nara university museum 阿修羅像のつくり方...nara university museum!...
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NARA UNIVERSITY MUSEUM! 展示リーフレット1
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奈良時代には、金属や土、漆を使ってたくさんの仏像が作られました。有名な興福寺の阿修羅(あしゅ
ら)像は脱活乾漆(だつかつかんしつ) という技法でできています。脱活乾漆とは、土で作った原型に麻布
を漆で貼り重ねて形を作る技法です。材料は高価で、時間も手間もかかりますが、興福寺の八部衆(はち
ぶしゅう)像 や十大弟子像をはじめ、東大寺法華堂の不空羂索(ふくうけんさく)観音像、金剛力士像、唐
招提寺の盧舎那仏(るしゃなぶつ)像など、多くの作例があります。
ここでは、興福寺阿修羅像の復元模造を例に脱活乾漆造の製作工程をご紹介します。
木を組み合わせて、原型の心
木(しんぎ)を作ります。
心木には土がつきやすいよう
に荒縄や麻紐を巻き付けます。
2 原型を作る
脱活乾漆技法
阿修羅像のつくり方
1 心木を作る心木に土をつけて原型を作ります。ワラを混ぜた土でおおま
かな形を整えた後、目の細かい砂や紙の繊維などを混ぜた土
をつけ、竹べらを使って目鼻や口、衣のひだなど細かい部分
を形作ります。
土で作った原型の上に、麻布を貼
ります。接着には漆と小麦粉糊を
混ぜた糊漆(のりうるし)に少量の
木の粉を混ぜたものを使います。
布は布目の方向を変えながら、数
枚貼り重ねます。今回の復元では
麻布を三枚重ねました。興福寺の
阿修羅像は4〜6枚の布を重ねて
いることが調査でわかっています。
3 布を貼る
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NARA UNIVERSITY MUSEUM! 展示リーフレット1
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4 中の土を取り除く
5 木屎漆をつける
6 仕上げ
頭の後ろと背中の部分の布を切って
取り外し、中の土をすべて取り除き
ます。この時、原型の心木も一緒に
取り出します。
空洞になった像の中には像を支える
ための心木を新�たに組み入れます。
組み入れた心木は中で動かないよう、
像の外側から釘を打って固定します。
開口部を紐で縫い合わせてふさぎ、
表面に木屎漆(こくそうるし)を盛り
つけて形を整えます。木屎漆は漆に
木の粉を混ぜて作りますが、近年の
研究で奈良時代の木屎漆にはニレの
樹皮が使われていたことがわかりま
した。ニレの樹皮は水を加えるとね
ばりが出ます。このため、ヒノキの
粉を使った場合に比べて少ない量の
漆で形を作ることができます。ハルニレ
水で練った砥の粉(とのこ)と漆を
混ぜた錆漆(さびうるし)を全体に
つけ、表面をトクサでみがいてな
めらかに仕上げます。
その後、彩色をして完成です。
復元模型制作 山崎隆之 解説 栗田美由紀
編集・発行 奈良大学博物館 http://www.nara-u.ac.jp/museum/index.html
〒631-8502 奈良市山陵町1500 tel. 0742-44-1251 fax. 0742-41-0650
発行日 2011年5月9日
トクサ
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