linked dataによる地域情報を活用した学術会議支援システム

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Linked Dataによる地域情報を活用した学術会議支援システム 松村 冬子 1 加藤 文彦 2 大向 一輝 3,4 武田 英明 3,4 1 青山学院大学  2 情報・システム研究機構  3 国立情報学研究所  4 総合研究大学院大学

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Page 1: Linked Dataによる地域情報を活用した学術会議支援システム

Linked Dataによる地域情報を活用した学術会議支援システム

松村 冬子1 加藤 文彦2 大向 一輝3,4 武田 英明3,4

1青山学院大学  2情報・システム研究機構  3国立情報学研究所 4総合研究大学院大学

Page 2: Linked Dataによる地域情報を活用した学術会議支援システム

はじめに

学術会議における目的‣ 参加者

- オフラインで有意義な議論を行いたい,研究トレンドを知りたい(研究面)- 空いた時間に初めて訪れる国・都市の文化にも触れてみたい(観光面)

‣ 開催地- 訪れる参加者に会場だけでなく周辺の観光も楽しんでほしい

本発表の報告内容: Linked Dataを用いた学術会議支援

Page 3: Linked Dataによる地域情報を活用した学術会議支援システム

学術会議におけるデータ提供

学術会議に関する情報‣ 現状:一般的にWebサイト上でHTMLやPDFで公開‣ 内容:スケジュール,場所,論文募集,プログラムなど  視覚的に見やすいが,二次処理する際にデータを加工するコストがかかる

機械可読な学術会議のデータ:Semantic Web Dog Food [Moller 2007]

‣ 内容:WWW,ISWC,ESWCなど31件の国際会議,194件のWorkshopのデータ‣ 形式:Resource Description Framework (RDF)

‣ 構造:Semantic Web Conference ontology (SWC)

‣ 使用例:Metadata Challenge in WWW(アプリケーション開発コンテスト)    会議情報閲覧アプリケーション in ISWC2012

Page 4: Linked Dataによる地域情報を活用した学術会議支援システム

Semantic Web Conference ontology (SWC)

人間が見やすい形式で公開 + α(データセット公開)• 参加者向けのアプリケーション開発• 過去の会議や他会議のデータとの比較分析• 異なる種類のデータとの連携活用

用意されているクラスの種類‣ Event‣ Document‣ Place‣ Role

Page 5: Linked Dataによる地域情報を活用した学術会議支援システム

学術会議と地域情報の関係

学術会議参加者は,開催地ならではの文化にも期待(食事,芸術,景勝地など)

‣ 想定しているよりも早く飲食店が閉店してしまい,希望の夕食を楽しめない‣ 空き時間に名所を訪れたが会場への帰り方が分からない などの状況も…

学術会議における観光案内‣ 大型の会議の場合には,開催地の自治体や観光協会に情報提供を依頼することも

- 紙媒体の広報誌,観光マップなどが多い- 電子データは観光スポットごとに,解説文と写真1枚程度にとどまる

‣ イベントごとのモバイルサイトやスマートフォンアプリの開発が増加

油断していると…

開発にすぐ利用できる二次処理が容易な形式での公開が望ましい

Page 6: Linked Dataによる地域情報を活用した学術会議支援システム

地域情報公開の現状

オープンデータ:地域情報の公開,共有,再利用の促進例)データシティ鯖江(福井県鯖江市)‣ 日本初の行政によるオープンデータの取り組み‣ LODによるオープンデータ:RDF形式でも公開(XMLやWeb APIでも公開)

