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Kobe University Repository : Kernel タイトル Title 氷上古文書同好会の活動の経緯 : 結成から区有文書目録の完成まで 著者 Author(s) 伊藤, 導三 掲載誌・巻号・ページ Citation 歴史文化をめぐる地域連携協議会予稿集, 15地域歴史文化をめぐ <> : つながりを生み出す環境づくり:6-9 刊行日 Issue date 2017-01-29 資源タイプ Resource Type Presentation / 会議発表用資料 版区分 Resource Version publisher 権利 Rights DOI JaLCDOI URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81009728 PDF issue: 2020-01-18

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Kobe University Repository : Kernel

タイトルTit le 氷上古文書同好会の活動の経緯 : 結成から区有文書目録の完成まで

著者Author(s) 伊藤, 導三

掲載誌・巻号・ページCitat ion

歴史文化をめぐる地域連携協議会予稿集,第15回 地域歴史文化をめぐる<場> : つながりを生み出す環境づくり:6-9

刊行日Issue date 2017-01-29

資源タイプResource Type Presentat ion / 会議発表用資料

版区分Resource Version publisher

権利Rights

DOI

JaLCDOI

URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81009728

PDF issue: 2020-01-18

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氷上古文書同好会の活動の経緯(1)

氷上古文書同好会の活動の経緯 -結成から区有文書目録の完成まで- 氷上古文書同好会代表世話人 伊藤 導三

1.氷上古文書同好会について

(1) 古文書同好会の規約や要項は作っていない。従って明確な目的を定めていない。「氷

上区古文書同好会」という名前も、あったほうが便利というので作業途中から名づけた。

(2) 先駆的指導者が不在の中で、「氷上の歴史をまとめよう」という大雑把な思いで歴史の

素養も無いものが知り合いに声をかけ平成 26 年 5 月にスタート。

2.氷上というところ (1)氷上の位置

氷上は丹波市の中心部に位置

し、加古川の東側に開けた地域

で、面積は 2.2 平方キロメートル。

村の西側に北近畿豊岡自動車道、

川向うに丹波市役所、図書館、美

術館、中学校がある。村の真ん中

に横たわる岡のような山は約 25

年前に県の先行取得地となった。

(2)人口・世帯数等

人口 313 人、世帯数 106 戸(平

成 22 年度国勢調査)、集落の中

の基礎単位である隣保数は六つある。高齢化率は 31%(全国、県、丹波市平均より高い)。

村には公民館や集会所、2 か所のグラウンドがある。村の大半を農地が占めているが、高

齢化と後継者不足、獣害で農地の遊休化が進んでいる。村の中には、工場や店舗、運送

会社など 20 ほどの事業所が点在している。氷上は古くから銀山があったことや但馬へ抜

ける街道が通っていたことから旅籠や足袋屋や鍛冶屋などがあってにぎわっていた。

(3)氷上の地名の由来

「幸世村誌」に日本書紀の中で、「氷ノ川」(加古川)の上流にあるから「氷上」となったと

ある。また、平成 16 年まであった氷上郡は氷上から付けられたとも書かれている。

3.区有文書の整理 (1) 自治会の文化的事業に対する取組

①文化祭と区有文書の陳列

平成 14 年に公民館と書庫の建替えがあり、記

念事業として文化祭の実施と区有文書の展示

に取りんだ」。(区民に区有文書の関心を持っ

てもらえた)。

②最初の区有文書の保存は平成 26 年で、平成 14

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氷上古文書同好会の活動の経緯(2)

年の古文書の展示から相当の年月が過ぎた頃。痛みの激しかった明治 5 年頃の村の

地図の修繕と表装を行った。

(2) 区有文書整理のきっかけ(平成 26 年 5 月)

①自治会規約見直委員会の雑談がきっかけ

②中心メンバーになってもらえそうな区民への声掛

③最初の打合せ:5人のメンバーで作業手順を相

保管されている古文書の量、整理の進め方を決

める

【スケジュール】

古文書を年代別に分類 → 目録の作成

→ 象徴的な出来事を解読する

(3)古文書を年代別に分類する(平成 26 年 6 月)

平成 26 年 6 月から平成 27 年 1 月まで(途中8

月の豪雨災害で中断)延べ 6 日の作業

①史料 1 点 1 点を茶封筒に入れ、封筒にはその

文書の年代を書き、防虫剤を入れる。

②茶封筒に書かれた年代をパソコンへ入力

※古文書の中に興味のあるものがあれば思わず内容に見入ってしまい、封入作業に時

間がかかっていた。

あまりの多さに茫然とし、次の作業に戸惑い

→ この分類作業だけで疲れてきた

4.大学の支援(平成 27 年 1 月) (1)連携事業と取組んでいる集落の状況把握

(2)区有文書の確認と支援のスタート

①区有文書整理の支援のお願い

②文書の実地確認(平成 27 年 7 月)

