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第 1章 Lp空間とLploc空間

本章においては, Lp関数と Lploc関数に対して, それぞれ Lp収束

と Lploc収束の意味における導関数と偏導関数の概念を定義し, その

基本性質について考察する. ここで, 1 ≤ p ≤ ∞であるとする. このような導関数と偏導関数の計算においては, 弱微分の概念や超関数の意味の微分の概念を必要としない.

このようなLp収束の概念に基づいた解析学の研究分野をLp解析学ということにする.

一般に, L1 関数に対しては, 弱微分可能な関数の方が L1 微分可能な関数より多い. しかし, Lp解析学においては, Lp微分可能な関数を主に考察する. その影響が現れるのは L1関数の場合だけである. しかし, L1関数に対しても L1微分可能な関数だけに限定して研究することは可能である.

Lp関数のフーリエ変換や Lploc関数のフーリエ変換などの研究は

Lp解析学の一つであると考えられる.

また, L2 関数と L2loc 関数の場合には, これらの結果はシュレー

ディンガー方程式の解の研究において基本的な役割を果たす.

特に, 微分方程式の超関数解を考察するときに真に超関数の概念が必要となるだけである. 微分方程式の Lp関数解あるいは Lp

loc関数解を考察することは Lp解析学において研究すれば十分である.

従来, Lp関数あるいはLploc関数の弱導関数あるいは弱偏導関数は

超関数としての微分法によって理解していた. 本書においては, 弱導関数あるいは弱偏導関数は Lpあるいは Lp

locの弱位相に関する微

1

分法によって理解し, これらと超関数の意味での導関数あるいは偏導関数を区別して考えた. その上で, 一定の条件の下に, Lpと Lp

loc

において, 強位相, 弱位相と超関数の位相による微分法に関して考えた 3種の導関数あるいは偏導関数が一致していること証明した. したがって, Lp 関数あるいは Lp

loc 関数の微分法においては, Lp 位相あるいは Lp

loc位相を用いて考えればよい. それ故に, この場合には超関数の理論を用いる必要はなくなった.

シュレーディンガー方程式の解の研究のために必要であるので,

以後本書において考える関数は特にことわりのない限り, 実変数の複素数値関数であるとする. 特別のことわりのない限り, 複素数値関数を略式に関数と呼ぶことにする.

数学の研究においては, このように考える問題の理論的枠組みを設定して考えると問題が鮮明に見えてくる. 設定した理論的枠組みにおさまらない数理現象に遭遇したときには, そこで改めて, そのような数理現象の理論的基盤となるような理論的基礎付けを考えればよい. そのような例は数学の歴史に数多く見られることである.

1.1 関数空間Lp

本節においては, 1 ≤ p ≤ ∞であるとするとき, 関数空間Lpの定義を与え, その基本性質について考察する.  d ≥ 1であるとするとき, Rdは d次元ユークリッド空間であるとする. E はRdのルベーグ可測集合であるとする. (E, ME , µ)をルベーグ測度空間であるとする.

このとき, 関数空間 Lp = Lp(E)を次のように定義する.

1 ≤ p ≤ ∞に対し, E上の複素数値可測関数 f(x)で,∫E|f(x)|pdx < ∞

2

を満たすもの全体のつくる集合を Lp = Lp(E) と表す. ただし,

f(x) = g(x), (a.e.x ∈ E)のとき, f と g を同一視する. 厳密にいうと, 関係 f(x) = g(x), (a.e.x ∈ E)は Lp(E) における同値関係になっていて, この同値関係に関する同値類の一つ一つを Lp(E)の元と考えるべきであるが, ここでは f(x)の一つ一つを Lp(E)の元とすることにして, 適宜上のような同一視を行うことにする.

Lp(Rd)を簡単に Lpと表すことがある.

定理 1.1.1  Lp(E)は複素数体C 上のベクトル空間である. 特に, f, g ∈ Lp(E)ならば, f + g ∈ Lp(E). また, f ∈ Lp(E), α ∈ C

ならば, αf ∈ Lp(E)が成り立つ.

このとき, f + gと αf の演算によって, Lp(E)はC上のベクトル空間の公理を満たす.

定理 1.1.2  f, g ∈ L2(E)に対し,

(f, g) =

∫Ef(x)g(x)dx

と定義するとき, (f, g)を f と g の内積であるという. このとき,

L2(E)は内積空間である. すなわち, f, g, f1, f2 ∈ L2(E), α ∈ C

に対し, 内積は次の (1)∼(4)を満たす:

(1)  (f, f) ≥ 0. 特に, (f, f) = 0となるのは f = 0, (a.e.x ∈ E)

のときに限って成り立つ.

(2)  (f, g) = (g, f).

(3)  (f1 + f2, g) = (f1, g) + (f2, g).

(4)  (αf, g) = α(f, g).

上の定理 1.1.2において,関数 f(x)は f(x)の複素共役関数を表す.

3

系 1.1.1  f, g, g1, g2 ∈ L2(E), α ∈ C であるとする. このとき, 次の (3)′, (4)′が成り立つ:

(3)′  (f, g1 + g2) = (f, g1) + (f, g2).

