産業製品標準法(Industrial Products

Standards Act B.E. 2511(1968))」や産業省(Ministry of Industry)の政策及び

マスタープラン、政府の政策等に基づき活動を行っている。

標準化関連では以下の活動を行っている。

・国内/地域/国際標準の策定作業

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・基準認証

なお、ISO/IEC(国際標準化機構/国際電気標準会議:International Organization

for Standardization/International Electrotechnical Commission)の委託を受けて、

同規格の標準設定・審査も行っている。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理の概要

NBTC は、2011 年に発足後、2012 年 4 月には、「電波管理・通信・放送基本計

画」を施行した。同計画は、周波数管理、通信分野、放送分野における基本計画を

定めたものである。その中で周波数管理については「2012 年周波数管理基本計画」

が定められ、国民に対して最高の利益を生み出すように周波数管理を行うこととし

て、自由で公正な競争を考慮し、公共の利益に関する多様な事業にあまねく周波数

利用を分散させるとのビジョンに基づいて、次の六つの目標を掲げている。

・国際周波数管理に関する協力メカニズムを用意する。

・周波数の割当て・調整のために周波数の返還に関する原則規定と時期を定める。

・国の安全保障面での周波数管理の原則とメカニズムを用意する。

・公共災害の防止・緩和や緊急事態・災害対応のための周波数割当とその使用の

原則を定める。

・地上デジタル放送の変更計画を用意する。

・民間セクターに対する周波数割当やコミュニティ・サービスを行う非営利活動

向けに各エリアでの周波数帯全体の 20%以上を使用できるようにする。

2 無線局免許制度

「NBTC法」第 41条及び第 45条により、すべての無線機器の製造、保有、輸出

入、売買、利用には、別に定める場合を除いて、免許を必要とする。一部移動電話、

コードレス電話、市民バンド通信機器などについては、個別に省令で定めることに

よって、免許不要での使用を許可している。なお、旧法で認められた免許不要局は

継続して有効であり、Wi-Fi機器については、2004年 1月に、ワイヤレス・マイク、

コードレス電話機、GSM端末、ISM機器、2.4-2.5GHzで 100mW以下の無線機器

等の免許不要での使用が認定された。しかし、5GHz 帯の Wi-Fi 機器(802.11a)

については認められていない。また、RFID については UHF 帯(920-925MHz)

が割り当てられているが、出力 0.5W以上では免許が必要である。

3 周波数割当

2011年 12月にはNBTCは周波数大綱に関する公聴会を開催し、2012年 3月に

は、同大綱を成立させ公表した。更に、NBTC は 2012 年 5 月に 2.1GHz 帯におけ

る 3G 周波数オークション実施方法をまとめ、2012 年 10 月に、同オークションを

実施した。その結果、参加した 3社(AIS、DTAC、TrueMove)がそれぞれ 3ブロ

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19

ック(1ブロックは 2×5MHz)を取得した。

NBTCは、2013年 1月 28日に、2012~2016年周波数再編ロードマップを発表

している。これによると、CAT から借り受けて TrueMove 及び AIS が使用してい

る 1.8GHz 帯は 2013 年 9 月に無効となるため、改めて周波数オークションにて割

当てが行われる予定となっている。そのほか、2015 年 3 月には、TOT から借り受

けて AISが使用している 1.8GHz帯が無効となり、2018年 9月には、CATから借

り受けて DTACが使用している 1.8GHz帯及び 800MHz帯が無効となる。

NBTCは 2013年 8月、現在 2Gサービスに利用され、9月に失効となる 1.8GHz

帯を 4G モバイル・ブロードバンド・サービスに割り当てるための周波数オークシ

ョンを、2014年 9月に実施する計画を決定していたが、政権交代により延期され、

約 1 年後の 2015 年 11 月に実施された。また、あわせて 900MHz 帯の4G 用の周

波数オークションが、この1か月後の 2015年 12月に実施された。

1.8GHzのオークションでは、2×15MHzの 2枠が TrueMoveと AISの 2社に落

札され、落札総額は 808 億 8,000万 THBとなった。免許期間は 18年間、4年以内

に 80%の人口カバー率達成、料金は現行の 3Gよりも安価にする等の条件が付され

ている。なお、国営企業の CATはオークションに参加することなく、20MHzの帯

域を割り当てられている。また、900MHz帯のオークションでは、2×10MHzの 2

枠が True と Jas Mobile Broadband に落札され、落札総額は、1,519 億 2,000 万

THBと大きく高騰した。

Jas Mobile Broadbandは免許料支払の期限である 2016年 3月 21日までに免許

料を用意できず、900MHz 帯の免許を取得できなかった。2016 年 5 月に 900MHz

帯の再オークションが行われ、AIS が 756 億 5000 万 THB で落札した。同年 6 月

に AISが正式に 900MHz帯の免許を取得した。

2015年 11月の世界無線通信会議(World Radiocommunication Conference)で、

1.5GHz 帯が携帯電話のグローバルバンドに追加され、NBTC は 4 年ほどを費やし

て 1.5GHz帯を携帯電話に割り当て直す方針である。

NBTCは 700MHz帯を 4Gのモバイル通信サービスに割り当てることを計画して

いる。しかし、タイはフィリピンと同様に、近接する周波数帯のテレビ放送から干

渉を受けないことを目的としたAPT標準700MHz帯(APT 700MHz band standard

(694MHz-806MHz, 3GPP Band 28))を採用していないうえに、2016 年 1月現在

はテレビ事業者が 700MHz帯を使用しているため、700MHz帯を 4Gのモバイル通

信サービスに割り当てることができないと報じられている。

2017 年の中頃には、MCOT が使用する 2.6GHz 帯のうち、未使用の 60MHz 分

のブロックが 4Gサービスに割り当て直される予定である。

NBTCは、2018年 7月に DTACが使用する 1.8GHz帯(同年 9月に無効)の再

オークションを予定している。一方、DTAC が使用する 800MHz 帯(同年 9 月に

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無効)について、NBTCは高速列車の移動通信システムとしても使用することを検

討しており、その旨について運輸省と了解覚書を締結した。

4 周波数取引

「NBTC法」では、第 43条及び第 46条において、通信放送事業における周波数

免許の取引を禁じている。

5 電波利用料制度

「NBTC 法」第 42 条及び第 45 条において、NBTC が電波利用料額の設定と徴

収の権限を有することが定められている。NBTC は電波の利用目的、利用周波数、

バンド幅等に比例する電波利用料を徴収している。料額は定期的に見直される。

6 電波の安全性に関する基準

電磁界被曝に関する基準は整備されていないが、公衆衛生省(MOPH)の医療科

学部(DMSc)を中心に検討されている。

その結果、NBTCは、安全基準及び測定法を策定したほか、地域センターで電界

強度の測定も実施している。

Ⅲ 周波数分配状況

周波数割当表 URL(2013年):以下の URLにマスタープランと分配表が掲載さ

れている。

・http://www.nbtc.go.th/wps/portal/NBTC/Home/ResourceMgt/FrequencyMgt/

spectrum_master_plan/

・http://www.nbtc.go.th/wps/portal/NBTC/Home/ResourceMgt/FrequencyMgt/

table_frequency_allocation/