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Kobe University Repository : Thesis 学位論文題目 Title インテリジェント・スケジューリングにおけるルール獲得に関する研 氏名 Author 諏訪, 晴彦 専攻分野 Degree 博士(工学) 学位授与の日付 Date of Degree 1997-03-31 資源タイプ Resource Type Thesis or Dissertation / 学位論文 報告番号 Report Number 1667 権利 Rights JaLCDOI 10.11501/3129777 URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/D1001667 ※当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。 PDF issue: 2020-02-23

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Kobe University Repository : Thesis

学位論文題目Tit le

インテリジェント・スケジューリングにおけるルール獲得に関する研究

氏名Author 諏訪, 晴彦

専攻分野Degree 博士(工学)

学位授与の日付Date of Degree 1997-03-31

資源タイプResource Type Thesis or Dissertat ion / 学位論文

報告番号Report Number 甲1667

権利Rights

JaLCDOI 10.11501/3129777

URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/D1001667※当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

PDF issue: 2020-02-23

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博 士 論 文

インテリジェント ・スケジューリング

におけるルール獲得に関する研究

平成 9年 1月

神戸大学大学院自然科学研究科

諏 訪 晴 彦

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目 次

第 1章 緒論

第 2章 スケジューリング問題とその解法

2.1 スケジューリング問題の定義 ,

2.2 スケジューリング問題の分類

2.2.1 機械特性による分類 .

2.2.2 仕事特性による分類 .

2.2.3 評価基準による分類 .

2.3 対象問題の記述 .

2.3.1 単一機械スケジューリング問題 .

2,3.2 フローショップ ・スケジューリング問題 .

2.3.3 ジョブショップ ・スケジューリング問題 .

2.4 スケジューリング問題の解法 .

2.4.1 解法の分類 .

2.4.2 一般のスケジューリング ・ルール .

2.4.3 局所探索法によるスケジューリング .

2.5 インテリジェント・スケジューリング

2.5.1 インテリジェント ・スケジューリングとは .

2.5.2 メタ戦略 ‥

2.5.3 知識ベース ・スケジューリング法 .

第 3章 スケジューリング ・ルールの帰納的獲得

3.1 ルール獲得の考え方 .

3.2 帰納的学習法 .

3.2.1 帰納的学習 とは ‥ .

3.2.2 ID3学習アルゴリズム .

3.2.3 C4.5学習アルゴリズム .

3.3 2仕事入れ換えによるルールの獲得 .

3.3.1 ルール獲得の流れ ‥

3.3.2 事例の構成 .

3.33 訓練例集合の生成

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3.3.4 訓練例集合からのルールの帰納

3.3.5 適用ルールの選択 ...

第 4章 ルール獲得の基礎的検討

4.1 対象問題の設定 .

4.2 事例の作成 .

4.2.1 特徴の設定 ‥

4.2.2 事例の発生法 .

4.3 適用事例数の検討 .

4.3.1 訓練例集合の性質 .

4.3.2 矛盾事例群による訓練例集合の定量表現

4.3.3 数値例 ..

4.4 学習実験 ‥ ‥

4.4.1 ルールの獲得 と評価 .

4.4.2 1機械問題への適用 .

4.4.3 2,3機械フローショップ問題への適用 .

4.4A 訓練例集合のエントロピーH・Tの検討 .

4.5 考察 .

4.5.1 事例特徴の付加 .

4.5.2 学習アルゴリズムの検討 .

4.5.3 訓練例集合生成法の検討 .

4.5.4 サンプル ・スケジュールと分類木 ‥ .

4.6 まとめ .

第 5章 フローショップ問題におけるルールの獲得と適用

5.1 ルール獲得の基礎的検討 .

5.1.1 事例の構成 と発生法 ‥

5.1.2 ルールの獲得実験 ‥ .

5.1.3 事例数の検討 .

5.1.4 事例特徴 とルール条件部の考察 .

5.1.5 ルールの性能評価 ‥ .

5.2 獲得ルールの記述 ‥

5.3 ルールに基づ く局所探索 .

5.3.1 ルールの選択方法と探索手続 き .

5.3.2 数値実験 ‥

5.4 獲得ルールのタブー探索法への適用 .

5.4.1 ルールを利用 したタブー探索法 .

5.4.2 数値実験 .‥

5.4.3 実行時間 ‥ .

5.4.4 探索解の精度 .

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目 次 111

5.4.5 探索時間とマッチング時間 ‥

5.5 多目的フローショップ問題への適用 .

5.5.1 多目的フローショップ問題 .

5.5.2 獲得ルールを利用 したスケジューリング .

5.5.3 2日的フローショップ問題への適用 .

5.5.4 3日的フローショップ問題への適用 .

5.6 まとめ .

第 6章 ジョブショップ問題におけるルールの獲得 と適用

6.1 隣接 タスク対の入れ換えに基づ く事例作成 .

6.1.1 隣接タスク対の定義 .

6.1.2 特徴の選択 .

6.1.3 事例の作成例 .

6.2 ルールの獲得 .

6.3 獲得ルールによる局所探索 とその効果 .

6.3.1 隣接 タスク対入れ換えに基づ く局所探索 .

6.3.2 近傍探索過程へのルールの適用 .

6.3.3 数値実験 ‥

6.3.4 探索時間とマッチング時間 .

6.3.5 獲得ルールによる近傍の大 きさ .

6.3.6 解の精度 ‥

6.4 適用事例数の検討 .

6.5 ルールの性能評価 ‥

6.6 納期を考慮 した問題への適用 .

6.6.1 ルールの獲得 ‥ .

6.6.2 ルールによるスケジューリング .

6.6.3 2日的ジョブショップ問題への適用 .

6.7 まとめ ‥

第 7章 結論

謝辞

参考文献

付会孟A 獲得ルールの記述

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12.1 ガント・チャート例 (Jは仕事,M は機械)

2.2 機械の遊休時間と仕事の処理待ち時間 (Jは仕事,M は機械)

2.3 フローショップ問題での仕事の流れ .

2.4 例題 2.3の選択グラフ表現の例 .

2.5 例題 2.3の選択弧対解消後のグラフと実行可能スケジュール .

2.6 インテリジェント・スケジューリングの分類 .

2.7 解の循環 ‥

2.8 ルール獲得機構を付加 したスケジューリング ・システム [7ト

3.1 ルール獲得の場面 .

3.2 訓練例集合からの分類木 ・ルールの帰納例 .

3.3 ルール獲得の流れ ‥ .

3.4 特徴・3.の値の設定例 .

3.5 訓練例集合の生成 .

4.1 事例の生成 .

4.2 適用事例数 Nlとエントロピ一万 T.

4・3 ルール(D12)による解の MSTルールによる解 との相対偏差 ,

4・4 ルール(Ell),(E-2),(E13)による解のランダム ・サーチによる最小

解との相対偏差 .

4.5 ルール(F-1)による解の最適解との相対偏差 (F2//Cmax)

4.6 ルール (G-1)による解の Johnsonルールによる解 との相対偏差

(F3//CmaT)4.7 C4.5により得 られた分類木 .

4.8 事例の生成法 (逐次的入れ換え法)

4.9 逐次的入れ換え法により得られた分類木 .

5.1 事例の作成と着目機械の選択 .

5.2 事例の作成例 .

・5.3 発生事例数 Nsの変化に伴 う誤分類率 .

5.4 適用事例数 Nlの変化に伴 う誤分類率 .

5.5 各特徴のルール条件部への出現数 .

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5.6 各特徴の出現数の累積 ..‥ .

5.7 785の各ルールの評価値改善率 .

5.8 平均 CPU時間 .

5.9 TS+71による解の探索過程の例 (F//∑TJ5,10機械台数とtm言∴5.11解の探索 (2日的 fl,f2の場合)

5.12利用率の変化に伴 う解の分布 (3×20,(∑CJ n,∑TJn))

5.13獲得ルールによる解集合 (∑TJn,∑CJn)..

5.14獲得ルールによる解集合 (∑TJn,CrnaT) .

5.15獲得ルールによる解集合 (3×10,(Cmax,∑CJn,∑TJT7))5.16獲得ルールによる解集合 (5×20,(Cmax,∑CJn,∑TJn))

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表 目 次

2.1 例題 2.3 (3×4ジョブショップ問題)

1

2

3

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5

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4

4

4

4

4

事例特徴とその値 (xl,1-X 6)

例題 4.2(1機械 5仕事問題)

事例の一例

エントロピー H7-.

事例特徴を付加 した場合の解の相対偏差 (%ト

ルール(G-d)およびルール(G-b)による解の最適解との相対偏差

(%ト

417 ルール(G-d)による解のルール(G-b)による解 との相対偏差 (%)

4.8 分類木の生成結果 .‥ .

5.1 事例特徴 とその値 (xiF ~xif)5.2 例題 5.2(3×4フローショップ問題)

5.3 各ルール ・セットの評価値改善率 .

5・4 事例特徴 とその億 (xIF ~xIF2)5.5 F//Cmaal問題への適用結果 .

5.6 fソ/∑γ 問題への適用結果 .

5.7 TS+78の 1サイクルあたりの評価値計算回数と探索ステップ数

5.8 TSおよび TS+71により得 られた最小解 .

5・9 fmおよび fc(×10~5sec).‥5・10給マッチング時間の給評価値計算時間に対する比 (tm・N/㌔・Nc)

6・1 事例特徴 とその値 (xIJ ~xf)6.2 例題 6.2(5×5ジョブショップ問題)

6.3 獲得 したルールの条件部 .

6・4 各局所探索法の平均実行時間 (sec)6.5 i:Cとtm(msec)

6・6 近傍の大きさの平均 (()内 は最大値 )

6.7 各局所探索法による最小解 .

6.8 誤分類率の変化の幅 ‥ .

6.9 誤分類率の変化の幅 .

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6.10獲得 したルールの改善率 ‥ ‥

6・11納期に関する事例特徴とその値 (XBJ ~xIJl)

6.12獲得 したルール ・セット .

6.13得られた解の最小値と平均

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第 1章

緒論

近年の生産設備の自動化 ・高機能化 ・高速化を推進する技術進歩により,工場

内の物の流れに関わる諸設備の自動化 ・統合化によるFA(ファクトリー ・オートメーション)が実現されている.このようなシステムにおいて生産効率を向

上させるために,ネットワーク機器などのハードウェア機器の充実化,導入され

ている生産設備の効率的な管理と運用が重要である.前者は導入コストが問題

になることが多く,後者では適切な生産計画の立案と,運用法の策定など,計

画,管理,運用に関するソフトウェア的側面の充実が問題となる.何らかの製

品を生産する工場では,多数の仕事を種々の生産設備で処理する場合,生産設

備への仕事の投入順序を決定する必要がある.また,処理する仕事に資源や設

備などを適切に配分し,ある定められた目的を達成できるような計画を立てる

ことが望まれている.このような生産計画の立案をスケジューリングという.

FAの進展,生産工程の複雑化,需要動向の変化などにともない,生産の場

におけるスケジューリングのコンピュータ化および自動化が大きな課題となっ

てきている.また,消費者ニーズの多様化に応じた多品種生産に対応する場合,

生産の場におけるスケジューリング問題は非常に難しい問題の1つとなる.こ

の間題に対して,整数計画法や分枝限定法等の最適化手法は,数学モデル構築

の困難性,また計算量の爆発等の問題があり,実用面に問題を残している.

これに応えて,積極的にヒューリスティックスを利用したインテリジェント・

スケジューリング ・システムの研究が活発化している[1].広義の意味における

インテリジェント・スケジューリング ・システムは,問題解決のアプローチに

よってComputationalIntelligence(CI),ArtificialIntelligence(AI)と呼ばれる2つのカテゴリに分類される.Clは,人間さらには生物の行動のダイナミクス

をモデル化し,問題解決に利用するものである.CIの代表的な解法は,遺伝ア

ルゴリズム,模擬アニーリング法,タブー探索法などのメタ戦略 (メタ・ヒュ-

リステイクス)である.これらメタ戦略にしたがってアルゴリズムを組むとき

は対象問題の厳密なモデルを必要とせず,問題に応じてアルゴリズムを作るこ

とによって,比較的簡単に良好な解を生成することが可能である.またCIの解

法として,さらにニューラルネットワーク,ファジイ推論など,他分野の新技術

1

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2 第 1章 緒論

を利用した解法が提案されている.CIは簡単に利用できる反面,計算能力に余

裕を持つコンピュータが前提条件となる.一方,AIはエキスパート (知識ベー

ス)・スケジューリング ・システムに見られるような専門家の経験的知識による

問題解決過程を事例ないしはルールの形でモデル化 し,満足のいくスケジュー

ルを生成するものである.知識ベース構築に際しては,知識工学技術者がスケ

ジューリングの専門家から抽出した知識を計算機が処理 しやすいルールの形に

変換する.この知識工学技術者が介在 した知識ベース構築過程を知識獲得と呼

ぶ.しかし,製品 ・生産設備等の周囲の環境が変化 した場合に,スケジューリ

ングの専門家が適切な知識を有 しているとは限らず,状況に応 じて既存のルー

ルを修正 したり,新たにルールを追加 していくことができるとは限らない.ま

た,知識工学技術者も品質の高い知識を組み込むために,対象問題に精通し専

門家の話を理解することが必要となる.この間題は知識獲得のボトルネックと

呼ばれる.

この知識獲得のボトルネックを解消する方法として,以下の2つのアプロー

チが研究されている[2,3].

●知識獲得支援システム

●機械学習による 知識自動獲得

前者のアプローチは,システムのユーザ ・インターフェースを充実させ,スケ

ジュール専門家が直接システムの動作に介入できるようにすることによって,ス

ケジューリングの解法に専門家の知識を効果的に反映させる方法である[4,5,6ト知識獲得支援システムは,システムと専門家の相互作用を積極的に取 りつつ,ス

ケジュール専門家の持つ知識の構造を同定することを目的としている.

後者のアプローチは,システムの対象問題自体の解析によりスケジューリン

グ問題に対する知識を自動的に獲得する方法である[8,7].知識ベースに学習機

構を組み込むことにより,状況に応 じて柔軟に対応できるスケジューリング・シ

ステムを狭義の意味においてインテリジェント・スケジューリング・システムと

呼ぶ.機械学習によるアプローチでは,スケジューリング ・システムにおいて

与えられるスケジューリング問題をシステムの機能面あるいは効率面で過去に

比べてうまく解決できるようにするといったダイナミクスを実現することを目

的としている.このような機械学習を利用 した学習機構の構築の際,専門家へ

の依存から脱却 した知識の自動獲得方法の確立が重要である.機械学習による

アプローチをとっている研究の多 くは,以下の方法でルールの形で知識を自動

獲得することを提案 している.まず,予め考えられたスケジューリング ・ルー

ルの適切さをシミュレーションにより評価 し,スケジューリング状況と適用 し

たスケジューリング ・ルールのペアを事例 として蓄える.そして,蓄積 した事

例集合から帰納的学習法を利用 して,状況に適 したルール選択を学習させると

いう考え方をとっている.すなわち,動的環境下で状況に適切なデ ィスパッチ

ング ・ルールを選択 し利用するためのルール獲得を行なう.

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3

本研究ではこれらとは異なり,所与の環境下において考えうる多数のスケジ

ュールの特性を解析することにより,それに内包されている適切なスケジュー

リング ・ルールを個別的に獲得するという方法とその適用可能性について考え

る [9,10,ll,12].このような方法を取る場合,

(1)ルール獲得のためのアルゴリズム

(2)知識の表現および事例の発生法

が検討課題 となる.(1)については,与えられた多数のスケジュールからスケ

ジューリング・ルールを帰納するアルゴリズムが必要である.そこで,有効性が

示されている帰納的学習法である,ID3学習アルゴリズム [13],およびC4.5学

習アルゴリズム[14]を適用 し,それに適 した問題の定式化を考える.(2)につい

ては 1つのスケジュールのパターンを1つの事例として捉え,多数の事例内に

存在する何 らかのルールを知識として自動獲得することを考える.スケジュー

ル ・パターンに基づ く事例の発生法はさまざまな方法が考えられるが,本研究

ではその基本的方法の一つとして,任意に発生 したスケジュール上の仕事対の

入れ換えにより事例を作成することとする.仕事対の入れ換えは比較的単純な

スケジューリング操作であるため,スケジューリング操作の特徴抽出が容易で

あることが期待 される.このようにして得 られた事例群に対 して,学習アルゴ

リズムを適用 し,ルール獲得する方法について検討する,

次に本論文の構成を述べる.第2章では,スケジューリング問題の定義と多

様なスケジューリング問題を機械特性,仕事特性,評価関数の3つの側面から

分類整理する.また,一般的なスケジューリング問題の解法について概説し,最

近研究が活発化 しているメタ戦略,知識ベース ・スケジューリングといったイン

テリジェント・スケジューリング法について述べ,その様々な研究を概観する.

第3章では,本研究で提案する帰納的学習よるスケジューリング ・ルールの

獲得方法について述べる.まず,スケジューリング ・ルール獲得のアプローチ

とその実現を目指 した研究について述べ,本研究でルール獲得に利用するID3

学習アルゴリズムおよび,C4.5学習アルゴリズムの概要を述べる.次に,本研

究で提案する2仕事入れ換えに基づいたルール獲得方法について述べる.学習

データとなる事例の構成法および発生法について説明し,学習アルゴリズムに

よるルールの帰納,さらにスケジューリングに適用するルールの選択方法につ

いて説明する.

第4章では,ルール獲得の基礎的研究として単純な最適化ルールの存在する

対象問題に対 して提案方法を適用 し,それらのルールと等価なルールの自動獲

得を試みることにより,提案方法によるルール獲得の可能性について検討する.

ここでは比較的解析が容易であると考えられる1機械スケジューリング問題を

対象として,提案方法によるルール獲得の可能性を考察する.さらに, 1機械

問題で検討 したルール獲得方法を2機械および3機械フロー ・ショップ問題に

適用 し,本研究で提案するルール獲得方法の有効性を検討する.また,より効

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4 第 1章 緒論

采的なルールの獲得を目的として,事例特徴の付加,学習アルゴリズム,訓練

例集合の生成法について考察する.

第 5章では,フローショップ ・スケジューリング問題を対象 として,本研究

で提案する2仕事入れ換えに基づ くルール獲得方法の有効性を検討する.まず,

評価関数として給所要時間を取 り上げ,事例の構成要素となる事例特徴に対す

る考え方とその設定の仕方を中心とした事例の作成を考える.獲得 したルール

の条件部と事例の特徴の関連性,および,スケジューリング ・ルールとしての有

用性について考察する.次に,仕事対入れ換えによる近傍探索スケジューリン

グという観点から,局所探索法およびタブー探索法に獲得ルールを適用 し,そ

の有用性を考察する.ここでは納期を考慮 した問題 も取 り上げる.最後に,よ

り複雑な問題 として多目的フローショップ ・スケジューリング問題へのルール

の適用を試みる.ここでは,ルールの汎用性を重視 し,多目的問題に合わせて

新たに事例特徴を考えるのではなく,単一目的問題で得 られたルールを利用す

ることを図る.

第 6章では,スケジューリング分野で困難な問題 とされている一般のジョブ

ショップ ・スケジューリング問題に対するルール獲得について検討する.評価

関数 として給所要時間を対象 とし,ジョブショップ ・スケジューリング問題に

適合 した事例の構成法および発生法を検討する.また,獲得ルールを局所探索

法に組み込むことによって,スケジューリング ・ルールとしての有効性を考察

する.さらに,納期を考慮 した問題を対象として,提案方法によるルール獲得

方法とルールの有効性を論ずる.最後に多目的ジョブショップ ・スケジューリ

ング問題への獲得ルールの適用可能性について論ずる.

第 7章では,本研究のまとめと今後必要な研究課題について述べる.

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第 2章

スケジューリング問題 とその解法

本章では,スケジューリング問題の定義を述べ,多様なスケジューリング問

題を機械特性,仕事特性,評価関数の3つの観点から分類整理する.また,一

般的なスケジューリング問題の解法について概説し,最近研究が活発化 してい

るメタ戦略,知識ベース ・スケジューリングといったインテリジェント・スケ

ジューリング法について述べ,その様々な研究を概観する.

2.1 スケジューリング問題の定義

スケジューリング問題は,生産計画の段階でまとまった一連の仕事 (人,機

械などを利用して処理される対象)のある定められた目的を達成できるような

日程計画を立てようとするときに起こる問題である.本研究で対象とするスケ

ジューリング問題の定義は,以下の通 りである [15,161.

m 台の機械 M1,...,Mm で n個の仕事 Jl,‥.,Jn の各々を加工するもの

とする.加工する仕事の機械を通る順序と各仕事の各機械上での処理時間

が既知である時,処理上の適当な制約下で評価基準 (スケジュールの評価

尺度)を最小 (ないしは最大)にする仕事の処理順序と機械への割当てを

決定することをスケジューリング問題 という.

(1)各仕事は複数の機械で同時に処理されることはなく,(2)各機械は複数の仕

事を同時に処理することはできないことが基本条件となる.また,本研究で扱

うスケジューリング問題は静的な場面,すなわち,一定個数 n個の仕事の処理

準備が既に完了しており,いつでも着手可能である状況を前提 とする.

このとき,スケジュールとは各仕事に対 して各機械上での処理順序を表すも

のである.スケジュールは,一般にガント・チャート(GallttChart)で図示する

とわかりやすい.ガント・チャートは,図 2.1に示すような,横軸に時間,縦軸

に機械 (nlaChineoriented)ないしは仕事 (joboriented)を表したものである.

各仕事 Jl(i-1,・・・,n)は rLt個のタスク02,1,..,,0.,n-で構成され,各タス

クOi..I(j-1,・,・,n2)は機械 岨 ⊆iMl,- ,M m)上で,所与の処理時間 p7,,

5

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6 第 2章 スケジューリング問題とその解法

(a)MachineOriented

tlme(b)JobOriented

図 2.1:ガント・チャー ト例 (Jは仕事,M は機械)

C1 C3 C2 time

-」之- IdletimeonM2 -止し- waitingtimeofJl-一迫- ldletimeonM3 -止三・・-waitingtimeofJ3

図 2.2:機械の遊休時間と仕事の処理待ち時間 (Jは仕事,M は機械)

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2.1スケジューリング問題の定義 7

で処理されるものとする.例えば FLt,∫ -M2の場合,仕事 Jtの j番 目のタスク

0号,Jは機械 M2 で処理されることを表す.また,FLi,i-(Ml,M2,M3)の場合,

タスクOi,,は Ml,M2,M3 のうちのいずれかの機械で処理されることを表す.

各仕事 Jtに対 して,以下の記号を定義する.

nt

pt:仕事 Jiの処理時間 (-∑ pゎ)3=1

rl:仕事の開始可能時刻

dt:納期

wt:処理時間や納期に諌せられるペナルティー (重み)

納期 とは,仕事が終了しなければならない締切 りの時刻を表すものである.何

らかのスケジュールが決定すると,各仕事 Jiおよびその各タスク0号,J に対 し

て完了時刻 Ci,Ci,,が得 られる.スケジュールのガント チャートに注目する

と,各機械にはタスクを処理する時間とは別に遊休時間 (idletime)が生ずる.

また,各仕事はある機械 Mkl上での処理終了後,次の機械 Mk2での処理開始

までの機械 Mk2 に対する加工待ち時間 (waittime)が生ずる.例えば,図 2.2

では,i2,i3は機械 M2,M3での遊休時間を表し,wlは仕事 Jlの機械 M2 に

対する加工待ち時間,W3は仕事 J3 の機械 Mlに対する加工待ち時間を表す.

また,この例では機械 Mlは遊休時間を生 じておらず,仕事 J2 は処理する機

械に村する加工待ち時間は生 じていない.

同一機械上で2個以上のタスクを同時に処理 しておらず,また同一仕事内の

タスクが同時に処理されていないスケジュールは実行可能 (feasible)である.

実行可能スケジュールのうち,評価基準に対 して比較的良好なスケジュールと

して以下のスケジュールが存在する[17].

(1)セミアクティブ ・スケジュール

各機械上でのタスクの処理順序を変更することなくしてほどのタスクの処

理開始も早めることができないスケジュール

(2)アクティブ ・スケジュール

各機械上でのタスクの処理順序の変更を行っても,どのタスクの処理開始

も早めることができないスケジュール

(3)遅れなしスケジュール

アクティブ ・スケジュールであって,かつどの機械もいずれかのタスクを

処理開始できる時刻に遊休状態にはないスケジュール

このとき,セミアクティブ ・スケジュール,アクティブ ・スケジュール,遅れ

なしスケジュールの問には,次の包含関係がある.

(遅れなし)⊆(アクティブ)⊆(セミアクテ ィブ)

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8 第 2章 スケジューリング問題とその解法

ある実行可能スケジュールが所与の評価関数を最小にするとき,そのスケ

ジュールは最適スケジュールと呼ぶ.その最適スケジュールは必ず しも遅れな

しスケジュールであるとは限らず,アクティブ ・スケジュールであって遅れな

しスケジュールでない場合がある.すなわち,セミアクティブ ・スケジュール

から1つのアクティブ ・スケジュールが生成可能であるため,アクティブ ・ス

ケジュール集合内に最適スケジュールが存在する.

2.2 スケジューリング問題の分類

スケジューリング問題の種類は膨大であり,問題解決に利用する解法もスケ

ジューリング問題の種類に応 じて異なる.ここでは,Brucke申8]によるスケジューリング問題の分類を紹介する.スケジューリング問題は3つのカテゴリ

によって大きく分類される.

α;機械特性による分類

β;仕事特性による分類

7;評価基準による分類

以下では,スケジューリング問題をα/β/Tで表すこととする.

2.2.1 機械特性による分類

機械特性は,機械の台数と種類により表され,以下に示すような単一機械,複

数台ある場合の並列型およびショップ型の3種類に大別される.これらの機械

特性によるスケジューリング問題を,単一機械問題,並列機械問題,ショップ

問題と呼ぶこととする.

(1)単一機械 (α-1)機械台数が 1台の場合.

(2)並列型

並列型では各仕事は単一のタスクのみで構成され (単一工程),設定され

た複数の機械のうちどの機械でも処理されてもよい.並列型は機械の性能

によって,さらに3種類に分別できる.

(a)identicalparallelmachines(α-P)

全ての機械 M k(k-1,… ,m)が等価 (同一性能)であり,その性能

は仕事に関係なく一定 (p7-Pt,k) である.

(b)uniformpara・llelmachines(α-Q)

機械ごとの性能は異なるが,機械の性能比 .Skは仕事に関係なく一定

(p3- 5肌,k) である.

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2.2スケジューリング問題の分類 9

(C)unrelatedparallelmachines(α-R)機械ごとの性能は異なり,性能の比は仕事ごとに異なる.

(3)ショップ型ショップ型では,機能が異なる機械が多数配置されており,各仕事は 1台

ないしは複数台の機械により処理される.すなわち,1つの仕事は複数の

タスクで構成される.一般に,1つの仕事を構成する任意のタスク間には

先行関係が存在 し,このモデルは一般ショップ (generalshop)と呼ばれ

る.一般ショップは,機械の構成順序によって,次の3種類に大別される.

(a)ジョブショップ型 (α-∫)各仕事のタスクが異なる.

(b)フローショップ型 (α-F)ジョブショップ型の特殊な場合であり,全ての仕事は同一のタスクか

らなり,またその処理順序も同一である.

(C)オープンショップ塑 (α-0)

フローショップ型の特殊な場合であり,全ての仕事は同一のタスクか

らなるが,その処理順序は異なる.

2.2.2 仕事特性による分類

仕事特性による分類を以下に示すとおり,仕事に対する種々の制約条件を表す.

(1)中断可能 (preemption,β-pmtrL)基本的には処理を開始したタスクの中断は禁止されるが,特急の仕事や技

術的な理由により処理中のタスクをいったん中断し,後で処理再開できる

場合を表す.

(2)先行関係 (precedencerelations,β-prec,chain,iniree,outiree)仕事間に処理の先行関係が存在する場合であり,記号 「-く」により表現す

る.例えば,Jl<J2は Jlの全ての処理を終了した後に J2を処理する

ことを意味する.

(3)処理開始可能時刻 (releasedates,/3-rl)

機械が仕事を処理可能な状態でも,仕事の到着時刻などにより処理開始す

ることができない場合を表す.

(4)単一処理時間 (unitprocessingrequirement,pt(pu)-1)全てのタスクの処理時間を同一と見なす場合を表す.

(5)納期 (duedate(deadline),,a-dt)

各仕事の納期を考慮する場合を表す.

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10 第 2章 スケジューリング問題 とその解法

(6)タスク数 (nt<n′)

ショップ型問題を対象 とするときに,タスク数の上限を制限する場合を表

す.ある仕事が 1つの機械で複数回処理 される場合を除いては,機械台数

の上限を制限することとなる.

(7)バ ッチ処理 (batchingproblem,β-batch)複数個の仕事を-まとめにして (バ ッチング),機械で連続 して処理する

場合を表す.バ ッチ内の仕事の処理完了時刻は全て,最後に処理 された仕

事の処理完了時刻に等 しいものとする.

2.2.3 評価基準による分類

スケジュールの有効性の尺度を表すものをスケジュールの評価基準と呼ぶ.ス

ケジュールの評価基準は各仕事 Jiの完了時刻 Ciに関して様々なコス ト関数

f3(C2)を定義することにより定式化 される.評価基準 「′は各仕事のコスト関数

値の最大をとる形の関数や総和をとる形の関数,すなわち,

7 -maXtf%(Ci)li-1,...,n)†1

7 - ∑ft(C2)t=1

のような2つの形式で定義 されることが多い.以下では,これらのスケジュー

ルの評価基準 となる関数 Tを評価関数 と呼ぶこととする.仕事の完了時刻のみ

に関する,すなわち fi(Ci)-Ctの場合の評価関数を以下に示す.

(1) 給所要時間 (makespan) 7-cmax-(Cili-1,… ,n)n

(2) 給滞留時間 (totalflowtime) 7-∑ cii=1

さらに,スケジュ ー ルが決定 すると仕事 J iにつ いて以下 の納 期 に 関するコス ト

関数 ft(C2)が求まる .

納期ずれ(lateness) L.- Ci-di納期遅れ (tardiness) T2 - maXt0,Ci-d t)

納期余裕 (ea rliness) Ei- maX(0,di-C i)

絶対偏差I(ab solutedeviatio n) Di - lCi-dil

遅れペナルティ (unitpenalty) U8 - 0(ifCt≦di・)orュ(otherw ise)

納期を考慮 した 評 価関数として以下のものが考えられる.

I納期ずれはスケジューリング理論の定義にしたがうとLiであるが,現実的には納期の遅れと余裕に対する非負のペナルティと考えられるため,以降では納期ずれの総和を対象とすると

きは Dtで表すこととする.