(4)′  (f, αg) = α(f, g).

ここで, αは αの複素共役を表す.

1 ≤ p < ∞に対し, f ∈ Lp(E)のノルムは, 関係式

∥f∥p ={ ∫

E|f(x)|pdx

}1/p

によって定義する. これを fのLpノルムであるという. ∥f∥pを ∥f∥と略記することがある.

L∞ = L∞(E)のノルムは, 関係式

∥f∥∞ = ess.supx∈E

|f(x)| = inf{α; |f(x)| ≤ α, (a.e. x ∈ E)}

によって定義する.

定理 1.1.3  1 ≤ p ≤ ∞に対し, Lp = Lp(E)はノルム空間である. Lp のノルムに対して, f, g ∈ Lp(E), α ∈ C であるとすると,

次の (1)∼ (3)が成り立つ:

(1)  ∥f∥ ≥ 0. 特に, f = 0は f = 0, (a.e.x ∈ E)のときに限って成り立つ.

(2)  ∥f + g∥ ≤ ∥f∥+ ∥g∥, (三角不等式).

(3)  ∥αf∥ = |α|∥f∥.

特に, L2ノルムは関係式

∥f∥2 =√

(f, f)

4

を満たす. このとき, 次の定理が成り立つ.

定理 1.1.4  f, g ∈ L2(E)ならば, 次の関係式 (1) ∼(3)が成り立つ:

(1)  |(f, g)| ≤ ∥f∥ ∥g∥, (シュワルツの不等式).

(2)  ∥f + g∥2 + ∥f − g∥2 = 2(∥f∥2 + ∥g∥2),(三角形の中線定理).

(3)  4(f, g) = ∥f + g∥2 − ∥f − g∥2 + i(∥f + ig∥2 − ∥f − ig∥2).

1 ≤ p ≤ ∞とするとき, f, g, h ∈ Lp(E)に対して,

ρ(f, g) = ∥g − f∥

とおいて, これを f と gの距離であるという.

定理 1.1.5  1 ≤ p ≤ ∞に対して, Lp(E)は距離空間である. すなわち, f, g, h ∈ Lp(E)に対し, 距離関数 ρ(f, g)は次の (1)∼(3)

を満たす:

(1)  ρ(f, g) ≥ 0. 特に, ρ(f, g) = 0となるのは f = g, (a.e.x ∈E) のときに限って成り立つ.

(2)  ρ(f, g) = ρ(g, f).

(3)  ρ(f, g) ≤ ρ(f, h) + ρ(h, g).

さらに, Lp(E)はこの距離に関して完備である. すなわち, Lp(E)

はノルム ∥ · ∥pに関して完備である. この意味で Lp(E)はバナッハ空間である. 以下にこのことを示す.

5

関数列 {fm} ⊂ Lp(E)が関数 f ∈ Lp(E)にノルム ∥ · ∥pに関して収束するとは,

limm→∞

∥fm − f∥p = 0

が成り立つことをいう. このとき, {fm}は f に p次平均収束するという. 一般に 2次平均収束のことを平均収束であるといい,

l.i.m.fm(x) = f(x)

と表す. 記号 l.i.m. は “limit in mean”と読む. これを “limit in the

mean”と読むこともある. 関数列 {fm} ⊂ Lp(E)がコーシー列であるとは

liml, m→∞

∥fl − fm∥p = 0

が成り立つことをいう.

定理 1.1.6  1 ≤ p ≤ ∞に対し, Lp(E)はノルム ∥ · ∥p に関して完備である. すなわち, Lp(E)の任意のコーシー列 {fm}は, あるLp(E) の元 f に収束する. したがって, Lp(E)はバナッハ空間である. 特に, L2(E)はヒルベルト空間である.

注意 1.1.1 上の完備性の証明において, ルベーグ積分の性質が基本的に重要である.

定理 1.1.7  1 ≤ p ≤ ∞であるとするとき, fm ∈ Lp(E), (m =

0, 1, 2, · · · )に対し, limm→∞

∥fm − f0∥p = 0ならば, {fm}の適当な部分列 {fm(k) : k = 1, 2, · · · }をとって, lim

k→∞fm(k)(x) = f0(x),

(a.e.x ∈ E)となるようにできる.

命題 1.1.1  µ(E) < ∞であるとすると, 1 ≤ p ≤ ∞に対し,

Lp(E) ⊂ L1(E)が成り立つ.

6

定理 1.1.8 実数 p, qは 1 < p, q < ∞であるとし, 条件

1

p+

1

q= 1

を満たすとする. E は Rd のルベーグ可測集合であるとするとき,

Lp = Lp(E)であるとする. このとき, 次の同型が成りたつ:

Lp = (Lq)′ = (Lp)′′.

定理 1.1.9  d ≥ 1, 1 < p < ∞であるとし, Lp = Lp(Rd)であるとする. D = D(Rd)はRd 上のコンパクト台の C∞関数全体のつくるTVSであるとする. このとき, Dは Lpにおいて稠密である.

