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This document is downloaded at: 2020-02-04T10:01:16Z Title 白色フィラー配合加硫ゴムの高性能化に関する研究 Author(s) 兒玉, 總治 Citation (2004-03-31) Issue Date 2004-03-31 URL http://hdl.handle.net/10069/6904 Right NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp

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Title 白色フィラー配合加硫ゴムの高性能化に関する研究

Author(s) 兒玉, 總治

Citation (2004-03-31)

Issue Date 2004-03-31

URL http://hdl.handle.net/10069/6904

Right

NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE

http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp

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            第3章 加硫ゴムの物性

第3.1節白色フィラー配合ゴムの力学的性質

3.1.1緒言

 ゴム工業で汎用されているシリカ、炭酸カルシウム、カオリンクレー、タル

クを配合した加硫ゴムの静的引張試験と動的粘弾性試験を行い、加硫ゴム物性

に及ぼす効果のフィラー間の相違や形状の影響を調べるとともに、ゴムマトリ

ックスとフィラー間の相互作用について、フィラーゲル量の測定や膨潤度、動

的粘弾性試験からカーボンブラックと対比して調べた。その結果、加硫ゴム物

性は、粘弾性の温度分散試験でガラス転移領域にあらわれる損失正接の極大値、

すなわち、ガラス転移温度の力学緩和の大きさに及ぼす影響に依存しており、

この力学緩和を指標としてフィラー一ゴム間の相互作用を評価できることを明

らかにした。

3.1.2実験方法

3.1.2.1試料

 Table3.1.1に、用いたフィラーのメーカー名、商品名、論文中で用いた略号

を示す。なお、ここで用いたクレーは、カオリンクレーの中でもゴム補強効果

が良好なため、ゴム工業でハードクレーと呼ばれているものである。Fig.3.1.1

にカオリンクレーとタルクのSEM写真を示す。いずれも板状粒子が積み重なっ

ており、厚さはタルクの方が薄く、アスペクト比(長さ/厚さ)が大きいが・粒子

サイズはクレーよりもかなり大きい。また、炭酸カルシウムは重質炭酸カルシ

ウムで、平均粒子径は1μm、シリカとHAFの粒子径は20nmである。

Table3.1.1Fillers.

Filler Producer Tradename  Abbreviation

silica

Kaolinclay

Talc

Calciunl carbonate

Carbon black

NipPon Silica Co.  Nipsil VN-3

SouthEastemCo. Crown Clay

NipponMistronCo.MistronVaporBihokuFunka Co. So丘on2200Tokai Carbon Co. Seast3

Silica

Clay

Talc

CaCO3

.48一

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Talc Clay

Fig.3. I . I SEM photographs of clay and talc.

Table 3. I .2 Formulation of compounds (phr) and cure conditions.

NR SBR NBR EPDM Rubber

ZnO Stearic acid

S CBS*1 MBTS*2 DPG*3 TMTD *4

TMDQ*5

l OO

5

2 1 .2

l .2

l OO

l

2

l .5

0.5

l .2

l OO

5

l

l.5

1.5

0.5

0.2

l .2

l OO

5

1

l.5

l.5

0.5

l .2

Cure temp 'C 140 150 Cure time, min

Silica

Clay Ta lc

CaC03 HAF

24 40 20 30 16 30 22 30 20 30

l 50 170

8

30 30 30 30

20 20 20 15

15

* I N-cyclohexyl-2-benzotiazolylsufenamide

*2 Dibenzothiazyldisulfide *3 1 .3-Diphenylguanidine *4 Tetramethylthiurum disulfide *5 Polymer of 2,2,4-trimethyl- I ,2-dihydroquinoline

- 49 -

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 ゴムは、NRはマレーシアFelda社製SMRCV50、SBRは日本ゼオン製

SBR#1502(スチレン量23.5mol%)、NBRは日本ゼオン製NBR#1042(アクリロニ

トリル量34mol%)、EPDMは三井化学製EPT#4045(ヨウ素価24)を用いた。

 フィラー以外のゴム配合薬品は前章と同様である。

 また、シランカップリング剤は、ビス(3一トリエトキシシリルプロピル)テト

ラスルフィド(TESPT、信越化学製KBE846)を用いた。

3.1.2.2加硫ゴムの調製

 Table3.1.2に示した配合処方で、水冷式試験用ロール機(150φ×450L、関西

ロール製)を用いて、ロール表面温度を20℃に設定して混練を行った。混練後、

室温、50%R.H.下で48時間放置した後、JSRV型キュラストメーターで測定し

た加硫曲線の100%加硫時間(tc(100))でプレス加硫して、厚さ約2mmの加硫ゴム

シートを調製した。各ゴムの加硫条件をTabke3.1.2に併せて示す。なお、シリ

カ配合では加硫活性剤としてポリエチレングリコール#400を、フィラー量に対

して3%添加した。

3.1.2.3加硫ゴム物性の測定

 物性測定は、加硫ゴムシートを23℃、50%R.H.に調製した恒温恒湿室で48時

間状態したのち行った。

 引張試験は、加硫ゴムシートから打ち抜いたJIS3号ダンベルを試験片に用い

て、ビデオ伸び計を装着したインストロン社製5583型万能材料試験機を用い

て、引張速度500mm/minで行った。

 粘弾性試験は、加硫ゴムシートから打ち抜いた幅4mm、長さ40mmの短冊状

試験片を用いて、引張りモード、周波数10Hz、測定温度一80~110℃の条件で

行った。測定装置は、セイコーインスツルメンツ製EXSTAR6000型粘弾性スペ

クトロメーターを用いた。

3.1.2.4膨潤試験

 膨潤試験は、20mm×10mmに切断した試料を、室温で24時間ごとに溶媒をか

えて3回アセトン抽出し、恒量になるまで50℃で真空乾燥したのち、25℃で、

NR,SBR,NBRはベンゼン、EPDMはシクロヘキサンに72時間浸積して行った。

3.1.2.5フィラーゲル量の測定

 未加硫錬り生地約2gを採取し、NR,SBR,NBRはベンゼン、EPDMはシクロヘ

一50一

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キサンベンゼンに、上澄み液をメタノールに注いで沈殿が生じなくなるまで、