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2.3対象問題の記述 11

(3) 最大納期ずれ (maximumlateness) 7 -L-ax-葦 二㌔(Lt)

(4) 給納期遅れ (t。taltardin。ss) 7-皇Tit=1n

(5) 給納期ずれ (absolutedeviation) 7-∑ D81=1γ乙

(6) 納期遅れ仕事数 (totalunitpenalty) 7-∑ Utt=1

(3)は最大納期遅れ (maximumtardiness,max(TJ)と等価である.また,完i=1,...,r7,了時刻ないしは納期に対するペナルテ ィー (重み) W之を考慮 した評価関数 と

して,

TL(7) 重み付 き給滞留時間 (weightedflowtime) 7- ∑ W7C7

u一一一rL

(8) 重み付 き給納期遅れ (weightedtardiness) 7・-∑wITtt=1n

(9) 重み付 き給納期ずれ (weightedabsolutedeviation) 7-∑wtDZuIIil

があげ られる.評価関数のうち,完了時刻 Ciの全ての値に関して単調増加であ

る評価関数を正規関数 と呼ぶ.上記のうち,Etを含むもの (-Ciを扱 うもの)

を非正規関数 と呼ぶ.

2.3 対象問題の記述

2.3.1 単一機械スケジューリング問題

単一機械スケジューリング問題 (以下,1機械問題)では,n個の仕事 Jl" ..,Jn

は 1台の機械で処理 される.すなわち,各仕事 Ji(i-1,… ,n)は 1つのタス

ク Ol,1のみで構成 される. 1機械問題では,以下の記号を定義する.

_+iI~

a:琉

C

5

WW

仕事 Jiの総処理時間

仕事 J2の納期

仕事 Jtの処理完了時刻

: 仕事 Jtの処理時間重み

‥仕事 Jtの納期ずれ重み (CL仕事 Jtの納期ずれ重み

ノヽ)

TdJα

<>

仕事 Jtに対するこれらの仕事属性の値 (ciは除 く)はあらかじめ与えられ

ているものとする.

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12 第 2章 スケジューリング問題とその解法

2.3.2 フローショップ ・スケジューリング問題

フローショップ・スケジューリング問題 (フローショップ問題)の定義は以下の

とおりである[18].n個の仕事 Ji(i-1,...,n)は,m個のタスクOiJ,・・・,0号,m

よりなり,m 台の機械 M1,- ,Mm で,

Ml- M2- 日・- Mm

の順に処理 される.すなわち,フローショップ問題では仕事 Jiの j番 目のタ

スク 0名,Jを処理する機械 FLt,J は全ての仕事 Jt(i-1,… ,n)に対 して同じ機械

M,である.

図 2.3は,フローショップ問題での仕事の処理の流れを表している.m機械 n

仕事のフローショップ問題を以下では m xmフローショップ問題と表記する.

各仕事 Jiは納期 d号を有 し,機械 Mk(k- 1,・・・,m)上でのタスク 0%,kの

処理時間および処理完了時刻はそれぞれpt,k,Ci,kとする. 1つのスケジュー

ルが決定 した際の仕事 Jiの給処理時間と滞留時間はそれぞれ pも(-∑kPt,k),

Ct(-C岬)で表される・また,全ての仕事は分割なしに加工されるものとする・

- flowofjobs

図 2.3:フローショップ問題での仕事の流れ

一般のm機械フローショップ問題では,仕事の追い抜き (ガント・チャート

で同一機械上で仕事を飛び越 し移動 したり入れ換える)を許可するが,最初の

2機械 Ml,M2上および,最後の2機械 Mm _1,Mm 上の仕事の処理順序は同

一としても一般性を失わないことが保証されている.したがって,m >3のと

き仝実行可能スケジュールは (n!)ml2個存在する (m≦3の場合は n!個の実

行可能スケジュールが存在する).各機械上での仕事の処理順序が同一である

場合,順列フローショップ問題と呼ばれる.順列フローショップ問題では,実行

可能スケジュールは 1機械問題の場合と同様,n仕事の順列スケジュールに対

応 し,n!個の実行可能スケジュールが存在する.

2.3.3 ジョブショップ ・スケジューリング問題

ジョブショップ・スケジューリング問題 (以下,ジョブショップ問題)を以下のよ

うに定義する[18].n個の仕事 Ji(i-1,...,n)をm 台の機械 Mklk-1,… ,m)

で加工するものとする・各仕事 Jiは, ni個のタスク 0り (j-1,… ,ni)から

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2.3対象問題の記述 13

なり,機械を通過する順序は与えられているものとする.すなわち,各タスク

は以下の処理先行関係を有する.

Oi,1- 01,2- - - 0 %,a. (i-1,・・・,n)

また,各タスク Oi,,は機械 鮎 上で処理時間p8,,で分割なしに加工され,同一

機械上では2回以上加工されない (Fit,,1≠FL7,,2;jl,j2-1,...,77"jl≠j2)もの

とする.このとき,nl - m,かつ 07,,(i-1,...,77,j-1,.・,m)を処理する

機械が M,(-帖 )と決まっているとすると,2・3・2項で述べたフローショップ問

題となる,m 機械 n仕事のジョブショップ問題を以下では m x71ジョブショッ

プ問題と表記する.

選択グラフによる表現

ジョブショップ問題は,タスクを節点に対応させた選択グラフG-(V,Cur))

による表現が可能である.ただし,V,C,Dの定義は次のとおりである.

V:タスク07,Jに対応する節点l(l-N2_1+1,...,Nl;N0-0潮 -∑と=171L-,),

および,仮の開始節点 Sと仮の終了節点 土の集合を表す.節点の重みは

それに対応するタスクの処理時間 pi,, である.ただし,節点 S,tの重み

は Oとする.

C:(conjunctivearc):有向弧の集合 ((u,V)lu,V∈V)を表 し,

(1)1つの仕事内で,タスクuがタスクVに先行する.

(2)u- 3,タスクVが仕事内で最初に処理される.

(3)タスクuが仕事内で最後に処理され,ru-tである.

の3つの場合が,有向弧 (u,V)に相当する.

D:(disjunctivearc):選択弧対 (u,V)-((u,V),(i,,,u))の集合 itu,可I,u,.U∈V)を表し,タスクu,Vが同一機械で処理される場合が選択弧 (u,V),(V,′u)に相当する.

図 2.4は,表 2.1に示す問題例を選択グラフにより表現 したものである.図 2.4

の選択グラフでの 節点 (V),有向弧 (C),選択弧対 (D)は以下のとお りと

なる.

V-(01,1,01,2,01,3,02,1,02,2,03,1,03,2,04,1,04,2,04,3,5,i)

C - ((3,01,1),(・5,02,1),(5,03,1),(5,04,1),(01,1,01,2),(01,2,01,3日 02,1,02,2),

(03,1,03,2),(04,1,04,2),(04,2,04,3),(01.3,i),(02,2,i),(03,2,i),(04.:3,i))

D - ((01,2,03,1),(03,1,04,1),(01,2,04,1),(01,1,02,2),(02,2,04.2),(01,1,04,2),

(013.02,1),(01,3,03;2),(01.3,04,3),(02,1,03,2),〈02,1,04,3),(03,2,04,3日

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14 第 2章 スケジューリング問題とその解法

このとき,選択弧対を解消 (どちらかの有向弧を選択)することは,それに対

応するタスクの各機械上での処理順序を決定することに相当する.そこで,閉

路を生じさせないように全ての選択弧対を解消 (完全選択)するによって, 1

つの実行可能スケジュールを得ることができる.また,開始節点 βから終了節

点 tに至る最長パス (クリティカル ・パス)の長さが給所要時間 Cmarに対応

する.

クリティカル ・パス上のタスク集合 β は,次の条件を満足するとき,ブロッ

クと呼ぶこととする.

1.β 内の作業数は2つ以上である.

2.月 内の全作業は同一機械上で連続して処理される.

3.月 の先頭 (最後)のタスクの同一機械上での直前 (直後)のタスクはク

リティカル ・パス上には存在 しない.

図 2,5は例題 2.3において,各機械上で

〟 1 03,1- 04,1- 01,2

M2 01,1-1 04,2- 02,2

〃 3 02,1- 03,2- 04,3- 01,3

のタスク間先行関係を与えたときの (a)実行可能なグラフおよび (b)実行可能

スケジュールのガント・チャートを表す.このとき,クリティカル ・パスは,

(S,03,1),(03,1,04,1),(04,1,04,2),(04,2,02,2),(02,2,01,3),(01,3,i)

により与えられ,その長さは 66であり,総所要時間Cmar-66を得る.一方,

図 2.5のスケジュール上でのブロックは,

(03,1,04,1),(04,2,02,2)

の2つである.

実行可能スケジュールの生成

ジョブショップ問題では,規模が比較的大きい場合に,何 らかの規則を与え

ずに選択グラフを方向づけすると,閉路を生じやすく実行可能スケジュールを

得にくいことがある.本論文では,以下に示す同一機械上でのタスクの競合を

解消することによる実行可能スケジュールの生成法を利用することとする.タ

スクの競合とは,同一機械上で2個のタスクが同時に処理される状態を表す.

競合解消に基づ く実行可能スケジュールのアルゴリズムは次のとおりである.

Step・1所与のジョブショップ問題を表す選択グラフをG-(V ,A)とし,A -

Cとする.

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2.3対象問題の記述 15

表 2.1:例題 2.3 (3×4ジョブショップ問題)

タスク (機械,処理時間)

JIJ2

J3

J4

01,1(M 2,ll) 01,2(Ml,20) 01,3(M3,19)

02,1(M3,20) 02,2(M2,14)

03,1(M1,6) 03,2(M3,10)

04,1(Ml,16) 04,2(M2,ll) 04,3(M3,6)

ll+conjunctivea「C --・・・disjunctivearc

図 2.4:例題 2.3の選択グラフ表現の例

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16 第 2章 スケジューリング問題とその解法

(a)グラフ表現 (実行可能グラフ)

10 20 30 40 50 60 tim e

[コJI⊂コ.I,[コJ][コJJ

(b)実行可能スケジュールのガント・チャート表現

図 2.5:例題 2.3の選択弧対解消後のグラフと実行可能スケジュール

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2.4スケジューリング問題の解法 17

Slep・2現在のグラフ G-(V ,A)の各ノード (タスク)の最早開始時刻を求める.

Siep.3選択弧集合 D 内で競合を起こしているタスク対 (選択弧対)のうち,

最早開始時刻が最小である選択弧対 iu,可 を選ぶ.各機械上の全てのタ

スク対の競合がなければ終了.

Step.4競合を解消する.

A-Au(u,V),またはA-Au(V,u).

D -D-(u,可.

Slep.5Step.度日こ戻る.

また,上記のアルゴリズムにおいて欲張 り法 (greedymethod)[19]を利用す

ることにより,手軽に良好な実行可能スケジュールの生成が可能である.欲張

り法とは,一般に評価関数値への貢献度に対する局所的な評価値に基づいて 1

変数ずつ固定 しつつ,実行可能解を直接構成 してい く方法である.本研究では,

給所要時間が小 さくなるような選択弧対 (競合 している2つのタスク)の解消

方法をとることとする.欲張 り法による実行可能スケジュールの生成アルゴリ

ズムは,上記のアルゴリズムでの Siep.4を以下の手続きに置 き換えたものとする.

(u,V)あるいは (V,u)と選択弧対 を解消 した場合に得 られる総所要時間をそ

れぞれ CムaT,C孟axとする.このとき,実行可能スケジュールの生成アルゴリ

ズムにおいて,

Step.4競合を解消する.

C三lar<C孟arであれば,A-Au(u,,U).

C左aT≧Cゑal,であれば,A-Au(′U,a).

D - D - (u,可.

とする.

2.4 スケジューリング問題の解法

2.4.1 解法の分類

スケジューリング問題の解法 としては,最適性あるいは求解時間の効率性を

考えた場合,次の2つの方法に大別できる.

●列拳法 (elltlnlel・atiol】method)

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18 第 2章 スケジューリング問題とその解法

・近似解法 (approximationalgorithm)

スケジューリング問題は,n佃の仕事を m 台の機械で処理するとすれば,

(n!)m通りのスケジュールが存在することとなる.したがって,所与の評価関数に対する最適スケジュールは理論上有限回数の計算で求められる組み合わせ

最適化問題として定式化できる.すなわち,スケジューリング解法の最も基本

的なアプローチは,整数計画法や分枝限定法など組合わせ最適化問題の最適化

手法,すなわち列挙法を利用することである[15].しかし,このような最適化

手法では,解の最適性は保証されるものの,実用的な時間内において最適スケ

ジュールが求められる問題はごく限られている.また,数学モデル構築の困難

性や,スケジューリング問題の多 くがN7)困難であることから実用面で問題が

残されている.

近似解法は,スケジュールの最適性は保証されないが,実用時間で可能な限

り良好なスケジュールを求めることを目的としている.近似解法は以下の2つ

のアプローチが考えられる.

●発見的方法

●探索法

一般に発見的方法はヒューリスティックスを利用し,良好なスケジュールを求

める方法である.基本的には,工程や評価関数を絞った場合が多いものの,一

般性をある程度犠牲にすることにより,特定の問題に対 して非常に効果を発揮

する解法である【18,2叶 例えば,ジョブショップ給所要時間最小化問題を対象

とした移動ボトルネック法 (ShiftingBottleneckProcedure)[21]では,ボトル

ネック (最大負荷)となる機械に着目し,ジョブショップ問題を疑似 1機械問題

化しその部分問題を繰 り返し解 くことによって解を求めている,この方法では,

最適性は保証されていないが,ほとんどの場合で最適スケジュールを生成する

強力な解法であるといわれている.また最近では,現場のスケジュール専門家

の持つ経験的知識を積極的に利用した知識ベース (エキスパート)・スケジュー

リング ・システムの研究が活発化 している.知識ベースを利用 した解法につい

ては後述する.

探索法は,対象問題の実行可能領域の部分集合内を探索することによって,そ

の中で最も良好なスケジュールを求める方法である.最近では,遺伝アルゴリ

ズム [22]や模擬アニーリング [23]法などのメタ戦略 (MetaHeuristics)と称

する新たな枠組みが提案され,スケジューリング問題に様々なアプローチで適

用されている.近似解法であるため大域的最適性の保証はされないが,システ

ムに組み込み易 く有用性が高い解法である.

一方,特定のスケジューリング問題に対 しては,最適解の生成が保証されて

いる様々なスケジューリング ・ルール (デ ィスパッチング ・ルール,作業規則)

が存在する.これらのルールは別のスケジューリング問題でも良好なスケジュー

ルを生成する場合があり,近似解法の側面も有する.次項以降では,代表的なス

ケジューリング ・ルールと局所探索法によるスケジューリングについて述べる.

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2.4スケジューリング問題の解法 19

2.4.2 一般のスケジューリング ・ルール

スケジューリング ・ルールは,特定のスケジューリング問題に対 しては,最適

スケジュールの生成が保証されている比較的簡単なルール (以下,最適化ルー

ル)が存在する[15,16].以下では,代表的な最適化ルールを述べる・なお,以

下では i番目に処理される仕事を J,m(i- 1,…,77J)とする.

。EDD(EarliestDueDate)ルール (1//Lmar)1機械最大納期遅れ最小化問題において,仕事 Jlの納期 dtの非減少順,

d,Tl≦d,T2≦...≦d,Tn

に仕事を処理することにより最適スケジュールを得る.

・SPT(ShortestProcessingTime)ルール (1//∑C2)1機械総滞留時間最小化問題において,仕事 Jlの処理時間p2の非減少順,

p,Tl≦p,T2≦-・≦p ,Tn

に仕事を処理することにより最適スケジュールを得る.

・WSPT(WeightedShortestProcessingTime)ルール (1//∑WヱCt)

1機械重み付き総滞留時間最小化問題において,仕事 Jiの処理時間の重

み比 pi/wtの非減少順,

_壁 土 < _里 吐 く ...< 遭竺_W7rl W7T2 W7Tn

に仕事を処理することにより最適スケジュールを得る.

・Johnsonルール (F2//Cmar)

2機械フローショップ総所要時間最小化問題では,以下のアルゴリズムに

より最適スケジュールが得 られる.

Stepl.n個の仕事 Jt(i-1,… ,n)の集合をJ とし,Jl-(Jttpi,1≦

pi,2)とする.

Step2・Jl内の仕事をpl,1の増加順に並べる.

Step3・J-Jl内の仕事を pl,2の減少順に並べる.

また,F3//Cmar問題でmax(pt,2)≦mini恥1)またはmaxtpi.2)≦mi11(p7,,,)

を満足する場合,pl,1+pi,2および pt,2+p"3 を新たに pt,1,Pl,2 と置き直

すことにより最適スケジュールが得られる.

・Jacksonルール (J2/n%≦2/Cmax)

n個の仕事を4つの集合 J.,J2,J12,J21に分割する.ただし,Jk(k-

1,2)は機械 ML・のみで処理される仕事の集合,J,k(jk-12,21)は,機械

叫 ,ML・の順に処理さjtる仕事の集合を表す.このとき,J2/nl≦2/Cma.r

問題では,以下のアルゴリズムにより最適スケジュールが得 られる.

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20 第 2章 スケジューリング問題とその解法

Step1.J12に対 して Johnsonルールを適用する.

Step2.J21に対 して Johnsonルールを適用する.

Stepa.機械 Ml上での処理順序をJ12,Jl,J21とする (Jl内は任意順).

Slep4.機械 M2上での処理順序をJ21,J2,J12とする (J2内は任意順).

また,MST(MinimumSlackTime)ルールは最適化ルールではないが,納期

遅れに関する評価関数 と対象としたときに有効であることが多い.MSTルール

とは,納期余裕 di- Ptの最小順に仕事を並べることである.

2.4.3 局所探索法によるスケジューリング

局所探索法は,スケジュールβ (評価値 頼 ))を少し変えることによって得 ら

れるスケジュールにより構成される近傍の集合 N(S)の中で,f(S′)<f(S)(S′∈N(S))なるスケジュール S′が存在 したとき,スケジュールを新たにS′に更新す

る手続きを可能な限り繰 り返し行 う方法である.局所探索法によるスケジュー

リング法は以下のとおりである.

Siep.1任意に発生させた実行可能スケジュール Sを初期スケジュールとす

る.

S*:-3,f(S*):-f(s),k:-1.

Siep・kf(S′)<f(S)(S′∈N(S))なるスケジュールが見つかれば,S* =- 3′,

f(S*):-f(3').k:-k+1としStep.kへ.そうでか ナれば,終了する (S*

が暫定スケジュールとなる).

以下では,Step.kの手続きを近傍探索の 1サイクルと定義する.近傍内のスケ

ジュール S′を探索する際,以下の2つのアプローチがある,

●実行時間を重視

スケジュール S′が見つかり次第,現在のスケジュールを更新する.

●解の精度を重視

近傍内全てのスケジュールを探索 した後,現在のスケジュールをそのうち

の最良スケジュールに更新する.

以下では,前者をファースト改善 (jirstimprovelnent),後者をベスト改善

(bestimprovement)と呼ぶこととする.

最終的に得 られるスケジュールは,近傍 N(Lq)内でそれより良いスケジュー

ルが存在 しないという意味において,局所最適なスケジュールである.局所探

索法は,比較的良好なスケジュールを生成する反面,未探索の実行可能領域に

さらに良好なスケジュールが存在する可能性がある.この問題を解決する方法

の 1つとして,初期解を多数発生させ,その各々に局所探索法を適用する多ス

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2.5インテリジェント・スケジューリング 21

タ-ト局所探索法 (Multi-startLocalSearch)がある.さらに,ランダム要素

を含む欲張 り法を利用 して初期解の生成を行 うGRASP(Greed),Randomized

AdaptiveSearchProcedure)[24]と呼ばれる方法がある.

2.5 インテリジェント・スケジューリング

2.5.1 インテリジェント・スケジューリングとは

インテリジェント スケジューリング[1]は,図2.6に示すように,問題解決の

アプローチによってConlPutationalIntelligence((てⅠ),ArtificialIntelligence(At)と呼ばれる2つのカテゴリに分類される.CIは,人間さらには生物の行動のダ

イナミクスをモデル化 し,問題解決に利用するものである.例えば, 遺伝アル

ゴリズム,アニーリング法などのメタ戦略や,さらにはニューラル・ネットワー

ク,ファジイ推論などが挙げ られる.CIは厳密なモデルを必要とせず,問題に

応 じてアルゴリズムを組むことによって比較的簡単に良好な解が生成可能であ

るが,計算能力に余裕を持つコンピュータが前提条件となる.一方,AIはエキ

スパート (知識ベース)・スケジューリング ・システム [2,3]に見 られるような

専門家の経験的知識による問題解決過程を事例ないしはルールの形でモデル化

し,満足のいくスケジュールを生成するものである.

以下では,CIの代表的な方法であるメタ戦略とAIアプローチによる知識ベー

ス ・スケジューリング法について述べる.

2.5.2 メタ戦略

スケジューリング分野における代表的なメタ戦略として,

・模擬アニーリング法 (SimulatedAnnealing(SA))

・タブー探索法 (TabuSearch(TS))

・ 遺伝アルゴリズム(GelleticAlgorithm(GA))

がある.メタ戦略は,探索的手続きを行 う近似解法であり,その基本は局所探

索法である.メタ戦略の特徴は,探索過程に確率要素を取 り入れたり,探索の

禁止領域を設けることによって,局所解を改善する手続きが組み込まれている

という点である.また,メタ戦略にしたがってアルゴリズムを組むときは,厳

密なモデルを必要とせず,対象問題に応 じてアルゴリズムを組むことによって

比較的簡単に良好な解が生成可能であることが強味である.

メタ戦略は問題解決の枠組みを与えるものであり,それにしたがうアルゴリ

ズムは問題に依存するため,メタ戦略を利用したスケジューリング法は多数提

案されている.これらの研究では,利用するメタ戦略に対 してどのように対象

スケジューリング問題をコーデ ィングするか,すなわち,解の探索範囲内にある

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22 第 2章 スケジューリング問題とその解法

lnte"igentScheduling

Al(ArtificiaHnteHigence)

KnowledgeBased(Expert)SchedulingSystem

MachineLearnlng-lnductiveLearmng-ReinforcementLearnlng

CI(ComputationaHntelljgence)

MetaHeuristics

GeneticAlgorithmSimuZatedAnnealingTabuSearchMulti-StartLocalSearch

NeuralNetwork

FuzzySets

図 2.6:インテリジェント・スケジューリングの分類

スケジュール群の生成方法が重要である.このスケジュール群を探索における

近傍という.スケジューリング問題を対象とした場合,比較的単純なスケジュー

リング操作である仕事 (タスク)対の入れ換え,ないしは仕事の移動に基づい

て近傍を定義するといった方法が多い.例えば,山田[25]らはジョブショップ

問題を対象とした SA法において,クリティカル ・パス上の各ブロック内の任

意のタスクをそのブロックの先頭ないしは最後に移動することによって得られ

るスケジュール群を近傍としている.また,Laarhovenら[23]はジョブショッ

プ問題を対象 とした SA法において,クリティカル ・パス上の各ブロック内の

隣接タスク対の入れ換え操作により得られるスケジュール群を近傍 としている.

このように,メタ戦略によるアプローチは探索過程においてスケジュールの微

小な変化を利用するため,計算能力に余裕を持つコンピュータが前提条件とな

る.以下に,本研究で取 り上げるタブー探索法を紹介する.

タブー探索法

タブー探索法 (tabusearch)[261は,局所探索法をベースとして,次の2つ

の手続 きを行 う特徴がある.

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2.5インテリジェント・スケジューリング 23

FeasibleRegl0n

図 2.7:解の循環

1.タブー ・リストTを作成することによって,一度得 られたスケジュール

βが再び暫定スケジュールになるといった解の循環を回避する,

2.暫定スケジュール Sの近傍 N(S)内で最良スケジュール Lq′を求め,Ll'に

関する情報がタブーリストに存在 しない限 り,常にスケジュール L'′に更

新する (評価値が悪 くなる場合でもスケジュールを更新する).

解の循環は図 2.7に示すように,スケジュールSの近傍 N(5)内の最良スケジュー

ルが S′であ り,S′に更新後近傍 N(S′)内の最良スケジュールが βであるよう

な場合を表す.

一般のタブー探索法の手続きを以下に示す.本研究では,所与のスケジュー

ル S 上で同一機械上の任意の仕事対 を入換えることにより得 られるスケジュー

ルの全てを近傍 N(S)とする.タブー ・リストTはスケジュールの更新の際に

入れ換えた仕事対の履歴 とする.タブー探索法は解の改悪を受理する場合があ

るために,明示的に手続きの終了条件を設定する必要がある.Step6.では,例

えば最大探索回数などを設定する.

Stepl.任意に発生させたスケジュール さを初期スケジュールとする.

β*:- ・S,f(S*):-I(S).T-4,.k:-0.

Stepi'.SlEP3.から一Step6.を繰 り返す.

,†fcl)3.最良スケジュール L'′∈▲1r(.)-Tを探索する.

Slep4,タブーリストTを更新する.

SIEl'5.もLf(3')<f(S*)ならば Lq*‥-5',f(,5*)-I(.5').

SfF,I)6'.Ll:- Ll+1.もし ん> M n.rならば終了.

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24 第 2章 スケジューリング問題とその解法

ただし,f(S+)は暫定最良スケジュール S*の評価値を表す.タブー探索法では,

Stept9.-Step6.までの手続きが近傍探索の 1サイクルに相当する.

2.5.3 知識ベース ・スケジューリング法

知識ベース・システム (KnowledgeBasedSystems(KIiS))は,AIアプロー

チとして生産スケジューリング分野で広 く利用されている[2,3].知識ベースに

よるスケジューリング法 (以下,知識ベース ・スケジューリング法)は,対象

問題に特化 したヒューリスティックスを利用 してスケジュールの生成を行 うも

のである [27,28].知識ベースは,多 くの場合,知識工学技術者がスケジューリ

ング専門家から摘出 (インタビュー)した経験的知識を計算機が処理 しやすい

形に変換することにより構築する.この過程は知識獲得と呼ばれ,知識獲得に

より構築された知識ベース・スケジューリング ・システムはスケジューリング ・

エキスパート・システムとも呼ばれる.スケジューリング問題を対象とした場

令,知識表現はルール,ペ トリネット,スキーマなど様々なタイプが存在する

[29,30,3]J.

スケジューリング ・エキスパート・システムでは,製品 ・生産設備等の周囲

の環境が変化 した場合に,スケジュール専門家が適切な知識を有しているとは

限らず,状況に応 じて既存のルールを修正 したり,新たにルールを追加 してい

くことができるとは限らない.この問題は,知識獲得のボトルネックと呼ばれ,

知識ベース構築における大きな問題 となっている.

この知識獲得のボトルネックを解消する方法として,次の2つのアプローチ

が研究されている.

●知識獲得支援システム

対象システムとスケジュール専門家との相互作用を取 りつつ,専門家の経

験的知識の構造を同定することを目的とする.

●機械学習による知識の自動獲得

対象システムにおける様々なタスクを効率面ないしは機能面で過去の振る

舞いに比べてうまく解決できるようにするようなシステムの動作の実現を

目的とする.

知識獲得支援システムに関する研究では,スケジューリング ・エキスパー ト・

システムのユーザー ・インターフェースを充実させることにより,スケジュー

リング専門家が直接システムの動作に介入できるようにした協調型スケジュー

リングが提案されている[1].

森下 [4]らは,ユーザー ・インターフェースに柔軟性を持たせスケジュール専

門家の知識が的確に反映されるスケジューリング ・システム (Scllel)1al、)を開

発 し,ある製鉄所において実用上の効果を得たと報告 している.

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2.5インテリジェント・スケジューリング 25

図 2・8‥ルール獲得機構を付加 したスケジュJ )ング ・システム [7]

荒木 [5]らはスケジューリング問題を対象 としたエキスパー ト・システム構築

ツール (ARES/SCH )を開発 している.このシステムでは,スケジューリン

グ操作の手続 きを構成する基本的な操作単位を用意 してお り,それらを組み合

わせてフローチャー トを生成することによって,対象問題に応 じたスケジュー

リング法を開発することが可能である.

宮下 [6]は,事例ベース推論を利用 した問題解決および知識獲得の統合シス

テム (CABINS)を提案 している.このシステムでは,スケジュール専門家の

スケジュールの修正過程 と修正結果に対する判断を過去の修正事例 として貯え

て,その事例を利用 した反復修正によるスケジューリングとリアルタイムのス

ケジュール修正を実現 している.

一方,システムの対象問題 自体の解析によりスケジューリング問題 に対する

ルールを自動的に獲得するようなスケジューリング ・システムが提案 されてい

る.これは,機械学習を利用 した知識の自動獲得に関する研究であ り,図 ・2.8に

ルールの自動獲得機能を付加 したスケジューリング ・システムの枠組みを示す

[7].

スケジューラ (Schcduler)は基本的なスケジューリング ・データか ら,ルー

ル .ベース (RuleBase)に貯えれられているスケジューリング ・ルールを利用

し,スケジュールを作成する.ルール ・ベースは,学習機構 (InductioT7Unlf)

により獲得されるルールによって構成 される.学習に必要なデータは,システム

の状態やスケジュー リング ・データをもとにシ ミュレーション機構 (S油,ul(Lt/Ion

UnJit)でスケジューリング ・シミュレーションを行い,何 らかの構成法にした

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26 第 2章 スケジューリング問題とその解法

がった事例形式として与えられる.獲得されるルールは,

(i) if (systemconfiguration

then (schedulingstrategies

というスケジューリング状況に適 したスケジューリング ・ルールの利用を表す

形式をとる場合が多い.systemcon丘gurationは,機械の状況,時間とともに変

化するライン情報,所与の制約条件や評価関数を表す.schedulingstrategiesは

一般のデ ィスパッチング ・ルールや,簡単なヒューリスティックスに相当する.

他のルール表現として,スケジューリング戦略自体を条件部に組み込んだ,

(ii) if (systemconfiguration

and (schedulingstrategies

then (systemperformance)

という形式をとる場合もある.

Shaw[7]らは,FMSのリアルタイム ・スケジューリングを対象として,ルー

ルの獲得 と洗練化を行 う帰納的学習機構を組み込んだ,パターン指向型のスケ

ジューラ (PDS)を提案 している.この研究では,予め考えられたスケジュー

リング・ルールの適切さをシミュレーションにより評価 し,スケジューリング状

況と適用 したスケジューリング ・ルールのペアを事例として多数蓄える.そし

て,蓄積 した事例集合からID3学習アルゴリズムによって,状況に適したルー

ル選択を学習させるという考え方をとっている.

中須賀 ら[8]らは,基本的には上述のPDSと同様な学習型のスケジューリン

グ ・システムを提案 している_.ルーール獲得のアルゴ リズムとして_,学習データ

となる事例群を再帰的に2つの部分集合に分けていく二分木生成アルゴリズム

を利用 している.さらに,事例の構成要素となる特徴を単純な四則演算により

組み合わせることによって,対象問題に適 したルール生成も行っている.これ

ら2つの研究では,上記の(i)のルール形式を利用 している.