定理 1.1.10  d ≥ 1, 1 < p < ∞であるとし, Lp = Lp(Rd)であるとする. Lpの関数列を {fn}であるとし, f ∈ Lpであるとする.

このとき, 次の (1), (2), (3)は同値である:

(1)  Lpのノルムに関して fn → f が成り立つ.

(2)  Lpの弱位相に関して fn → f が成り立つ.

(3) D′の位相をLpに制限した位相に関して fn → f が成り立つ.

1.2 関数空間Lploc

本節においては, 一般の関数空間 Lplocについて考察する. ただし,

1 ≤ p ≤ ∞であるとする.

d ≥ 1であるとする. 集合Rdは d次元ユークリッド空間であるとする.

7

1 ≤ p < ∞であるとするとき, Rdの任意のコンパクトK に対して, 条件 ∫

K|f(x)|pdx < ∞

を満たす複素数値可測関数 fは局所p乗可積分であるという. Rd上の局所 p乗可積分関数全体のつくる集合を Lp

loc = Lploc(R

d)と表す.

集合 Lplocは複素ベクトル空間になる.

1 ≤ p < ∞であるとき, f ∈ Lploc であるための必要十分条件は,

任意のR > 0に対して,∫|r|≤R

|f(x)|pdx < ∞

となることである. 特に, L1locの元を局所可積分関数であるという.

1 ≤ p < ∞であるとき, Lplocの関数列 {fm}が f ∈ Lp

loc に収束するとは, Rdの任意のコンパクト集合K に対して,∫

K|fm(x)− f(x)|pdx → 0, (m → ∞)

が成り立つことであると定義する. すなわち, Lplocにおける位相は

各コンパクト集合上Lp収束の位相である. これによって, Lplocは位

相ベクトル空間になる.

特に, L∞loc = L∞

loc(Rd) はRdの任意のコンパクト集合K に対し,

条件∥f∥∞, K = ess.sup

x∈K|f(x)|

= inf{α; |f(x)| ≤ α, (a.e. x ∈ K)} < ∞

を満たす関数全体のつくる位相ベクトル空間である. L∞locのセミノ

ルムを∥f∥∞, K = ess.sup

x∈K|f(x)|

8

によって定義するとき, L∞locの位相はセミノルムの系

{∥ · ∥∞, K ; K はRdのコンパクト集合 }

によって定義する.

L∞loc関数の列 {fm}が f ∈ L∞

locに収束するとは, Rd の任意のコンパクト集合K に対して,

∥fm − f∥∞, K → 0, (m → ∞)

が成り立つことであると定義する. すなわち, L∞locの位相は各コン

パクト集合上 L∞収束の位相である. これによって, K∞locは位相ベ

クトル空間になる.

このとき, 1 ≤ p ≤ ∞に対し, 包含関係

Lploc ⊂ L1

loc

が成り立つ.

1 ≤ p ≤ ∞であるとき, Lpc は Lpの関数でコンパクト台をもつも

の全体のつくる TVSであるとする. このとき, Lploc は FS∗ 空間で

あって, Lpc はDFS∗空間であるから, Lp

locと Lpc は反射的である.

したがって, 次の定理が成り立つ.

定理 1.2.1 実数 p, qは条件

1 ≤ p ≤ ∞, 1 ≤ q ≤ ∞,1

p+

1

q= 1

を満たすとする. このとき, 次の同型 (1), (2)が成り立つ:

(1)  Lploc = (Lq

c)′ = (Lploc)

′′.

(2)  Lqc = (Lp)′ = (Lq

c)′′.

9

定理 1.2.2  1 ≤ p ≤ ∞であるとするとき, 関数空間Dは Lpc に

おいて稠密である.

定理 1.2.3  1 ≤ p ≤ ∞であるとするとき, Lplocの関数列 {fm}

と Lplocの関数 f に対し, 次の (1)∼(3)は同値である:

(1)  Lplocの強位相に関して, fm → f が成り立つ.

(2)  Lplocの弱位相に関して, fm → f が成り立つ.

(3)  D′ の位相を Lploc に制限した位相に関して fm → f が成り

立つ.

 

1.3 Lp関数の微分法

1.3.1  Lp微分可能性

本項においては, Lp微分可能性の概念について考察する.

開区間 (−∞, ∞)における p乗可積分関数全体のつくる関数空間を Lp = Lp(−∞, ∞)と表す. ただし, 1 ≤ p ≤ ∞であるとする.

このとき, Lp微分可能性の概念の定義を与える. すなわち, Lp関数の微分法の概念を Lpノルムによる収束の意味で考える.

このとき, 次の定義 1.3.1を与える.

定義 1.3.1(Lp 微分可能性) 関数 y = f(x)は開区間 (−∞, ∞)

において定義されたLp関数であるとする. このとき, 独立変数 xの増分∆xにともなう関数 y = f(x)の増分∆yを

∆y = f(x+∆x)− f(x)

10

= A(x)∆x+ ε(x, ∆x)∆x

と表す. ここで, A(x)は,xのみの関数で,∆xに依存しないとする. ε = ε(x, ∆x)は xと∆xに依存する関数である.