- ExcelデータをLinkDataで変換- LODACプロジェクトのSPARQL Endpointから利用可能- その他にXMLやWeb APIでも公開

‣ 多様な種類のデータ公共施設, 避難所,AED, トイレ, WiFi設置場所,文化財,駐車場,議員名簿,古地図,消火栓,ごみ収集,バスの位置,人口など

http://lod.ac/sabae/sparql

開発者:開発の自由度が高まる,データを用意し加工する労力が減る地域 :観光の活性化につながる,データの価値や可能性が分かる

Page 7: Linked Dataによる地域情報を活用した学術会議支援システム

MMapp: 会議情報と地域情報の融合による学術会議支援システム

‣ 対象:学術会議の参加者およびその同行者‣ 目的:学会期間中の滞在の支援 + 学会におけるユーザの体験を共有する場‣ 実装:スマートフォン向けWebアプリケーション‣ データ:RDFで記述された会議情報および地域情報を利用

‣ 運用:2012年に奈良で開催された2つの国際会議にて運用- 2012/10/29 - 2012/11/02

ACMMM12 (ACM Multimedia 2012)- 2012/12/01 - 2012/12/04

JIST2012 (The 2nd Joint International Semantic Technology Conference)

同様のスキーマに基いてデータを記述すれば大きな変更をせずに他の会議やイベント利用可能

Page 8: Linked Dataによる地域情報を活用した学術会議支援システム

利用データ

会議情報‣ 情報源:各会議の主催者から受け取ったプログラムのデータ(PDF or HTML)‣ 変換手順

- スクレイピング & 手作業で表形式へ変換- 表中の項目名とプロパティの語彙のマッピング- Open Refine + RDF Refineにより,RDFに変換

地域情報‣ 情報源:DBpedia,Nara Explorer(国際会議のため英語の情報が必要)‣ 会議情報と同様に変換公開方法‣ SPARQL Endpoint (OWLIM-SE) で公開‣ 会議情報:9,025トリプル 地域情報:6,738トリプル

Page 9: Linked Dataによる地域情報を活用した学術会議支援システム

使用したメタデータスキーマとデータの設計(時間情報)

使用したメタデータスキーマ‣ 既存のスキーマ

- ical, xsd, dcterms, foaf, geo, rdfs, swc, schema.org‣ 独自のスキーマ

- conf(既存の語彙にないものを用意)

時間情報:講演や発表,バンケットなどのイベント   イベントの開催場所などはリンクで関連づけて表現‣ リソースの例

- swc:TalkEvent:講演,発表- swc:SessionEvent:セッション- swc:MealEvent:Welcome Receptionなど

‣ プロパティの例- swc:isSubEventOf:セッションと発表などの階層関係

SWC

会議情報 & 地域情報

時間情報 & 空間情報 (イベント)(場所)  

Page 10: Linked Dataによる地域情報を活用した学術会議支援システム

データの設計(空間情報)

空間情報:会場や公共施設,周辺観光名所など‣ 種別

- 会議関連:会場,会場内の部屋,会場推奨の宿泊先,シャトルバスのバス停- 地域関連:鉄道駅,路線バスのバス停,郵便局,ATM,名所,飲食店,土産物店

‣ リソースの例- swc:ConferenceVenuePlace:会場- swc:MeetingRoomPlace:会場内の各部屋- schema:TouristAttraction:観光名所- schema:Restaurant:飲食店

‣ プロパティの例- swc:isPartOf:会場と会場内の部屋などの階層関係- schema:openingHours:開館・開店時間- schema:streetAddress:住所

SWC

SWC

schema.org

schema.org

Page 11: Linked Dataによる地域情報を活用した学術会議支援システム

Ruby on RailsおよびjQuery Mobileを用いて構築‣ 施設の一覧表示

- 緯度・経度情報を持つリソースを表示- 3つの表示形式を用意(地図,写真,リスト)

スマートフォン向けWebアプリケーションの構築(空間情報の提示) [1/2]

地図表示 写真表示 リスト表示

Page 12: Linked Dataによる地域情報を活用した学術会議支援システム

‣ 各施設の個別表示- 写真,説明をDBpediaから取得- 現在地からの経路を表示

スマートフォン向けWebアプリケーションの構築(空間情報の提示) [2/2]

