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NANTEN2 マルチビーム受信機 開発の現状 2016/03/08 名古屋大学 (理) 大浜 晶生 16ミリ波サブミリ波受信機ワークショップ@電通大

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Page 1: NANTEN2 マルチビーム受信機 開発の現状 - 酒井研究室(UEC)...速度分解能 : 0.238 km/s(115GHz)、0.128 km/s(230GHz) 周波数帯域 : 2 GHz 輝線輝線 :

NANTEN2 マルチビーム受信機開発の現状

2016/03/08

名古屋大学 (理) 大浜 晶生

第16回 ミリ波サブミリ波受信機ワークショップ@電通大

Page 2: NANTEN2 マルチビーム受信機 開発の現状 - 酒井研究室(UEC)...速度分解能 : 0.238 km/s(115GHz)、0.128 km/s(230GHz) 周波数帯域 : 2 GHz 輝線輝線 :

マルチビーム受信機の仕様

l  マルチビーム受信機の仕様    ビーム数       :115GHz 4ビーム、230GHz 1ビーム    ミラー         :常温と冷却ミラー

   115GHz       :RFフィルターを用いた両偏波SSB    230GHz       :RFフィルターを用いた片偏波2SB、 (可能であれば、両偏波2SB)    システム雑音温度 : 200K(115GHzと230GHzともに)(SSB換算)    分光計        : XFFTS(SMARTのもの併用)    速度分解能     : 0.238 km/s(115GHz)、0.128 km/s(230GHz)    周波数帯域     : 2 GHz    輝線輝線       : 12CO、13CO、C18O(J=2-1, 1-0)

2

デュワ内

M5

主鏡 副鏡

M3

M4

コルゲートホーン

円偏波分離機

SSBF

ミクサブロック

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標高4800mという特殊な環境

3

開発目標 ・ リモートで受信機をチューニングできるシステムにすること ・ 高地で極力調整しない機構にすること ・ コンパクトな機器の選定による省スペース化 ・ ミラーやホルダー、デュワの軽量化

我々は、アタカマ高地での10年以上の運用から様々な苦労を経験 ・ 計算能力や記憶力の低下 ・ 筋力や視力の低下 ・ 限られたサイト滞在時間と作業者 ・ 自家発電による電力の不安定さ

多少、受信機の性能を落としてでも ・調整機構の少ない ・リモートでチューニングできる 受信機を開発することを目標にした

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115GHz帯マルチビーム受信機の1カートリッジの開発    1. 円偏波分離機の設計と評価    2. SSBフィルターの評価    3. SIS素子評価

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試作機の配置設計 5

試作機の3D CAD図

受信器とIF系のユニット化 → 取り付け、取り外しが容易に

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115GHz帯 導波管型円偏波分離器

円偏波分離器の原理   導波管中央にある階段状の障壁(セプタム構造)で   垂直偏波の伝送方向を変更し、位相を遅らせる

6

水平偏波

垂直偏波

※位相が90度遅れる

input

L-port R-port

input

L-port R-port

右旋円偏波

左旋円偏波

各円偏波を出力ポートで分離できる

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円偏波分離器 の開発 7

l  Ansoft社の3次元電磁解析シミュレータ「HFSS」を使用 l  各パラメータを振り、要求精度に対して最適なモデルを作成

セプタム部

上図: 円偏波分離器の解析モデル

input

L-port R-port

交差偏波分離度 本来分離されるポートとは反対側へ出力される電力の割合

挿入利得 入力信号の電力と出力信号の電力の比

反射損失 入力ポートから出てきてしまう電力の割合

•  周波数帯域: 108 - 117 GHz •  挿入利得: - 0.5 dB 以上 •  反射損失: -20 dB 以下 •  交差偏波分離度: -20 dB 以下

要求精度

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8 モデルの解析

パラメータの数: 16 すべてのパターンを解析することは不可能

i.  最も性能に敏感な箇所を探る

ii.  敏感なパラメータを順に最適化を行う

1.  一つの特性について(例:交差偏波分離度)

2.  残りの特性についても1のように最適化

3.  仕様を満たさない場合、1に戻り再解析を行う

sl4

交差

偏波

分離

度 [d

B]

sl1

交差

偏波

分離

度 [d

B]

sl1

sl4

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-0.5

-0.4

-0.3

-0.2

-0.1

100 104 108 112 116 120 周波数 [GHz]

測定結果

挿入

利得

[dB

] 交

差偏

波分

離度

・反

射損

失[d

B]

-50

-40

-30

-20

-10

0

104 108 112 116 周波数 [GHz]

測定結果(V) 測定結果(H) 測定結果(CPTL)

9 ミリ波アナライザ評価(常温測定)

交差偏波分離度・反射損失 要求精度 (< -20 dB)

を満たす

常温において円偏波分離器の仕様を満たす

反射損失(垂直偏波) 交差偏波分離度

反射損失(水平偏波)

20mm四方

-10

-20

-30

-40

-50

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SSBフィルターの設計 (府大長谷川方式)