このとき, 関数 y = f(x)が開区間 (−∞, ∞)においてLp収束の意味で微分可能であるとは,開区間 (−∞, ∞)において, Lp収束の意味で条件

∆x −→ 0ならば, ε(x, ∆x) −→ 0

が成り立つことをいう.すなわち, これは

lim∆x→0

∥ε(x, ∆x)∥ = 0

が成り立つことと同値である.

このとき, ε(x, 0) = 0, (x ∈ (−∞, ∞))と定義を拡張することにする.

ここで, Lp収束の意味で微分可能であることを, 簡単に, Lp微分可能であるという.

一般の開区間 (a, b)における p乗可積分関数全体のつくる関数空間を Lp = Lp(a, b)と表す.

このとき, 任意の f ∈ Lp(a, b)に対し,

f̃(x) =

f(x), (x ∈ (a, b)),

0, (x /∈ (a, b))

とおくとき, f̃(x) ∈ Lp(−∞, ∞)である. このとき, f(x) ∈ Lp(a, b)

に f̃(x) ∈ Lp(−∞, ∞)を対応させる対応は 1対 1であるから, これによって L2(a, b)を L2(−∞, ∞)の部分空間と考えることができる.

したがって, Lp(a, b)に属する関数 f がLp 微分可能であるとは,

関数 f を Lp(−∞, ∞) に属する関数と考えて Lp微分可能であることと定義する.

11

いま, 関数 y = f(x)は開区間 (a, b)において Lp 微分可能であるとする.

このとき, 定義 1.3.1の条件より, Lp収束の意味において, 極限

lim∆x→0

∆y

∆x= lim

∆x→0

f(x+∆x)− f(x)

∆x= f ′(x)

が存在する. この極限 f ′(x)を y = f(x)のLp導関数であるという.

Lpの完備性によって, f ′(x)も Lp(a, b)の元である.

Lp収束の性質より, f ′(x)は (a, b)においてほとんどいたるところ定められた実数値をもっている.

1.3.2  Lp導関数の基本性質

D = D(R)はR上のコンパクト台をもつC∞関数全体のつくる関数空間であるとする. Lp = Lp(R)であるとする. ただし, 1 ≤ p < ∞であるとする. ここで, Lp関数の弱導関数の定義を次のように与える. 弱導関数という概念は偏微分方程式論における弱解の概念と同様の概念である.

定義 1.3.2  f(x) ∈ Lpであるとする. このとき, f(x)の弱導関数 w-f ′(x) ∈ L1

locは条件

(w-f ′, φ) = −(f, φ′), (φ ∈ D)

を満たす関数であると定義する.

このとき, 次の定理が成り立つ.

定理 1.3.1  1 ≤ p < ∞であるとし, f(x) ∈ Lpであるとする.

f(x)がLp微分可能であれば, f(x)は弱微分可能で, そのLp収束の

12

意味における導関数 f ′(x)は弱導関数 w-f ′(x)と一致する. すなわち, 等式

f ′(x) = w-f ′(x)

あるいは, 等式

(f ′, φ) = (w-f ′, φ), (φ ∈ D)

が成り立つ.

証明 条件により, Lp収束の意味で,

lim∆x→0

f(x+∆x)− f(x)

∆x= f ′(x)

が成り立つ. したがって, 任意の φ ∈ D に対し, 次の等式が成り立つ:

(f ′(x), φ(x)) =(

lim∆x→0

f(x+∆x)− f(x)

∆x, φ(x)

)= lim

∆x→0

( f(x+∆x)− f(x)

∆x, φ(x)

)= lim

∆x→0

1

∆x

{(f(x+∆x), φ(x)

)−

(f(x), φ(x)

)}= lim

∆x→0

1

∆x

{(f(x), φ(x−∆x)

)−

(f(x), φ(x)

)}= − lim

∆x→0

1

∆x

(f(x),

1

−∆x

(φ(x−∆x)− φ(x)

))= −

(f(x), lim

∆x→0

φ(x−∆x)− φ(x)

−∆x

)= −

(f(x), φ′(x)

)=(w-f ′(x), φ(x)

).

ゆえに, 等式f ′(x) = w-f ′(x)

13

が成り立つ. //

このとき, f(x) ∈ Lpの弱導関数 w-f ′(x)は Lp関数である.

定理 1.3.2  1 < p < ∞であるとし, f(x) ∈ Lp であるとする.

f(x)の弱導関数 w-f ′(x)が存在して, w-f ′(x) ∈ Lp であるならば,

f(x)はLp微分可能であって, f(x)のLp 収束の意味の導関数 f ′(x)

に対して, w-f ′(x) = f ′(x)が成り立つ.

定理 1.3.3  1 ≤ p < ∞であるとし, 関数列 fn(x) ∈ Lp, (n =

1, 2, 3, · · · )に対し, f, g ∈ Lpが存在して

fn −→ f, (n −→ ∞),

f ′n −→ g, (n −→ ∞)

であるとすると, f ′ ∈ Lpが存在して

f ′ = g

が成り立つ. すなわち, 微分作用素d

dxは閉作用素である.