③支援がスタート

目録作成の手順、保管方法の説明

(3)目録作成の開始(平成 27 年 11 月)

①目録一覧用紙への書き込み作業

前田先生の作業内容の丁寧な説明(今

日しなければならないこと等)もあり作業

効率がアップ

②作業に参加する区民が増えてきた。

※参加者が増えたのは何故?

↓考えられること...

ⅰ 身近な区有文書の整理作業

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氷上古文書同好会の活動の経緯(3)

ⅱ 毎回の作業の達成感が目に見える

ⅲ 村の歴史を知る古文書の解読会

③ 会の名前がないのは何となく不便ということで、とりあえず「氷上古文書同好会」と名付

けた。

5.取組成果の発表会(平成 28 年 11 月 6 日) 目録贈呈式と地域イベント (1) 区有文書展示と記念講演会の意義

① 村で歴史をテーマとした文化活動に取り組むの

ははじめてのこと。

② 取り組んできたことの成果が確かめられた。

③ 身近な氷上の歴史についての講演会と古文書

の展示で区民の情報共有が図れた。

④ 他の自治会等に対する PR になった。区有文書

整理の動機付けになったのではないか。

(2) 地域イベントの取組

・メンバーが講師になり、探索場所も普段目にしてい

・ところを選定し、探索ルート、資料づくりに取り組ん

だ。

・「地域の歴史」をテーマにした地元の手作り事業。

・今後につなげる事業が展開できた。

・PR 不足は今後の課題。

・事業のネーミングは慎重に。探索に物語性も大事。

6.今後の取組(区有文書を活かした村づくり)

「地域の歴史は地域の人にその情報が共有されてはじめて地域の歴史になる」

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氷上古文書同好会の活動の経緯(4)

区有文書の解読作業を継続し、大字誌の編纂につなげていく活動の展開。

(1) 定例研究会の開催と成果の発表

① 大字誌編纂で区有文書の解読会は欠かせない活動なので、定期的に区有文書の解

読会を開催する。

② 定期的な解読作業の発表会を持つことで、区民との情報共有を図り、活動への理解

を得ていく。

③ 区有文書の意味内容の理解を深めるために、三田や近隣地域との交流を進める。

(2) 氷上区広報紙の活用

氷上区公民館広報紙「ゆーとぴあ」(平成 5 年から発行)に解読作業や同好会の成果を掲

載することで、活動の公共性、透明性を確保し、あわせて大字誌編纂作業に対する区民の

関心を高めていく。

(3) 資(史)料の収集と保存活動

毎年の氷上区行政資料の保存、古老の体験聞き取り調査、区内の古文書所有調査と古

文書保存に対する啓発活動の展開。

(4) 子どもたちや保護者に対する取り組み

歴史探検や昔の料理体験、夏休みの自由研究の課題提供等子どもを対象とした事業の

実施。子どもたちやその保護者世代に文化活動に対する理解と関心を高めてもらう。子ども

たちにふるさとに対する愛着や誇りを高めてもらうこと。

7.おわりに 大字誌の編纂には「人」「お金」「環境醸成」が必要だと聞く。今回の区有文書の整理作業

の一つの特徴は、思いや考え方が様々な区民が「書庫の古文書を整理する」という作業そ

のものに興味を持って、ボランティア的に参加してきたことがあげられる。一般的によく聞く

のは、同好会のような組織をまず立ち上げて、賛同した会員で一連の作業に取り組むという

方法である。しかし、同好会といった組織にとらわれず、もっと気軽な関係の中で自由に参

加できる環境も有効な方法だと今回の作業を通じて改めて思った。こういった気軽な取り組

みも、周辺集落への「環境醸成」の契機につながるのではないかと期待している。今回の区

有文書の整理作業に取り組んで、毎回毎回の作業そのものがイベント的な感じで成長し、

進化していく様子を感じ、それまでイメージしていた古文書や歴史編纂作業に対する見方

が変わったような気がする。それは、事業の最初から最後までの参加を求めるのではなく、

興味のある内容があればいつでも、好きな時に参加できる。そういった会の運営ができれば

と考えている。この他、今回の取り組みで得られた様々な成果を今後の活動に生かせれば

と思っております。