24時間毎に溶媒をかえて浸積して、可溶分を溶解させた後、残渣を真空乾燥後、

秤量し、その値からZnO量とフィラー量を差し引いて求めた。

3.1.2.5電子顕微鏡観察

 フィラーの加硫ゴム中の分散状態を、クレー、タルク、炭酸カルシウム配合

では、加硫ゴムを液体窒素中で破断した破断面のSEMで、シリカでは加硫ゴム

からミクロトームで調製した薄片を用いてTEMで観察した。装置は、日立製作

所製S.5400型FE.SEMと日本電子製JEM-2010型TEMを用いた。

3.1.3結果と考察

3.1.3.1応カーひずみ曲線

 Fig.3.1.2に、NRとSBRの純ゴム(PureGum)配合、及びフィラー体積分率(Vf)

が0.18の場合の加硫ゴムの応カーひずみ曲線(S-S曲線)を示す。

(&Σ)ののoお

30

20

10

00

RF\

N砿

Silica

、PureGum

NR

Clay

  Talc「辱’CaCO3

SBR  Silica

旨嘲トPureGum

SBR

  Clay

CaCO3

 400   8000    400   8000    400   8000    400   800

Strain  (%)    Strain  (%)     Strain  (%)   Strain  (%)

    Fig.3.1.2Stress-strain curves ofvulcanizates・

 純ゴム配合の引張強さ(TB)は、SBRでは3MPa程度であるのに対して、NRの

それは、SBRの約10倍の30MPa近くになっている。これは、よく知られてい

るように、NRは伸張結晶化し、自己補強性を示すためである1)。

 フィラーを配合すると、NR、SBRとも応力一の上昇が速く、また大きくなった。

TBへのフィラー配合の影響を見ると、自己補強性を有するNRでは小さかった

岬51一

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が、SBRは、炭酸カルシウムでは純ゴムの1.5倍程度、タルクで約5倍、クレ

ーで約7倍、シリカでは10倍程度に向上しており、シリカではHAFと同程度

であった。これらの現象は、白色フィラーがゴムを補強していることを示して

おり、その効果の大きさは、シリカが最も大きく、次いでクレー、タルクの順

で、炭酸カルシウムが最も小さいことがわかる。

 S.S曲線の相違をゴム間で見ると、いずれの白色フィラーでもSBRよりNR

の方が速く立ち上がっており、この原因として、NRでは、フィラーの補強効果

よりもNRの自己補強効果が大きいためと考えられる。…方、HAFではNRと

SBR問でほとんど差違がなく、これは、NRの自己補強効果よりもHAFの補強

効果の方が大きいためと考えられる。このSBRのTBやS-S曲線に見られたフ

ィラーの効果は、伸張結晶化しないNBRやEPDMでも同様であった。

 同じゴムでフィラー間の相違を見ると、Fig.3.L3に示したSBRの例からわか

るように、ひずみが150%以下の伸張初期では、ひずみ量増大にともなう応力の

上昇がHAFと白色フィラーでは大きく異なった。白色フィラーでは、応力が初

期に急速に立ち上がったのち、その上昇が緩やかになっており、この傾向はシ

リカで最も著しく、降伏点と考えられるような屈曲点が認められた。一方、HAF

では、このような現象は認められず、伸張初期から応力はひずみ量とともに急

速に増大した。このことから、HAFと白色フィラーでは補強機構が異なってい

ることが推察される。

(謡Σ

)のの当の

5

4

3

2

1

SBR   HAF

  Talcsilica\

  ClayCaCO3

      0     50    100   150   200

          Strain  (%)

Fig.3.1.3Stress-strain curves ofSBR vulcanizates at low strain.

     0

一52一

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3.1.3.2動的粘弾性

 Fig3.1.4に、Vfが0.18のSBR加硫ゴムの貯蔵弾性率(E,)と損失正接(tanδ)

の温度分散を示す。E,は、ガラス領域では、炭酸カルシウム・シリカ・N330・

クレー、タルクの順に大きく、板状フィラーでアスペクト比の大きい方が高か

った。一方、ゴム状領域では、シリカ》タルク、クレー>HAF>炭酸カルシウ

ムの順で、Fig.3.1.3のように、ひずみが10%以下の伸張応力の大きさの順と一

致しており、ひずみ量が小さい場合、HAFよりシリカの方が大きい補強効果を

示している。

 次に、tanδを見ると、主分散のピーク値はフィラー配合により低下し、その

傾向はシリカが最も大きく、っいでHAF>タルク>クレー、タルク>炭酸カル

シウムの順であった。ゴム状領域では、いずれも純ゴムより大きく、温度上昇

とともにtanδは低下するが、板状フィラーの方がその傾向が小さかった。また、

シリカ配合では50℃付近から逆に上昇した。NR、EPDM、NBRでも・シリカ配

合NBRでtanδの上昇が認められなかったことを、除いて、E’、tanδとも、SBR

と同様な温度依存性を示した。

1010

109

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Oロ           κ7

10

1

り爲↑

 α

0.01

                Temperature(℃)

Fig.3.L4Temperature dispersion curves ofstorage modulus and loss tangent ofSBR vulcanizates.

 106   Vf=0・18

 .100 .50 0 50 100 -50 0 50 100  -50 0 50 100                                0.001

一53一

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3.1.3.3力学的性質のフィラー配合量依存性

 Fig.3.1.5に、TBのフィラー体積分率(vf)依存性を示す。NRでは、フィラー

の種類に依存せず、Vfに関して一律的に低下する傾向にあるが、依存性は大き

くなく、Vfが0.25(100phr)でも25MPa程度の値を示した・NRと異なり・SBR・

NBR、EPDMでは、炭酸カルシウム以外のフィラーは、Vfの増大とともにTB

を大きく向上させた。クレー、タルク及びHAFでは、いずれのゴムでも同じよ

うに上昇し、Vfに関して極大値を示すような傾向にあった。シリカ配合のTB

は、SBRとEPDMではVfが大きくなるとHAFより大きくなったが・NBRでは

少量配合でもが著しく向上しており、シリカのNBRに対する補強性が良好なこ

とが認められる。

40

 30欝皇20

←10

00

 3

NRO o・㌔

   口  □△◇

30

20

10

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 3

20欝20象i1。』

10

     Vf          Vf

Fig.3.1.5Dependence ofTB on filler volume丘action.