‣ 各部屋の個別表示- 親施設のフロアマップを表示

施設の説明 施設への経路 フロアマップ

Page 13: Linked Dataによる地域情報を活用した学術会議支援システム

スマートフォン向けWebアプリケーションの構築(時間情報の提示)

‣ プログラムの表示(タイムテーブル)‣ イベントの個別表示(イベントの説明,Twitterの投稿)‣ イベントのURIを含めたTweetの投稿   個別のイベントに対する体験の共有と集約

プログラムのタイムテーブル表示 イベントの個別表示 Twitterへの投稿

Page 14: Linked Dataによる地域情報を活用した学術会議支援システム

運用状況

ACMMM12‣ 利用状況(10/29 - 11/2 の5日間)

- ページビュー:1,399,ユーザ数:502(参加登録者 約650名)- タイムテーブル,マップの順にアクセスが多い

‣ 参加者の声- 分散した会場で多くのイベントを開催   タイムテーブル形式が見やすかった- シャトルバスの時刻表も参照しやすかった

JIST2012‣ 利用状況(12/1 - 12/4 の4日間)

- ページビュー:2,296,ユーザ数:205 - マップ,タイムテーブル,イベントの順にアクセスが多い

‣ 参加者の声- 観光名所や土産物屋の情報が豊富であったことについて好評を得た- Twitterユーザが少なく,イベントのURI付きTweetがあまりなかった  イベントとの関係を分析するには至らず

Page 15: Linked Dataによる地域情報を活用した学術会議支援システム

構築から得られた知見と課題 [1/2]

‣ データとアプリケーションの分離- ACMMM12向けに構築した奈良の地域情報のRDFをJIST2012でも利用- 会議情報のみ入れ替えることで異なる会議に容易に対応

‣ 会議情報のRDF化- データ生成のコスト

• 情報源がPDFやHTMLであったため,データ生成コストがかかった• Semantic Web Dog FoodではEasyChairなど受付システムから自動生成

- 人物情報のリソース化• 発表者,著者,座長などの人物や役割のリソース化と名寄せ• Twitterアカウントなどとの連動で発表などのイベントに対する反応の分析へ• ソーシャルメディアとの連携で会議終了後の参加者間の交流につなげる

Page 16: Linked Dataによる地域情報を活用した学術会議支援システム

構築から得られた知見と課題 [2/2]

‣ 英語による地域情報の公開- 自由に利用可能なライセンスで提供された地域情報は少ない- 観光名所の情報はDBpediaで取得できたが,飲食店・土産物店は困難- 海外からの観光客が増加している中,どのような観光情報資源にニーズがあるのか知るためにも,英語など他国語でのデータ公開も望まれる

‣ 会議情報および地域情報のRDFの表示における課題- 会議におけるイベントの種類と,使用スキーマのイベントタイプが一致しない- 1つのイベントが複数の場所で開催される場合がある(例:ポスター)  色とタイプのマッピングや,場所のグループ化などが必要

個別の会議における特殊なセッションやイベントの扱い方があるので,会議に応じたカスタマイズを容易に行える仕組みが必要

Page 17: Linked Dataによる地域情報を活用した学術会議支援システム

まとめ

MMapp:会議情報および地域情報のLODに基づいた学術会議支援アプリケーション‣ 2012 年に行われた2 件の国際会議にて運用データ構築‣ プログラムのHTML,PDFから表データを生成しRDFに変換‣ 主にSWC, schema.orgに基いて表の項目に語彙をマッピング‣ 自由に利用できる英語の地域情報が少なかったアプリケーションの開発‣ 時間情報(イベント)と空間情報(場所)に分けて表示し,関連をリンクで表現‣ タイムテーブル,マップがよく利用されたが,Tweetは少なかった今後の課題‣ 各イベントに対するTwitter 上での発言のRDF 化と分析‣ 受付システムとの連携によるデータ生成の効率改善‣ RDF 形式で記述されたデータの表示に関する工夫 など