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MOVIDA S C H O O L 起業家のための 優先株の実務ポイント MASAKAZU MASUJIMA May 22, 2012 © 2012 MASAKAZU MASUJIMA

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M O V I D A S C H O O L

起業家のための

優先株の実務ポイント

MASAKAZU MASUJIMA

May 22, 2012

© 2012 MASAKAZU MASUJIMA

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W H O ?

Name: 増 島 雅 和

Job: 弁護士

Company: 森・濱田松本法律事務所

Specialty: M&A, Financing

Initiative: http://startupinnovators.jp/

-起業家から創る、ベンチャーエコシステム-

email: [email protected]

twitter: @hakusansai

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Table of Contents

I. 優先株の 基礎

II. 起業家にとっ ての 優先株の 本質

III.押さえておきたいポイント

IV. リ ーンファ イナンスモ デ ル に よる優先株の 最新実務

V. 質疑応答

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I. 優先株の基礎

優先株の内容

• 優先配当権

• 配当と残余財産分配につき、普通株に優先

• 優先株の内容は、「ファイナンス条項」と「ガバナンス条項」に分けて考えるとわかりやすい

<ファイナンス条項の例>

• 残余財産の優先分配権

• 転換請求権

• 強制転換条項

• 稀釈化防止条項

<ガバナンス条項の例>• 拒否権条項

• 役員選任権

• 情報請求権

• 質問検査権

• 新株引受権

• (買戻条項)

• 先買権

• 共同売却権

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I. 優先株の基礎

「配当」と「残余財産分配」が普通株に優先

優先株のファイナンス条項

M&Aによるエグジット時に投資家が当初予定した収益を確保

(理由)

• 配当は生じないため、配当優先権は重要でない

• エグジットがIPOの場合、優先株は普通株に強制転換

• M&Aによる売却額が高額の場合、優先株を普通株に転換して売却した方が投資家に有利な場合がある

企業価値同

面積

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I. 優先株の基礎

優先株のガバナンス条項

優先株の「拒否権」「役員選任権」は、優先株でなくても要求される

ガバナンス目的であれば優先株導入のメリット小

(理由)

• 従来の実務は、普通株投資+株主間契約でガバナンスの問題を解決

• 優先株は導入・管理コストがかかり、ガバナンス強化目的だけで優先株利用は経済合理的でない

<結論>

優先株は、IPO前の事業売却に際し、投資家に対し、

• 売却価額から、予め定めた金額まで起業家に優先して投資回収できる権利

• 売却価額が高い場合には、普通株に転換して起業家と同条件で投資回収できる権利

を与える点に意義がある。

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II. 起業家にとっての優先株の本質

「優先株の意義」の意味

IPO前の優先株は、常に普通株より企業価値に対する1株あたりの「分け前」が多い

・普通株は、優先株よりも価額が安い

上記の<意味>は、起業家にとって以下のことを意味する。

<意味>

・普通株は、優先株より安い時価を設定する理論的根拠がある

・設立時に起業家が取得する普通株が安いことは、投資家が引き受ける優先株も同様に安くしなければならない根拠とならない

・優先株を発行した後も、ストック・オプションの行使価格を優先株の発行価額より低く設定できる

起業家は安い普通株式を取得することで、事業売却時のリターン倍率を高めることできる(スウェット・エクイティ)