00 0.1 0.20.300 0.1 0.2 0.3

O HAF□silica

△Clay

▽Talc

◇CaCO3

 Fig.3.1,6より、300%伸張応力(M300)は・HAF配合ではいずれのゴムでもVf

の増加とともにほぼ直線的に著しく大きくなった。一方、シリカ、クレー、タ

ルクでは、NRでは他のゴムよりも大きくなっているが、HAFの1/3程度であり・

一54一

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NR以外では、M300のVf依存性はHAFより著しく小さく、炭酸カルシウムで

はわずかに低下する傾向にあった。

20

   0

   1

(◎角Σ)。。箇Σ

00

 2

⑬豊1。

8れΣ

00     0.1    0,2    0.30     0、1    0.2    0.3

      Vf         Vf

Fig.3.L6DependenceofM3000nHllervolumef士action.

OHAF□silica

△Clay

▽Talc

◇CaCO3

 20℃のE’のvf依存性をFig.3.1.7に訴す。E’は、いずれのゴムでもシリカ配

合が最も大きく、Vfが0.1付近から急速に増大した。HAF、クレー、タルク配

合では、ゴムによって異なった依存性を示したが、Vfが0.15以上になると著し

く向上する傾向にあり、いずれも炭酸カルシウムよりも大きかった。

 次に、Fig.3.1.8より、tanδのVf依存性は、クレー、タルクの板状フィラー

の両者ではVfとともに大きく増大し、アスペクト比の大きいタルクの方が依存

性が大きかった。一方、HAFと炭酸カルシウムはVf依存性に乏しく、シリカ配

合では極大値を示した後に低下する傾向が認められた。

 以上のような諸性質のVf依存性は、フィラー一マトリックス間相互作用の相

違やフィラー形状、フィラーの分散状態と関連があると考えられるので、以下、

これらについて調べた。

一55一

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60

~ ~ 40

~ ~ 20

O 60

~~; 40

~ ~ ~:~ 20

O

o HAF c:] Silica

A Clay

V Talc

~ CaC03

EPDM A

v

O 0.1 0.2 0.3 O 0.1 0.2 0.3

Fig.3. I .7 Dependence of E' on filler volume fraction.

0.2

eo ~ 0.1

H

O 0.4

0.3

0.2

O. l

eo s:ce 0.2

H

O

o 0.2

O HAF D Silica

A C]ay V Talc

~ CaC03

0.1

o 0.2 0.1

Fig.3. I .8 Dependence of E' on filler volume fraction.

- 56 -

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3,1.3.4フィラーゲル量

Fig,3.・.9にHAF配合とシリカ配合のVfとフィラーゲル量の関係を示す・こ

の両者では、フィラーゲル量はフィラー量とともに増大しているが、Vfが大き

くなると一定値に収れんする傾向にあった。シリカやHAFで補強効果が他より

も良好であったことから、本研究でも、フィラーゲルの生成が物性向上の一要

因であることが一応確認される。ところが、シリカ配合の方がHAFよりもE’

が大きいにもかかわらず、ゲル量が少なかったことや、クレー及びタルク配合

では、100phrの場合のみ測定可能で、その量はいずれも3%程度であった。これ

らのことから、白色フィラーとゴムの相互作用をフィラーゲル量のみから評価

し、補強効果を説明することはできないと思われる。なお、炭酸カルシウムで

はゲルの生成は認められなかった。

  30          silica・NR                           ロSBR (                          △EPDM ま

馨20                 ▽NBRと

 品 お10 =

   0   0   0.1  0.20   0.1  02        Vf          Vf

Fig.3.Lg Dependence ofthe content offiller gel on fillervolume f}action,

3.1.3.5膨潤度

 加硫ゴムの膨潤度からフィラーの補強性を評価するKrausの方法2)の結果

を、HAFとシリカはFig.3.1.10、その他はFig.3.1.11に示す。HAFとシリカで見

ると、補強性が大きいHAFでは、すべてのゴムで負であり、その傾きの大きさ

はE’やM300の大きさの順と一致していないが、フィラーゲルの結果と同様に、

ゴムとフィラーの相互作用が強いことを示していると考えられる。一方、シリ

カでは、NBRのみが負で、他では直線となっていないだけでなく、フィラーゲ

ルが生成しているにもかかわらず、フィラー量が増加するとV,0〆Vrが大きくな

一57一

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り、極大値を示したのちに低下した。また、F圭9.3.1.11より・クレー・タルク・

炭酸カルシウムの場合のV,0/V,のVf依存性は、SBRとEPDM・NRでは伺じよ

うな傾向にあり、NRでは傾きが負の直線となっていたが・SBRとEPDMでは

増大し、タルクの場合、極大値を示した。また、炭酸カルシウムではいずれも

直線関係にあったが、傾きはNRのみ負であった。NBRは各フィラーで異なっ

た挙動を示した。

 以上のように、HAFを除いて、膨潤試験の結果とゴム物性を関連づけること

はできなかった。

1.1

 LOト

>\0.92

 0.8

1.4

1.2

1.0

0.7           0.8 0 0.1 0.2 0.3 0 0.1 0.2 93    Vf/(1-Vβ     Vf/(1-V∂

 Fig.3.1.10Kraus plots ofvulcanizates filled HAF and silica.

