new 教職員の働き方改革の推進 · 2020. 4. 13. · 25 研究題目...

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25 研究題目 教職員の働き方改革の推進 〜これからの社会変化に対応し、授業改革を推進するために〜 長崎県南島原市立南有馬中学校 校長 大嶋 博之 1 はじめに 2 学校の概要 3 研究の視点と本校の課題・目標 4 研究の概要 5 具体的な取組 6 研究・実践の成果 7 今後の課題 8 おわりに

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  • 25

    研究題目

    教職員の働き方改革の推進 〜これからの社会変化に対応し、授業改革を推進するために〜

    長崎県南島原市立南有馬中学校 校長 大嶋 博之

    1 はじめに

    2 学校の概要

    3 研究の視点と本校の課題・目標

    4 研究の概要

    5 具体的な取組

    6 研究・実践の成果

    7 今後の課題

    8 おわりに

    目 次

  • 27

    1 はじめに 日本の学校教育は、世界的に上位の学力を保ち(学習到達度調査/OECD)、経

    済を発展させ、安全・安心な社会をつくる人材の育成に貢献してきたと言える。しか

    し一方、日本の教員※1は、中学校では約6割が過労死ラインを超えて週20時間以上

    の残業をし、OECD加盟国中で最長の週当たり56時間の勤務をしていることが、文

    部科学省(以下「文科省」)やOECDの調査で明らかとなっている。

    なお、超過した教師※2の勤務時間は、「在校等時間/公立学校の教師の勤務時間の

    上限に関するガイドライン/文科省」とされ、労働基準法(以下「労基法」第37条)