魅力の高いストック・オプション付与により、優秀な人材をキャッシュレスで獲得できる

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II. 起業家にとっての優先株の本質

スウェット・エクイティ

起業家にとっての「起業」のリターン=設立時に引受けた普通株のリターン

• 起業に際して起業家が行う投資は、事業アイディア+人的資源(機会費用)≠資金負担

• 株式は投下資金に対するリターンを制御する法技術

投資家と起業家が「株式」の法技術で成果を分配しようとすると、起業家に適正なリターンが提供されない

「起業」が合理的な選択肢でなくなり、起業(家)の質が低下する結果、投資の成功率も上がらない

負のスパイラルから抜け出す方策として、投資家が、投資により得られる潜在的な経済的利益(期待)の一部を起業家に付与

=スウェット・エクイティ

• 具体的には、設立当初にノミナル価額で起業家に大量普通株を発行※ 起業家のタダ乗り防止策とのセット導入が不可欠

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II. 起業家にとっての優先株の本質

ストック・オプション

優先株利用は、スタートアップ企業の人材戦略のため

• ストック・オプションは、資金のないスタートアップ企業が優秀な人材を得るための唯一の武器

• 武器の「切れ味」は行使価格で決まる

• 資金調達のためバリュエーションを最大化しつつ、ストック・オプションの行使価格を低く抑えるためには、優先株と普通株の価格差を利用するしかない

※ ストック・オプションの行使価格 : 付与時の普通株の時価

※ 2011年10月国税庁・経産省確認

1株当たりの価額に関して、未公開会社の株式については、「売買実例」のあるものは最近において売買の行われたもののうち適正と認められる価額とすることとされていますが、普通株式のほかに種類株式を発行している未公開会社が新たに普通株式を対象とするストックオプションを付与する場合、種類株式の発行は、この「売買実例」には該当しません。

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III. 押さえておきたいポイント

残余財産分配の優先権

優先分配額、参加の有無、倍率制限に要着目

・様々なバリエーションがあるが、オーソドックスタイプは何かを押さえておくことは重要

優先分配額:当初払込価額+累積未払配当額

※「何がオーソドックスか」は立場によって異なる可能性がある点に注意

“当初払込価額のN倍”(N=2-3)は調達に苦戦する案件で提示を受ける

参加型:優先分配後に普通株の分配に稀釈化ベースの株数で与れる(double dip)

倍率制限:参加型で参加可能額に上限(優先分配額のN倍)を付ける(N=2-3)

・投資家は常に「普通株に転換してエグジット」の選択肢を持つため、残余財産分配の優先権はどこまで行ってもダウンサイドのプロテクション(投資家のリターン上限を課すものではない)

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III. 押さえておきたいポイント

稀釈化防止条項

バリュエーションは実力以上に上げてはいけない

・優先株では、後のラウンドで発行価額以下のバリュエーションを付けると稀釈化防止条項がトリガー

・稀釈化防止条項がトリガーすると、転換比率の調整を通じて稀釈化後株数が増加

増加数は調整条項の内容次第。ブロードベース加重平均型→ナローベース加重平均型→フルラチェット型の順に会社に不利になる。

・稀釈化防止条項が入った優先株で、バリュエーションを説得するため数値を盛り過ぎると、後のラウンドで自らに跳ね返ってくる

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IV. リーンファイナンスモデルによる優先株の最新実務

シードファイナンス実務の進化

Convertible Debt vs. Series AA Preferred

・シード(エンジェル)ラウンドの投資額低下に伴い、取引費用(≒法務費用)低下が課題に

・ベンチャーファイナンスでは、取引費用削減(simple documentation)

ニーズは伝統的に転換型負債が担う

・転換型負債の負債特性を忌避する立場から「取引費用の小さい優先株」ニーズの高まり

・リーンファイナンスによりモデル化されることで、Series AAが定型取

引として普及推進の動き

<使用条件>

• 投資家がエクイティ取得に前向き

• 投資家が残余財産分配と持分比率維持以外にこだわらない

• バリュエーションが低い

• 投資額が小さい© 2012 MASAKAZU MASUJIMA

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IV. リーンファイナンスモデルによる優先株の最新実務

シリーズAAファイナンスの内容

優先株が持つ「普通株の価格を低く維持する機能」に特化

<主要な条項>・非参加型の残余財産分配優先権

=元本回収できない案件を除き、エグジット時には普通株転換を想定

・限定的な拒否権条項

※M&Aによるエグジットには投資家過半数の同意を要求

・新株引受権(持分比率維持条項)

・情報請求権

<「ない」条項>

• 優先配当

• 稀釈化防止条項

• 多くの拒否権条項

• 先買権・共同売却権

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V. 質疑応答

質問/連絡先

email: [email protected]

face book: https://www.facebook.com/startupinnovators

twitter: @hakusansai

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