L2

ぺ21.0’

0・80

Clay

 ! 一

1.2

1.0・

Talc

1.4

1.2

                 0.8      ’0.80.2  0.40  0.2  0.40  0・2  04

Vf/(1-Vf)   Vf/(1-V∂    Vf/(1-Vf)

Fig.3.1.11殴auspl・ts・fwlc血izates五lledclay,talc㎝dCaCO3

              0            0           0                 1.0桿  o              級                      O  o

3.1.3.6粘弾性試験

 動的粘弾性試験からフイラー一ゴム間の相互作用を調べる方法としては・

tanδのピーク温度シフトから評価するDrosteの方法3)があるが、本研究で用い

た加硫ゴムでは、主分散ピーク温度は、タルク配合で100phr(Vf=0.24)の場合、

一58一

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2℃程度高温側へのシフトしたが、他では実験誤差の範囲内で一定であった。し

たがって、ここではziege1法4)を用いた。

 ziegel法は、転移領域の損失弾性率か損失正接のピーク値を用いるが、ここ

では、フィラーの種類による相違や配合量依存性が大きい損失正接を用いて評

価を行った。

 Ziege1法では、式(3.1.1)で表される係数αを相互作用の大きさ、あるいは強

さのパラメーターとする。

  tanδc/tanδm=1一一αVf  (3.1.1)

   Vf;フィラーの体積分率

   tanδc;複合材料の損失正接

   tanδm;マトリックス材料の損失正接

   α;マトリックスポリマーとフィラーの相互作用に関する係数

 αは、tanδ、/tanδmをVfに対してプロットしたときの直線の傾きとして求

められ、αが1より大きいほど相互作用が強いことを表している。

 Fig.3.1.12に、シリカとHAF、炭酸カルシウムについて・tanδc/tanδmを

Vfに対してプロットした結果を示す。3者ともtanδc/tanδmとVfは直線関係

にあるが、炭酸カルシウムではいずれのゴムでも1に近く、相互作用に乏しい

ことがわかる。シリカとHAFでは、αは1より大きく、両者ともNR>EPDM

>SBR≧NBRの順であるが、シリカの方が大きかった。この順序は、HAFでは、

EPDMを除いて、ほぼゲル量(Fig.3.1.9〉と相関していると思われるが・シリカで

はその傾向は認められなかった。

  1.0                              鞭 日ゐ竃

              o卜\0.5

 0わ

慧』

                  Silica  O   O    O.1    0.2     0    0.1    02      0     0.1   0.2    0.3

      Vf       Vf        VfFig.3.1.12Relation betweell fillervolume f}action and relative max㎞um losstangellt of

    wlc血zates丘11edHAF,SilicaandCaCO3

一59一

Page 14: NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITEnaosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/6904/...が、SBRは、炭酸カルシウムでは純ゴムの1.5倍程度、タルクで約5倍、クレ

 ところで、フィラー分散系複合材料の弾性率の理論式として、次の

Guth.Smallwood式5)(式(3.1.2))がよく用いられる。

  E,c/Elm-1+2.5Vf+14.1Vf2  (3・1・2)

   E’c:複合材料の弾性率

   E’m:マトリックス材料の弾性率

 よく知られているように、この式から計算される弾性率は実測値よりも小さ

いことが多い。これは、式(3.2)ではフィラーの体積効果のみが考慮されている

ためである。そこで、式(3.1)のαは、フィラー一マトリックス間界面の束縛層

の大きさを示していると考えられることから、α×Vfをフィラーの有効体積分

率として弾性率を計算し、20℃の実測弾性率と比較した。Fig.3.1.13よりその結

果を見ると、実測値と計算値は炭酸カルシウムとHAFではほぼ一致している。

したがって、αは界面束縛層の厚さを表していると一応考えられる。一方、シ

リカでは、いずれのゴムでもフィラー量が多くなるほど実測値の方が高くなっ

ている。このことから、シリカのtanδ、/tanδmの低下は、束縛層のみでは説

明できないと考えられる。

                           ▽即o                 .威愚 ぺ      ・馨SBR            10 -04                      2 国                            、          NBR             5                  、SBR                      l                            Calculation   1                                   1   0 0.1 0.2  0 0.1 0.2 00 0.1 0.20.3       Vf          Vf         Vf Fig.3.1.13Comparison ofcalculation value ofdymamic modulus by Guth-Smallwood

      equationwithexperimental dataat20℃.

         Line l calculation,symboll experimenta1

 クレー、タルクでも、Fig.3.1.14に示すようにta11δc/tanδmはVfの増加と

ともに小さくなっており、両者ともαは1より大きく、マトリックスとの相互

作用が炭酸カルシウムより大きいことがわかる。Table3.1.3にSBRの場合のα

を式(3.1、2)の補正値として用いた相対弾性率の計算値を実測値と比較して示

す。シリカと同様に計算値の方がかなり小さく、この両者でもtanδの低下に束

縛層以外の効果が示唆される。

一60一

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1.0

             0

    《」        0

    0

ε      O

 幻§↑\ 殉§』

Talc

     0.1    0.2    0.3 0     0.1    0.2    0.3

        Vf         Vf

Fig。3.1.14Relation between fillervolume ffaction and relative

     maximum loss tangent ofclay and talc filled

     VUlCaniZateS.

Table.3.1.3Comparison ofExperimantal dataofrelative dymamic

     modulus ofSBRvulcanizates at20℃with calculation values

     by Guth-Smallwood equation.

E,c/E,m

    Clay      Talc

Vf  Exp・ CaL Exp. Cal.

0.092   1.90  1.86

0.145  3.20  2.75

0.192   5.19  3.78

0.253  10.8  5.45

2.16  1.69

3.54  2.37

5.85  3.15

9.75  4.41

3.1.3.7フィラーの分散状態

 Fig.3.1.15に、各フィラーを50phr配合した加硫ゴムの破断面のSEM写真と

TEM写真を示す。炭酸カルシウムは1次粒子で分散しているが、シリカは、1

次粒子が凝集した2次粒子となって分散している。シリカ配合の弾性率や低伸

張モジュラスがHAFよりも高い原因はこの凝集構造のためであり6)、Vfが0.1

以上になると構造が形成されはじめて、弾性率やモジュラスが急速に増大し、

ひずみが大きくなると破壊されるために、降伏に近い挙動を示すと考えられる。

 クレーとタルクでは、ロール列理方向に板状粒子が配向して分散している。

これらのフィラー形状(Fig.3.L1)と対比すると、混練時のせん断力により積み

重なった薄片がはがされて分散したと考えられ、しかも、タルクでは薄片が破

壊されて小さくなっている。

一61一

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灘一騰 灘

          ci窺y lゐμm   T&豊c5・0μ搬

               繊鍵醸  麟

                                 C畿C・3銘μ懲   s勲α2μ搬Fig3.L15SEM鑓dTEMph伽g聯hsGfv癒鋤iz鍵t瑠s.