定理 1.1.10によって, 1 < p < ∞であるとき, Lp微分可能性, Lp

弱微分可能性と超関数の意味の微分可能性は一致することがわかる.

さらに, このとき, Lp関数の Lp導関数, Lp弱導関数と超関数の意味の導関数は一致する.

1.3.3  Lp微分可能性

Rdにおけるp乗可積分関数全体のつくる関数空間をLp = Lp(Rd)

と表す. ここで, d ≥ 2, 1 ≤ p < ∞であるとする.

14

このとき, Lp微分可能性の概念の定義を与える. すなわち, Lpに属する関数の微分法の概念をLpノルムによる収束の意味で考える.このとき, 次の定義 1.3.3を与える.

定義 1.3.3(Rd微分可能性) 関数 y = f(x)はRdにおいて定義された Lp関数であるとする.

このとき, 独立変数 xの増分∆xにともなう関数 y = f(x) の増分∆yを

∆y = f(x+∆x)− f(x)

=

d∑i=1

Ai(x)∆xi + ε(x, ∆x)ρ

と表す. ここで, Ai(x), (i = 1, 2, · · · , d)は, x のみの関数で∆x

に依存しないとする. ε = ε(x,∆x)は xと ∆xに依存する関数である.

このとき, 関数 y = f(x)がRdにおいて, Lp収束の意味で微分可能であるとは, Rdにおいて, Lp収束の意味で条件

∆x −→ 0ならば, ε(x, ∆x) −→ 0

が成り立つことをいう.

すなわち, これは

lim∆x→0

∥ε(x, ∆x)∥p = 0

が成り立つことと同値である.

このとき, ε(x, 0) = 0, (x ∈ Rd)と定義を拡張することにする.

ここで, Lp収束の意味で微分可能であることを, 簡単に, Lp微分可能であるという.

いま, Rdの一般の領域Dにおける p乗可積分関数全体のつくる関数空間を Lp = Lp(D)と表す. 1変数関数の場合と同様にして,

15

Lp(D)は Lp(Rd)の部分空間であると考えることができる. したがって, Lp(D)に属する関数 f がLp 微分可能であるとは, 関数 f がLp(Rd)に属する関数と考えて Lp微分可能であることと定義する.

1.3.4  Lp偏導関数の基本性質

d ≥ 2, 1 ≤ p < ∞であるとする.

いま, f(x) ∈ Lp = Lp(Rd)が Lp 微分可能であるとすると, 1 ≤j ≤ dに対し, 極限

∂y

∂xj= lim

h→0

(τ−hejf)(x)− f(x)

h

がLp位相の意味で存在する. ただし, 1 ≤ j ≤ dに対し, {e1, e2, · · · ,ed}は l2(d)の標準基底であるとし, τy, (y ∈ Rd)は平行移動作用素を表す.

このとき, 偏導関数∂y

∂xj, (1 ≤ j ≤ d)も Lp関数である. これを,

Lp偏導関数であるという. このとき,∂y

∂xj, (1 ≤ j ≤ d)はほとんど

いたるところ実数値が定まっている.

Lp関数 y = f(x)の Lp偏導関数が存在するとき, y = f(x)はLp

偏微分可能であるという. したがって, f(x) ∈ Lpが Lp微分可能であれば, f(x)は 1 ≤ j ≤ dに対し, 各 xj に関して Lp偏微分可能である.

このとき, f(x)がLp微分可能であれば, f(x)のLp収束の意味の偏導関数は弱偏導関数であると考えられる. しかし, その逆の主張の判別は容易ではない.

ここで, 弱偏導関数の定義を次のように与える.

16

定義 1.3.4 いま, 1 ≤ p < ∞, 1 ≤ j ≤ dであるとし, f(x) ∈ Lp

であるとする. このとき, f(x)の弱偏導関数 w-∂f

∂xj∈ L1

locは, 条件

(w-

∂f

∂xj, φ

)= −

(f,

∂φ

∂xj

), (φ ∈ D)

を満たす関数であると定義する.

このとき, 次の定理が成り立つ.

定理 1.3.4 いま, 1 ≤ p < ∞, 1 ≤ j ≤ dであるとし, f(x) ∈ Lp

であるとする. f(x)がLp偏微分可能であれば, f(x)は弱偏微分可能

で, その Lp収束の意味における偏導関数∂f

∂xjは弱偏導関数 w-

∂f

∂xjと一致する. すなわち, 等式

∂f

∂xj= w-

∂f

∂xj, (1 ≤ j ≤ d)

あるいは, 等式( ∂f

∂xj, φ

)=(w-

∂f

∂xj, φ

), (φ ∈ D, 1 ≤ j ≤ d)

が成り立つ.

このとき, f(x) ∈ Lpの弱偏導関数 w-∂f

∂xj, (1 ≤ j ≤ d)は Lp関

数である. この事実は f(x) ∈ Lpに対して無条件に成り立つ性質ではない.