Pierreval[32,33]らは,フローショップ型の生産システムにおいて適用したディ

スパッチング ・ルールとそのときのシステムの振る舞いに関連するルールを学

習する学習型の知識ベース ・スケジューリング ・システム (GENREG )を提

案 している.この研究では,(ii)のルール形式を利用 しているルールの学習は,

ルール条件部を比較して一般化 ・洗練化を行うことを目的としたボトムアップ,

トップダウンと呼ばれる比較的単純なアルゴリズムによって行われる.

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第 3章

スケジューリング ・ルールの帰納的

獲得

本章では,本研究で提案する帰納的学習よるスケジューリング ・ルールの獲

得方法について述べる.まず,スケジューリング ・ルール獲得のアプローチとそ

の実現を目指 した研究を概観 し,本研究でルール獲得に利用するID3学習アル

ゴリズムとC4.5学習アルゴリズムの概要を述べる.次に,本研究で提案する2

仕事入れ換えに基づいたルール獲得方法について述べる.学習データとなる事

例の構成法および発生法について説明し,学習アルゴリズムによるルールの帰

納,さらに,スケジューリングに適用するルールの選択方法について説明する.

3.1 ルール獲得の考え方

ルール獲得アルゴリズムとして帰納的学習法を適用する際,スケジューリン

グのどの段階でどのような表現形式のルールを獲得するかの検討が必要である.

スケジュールのガント・チャート作成段階に着目すると,スケジューリング操

作に対するルール獲得の場面は,

・割当て型 (AllocationType)

・改善型 (ImprovementType)

の2つのタイプに大別できると考えられる.

割当て型とは, 図 3.1(a)に示すようなスケジュールの作成段階で末割当て

の仕事群から割当可能な仕事を選択するような場面である.PDS[7]やLADS[8]では,機械のバッファ・サイズやブロッキング状態などスケジュールの状態や

環境を表す多数のデータからスケジューリング状況を分類 し,それに適 した優

先規則を選択するためのルールを獲得する.割当型のアプローチは,主にダイ

ナミック ・スケジューリングを想定 しており,現場モデル-の適用が容易であ

27

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28 第 3章 スケジューリング ・ルールの帰納的獲得

JobSet

(a)AllocationType

(b)ImprovementType ∫

図 3.1:ルール獲得の場面

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3.2帰納的学習法 29

ると考えられる.しかし,事例表現はモデルに特化する場合が多 く汎用性に乏

しい場合がある.

改善型のアプローチは,図 3.1(b)に示すように何 らかの方法で作成されたス

ケジュール上の仕事を移動や交換することによって,スケジュールを反復的に

改善 (修正)する場合である.これは静的なスケジューリングや,再スケジュー

リングを考えた場合に相当する.

本研究では,ルール獲得場面として後者の改善型を取 り上げ,「スケジュール

を改善するような仕事対の入れ換え」に着目し,ルール獲得を検討する.仕事

対入れ換えを取 り上げる利点として,

1.スケジューリング操作の特徴抽出が容易であること

2.汎用的なスケジューリング ・ルールの事由出

が期待される.一方,仕事対の入れ換え操作は摂動的なスケジュールの遷移操作

であるため,大規模な問題に対 しては計算能力に余裕があることが必要となる.

3.2 帰納的学習法

3.2.1 帰納的学習とは

帰納的学習は,所与の事例集合を用いて新たな知識 (一般的なルール)を抽

出する記号表現による概念学習であり,近年活発に機械学習の分野で研究が行

われている.帰納的学習は,

(1)記述子 (学習対象問題の特性 ・特徴)の選択

(2)一般化

(3)洗練化

という3つの段階からなり,(2)が帰納的学習の主要な部分である.事例は,学

習対象問題の性質を表した事例特徴 と事例が属するカテゴリで構成される.一

般に学習に利用される事例集合を訓練例集合 (TrainingSet)と呼び,訓練例集

合は学習対象に属する正事例,それと相反する負事例からなる.また,学習結

果の知識は,if-thenルールや分類木 (DecisionTree)で表現されることが多い.

図 3.2に,分類木およびルールの帰納例を示す.帰納的学習によるルール獲

得は,人間にとって理解が容易であるように,可能な限り簡単な知識表現を目

指すことにある.図 3.2の例では,2つの分類木が生成可能であり,分類木 1は

分類木 2に比べてより一般的な知識表現であるといえる.しかし,可能な限 り

簡潔な知識を獲得すること,すなわち,生成されるルールを最小にすることは,

JVア困難な問題である.さらに,獲得 したルール・セットには一般に冗長性を生

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30 第 3童 スケジューリング ・ル-ルの帰納的獲得

TrainingSet DecisionTree1

,AN

RuleSet1

ifA=O thenPifA=l thenN

DecisionTree2

P NP N

RuleSet2

PPNN

nnnn

eeee

hhhh

HHtl日日HUHH1

0011

一一ここ

AAAA

dd.一ud

nnnn

aaaa

0101

一二一一

BBBB

一・ーtt一l

図 3.2:訓練例集合からの分類木 ・ルールの帰納例

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3.2帰納的学習法 31

じているため,その中から適当な組み合わせを選択することが必要である.そ

こで,ルール獲得にはヒューリスティックスを用いたアプローチが必要となる.

以下に代表的な帰納的学習法を示す.

(1)AQ (Michalski,1975)[13]全ての正事例が少なくとも1つのルールによって分類されるまで,ルール

の生成を繰 り返す.ルールを求める方法として,より多 くの正事例を包含

し,より多 くの負事例を排除できるような記述子の組み合わせを優先す

る.しかし,直接的にルール獲得を行うために冗長なルール ・セットを生

じ易い.また,冗長なルールを除去する際,ランダムにルール選択を行 う

ためルール獲得の効率性が問題となる.

(2)ID3 (Quinlan,1983)[13]

事例から分類木を生成する方法であり,正事例もしくは負事例だけの事例

部分集合になるまで,事例集合の分割操作を再帰的に行 う.分割基準は,

情報量の期待値に基づいて選択された記述子の値が利用される.アルゴリ

ズムが比較的単純で理解 しやすい反面,分類木そのものの表現能力が不十

分であることや,分類木生成に利用する事例の個数が少ない場合に分類木

の細部まで完全に学習することが困難になることが問題となる.

(3)CN2 (Clark,Niblett,1989)【341分類リストとよばれる if-then-else形式のルール ・リストを構築する方法

である.全ての正事例が消去されるまでルール生成とルールを満足する

正事例の消去を繰り返す.記述子の選択の際,記述子の情報量の期待値が

用いられる.このアルゴリズムでは,一般にルール生成段階におけるルー

ル ・セットの洗練化が必要とされる.

(4)GREEDY3 (Pagallo,Haussler,1990)[35]CN2と同様,分類リストを利用したルール獲得方法である.異なる点は,

記述子の選択の際,ベイズ規則により個々の記述子を評価することである.

(5)C4.5 (Quinlan,1993)[14]

C4.5は,ID3の事例分類の再帰操作における記述子の選択段階で,事例

の分類精度を高めたものである.さらに,生成した分類木に対 して枝刈 り

を行うことにより,より一般的な分類木が生成可能である.また,分類木

生成のみにとどまらず,さらにif-thenルールを分類木から生成すること

ができる.

これらの中でも,ID3やそれを発展させた C4.5といった分類木による帰納的

学習は,現在現実問題のレベルで利用されている帰納的学習法である.

これら分類木による帰納的学習の場合,先に述べた帰納的学習の3段階は,

(1)事例特徴の選択

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32 第 3章 スケジューリング ・ルールの帰納的獲得

(2)分類木の生成 (- ルールの摘出)

(3)枝刈 り (- ルールの冗長性除去)

に相当する.特に C4.5は効率的に学習を行い,アルゴリズムそのものの汎用

性も高い.

本研究では,ルールの獲得にID3学習アルゴリズムとC4.5学習アルゴリズ

ムを用いる.

3.2.2 ID3学習アルゴリズム

ID3学習アルゴリズム (以下,ID3)は帰納的学習の1つであり,計算機によ

り特定の例題からそれらを分類するようなルールを推論する.訓練例集合内の

個々の事例は以下の問題を特徴づける性質の集合 (事例特徴)xl,- ,Xqと,事例が属するカテゴリCにより構成される.

(Xl,x 2,・・・,Xq,C)

一般に事例特徴は,連続値ないしはバイナリ変数や文字記述 (High,Middle,

Low)などの離散値を持つ.また,カテゴリは2つ (PositiveorNegalive,以下

P,N)とし,Pに属する正事例とNに属する負事例からなる.ID3ではまず,

所与の訓練例集合を正事例または,負事例だけになるまで再帰的に分割操作 し

分類木を構築する.分類木のノードおよび枝は,事例の特徴とその値により構成

され,終端ノードはカテゴリで構成される.分類木のノードを決定するには,各

特徴の持つ情報の利得比および期待情報量に基づいて行われる.訓練例集合に正

事例および負事例がそれぞれ α,β個存在 したとすると,特徴 X?(i-1,...,q)

の利得比 G(Xi)は式 (3.1)で定義される.

G(Xi)- I(α,β)-E(x 2・) (3.1)

・(a,β)- 一 議 log2品 -B log2諾 否 (3・2)

- )- 差 等諾 I(aS,p"(3,3)

∫(αβ) ;分類木の期待情報量

E(X之);特徴 Xtをルートに持つ分類木に必要とされる期待情報量

α3,P3 ;特徴 Xlのj番目の枝での正事例および負事例の個数 (j-1,- ,C)

ID3では全ての特徴を生成する木のルールあるいはノードの候補として各々

a(Xi)を算出し,G(Xt)を最大にする Xiに分岐するように特徴を選択する.

さらに選択された特徴を除いた事例の部分集合に対 して,上述の操作を繰 り返

す.生成される分類木のルートから終端ノードに至る各々のパスは以下の形式

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3.2帰納的学習法 33

をした1つの if-thenルールを形成している.すなわち,分類木から1つのルー

ル ・セットが得られる.

2'f Xl∧x 2∧- ∧Xq then C (PorN)

これらのルールは,その条件部が事例特徴の部分集合で,結論部が事例のカテ

ゴリで表現されるような形式をとり,一般にはカテゴリが未知の事例を分類す

るために利用する.さらに,個々のルールに対 して元の訓練例集合に依存する

条件部を取 り除くために,条件部として適用された特徴を評価 し,分類上貢献

しない特徴を除去することによりルールを簡潔なものにすることが提案されて

いる[36].またルール ・セット内の全体として必要のない冗長なルールを除去

することによって,ルール ・セットの洗練化を図ることも提案されている[36ト作成した訓練例集合には,特徴は同一であるが,カテゴリが異なる事例群 (以

下,矛盾事例群と呼ぶ)が存在することがある.ID3では矛盾事例群が生 じる

訓練例集合に対 して以下の操作が行われる[13].

「特徴が同じであるCS個の事例群に対して,カテゴリがPの事例数が CP個,

カテゴリが Nの事例数が CN個のとき (cS-cP+cN),

i

cp>cNであれば,p

CP≦cNであれば,N

を,その事例群のカテゴリとする.」

3.2.3 C4.5学習アルゴリズム

C4.5学習アルゴリズム (以下,C4.5)は,ID3の事例分類の再帰操作におけ

る特徴選択段階において,式 (3.1)の代わりに次式 (3.4)を利用することにより,

生成される分類木の事例分類の精度を高めるように改良されている.

G(XL)I(α,♂)-E(Xt)

S(Xi)

S(xi)- -差 u log2宝器

S(X7);特徴 x2の期待情報量

ID3の欠点に,特定の事例を分類するために得られる分類木が複雑になりや

す く,また特殊なルールが得 られることなどがあげられる.C4.5では,この

ような欠点を解消するために生成された分類木の冗長な部分木を削除すること

(pruning,枝刈 り)により,より一般的な分類木を生成できるようにしている.

分類木の削除の対象となる1つ以上の部分木を終端ノードないしは枝の1つで置

き換えることによって,事例を誤って分類する率が低 くなる場合,枝刈 りが行わ

れる.また,C4.5は分類木生成のみにとどまらず,前節で述べたようなif-then

ルールの生成も自動的に行 う.

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34 第 3章 スケジューリング ・ルールの帰納的獲得

3.3 2仕事入れ換えによるルールの獲得

3.3.1 ルール獲得の流れ

本研究では,スケジューリング操作 としてスケジュール上の仕事対入れ換え

操作を取 り上げ,効果的な入れ換え操作を記述するルールを獲得することを考

えている[9,11].本研究によるルール獲得は,図 3.3の流れにしたがって行われる.以下にルール獲得の手続き 図 3.3の i∴ iv.について述べる.

i. GeneratecasesbyinterchanglngtWOjobsonaschedule

Inductive.i.盟.T.r!.I.ng""".."""ii. Generateadecisiontreefromthecases

iii. Generatearulesetsfromthedecisiontree

iy. Extractsomenユlesfrom山emleset

図 3.3:ルール獲得の流れ

3.3.2 事例の構成

帰納的学習では,事例の構成要素となる特徴の記述は最も重要な検討課題で

ある.特徴の記述は人間によって行われるものであり,事前に与えておかなけ

ればならない.しかし,特徴を多 く列挙することは対象問題に特化 したものに

なる恐れがあり,逆に少なすぎると,対象問題を過度に一般化する恐れがある.

本研究では,事例の汎用性を重視 し,事例の特徴は仕事対から得 られる仕事属

性などの基本的な情報のみで記述することとする.特徴は以下に基づいて記述

される.

●仕事属性値の差

●スケジュール上での局所的な位置情報

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3.3 2仕事入れ換えによるルールの獲得 35

対象問題によって関連のない特徴が含まれることが考えられる.そこで,関連

のないことが自明な特徴は,利用 しないこととする.すなわち,本研究では,記

述 した特徴を全て利用するのではなく,問題や評価関数に応 じて取捨選択 し利

用することとする.

事例の特徴

機械 Mk(k-1,...,m)に順序付けられた2仕事 J"J,(J"<J,)の対応する

タスク 0乞,打た,0,,打k (これを以下,機械 Mktの2仕事 と呼ぶ)の順序を入れ換

えるものとして,以下に考えられる特徴を列挙する.ただし,0t,汀kは仕事 Jz

の機械 Mk上で処理されるタスクを表すものとする.

1.評価関数に関連する特徴 (特徴の値 :<O,≧o)

(i-1)p71P,

(1-2)dl- d,

(1-3日 di-Pt)-(d,-p,)

(1-4)wtpt-W,p,

rL-・l/I,I I,・,,I

(116)wl/wl-W,I/wT

2.タスク ・データに関する特徴 (特徴の値 :<O,≧o)

(2-1)pt,打k - PJ,Tk

(2-2)pp,ec2,rた- Pt,Tk

(2-3)pp,ecJ爪 -Pj,Tk

(2-4)pL,打k - Pne叫 打k

(2-5)pJ,Tk - Pne的,打た

(2-6日dl-Cも,汀k)一(d,-C,,Tk)

(217)(d汀 ct)-(d,-C,)

3.スケジュール上での位置に関する特徴 (特徴の値 :yeβ,No)

(3-1)Oi,汀k は機械 Mk上で最初に処理される

(3-2)0,,Tkは機械 Mk上で最後に処理される

(3-3)Oprect,打k と 07,Tkは隣接 している

(3-4)Op,ec,,rkと0,,打k は隣接 している

(3-5)Ol,打k と onerti,汀k は隣接 している

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36 第 3章 スケジューリング ・ルールの帰納的獲得

(316)OJ,Tkとon叫 ,Tkは隣接 している

wi,Wl,Wlは仕事 Jiの処理時間,納期余裕,納期遅れに対する重みを表す.

また,タスク Op,ect,Tk(On叫 Tk)は,タスク 02,打kの 1つ前 (1つ後)に機械

Mk上で処理 されるタスクを表 し,pp,ec8,打k(pne叫Tk)はその処理時間を表す.

(1-1)か ら(1-6)の特徴 をルールの単一条件部 として表現することは,スケ

ジューリングにおける以下のようなルールに対応する.

(1-1) pt-p,≧ 0 - (給)処理時間の非減少順に並べる

(1-2) d,-d,≧0 - 納期の非減少順

(1-3) (di-Pt)-(dJ-P,)≧0 - 納期余裕の非減少順

(ト4) wiPi-W,Pj≧0 - 重み付 き処理時間の非減少順

(1-5) pJwi- P,/W,≧0 - 単位重みの処理時間の非減少順

(1-6)wl/W1--可~/wI≧0 - 納期ずれ重み比の非減少順

1.の特徴の値は入れ換える仕事対の仕事属性から直接得 られるのに対 して2.お

よび 3.の特徴はさらに仕事の処理順序が決まった後に得 られる,また,これ

らの特徴は 「タスク単位での入れ換え」と見なすことにより得 られるものであ

る.2.の特徴をルールの単一条件部 として表現 した場合,それぞれ以下の意味

を持つ.

(2-1) pi,Tk - Pj,打k ≧0ー 最小 タスク処理時間順

(2-2) pprec叩 k- Pt,Tk≧0

- 最小 タスク処理時間順 (07,打kとその直前のタスク間での比較)

(2-2) pprecJ,Tk-P,,打k≧0

- 最小 タスク処理時間順 (Oj,Tkとその直前のタスク間での比較)

(2-2) pt,Tk-Pnerli,汀k≧0

- 最小 タスク処理時間順 (0.,Tkとその直後のタスク間での比較)

(2-2) pj,汀k-Pne的,Tk≧0

- 最小 タスク処理時間順 (0,,Tkとその直後のタスク間での比較)

(2-6) (d2-C叩たト (dJ-ら,打た)≧0

ー タスクの完了時刻からの納期余裕が少ない方を先に処理する.

(2-7) (di-Ct)-(d,-C,)>_0

→ 仕事の完了時刻からの納期余裕が少ないタスクを先に処理する

3.の 特徴は入れ換 えるタスクの前後関係を表す ものであ り,処理前後の機械

Mkの遊休時間の有無を表す特徴 と見なすことができる.また,3.の特徴は入

れ換 えタスクの位置がそれぞれの特徴を満足するかどうかにより,Yesないし

は ⅣOをとることとする.

特徴 3・の値の設定例を以下に示す・図 3・4のようにMk上のタスクOw k、0,.だ人

を入れ換えるものとする・このとき,ot.汀L_はOprecm と隣接 し,0m は0,1eTt,,汀k_

と隣接 している・言い換えると,ol,汀んの処理直後と0,,汀kの処理前には機械 ML-

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3.3 2仕事入れ換えによるルールの獲得 37

[コ Jobsprocessedo・〟k

Characteristics (3-1)(312)(3-3)(3-4)(3-51(3-6)

VaLues No No YesNoNo Yes

図 3.4:特徴 3.の値の設定例

の遊休時間が発生している.したがって,特徴 (3-1)~(3-6)は図に示すような

値をとる.

事例のカテゴリ

事例のカテゴリは,スケジュールの評価値に基づいて分類される.ここでは,

仕事対の入れ換え操作による評価値の変化の良否をとることを考える.所与の

スケジュール SL上の任意の仕事対を入れ換えスケジュール Sl'が得 られたとす

る,SL,Sl'の評価値をそれぞれ IL,Ilとしたとき,以下のように設定する.

Il/>Ilならば good (正事例)

JJ≦JJならば bad (負事例)

以下では,good(∈P)あるいはbad(∈N)に属する事例をそれぞれ good事例,bad事例と呼ぶこととする.

3.3.3 訓練例集合の生成

図 3.3のi.の訓練例集合の生成は以下の手続きにしたがって行う.まず,何 ら

かの方法で作成した Ns個の任意順序のスケジュールS.,...,SN5_.上の各々で,

任意の仕事対を1回入れ換えることにより,Ns個のスケジュールS占,・・・.SL,5_1

を発生させる.このとき,図 3.5のように▲ゝ‖l- 0,… ,Ns- 1)から Sl'を生

成する過程を事例とする・各事例を入れ換えた ・5'l上の2仕事 J" J,の属性値

から得られる情報により特徴づける.また,Sl,SIJの評価値をIl,Il'とし,各

入れ換え操作で得 られる事例に対 して評価値の変化の値 Il'-ILを記憶 させて

おく.Ns個の事例を生成した後,全ての事例を Il/-Ilの増加順に並べ直し,

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38 第 3章 スケジューリング ・ルールの帰納的獲得

Case 1

Case2

CaseNs

Ib - Io

I1- I1

Iks_1IINs_1

Sorung

TrainingSet

図 3.5:訓練例集合の生成

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3.3 2仕事入れ換えによるルールの獲得 39

Ill-Il>0の大 きいもの及び Jl'-Il≦0の小 さいものから各 Nt個を取 り出し,

計 2Nl個 の事例を訓練例集合とする.

3.3.4 訓練例集合からのルールの帰納

図 3.3のii.,iii.の手続 きは,前節 3.3.3項の生成手続きにより得 られる 2Ni個

の訓練例集合から,ID3ないしは C4.5により訓練例集合内の事例を分類する

ルール ・セットを帰納的に獲得することにより行われる.ただし,ID3は手続

きii.の分類木生成までを行い,ルール ・セットの生成はQuinlan[36]に従って

行 うものとする.

得 られるルールは次の形式をした if-thellルールを形成 している.

2'f Xl∧x 2∧.-∧Xq then goodorbad

以下では,結論部が good,badであるルールをそれぞれ goodルール,bad

ルールと呼ぶこととする.

サンプル ・スケジュールとして Ⅳγ個のスケジュールを任意に発生させる.令

サンプル ・スケジュールに対 して図 3.3のi.~iii.の手続 きを行 うことにより計

Nr個のルール ・セット781,...,7tNrを生成する.

3.3.5 適用ルールの選択

図 3.3の iv.の手続 きは以下の通 りである.生成されるルール ・セットは,複

数個のgoodルールとbadルールで構成されている.ルールの適用段階ではま

ず,本研究におけるカテゴリの性質に基づいて,スケジューリング操作の際の

評価値の改善に効果的でないと考えられるbadルールをルール ・セットから除

去することとする.

一方,上記の手続 きでは,サンプル ・スケジュールを任意に発生させるため,

常に同一の訓練例集合が生成されるわけではなく,得 られるルール ・セットも

試行ごとに異なると考えられる.そこで,生成 した N,.個のルール ・セットを

1つに統合 し,新たにルール ・セット78を作成 し,ルール ・セット71をスケ

ジューリングに利用することとする.

獲得するルールは訓練例集合内の事例に対 して,複数個の事例を正 しく分類

するルールと,特定の事例のみを正 しく分類するルールとに大別される.前者

のルールは後者のルールに比べて一般性の高いルールであると考えられ,後者

のルールは条件部の制約が強 く有用性が低い場合が多い.このことから,ルー

ルの適用段階では可能な限り前者のルールを選択することが望ましい.そこで,

特定の事例を分類するルールを判断する基準の 1つとして,統合 したルール ・

セット78中のルールを以下の2つのタイプに大別する.

(a)711,...,7iN,の中の複数個のルール ・セットに存在

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40 第 3章 スケジューリング ・ルールの帰納的獲得

(b)1つのルール ・セット78*∈(781,.・・,7tN,)のみに存在

ルールは帰納的に生成されるため,前者のルールは比較的頻繁に生成されるルー

ルであ り,後者のルールは特定の事例を分類するために獲得 されたルールと考

えることができる.次章以降の実験では,(a)に従 うルールを選択 し適用するこ

とを考える.

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第 4章

ルール獲得の基礎的検討

スケジューリング問題の中で,既存の最適化ルール,あるいは良好なヒュー

リスティック・ルールの知られている問題は非常に少ない.本章ではまず,単純

な最適化ルールの存在する対象問題に対 して提案方法を適用 し,それらのルー

ルと等価なルールの自動獲得を試みることにより,ルール獲得の可能性につい

て検討する[9,37ト つぎに,比較的解析が容易であると考えられる 1機械スケ

ジューリング問題を対象として,提案方法によるルール獲得の可能性を検討す

る.さらに,2機械,および3機械フローショップ問題を対象として,本研究

で提案するルール獲得方法の有効性を検討する[9,38].

4.1 対象問題の設定

ここでは以下の7種類の問題を対象とする.

(A)1//maxLt

(B)l//ECi

(C)1//∑wtCi

(D)1//∑γ(E)1//WID-

(F)F2//Cmar

(G)F3//Cmar

1機械最大納期ずれ最小化問題

1機械総滞留時間最小化問題

1機械重み付 き稔滞留時間最小化問題

1機械納期遅れ最小化問題

1機械重み付き総納期ずれ最小化問題

2機械フローショップ給所要時間最小化問題

3機械フローショップ給所要時間最小化問題

なお,(A),(B),(C)の問題はそれぞれ,EDDルール,SPTルール,WSPT

ルールにより最適解を得ることができる[15,16]・また,(F)および min(pt,3)≧

maxipi,2)を満たす (G)の問題は,Johnsonルールにより最適解を得ることが

できる [15,16].さらに,(D)の問題ではMSTルールにより,比較的良好な解

が得 られることがわかっている[16].

41

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42 第 4章 ルール獲得の基礎的検討

4.2 事例の作成

4.2.1 特徴の設定

3.3.2項 で定義した特徴のうち,表 4.1に示す6個の特徴 xl~X6を利用する.

表 4.1‥事例特徴とその値 (x l,1 -X6)

Xl,k :Pi,k- PJ,A

x 2 :d2- d,

X3 ・・Wl'/wl-W,+/wTX4 :WtP8-WJPJ

X5 :Pi/wt- P,/W,

X6 =(d8-pt)-(d,-p,)

\ノ

)

)

)

)

)

0

0

0

nUnU0

^F^[^f^l^r^1

0

0

0

0

nU0

<

<

<

<

/し(

(

(

(

(

X.,k は k番 目の機械上での仕事の処理時間差を表わす.

以下に事例の作成例を示す.表 4.2で与えられる例題 4.2のスケジュールS。

(処理順序 JIJ2J3J4J5)上の2仕事 J2,J4を入れ換えて,スケジュールS占(処

理順序 JIJ4J3J2JS)が得 られたとする.

表 4.2:例題 4.2(1機械 5仕事問題)

仕事 JIJ2 J3 J4 J5

処理時間 (pi) 6 9 4 2 8

納期 (di) 10 15 8 4 16

処理時間重み (wi) 5 2 1 6 3

納期余裕重み (wl) 2 1 2 4 3

納期遅れ重み (W{) 3 2 4 1 1

評価関数を最大納期遅れとすると,S。および S昌の評価値 Io,Idはそれぞ

れ,I0-17,I6-16であり,事例は表 4.3のようになる.

4.2.2 事例の発生法

図4.1のように,ある与えられた n仕事に対するサンプル .スケジュール S。

上の2仕事 J" J,(Ji-<J,)を入れ換えることにより,事例 となるスケジュー

ル Skは nC2個発生させる(k-1,2,・-,nC2).このとき,訓練例集合の特性は

サンプル ・スケジュール S.によって影響される.たとえば,sDが評価関数に

対 して最適スケジュールである場合,どのような2仕事を入れ換えてもそれ以

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4.3適用事例数の検討 43

表 4.3:事例の一例

XI x 2 X3 X4 X5 X6 Cate90ry

≧0 ≧0 <0 <0 ≧0 <O good

上改善されることはなく,得 られる事例のカテゴリは全てbadになりルール獲

得は不可能になる.このようなサンプル ・スケジュールの影響を抑えるために,

ここでは Ⅳγ個のサンプル ・スケジュールを発生させ,そのおのおのから上記

の手順により取 り出した全ての事例を訓練例集合とする.以上をまとめると,

。発生事例数 Ns:nC2×Nr

●訓練例集合の大きさ:2NIXN,

である.ただし,Nlは3.3節の図 3.5における適用事例数を表す.

AllSchedulePatterns

SampleSchedule

So

N=11C2

図 4.1:事例の生成

= ClLiLe1> case2

CaseN

4.3 適用事例数の検討

4.3.1 訓練例集合の性質

訓練例集合の大きさが十分でなければ,獲得されるルールは特定の事例を分

類するための特殊なものとなる可能性が高いと考えられ,逆に多過ぎるといく

つかの事例が冗長な学習データとなり,計算時間的に非効率的なルール獲得と

なると考えられる.そこで,効率よく信頼性の高いルールを獲得するためには,

適切な適用事例数,すなわち,Niの設定について検討することが必要である.

なお,本論文では前節に述べたサンプル・スケジュールの発生数 N,は 10個に

固定した.

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44 第 4章 ルール獲得の基礎的検討

訓練例集合の生成法において,2Ni個の事例は獲得されるルールの信頼性に

関与すると考えられる.ルールは帰納的に形成されるため,Nlが数個程度であ

る場合は,獲得 されたルールが発生させた事例全てをうまく分類するとは限ら

ず,適当数の事例が必要となる.一方,獲得されるルールの分類精度をより高め

るために,これらの 2Ⅳ 個の事例は明確にカテゴリ分類されるべきであ り,矛

盾事例群,すなわち,どちらのカテゴリにも属する可能性のある事例群は抑制

すべ きである.この矛盾事例群は,学習アルゴリズムの分類操作上不確かな情

報であ り,獲得 されるルールの信頼性を低減する原因になると考えられる.し

かし,これらの事例群は,Ntの増加に伴い同一特徴を有する事例 も増加するた

め,その発生確率は高 くなる.そこで,訓練例集合を矛盾事例群の有無に着目

したエントロピーで定量表現 し,エントロピーの減少に基づいた適用事例数を

検討する.

4.3.2 矛盾事例群による訓練例集合の定量表現

訓練例集合の評価の基準として,同一特徴を有する事例群のエントロピーの

加重平均を用いることとする.所与の訓練例集合 T 中の同一特徴を有する事例

群 ICk(k-1,2,- ,W)のエントロピーを次式 (4.1)で定義する・

I(CkP,ckN)CkF . ckP

CkP+ckN ⊥)52ckP+ckNl・.ヽ 1 (・.\-

CkF+ckN ⊥)b∠ckP+ckN(4.1)

I(CkP,ckN);事例群 ICkのエントロピー

CkP ;事例群 ICk 中のカテゴリPの個数

Ckr ;事例群 ICk中のカテゴリNの個数

このとき,訓練例集合 T のエントロピー HT を式 (4.2)のように,ICkのエ

ントロピーの加重平均により定義する.

E,CkP+C㌘II.,-∑

tI α+βI(CkP,ckN) (4.2)

HT の値のとりうる範囲は 【0,1]であ り,HT-0の場合,訓練例集合 T は矛

盾事例群を含まないことを意味する.逆に,〟7- 1では同一特徴を有する事

例群は全て矛盾事例群であ り,かつCkP-ckNであれば最も事例を分類 しにくいことを意味する.