 繊維状や板状のような異方性フィラーが配向して分散した複合材料では、配

向方向の弾性率や破断強度が大きくなることはよく知られており7〉、ここでも

クレーやタルク配合で、損失正接が大きく、炭酸カルシウムよりもEやTβが

向上した原因として、モンモリロナイト分散ナノコンポジットの補強機構8)と

同様に、板状粒子が薄片となって資一ル列離方向に配向したため、ゴムとの界

面が大きくなって相互作用が強くなり、ゴム分子の運動性が制限されているこ

とが考えられる。

3.i.3.8相対損失正接とゴム物性の関係

 フィラーの補強効果には、フィラー表面の活性点とゴム分子の物理化学的な

相互作用だけでなく、フィラーの分散状態や形状も影響しており、このような

補強効果に関する要因が力学緩和の大きさに影響していると思われる。したが

って、重錨δ。/{鍛δ鐙をフィラーの補強効果の実験的なパラメーターとして用

一62一

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いることが考えられる。

 Fig.3.1.16にE,c/E,mとtanδc/tanδmの関係を示す・いずれのゴムでも・

E,、/E,mはtanδc/tanδmの関数として一律的に表すことができ・粒状フィラ

ーでは式(3.1.3〉、板状フィラーでは式(3.1.4)が実験式として得られた。

  E,c/E,m一・.00(tanδc/tanδm)’2・66 r=0.980 (3.1.3)

  E,c/E,m一・.45(tanδc/tanδm)’2・75 r=0.9・5 (3.・.4)

 ここで、係数1.45はフィラー形状の効果を示していると思われる。

 tanδc/tanδmは、化学的な相互作用の他に、シリカでは粒子の凝集構造、

クレー、タルクでは配向の効果も含んでいると思われることから、E’にはフィ

ラーの分散状態の影響が大きいと考えられる。

30

ε20自

ぺ一〇

 10

1v

1.0

球0.8  0.6  0.4  0.2  0 1.O

Tanδ /Tanδ  c     m

3     

O㏄・團▲▼

証。□△▽

田恥⑱團愈▽

鋭   M

  RDR

醸田即冊

0.8  0.6  0.4  0.2   0

 Tanδ〆Tanδ   c     m

町αOロム▽

 

田⑧囲ム留

T   M

  RDR

甑冊即冊

Fig.3.L16Relationbetween relative loss tangent and relative modulus

     ofvulcanizates.

 Fig.3.1.17にM300の相対値(M300c/M300m〉とtanδc〆tanδmの関係を示す・

E’と異なり、伸張モジュラスはtanδc/tanδmの増加とともに直線的に大きく

なっており、特にHAF配合でその傾向が著しかった。HAF配合ではフィラーゲ

ルが生成し、Krausplotの傾きが負で、これらの指標はフィラーとゴムマトリッ

クス間の化学的な相互作用の存在を示している。また、界面相互作用に乏しい

白色フィラーではtanδc/tanδm依存性が小さく、フィラー間であまり差違が

一63一

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なかった。したがって、M300は界面の強い相互作用に大きく依存していると考

えられる。また、NRは他のゴムと挙動が異なっており、他のフィラーよりHAF

では依存性が小さく、板状フィラーでは大きかった。これは、フィラーが伸張

結晶化に影響しているためではないかと推察される。

10

8   6   4

900〔Σ\ooo斡】≧

SBR o HAF

□Silica

△Clay

▽Talc

◇CaCO3

             

            O

 R

冊    α2m

            虚

            oπ

        ▽    6  c

            αδ

         ▽ 8㎝

        o ◇ αT

         O

            O

            1

0  8  6  4   

1

1   g。。ぎ\。。。ぎ

o

o

O

▽▽ o自

EPDM

.0  0.8 0.6 0.4 0.2  0

 Tanδc/Tanδm

Fig.3.1.17Relati・nbe細eenrelative1・sstangentandrelative

    tensile modulus of vulcanizates at300%.

Fig.3.・.・8に棚寸引張強さ(TBc/TBm)をtanδc/tanδmに対してプロットし

た結果を示す。NR以外のゴムでは、NBRのシリカ配合で配合量が少ない場合

を除いて、TBc/TBmはフィラーの種類によらず・tanδc/tanδmに対してほぼ

一律に直線的に増大した。この現象から、TBは化学的な界面相互作用やフィラ

ーの分散状態の効果など、フィラーの補強要因すべての影響を受けていると考

えられる。NRは、伸張結晶化による自己補強効果のために他とは異なった挙動

を示したと考えられる。

 tanδc/tanδmに影響を及ぼす要因の寄与を定量的に明らかにすることはで

きなかったが、伸張モジュラスにはフィラー一ゴム間の化学結合に近い強固な

相互作用の効果が大きく、弾性率にはフィラーの凝集性や形状が影響し、引張

強さにはこれらの要因すべてが関連していることが推察された。

一64・

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2

   ー

ヨ・ヒQ岬

00

 1

NR

 80△Oo□◇鮎評粘亙ロ啄

 ◇

15

10

5

   5        1

目。。ミ。。。↑

NBR

115

o HAF

口Silica

△Clay

▽Talc

◇CaCO3

   口口  口

 合△ ▽ ▽

◇◇◇

10

5

1

EPDM

o▽

  LO   O.5   0LO   O.5   0    Tanδc/Tanδm    Tanδc/Tanδm

Fig.3.1.18Relation between relative loss tangent and relative

    tensile strength.