定理 1.3.5 いま, 1 < p < ∞, 1 ≤ j ≤ d であるとし, f(x) ∈ Lp

であるとする. このとき, f(x)の弱偏導関数w-∂f

∂xjが存在して, w-

∂f

∂xj∈ Lpであるならば, f(x)はLp偏微分可能であって, f(x)のLp

17

収束の意味の偏導関数∂f

∂xjに対して,

w-∂f

∂xj=

∂f

∂xj, (1 ≤ j ≤ d)

が成り立つ.

次に, 偏微分の順序交換の定理を証明する.

定理 1.3.6  1 ≤ p < ∞であるとし, f(x) ∈ Lpであるとする.

1 ≤ i, j ≤ d, (i ̸= j)に対し, Lp 収束の意味において∂2f

∂xi∂xjと

∂2f

∂xj∂xiが存在すれば, 等式

∂2f

∂xi∂xj=

∂2f

∂xj∂xi

が成り立つ.

証明 定理の条件のもとにおいて, 関数 f(x)に対し, 2階の弱偏

導関数 w-∂2f

∂xi∂xjと w-

∂2f

∂xj∂xiが存在して,

∂2f

∂xi∂xj= w-

∂2f

∂xj∂xi,

∂2f

∂xi∂xj= w-

∂2f

∂xj∂xi

が成り立つ. このとき,

w-∂2f

∂xi∂xj= w-

∂2f

∂xj∂xi

が成り立つから,∂2f

∂xi∂xj=

∂2f

∂xj∂xi

18

が成り立つ. //

定理 1.3.7   1 ≤ p < ∞ であるとするとき, 関数列 fn(x) ∈Lp, (n = 1, 2, 3, · · · )に対し, f, g ∈ Lpが存在して

fn −→ f, (n −→ ∞),

∂fn∂xj

−→ g, (n −→ ∞)

であるとすると,∂f

∂xj∈ Lp が存在して

∂f

∂xj= g

が成り立つ. ここで, 1 ≤ j ≤ dとする. すなわち, 偏微分作用素∂

∂xjは閉作用素である.

定理 1.1.10によって, 1 < p < ∞であるとき, Lp偏微分可能性,

Lp 弱偏微分可能性と超関数の意味の偏微分可能性は一致することがわかる. このことは, Lp微分可能性, Lp弱微分可能性と超関数の意味の微分可能性についても成り立つ.

さらに, 1 < p < ∞であるとき, Lp関数の Lp偏導関数, Lp弱偏導関数と超関数の意味の偏導関数は一致する.

1.4 Lploc関数の微分法

1.4.1  Lploc微分可能性

本項においては Lploc 微分可能性の概念について考察する. 開区

間 (a, b)上定義された局所 p乗可積分関数全体のつくる関数空間をLploc = Lp

loc(a, b) と表す. ただし, 1 ≤ p ≤ ∞であるとする.

19

このとき, 開区間 (a, b)上定義された局所 p乗可積分関数に対して Lp

loc空間の収束の意味での微分可能性について考察する.

このとき, 次の定義 1.4.1を与える.

定義 1.4.1(Lploc 微分可能性) 関数 y = f(x)は開区間 (a, b)上

定義された局所 p乗可積分関数であるとする. ただし, 1 ≤ p ≤ ∞であるとする.

このとき, 独立変数 xの増分∆xにともなう関数 y = f(x)の増分∆yを

∆y = f(x+∆x)− f(x)

= A(x)∆x+ ε(x, ∆x)∆x

とおく. ここで, A(x)は, xのみの関数で, ∆xに依存しないとする.

ε = ε(x, ∆x)は xと∆xに依存する関数である.

このとき, 関数 y = f(x)が開区間 (a, b)において, Lploc収束の意

味で微分可能であるとは, 開区間 (a, b)において, Lploc収束の意味

で条件∆x −→ 0ならば, ε(x, ∆x) −→ 0

が成り立つことをいう.

すなわち, これは, a < c < d < bなる任意の実数の対 c, dに対し

lim∆x→0

q[c, d](ε(x, ∆x)) = lim∆x→0

( ∫ d

c|ε(x, ∆x)|pdx

)1/p= 0

が成り立つことと同値である.

このとき,ε(x, 0) = 0, (x ∈ (a, b))と定義を拡張することにする.ここで, Lp

loc収束の意味で微分可能であることを, 略式に, Lploc微

分可能であるという.

20

いま, 関数 y = f(x)は開区間 (a, b)において Lploc 微分可能であ

るとする. このとき, 定義 1.4.1の条件より, 各 x ∈ (a, b)に対しLploc収束の意味において, 極限

lim∆x→0

∆y

∆x= lim

∆x→0

f(x+∆x)− f(x)

∆x= f ′(x)

が存在する. このとき, この極限 f ′(x)を y = f(x)のLploc導関数で

あるという. Lplocの完備性によって, f ′(x)もLp

loc(a, b)の元である.