4.3.3 数値例

ここで,Nt-5,10,15,- ,100と変化させたときに生成される訓練例集合のエ

ントロピーHTの変化を調べる.図4.2は,(A)-(E)の 1機械問題 (n- 30,50)

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4.4学習実験 45

50 100 150 200

SizeofTrainlngSet

3

5

2

5

o

2

o

-

o

>aToJluuO6eoia^

V

50 100 150 200

SizeofTrainlngSet

図 4.2:適用事例数 Niとエントロピ一万T

において,上述の操作に従った数値シミュレーションを30回行ったときの平均

エントロピー(育丁)を表している.

図4.2のように,Nlが増加するにしたがって,訓練例集合のエントロピ一万 ・Tは

増加することがわかる.すなわち,Nlの増加に伴い同一特徴を有する事例群が存

在しやすくなる.このようなNiの増加に伴う育Tの増加傾向は,フローショップ

問題においても同様の結果を得ている.この図からは,適用事例数 2∧1-50で

あればその訓練例集合のエントロピーHTは0.05以下であることがわかる.た

とえば,HT ≦0.05とは,適用事例数 50個の中で 3個以下の事例を含む矛盾

事例群が存在することを示す.次節以降のルール獲得実験では, 1つのサンプ

ル・スケジュールから得られる事例のうちで,50個の事例を用いることとする.

4.4 学習実験

4.4.1 ルールの獲得と評価

以下の条件でルール獲得を行 う.

●仕事数 :30,50

.サンプル ・スケジュール数 N,:10

・適用事例数 Ni:25 (訓練例集合の大きさ:500(-2×NIXN,))

●ID3により訓練例集合から分類木を生成

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46 第 4章 ルール獲得の基礎的検討

ただし, 1つのサンプル ・スケジュール上で仕事対の全ての組み合わせについ

て入れ換え操作を行い, nC2個のスケジュールを発生させることとする.

また,ルールを適用する際,評価関数が総所要時間最小化であれば,処理時間

は評価値に影響するが,納期や重みなどの仕事属性は影響 しないことから,処

理時間に関するルールのみに着目すればよいと考えられる.そこで,3.3.5項の

ルール選択の考え方に基づいて以下の項目からなる選択条件を満たすルールを

得 られたルール ・セットの中から選択 し,その妥当性を検討する.

[選択条件]

(1)条件部 (特徴)全てが評価関数に直接関連するルール

(2)結論部が goodのルール

選択条件 (1)は,ルールの条件部 として採用された仕事属性が評価値に影響

するかどうかを判断するためのものである.また,選択条件 (2)は,本研究に

おけるカテゴリの性質に基づいて,スケジューリング操作の際の評価値の改善

に効果的でないと考えられるルール (カテゴリが bad)を除去するためのもの

である.例 として F2//CmaL.の場合で,以下のような3つのルールが得 られたとする.

(a)ifXl,1≧0 x2≧Othengood

(b)ifXl,1≧0∧Xl,2<Othengood

(C)Lf Xl,1<O thenbad

ルール (a)は納期に関する条件 x2>0が含まれており,総所要時間を最小化

することには関連がなく選択条件 (1)を満足 しない.また,ルール(C)は選択条

件 (2)を満足 しない.したがって,この例ではルール (b)のみが採用されることとなる.

ルールの適用方法に関しては,選択条件によりルールを取捨選択することと,

個々のルールのスケジューリング ・ルールとしての効果を検討するために,過

常のルール ・セットを適用する方法ではなく,個々のルールを繰 り返 し利用す

る.その際,入れ換え候補となる仕事が3個以上存在する場合は,それらの中

から任意に選択 した仕事を入れ換え,ルールの条件部を満足する仕事が存在 し

なくなるまでそのルールを適用する.

得 られたルールの評価は,各評価関数においてジョブ数 10,30,50,70,100の

問題をおのおの 50個発生させ,得られたルールによるスケジュールを最適スケ

ジュールや既存のディスパッチング・ルールにより得られるスケジュールとの比

較により行なう.仕事の処理時間,納期,重みは一様乱数で与え,スケジュー

ルの初期状態は任意順序とする.なお,f.の相対偏差 dev(fo)は,以下の式に

より算出する.この場合,負の偏差であれば良好な解であること示す.

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4.4学習実験 47

dev(fo)-垂一幸ヱ × 100

f.:抽出したルールによる解

J*:比較の基準となる解

(4.3)

4.4.2 1機械問題への適用

ここでは,(Aト (E)の5種類の問題に対 して帰納的学習法を適用 した結果に

ついて考察する.最適化ルールの存在する問題 (Aト (C)においては,最適ス

ケジュールでの仕事の並び順は,最小処理時間順や最早納期順などであり明確

な特徴を有する.提案方法によるルール獲得の第 1段階として,既存の最適化

ルールと等価なルールの獲得を実験することによって,提案方法によるルール

獲得の可能性の基礎的検討を行 う.

(A)1//maxLi

生成 した訓練例集合からは,30ジョブでは9個,50ジョブでは6個のルール

が抽出された.これらのうち,選択条件を満たすルールは以下のものである.

(A-1)if .¥2>O thellgood

このルールの述語的な意味は,「2つの仕事を入れ換える際,納期の小 さい仕

事を前に移動 させれば (x 2≧0),スケジュールの評価値は改善される」とな

る.したがって,ルール(A-1)はEDDルールと等価 となる.

(B)1//∑Ci

生成 した訓練例集合からは,ジョブ数 30,50のどちらの場合でも選択条件を

満たす以下のルールが抽出された.

(B-1)if X l,1≧Othen good

このルールは,「2つの仕事を入れ換える際,処理時間の小 さい仕事を前に移

動 させれば (xl,1>_0),スケジュールの評価値は改善される」ことを意味す

る.このルールはSPTルールと等価である.

(C)//EwiCi

問題 (B)の場合と同様に,ジョブ数 30,50のどちらの場合でも選択条件を

満たす以下のルールが抽出された.

(Cll) if X5≧Othen good

このルールは,「2つの仕事を入れ換える際,単位重みあたりの処理時間の大

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48 第 4章 ルール獲得の基礎的検討

きいものを後ろに移動させれば (x5≧0),スケジュールの評価値は改善され

る」ことを意味する.このルールはWSPTルールと等価である.

以上の (A)~(C)の問題への提案方法の適用結果から,最適化ルールと等価

なルールを獲得できた.つまり,提案方法によるルール獲得では,評価関数に

対 し影響のある重要な特徴を有 したルールの獲得が可能である.つぎに,スケ

ジュールの特徴が明確でないような1機械問題において,目的関数に影響のあ

る特徴を有するルールの獲得を試みる.

(D)1//∑¶

生成 した訓練例集合から得 られたルールの個数は,30ジョブの場合で 10個,

50ジョブの場合で6個であった.以下に選択条件を満たすルールを示す.

(DI1) if X6≧O then good

(D-2) if X6≧ 0∧x 2≧Othen good

ルール(D-1)はMSTルールと等価であることがわかる.図4.3にルール (D-2)

の MSTルールとの平均相対偏差を示す.ルール (D-2)は MSTルールに比べて良好な解を導出するルールであることがわかる.このルールは 「最小納期余

裕順」に加えて 「最早納期順」の性質も条件部に付加されているところがMST

ルールと異なる.

(E)1//EwiDi

生成 した訓練例集合から得 られたルールの個数は,30ジョブの場合で 6個,

50ジョブの場合で 2個であった.以下に選択条件を満たすルールを示す.

(EI1) if x 2≧0∧X3<O then good

(E-2) if X1,1<0∧x2≧Othen good

(E-3) if x 2≧O then good

ルール (E」)~(E-3)の妥当性を (D)の問題の場合 と同様に数値シミュレー

ションにより検討する.比較の基準となる解 Pは全実行可能解 n!の中から

50000個のスケジュールをランダムに発生させ,それらのうちの最小のものと

する.図 4.4に,ルール (E-1)-(E-3)とJ*との平均相対偏差を示す.ランダ

ム ・サーチによる最小解と比べて,特に n>10の場合,ルール(E」)および

(E-3)が良好な解を導出していることがわかる.

4.4.3 2,3機械フローショップ問題への適用

ここでは,複数機械の場合でのルール獲得を試みる.提案方法においては,

事例の特徴として仕事に関する特徴のみを考慮 し,機械に関する特徴を考慮 し

ていない.機械台数を増加させた場合で,これらの特徴をそのまま利用可能で

あると考えられる対象問題の 1つとして,各機械での処理順序が一定であるフ

ローショップ問題があげられる.(F)および(G)の問題に対 して提案方法を適用

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4.4学習実験 49

(%)

uo!lt2!e凸

O

^

!lt2一e丘

06t2JO^V

10 30 50 70 100

NumberofJobs

図 4・3:ルール(D-2)による解のMSTルールによる解 との相対偏差

50

00

50

0

(%)

uo!ttE!o凸

e^!leIetj

06eLeIV

10 30 50 70 100

NumberofJobs

図4・4:ルール(E-1),(E-2),(El3)による解のランダム ・サーチによる最小解との相対偏差

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50 第 4章 ルール獲得の基礎的検討

した結果について考察 し,ルール獲得の可能性を確認する.以下ではジョブ数

30,50とし, トレーニング ・セットは前章 と同様な条件で作成する.

(F)F2//CmaX

生成 した訓練例集合から得 られたルールの個数は,30ジョブの場合で 11個,

50ジョブの場合で 14個であった.以下のルール(F-1)はそれらのうちで選択基

準を満たすルールである.

(F-1) if Xl,1≧0∧Xl,2<O then good

ルール (F-1)による解 をJohnsonルールにより得 られる最適解 r と比較す

る.50回の数値シミュレーションにより,ルール(F-1)による最適解導出回数と

最適解 との平均相対偏差を検討 した結果を図 4.5に示す.また,解の精度を検

討するために,総所要時間では比較的良好なスケジュールを作成するSPTルー

ルによる解 も示す.

3

2

(%

)

uo!le!e凸

0

>!lelOtjO

6

t

?LaV

10 30 50 70 100

NumberofJobs

図 4・5‥ルール (F-1)による解の最適解 との相対偏差 (F2//CmaT)

ルール(F-1)はJohnsonルールと等価ではないが,SPTルールに比べて良好

な解を導出するルールであることがわかる.抽出 したルール ・セットの中で選

択条件を満たすルールが高々1つだけであったことから,得 られたルール ・セッ

ト内ではルール (F-1)が最 も有用なルールである.

(G)F3//Cmax

生成 した訓練例集合から得 られた分類木の構造は複雑で,抽出したルールの

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4.4学習実験 51

個数は,30ジョブの場合で 24個,50ジョブの場合で 17個であった.以下の

ルール(G-1)はそれらのうちで選択基準を満たすルールである.

(G-1) if Xl,1≧0)<Xl,3<O then good

ルール(G-1)を,以下のように2つの場合に対 して,それぞれ50回の数値シ

ミュレーションにより,比較検討する.

(1) 処理時間が条件 min(pt,3)≧maxipl,2)を満たす場合

比較対象の解 J*は Johnsonルールによる最適解とし,図 4.6(a)にルール

(G-1)およびsPTルールの最適解との平均相対偏差を示す.

(2) 条件 min(pt,3)≧max(pl,2)を満たさない場合

比較対象の解はSPTルールによる解 J*とし,図 4.6(b)にJ*との平均相対

偏差を示す.

(1)の場合では,SPTルールに比べて良好な近似解を導出するルールである

ことがわかる.ルール (G-1)の条件部を見る限りでは,(1)のような処理時間に

関する条件を付加 した場合,Ml,M3 上での処理時間が総所要時間に大きく影

響することがいえる.また(2)の場合では,(1)の場合と同様にSPTルールに比

べて良好な近似解を導出するルールであることがわかる.この問題では簡単に

最適解を得 られるルールが存在せず,ルール (G-1)が抽出した2つのルール ・

セットの中で唯一選択条件を満たすものであることから,現段階の特徴表現で

は,得られたルール・セット中で最も有効なルールである.しかし,スケジュー

リング ・ルールとしては,さらなる条件部の付加が必要であると思われる.

4.4.4 孟l"練例集合のエントロピIH7-の検討

対象問題 (A)~(G)において生成 した事例数 500個の訓練例集合のエントロ

ピー HTを表 4,4に示す.表中の ()内は矛盾事例群の中でカテゴリを書換えた

事例の割合を表わしている.

エントロピーが0.05以上になった原因として,10種類のサンプル・スケジュー

ルから取 り出した訓練例集合を合せて1つの訓練例集合としたため,新たに矛

盾事例群が発生したことが原因の1つとして考えられる.今後,適用事例数 Nt

とサンプル ・スケジュール Ⅳγを考慮 した訓練例集合のサイズの検討が必要で

ある.納期が関係 しない問題である(B)および(C)では,矛盾事例群が存在 し

ないことがわかる.フローショップ問題の場合では, 1機械問題の場合に比べ

てエントロピーが大きく,機械台数が増えるに従って,矛盾事例群は発生 しや

すい傾向があるといえる.2仕事の仕事属性という局所的な情報によるルール

獲得のために,評価関数が複雑になったり,問題規模が大きくなると特徴が得

られにくくなることがエントロピーが大きくなっている原因として考えられる.

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第 4章 ルール獲得の基礎的検討

(

%)u

o

!tt2!0凸e^!)C10tj

0

6

。LO>V

5

3

5

2

5

1

5

3.

2

0

30 50 70 100

NumberofJobs

(a)AvlrJLg■RJlJLtiyJDeViAtioAOfSolutioAJ 上y Rtz14lG-1)4Jld SP℡RtzIJEroJZq〉tizELAl SoltztoizZ

図 4.6: ルール (G-1)による解の

(F3//Cmax)

(%)uo毒

^OQe^!leIOt]e6eJo>V

10 30 50 70

NumberofJobs100

lb)Av8raq■RJlAtivJp●viAとioJIOEsoltztiozIJby Rule(GF-1JEroJ)SolutioJlbv SpyRtz14

Johnson ルールによる解 との相対偏差

表 4.4:エントロピーHT

仕事数 30 50

(A)1//maxLi 0.1 (4.6%) 0.07 (2.4%)

(B)1//∑Ci 0.0 (0.0%) 0.0 (0.0%)

(C)1//EwiCi 0.0 (0.0%) 0.0 (0.0%)

(D)1//∑℃ 0.09 (3.0%) 0.01 (0.2%)

(E)1//EwiDi 0.08 (3.0%) 0.00 (0.0%)

(F)F2//Cmax 0.22 (6.6%) 0.12 (5.0%)

(G)F3//Cmax 0.34 (13.0%) 0.30 (12%)

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4.5考察 53

一方, Nt-100,200の訓練例集合,すなわち Nl-50の場合に比べ 大 きな

エントロピーを有する訓練集合からルール獲得を行 うと,複雑な分類木および

ルールが生成されやすい傾向があることがわかった.例えば,(A)1//LmaT問

港では,以下に示すようか レールが獲得 された.

if Xl,1≧0∧x 2≧O then good

if Xl,1<0∧x 2≧0∧X6≧Othen good

これらのルールは獲得 した最適化ルール (All)の条件部に他の特徴を付加 した

形となっている.すなわち,訓練例集合のエントロピーが大きくなると多数の

ノードを有する分類木が生成され,そこから得 られるルールの条件部は複雑に

なりやすい傾向があると考えられる.したがって,訓練例集合のエントロピー

を可能な限 り小 さくすることにより,有効なルールを獲得することが可能であ

るといえる.

4.5 考察

4.5.1 事例特徴の付加

以上では,仕事属性のみを先見的情報,すなわち自明な知識としてルール獲

得を行なった.しかし,対象問題の固有の情報をその先見的情報に組み込むこ

とによって,対象問題に対 して関連の深い効果的なルールが獲得可能であると

考えられる.すなわち,これまでの事例に問題固有の特徴を付加することによっ

て,より有用なルールの獲得が期待される.以下では,2,3機械フローショッ

プ問題を取 り上げ,これらの問題固有の事例の特徴を付加することの有効性を

検討する.

ここで対象としている2機械および3機械フローショップ問題では,総所要時

間を評価関数とした場合,仕事の処理時間のみに着目すれば,効果的なルール

獲得が可能であることがわかる.本研究で設定 した処理時間に関する特徴は,各

機械上での処理時間の差のみであり,機械間の相互的な関係は考慮 していない,

しかし,2機械および3機械のフロー ・ショップ問題の解析的結果として,2仕

事の先行関係を決定する際,pi,1+pl,2,Pi,2+pi,3 など,処理時間に関 して機械間

の相互的な関係が存在する [15].そこで,これらを考慮 したつぎのような特徴を

付加することを考える・ただし,所与のスケジュール上の仕事 IIi,J,(i<j)を入れ換えることとする.

X7 : (piJ+p,,m)-(p,,1+pt,m) (≧0,<0)

X8 : (粧 1+pJ,2)-(p,,1+pl,2) (≧0,<0)

X9 ‥ (pも,m-1+p,,m)-(p,,m-1+pi,m) (≧0,<0)

既存の特徴に,これら3つの特徴を付加 してルール獲得を行なうが,m,=2の

場合はどの特徴 も同じ意味をもつことになり,このとき x8と x 9 は省 くこと

にする.

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54 第 4章 ルール獲得の基礎的検討

(F),(G)の問題に対 して,4・4と同様な学習実験を行った・その結果抽出さ

れたルール ・セットの中で,選択条件を満たすルールは以下のものである.

・(F)F2//Cmax

(F-a)

(F-b)

(F-C)

f X7≧0∧Xl,1≧Othen good

f X7≧0∧Xl,2<O then good

f X7≧O then good

・(G)F3//Cmax

(G-a) if X7≧0∧Xl,1≧Othen good

(G-b) if X7≧0∧Xl,3<O then good

(GIC) if X7≧O then good

上記の6つのルールの条件部は,特徴 X7が付加されており,それ以外の条件

部は先の実験で抽出した各ルールの条件部と同じものであることがわかる.す

なわち,付加 した特徴は訓練例集合の分類上重要な特徴であるといえる.以下

では,新たに獲得 した6つのルールの妥当性の検討を行 う.数値シミュレーショ

ンは,先の実験同様,5種類のジョブ数 10,30,50,70,100に対 し,50回行なう

こととする.

(F)F2//Cmax

比較の基準となる解 J*は,ルール(F-1)により作成する. 表 4.5は,ルール

(F-a),(F-b)および (F-C)による解とJ*との平均相対偏差を示す.表 4・5から,

ルール(FIC)はルール(F-1‖こ比べて良好な解を導出していることがわかる.ま

た,ルール (F-b)とルール(F-1)のスケジューリング ・ルールとしての性能は

ほとんど変わらないことがわかる.ルール (F-1)とルール (F-b)は同個数の条

件部であるが,条件そのものは後者のルールの方がその制約が強いため,前者

に比べてスケジューリング操作が行いにくいという欠点がある.しかし,ジョ

ブ数が増えるとその間題も彼和 されると考えられるので,数百のジョブ数であ

れば新たに獲得 したルールの方が効果的であると思われる.

(G)F3//Cmax

比較の基準となる解 J*は,ルール(G-1)により作成する.ルール(G-a),(G-

b)および (G-C)による解とJ*との平均相対偏差を表 4.5に示す.得られたルー

ルから,3機械フロー ・ショップ問題でのルール獲得の際,ID3 が Ml,M3 上

での処理時間に着目していることがわかる.また,(F)の問題の場合と同様に,

ルール(G-C)はルール(G-1)に比べて常に良好な解を導出しているが,新たに

獲得 した3つのルールとルール (G-1)のスケジューリング ・ルールとしての性

能は差がないことがわかる.この原因の一つとして,フロー ・ショップ問題で

は機械台数が増えるにつれて,仕事処理時間の機械間での相互的な影響が複雑

となり,それに伴 う解析が困難になることが考えられる.

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4.5考察 55

表 4.5‥事例特徴を付加 した場合の解の補対偏差 (%)

仕事数 10 30 50 70 100

(F-a) 5.4 1.59 1.59 1.0 0.5

(F-b) 0.02 0.08 -0.01 -0t1 0.0

(F-C) - 0.6 -0,2 -0.07 -0.07 -0.05

(G-a) 0.08 0.9 -0.04 0.06 0.2

(G-b ) -0.2 0.2 0.1 0.3 0.2

(G-C ) -0.6 -0.1 -0.1 -O.05 、一0.05

4.5.2 学習アルゴリズムの検討

ここでは,2機械および3機械フローショップ問題 に対 して C4.5をルール

獲得に適用した結果について考察する.と同様な実験条件で,C4J'を利用 して

ルール獲得の実験を行った.図 4.7(1),(2)はそれぞれ,F2//Cmaご,F3//C川り,

で得 られた分類木を表す.

これらの分類木からは以下のルールが得 られる,なお,ルール番号 (*つ)は前

項で得 られたルール (*)と等価であることを示す,

●C4.5により得 られたルール

F2//Cmar

(F-b') if Xl,2<0∧X7<O then bfgood

(FIC') if X7≧O then good

F3//Cmar

(G-a') if X7≧0∧Xl,1≧Othen good

(G-d) if X7≧0∧Xl,2<O then good

F2//Cmarの場合は効果の低かったルール (F-a)を生成 しておらず,C4.5を

利用することによって効率的に良好なルールを求められることが考えられる.

F3//Cmarの場合では,ルール (G-d)は新たに得 られたルールである.ルール

(G-d)に対 して以下の2つの場合について有効性を検討する.

(1) 処理時間が条件 min(pt,3)≧maxくれ2)を満たす場合

表 4・6にルール (G-d)およびルール (G-b')による解 と最適解 との平均相対偏

差を示す.

表 4・6から,C4.5により新たに得 られたルール(G-d)はルール(G-b)に比べ

て良好な解を導出するルールであることがわかる.

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56 第 4章 ルール獲得の基礎的検討

(a)∩=30 (b)n=50

x7T ,:= …:Sd X7-l: ;':= gir:dl:I,:= …::d

(1)F2//Cmarの場合

(a)n=30

x7T I,oo= bi・7て <2.0= gi,:dT ,0_ bad

<0- good

-0- good

:i-ltL

翫 t≡:=gxoo,d

(b)∩=50

x7T ;0.= bBa?

>0- bad

<0- 900d

=O- x6T≡O.= …:Sd

(2)F3//CmaLlの場合

図 4.7:C4.5により得 られた分類木

表 4・6‥ルール(G-d)およびルール (G-b)による解の最適解 との相対偏差 (%)

仕事数 10 30 50 70 100

(G-d) 1.5 0.48 0.24 0.20 0,15

表 4・7:ルール(G-d)による解のルール(G-ち)による解 との相対偏差 (%)

仕事数 10 30 50 70 100

-1.2 -0.76 -0.35 -0.26 -0.22

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4.5考察 57

(2) 条件 min(pi,3)≧max(pt,2)を満たさない場合

比較の基準となる解をルール (G-b)により求め,ルール(G-d)による解 と比

較 した結果を表 4.7に示す.

(1)の場合 と同様にルール (G-d)は ID3によるルールに比べて良好な解を導

出するルールであることがわかる.これらの結果から,C4.5によりID3と同等

かさらに効果的なルールが獲得可能であるといえる.

4.5.3 訓練例集合生成法の検討

前項のルール獲得実験により,C4.5が ID3に比べ,良好な解を導出するルー

ルを獲得する可能性が高いことが確認された.しかし,仕事数の違いにより分

類木の形状が異なるため,結果的に良好なルールが常に得 られるとは限らない.

この原因の 1つとして,訓練例集合の生成段階におけるサンプル ・スケジュー

ルの訓練例集合の特性-の影響が考えられる.ここではサンプル ・スケジュー

ルの影響を硬和 した訓練例集合の生成法を検討する.

逐次的な事例の発生

図 4.8のように,ある与えられた n仕事に対するサンプル ・スケジュール S。

上の任意の仕事対を Ns 回繰 り返 し入換えることにより,Ns個のスケジュー

ル SL(I-1,・・・,Ns)を発生させる.以下ではスケジュール Sl_1での2仕事 J"

J,(Jt-<J,) (2タスク Oi,Tk, 0,,打た)を入れ換えてスケジュール Slが生成 さ

れるとする.このとき,Sト1から slを生成する過程を事例 とする.各事例を

入れ換えた Sl11上の2仕事 J" J,の属性値から得 られる情報により特徴づけ

る.この手続 きは,3.3節の図 3.5における事例の発生段階において,

Sム-Sl,Si-S2,S;-S3,‥.,Sん。_2- SNs_1

となる.以下では,上記による訓練例集合の生成法を逐次的入れ換え法,図 4.1

にしたがう訓練例集合の生成法を組み合わせ入換え法 と呼ぶこととする.

以下の実験では,任意に作成 したサンプル ・スケジュール上の仕事対を逐次

的に 10000回入れ換え,Nt-250として合計 500個の事例を取 り出 し,訓練

例を作成する.また,分類木の生成およびルールの獲得にはC4.5を利用する.

(F)F2//C m ax

F2//C maLl問題において逐次的入れ換え法により生成 した訓練例集合からは,

仕事数が30,50の場合でも図 4.9(1)のような分類木が生成された.さらに,10,

70,100の仕事数に対 しても,C4.5により図 4.9(1)と同様な分類木を得た.こ

の結果から,訓練例集合の生成法を改良することにより仕事数の違いに関係な

く分類木が収束 していることが確認できる.図 4.9(1)の分類木からは,以下の

ルール(F-C)と等価なルールが獲得 される.

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58 第 4章 ルール獲得の基礎的検討

・1 壷 -

1i甲 - 甲 ヨー_I Case1

Case2

CaseNs

匿ヨJobJ,・ EEヨJobJj

図 4.8:事例の生成法 (逐次的入れ換え法)

x7T ;:= …:Sd

(1)F2//Cmaxの場合

(a)∩=30

Ⅹ7T

<0- bad

≧O- ち,2 >0 bad

<0- 900d

=0- good

(b)∩=50

x7ll: ≡.o= ≡:Sd

(2)F3//Cmarの場合

図 4.9:逐次的入れ換え法により得 られた分類木

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4.5考察 59

(F-C) if X7≧Othen good

(G)F3//C max

F3//Cmax問題に対 して,逐次的入れ換え法により生成 した訓練例集合から得

られた分類木を図4.9(2)に示す.図4.9(2)の分類木は,図4.7(2)における分類

木に比べて,さらに簡略化されたものとなっている.特に,仕事数が30の分類

木はルール (G-d)の条件部となる特徴 x1,2,XTのみで構成される分類木であ

る.また,図4.7(2)の分類木から冗長な枝を除去することにより,洗練 した構

造の分類木であると考えられることもできる.図4.9(2)の分類木からは.最終

的に次のルールが得 られる.これらのルールは先の実験で良好な解を導出する

ルールであることが確認されている.

(G-C) if X7>_0 then good

(G-d) if X 7≧0∧X1,2< O then good

4.5.4 サンプル ・スケジュールと分類木

以上の実験では,有効な分類木の生成とルール獲得が可能であることがわかっ

た.しかし,訓練例集合の特性がサンプル ・スケジュールに影響すると,有効

な分類木ないしはルールが得 られるとは限らない.ここでは,分類木の形状に

基づいてサンプル ・スケジュールの分類木およびルールに対する影響に関する

考察を行 う.

仕事数が 50の F2//Cmar問題に対 して,組み合わせ入れ換え法および逐次

的入れ換え法により,各々10種類の訓練例集合を作成する.このとき各生成法

から得 られた分類木の種類と生成個数を表4.8に示す.ただし,分類木

r :(ノード (Xl,1,Xl,2,x2,-・,X9))

昌 は生成された分類木の種類を表す番号)

のように表す.

表 4.8:分類木の生成結果

生成法 分類木 生成個数

組み合わせ入れ換え法 T1:(xT) 7T2:(x7,X1,2) 1

T3 :(x7,X1,1,x 2) I

T4 ‥(x7,X1,1,X3,x 2) 1

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60 第 4章 ルール獲得の基礎的検討

先の実験から,分類木 Tlからは評価関数に対 して有効なルールが生成され

ることが確認されている.表 4.8から,組み合わせ入れ換え法では,分類木 Tl

以外に3つの異なる分類木が生成されており,逐次的入れ換え法では,常に分

類木Tlを生成 していることがわかる.仕事数を変化させた場合や3機械の場合

にもほぼ同様の結果が得られている.したがって,逐次的入れ換え法では,組み

合わせ入れ換え法に比べてサンプル ・スケジュールに影響が少ない訓練例集合

を生成することができ,一般性の高い分類木を得ることが可能であるといえる.

4.6 まとめ

本研究では,1機械問題 と2機械および3機械フローショップ問題を対象とし

て,帰納的学習によるスケジューリング ・ルール抽出法を提案 し,その有効性

を検討した.ルール獲得は,トレーニング ・セットをサンプル ・スケジュール

上の2仕事を入れ換えることにより生成 し,Jか3ないしは C4.5により分類木

を求めることによって行われる.対象問題に対 して提案方法を適用 して得 られ

たスケジューリング ・ルールについて検討 した結果は以下のとおりであり,揺

案方法はルール獲得方法として有効であるといえる.

(1)簡単な最適ルールの存在する問題では,得 られたルールはそのほとんどが既存のルールと等価である.

(2)簡単な最適ルールのない問題では,良好な結果与えるルールを得ることが

できた.

(3)エントロピーにより訓練例集合を定量表現し,エントロピーが最小 となる

訓練例集合から有効なスケジューリング ・ルールが得 られやすいことを確

認 した.

(4)C4.5を利用することにより,ID3により獲得されるルールに比べ,良好

なルールの獲得が可能である,

(5)訓練例集合の生成段階において,仕事対の逐次的な入れ換えによる生成を

行 うことにより,サンプル ・スケジュールの影響が小さい分類木の生成が

可能である.

なお,より複雑な問題におけるルール獲得,スケジュール ・パターン群の大き

さを含めた学習の効率化に対するトレーニング ・セットの生成法などは今後の

課題である.

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第 5章

フローショップ問題におけるルールの

獲得と適用

本章では,第4章の拡張として m 機械 n仕事フローショップ問題を対象とし

たルール獲得方法を提案する.5.1節では,フローショップ問題に適応 した事例

の構成 と適用事例数について検討 し,さらに獲得ルールのスケジューリング ・

ルールとしての性能を観察する [10,ll,39].評価関数 として (H)給所要時間

Cmax を取 り上げる.5.3節では仕事対入れ換えによる近傍探索スケジューリン

グという観点から,獲得ルールの有用性について検討する [12,40].5.3,5.4節

では,評価関数 cmaTに加えて,(Ⅰ)総納期遅れ∑Tiを取 り上げる[11,12].最

後に5.5節では,複雑な問題への拡張として多目的フローショップ問題への適用

を試みる[41,42].多目的フローショップ問題では,cmα訂,∑γ,さらに(∫)紘

滞留時間∑Ctを考え,これら3個の評価関数を対象とする.本章では,訓練

例集合からのルールの帰納にC4.5を利用することとする.