3.1.3.8シランカップリング剤の効果

 白色フィラーでは、カーボンブラックより伸張モジュラスが小さいことが課

題である。伸張モジュラスは、フィラー一ゴム間の化学結合に近い強い相互作

用に依存していると考えられることから、白色フィラー配合で伸張モジュラス

を向上させるためには、ポリマーとフィラーが化学結合するような手段をとる

ことが必要である。この目的には、シリカのように表面シラノール基を有する

フィラーではシランカップリング剤の配合使用が有効と考えられる。

 Table3.1.4に、Vf=0.18として、シランカップリング剤ビス(3一トリエトキシ

シリルプロピル)テトラスルフィド(TESPT)を、シリカでは4phr、クレーとタル

クでは2phr追加配合したSBR加硫ゴムのtanδc/tanδm・Vro/Vr・E1・TB・

M300をまとめて示す。.なお、カップリング剤を用いてもフィラーゲル量は増加

しなかった。TESPTの配合により、tanδc/tanδmはほとんど変化していない

が、V,0/V,は大きく低下したことから、tanδ。/tanδmに界面接着性の寄与が

大きくなったと考えられ、したがって、クレーやタルクでも、シリカと同様に

M300が著しく向上した。また、シリカでは・TBが向上する一方・E7が低下して

おり、これは、TESPTが分散剤の効果を示して、シリカの凝集構造が小さくな

一65一

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ったためと思われ6)、s-s曲線(Fig.3.1.19)の立ち上がりも低くなって降伏点が

現れなくなった。

  Table3.1.4Effbct ofTESPT on physical properties ofSBR vulcanizates.

silica Clay Talc

Control TESPT Control TESPT Control TESPT

Tanδc/Tanδm O・3920・3980・6260・6240・6860・694

VrO押r  1・2020・865LO870・8361・0740・749

E’(MPa,20℃)

TB(MPa)

・M300(MPa)

51.2   40.8   16.4   15.5   18.5   17.3

23.6   29.7   19.1   18.0   13.5   13.0

4.77   12.6   2.42   8.09   3.23  6.78

5   4   3   2   1   0

       (超』≧) ののoおの

SBR

Silica+TESPT

 Silica

 寺

      0     50    100   150   200

           Straih(%)Fig.3,1.19Stress-strainじu四es・fvulcanizatesaddedTESPT・

3.1.4結語

 5種類のフィラー(カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、カオリンク

レー、タルク)を配合したNR、SBR、NBR及びEPDMの加硫ゴムの引張強さ・

伸張モジュラス、弾性率に及ぼすフィラーの配合効果を調べるとともに、マト

リックスゴムーフィラー間の相互作用をziege1の方法で評価し、物性値との関

係を調べた。

 弾性率は、純ゴム配合ゴムとフィラー配合ゴムのtanδのピーク値の比(tanδ

一66一

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c/tanδm)で一律的に表され、tanδc/tanδmが大きいほど弾性率が高かったが、

シリカなど粒状フィラーとクレー、タルクの板状フィラーでは弾性率のtanδc

/tanδm依存性が異なり、板状フィラー配合の方が大きく、tanδc/tanδmの値

が粒状では0.6、板状では0.8以上になると弾性率が急速に増大した。これは、

ゴムマトリックス中でフィラーが凝集構造を形成したり、ロール列理方向に配

向したりしているためであると考えられた。

 一方、NR以外の伸張結晶化しないゴムの引張強さは、いずれのフィラーの場

合も、ゴムごとに同じ直線上でtmδc/tanδmの増大とともに向上したが、伸

張モジュラスとtanδc/tanδmは、カーボンブラックとその他のフィラーで異

なった直線関係にあり、いずれのゴムでも、カーボンブラック配合の方が依存

性は著しく大きかった。また、板状フィラーと粒状フィラーでは損失正接に及

ぼす影響が異なり、損失正接は板状のクレー、タルクでは配合量とともに著し

く大きくなった。これらの結果とフィラーゲル量や膨潤度の測定結果から、界

面相互作用の機構として、カーボンブラックではゴムマトリックスとフィラー

間の化学的な強い相互作用が存在しており、シリカではフィラー粒子間の相互

作用、板状のクレーやタルクでは形状効果が影響していることが示唆された。

 このように・tanδc/tanδmは。界面相互作用だけでなく、フィラー粒子問の

相互作用や、形状効果を含めたゴムーフィラー間の相互作用を評価するパラメ

ーターであると考えられた。

                文献

1)福森健三:”新版ゴム技術の基礎”,p.53,日本ゴム協会(1999)

2)G.Kraus:R〃わわεr Chε醒.Tεchηol.,31,6(1964)

3〉D.H.Droste,A.T.Dibenedetto:1.。4p∫,1.PoJy規.3c∫.,13,2149(1969)

4)K D.Ziegel:」,ColJo躍1雇εゲαcεScf.,29,72(1969)

5)右田哲彦他:”ゴム公式集”,p.38,日本ゴム協会(1980)

6)伊藤眞義:日本ゴム協会誌,76,198(2003)

7)LNielsen:1’高分子と複合材料の力学的性質”,p.277,化学同人(1976)

8)M.Ganter,W.Gronski,P.Reichert,R.M登lhupt:Rめわεr Chε吻.Tεごhη01.,74,

2001(2001)

一67一

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第3.2節水酸化マグネシウムのゴム配合効果

3.2.1.緒言

 前節で明らかにしたように監シリカやカオリンクレーなど板状フィラーは補

強効果を有するが、その表面酸性のために加硫を遅らせる欠点がある。また、

シリカは練り生地粘度を著しく大きくするために、シリカ配合は加工性に劣る。

炭酸カルシウムのような塩基性フィラーは加硫に影響せず、粘度上昇も小さい

が、補強効果が良好でない。

 ところで、水酸化マグネシウムは塩基性で、結晶形は板状である。したがっ

て、ゴムに配合した場合、加硫を遅らせることなく、クレーなどと同様な配合

効果を示すことが考えられる。また、シランカップリング剤の効果も期待され

る1)。水酸化マグネシウムは、非ハロゲン系の難燃剤としてのEVAをはじめと

するプラスチックヘの応用例が多く、加硫ゴムの物性への配合効果を調べた研

究としては、筆者らの調べた限りでは、中司2)らの報告がある。中司らは、水

酸化マグネシウムの難燃効果と加硫ゴムの物性を調べているが、彼らの用いた

水酸化マグネシウムでは物性の低下が著しいことが報告されている。これは、

粒子サイズが長さ方向で数μm程度の市販品を用いたためであると推察され

る。したがって、より微粒子のものを用いれば、補強効果が向上することが期

待される。

 水酸化マグネシウムは、マグネシウムイオンと水酸化カルシウムの反応で合

成されるが、反応条件の調整により、結晶の長さ方向のサイズが0.2μm程度で

サイズのそろったものが合成できる3)。この微粒子水酸化マグネシウムのゴム

配合効果を調べた結果、加硫ゴム補強性を促進する効果を示すとともに、加硫

促進効果を有し、比較的少量配合で難燃性を示すことがわかった。またシラン

カップリング剤の補強性改善効果が認められた。

3.2.2.実験方法

 水酸化マグネシウムは、ナイカイ塩業で試作されたもので、比表面積が8、

23、32、42及び46m2/9の5種類を用いた。

一68一

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欝 鰍

               輪

              一               i.2μ懸

Fig32護SEM陣otog即h GfMg{OH)2.