Lploc収束の性質より, f ′(x)は (a, b)においてほとんどいたるとこ

ろ定められた実数値をもっている.

1.4.2  Lploc導関数の性質

D = D(R)はR上のコンパクト台をもつ C∞関数全体のつくる関数空間であるとする. さらに, Lp

loc = Lploc(R) であるとする. た

だし, 1 ≤ p ≤ ∞であるとする.

ここで, 弱導関数の定義を次のように与える.

定義 1.4.2  1 ≤ p ≤ ∞であるとし, f(x) ∈ Lplocであるとする.

このとき, f(x)の弱導関数 w-f ′(x) ∈ L1locは条件

(w-f ′, φ) = −(f, φ′), (φ ∈ D)

を満たす関数であると定義する.

このとき, 次の定理が成り立つ.

定理 1.4.1  1 ≤ p ≤ ∞であるとし, f(x) ∈ Lplocであるとする.

f(x)が Lploc 微分可能であれば, f(x)は弱微分可能で, その Lp

loc 収

21

束の意味における導関数 f ′(x)は弱導関数 w-f ′(x)と一致する. すなわち, 等式

f ′(x) = w-f ′(x)

あるいは, 等式

(f ′, φ) = (w-f ′, φ), (φ ∈ D)

が成り立つ.

このとき, f(x) ∈ Lplocの弱導関数 w-f ′(x)は Lp

loc関数である.

定理 1.4.2  1 ≤ p ≤ ∞であるとし, f(x) ∈ Lplocであるとする.

  f(x)の弱導関数w-f ′(x)が存在して, w-f ′(x) ∈ Lplocならば, f(x)

はLploc微分可能であって, f(x)のLp

loc収束の意味の導関数 f ′(x) に対して, w-f ′(x) = f ′(x) が成り立つ.

定理 1.4.3   1 ≤ p ≤ ∞ であるとするとき, 関数列 fn(x) ∈Lploc, (n = 1, 2, 3, · · · ) に対し, f, g ∈ Lp

locが存在して,

fn −→ f, (n −→ ∞),

f ′n −→ g, (n −→ ∞)

であるとすると, f ′ ∈ Lplocが存在して,

f ′ = g

が成り立つ. すなわち, 微分作用素d

dxは閉作用素である.

定理 1.2.3によって, 1 ≤ p ≤ ∞であるとき, Lploc微分可能性, Lp

loc

弱微分可能性と超関数の意味の微分可能性は一致することがわかる.

したがって, このとき, Lploc 関数の Lp

loc 導関数, Lploc 弱導関数と超

関数の意味の導関数は一致する

22

関数の微分可能性や導関数の計算は局所的な概念と考えられる.

特に, 包含関係 L1 ⊂ L1locが成り立っているから, L1関数の導関数

の計算は L1loc関数として計算すればよいことを注意する. したがっ

て, L1関数の弱導関数は, その L1loc導関数が L1関数になっている

ことと考えればよい.

1.4.3  Lplocの意味での微分可能性

DはRdの一般の領域であるとする. ただし, d ≥ 2であるとする.

領域 D上定義された局所 p乗可積分関数全体のつくる関数空間を Lp

loc = Lploc(D)と表す. ただし, 1 ≤ p ≤ ∞であるとする.

このとき, 領域D上定義された局所 p乗可積分関数に対して, Lploc

収束の意味での微分可能性について考察する.

このとき, 次の定義 1.4.4を与える.

定義 1.4.4(Lploc 微分可能性) 関数 y = f(x)は領域D上定義さ

れた局所 p乗可積分関数であるとする. ただし, 1 ≤ p ≤ ∞であるとする.

このとき, 独立変数 xの増分∆xにともなう関数 y = f(x) の増分∆yを

∆y = f(x+∆x)− f(x)

=d∑

i=1

Ai(x)∆xi + ε(x, ∆x)ρ

と表す. ここで, Ai(x), (i = 1, 2, · · · , d)は, x のみの関数で∆x

に依存しないとする. ε = ε(x, ∆x)は xと∆x に依存する関数である.

このとき, 関数 y = f(x)が領域DにおいてLploc収束の意味で微

分可能であるとは, 領域Dにおいて, Lploc収束の意味で, 条件

∆x −→ 0ならば, ε(x, ∆x) −→ 0

23

が成り立つことをいう.すなわち,1 ≤ p < ∞のとき, これは, 領域Dの任意のコンパクト部分集合K に対し,

lim∆x→0

qK(ε(x, ∆x)) = lim∆x→0

( ∫K|ε(x, ∆x)|pdx

)1/p= 0

が成り立つことと同値である.p = ∞のとき, L∞

loc(D)のセミノルムの系に関して同様の性質が成り立つ.

このとき,ε(x, 0) = 0, (x ∈ D)と定義を拡張することにする.ここで, Lp

loc収束の意味で微分可能であることを, 略式に, Lploc微

分可能であるという.

1.4.4  Lploc遍導関数の性質

Rdの一般の領域Dに対し, Lploc = Lp

loc(D)であるとする. ただし, d ≥ 2, 1 ≤ p ≤ ∞であるとする.