5.1 ルール獲得の基礎的検討

5.1.1 事例の構成と発生法

3.3.2項 で定義 した特徴のうち,表 5.1に示す 15個の特徴 XiF~xi号を利用

する.フローショップ問題では仕事 Jtの 7Tk番 目のタスクを処理する機械 ML.は同じである (F樟 た-Mk ). よって,Ol,打k,Pt,Tk はそれぞれ,07,k,Pt.k (仕

事 Jtの機械 Mk上でのタスクおよびその処理時間)と表記する.

事例の発生方法は図 5.1に示す逐次的な入れ換えに基づいて行 うこととする.

所与の m x nフローショップ問題で,任意順序のサンプル ・スケジュール S。上の任意の仕事対をNs回繰 り返し入れ換えることにより,Ns個のスケジュー

ル SL(l-1,- ,Ns)を発生させる.以下ではスケジュール Sト1での2仕事 J"

J,(JL-<17)(2タスク Ol,k,0J,k) を入れ換えてスケジュールSlが生成され

るとする.このとき,s lllから Slを生成する過程を事例 l(Cl) とする.各

61

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62 第 5章 フローショップ問題におけるルールの獲得と適用

表 5.1:事例特徴 とその値 (xiF~xif)

XiF:pt,A- P,,k

X;F :p71 ,k- P,,k

X;F:、p,_1,k- Pi,k

XiF:pt,A- PL+.,k

XiF‥p,,k- Pi+.,k

)

)

)

)

)

0

0

nU0

nU

>一>一>一>一>一

〇〇〇

<

<

/し(

/し(

′tlXiF:ot,kは最初に処理 (i-1)される

XIF:0,,k は最後に処理 (j-n)される

XiF:0111,kと ot,kは隣接 している

X;F:0,_1,k と 0,,kは隣接 している

Xi言 :oi,k とot+1,k は隣接 している

Xif:0,,k と O,+1,kは隣接 している

)

)

)

)

11ノ)

0

0

0

0

0

0

rIJ'JJ.JJ

.I

.

.I,

PJJ

pLpレβしpLe

βL

y

y

y

y

y

y

(

(

′し(

t

(

・,二

,;

r/

.:

,

I;,::

.i

,・.

・-仙

-

3

lL Jobi Eヨ Jobj

Io- Case 1

Case2

Iln - I casem+7llm.1-Iml

lm+1 :

CaseNs

図 5.1:事例の作成 と着目機械の選択

INs-INsl1

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5.1ルール獲得の基礎的検討 63

事例を入れ換えた SL_1上の2仕事 J" Jtjの属性値か ら得 られる情報により特

徴づける.また,各入れ換え操作で得 られる事例に対 して,評価値の変化の値

Il-Il_1 を記憶 させてお く.Ns個の事例を生成 した後,全ての事例を Il-Il_1

の増加順にソートし,Il-Il_1>0の大 きいもの及び Jl-Il_1≦0の小 さいも

のから 各 Ni個を取 り出し,計 2Nt個 の事例 を訓練例集合 とする.

フローショップ問題では,2仕事の入れ換えを行なった時 どの機械に着目す

るかによって特徴は異なり,仕事対の入れ換え操作の対象 となる機械 (以下,着

目機械)を考える必要がある.事例の特徴付けの際, m 機械のうち特定機械上

の仕事属性を選択 し,図 5.1(a)に示すように事例作成の各段階で特定機械を

Mk・から Mk+1(k≡(l+ll-10dm))にシフトさせてい くこととする.例えば,

m -3の場合では,サンプル .スケジュール Soから逐次的に仕事対 を入れ換

えてスケジュールを発生する際,

スケジュール

着目機械

事例

・1-言

.

4TJj・

2.・;

53・

5-・J

c

,lT

・廿.I;

l.♪T

I.・;

0(♪

のように着目機械を変化 させる.

上記の生成手続 きでは,サンプル・スケジュールを任意に発生させるため,常

に同一の訓練例集合が生成 されるわけではなく,得 られるルール ・セットも試

行 ごとに異なると考えられる.そこで,サンプル ・スケジュールを Nr個任意

に発生させ,各サンプル ・スケジュールに対 して上記の手続 きを行 うことによ

り計 Nr個のルール ・セットを生成することとする.さらに,これら Nr個の

ルール ・セットを 1つに統合 し,新たにルール ・セット71を作成する.各々の

ルール ・セットを統合することにより,頻出の度合いが高いルール,あるいは

特定の事例 を分類するために獲得 されたルールなどの判断が行いやす くなるこ

とが期待 される.

事例の作成例

スケジュール上の仕事対の入れ換えから事例を作成するまでのプロセスの一

例を示す.表 5.2で与えられる例題 5.2のスケジュール S。 (処理順序 JIJ2J3JJ)

上の2仕事 J2,J3 を入れ換えてスケジュール Sl(処理順序 JIJ3J2J4) が得 ら

れたとする.ただし,評価関数は総所要時間 Cmar とする.各機械 M l,M2,M3に着目すると,図 5.2に示すような手続 きから事例が得 られる.このとき,ぶ。

か ら slの生成では着 日機械は Mlであ り,Sl生成過程における事例は以下の

ものとする.

(<0,≧0,<0,<0,≧0,No,No,Yes,Yes,Yes,Yes,ba(I)

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64 第 5章 フローショップ問題におけるルールの獲得と適用

表 5.2:例題 5.2(3×4フローショップ問題)

タスク (処理時間)

JIJ2

J3J4

\J

))

0

)

66

1

6

・_・,1

一...._1-t

3

3

3

3

1

2

3

4

0

0

00-メ

)

))

0

67

5

1

/し((

(

2

2

2

2

1

2

3

4

00

0

0ーヽ

)

)

0)

8

5

1

6

・_・,1(

-/

l

1l1

1

23

4

0

0

0

0

ScheduleSo

EEヨE][コ コ

lnterchangeカ&J3

ScheduleSl

charcterisctics(x言 xbf;xjJ:xbF,x漂xbF,x)F,xkF;x琉xi吉,x17) category

CharacteriscticsFocuslngOnMl

(<O,_'O,<O,<O,Ilo,No,No,Yes,Yes,Yes,Yes) bad

CharacteriscticsFocustngonM2

L,0,<O,_'O,_'O,<O,No,No,Yes,No,No,No) bad

CharacteriscticsFocusIngOnM2

(_,0,'O,'O,'O,_,0,No,No,No,Yes,Yes,No) bad

図 .5.2:事例の作成例

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5.1ルール獲得の基礎的検討 65

5.1.2 ルールの獲得実験

ルールの獲得は,3.3節で述べた仕事対の入れ換えによるルール獲得方法 [11,

39]にしたがって行 う. 1つの 3×10フローショップ問題で仕事の処理時間を

[1,99]の一様乱数で与え,以下に示す条件下で訓練例集合を作成する.Nr,Ns,

Nlの設定値の妥当性については次節で検討することとする.

●サンプル ・スケジュール数 Nr:5,10

●発生事例数 Ns:20000

●適用事例数 2Ⅳ `: 1000

5種類のサンプル ・スケジュール (N,-5)からルール獲得の手続 きにより得

られた各々のルール ・セットを統合して得られるルール ・セットを785 とする.

同様に Nr-10で最終的に得られるルール ・セットを 781。とする.上記の条

件で作成 した訓練例集合から,69個,116個のルールを有するルール ・セット

715,711。が得 られた.goodルールおよびbadルールの個数は, 785の場合で

各々35個,34個,781。の場合では 59個,57個であった.獲得 したルールの一

例を以下に示す.

if XiF<o ∧ x;F≧o ∧ xif-No then good

このルールは,「機械 Mk上で 3つの条件,p‡,k- P],k≦0かつ p… ,k- P~,七>O

かつ J,の処理直後に機械 Mk の遊休時PBu T,+1,kが存在することを満たす 2

仕事 Ji,J,(Jl<J,) を入れ換えるとスケジュールは改善される」ことを意味する.

5.1.3 事例数の検討

発生事例数 (仕事の入れ換え回数)Ns, 適用事例数 Ntの適切な個数を検討

するために,Ns,Nfの変化に伴 うルール ・セットの分類精度を観察する.ルー

ル ・セットの分類精度は,ある問題に対 して得られたルール ・セットが同じタ

イプの問題のテスト事例を誤って分類する割合 (誤分類率)とする.テスト事

例は,ルール獲得に利用した事例とは別に新たに10000個作成する.

まず,機械台数 3-5,仕事数 ・50,100の計 6規模の問題を各々10種類作成

(仕事の処理時間は[1,99]の一様乱数に従う)する.これらの問題に対 してNs,

Nlを変化させ,各 Ns,Ntについてルール獲得を行い,生成されたルール ・セッ

トの誤分類率をテスト事例を用いて算出する.なお,誤分類率は,式 (5.1)で定義される.

(誤分類率)=(誤って分類された事例の数)

(適用した事例数)×100 (5.1)

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66 第 5章 フローショップ問題におけるルールの獲得と適用

図 5.3は,Nt-1000とし,発生事例数 Ns を50000個まで変化 させた場合

の,各 Nsについて得られたルール・セットの平均誤分類率を表している.また,

図 5.4は,Ns-10000とし,適用事例数 Ntを20000個まで変化させた場合の,

各 Nlについて得 られたルール ・セットの平均誤分類率を表している.図 5.3で

は Ns>10000では誤分類率がほぼ一定である.すなわち,Ns>10000であれ

ば,スケジュールを全数発生させなくても,同精度を有するルール ・セットが

得 られることが考えられる.また,図 5,4では,800< Ni< 7000程度であれば

誤分類率に変化はなく,それ以外の範囲では,誤分類率が高 くなっている.Ntが小 さい場合は,事例を分類するには不十分をルールが生成されることが考え

られる.また,Niが大きくなるにつれて,評価値の変化が微小である事例が訓

練例集合内に増える.このとき誤分類率が増加することから,有意な特徴をあ

まり有きない事例の増加もまた有効なルールの獲得の障害となるといえる.

5.1.4 事例特徴 とルール条件部の考察

ここでは,帰納的学習法の分類木生成段階の観点から,獲得 したルールの条

件部となる事例特徴を考察する. 1つのルールは分類木のルートから終端ノー

ドに至るパスの 1つであり,ルール条件部の1つの条件は, 1つの事例特徴と

その値の組に相当する.分類木は事例の特徴のエントロピーを利用 して生成す

るために,事例の特徴は分類木のルートに近いものほど分類操作に重要なもの

である.また,木構造という性質上,獲得 したルール ・セット中の条件の多い

ルールは,条件の少ないルールにいくつかの事例の特徴とその値の対を付加 し

た形をとる.したがって,事例特徴はルール条件部により多 く含まれるほど重

要なものであり,ルールはその条件部が少ないほど有効なものであると判断さ

れる.

図 5・5は,各特徴 XiF~xiFの 715,781。中のルール条件部に含まれている

総数をヒストグラムで図示したものである.なお,前節の実験結果から,ルー

ル ・セット715,711。を合わせたルールの総数は 185(-69+116)個である.特

に,特徴 xiF,xigは,それぞれルール全体の 76.8%,91.9%で利用されてお

り,設定 した事例特徴の中では重要なものである.事例特徴の内容で考えると,

入れ換え仕事対 Jlおよび Jjの処理時間差と,J号の処理直前の機械の遊休時間

の有無がスケジュール評価値の変化に影響があるといえる.

次に,ルール条件部への各特徴の出現数の変化を観察する.図 5.6は,横軸

にルール ・セット715 中の goodルール (35個)を条件数の小さい順に並べ,

縦軸に各特徴の出現回数の累積数を図示したものである.図5.6の上側は 特徴

XiF~x去F,下側は特徴 XiF~xifの累積数である.この図の場合,傾きが

1の直線であれば,その特徴は 715内の全てのルールの条件部に存在すること

を示す.図 5.5と同様に特徴 xiFとxi百は事例の分類操作上,重要な特徴で

あることがわかる.その他の特徴は,ルール ・セット中に 50%以下ではある

がルールの条件部に存在 している.利用 した特徴を,A(XiF),B(X;F~x.;F),

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5.1ルール獲得の基礎的模討 67

0

5

4

3

(%)

LoL

L山e

6匹

a

V

(%

)」2」山8

6eJo^V 35

3machineS +

' 4machines -+ .

7 5machineS 廿 .tlIb

:七㌔■EB一一 ㌧ __一一-I--一一一一一B… ___

、、サ l-・ー+●●◆

10000 30000 50000

NumberofGeneratedCases

(a)50JObs

3machines .~

4machines -+

5machines 勺・・

.pbd-8EP 一一一一一一ト ー一一一〇一一一一11- -一一1--

I暮■■

■◆●

10000 30000 50000

NumberofGeneratedCases

O))1∝りobs

図 5.3:発生事例数 Ns の変化に伴う誤分類率

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68 第 5章 フローショップ問題におけるルールの獲得と適用

(%

)L

oJL山

06

。JeV 35

40

(%

)

JoJJ山

06eJG-V

10000

NumberofAppLIedCases

(a)50jobs

10000

NumberofAppLLedCases

(b)100JObs

図 5.4:適用事例数 Niの変化に伴 う誤分類率

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5.1ルール獲得の基礎的検討 69

0

0

0

0

0

0

0

0

0

8

∠U

4

つ一

O

QU

∠U

4

つJ

1

1

1

1

1

s

OlntjU!

POPnPu一

ゝD

uanboJj

XIFx2Fx3Fx'言x5Fx6Fxダx8Fx9FxfoXFICaseCharacteristics

図 5.5:各特徴のルール条件部への出現数

C(XiF,x;F),D(XiF~xif)と4つのグループに分類する.Aは仕事対の処

理時間差,Bは仕事対の処理前後の仕事 との処理時間差,CおよびDは仕事対

の処理前後の仕事の有無と機械の遊休時間の有無を表す.上述の実験結果から

比較的 A,Dに属する特徴が事例の分類に有効である.これらの特徴 と同様な

点に着目したスケジューリング ・ルールとして,Johnsonの作業規則が挙げ ら

れる.このルールは処理時間の差と機械の遊休時間に着目し,1機械上でのフォ

ワード・スケジューリングと2機械上でのバックワード・スケジューリングによ

り遊休時間の最小化を行う.このことから,A,Dに属する特徴はスケジューリ

ング操作の着眼点として妥当であると考えられる.従って,本研究で提案する

ルール獲得の手続きにより,総所要時間最小化に関係の深い特徴の抽出とルー

ルの獲得が可能となっているということができる.

5.1.5 ルールの性能評価

本研究でのカテゴリの定義から,goodルールは正事例,すなわちスケジュー

ル評価値の改善を示す事例を満たすルールであることが期待 される.しか し,

獲得 した goodルールを実際にスケジューリング ・ルールとして適用した場合

の有効性までは保証されない.ここでは,獲得 したルールのスケジュール評価

値の改善能力を観察することにより,スケジューリング ・ルールとしての有用

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70 第 5章 フローショップ問題におけるルールの獲得と適用

SO!lS!Je,Pelt?LJO

aSeO

J0Leq∈n

NO>!le

lnuJnO

SO!lS!JaPeJt2uUeSt20

40Jaq∈nNa^!lt2]n∈nC)

5

0

5

3

3

2

0

5

0

2

1

1

5

0

5

0

2

1

1

5

5 10 15 20 25 30 35CumulativeNumberofObtainedRules

5 10 15 20 25 30 35CumuJativeNumberofObtainedRules

図 5.6:各特徴の出現数の累積

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5.2獲得ルールの記述 71

性を考察する.ルール獲得に利用 した 3×10フローショップ問題で 50種類の

任意順序のスケジュールを発生させ,全ての仕事対の組合せ (1。C2×3×50)の

総数をNE とする.また,ルール ・セット中の各ルールに対 して,NE個の仕

事対の中からそれぞれのルールを満足する仕事対を入れ換え(総数 EalL),入れ

換え操作により評価値が改善するような仕事対の総数を E+とする.このとき,

Eallに対する E+の割合をルールの評価値改善率と定義する.表 5_3は,ルー

ル ・セット715および711。中のルールの評価値改善率の最大,最小,平均を表

している.図5.7は,715(Nr-5)の各ルールを評価値改善率の大きい順に並べ

たものである.781。の場合でも図5.7と同様な評価値改善率の傾向を得ている.

表 5.3からgoodルールは badルールに比べて評価値を改善する能力が高い

といえる.badルールの中には 70%程度の評価値改善率であるルールが存在

するが,~図 5.7からこマ)ようなルールは 1個のみ獲得 されただけであ~り,bad

ルールは 30%~50% ぐらいの評価値改善率であるといえる.一方,goodルー

ルの中で評価値改善率が 50%程度のルールは高々3個であり,goodルールは

60%~80% の評価値改善率であるといえる.

これらの結果から,goodルール群は badルール群に比べて,評価値を改善

するような仕事対候補が存在する割合が高い.すなわち,獲得 したルール・セッ

トはカテゴリ別に観察 した場合に,評価値の変化に対 して明確な傾向を持つと

考えられる.また,goodのルール群の中には評価値の改善に有効か レールが

多数存在することがいえる.

表 5.3:各ルール ・セットの評価値改善率

最大 最小 平均

715 (good) 89.6% 49.4% 70.6%

715 (bad) 69.4% 23% 41.0%

7810 (good) 89.1% 36.1% 65.4%

5.2 獲得ルールの記述

前節では総所要時間最小化問題を取 り上げて,フローショップ問題を対象 と

した場合の事例の構成方法を検討 し,獲得 したルールの形式について考察した.

本節以降では,それらの検討事項に基づいて新たにスケジューリング ・ルー

ルを獲得 し,獲得ルールを近傍探索スケジューリングに適用するという観点か

ら,フローショップ問題におけるルールの有用性について検討する.5.3節およ

び5.4節では評価関数

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72 第 5章 フローショップ問題におけるルールの獲得と適用

80

0

0

′人U

4

(%)lUa∈a^0Ld∈〓oo!tt!∝

〇〇〇〇〇○○

〇〇㌦ 〇〇〇〇% 〇〇〇〇○○

10 20 30

35goodrulesSortedbyDecreaseinRatioE+

0

0

0

8

′人U

4

(%

)tu

aEa^

oJd∈こ

O

O!tt2∝

〇〇〇〇〇○○〇〇〇〇

〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇へ 〇〇〇〇

10 20 30

33badrulesSortedbyDecreaseinRatioE+

図 5.7:785の各ルールの評価値改善率

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5.2獲得ルールの記述 73

(H)給所要時間 Cmar

(Ⅰ)給納期遅れ ∑γ

を取 り上げる.また,5.5節では複雑な問題-の拡張として多目的フローショッ

プ問題への適用を試みる.ここでは,(H),(Ⅰ)に加えて,

(J)総滞留時間∑Ci

を対象 とする.

事例の特徴は次のとおりとする.まず,前章の実験により効果の少ないと判

断した特徴 x2F~x5Fを省 く.次に,前節ではCmaxに着目していたが ∑Tiに

も注目するため,表 5.4に示す 12個の特徴 XIF~xIF2を新たに利用すること

とする,ただし,納期に関する特徴 X9F~xIF2は評価関数が ∑Ttの場合にの

み利用される [叫 .なお,表 5.4中の ()内の特徴は前章で利用 した特徴である.

表 5.4‥事例特徴 とその値 (XIF~x.FT2)L;

1・Jl/1・1・,/・71,1・畑宜宜

(-xiF) :pl,k- P,,k (<0,≧0)

:pt-pJ (<0,≧0)

(-x占F)‥ot,k は最初に処理 (i-1)される (Yes,No)(-xiF) ‥0,,k は最後に処理 (j-n)される (Ye s,No)(-xiF):oi_1,k と oi,k は隣接 している (Yes,No)(-x;F)‥0,_1,k と 0,,k は隣接 している (Yes,No)(-xi百) ‥oi,k と 02+1,k は隣接 している (Ye・5,No)(-xif)‥0,,k と O,+1,k は隣接 している (Yes,No)

di- dJ (<

(di-Pt,k)-(di-PJ,k)

(di- Cl)- (d,- C3)

(di- Pi)-(d,-p,)

<

<<

(

/し/し

一ヽノ)ー

nU0

nUnU

>一>一>一>一

表 5.4の事例の特徴をもとに,5.1.1項の手続 きを利用 し,以下の条件下で訓

練例を作成する.すなわち, 1つの3×10フローショップ問題で任意に作成 し

た 10種類のサンプル ・スケジュールの各々から,(Ns.Ni)-(20000,・500)にし

たがって 1000種類の事例を有する訓練例集合を 10個作成する.

●問題規模 :3×10

・処理時間 ‥[1,99]の一様乱数

・納期 ‥lcI- C,Ci+cHc-C1*mi11tCl))の一様乱数

●サンプル ・スケジュール数 Nr:10

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74 第 5章 フローショップ問題におけるルールの獲得と適用

●発生事例数 Ns :20000

4適用事例数 2Nt : 1000

納期は,任意順序のスケジュールを1つ発生させたときに得 られる各仕事の処

理完了時刻 Ctを算出後設定するものとする.C1-0の場合,給納期遅れ最小

化問題での最適解の 1つは Oに等 しくなる.

上記の条件にしたがって 10個の訓練例集合を作成 し10個のルール ・セット

を獲得 した.これらのルール・セットを統合することにより新たに作成 したルー

ル ・セットは付録 A に示す通 りである.ここでは,3.3.5で述べた条件にした

がって以下のルールを利用することを考える.

(H)F//Cm ar

I

I

I

(;

Lj

IT半里

∧∧

000

0

>><一<一

FIFIFIFl

的帆的5;

))

Jヽ

)

12

3

4

FI

I

I

HH

H

H

-1、111'1

--

Yes X7F-yes x8F-yes

No X6F-yes

No∧X8F-yes

No X7F-No

(I)F//∑Tt

(Ill) X9F>o xIFl>0

(I12) X9F>o xIF2>0

(I13) X9F>o xIF.>o

(I-4) XIF>o x9F>o

C∑i"‖川ⅦiZ'∫ーITJ′t

ギガガ

ガガギギガギガギガギ

ギギ

ーヽ

)

Jヽ)

)

)

)

-10

.11

.12

.-3

.14

.15

-1

3日\ロ

ーJ、口

J

J

J

J

J

(

(

/しー

(

(

(

≦o∧x2F>o∧x7F-No

>o∧x6F-yes∧x7F-yes∧x8F-yes>o x7F-yes x8F-yes

>o∧x4F≦o

>o x3F>o x5F-No X8F-yes>o x2F>o x7F-No

VI≦>>Vl>:

VIF8>>

o∧x2F>o∧x6F-yes∧x7F-No

o∧・i'2F>o∧x3F-yes∧xSF-No

o^X3F-yes x5F-No

o x2F>o x6F-yes

o∧X3F-ye5∧X7F-No∧X8F-yes

O^X4F-No XSF-yes

No X6F-yes x7F-No X8F-yeso∧x2F>o^x6F-No∧X7F-yes

∧∧

二〇

0x2F>o^xSF-No

x2F>o x6F-yes x7F-yes

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5.3ルールに基づく局所探索 75

5.3 ルールに基づく局所探索

5.3.1 ルールの選択方法と探索手続き

獲得 したルールは,事例の構造上,そのルールを満足する仕事対を入れ換え

ることによりスケジュールの改善が行えるという性質を持つ.すなわち,獲得

ルールを利用 したスケジューリング法は,ルールにより生 じるスケジュールの集

合を近傍 とする局所探索的な手続 きとなる.獲得 したルールによるスケジュー

リングを行 う際,ルール・セットからどのルールを選択するかが問題 となる.こ

こでは各ルールに対 して選択確率を与えてルール選択を行なうことを考える.

さらに,選択 したルールを適用 した結果評価値が改善されると,そのルールの

選択確率を高くすることにより,問題に応 じた効果的なルールの選択に柔軟性

を持たせることを考える.ルール ・セット78内のルール r-,(u-1,・・・,L7al)の

選択確率 Puを式 (5.2)で定義する.

Pu-N(ru)/N(78) (u-1,・・・,l7il) (5・2)

ただし,N(ru)は各ルールの適用回数,N(71)は 71内のルールの総適用回数

とし,初期値を N(71)-q,N(r,,k)-1とする・このとき,Ml,・・・,Mmの順

に,入れ換え候補の仕事村がなくなるまで,以下のアルゴリズムを繰 り返 し適

用する.

局所探索における近傍は,スケジュール上の仕事対の全ての組み合わせによっ

て得 られるスケジュール集合 と定義する.すなわち,㍑個の仕事が与えられた

場合, nc2個のスケジュールが近傍に相当する.局所探索の手続 きは,近傍内

で良好なスケジュールが見つか り次第,それを暫定スケジュールとするファー

スト改善を行 う.以下では,局所探索法および近傍探索に獲得ルールを利用 し

た近傍探索をそれぞれ,LS,LS+71を呼ぶこととする.

前節 5.2で獲得 したルールを局所探索の近傍内探索プロセスに利用すること

を考える.ルールの選択方法は,式 (5.2)で定義 した各ルールの選択確率に基

づいて行われる.ルールによる局所探索は,以下の手続 きにしたがって行われ,

1回のスケジュールの更新を1サイクルとする.

LS+71の手続 き

Step0.71*- 78;

Stepl.Puによりルール ru∈78*を選択する.

StepL'.ru によりf(15)>f′(S)なる仕事対を取 り出す.なければ step4へ

Step3.取 り出 した仕事対を入れ換える.

N(ru)-N(ru)+1;N(78*)-N(78*)+1;

Puを更新 して,Step5へ

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76 第 5章 フローショップ問題におけるルールの獲得と適用

Step4.78*- 78*-(ru);7㌢ ≠¢ならば steplへ

Step5.m 回連続 して 78*-¢ならば終了する.

k- k+1(k- 1if k-m)として StepOへ

5.3.2 数値実験

(H)CmaTおよび (I)∑Ttを対象とし,Cmaxでは前節で獲得 したルール(H-i)

~(H-4)を,∑Ttではルール(I-1)~(I-4)を利用することとする.適用問題は,

ルール獲得に用いた3×10フローショップ問題より大 きい規模の 10×100フ

ローショップ問題を考え,以下の条件で任意に10個作成 した.

●問題規模 :10×100

・処理時間 :[1,99]の一様乱数

・納期 ‥[C7- C,C2+C](C-C1*min(Ct))の一様乱数

これらの問題に対 し,LSおよび LS+78を各 10回適用した.なお,数値実験

は sunSPARCStation20を利用 した.表 5.5は,F//Cmax問題に LSおよび

LS+71を適用 した結果を表す.また,表 5.6は,F//∑Ti問題への適用結果

を表す.表中の 「最小解」は 10試行の各々で得 られた解のうち最小値を表 し,

「平均実行時間」および 「平均サイクル数」は,解導出までに要した実行時間,

給サイクル数の試行 10回の平均を表している.

F//Cmax 問題に対 しては,LSの最小解に対する LS+71の最小解の相対

偏差が -0.2%~1.0% と,どちらの場合でも解の精度はほとんど変わらない.

LS+78の実行時間は,LSの 3倍はかかっているが,探索ステップ数は少な

いことがわかる.すなわち,仕事対を入れ換えさらに評価値 (給所要時間)を

計算する時間に比べて,ルールを満足する仕事対の探索に要する時間が長 くか

かるといえる.

F//∑Ti問題に対 しては,LS+78を利用することにより,良好な解が得 ら

れている.また,実行時間,探索ステップ数に関しては,LSのそれよりも半

分の時間で行えることがわかる.この結果より,ルールを満足する仕事対の探

索に要する時間は,仕事対を入れ換えて評価値 (総納期遅れ)を計算する時間

に比べ,非常に小 さいことが考えられる.

評価関数によって実行時間に差が生じる原因としては,enLaEと∑Tlの計算オー

ダの差が影響すると考えられる.仕事数をnとし各仕事の完了時刻が計算済み

であると仮定 したとき,∑ γ の計算オーダは 0回 であるのに対 し,フロー

ショップ問題の場合の Cmax の計算オーダは 0(1)となる.これは, CIm"xが最

後に処理される仕事の完了時刻に等 しいためである.

実験から,給所要時間最小化問題に対 しては,ルールを適用 した結果の評価

値計算時間を短縮することを検討する必要があるものの,ルールを利用した近

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5.3ルールに基づ く局所探索 77

表 5.5:F//Cmax問題への適用結果

最小解 平均実行時間 平均サイクル数

LS LS+78 LS LS+71 LS LS+78

5857 5838 10.9 35.1 71.3 63.3

5878 5895 ll.7 33.3 67.0 51.8

5912 5930 12.1 30.1 68.8 54.2

6010 5998 8.0 39.8 63.7 65.4

5924 5924 ll.5 41.3 62.6 60.4

5960 5975 10.6 34.6 65.0 68.3

5713 5693 14.1 39.0 86.7 60.3

5752 5746 16.5 50.1 112.8 100.0

5699 5757 18.3 52.8 125.9 95.8

表 5.6:F//∑Tl問題への適用結果

最小解 平均実行時間 平均サイクル数

LS LS+78 エ∫ LS+78 LS LS+78

504 224 112.7 25.3 561.1 241.2

324 132 140.4 26.5 618.4 260.3

217 125 113.8 24.6 583.4 247.8

900 464 126.4 26.2 570.6 259.1

349 297 123.9 27.0 593.6 274.4

473 393 140.4 27.3 595.8 265.4

194 51 131.1 26.4 579.4 262.8

1148 1039 158.5 27.7 621.4 273.7

598 265 126.5 25.0 564.8 245.3

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78 第 5章 フローショップ問題におけるルールの獲得と適用

傍内の効率的な探索と良好な解の生成は可能であるといえる.また,給納期遅

れ最小化問題に対 しては,LS+78は LSに比べ実行時間が短かく,さらに良

好な解が導出できることがわかった.

次に問題規模の観点から考察する.仮に 10×100フローショップ問題で事例

の作成を考えた場合,適用事例数と発生事例数は 3×10フローショップ問題の

場合に比べ膨大な数を設定することが必要となり,ルール獲得に要する時間そ

のものが問題 となる.計算量を考えると,比較的規模の小さな問題で獲得 した

ルールを規模の異なる問題へ適用できることが重要であると考えられる.実験

では 3×10問題で獲得 したルールを 10×100問題に適用 した結莱,その適用

問題で良好な解が生成可能であることを示した.一方,問題規模が影響する部

分として,事例の構成方法とルールの形式の2つが考えられる.提案方法では,

入れ換える仕事対の仕事属性と局所的な位置情報のみで事例の特徴を定義して

いるため,事例の構成方法は問題規模に依存 しない,ルールの形式はこれらの

事例特徴の集合で構成されるため,ルールの形式も同様に問題規模に依存 しな

い.すなわち,大規模問題を対象とした場合でも,提案方法を小規模問題に適

用 し獲得 したルールを有効に利用できるといえる.