                2 Fl暮.3.2.1に示した比表面積が42憩/gのもののSEM写真から、形状が六角板

状で、長さ方向が0.2μ鐙程度のよくそろった粒子であることがわかる。

 ゴム及びゴム配合薬品、シランカップリング剤は前節と同様で、配合処方も

同じである.

 混練方法や加硫方法・条件の決定方法、フィラーゲル、膨潤度などの測定方

法も前節と同様である。

 加硫ゴムの物性試験は、」総に準じた試験片、試験方法で行った。

 粘弾性試験も前節同様の試験片、試験条件、試験機で行った。

 練り生地の粘度は、直径2灘搬、長さ扮搬mのノズルを取り付けた東洋精機製

作所製iCPMD-C型キャピラリーレオメーターを用いて⑱0℃で測定した。

 酸素指数は、スガ試験機製酸素指数法燃焼性試験機を用いて、JISK7201に準

じて測定した。

3.2.3結果と考察

3.2.3.釜練り生地の性質

 F圭g.3.2.2に、水酸化マグネシウム配合SBR練り生地の見かけの粘度のフィラ

ー体積分率(Vf)依存性をシリカ配合のそれと対比して示す。シリカでは配合量

とともに箸しく増大している。この増粘効果は、前節で示したような粒子間の

相互作用による凝集構造の形成のためと考えられる。一方、水酸化マグネシウ

一69一

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300

 200富お

曳)P100

SBR

silica

\Mg(OH)2

          0           0      0.1      0.2      0.3

                 Vf

     Fig.3.2.2Viscosityofcompounds filledMg(OH)2andsilica.

             Shear rate’ 1.875sec_1                 つ            Temperature l100℃

ムではあまり高くなっておらず、多量配合しても加工性への影響はあまり大き

くないことがわかる。このことから、粒子間相互作用は大きくないことが推察

される。

 次に、sBR練り生地(70phr)の加硫曲線をFig.3.2.3より見ると、加硫は、シ

リカ配合では著しく遅くなっているのに対して、水酸化マグネシウム配合では

逆に著しく速く、純ゴム配合より促進されており、これは塩基性による加硫促

進効果と思われる。NR、NBR、EPDMでも、Vf依存性は異なるが、粘度、加硫

特性とも同様な傾向にあった。

2

     1

(ε・乙05日o↑

『Mg

(OH)2

silicaSBR

\Puregum

  0   10    20   30   40    50

        Time (min)

Fig.3.2.3Cure curves ofSBR compounds at150℃.

  0

一70一

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3.2.3.2比表面積と引張強さ、300%伸張モジュラス

 フィラー配合量を70phrとして調製したSBR加硫ゴムの引張強さ(TB)及び

300%伸張モジュラス(M300)と比表面積の関係をFig.3.2.4に示す・8m2/9のもの

では補強効果に乏しいが、TB、M300とも比表面積の増加とともに大きくなって

おり、比表面積が40以上では、TBは20MPa近く、M300は5MPaに達しており・

補強効果はクレーなどと同程度であった。水酸化マグネシウムは、微粒子化す

ることにより、ゴム補強効果を示すことが認められた。

 比表面積が46m2/9のものを用いた場合、練り生地がロールに粘着する傾向に

あったので、以下の実験では42m2/9のものを用いた・

30

 AU       AU

 《∠       -

(o角Σ)。。瀞Σ.自o↑

TB

\ o O

M300

 \

SBR

     0    20   40   60      Specific surface area(m2/9)

Fig.3.2.4Relation between specific surface area and

    亡ensile strength andtensile modulus at300%.

    0

3.2.3.4水酸化マグネシウム配合量と物性

 Fig.3.2.5に、水酸化マグネシウムを配合した各加硫ゴムの諸物性値とphrで

示した配合量の関係を示す・NRでは・TBは他の充てん剤を用いた場合同様・

配合量増加とともに低下したが、他では大きくなっており、SBR、NBRでは70phr

で20MPa近く、EPDMは50phrで22.5MPaに達している・M300を見ると・SBR

では100phrでも5MPaとあまり大きくないが・NR・では70phrで8・8MPa・100phr

で11MPa、NBRは70phrで7MPa、100phrで10.7MPa,EPDMでは100phrで7.7Mpa

一71一

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35

  30

盆皇25)20

8ゴ15’10

  5

O ○

TB

M30         0          0   20  40   60  80  100  120

             Filler content(phr)

Fig.3.2.5Dependence・ftensilestrengthand300%m・dulus・fvulcanizates

    onthecontentofMg(OH)2

       0●;NR,□田;SBR,▽▼;NBR,△▲;EPDM

Table3.2.1Physicalprope孟iesofvulcanizatesfilled Mg(OH)2・

  NR      SBR      NBR      EPDMMg(OH)2Silica Mg(OH)2S辺ica Mg(OH)2S皿ica Mg(OH)2Snica

TB (MPa)

EB (%)

M300(MPa)

Mloo(MPa)

TR (kN/m)

Hs   (JIS A)

27.3

580

8.4

2.4

53

60

27.4

620

6.0

2.2

75

73

16.5

580

4.2

1.8

28

62

23.6

720

4.8

2、1

45

80

14.6

605

4.9

2.1

39

67

25.4

600

4.6

2.2

57

82

23.7

610

5.6

2.8

41

74

22.1

680

5.1

3.0

43

87

Table3.2.20xygen index ofvulcanizates filled Mg(OH)2

phr  NR SBR NBR、EPDM 0   18

70   21

100   23

19

24

26

21  18

26  25

28  27

と白色フィラーとしてはかなり大きい値であった。

 Table3.2.1に、Vfがほぼ同じ(0.18)になるように配合したMg(OH)2とシリカ

の加硫ゴムの諸性質を比較して示した。水酸化マグネシウムは、シリカと同程

度の補強効果を示しており、シリカのように硬さが高くならないことが特徴で

ある。

一72一

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 T、ble3.2.2に酸素指数(LOI)を示す。LOIは配合量ととともに大きくなってお