いま, f(x) ∈ Lplocが Lp

loc微分可能であるとすると, 1 ≤ j ≤ dに対し, 極限

∂y

∂xj= lim

h→0

(τ−hejf)(x)− f(x)

h

が Lploc収束の意味で存在する. ただし, 1 ≤ j ≤ dに対し, {e1, e2,

· · · , ed}は l2(d)の標準基底であるとし, τy, (y ∈ Rd)は平行移動作用素を表す.

このとき, 偏導関数∂y

∂xj, (1 ≤ j ≤ d)もLp

loc 関数である. これを,

Lploc偏導関数であるという. このとき,

∂y

∂xj, (1 ≤ j ≤ d)はほとん

どいたるところ実数値が定まっている.

24

ここで, 弱偏導関数の定義を次のように与える.

定義1.4.5 いま, 1 ≤ p ≤ ∞, 1 ≤ j ≤ dであるとし, f(x) ∈ Lploc

であるとする. このとき, f(x)の弱偏導関数 w-∂f

∂xj∈ L1

locは条件

(w-

∂f

∂xj, φ

)= −

(f,

∂φ

∂xj

), (φ ∈ D)

を満たす関数であると定義する.

このとき, 次の定理が成り立つ.

定理1.4.4 いま, 1 ≤ p ≤ ∞, 1 ≤ j ≤ dであるとし, f(x) ∈ Lploc

であるとする. f(x)が Lploc 偏微分可能であれば, f(x)は弱偏微分

可能で, その Lploc 収束の意味における偏導関数

∂f

∂xjは弱偏導関数

w-∂f

∂xjと一致する. すなわち, 等式

∂f

∂xj= w-

∂f

∂xj, (1 ≤ j ≤ d)

あるいは, 等式( ∂f

∂xj, φ

)=(w-

∂f

∂xj, φ

), (φ ∈ D, 1 ≤ j ≤ d)

が成り立つ.

このとき, f(x) ∈ Lploc の弱偏導関数 w-

∂f

∂xjは Lp

loc 関数である

(1 ≤ j ≤ d). この事実は f(x) ∈ Lplocに対して無条件に成り立つ性

質ではない.

定理 1.4.5 いま, 1 ≤ p ≤ ∞であるとし, f(x) ∈ Lploc である

とする. このとき, 1 ≤ j ≤ dに対し, f(x)の弱偏導関数 w-∂f

∂xjが

25

存在して, w-∂f

∂xj∈ Lp

locならば, f(x)は Lploc 偏微分可能であって,

f(x)の Lploc収束の意味の偏導関数

∂f

∂xjに対して,

w-∂f

∂xj=

∂f

∂xj, (1 ≤ j ≤ d)

が成り立つ.

さらに, 次の偏微分の順序交換の定理が成り立つ.

定理 1.4.6  1 ≤ p ≤ ∞であるとし, f(x) ∈ Lplocであるとする.

1 ≤ i, j ≤ d, (i ̸= j)に対し, Lploc収束の意味において

∂2f

∂xi∂xjと

∂2f

∂xj∂xiが存在すれば, 等式

∂2f

∂xi∂xj=

∂2f

∂xj∂xi

が成り立つ.

証明 定理の条件のもとにおいて, 関数 f(x)に対し, 2階の弱偏

導関数 w-∂2f

∂xi∂xjと w-

∂2f

∂xj∂xiが存在して,

∂2f

∂xi∂xj= w-

∂2f

∂xj∂xi,

∂2f

∂xi∂xj= w-

∂2f

∂xj∂xi

が成り立つ. このとき,

w-∂2f

∂xi∂xj= w-

∂2f

∂xj∂xi

26

が成り立つから,∂2f

∂xi∂xj=

∂2f

∂xj∂xi

が成り立つ. //

定理 1.4.7   1 ≤ p ≤ ∞ であるとするとき, 関数列 fn(x) ∈Lploc, (n = 1, 2, 3, · · · )に対し, f, g ∈ Lp

locが存在して

fn −→ f, (n −→ ∞),

∂fn∂xj

−→ g, (n −→ ∞)

であるとすると,∂f

∂xj∈ Lp

locが存在して

∂f

∂xj= g

が成り立つ. ここで, 1 ≤ j ≤ dであるとする. すなわち, 偏微分作

用素∂

∂xjは閉作用素である.

定理 1.2.3によって, 1 ≤ p ≤ ∞であるとき, Lploc偏微分可能性,

Lploc弱偏微分可能性と超関数の意味の偏微分可能性は一致することがわかる. このことは, Lp

loc微分可能性, Lploc弱微分可能性と超関数

の意味の微分可能性についても成り立つ.

さらに, このとき, Lploc関数のLp

loc偏導関数, Lploc弱偏導関数と超

関数の意味の偏導関数は一致する.

包含関係 L1 ⊂ L1locが成り立っているから, L1関数の弱偏導関数

は, その L1loc偏導関数が L1関数になっていることと考えればよい.

27