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出力

1. SSBフィルタの原理 90度ハイブリットカプラと ハイパスフィルタHPFを組み合わせ、 特定の周波数のみを通過させる。 2. 12CO(J =1-0)、13CO、C18O輝線 NASCO計画では、CO輝線を観測する ことに特化しており、周波数106GHzから 116GHzまで使用できるように設計した。 3. VNAを用いたSSBFの評価 挿入損失: -0.5dB以上 反射損失: -20dB以下

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SSBフィルターの評価 (府大長谷川方式)

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挿入損失 入力ポート反射損失 LOポート反射損失 LOカップリング率 アイソレーション

1. SSBフィルタの原理 90度ハイブリットカプラと ハイパスフィルタHPFを組み合わせ、 特定の周波数のみを通過させる。 2. 12CO(J =1-0)、13CO、C18O輝線 NASCO計画では、CO輝線を観測する ことに特化しており、周波数106GHzから 116GHzまで使用できるように設計し た。 3. VNAを用いたSSBFの評価 挿入損失: -0.5dB以上 反射損失: -20dB以下

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試作機の冷却試験

実験室での試作機搭載の様子 試験機の雑音温度測定結果

60

70

80

90

100

110

120

104 105 106

受信

機雑

音温

度 [K

]

局部発信器周波数 [GHz]

[160115] 実験室 pol#1L+ssbf#1+mix#1 -2

円偏波分離器評価 - 左port 円偏波分離器評価 - 右port

測定結果を再現(80 - 90 K) 試作機の冷却試験に成功した

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115GHz帯マルチビーム受信機の光学系設計    1. GRASPによるモデル解析    2. ミラー設計

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天球免状におけるビームパターン

M5

主鏡 副鏡

M3

M4

マルチビーム受信機の光学系

1. コンセプト 光軸に230GHzのビームを置き、 その周辺に4つの115GHzのビームを配置した 2. 冷却ミラーの採用 各ビーム間の距離を狭くするため、 冷却ミラーを用いた。 3. 各ボームの開口能率 230GHz : 0.72 115GHz : 0.69 ビームパターンは右の図の通り

4. デュワを回したときのビーム指向特性 デュワを90度回したとき、各ビームは円周 上にほぼのっており、開口能率は 0.69から0.65まで下がる程度である

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天球面上におけるビームパターン

M5

主鏡 副鏡

M3

M4

マルチビーム受信機の光学系 評価

1. コンセプト 光軸に230GHzのビームを置き、 その周辺に4つの115GHzのビームを配置した

2. 冷却ミラーの採用 各ビーム間の距離を狭くするため、 冷却ミラーを用いた。

3. 各ボームの開口能率 230GHz : 0.72 115GHz : 0.69 ビームパターンは右の図の通り

4. デュワを回したときのビーム指向特性 デュワを90度回したとき、各ビームは円周 上にほぼのっており、開口能率は 0.69から0.65まで下がる程度である

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冷却ミラーの設計と 各コンポーネントの配置

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デュワ

M6

1. 冷却ミラーの利点 鏡面からビームが漏れても、システム雑音温度の 上昇が抑えられ、ミラーを小型化することができるため、 ミラーを4Kに冷やす 2. 冷却ミラーの設計 M7を楕円鏡にすることで電波窓を小さくする。 これは、熱流入をおさえるためである。また、 デュワ内の調整を容易にするため、M8を平面鏡にした 3. 各コンポーネントの配置 ホーンのアライメントを容易にするため、ノックピンとネジで 冷却ミラーとホーンを固定する構造にする。 ホーンからHEMTまで一体化のユニットにする。 230GHzのコンポーネントが光軸の中心に置き、 冷却ミラーとホーン等の2段ステージにする

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今後のマルチビーム受信機開発

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光学系 ・ミラー設計と製作(加藤、稲葉) ・冷却ミラーの設計

受信機 ・デュワの設計と製作(名大技術職員) ・ホーンからHEMTまでのユニット化 ・リモート制御(漆原)  ※ HEMTバイアスボックスの製作  ※ SISバイアスボックスの製作  ※ LO ATTの制御 ・SIS素子の評価(栗田、新四年生)

IF系 ・IF系の製作(横山、栗田、新四年生)

分光計 ・分光計XFFTSの制御(漆原、NRO西村)

2016/04~ 2017/09~

チリの現地作業 ・ NANTEN2に受信機を搭載 ・ ビームのアライメント ・ ビームの位置出し ・ 高地での冷却と真空引きのテスト ・ SIS素子のリモートチューニング ・ IF系の搭載 ・ XFFTSの制御 ・ 各値のモニター ・ ファーストライト

~2018/03

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まとめ

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・115GHz帯マルチビーム受信機の1カートリッジの開発 Ø  円偏波分離機の設計と評価 Ø  SSBフィルターの評価 Ø  SIS素子評価

・115GHz帯マルチビーム受信機の光学系設計 Ø  GRASPによるモデル解析 Ø  各ミラーの設計 Ø  望遠鏡の仰角Elに対する光学系の評価 Ø  デュワを回したときのビーム指向特性 Ø  デュワ内の配置

・今後のマルチビーム受信機の開発 Ø  デュワの設計 Ø  ミラーの製作 Ø  ホーンからHEMTのユニット化 Ø  各機器のリモート制御化 Ø  IF系の製作 Ø  XFFTSの制御