5.4 獲得ルールのタブー探索法への適用

5.4.1 ルールを利用 したタブー探索法

ここでは,タブー探索法を取 り上げ,その近傍探索に5.2節 に示したルール

を組み込むことの効果を検証する [4叶 タブー探索法は,スケジューリング問

題において適用のしやすさ,良好な解の導出で有効性が知られているメタ戦略

の1つである[1]・なお,本節では評価関数として (H)CmaEおよび (I)∑Tiを

対象 とし,Cmax では5・2節 に示したルール(HI1)~(H14)を,∑Ttではルール

(Ⅰ-1)~什4)を利用することとする.

利用するルール・セット内のq個のルールを任意の順に並べたものを(r.,...,rq)とする.このとき,2.5.2項で述べたタブー探索法の手続きstep,9.を次に示す

手続 きに置き換える.以下では,タブー探索法および近傍探索に獲得ルールを

利用 したタブー探索をそれぞれ,TS,TS+78と呼ぶこととする.

Step3-1.rlを選択する.

Slep3-2・Nc(a)=-ts′′∈N(S)-TIs〟は .5上のルール rlを満足する仕事対

を入れ換えることにより得 られるスケジュール)

Step・3-3.Nc(S)内の最良スケジュール3'∈Nc(.5)を見つける.

Step3-4・もしf(3')>f(S)あるいはNc(S)-少ならば,r1- 7・2,… ,rq-1-

rq)rqL rl

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5.4獲得ルールのタブー探索法への適用 79

近傍は選択 したルールを満足する仕事対により得 られるスケジュール群となる.

step314,は,可能な限り全てのルールを利用するために評価値の改善効果が得

られなかった場合に,ルールを利用する順序を変更するものである.この手続

きでは,近傍探索 1サイクルにつき1つのルールを利用することとなる.

ルールを利用する際,近傍内のスケジュールの評価値の計算時間に加えて,仕

事対の総数 N(- 71C2)個の中からルールを満足する仕事対を探索する時間(以

下,マッチング時間)が必要となる,近傍探索の 1サイクルに要する時間の平均

を fcとし,近傍内の 1つのスケジュールを生成 し評価値計算を行 う時間の平

均,1組の仕事対に対するルー')Vのマッチング時間の平均をそれぞれ fTc,t,m.と

すると,

fc(TS+78)- tTcINc+tTm.N+wl

fc(TS)- t-。・Ar+W2

甘3)

と表せる.ただし,Nc(≦N)は選択 したルールを満足する仕事対の総数, LL,1.W2

はルールの順序変更などtc,tm の他に要する時間であり,右辺第 1項および第

2項に比べて無視できる時間である.また,fcは実際に仕事対を入れ換える時

間を含み,tmはマッチングの際の仕事対を事例特徴表現に変換する時間を含む

ものとする.

このとき,式 (5.4)が成立すれば,解の探索時間に対するマッチング時間の影

響が少なく,ルールにより近傍探索が効率的に行われると考えられる.

fc(TS+71)<fc(TS) (5.4)

すなわち,ルールを利用することによってマッチング時間を必要とするが,評

価値の計算時間を軽減することによって近傍の探索時間を短縮することが期待

される.

以下の数値実験では,フローショップ問題にTSおよびrs+78を適用 し,そ

れぞれの実行時間 (CPU時間),探索解の精度,探索サイクル数を観察する.

また,探索時間に対するルールのマッチング時間の影響について考察する.

5.4.2 数値実験

タブー探索法に関して,近傍はスケジュール上の2仕事入れ換えにより得 ら

れるnC2個のスケジュール集合 とし,タブー ・リストは最近入れ換えた仕事対

10個により構成する.また,終了条件は近傍探索サイクル数が 1000回に到達

するか,評価値が連続 して 3回悪 くなった場合とする.機械台数 m =.3,仕事

数 71-30,50,70,100の4種類の問題に対 して,10個の例題を作成 し (処理時

間,納期の与え方は前節同様),各々の例題について TSおよび TS+71を 5

回適用 した.なお数値実験は,SunSPARCStation・20を利用 した,

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80 第 5章 フローショップ問題におけるルールの獲得と適用

5.4.3 実行時間

表 5.7にTS+78の 1サイクルあたりの評価値計算回数の平均とTSのそれ

に対する比を示す.また,図 5.8に,最良解生成までの各仕事数での平均 CPU

時間を示す.上側および下側の図は,評価関数がそれぞれ給所要時間 Cma。,紘

納期遅れ∑Tiの場合である.F//Cmar問題の場合 (図 518(a)),仕事数が少な

いときは,TSの方が解導出は速い.しかし,仕事数が増加するにつれてTSの

CPU時間が指数関数的に増加しているのに比べ,TS+78の場合ではほぼ線形

増加 していることがわかる.したがって,仕事数が 100個以上のときは,ルー

ルを利用 した近傍探索を行うことによって,CPU時間により効果があることが

期待される.F//∑Tl問題の場合 (図 5・8(b))は,その傾向がさらに顕著に表

れている.特に仕事数が 100のときでは,ルールを利用することによってCPU

時間がおよそ 1/13に短縮されていることがわかる.これは,TSが近傍内の全

てのスケジュールの評価値を計算が必要であるのに対 して,TS+78では表 5.7

に示すとおり,その 10%以下の個数を計算 していることが理由の 1つであると

考えられる.さらに,ルールを適用することによって探索サイクル数を少なく

することが可能であることもわかった.

表 5.7:TS+78の 1サイクルあたりの評価値計算回数と探索ステップ数

(H)F//CmaT

仕事数 #1 #2 #3 #4

30 19.8 4.6% 97.6 129.3

50 23.3 1.9% 42.5 35.64

70 33.1 1.4% 29.8 107.4

100 48.2 0.9% 19.6 76.6

(b)F//∑Tl

仕事数 #1 #2 #3 #4

30 36.8 8.5% 50.9 ll.7

50 92.3 7.5% 128.2 257.9

70 173.6 7.2% 235.3 335.8

#1: 1サイクルあたりの評価値計算回数#2:TSの評′r酎直計算回数(nc2)との比#3: TS+72の平均探索サイクル数#4: TSの平均探索サイクル数

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5.4獲得ルールのタブー探索法への適用 81

(msec)

o∈!)⊃d386。JaV

0

0

2

0

1

1

0

0

8

6

30 50 70 100NumberofJobs

(a)Makespan

(msec)

0001

0

0

0

0

0

0

8

6

4

9∈!)⊃dOa6eJaV

30 50 70 100

NumberofJobs

(b)Totaltardiness

図 ,E).8:平均 CPU時間

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82 第 5章 フローショップ問題におけるルールの獲得と適用

5.4.4 探索解の精度

表 5.8は,各問題で TSおよび TS+78を それぞれ 5回適用したときに得

られた解のなかの最小値 (以下,最小解)を表している.C。mα。の場合,各問

題で TSを5回適用すると常に同じ解が得られた.また,予備実験で,m-2,

n-30-100の問題で TSは最適解を常に生成 していたことから,表中 cm〔LX

の解のほとんどは最適解もしくは準最適解であると判断できる.TS+78によ

る最小解は,Cm a3:\を評価関数としたとき,TSの解との相対偏差が 6%以下で

ある.また,∑γ が評価関数のときでは,40個の問題のうち37個の問題で最

適解を生成 しており,獲得ルールによる解の探索は有効であるといえる.一方,

TSは 評価関数を∑TtとしたときTS+花 に比べ解を十分に探索 しきれてお

らず,TSにより得 られた最適解の個数は 1個だけであった.

図 5.9は3×30フローショップ問題 (評価関数 ∑TL)での,TS+7Zによる解

の更新およびルール利用の変化の一例を表している.なお,30サイクル以前は

値が大きいために省略しているが,ルール(Ⅰ-1)により解の値は単調減少してい

ることがわかっている.80サイクルあたりから,解の改悪が受理され同時に適

用ルールの変更が頻繁に起こり,142サイクルで最適解を導出している.その

後 3回連続して評価値が悪 くなったことによって,アルゴリズムが終了してい

る.この図では,探索の前半では急降下的に解を更新していき,後半では 「ス

ケジュールの改悪を受理」,「適用ルールの変更」,「スケジュールの改善方向-

の探索」という操作を繰 り返していることがわかる.しかし,60- 80サイク

ル間や 90- 98サイクル間では,ルールを変更することなく局所解に留まって

いる場合が見られる.今後ルールの適用順序についての検討が必要である.

5.4.5 探索時間とマッチング時間

5.4.3項では,獲得ルールによって探索対象の近傍の大きさが縮小されるため

に,解探索にかかる時間が減少することを確認した.しかし,ルールを利用す

る際,ルールのマッチング時間が新たに必要となってくる.ここでは,近傍探

索スケジューリングにおけるルールのマッチング時間の影響について考察する.

表 5.9は1回の仕事対の入れ換えにおけるマッチング時間の平均tmおよび 評

価値の計算時間の平均 左を表している.また,表 5.10は,近傍探索 1サイクル

におけるマッチング時間の総和 t-m・N の評価値計算時間の総和 i-C・Ncに対する

比 (i,n・N/fc・Nc)を表している.表 5.9から, 1組の仕事対に対するマッチン

グ時間 fm に比べて,i-Cの時間が 3.1-13.3倍と非常に大きいことがわかる.

すなわち,

lm <tc (515)

が成立する.さらに,表 5.10では,近傍探索 1サイクルで,評価値の計算時間

の総和 fc・Ncに比べ,マッチング時間の総和fm.N の方が 1.9-7.9倍ほど大き

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5.4獲得ルールのタブー探索法への適用 83

表 5.8:TSおよび TS+71により得られた最小解

(a)F//cm。1.

H =30 rL=50 77′=70 H.=100

TS TS+78 TS TS+78 TS TS+71 TS T,ヾ+71

1616 1.618 2702 2798 3800 3908 4947 5053

1625 1636 2586 2630 3344 3407 4972 5139

1664 1711 2592 2616 3333 34.40 4966 5113

1657 1663 2640 2677 3344 3540 ,5∠1.56 ,T)626

1656 1660 2619 2664 3355 3549 5129 5265

1657 1733 2628 2664 3680 3856 5087 5230

1691 1694 2680 2742 3689 3816 5191 5327

1820 1867 2671 2698 3716 3836 4984 5251

1717 1718 2680 2728 3707 3890 .E')420 54.50

(t〕)F//∑Ti

n=30 n=50 n=70 ・n=1OO

TS TS+′疋 TS TS+78 TS TS+78 TS TS+789 0 261 0 135 0 371 4

21 0 100 0 35 0 139 0

21 0 30 32 48 0 162 0

20 0 34 0 125 0 105 0

0 0 86 0 46 0 336 030 0 23 0 11 0 171 017 0 199 0 67 0 134 0

23 0 77 0 41 0 125 0

80 0 213 0 58 0 510 0

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84 第 5章 フローショップ問題におけるルールの獲得と適用

ChangeofSolution

1000

800

oE 600■」T6∽

400

200

0

Ru一es

b-4

b-3

b-2

b-1

0 20 40 60 80 100 120 140 160

NumberofSteps

Chang80fRules

0 20 40 60 80 100 120 140 160

NumberofSteps

図 5・9:TS+71による解の探索過程の例 (F//∑Tt)

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5.4獲得ルールのタブー探索法への適用 85

表 5.9:㍍ および 〔(×10~5sec)

Cmax ∑γ

仕事数 fm ㌔ i-m tc

30 1.93 8.20 2.58 8.ll

50 1.95 13.30 2.61 12.69

70 1.93 17,98 2,60 17.55

表 5.10:給マッチング時間の総評価値計算時間に対する比 (tm.N/tc・Nc)

CmaT ∑γ仕事数 平均 最大 平均 最大

30 6.8 10.7 4.4 15.3

50 7.8 9.5 3.1 21.0

70 7.9 9.1 2.2 2.7

100 7.7 8.6 1.9 2.8

いことがわかる.すなわち,

icINc<im・N

が成 り立つ.さらに,式 (5.5)を Ⅳ 倍すると,

tm.N<tc・N

となり,次式 (5.8)が得 られる.

ic・Nc<lm.N<icIN

(5・6)

(5・7)

(5.8)

また,表 5.9において,iAm/fcが最小 となっている問題は,∑Tlで仕事数 30

個の場合である.このとき,tm は fc の 31.8%程度である.したがって,次式

(5.9)が成立する.

lc・Nc+im・N<ic・1V (519)

上式 (5・9)の関係を式 (5・4)に代入すると,式 (5.4)の関係が実験結果から得 ら

れる.すなわち,ルールを適用することによって,ルールのマッチング時間を

新たに必要とするが,それ以上に時間を費やす評価値計算が軽減されることか

ら,近傍探索時間全体を短縮することが可能である.

次に,仕事数 nおよび機械台数 m の大きさに伴 うI-m,fcの変化を観察する.

tTmおよびt。の実行時間を示した表 5.9から,仕事数の増加に伴い fm は明らか

に増加するが,左はほぼ一定であることがわかる.機械台数の変化に伴 う結果

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86 第 5章 フローショップ問題におけるルールの獲得と適用

(Ⅹ10もS。。)3.5

0.3

2.5

0.2

1.5

0.1

0.5

0

(xl0-3msec)

20 40 60 80 100

NumberofMachines(30jobs)

(a)Makespan

20 40 60 80 100NumberofMachines(30jobs)

(b)TotalTardiness

図 5.10‥機械台数とiLmjc

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5.5多目的フローショップ問題への適用 87

を図 5.10に示す.機械台数が増加するとtm, frはともに線形的に増加するが,

明らかに両者の差は大きくなっていくことがわかる.すなわち,仕事数および

機械台数が増加 した場合でも,近傍探索時間全体ではマッチング時間がボトル

ネックとなる可能性は非常に低いことがいえる.

5.5 多目的フローショップ問題への適用

5.5.1 多目的フローショップ問題

本節では,より複雑な対象問題 として多目的フローショップ問題を取 り上げ,

多目的問題に対する獲得ルールの適用方法を提案 し,その適用可能性について

検討する.多目的スケジューリングでは評価関数間のトレードオフが生 じるた

め,非劣解集合を意思決定者に提示するような方策をとる場合が多い.非劣解

は,あるスケジュール Sの r個の評価関数 fl(Lq),… Jl,(S)を要素とする評価

値ベクトル f(3)-(fl(S),...,I,(S))Tに対 して,

f(3')<I(S)

となる評価値ベクトル f(sI)を有するスケジュール S′が実行可能領域に存在

しないような f(S)のことであり,Sは非劣スケジュー)I,と呼ばれる.フロー

ショップ型を対象 とした多目的スケジューリングに関する研究では,総所要時

間,給滞留時間,最大納期遅れを目的関数とした2目的ないしは3目的の2機

械フローショップ問題 [43,44]などがある.これらは,ランダム ・サンプリング

法をベースとして (近似)非劣解集合を求めたり[43],重み係数法をベースと

したヒューリスティックス [44]によって非劣解を求めている.また,遺伝アル

ゴリズムの解集合による探索という特性を利用 し,非劣解保存戦略を行なう方

法 [45]の研究が活発である.

ここでは評価関数として,平均滞留時間 (AverageFlowTime,∑CJ77),辛

均納期遅れ (AverageTardiness,∑TJn),総所要時間(Cmar)の3個を取 り上

げる・∑TJnと∑CJrlはそれぞれ給納期遅れ ∑T" および総滞留時間∑CJ r2

を仕事数 nで割って得 られる評価関数である.

5.5.2 獲得ルールを利用 したスケジューリング

本研究では,ルール ・セットから取 り出したルールを満足する仕事対の入れ

換え操作によるスケジュールの改善手続きにより,非劣解スケジュール集合を

近傍探索的に求めるようなスケジューリング法を検討する.また,評価関数ご

とに得 られたルール ・セットに対 して利用率を与えスケジュールを生成するこ

とを考える.別のスケジュールを求める際に利用率を変化させることによって,

解に多様性を持たせることを考える[42].

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88 第 5章 フローショップ問題におけるルールの獲得と適用

regiona fl(5')≧fl(S)

f2(S')≧f2(S)

regionb fl(5')≦fl(S)

f2(5')之f2(S)

regionc fl(5')≦fl(S)

f2(S')≦f2(S)

regiond fl(S')≧fl(S)

f2(S・15j2(S)

図 5.ll:解の探索 (2日的 fl,f2の場合)

r個の評価関数 fl,… ,frの各々に対 して得 られたルール ・セットをそれぞれ 78(fl),- ,71(fr)とする.各ルール ・セットに対 して,利用率 右 (i-1,・..,r;∑ 右 - 1)を定義 し,各ルール ・セット 78(ft)(i- 1,- ,r)を確率

右 で選択 し利用することとする.このとき,基本的には以下の手順にしたがっ

て解の更新を繰 り返 し行 う.

1・確率 右 でルール ・セット78(fl)を選択する.

2.選択 したルール ・セット内から1つのルール rをランダムに選択する.

3.現在のスケジュール β上の,ルール γを満足する仕事対を入れ換え,

ft(S')≦fl(S) (5.10)

なるスケジュール β′を見つける.

以下では,例 として2日的問題 (fl,f2)の場合を取 り上げる.例えば 71(fl)を選択 した場合,スケジュール 5・'は,図 .5.11での領域 b,Cに存在することと

なる (sl1,312).スケジュールS'が領域 aに存在する (5左)場合は, fl,f2の

値がともに改悪 となるため,この領域の解に更新 させることはない.常に領域

C の方向に解を更新させるのが理想的であるが,多 目的問題の性質上制約が厳

しく,更新手続 きがすぐに終了する可能性が高い.逆に領域 bへの移動を認め

ると,最終的に得 られる解が実行可能領域内に分散 してしまうことが予備実験

により明らかになった.

そこで,上述のステップ 2.の条件を満たす β′に対 して,受理確率

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5.5多目的フローショップ問題への適用 89

min(1,e~C(f2(sl)-f2(S))) if 78(fl)を選択

min(1,e~C(fl(5')~jl(S))) if 78(f2)を選択

(Cは正の定数)

を定義し,解の探索に柔軟性を持たせることを図る.これを図5.11で説明する

と,71(fl)を選択 した場合,領域 CのS/.は常に受理 (確率 1)され,領域 bの

・5'2は f2(3'2)-f2(S)が大きいほど受理されにくくなる意味を持つ.71(f2)を選

択 した場合も同様に,領域 dのSとはfl(Sも)-I.(S)の大きさによる確率に応 じ

て受理される.このように解の探索方向をある程度制御することにより,解の

多様性を目的としたルール・セットの利用率を反映させることが期待される.例

えば, ll-0.1(入2-0.9)のとき評価値 f2を重視 した解の生成が可能となる.

rl圏の評価関数の多目的問題の場合も同様に,上記のステップ 2.の条件を満

たす S′に対 して,次の受理確率を定義する.

min(1,e~C(ft'(S')-ft'(S))) if 78(ft)を選択

(i′-1,...,r,t′≠t,Cは正の定数)

5.5.3 2日的フローショップ問題への適用

5・2節で得られたルール(Hll)~(H-4),(I-1)~(I14),(∫-1)~(J-16)を利用する.

また,以下の2つの2日的フローショップ問題を取 り上げる.

・平均納期遅れと平均滞留時間 (∑笥/n,∑でJn)

・平均納期遅れと総所要時間 (∑TJn,Cmax)

3×10,3×20フローショップ問題をランダムに10個作成 した (仕事の処理

時間および納期の与え方は前節と同様である).初期スケジュールは50個とし,

解探索の終了条件はルール条件を満たす仕事対が存在 しないか,解の更新回数

が 1000回に達したときとする.

図5・12は,3×20フローショップ問題において71(fl)の利用率 右 -0.2,0.5,0.8

の場合の解の分布の一例を表している.図 5.12の 11-0.2の場合,∑TJTtに

対するルール ・セット78(f2)の利用率が o・8であり,l1-0.5,0.8のときに比

べて,∑TJnを重視した解が得 られていることがわかる.すなわち,ルール .

セットの利用率を変化させることによって,一方の評価関数を重視 した解の導

出可能性が考えられる.

次に,3×10,3×20フローショップ問題で,ilを 0.0,0.1,...,1.0と変化

させることにより得 られた解の一例を図 5.13に表す.3×10の場合では,利用

率を変化させることにより,一様にひろがる非劣解集合が得 られた.また,得

られた 550個の解のうち 70% にあたる 385個が非劣解であり,さらに非劣解

のなかで解 (a)(∑cJn,∑TJn)-(403,0),解 (b)(290,459),解 (C)(361,12)

はそれぞれ 120,114,76個であった・このとき初期解の 5613'Yoは解 (a),(b),(C)に収束することとなる.すなわち,3×10程度の規模ではある特定の解に収

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90 第 5章 フローショップ問題におけるルールの獲得と適用

0

0

0

0

5

0

ssOu!pLe106t2

Le-V

0

0

0

0

0

0

5

0

5

ssou!pJeトOBtZLO

>

V

oo

oo

00

5

0

5

ssou!pJele6t?JoV

450 500 550 600

Avera9e F一ow Time

(a)ll- 0.2, 人2 - 0・8

650

●●◆・'-礎 、.i..

450 500 550 600

AverageFlowTime

(b)l1-0.5,12-0.5

650

.・・.;・・・,・

18・X・′・+A.4'

450 500 550 600

AverageFJowTime

(C)A1-0.8,人2-0.2

650

図 5・12:利用率の変化に伴 う解の分布 (3×20,(∑Cl/77p,∑TJn))

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5.5多目的フローショップ問題への適用 91

003

ssa

⊆p

L

eト

a6eJo^V

260 300 340 380 420

AverageFlowTime

(i)3×10フローショップ問題

0

0

0

50

50

sSelu!PJt?ト

86t2Je^V

ー400 450 500 550 600 650

AverageFIowTime

(ii)3×20フローショップ問題

図 5・13=獲得ルールによる解集合 (∑TJn,∑CJlt)

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92 第 5童 フローショップ問題におけるルールの獲得と適用

束 しやす く,非劣解の個数は少ない傾向があるといえる.3×20の場合は,非

劣解となる解の割合が 10仕事の場合と比べて少ないものの,ほぼ全域に分布

する非劣解集合が得 られた.このような傾向は,作成した他の問題にも同様に

見 られた.

図 5.14に給所要時間,平均納期遅れの2目的の場合の結果を示す.問題規模

は,ルール獲得の場合と同規模の 3×10フローショップ問題と,それとは異な

る 5×20フローショップ問題を取 り上げた.どちらの場合でも,先の数値実験

同様,一様にひろがる解集合が得られていることがわかる.

5.5.4 3日的フローショップ問題への適用

平均納期遅れ ∑TJn,総所要時間 Cma3" 平均滞留時間 ∑CJnの3つの評

価関数を対象 とする3日的フローショップ問題を考える.

問題規模は,ルール獲得の場合と同規模の3×10フローショップ問題と,それ

とは異なる 5×20フローショップ問題を取 り上げた.fl-∑TJ n,f2-cmar,

f3-∑CJnの利用率11,人2,人3 は,以下の7通 りとする.

(ll,12,13) - (0・33,0.33,0.33)

(0・2,0・4,0・4)

(0・4,0・2,0.4)(014,OA,0・2)

(0・5,0・25,0・25)(0・25,0・5,0・25)

(0・25,0・25,0・5)

・.I:仙

‥:=-:.i:W.仙

これらの設定値は,(i)全ての利用率が等 しい場合,(ii)2つの評価関数を重視

する場合,(iii)1つの評価関数を重視する場合に分けられており,一様に分布

する解の生成を目的としている.初期スケジュールは 50個とし,各初期スケ

ジュールに対 して上記の7通 りの利用率で解を探索 し,計 350個の解を導出す

る.解探索の終了条件はルール条件を満たす仕事対が存在 しないか,解の更新

回数が 1000回に達 したときとする.

図 5.15,5.16に,3×10フローショップ問題および 5×20フローショップ問

題に適用 した結果を示す.図 5.15(i)は横軸に∑CJn,縦軸に∑Tl/nをとった

ものであ り,図 5・15(ii)は,横軸に Cmar,縦軸に∑TJrLをとった場合を表 している.

両者の問題では,(∑Ci/n,Cma.r)の2日的フローショップ問題では評価関

数間の トレードオフが生 じないため,非劣解集合は得 られていない.以下で

は,(∑TJn,∑CJn)および (∑TJ71,cmaT) の場合に着目する.3×10フ

ローショップ問題の場合では,ほぼ全域に分布する非劣解集合が得 られた.ま

た,(∑Ti/n,∑CJn)と (∑TJ '7.cmall)の2目的の非劣解集合に注目する

と,図 5.13,図 5.14と同様な解集合が得 られていることがわかる.5×207

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5.5多目的フローショップ問題への適用 93

00

∞∞

00

8

7

6

5

43

2

S

a

J!PJdト一etO1

200

000

800600

400

200

のSOU!PJdト一et

O1

●●

●■

●ヽ

●●●I 550 600 650 700 750 800

Makespan

(i)3×10フローショップ問題

●●ヽ●

●ft

●~+...■....

●●●●

●●● ●●●●●4*++++.・}

1300 1400 1500 1600 1700

Makespan

(ii)5×20フローショップ問題

図 ・5,]4:獲得ルールによる解集合 (∑TJrL,CmaL-)

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94 第 5章 フローショップ問題におけるルールの獲得と適用

0

0

0

0

人U

0

0

0

0

0

0

5

4

3

2

1

SSau!PLCl

le101

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

71

6

5

4

3

2

SSaUFPLeトIe101

320 340 360 380 400 420 440 460

AverageFlowTlme

00

00

00

7

6

5

4

3

2

SSau!PLdile10ト

00

●鞄・;,・.1;.:..

550 600 650 700 750 800

Makespan

図 5・15=獲得ルールによる解集合 (3×10,(Cmar,∑Ci/n、∑TJn))

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5.5多目的フローショップ問題への適用 95

005

SSa

ulPLeト

一C

101

LS(]5.16‥獲得ルールによる解集合 (5×20,(cm ,LLll.∑C/1,/n.∑TJ'7))

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96 第 5章 フローショップ問題におけるルールの獲得と適用

ローショップ問題の場合は,トレードオフ関係のある (C mar,∑TJn)および

(∑cJn,∑TJn)では一様に分布する非劣解集合が得られていることがわかる・

すなわち,3日的問題を対象とした時,評価関数ごとに得 られたルール ・セッ

トは利用可能である.一方,問題規模が 5×20の場合では,3×10の場合と比

べて,図 5.16の解 (a)および (b)など,探索手続きがすぐに終了することによ

り得 られた解が多 く存在 し,また解の広がりが大きくなっていることがわかっ

た.今後,非劣解の生成率を高めること含めた解探索法の改良が必要である.

5.6 まとめ

本章では,フローショップ問題を対象として,帰納的学習によるスケジュー

リング ・ルールの獲得法を提案 し,その有効性を検討した.事例をスケジュー

ル上の仕事対を入れ換えにより生成 し,C4.5を利用することによりルールの獲

得が行 う.まず,事例の構成法,適用事例数,さらに獲得 したルールの性能評

価を行ない,フローショップ問題に適応 した特徴の設定,適切な事例数を示 し

た.また,数値実験を行った結果,フローショップ ・スケジューリングに効果の

あるルールが獲得可能であることを示した.

次に,獲得 したルールを局所探索法およびタブー探索法に適用し,仕事対入

れ換えによる近傍探索スケジューリングという観点からルールの有用性につい

て検討した.ルールを近傍探索過程に利用することによって,効果的な解の探

索が行なえることがわかり,特に給納期遅れ最小化問題の場合では良好な解の

導出が可能であることがわかった.

最後により複雑な問題として多目的フローショップ問題を取り上げ,獲得ルー

ルを利用した非劣解集合の生成法を提案 した.数値実験の結果,評価関数ごと

に得 られたルール ・セットは2日的および3目的の問題においても利用可能で

あることを示した.また,ルール ・セットの利用率の変化による評価関数の重

要度に応 じた解の導出可能性を示した.

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第 6章

ジョブショップ問題におけるルールの

獲得と適用

本章では,ジョブショップ問題を対象として,本研究によるルール獲得方法お

よび獲得ルールの有用性について検討する.ジョブショップ問題では,解空間

に非実行可能領域が存在するため,ある機械上の任意の仕事対 (以下,タスク

対 とする)の入れ換えが行えない場合がある.そこで,まず常に実行可能スケ

ジュールを生成するようなタスク対の入換え手続きの導入について論ずる.評

価関数として,(K)給所要時間 Cmaxを取 り上げる.また,獲得 したルールを

局所探索法-適用することにより,近傍探索過程におけるルールの有効性を検

証する.最後に,仕事の納期を考慮 した問題および2日的問題に提案方法を適

用 し,その有効性を考察する.

6.1 隣接タスク対の入れ換えに基づく事例作成

6.1.1 隣接タスク対の定義

ジョブショップ問題に対するルール獲得は,フローショップ問題の場合と同様

に,3.:婚石で述べたタスク対の入れ換えによるルール獲得手法により行 う.しか

し,ジョブショップ問題では,タスクに先行関係が存在するため,タスク対の入

れ換え操作後,実行可能スケジュールが生成できない場合がある.そこで,入

れ換え操作後のスケジュールが実行可能であるようにするために,以下に示す

入れ換え操作を考える.

「所与の実行可能スケジュール Lqを表す完全選択 された選択グラフを

(,I(・5)-(V ,C)とする.ただし,V,C はそれぞれ,タスクに対応する

節点,有向弧の集合である.このとき,

1.タスク tl,I)∈Vは同一機械上の隣接するタスク対である.

97

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98 第 6章 ジョブショップ問題におけるルールの獲得と適用

2.有向弧 (u,V)∈Cはクリティカル弧,すなわち G(S)のクリティカ

ル ・パス上の弧である.

の2つの条件を満足するタスク対 u,Vの入れ換え操作を行 う.」

すなわち,クリティカル・パス上の各ブロック内の隣接タスク対が入れ換え候補

となる.上述の条件を満足するタスク対を入れ換えた後のスケジュールが実行

可能であることはLaa.rhoven[23]らによって証明されている .例えば,2.3・3項

の図 2.5では,クリティカル ・パス上のタスクは,03,1,04,1,04,2,02,2,01,3

であるので,入れ換え候補となるタスク対は,

(0 3,1,04,1 ),(0 4 ,2,02,2)の2つとなる.

6.1.2 特徴の選択

3.3.2項 で定義 した特徴のうち,表 6.1に示す 7個の特徴 XIJ~x!を利用

する.