り、NBRでは、100phrの配合で難燃性の指標となる27以上であった。

3.2.3.5シランカップリング剤の効果

 永田ら1)は、水酸化アルミニウム配合EPDM加硫ゴムの物性は・水酸化アル

ミニウムをシランカップリング剤で表面処理することにより向上するが、これ

は、カップリング剤のシラノール基とAlイオンとのメタロシロキサン結合に近

い結合が生成するためであることを報告している。したがって、水酸化マグネ

シウムでもシランカップリング剤が補強性向上効果を示すことが考えられる。

 Table3.2.3に一、シランカップリング剤TESPTを混練時に配合して加硫ゴムを

’調製して、その効果を調べた結果を示す。

Table3.2.3EffbctofTESPTonphysicalpropelties ofvulcanizates mledMg(OH)2・

NR SBR NBR EPDM

㊤㊤圃勾

㎜殉鯉刷那

(((((

  oo

、恥輪皿恥

20.8

530

9.3

41

60

19.4

500

13.3

31

65

19.8

444

13.4

47

67

19.9

415

14.0

40

70

Mg(OH)260phr,TESPT4phr

 TESPTのM300向上効果は著しく・NBR・EPDM・SBRでは4phrの配合で約

2.5倍近くになっており、カーボンブラック配合のそれに近い値となっている・

このようにSBR、NBR、EPDMでは、水酸化マグネシウムでもシリカ同様の効

果が認められたが、NRでは効果に乏しく、4phr以上用いてもモジュラスは向

上しなかった。

 乗用車タイヤトレッドは、転がり抵抗と濡れた路面でのブレーキ性能(ウェッ

トスキッド抵抗)の両立を要求される。その性能の指標として、0℃と60℃のtan

δが用いられており、ウェットスキッド抵抗は0℃のtanδが大きいほど、転が

り抵抗は60℃のtanδが小さいほど良好である4)。乗用車タイヤのトレッドに

はSBRが用いられているので、Table3.2.4にMg(OH)2を配合したSBR加硫ゴ

ムのtanδをHAF配合とシリカ配合と比較して示す。水酸化マグネシウム配合

一73一

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は、HAFやシリカ配合よりも、ウェットスキッド抵抗や転がり抵抗が優れてい

ることがわかる。

Table3.2.4Loss tangent ofSBR vulcanizates

Temp。 0℃  60℃

HAF    O.173Silica      O.135

Mg(OH)2 0.183

0.091

0.089

0.073

Vf O.18,TESPT4phr

3.2.3,6フィラー一ゴム間の相互作用の評価

 Fig.3.2.6にE・とtanδ、/tanδmの関係を示す・水酸化マグネシウムの場合も・

E・はtanδ、/tanδmの関数として一律的に表され・実験式として式(3・2・1)が得ら

れた。

  E,c/E,m-1.22(tanδc/tanδm)噌2’75 r=0・982 (3・2・1)

 べき乗項は、他のフィラーの場合とほぼ一致していたが、定数項

は粒状と板状の中問値で、これは、水酸化マグネシウムのアスペク

ト比はクレーやタルクより小さく、粒子サイズはシリカより大きい

ことを反映していると考えられる。

      40                    0NR                    ロSBR                    △EPDM      30                    ▽NBR    .9    田20    ,0    国

      10   デ           ロ           0       1       1.0  0.8  0.6  0.4  0.2  0.O

          Tanδc/Tanδm

Fig.3.2.6Relati・nbe伽eenrelativel・sstangent㎝drelativem・dulus・f

   vulcanizates filledMg(OII)2.

一74一

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 Fig.3,2.7に、他のフィラーと合わせて、水酸化マグネシウム配合

のTBc/TBmとtanδ、/tanδmの関係を示す。NR以外のいずれのゴム

でも、他のフィラーと同じ直線上でtanδc/tanδmに依存して増大し

ていることがわかる。

 また、Fig.3.1.8のように、M300c/M300mのtanδ。/tanδm依存性は、

他の白色フィラーと同様に、NRとそれ以外のゴムでは異なった傾

向にあるが、直線の傾きは他のフィラーとほぼ同等であった。

      2               15                        0HAF       NR                        □Silica                        △Clay      霞               10     的                        ▽Talc     ←       ・ザ急噛論     \1                        ◇CaCO3      0     の        ◇     ■     ←                        ■Mg(OH)2               5

00

 1

115

   5        1

smヒ。。。↑

NBR

 ロ ロロ

 亀 △ ▽ ▽ も

◇◇◇

10

5

1

EPDM

O▽

    1.0       0.5        0  1.0       0.5        0

      Tanδc/Tanδm    Tanδc/Tanδm

Fig.3.2.7Relation be掴veen relative loss tangent and relative tensile strength.

10

      5

霜oo斡Σ\ooo謝之

1

       1.0    0.5    0

          Tanδc/TanδmFig3.2.8Relation betweenrelative loss tangent andrelative tensile modulus

   ofvulcar丘zatesfilledMg(OH)2at300%・

一75一

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3.2.4.糸吉言吾

 平均粒子径0.2μmの水酸化マグネシウムは加硫ゴム補強性があり、ゴムによ

っては、引張強さ、モジュラスがシリカより大きい値を示した。また、多量配

合しても、硬さはシリカのようには高くならなかった。シランカップリング剤

の効果も認められた。しかも多量に配合しても練り生地粘度が上昇せず、加硫

は、シリカと逆に速くなる傾向にあった。また、tanδ。/tanδmをフィラーの

補強効果を評価するパラメーターとして用いることができることを確認した。

 ここで用いた水酸化マグネシウムは、難燃性を付与するために多量配合して

も、物性や加工性の低下が小さいと考えられる。しかしながら、スコーチの可

能性もあるため、今後加硫系についてはさらに検討する必要がある。

                文献

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2)青山 進,中司健一,池田慎哉,中西文昭:広島県東部工業技術センター報

告,9,87(1996)

3)ナイカイ塩業:公特開2-279515

4)平田 靖:1’新版ゴム技術の基礎”,p.201,日本ゴム協会(1999)

一76一