特徴 X.Jおよびx2Jは,入れ換えタスク対 Oi.Tk,0,,Tkの処理時間の差,それ

らが構成要素となる仕事対 Ji,J,の処理時間の差を表す.特徴 X3J,x.J,x5Jは,仕事対 J" J,の完了時刻の差,J" J,の処理が残っているタスクの給処理

時間の差と給滞留時間の差を表しており,ジョブショップ問題で新たに利用 して

いる特徴である.フローショップ問題では,全ての仕事は機械を通る順序が同

一であるため,完了時刻に関するこれらの特徴は利用されていない.また,特

徴 X6J,x7Jは,ブロック内での位置 (先頭ないしは最後)を表す特徴である.

隣接するタスク対の入れ換えを行 うため,フローショップ問題で利用 したタス

ク対の隣接関係を表す特徴 (5.2節の X5F ~x8Fなど)は省いている.

表 6.1‥事例特徴 とその値 (XIJ ~x7J)XIJ:pi,Tk-PJ,打kx2J:pl-PJ

X3J:C" : C" ]

X4J:∑ETkPt,L-∑?:打たP,,I

X5J‥(c t,n一一ci,Tk)-(C,,n

(<0,≧0)(<0,≧0)

(<0,≧0)\ノ)

0

0

>一>一

nUnU

X6J‥ot,打たはブロック内の先頭のタスクである (Yes,No)

X7J:oJ,Tkはブロック内の最後のタスクである (Ye・5,No)

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6.1隣接タスク対の入れ換えに基づく事例作成 99

表 6.2:例題 6.2(5×5ジョブショップ問題)

タスク (機械,処理時間)

l

つ一31「5

TJTJTJTJ

00

00

0

)

94-ノ)

2

113

8

;.;.Uj4日

((t(

t

l1

1

l1

1

2

34

5

00

00

0

(M5,18) 01,3(M4.2) 01,4(M2,9) 01,5(M3.10)(M4.18) 02,3(M5,6) Orl4(Ml,16) 02,5(M2.8)(M3,7) 03,3(M4,19) 03,4(Ml.1) 03,5 (M2,2)

04.3(A/Il,13) 04,4(M2,10) 04.5(M3,5)05,3(M3,6) 05,4(Ml,17) 05.5(M2,8)

6.1.3 事例の作成例

クリテ ィカル ・パス上の隣接 タスク対の入れ換えに基づ く事例の作成過程の

一例を示す.

表 6.2に示す 5×5ジョブショップ問題に対 して,任意にサンプル・スケジュー

ル S.を作成する.図 6,1に示すように S。の評価値 cmarは 9-1となる.SDか

らタスク対を2回入れ換える操作を図 6,1と合わせて簡単に示す.スケジュー

ル S。上でのクリティカル ・パス上のタスクは,

02,170 2,2,03,3703,4,03,5,01,4,05,5704,4,0 2,5

である.これらのうち入れ換え可能な隣接タスク対は,

(02,2,03,3),(02,2,03,3),(03,5,01,4),(01,4,05,5),(05,5,04,4),(04,4,02,.5)

の 6組である・ここで,03,5 と 01.4,すなわち機械 M 2 上で処理 される仕事

J3,Jlを入れ換え,新たに得れらるスケジュールを slとする,スケジュール

Soでのタスク 0,,5 および 01,。の処理時間,処理完了時刻,さらに 仕事 J3 お

よび Jlの総処理時間,処理完了時刻は,

(p3,5,P3,C3,5) - (2,43,59)

(pl,4,Pl,C1,4,C1,5)-(9,41,68,78)

となる.したがって,各事例特徴 xIJ ~x7Jの値は次の通 りとなる.

(XIJ,x2J,x,J,x4J,x5J,x6!,X7J)-(<0,≧0,<0,<0,<O,yes,1Vo)

スケジュール S。および Slの評価値 (総所要時間)は,それぞれ 94,95であ

るから,得 られる事例のカテゴリは,badとなる.すなわち,5'。上の隣接タス

ク対 03.5,01,。を入れ換えることにより,以下の事例が得 られる.

(<0,≧0,<0,<0.<0,Yes,No,bad)

さらに,図に示すようなスケジュール Slでの隣接 タスク対 03,3,0..3 (機

械 M4で処理される仕事 J3,Jl) を入れ換えることにより得 られるスケジュー

ルを S2 (給所要時間 91) としたとき,同様の手続きにより以下の事例を得る.

(≧0,≧0,<0,< 0,<0,No,res,good)

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100 第 6章 ジョブショップ問題におけるルールの獲得と適用

10 20 30 40 50 60 70 80 9094tL-me

;i;:i+lnterchange03,5and01,4(InterchangeJ3andJI On喝 )

ScheduleS1 03,3 01,3

叫喚竹崎

10 20 30 40 50 60 70 80 9095time

%lnterchange03,3and01,3(lnterchangeJ3andJIOnA毎 )

Schedule52

叫喚竹崎堕

10 20 30 40 50 60 70 80 90 tlme

[コ Jl[∃J2EヨJ,四方 因 J5

□TaskontheCr■t-catPath

XJJx2Jx3Jx4Jx5Jx6Jx7J category

ー当

″ー雪

ー雪

.雪

ー萄

Categoyy

ー雪

ーち

ー雪

.雪

Jー萄

ー雪

Category

e;7

州州払;F

b

e.州..3州

ev[Fh

.800g

<o>o<o<o<OYesNo bad →トー BytheprocessofthegenerationSl

≧o≧o<o<o<oNoYes good Jトー BytheprocessofthegenerationS2

図 6.1:事例作成例

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6.2ルールの獲得 101

6.2 ルールの獲得

1つの 10×10ジョブショップ問題で,以下に示す条件で訓練例集合を作成

する.

・各仕事のタスク数 :m (nl-n2-.・・-nn)

・各タスクの処理時間 :[1,99]の一様乱数

●サンプル ・スケジュール数 八㌧ :10

.発生事例数 Ns:30000

.連用事例数 2Ni:2000

10種類のサンプル・スケジュールから得 られた各ルール・セットを1つに統合す

ると,46個のgoodルールと32個のbadルールを有するルール ・セットが得

られた.3.3節のルール獲得方法にしたがって,goodルールのみを抽出し,節

たにルール・セット78とする.表 6.3に,獲得 した 46個のgoodルールの条件

部を示す.ただし,表中の #1は,獲得 した 10個のルール・セットのうち,各

ルールが含まれていたルール ・セットの個数を表す.例えば,ルール(K-1)は,

if XIJ≧o ∧ x4J<o ∧ x7J-yes then good

なる if-thenルールで,獲得 したルール ・セットのうち 7個 に含まれていたこ

とを表している.

ルールの条件部を観察すると,

x4J<07x6J-yes,x7J-yes

の3つの条件が比較的多 く利用されている.これらの条件はそれぞれ,以下の

意味を持つ.

X4J<o '.残 り処理時間が大 きいタスクと交換

X6J-yes :クリティカル ・パス上の 1つのブロック内で,先頭のタスクを交

換する.

X7J-yes '.クリティカル .パス上の1つのブロック内で,最後のタスクを交

換する.

特にX6J-yesおよびX7J-yesは,ジョブショップ総所要時間最小化問題に

おいて分枝限定法の下界設定 [16]や,SA法での近傍構造 [25]などに利用され

ており,スケジューリング ・ルールとしての効果が期待 される.

(K-1ト (K-8)のルールは獲得された回数が比較的多 く,これらのルールの条

件数は 2ないしは 3である.一方,単一のルール ・セットから得 られた (lt-13)

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102 第 6章 ジョブショップ問題におけるルールの獲得と適用

表 6.3:獲得 したルールの条件部

<・]爪-=爪Tf人

心-:い

===

・=…い

….Mi.・i'i;imi

iZi

.2卜iKii=i=t、い・imm

im

miい

l

-

1

-

l

Il

l

((((((((

tt(tt((t

((

((

l(ー(((t(ー(tt

t(

ーt

′・l・

)11)ーー

・lノ)

ー)

ノヽノヽーー)))ー)ーーII))))

ー)ー))

ノヽー)))ll)ー

)ー

′ヽJヽJI

1234567890

1

234

5

67890

1234567

89012

34567890123456

L

-11

1

「⊥l1

1

111lつ▲つ一(∠2つ一222

つ▲23333333333

444.q444

x2J≧o ∧

・lrlJ<o< x2J≧o<

XIJ<o ^

XIJ≧o <

XIJ<o ^

xIJ<o^xIJ≧o<

xIJ<o< x2J≧o∧巨 :.:

XIJ<o ^

x2J≧o<x2J≧o <

x2J≧o<

xIJ≧o ∧

xIJ<o^XIJ<o^

XIJ≧o < x2J<o< x3J≧o <

X4J<o^

x4J<o <

X4J<o^

.'

.JJ

.I.

./.'/..JI

VJ.rJ

e

Ee

eA.)e0

e

e

yy

y

yyyⅣy

y

二二

二二二二

二二

J6ノ6J6J6J6J6J6J6J6

ガガガズ∫ズ

<0<.・1・・]

X4J<o ∧ xGJ-yesx4J<o ^

<

<

<∧

<

t<ガガ

7J7J7J7

e

eqj

e

y

yy

e

e

q)

y

yy

二二

J7J7

J7

ガガ

x7J=yesx7J=yes

X6J-yes x7J=Nox4J<o < x5J≧o ∧ xGJ-yesX4J<o ^ x5J<o ^

x4J<o^ x6J=yesX5J<o^ x6J-yes^X5J<o^

x4J <o< xbJ<o< x6J=yes∧X4J<o∧ x6J=yes^

XIJ<o^ x3J<o^x2J≧o< x.J<o<

芸獄 ニ

XIJ≧o∧

<

0>一

Jl

<

∧<

000

>一くく

JLJIJI

.<J

1

xIJ<o ^

XIJ≧o<

<

<<<<<<∧

<

<∧

0

000

0000

0

00

<>一>一<>一>一>一>一>一>一<

J2

J2J2J2J2J2J2'J2J2J2J2

ズズズズk:ズkCズズ

X5J≧o ∧ xGJ=yes∧

室 …呂 ニ x4J<。∧ x5J≧。< X6J=yesX3J<o^

x5J<o ^ x6J=yesx5J≧o <

XEJ<o^

<

<

<

0

0

0

ノ4

J4J4

ズズ

<

<

0

0

J3J3

x2J≧o < x,J≧o< x.J<o <

寄 …ooニ 芸妄…3 ニ x3J≧o^xIJ<o ^ x2J<o ^

XIJ<o< x2J≧O^

X5J≧o∧xSJ<o<

X.J≧o ∧ x5J<o<

X4J<o < x5J<o<X.J≧o ∧

X3J≧o < x.J<o<<o ∧ x2J<o< x3J≧o<<0<

x6J=yes

X6J=y es

x6J=yes

I':_・≡ミ 'lx 6J -yesx6J=yes

X7J-yes

J,.I..I.

5

5

eeqJ

0e0e

yyy

Ⅳy〃y

二二二

二二二二

J7J7J7J7J7J7J7

ズズズ

ズズズ

3

5855

55

e

eeee

ee

y

yyyy

yy

二二二二

二二

ノ7ノ7J7J7J7J7J7

ズ>]ズズズズズ

V..rJqJ.J)

Lr..(.

eどee0

0e

yyyy

Ⅳy

y

二二二二二

二二

J7ノ7ノ7J7J7J7JTJ7

ズズ

>:ズズガ

#1:各ルールを含んでいた獲得ルール ・セットの個数

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6.3獲得ルールによる局所探索とその効果 103

~(K-46)のルールのうち 7O%は条件数が 4以上であ り,前者の方がその構造

が簡潔であるといえる.一般に,帰納的学習法により得 られるルールは,簡潔

な構造はど一般性が高いと考えられるので,(K-1ト (K-8)は事例を分類する能

6.3 獲得ルールによる局所探索とその効果

6.3.1 隣接タスク対入れ換えに基づく局所探索

局所探索法 として,探索時間を重視したファースト改善,解の精度を重視し

たベスト改善の両者を取り上げる.これら2つの局所探索法と,各々に獲得ルー

ルを利用 した局所探索法をそれぞれ,

LSJ・lファースト改善の局所探索法

LSb:ベス ト改善の局所探索法

LSf+78:獲得ルールを利用 したLSJ

LSb+71:獲得ルールを利用 した LSb

と呼ぶこととするILSfおよびLS調 ,2・4.3項の手続きにしたがう.また,LSj+

78およびLSb+71は次項の手続 きにしたがう.

所与のスケジュールβの クリティカル・パス上の l(tS)個のブロックをB1,.・.,Bl(S)

とし,それぞれに含まれるタスクの個数を71P,・-,nRs)とする・このとき,各ブロック内の全ての隣接タスク対の総数 Ⅳβは,

I(s)NB-∑(n,B-1)

1-il(6・り

と表すことができる.すなわち,隣接 タスク対の入れ換えによる近傍の大きさ

は,仕事数ないしは機械台数の増加に伴って,線形増加する.ここでは,スケ

ジュール Sの近傍 N(S)は,クリティカル ・パス上の全ての隣接 タスク対を入

れ換えて得 られる 〃β個のスケジュールとする.

6.3.2 近傍探索過程へのルールの適用

次に,近傍探索過程における獲得ルールの利用方法を示す.所与のスケジュー

ルβ上で選択 したルールrを満足するタスク対を入れ換えて得 られるスケジュー

ル集合,すなわちルールによる近傍 Nc(・5日⊆N(S))とする.また,暫定スケ

ジュールの更新手続きは次のとおりとする,

・L・5′f+71の場合,f(S')<f(15)なるスケジュール S′∈Nc(可 が見つか り

次第,.5′を暫定スケジュールとする.

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104 第 6章 ジョブショップ問題におけるルールの獲得と適用

・LSb+71の場合,Nc(S)内を全て探索 した後,Nc(S)内の最良スケジュー

ル 3'∈Nc(S)を暫定スケジュールとする.

このとき,LSf+78,LSb+78とも以下の手続きにしたがって適用ルールの選

択を行 う.ただし,f(*)はスケジュール *の評価値 (ここでは CmaT) とする.

lo獲得ルールを任葦順に並べたルール列をR-(r1,.,・,rq)とする・k- 1.

2'ルール rkにより近傍 Nc(S)内を探索する.

3'Nc(5)-¢あるいは f(3')>f(S)ならばk- k+1とする.

4ok>qならBfk- 1とする.20に戻る.

3'のステップでは,現在のルール rkを満足するタスク対が存在 しないか, rkで

評価値の改善効果が得 られなかった場合に適用ルールを変更 (rk+1)する.こ

れは可能な限り全てのルールを利用することを目的としている.以下では,ス

ケジュールの更新手続き1回分を1サイクルと呼ぶこととする.

近傍探索過程においてルールを適用する際,ルールを満足するタスク対を探

索する時間 (以下,マッチング時間)を考慮する必要がある.獲得ルールの有

用性を検討するために,5.4節での議論と同様に,ルールのマッチング時間を含

めた近傍探索の 1サイクルにおける探索時間を観察する.ここで,局所探索法

の近傍探索の 1サイクルに要する時間の平均を f とし,近傍内の 1つのスケ

ジュールを生成 し評価値計算を行 う時間の平均,1組の仕事に対するルールの

マッチング時間の平均をそれぞれ t-C,tmとする.上記4つの局所探索法の近傍

探索に要する時間は次式 (6・2)~(6.5)で表すことができる.

T(LSf) - fc・NL+w

f(LSb) - tcINB+w

i(LSf+78)-tc・Ni;+fm・NL+w

i(LSb+71)- tc・NB/+i-m・NB+W

)

、)

\ノ

)

2

3

4

5

6

6

6

6

(

(

′t

(

ただし,鶴,NgL<NB)および Ni;(≦Nii)は選択 したルールを満足するタ

スク対の総数,Wはスケジュールの更新時間やルールの順序変更時間など tc,

tmの他に要する時間であり,式 (6,2)~(6.5)の右辺第 1項および式 (6.4),(6.5)の第2項に比べて微小な時間である.また, 1サイクルにおける評価値計算時

間 tcINBは問題規模が増大,すなわち NBの増加に伴い線形増加する.また,

マッチング時間 fm・NBは NBおよび 事例の特徴個数の増加に伴い線形増加す

る.このとき,

f(LSJ)>i(LS/+78) (6.6)

あるいは,

f(LS.b)>i(LSb+78) (6.7)

が成立すると,ファースト改善あるいはベスト改善において,ルールによる効

率的な近傍探索が行えると考えられる.

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6.3獲得ルールによる局所探索とその効果 105

6.3.3 数値実験

10×10ジョブショップ問題を 10個 (Pllo,p12.… ,pll.0),15×20ジョブショッ

プ問題を10個 (P115,P125… ,P1150)任意に作成 した.各仕事のタスク数は機械台

数と同一とし,各タスクの処理時間は [1,99]の一様乱数により与えた.計 20

個の問題について,4つの方法を 10回適用 した.ただし,局所探索の最大サイ

クル数は 1000回とし,探索サイクル数が 1000回に達するか,評価値が 3回以

上更新されない場合,探索を終了することとする.なお,数値実験は,Silicon

Graphics社の Indigo2 (CPU‥MIPSR4400,250MHz)を利用 した.

6.3.4 探索時間とマッチング時間

表 6・4は,15×20ジョブショップ問題において,4つの局所探索法 (LSf,

LSJ+78,LSb,LSb+71)を適用 したときの実行時間を表している.表 6.4(b)

の括弧内は,LSf+78およびLSb+71の実行時間のうち,ルールのタスク対 と

のマッチングに要 した時間の割合を示している.また,表 6.5は, 1回のタス

ク対入れ換えにおけるマッチング時間の平均 tm と評価値計算時間の平均 fcを

表している.10×10ジョブショップ問題では,実行時間が非常に短か くマッチ

ング時間が計測できない場合があったため,表中には記していない.

10×10ジョブショップ問題の場合,LSf+78は常に LSJより実行時間が小

さく,LSb+78の実行時間は LSbのそれに比べて 28%~57%程度である.ま

た,15×20ジョブショップ問題の場合では,特にLSf+78の実行時間 は 上▲ゴブ

のそれに比べて 12.2% ~18.7% である.これらの結果から,ルールを利用す

ることによって局所探索法の実行時間を低減させることが可能であることがわ

かる.

マッチング時間の実行時間に対する割合に注目すると,表 6.4から,ファース

ト改善の場合で 11%以下,ベスト改善の場合で 22%以下である.また,表 6.5

から,評価値計算時間の平均fcは マッチング時間の平均 fm と比べて,およそ

16倍と非常に大きいことがわかる.すなわち,選択されたルールの 〃β個のタ

スク対 とのマッチング時間は cmα。の計算時間に比べ非常に長 く,マッチング

時間は探索過程におけるボトルネックにはならないと考えられる.

6.3.5 獲得ルールによる近傍の大きさ

表 616は,各近傍探索法における近傍 N(S)(IJSf,LSbの場合),Nc(S)(LSf+78,LSb+78の場合)の大きさの平均値および最大値を表 している.この近傍

の大きさは,入れ換え候補 となるタスク対の数に相当する.式 (6・2)~(6.5)を

考慮すると,LSf,LSf+78,LSb,LSb+7Zの近傍の大きさは,それぞれNi"

N芸,NB,Ni;′である.

表 6.6から,ファースト改善,ベスト改善ともにルールを利用することにより

近傍の大きさは小さくなることがわかる.ファースト改善の場合,NB(LSf+78)

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106 第 6章 ジョブショップ問題におけるルールの獲得と適用

表 6,4:各局所探索法の平均実行時間 (sec)

(a)10×10ジョブショップ問題

Pll.p12b P13op14. p15op16. p17. p18. p19op11.0

LSJ 0~.17 0.11 0.16 0.19 0.25 0.15 0.16 0.12 0.22 0.18

LSf+78 0.03 0.05 0.06 0.03 0.05 0.04 0.03 0.03 0.06 0.03

LSb 0.25 0.29 0.27 0.28 0.34 0.26 0.27 0.30 0,27 0.20

LSb+71 0.07 0.11 0.10 0.09 0.14 0.15 0.12 0.10 0.12 0.ll

(b)15×20ジョブショップ問題

Pl15 P125 P135 P145 P155 P165 P175 P185 P195 Pl150

LSf 3・76 5・38 5・61 4・24 4・40 5・55 4・80 5・07 4・97 4・27

LSf+780.64 0.72 0.76 0.78 0.82 0.78 0.58 0.82 0.68 0.62

9.8 9.0 10.9 8.8 9.3 7.3 9.5 8.5 9.7 10.6

LSb 8.01 7.37 8.30 7.07 6.84 9.09 7.83 8.36 7.40 7.10

LSb+′疋4.24 2.58 4.27 3.80 4.28 3.46 2.74 3.35 2.63 2.80

14.1 4.0 16.3 20.2 15.0 12.6 21.7 18.4 16.7 13.2

太字はルールのタスク対 とのマッチングに要した時間の割合 (%)

表 6・5‥i-Cとtm(msec)

LSf+7a LSb+78i-c fm fc i-m

Pl15 3・96 2・90×10-2 4・07 2・40×10-2

P125 4・00 2・56x1012 4・02 2152xl0-2

P135 3・95 2・90×10-2 4・03 2・51×1012

P145 3・61 2・88xlO12 4・34 2・57xlO-2

P155 3・84 2・65×1012 4・04 2・48×10-2

P165 3・94 2・29x10-2 4・03 2・47xlO-2

P175 3・72 2・58×10-2 4・10 2・78×10-2

P185 3・96 2・30xlOl2 4・13 2・90xl0-2

P195 3・75 2・42x10-2 4・06 2・47xlO-2

P1150 3・64 2・86×10-2 4・15 2・46×10-2

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1076.3獲得ルールによる局所探索とその効果

表 6.6‥近傍の大 きさの平均 (()内 は最大値 )

(a)10×10ジョブショップ問題

LSf LSf+ 7i LSb LSb+78

NL Ni;

、ーノ\ノ

6

6

3

4

1

1

)

ノヽ

8

CXU

1

1

_1tl1

4

6

8

6

4・4(12) 1・4(4)

3・9(12) LIB(5)

\J、1

1ノ\ノ)

)

)

上-一-4

6

7

こリ6

6

(

′し/J′l

′し

(

(

(

4

4

4

3

3

2

3

3

1

1

1

1

1

1

1

1

)

lノー

)

)

\ノ\Iノ

仁Urln

7

1

7

9

t-史U

1

l

1

2

1

1

1

1

71

′し(

(

(

(

t

′l

父U4

6

6

9

8

2

3

6

8

8

8

6

8

父U8

)

~ノ)

1ノ)

\一ノ\ノ\ノ

5

4

4

4

5

4

5

3

′t

(

(

(

(

(

(

4

4

3

4

4

4

4

3

1

1

1

1

1

1

1

1

)

)

\ノ

3

4

3

1

1

1

(

/し(

I.11'/J

4

4

4

\-・ノ)

)

\ノ\~ノ

2

4

り】3

5

1

1

1

1

1

(

(

(

(

(

9

5

8

7

5

4

4

4

4

4

畑ii㍑・i=㍑i='if

Jli

・ifiL=

(b)15×20ジョブショップ問題

NB′

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108 第 6章 ジョブショップ問題におけるルールの獲得と適用

の NL(LSf) に対する大きさの平均は,10×10規模では27・1%~38・4,15×20

規模では 17.0%~22.8% である.ベス ト改善の場合,NS'(LSb+78)の NB

(LSb) に対する大きさの平均は,10×10規模では 13.6%~21.2%,15×20規

模では 8.0%~10.5% である.

以上の数値実験結果から,

ic・Ni;+tm ・Nii<ic・NL

Ic・NB′+tm・NB<ic・NB

が得られる.したがって,式 (6・6),(6.7)が得 られる.すなわち,近傍探索過程

にルールを適用すると,ルールのタスク対とのマッチング時間を要するが,評価

値計算時間を軽減するために,近傍探索時間全体を短縮することが可能である.

次に問題規模の観点から考察する.6.3.1項で定義 した近傍の大きさNB は,

仕事数 nと機械台数 m に対 して 0(Y,m)のオーダーで求まる.NL,N芸,NSは最大 NB と等 しくなるので同様に0(mn)のオーダーである.すなわち,ルー

ルを利用 しても近傍を求める計算量は変 らない.しかし,表 6.6から10×10規

模 と 15×20規模の近傍の大きさを比較すると,NB,NLの大きさの変化に

比べ,Ni;およびNB′の大きさの変化は非常に小 さい.NB,N左は 2,3倍ほ

ど大 きくなるが,ルールによる近傍の大きさNBおよびNB/は 1.2倍程度であ

る.すなわち,表 6.6に示す実験結果から,近傍探索過程にルールを組み込むこ

とにより,問題規模が増大 した場合でも近傍の大きさを抑えることが可能であ

ることがわかる.問題規模の観点から,ルールによる近傍探索は有効であると

いえる.

6.3.6 解の精度

表 6・7は,各問題に対 して4つの局所探索法 LSJ,LSf+78,LSb,LSb+78

をそれぞれ 10回適用 して得 られた解のうち最小解を表している.LSf+78は,

LSj より良好な解を生成する場合があるものの,LSf+78による解の LSj による解との相対偏差を計算すると,最大 19.4% である.ファースト改善でルー

ルを利用 した場合,探索時間は短 くなるが,近傍を十分に探索しきれないこと

がわかった.一方,LSb+71はルールを利用 しないベスト改善 LSbに比べ良好

な解を生成している.特に,15×20ジョブショップ問題ではその傾向が顕著に

表れている.従って,C,nax を評価関数とするジョブショップ問題に対 しては,

ベスト改善による局所探索法に獲得ルールを利用することにより,効果的な探

索とより良好なスケジュールの生成が可能であるといえる.

6.4 適用事例数の検討

ルール獲得に必要か ラヾメータ,発生事例数 Ns , 適用事例数 Nlの適切な

個数を検討するために,5.1.3節での実験と同様に,Nsおよび Nlの変化に伴 う

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6.4適用事例数の検討 109

表 6.7:各局所探索法による最小解

(a)m-10,n -10

問題 LSf LSJ+7t LS♭ LSb+78

Pllo 927 1020 937 917

P12. 1060 1090 918 926

P130 956 915 843 891

P140 936 1077 861 831

P150 1040 1061 920 934

PIG. 990 1037 1008 917

P17. 795 818 773 725

P180 1039 1125 976 955

P19. 1039 1111 968 954

PlloO IO78 1000 1003 864

(b)m-15, n -20

問題 LSf LSf+7i LSb LSb+7t

Pl15 2109 2184 2038 1704

P125 2116 2352 2330 2027

P.35 2111 2181 2026 1854

P145 1966 2152 2045 1549

P155 2059 2419 2108 1771

P165 1962 2137 1935 1683

P.7L, 2018 2292 2116 1750

P185 2127 2201 2244 1826

P195 2317 2285 2236 1928

Pl1.,0 2113 2523 2201 1917

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110 第 6章 ジョブショップ問題におけるルールの獲得と適用

ルール ・セットの分類精度を観察する.

5×10ジョブショップ問題,10×10ジョブショップ問題 をそれぞれ任意に

10種類作成 した.これらの問題に対 して Ns,Niを変化させ,各 Ns, Nlにつ

いてルール獲得を行い,生成されたルール ・セットの誤分類率をテスト事例を

用いて算出した.ただし,各タスクの処理時間は [1,99]の一様乱数により与え,

ルール ・セットの誤分類率は 5.1.3節 の式 (5.1)を利用する.テスト事例は,新

たに作成 した 10×10ジョブショップ問題で,Ns-20000,Nt-1000の条件

で作成 した事例 10too個を利用 した.ルール ・セットの誤分類率は,テスト事

例 1000個のうち誤って分類 した事例の個数の割合を表すこととなる.

図 6.2は,Ni-500および Nl-1000とし,発生事例数 Nsを1000-35000

まで変化させた場合の,各 Nsについて得 られたルール ・セット10個の平均誤

分類率を表 している.図 6.3は,Ns-20000および Ns-30000とし,適用事

例数 Ntを 100-15000まで変化 させた場合の,各 Nlについて得 られたルー

ル ・セット10個の平均誤分類率を表 している.誤分類率を観察するために設

定 した Nsおよび Niの値を以下に示す.

発生事例数 Ⅳ ∴

1000,2000,3000,4000,5000,10000,15000,20000,25000,30000,35000

適用事例数 Nt:

100,200,300,‥.,1000,2000,3000,‥.,10000,11000,12000,… ,15000

また,表 6.8および 表 6.9は, 凡 を 5000個ずつ増加させたときの平均誤分

類率の変化の幅,Nlを 1000個ずつ増加させたときの平均分類率の変化の帽を

表 している.

適用事例数 Nsについて考察する.図 6.2から,Nl-500の場合 Ns>10000,

Ni-1000の場合 Ns>20000であれば,ルール ・セットの分類精度の変化の幅

は 3%未満である.また,表 6.8では,凡 が 10000個以上では,それ以下の

場合に比べて誤分類率の変化の幅が小 さくなっていることがわかる.したがっ

て,Ns>10000であれば事例分類に関して同精度を有するルール ・セットの獲

得が可能であることが考えられる.

次に適用事例数 Ntについて考察する.図 6.3では,1000<Nt<6000のと

きにルール ・セットの誤分類率は最も低 く,Niの個数がそれ以外の範囲のとき

では,誤分類率は高 くなることがわかる.また,表 6.8では,Nsが 20000個お

よび 30000個の場合でも,Nl<1000や Nl>10000の範囲では誤分類率の変

化の幅が大きくなる傾向がある.これらのことから,Ntの個数は Nsの個数の

5%~20%程度であれば,ルール・セットの誤分類率には大きな変化はなく,か

つ比較的精度の高いルール ・セットの獲得が可能であると考えられる.以上か

ら,Nsおよび Niの個数は Ns>10000,Niは Nsの 5%~20% の値が適切

である.例えば,Ns-20000とした場合 Nl-1000-4000である.

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6.4適用事例数の検討 111

(㌔)Joヒ山06eJe^

V

5

0

rl

〔i

5

0

5

0

2

1

1

(%)L

oヒ山06eLO^

V

5000 15000 25000 35000

NumberofGeneratedCases(Ns)

(a)∧1-500

ー0 5000 15000 25000 35000

NumberofGeneratedCases(Ns)

(b)Nl-1000

図 6.2:凡 の変化に伴 うルール ・セットの誤分類率

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112 第 6章 ジョブショップ問題におけるルールの獲得と適用

52

(%)J

oJJu6-6eL

O^

V

52

(%)L

Oヒ山6-6eLOV

5000 10000 15000

NumberofAppliedCases(Nt)

(a)Ⅳ3-20000

5000 10000 15000

NumberofAppliedCases(Nt)

(b)Ns-30000

図 6.3:Ntの変化に伴 うルール ・セットの誤分類率

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6.4適用事例数の検討 113

表 6.8:誤分類率の変化の帽

ChangeofNs ∧1-500 Ni -lOOOm =5 m = 10 m.=~5 m = 10

~ 5000 7.1% 10.1% 4.2% 4.9%

5000~10000 2.6% 1.5% 2.9% 2.4%

10000~15000 0.2% 1.6% 1.1% 1.0%

15000~20000 0.3% 0.3% 1.8% 0.8%

20000~25000 0.3% 1.6% 0.1% 0.5%

25000~30000 0.2% 1.0% 0.4% 0.5%

30000~35000 0.8% 0.6% 0.2% 1.2%

m =5 : 5×10ジョブショップ問題

m =10 : 10×10ジョブショップ問題

表 6.9:誤分類率の変化の帽

ChangeofNl Ns-20000 Ⅳ8-30000m,=5 m =10 m =5 m = lO

′~ 1000 9.6% 10.6% 8.2% 12.3%

1000′) 2000 0.7% 0.7% 0.6% 0.6%

2000~ 3000 1.0% 0.2% 0.4% 0.0%

3000~ 4000 0.1% 0.4% 0.3% 0.1%

4000′) 5000 0.3% 0.0% 0.8% 0.2%

5000′~ 6000 1.0% 0.0% 0.1% 0.2%

6000~ 7000 0.7% 0.6% 1.8% 0.7%

7000~ 8000 0.4% 0.8% 0.7% 0.4%

8000~ 9000 0.0% 0.0% 0.8% 0,3%

9000~10000 0.4% 0.7% 0.4% 0,1%

10000~11000 0.2% 1.0% 1.2% 1.2%

11000~12000 0.4% 0.2% 0.9% 0.1%

12000-13000 0.0% 1.2% 0.1% 0.4%

13000~14000 1.9% 0.5% 0.9% 0..5%

川=5 : 5×10ジョブショップ問題

m =10 : 1OxlOジョブショップ問題

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114 第 6章 ジョブショップ問題におけるルールの獲得と適用

6.5 ルールの性能評価

獲得 したルールを実際にスケジューリング ・ルールとして適用した場合の有

用性について考察する.10×10ジョブショップ問題で多数のスケジュールを発

生させ,ルール ・セット中の各ルールに対 してそれを満足するタスク対を入れ

換える,ここで以下の記号を定義する.

NE :入れ換え可能な全ての隣接タスク対の総数

NE+:NE のうち入れ換え操作により評価値が改善するようなタスク対の総敬

Eall:NE のうち各ルールを満足するタスク対の総数

E+ :Eallのうち入れ換え操作により評価値が改善するようなタスク対の総数

E~ :Eallのうち入れ換え操作により評価値が悪 くなるタスク対の総数

EO:Eall-(E++E-)

Eallに対する E+(E-)の比を改善率 (改悪率)と呼ぶこととする.

表 6.10にNE の総数が 1000に達 したときの各ルールの Eall,E+および評

価値の改善率を示す.表左側 「ランダム」の列はスケジュールを任意に逐次作

成 した場合を,表右側 「GREEDY」の列はスケジュールを2.3.3項で述べた欲

張 り法によって逐次生成した場合を表す.例えば,ルール(K刃 で 「ランダム」

の場合は,1000個の任意のタスク対のうち 154個が条件部を満足するものであ

り,それらのタスク対を入れ換えた結果,144個 (93.5%)に関して評価値が改

善されたことを表す.この表では,改善率が高いほど,そのルールの評価値改

善能力は高い.改善率が 50% に近いものは,ランダム性が高く,ルールとして

の評価値改善能力は低 くなる.また,EaLlはそのルールとマッチングするタス

ク対の個数と等 しく,ルールの利用しやすさの指標となる.

表 6.10から以下のことがわかる.

(1)Eallはルールの条件数に比例 して減少する.

(2)獲得ルールは任意に作成したスケジュール (「ランダム」)に対 して改善

能力が高い.

(3) 「ランダム」での改悪率と 「GREEDY」での改悪率はほぼ同じである.

(4)改善率は 「ランダム」の場合より 「GREEDY」の場合の方が低い.

(1)から獲得したルールはその条件数が少ないほど利用しやすいといえる.表6.10では,条件数が 2,3個のルールであれば,給タスク対数の 10%~30% ほどの

タスク対が入れ換え候補の対象となり,4個以上の条件数を持つルールに比べ

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6.5ルールの性能評価 115

表 6.10:獲得 したルールの改善率

ランダム GREEDY

ルール 条件数 Eatt E十 改善宰 改悪率 Eatl E十 改善率 改悪率

(K -1) 3 154 144 93.5% 0.0% 80 47 58.8% 0.0%(K-2) 3 130 116 89.2% 1.3% 74 48 64.9% 2.1%

(K-3) 3 197 190 96.4% 0.0% 73 56 76.7% 0.0%(K-4) 3 134 127 94.8% 0.4% 62 43 69.4% 0.7%

(K-5) 3 114 105 92.1% 0.8% 79 54 68.4% 0.8%(K-6) 3 113 106 93.8% 0.0% 40 30 75.0% 0.0%

(K-7) 2 284 271 95.4% 0.4% 115 82 71.3% 0.6%

(K-8) 2 295 274 92.9% 1.4% 185 123 66.5% 1.4%

(K-9) 4 68 64 94.1% 0.0% 44 23 52.3% 0.0%(K-10) 3 180 173 96.1% 1.7cc/(, 78 52 66.7% '2,0%(K-ll) 3 187 179 95.7% 0.9%, 92 63 68.5(70 1.2%(K-12) 3 146 135 92.5% 1.0% 89 55 61.8% 1.G(y(ー

(K-13) 3 210 193 91.9% 2.3% 133 75 56.4% 3.2%

(K-14) 4 48 45 93.8% 2,9% 32 19 .59.4% 3.6%,(K-15) 3 134 117 87.3% 2.2% 123 75 61.0% 1.9%

(K-1 6 ) 4 36 32 88.9% 1.1% 19 17 89.5% 2.0%

(K-17) 4 77 73 94.8% 1.5% 45 23 51.1% 2.4%

(K-18) 3 123 113 91.9% 1.3% 51 33 64.7% 1.4%

(K-19) 3 162 158 97.5% 0.7% 59 42 71.2% 0.4%

(K-20) 3 118 113 95.8% 1.3% 77 43 55.8% 0.7%

(K-21) 5 90 89 98.9% 0.0% 27 22 81.5% 0.0%.

(K-22) 4 76 69 90.8% 2.2% 55 31 56.4%, 2.5%

(K-23) 4 40 34 85.0% 1.7% 26 15 57.7% 2,9%(汰-24) 5 4 2 50.0% 0.0% 17 10 58.8% 0.0%

(K-25) 3 120 112 93.3% 1.2% 62 37 59.7% 1.9%(K-26) 3 190 180 94.7% 1.7% 108 70 64.8% 1.7%

(K-27) 6 1 1 100.0% 0.0% 1 1 100.0% 0.097(,

(K-28) 4 56 53 94.6% 0.8% 41 22 53.7% 1.4%

(K-29) 4 63 61 96.8% 0.9% 25 16 64.0% 1.2%

(K-30) 4 42 36 85.7% 2.4% 33 20 60.6% 8.0%(K-31) 3 102 96 94.1% 2.3% 70 41 58.6% 4.7%

(K-32) 4 43 39 90.7% 0.5% 17 14 82.4% 0.9%

(K-33) 4 51 50 98.0% 0.6% 37 22 59.5% 1.4%

(K-34) 4 53 50 94.3% 0.0% 19 15 78.9% 0.0%

(K-35) 4 63 54 85.7% 2.1% 39 18 46.2% 3.1%(K-36) 3 133 117 88.0% ■2.6% 70 37 52.9% '2.5%

(K-37) 3 181 169 93.4% 1.8% 106 69 65.1% 1.9%

(K-38) 4 22 21 95.5% 6.8% 17 11 64.7% 2.8%(K-39) 4 39 35 89.7% 0.5% 14 11 78.6% 1.1%

(K-40) 5 48 43 89.6% 2.1% 34 22 64.7% 2.7%

(K-41) 6 14 12 85.7% 9.4% 14 6 42.9% 9.4%(K-42) 5 26 21 80.8%, 4.0% 28 19 67.9% 2.89も

(K-43) 4 54 47 87.0% 0.5% 45 29 64.4% 0.4%(K-44) 3 90 82 91.1% 1.7% 35 25 71.4%, 2.0%

(K-4.5) .5 29 28 96.6% 0.0% 6 5 83.3% 0.0%(K-46) 3 115 101 87.8% 0.8% 107 71 66A% 0.9%

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116 第 6章 ジョブショップ間違におけるルールの獲得と適用

利用しやすい.(2)から獲得ルールは任意に作成 したスケジュールに対 して効果的であることがいえる.

欲張 り法により作成 したスケジュールは,多 くの場合任意に作成 したスケ

ジュールに比べ良好である.すなわち,欲張り法によるスケジュール上での Eall

に対するNE+の割合は,任意に作成したスケジュール上でのそれに比べて少

ない.さらに表 6.10から, Eallおよび E+の個数は少ないことがわかる.~

方,(3)の結果が得 られたことから,欲張り法による良好なスケジュール上では

任意作成によるスケジュールに比べ,EOの存在する割合が多いことがわかる.

これらのことから,(4)に示す 「GREEDY」の改善率が低いことは,E+が少

なくEOが増えたことによるものであると判断され,ルールの改善能力そのも

のが低いわけではないといえる.

以上の結果と,「ランダム」および 「GREEDY」に関わらずルールの改悪率は

非常に低いことから,獲得 したルールはスケジューリング ・ルールとして効果

があるといえる.特に (K-7),(K-8),(K-15),(K-26),(K-37),(K-46)の6個

のルールは条件数が少なく,「GREEDY」の場合でも65%以上の改善率を持つ

ため,獲得 したルールの中でも特に有用性が高いと考えられる.

6.6 納期を考慮 した問題への適用

6.6.1 ルールの獲得

より複雑なジョブショップ問題の1つである,仕事の納期を考慮した問題を対

象としたルール獲得を試みる.評価関数として,総納期遅れ (∑℃ ),納期遅れ仕

事数 (∑Ut)の2つを取 り上げる.6.2節と同じ条件 (Ns-30000,Nt-2000,

Ⅳγ-10,10×10ジョブショップ問題 )で訓練例集合を作成する.ただし,仕

事の納期は任意順序のスケジュールを1つ発生させたときに得られる各仕事の

処理完了時刻 C%を算出後設定するものとする.このとき最適解の 1つは Oに

等しい.

また,6.1L2項の特徴に加えて,表6.11に示す特徴x8J ~xIJlを付加する.こ

れらの特徴は,3,3.2項 で定義した納期に関する特徴 (1-2),(2-6),(2-7),(1-3)

であり,F//∑T2問題で利用した特徴と等価である.

表 6.11‥納期に関する事例特徴とその値 (x8J ~xIJl)X8J

X9JXIJoXIJl

、J\1

〟-

qq

l

I

‥岬

‥押付

(<0,≧0)

(d]-CJ,打た) (<0,≧0)

(d,-C,,n) (<0,≧0)

(d1-pJ) (<0,≧O)

10種類のサンプル ・スケジュール (Nr=10)から得られたルール ・セット

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6.6納期を考慮 した問題への適用 117

表 6.12:獲得 したルール ・セット

∑Ti ∑ UZ..

goodルール数 110 114単独ルール数 103 106

条件部 (特徴)の聡数 473 501

を1つに統合すると,表 6.12に示すルール ・セットが得 られた,以下は獲得 し

たルールの条件部の一例である.

●∑r

XIJ≧o∧x2J>_o∧x7J-yeS∧XIJ.≧oXIJ<o x4J<o x6J-yes

●∑U

X4J<o x6J -No X8J<oX.5J<o x7J-yes xIJl-No

表 6.12は,goodルールの個数と,獲得 した 10個のルール ・セット中の 1つ

のルール ・セットにのみ存在するルールの個数 (単独ルール数),さらにルー

ルの条件部における特徴 X8J~xIJlの総数を表している.

表 6.12から,獲得したルール・セットに共通したルールの発生の割合が非常に

少なく,∑Tiと∑Utを評価関数 とした場合では,訓練例集合の分類が行いに

くい.また,c mα∬の場合に比べて獲得 したルールの個数が多いことがわかる.

ルールの条件部おける納期に関する特徴の割合は,∑Ttと∑Utの場合でそれ

ぞれ 24.3%,26.1%である.納期に関する特徴を有 したルールの個数は,前章

のフローショップ問題の場合に比べて少ない結果となった.

6.6.2 ルールによるスケジューリング

ここでは解の精度を考え,前節で獲得 したルールをタブー探索法に適用する.

5.4節で述べた手続 きと同様な方法によるタブー探索法を行 うものとし,獲得

ルールによって近傍内の探索を行 う.以下では,タブー探索法および獲得ルー

ルを利用 したタブー探索法を,それぞれ TS, TS+78と呼ぶこととする.

6.3節で作成した 10個の 10×10機械ジョブショップ問題 (Pllo,p120… ,plloU)にTS+78および TSをそれぞれ 10回適用 した.ただし,各仕事の納期は,

各々の問題で任意に作成 した実行可能スケジュールでの各仕事の処理完了時刻

Page 128: Kobe University Repository : Thesis · 目次 111 5.4.5 探索時間とマッチング時間‥ 5.5多目的フローショップ問題への適用 . 5.5.1多目的フローショップ問題

118 第 6章 ジョブショップ問題におけるルールの獲得と適用

に等しいものとした.なお,数値実験は,Cmaxの場合と同様にSiliconGraphics

社のIndigo2 (cpu:MIPSR4400,250MHz)を利用した.

表 6.13は各問題で TS+71とTSを 10回適用して得 られた解の平均および

最小解を表している.∑Tlの場合で TS+71および TSで得られた最小解は,

5個の問題 (P12.,p13.,p15.,p17.,pll.0)で同じであり,これらの解は最適解

である.P.4.およびP19.では TS+78は最適解を生成していないものの,納期

遅れとなる仕事は 1個だけであった.また,Plloとp18.では TS+71はTSよ

り良好な解を生成しており,納期遅れの仕事数はどちらもTS+78の方が少な

いことがわかった.

表 6.13:得 られた解の最小値と平均

∑γ ∑Ui

TS+7i TS TS+7t TS

最小 平均 最小 平均 最小 平均 最小 平均

P110 206 614.6 318 820.4 2 3.5 2 3.6

P12. 0 270.7 0 105.3 l l.9 0 1.3

P130 0 149 0 91.8 0 0.9 0 1.3

P14. 24 487.3 0 308.2 0 2.0 0 2.2

P150 0214.4 0 205.4 01.1 0 1.9

P160 118 747.2 82 586.8 3 4.2 3 4.7

P170 0 218.2 0 163 l l.9 0 1.0

P180 100 537.2 118 1114.7 2 4.2 1 2.7

P190 85 438.4 0 228.8 1 2.7 0 2.1

Pll.0 0 378.9 0154.6 0 1.0 l l.0

∑Uiの場合では 5個の問題 (Pll.,p13.,p14.,p15.,p16.)で同じ最小解が生

成された.これらの問題のうち Pll.とP16.は表 6.13から,良好な解を導出す

るのが困難であると考えられる.TS+78とTSを 10回適用 したことによる

給納期遅れの平均は,Pll.で 291.5,396.5であり,P16.で 502.5,753.0であっ

た.plloとp16.では納期遅れを考慮すると,TS+71の方が良好な解を生成しているといえる.

以上をまとめると,獲得 したルールは納期を考慮 した場合のジョブショップ

問題に対 して効果があるといえる.

6.6.3 2日的ジョブショップ問題への適用

より複雑な対象問題として,2つの評価関数を目的とする2日的ジョブショッフ

問題を取 り上げ,獲得したルールの適用可能性について検討する.ここでは,5.ち

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6.7まとめ 119

節で提案 したルールによる多スタート局所探索法を利用する.評価関数 として,

総所要時間 Cmax と納期遅れ仕事数 ULの2個を取 り上げる (以下,(Cmar,∑ UL)とする).f1-c max,f2-∑U2の利用率 11,人2は以下の5通 りとする.

(ll,人2):(0・0,1・0),(0・3,0・7),〔OJ,,0.ち),(0・7,03),(1・O,010)

初期スケジュールは 10個 とし,各初期スケジュールに対 して上記の7通 りの利

用率で解を探索 し,計 50個の解を導出する.解探索の終了条件はルール条件を

満たすタスク対が存在 しないか,解の更新回数が 1000回に達 したときとする.

上記の手続 きを 6.3節で作成 した 10個の 10×10機械ジョブショップ問題

(Pll.,p12.- ,pll.0)に適用 した.図 6.4に Pi5.で得 られた解集合の一例を示す.

この解集合の分布の傾向は,他の9個の問題についても同様に見られた.図り.-4で

は,非劣解は (a)および(b)である.非劣解(a)((cm(Lユ・,∑U,)-(1001,0))は,

(ll,人2)-(010,1.0)の利用率のときに得られた解であり,∑ Ulに関して最適解

となる.また,非劣解 (b)((Cmax,∑桔)-(998,1)) は,(11月 2)-(1.O.0.0)

の利用率のときに得 られた解であり,表 6・13の LSfおよび LSbの結果と比較

すると,cmax に関しては良好な解である.

一方,得 られた解集合の分布の形状から,(CmaTおよび ∑UL)間では明確な

トレードオフ関係は成立しにくいことがわかる.c mαT,∑Utのどちらかの単一一

目的問題 として解を求めると,他方の評価関数についても良好な解 となってい

る.しかし,ある解が Cmarについて最適解となるとき,∑ULについても常に

最適解となることは保証されないので,(Cma。,∑Ui)の2日的問題における最

適解は常に1個であるとは限らない.すなわち,(CmaT,∑ Ui)の2日的問題で

は,図 6・4の解 (a),(b)のように非劣解集合が存在することとなる.獲得ルー

ルを利用した多スタート局所探索法は,非劣解集合を求める方法として有効な

手段の一つであるといえる.

6.7 まとめ

本章では,総所要時間最小化ジョブショップ問題を中心として,本研究で提

案するルール獲得方法と獲得ルールのスケジューリング ・ルールとしての効果

を検証 した.ルール獲得は,訓練例集合を所与のスケジュールで同一機械上で

処理される隣接タスク対の入れ換え操作によって生成し,C4.5により行われる.

結果をまとめると以下のとおりであり,提案方法によりジョブショップ ・スケ

ジューリングに有効なルールが獲得可能であるといえる.

(1)獲得ルールを局所探索法に利用することにより,効率的な近傍探索が可能

である.

(2)特にベスト改善による局所探索法にルール適用 した場合,より良好な解を

生成することができた.

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第 6章 ジョブショップ問題におけるルールの獲得と適用

SSaU!PJt亡JOJ

aq∈nN

7・

6

5

4 (b)

0

0

●〇〇 〇〇〇〇

〇 - 〇 〇 〇 〇

〇■●●●○○■〇〇

〇〇〇〇〇 ●00 -+-

800 900 1000 1100 1200 1300 1400 1500

Makespan

図 6.4‥獲得ルールによる解集合 (10×10,(CmaJ,∑Ut))

(3)ルールの事例の分類精度に基づ く連用事例数の設定の可能性について検討

した.

(4)ルールの評価値改善率を観察 し,獲得ルールがスケジューリング ・ルール

として利用可能であることを確認 した.

(5)納期を考慮 した問題や 2日的問題においても,提案方法により評価関数の

最小化に効果のあるルールの獲得が可能である.

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第 7章

結論

本研究では,フロー ・ショップ問題およびジョブ ・ショップ問題を対象 とし,

帰納的学習法によるスケジューリング ・ルールの獲得方法を提案 し,その有効

性を示 した.ルールの獲得は,訓練例集合をサンプル ・スケジュール上の仕事

対 (タスク対)を入れ換えることにより作成 し,帰納的学習法を利用すること

によって行われる.各章ごとのまとめと得 られた結果を以下に述べる.

第 2章では,スケジューリング理論に基づいて多様なスケジューリング問題

を体系的に分類 した上で,本研究で対象としたフロー ・ショップ問題およびジョ

ブ ・ショップ問題の定義を述べた.また,一般のスケジューリング解法を整理

し,近年研究が活発化 しているインテリジェント・スケジューリングにおける

ルール獲得方法の確立の重要性を述べ,本研究の位置付けを明らかにした.

第3章では,スケジューリング・ルール獲得のアプローチについて整理 し,本

研究で提案 したルールの獲得方法の位置づけを明確にした.ルール獲得に必要

な帰納的学習法について述べ,本研究で利用した C4.5学習アルゴリズムの詳細

を述べた.また,本研究によるルール獲得の手続 きを説明し,重要な検討課題

である事例の構成法,訓練例集合の生成法として仕事対の入れ換えに基づ く方

法を提案 した.

第 4章では,本研究で提案 したルール獲得法を1機械問題 と2機械および3

機械フローショップ問題に適用 し,ルール獲得の基礎的検討を行なった.結果

として,簡単な最適ルールの存在する問題では,得 られたルールはそのほとん

どが既存のルールと等価であることがわかった.また,エントロピーによる適

用事例数の設定の可能性について検討 し,事例特徴の付加,事例の発生法を考

え,より効果的なルールの獲得法を検討 した.

第 5章では,フローショップ問題を対象として,帰納的学習によるスケジュー

リング ・ルールの獲得法を提案 し,その有効性を検討した.訓練例集合はスケ

ジュール上の仕事対を入れ換えることにより生成 し,ルールの帰納には C4.与を

利用 した.まず,総所要時間最小化問題を取 り上げ,フローショップ問題に適合

した事例の構成法,適用事例数,さらに獲得 したルールの性能評価を行なった.

その結果,フローショップ問題における提案方法によるルール獲得が可能であ

121

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122 第 7章 結論

ることがわかった.次に,獲得 したルールを局所探索法およびタブー探索法に

適用 し,仕事対入れ換えによる近傍探索スケジューリングという観点からルー

ルの有用性について検討した.ルールを近傍探索過程に利用することによって,

効果的な解の探索が行なえることがわかり,特に総納期遅れ最小化問題の場合

では良好な解の導出が可能であることがわかった.最後により複雑な問題とし

て多目的フローショ.)プ問題を取 り上げ,獲得ルールを利用した非劣解集合の

生成法を提案 した.

第 6章では,ジ畠ブショップ問題を対象としたルール獲得およびルールの有

用性について検討 した.ジョブショップ問題では,解空間に非実行可能領域が

存在するため,スケジュールの選択グラフ表現方法を取 り入れ,クリティカル・

パス上の同一機械で処理される隣接タスク対の入れ換えに基づいた事例の作成

を提案 した.ルール獲得の実験を行い,適用方法の 1つとして局所探索法に獲

得ルールを適用 した結果,ルールは探索実行時間の短縮に非常に有効であるこ

とがわかった.また,第5章と同様,発生事例数および適用事例数について考

え,それらの適切な個数を数値シミュレーションにより検討した.さらに,柄

期を考慮 した問題を対象としたルール獲得およびルールの有用性について検討

した.最後により複雑な問題として給所要時間と納期遅れ仕事数の2日的ジョ

ブショップ問題を取 り上げ,獲得ルールにより良好な非劣解が得 られることを

示した.

以上,代表的なスケジューリング問題である 1機械問題,フローショップ問

題,およびジョブショップ問題に対 して提案方法によりルールを獲得 し,スケ

ジューリングに効果のあるルールが獲得可能であることを示 した.さらに,そ

れらのルールを用いてスケジューリングを行 うことにより,良好なスケジュー

ルを生成できることを示した.このことから提案 したルール獲得方法はインテ

リジェント・スケジューリング ・システムの自動ルール獲得方法として有効な

方法であるといえる.なお,モデル化自体が困難であるとされる現実の複雑な

問題への適用は今後の課題とする.

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謝辞

本研究を遂行するにあたり,その機会を与えて下さり,終始懇切な御指導お

よび御鞭桂を賜 りました神戸大学工学部 藤井進教授に慎んで感謝の意を表すと

ともに,厚 く御礼申し上げます.研究途上において常 日頃懇切な御指導および

御教示を賜 りました神戸大学工学部 森田浩助教授,上原邦昭助教授,熊本悦子

助手に慎んで感謝を申し上げます.流通科学大学情報学部 三遷弘明教授には,

研究途上において懇切な御指導および御教示を賜 りました.慎んで感謝の意を

表します.スケジューリング理論に関して御教授および御討論を賜 りました神

戸大学工学部 玉置久講師には,深 く感謝の意を表 します.

神戸大学工学部 近藤敦技官には,研究環境を整備 して戴き,研究生活におい

て公私ともに助けて戴きました.心から感謝いたします.また,新天地での御

活躍をお祈 り致 します.研究生活で常日頃お世話になった藤井研究室の学生の

皆様に感謝いたします.特に,PauloGhinato氏,舛岡征浩君,河崎利信君,官

本哲也君,加えて金輪拓也君には関連研究の勉強に協力戴いたことを感謝いた

します.

123

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参 考 文 献

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125

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126 参 考 文 献

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128 参 考 文 献

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付録 A

獲得ルールの記述

以下に5.2節で獲得 したルールの条件部を記す.

(H)F//C max 問題

(H-1)XIF>o x6F-yes x7F-yes x8F-yes

(H-2)XIF>o x.F-No X6F-yes

(H-3)XIF≦o∧x7F-No∧X8F-yes

(H-4)XIF≦o∧x4F-No∧X7F=No

(H-5)XIF≦o x2F≦o∧x5F =yes∧x6F-No∧X7F=No

(H-6)X4F-No X7F=No

(Hl7)XIF>o x3F-yes x6F-yes x7F-yes x8F-yes

(HIS)XIF>o x3F-NoX.F-No XF=yes

(Hl9)XIF>o∧x4F-No∧X6F-ye5∧X7F-yes

(Hl10)XIF≦o∧x4F-yeβ∧x6F-No∧X8F-No

(H-ll)XIF>o∧xSF-yes∧x6F=yes∧x7F-yes∧x8F-yes

(H-12)x2F≦o∧x3F-yes∧xSF-yes∧x6F-yes

(H-13)XIF≦o∧x.5F-yes∧x6F-No∧X7F-yes∧x8F-ye・5

(H114)XIF≦o∧x6F-yes∧x7F-No

(H-15)XIF>o∧x.,F-No∧X6F-yes∧x8F-yes

(H-16)X3F-yes xSF-No X7F-No

(HI17)XIF>o∧x2F≦o∧x6F-yeLq・∧X7F-yes

129

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130 付録 A 獲得ルールの記述

(H-18)XIF≦o∧x4F=yes∧xSF-yes∧x7F-No

(H-19)XIF>o x4F-No X6F-yes

(H-20)XIF≦o∧x2F≦o∧x6F-No

(H-21)X4F-No∧XSF-No∧X6F-yes

(H-22)XIF>o∧x2F≦o∧x4F-No∧Xfl-yes

(H-23)XIF>o∧x2F>o∧x5F -No∧XGF-yes∧x8F-yes

(Hl24)XSF-No X6F -No X7F-yes x8F-No

(H-25)x2F≦o∧xSF-No∧X8F -No

(H-26)XIF_<o x6F-yes x7F-No X8F-yes

(H-27)x2F≦o∧x6F-No∧X7F-yes∧x8F-yes

(H128)XIF≦o∧x3F-yes∧x7F-No

(H-29)x2F≦o∧x6F-No

(H130)XIF>o∧x2F≦o

(I)F//∑Tt問題

(I-1)X9F>o xIFl>0

(I-2)X9F>o xIF2>0

(I-3)X9F>o xIF.>o

(Il4)XIF>o x9F>o

(115)XIF≦o∧x7F-No∧XIFl>0

(I-6)XIF>o x.F=yes x7F=yes x9F>o

(I-7)X7F-No X9F>o

(Ⅰ-8)X3F-yes∧x6F-yes∧x7F-No∧X8F-yes∧xIFl>0

(Ilo)X6F-No X7F=yes x9F>o

(1110)XIF≦o∧x2F>o∧x.,F-No∧X6F-No

(1111)XIF>o∧x2F≦o∧x6F-yes∧xIFl>0

(I-12)X7F-No^XIFl>0

(I-13)XIF>o x6F=yes x9F>o

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131

(Ⅰ-14)X.F>o∧x3F-No∧X7F-yeLq∧X8F-yes

(1115)X8F -ye・5∧_lr9F>o

(I-16)XIF>o x7F-ye・5 X,F>o

(1117)X3F-ye-q∧xIF2>0

(Ills)X6F-yes^xIF.>o xIF2>0

(I119)X6F -yes x7F-No XIFl>0

(Ⅰ-20)X5F-No∧X6F-No∧ーげ -No∧耳 -yF.-q

(I-22)XIF.>o^xIFl>0

(Ⅰ-23)XIF≦o∧x2F>o∧x7F=No∧XIFl>0

(I-24)X6F-No X7F-No X8F-No XIF.>o

(I-25)X3F-yes x6F -yes xF2>0

(Ⅰ-26)X4F-yes∧x7F-y eLq∧XIF2>0

(I-27)XIF≦o∧x6F-No∧XTF-yes∧x8F-yes∧xIFl>0

(Il28)X9F>o

(I-29)XIF>o x6F-yes xIF2>0

(I130)XIF≦o∧x7F-No∧X8F-yes∧x,F>o

(I-31)XSF-No X7F-No XIF.>o

(1132)XIF≦o∧x7F-No∧X,F>o

(Ⅰ-33)XIF≦o∧x7F-No∧X9F>o∧xIFl>0

(I134)X7F-yes x,F>o xIF.>o

(I-35)X6F-yes x,F>o

(Ⅰ-36)XSF-No∧X9F>o∧xIFo≦o

(J)F//∑Ct問題

(I-1)XIF≦o∧x2F>o∧x7F-No

(Jl2)XIF>o∧jl'.F-yes∧xf'-yes∧x8F-yeLq

(J-3)XIF>o∧x7F=yeLq∧XSF-yes

(J-4)x2F>o∧x.F≦o

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132 付録 A 獲得ルールの記述

(J-5)x2F>o x3F>o x5F=No X8F-yes

(J-6)XIF>o x2F>o x7F =No

(JI7)XIF≦o∧x2F>o∧x6F-yes∧x7F -No

(J-8)XIF≦o∧x2F>、o∧x3F=yes∧x5F-No

(J-9)x2F>o^x3F-yes x5F=No

(J-10)XIF>o x2F>o x6F=yes

(J-ll)XIF≦o∧x3F-yes∧x7F-No∧X8F-yes

(J-12)x2F>o x4F-No X5F =yes

(I-13)XSF-No X6F-yes x7F =No X8F=yes

(J-14)XIF≦o∧x2F>o∧x6F-No∧X7F-yes∧xBF-No

(J-15)XIF>o x2F>o xSF=No

(I-16)XIF>o∧x2F>o∧x6F=yeさ∧X7F=yes