    に規定される「時間外、休日及び深夜の割増賃金」(以下「残業手当」)の支給対象と

    もなっていない。

    これらの環境の中で教職員※3は、「教育を通じて国民全体に奉仕する教育公務員の

    職務とその責任の特殊性/教育公務員特例法第1条」に鑑み、保護者や地域社会の負

    託や教育改革の求めに応え、子どもたちの資質・能力を最大限に高めるとともに、人

    として健全に育てようとして、以下の状況にある。

    <教員は…>

    〇自身の労務管理がなされておらず、「残業手当」というインセンティブ(報酬、

    利益)がないにも関わらず、超過勤務(“持ち帰り仕事”を含む)を無制限に

    行っている。

    <管理者(校長)は…>

    〇「残業手当」の支出と業績(収入)のバランスを管理する経験がないことに加え、

    自分自身も“やってきた”という経験があるとともに「在校等時間」を無理に制

    限すれば、教員は仕事を自宅に持ち帰ることを知っている。

    <保護者・地域との関係の中で…>

    〇普段から学校が正規の勤務時間の前や後、さらに休日においても部活動や地域行

    事等において参加・協力・貢献する慣習が定着しているため、多様な期待が集ま

    り、教職員の業務が肥大化している。

    このような状況の中で、教職員の精神疾患による病気休職者数は毎年約5,000人

    (勤務実態調査/文科省)、自殺者数は毎年約100人(生活安全の確保に関する統計等

    /警察庁)を数え、過労死は、2016年度までの10年間で63人(2018年4月21日/毎日

    新聞報道)が災害補償対象となっている。これらは氷山の一角と考えるべきであり、

    身近な同僚(管理職にあっては部下教職員)がその状態に近づいているかもしれない

    という想像力と観察力が必要である。

  • 28

    私たちは、これらの現状に正対するとともに、仕事の仕方を抜本から見つめなおし、

    生徒たちの最前線で支える教職員が心身ともに健康で、その専門性を十二分に発揮し

    て、質の高い授業や教育活動を担っていくことを目指し、その具体的な一歩として、

    現行の業務を見直し、明確化・適正化を図りたいと思い本研究を進めた。

    <「教員」、「教師」、「教職員」について>

    ※1…教員 :「OECD国際教員指導環境調査」では、調査の対象を「校長および教員」としている。

    ここ以外の記述においては、「教育公務員特例法」等に則り、“教員”を校長を除く授業

    等の教育活動を行う者(ただし、各種支援員等を除く)とした。

    ※2…教師 :「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン/文科省」では、その対象を

    「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法に規定する教育職

    員」としている。

    ※3…教職員:「地方公務員法」では、教職員を「校長、教員および事務職員」としている。ただし、

    本研究における調査対象人数は、教頭、教諭、養護教諭、事務職員の11名とする。

    なお、校長や各種支援員、用務員等を含めた本校に勤務する者の総称は“職員”とする。

    2 学校の概要 南有馬中学校は、長崎県島

    原半島の最南端にある。本校

    生徒の気質は穏やかであり、

    純朴で素直な心が育ってい

    る。教職員等の指導に素直に

    応じ、授業や学校行事等にも

    一生懸命に取り組むなど、生

    活指導上の問題も少ない。

    地域的には少子高齢化と人

    口減少が急速に進んでいるも

    のの、世界文化遺産に登録さ

    れた「原城跡」や地質学的に貴重なジオサイト等のほか、トマトやそうめんなど特産

    物もある。南島原市としても柔軟な発想を持った次代を担う人材の育成を求めている。

    一方、本市教育委員会(以下、「市教委」)は、近年、芸術振興を目指した施設やIT

    関連の研究機関等を誘致するとともに、英語検定受検に対する補助事業を行うなど積

    極的に本市の活性化を進めている。学校教育に対しても、EAT(イングリッシュ・

    アシスタント・ティーチャー/6名を小学校に配置)、特別支援教育助手、学校支援

    員、心の教室相談員を各学校に配置するとともに、「運動部活動の方針」の制定によ

    り部活動の改革を後押ししたり、事務作業を市教委事務局に引き取ったりするなど、

    学校現場の負担を軽減する措置を積極的に講じている。

    このような環境の中、本校は、激動する社会の中でたくましく生き抜く力を身につ

    け、傍にいる人たちに「あなたがいてくれて良かった」と思ってもらえる人間づくり

    を推進している。

  • 29

    〈学校教育目標〉

    「志操堅固にして徳性が高く、敬の心と志を持った人間の育成」

    なお、本校の職員数等は、以下のとおりである。(平成31年4月1日現在)

    3 研究の視点と本校の課題・目標 (1) 視点

    生徒たちは、授業等の中で意図的・計画的に学ぶとともに、人としての生き方を

    そばにいる大人の姿に学ぶ側面がある。ゆえに教員は、授業者として高い資質・能

    力を持つだけでなく、教育活動として推進している健康教育、キャリア教育、人権

    教育などが目指す人間像(生き方モデル)の1つを体現し、地域や家族と良好な関

    係を築くとともに、健康で充実した生活を送っていることが望ましい。

    一方、私たちには、以下の課題に立ち向かうことが求められている。

    生 徒 数…87名(1年生25名、2年生31名、3年生31名)

    学 級 数…3学級(各学年1学級)

    職 員 数…校長1名、教頭1名、教諭8名、養護教諭1名、事務職員1名、

    ALT1名、特別支援教育助手1名、心の教室相談員1名、

    ICT支援員1名、用務員1名

    学校支援員1名(諸事情により6~7月のみ配置)

    教諭1人当たりの教科等授業持ちコマ数

    …平均15.7

    (教頭・養護教諭、事務職員を除く、最少14.2~最大16.2)

    部活動数…8(運動系7、文化系1、外部指導者6名)

    生徒会指導に関する担当数

    …本部2名、自治委員会(5)各1~2名で担当

    PTA活動に関する担当数

    …本部役員3名(顧問、書記、会計)、専門部(3)各3名

    今の子供たちやこれから誕生する子供たちが成人して社会で活躍する頃には、我が国は厳しい挑

    戦の時代を迎えていると予想される。生産年齢人口の減少、グローバル化の進展や絶え間ない技術

    革新等により社会構造や雇用環境は大きく、また急速に変化しており、予測が困難な時代となって

    いる。また、急激な少子高齢化が進む中で成熟社会を迎えた我が国にあっては、一人一人が持続可

    能な社会の担い手として、その多様性を原動力とし、質的な豊かさを伴った個人と社会の成長につ

    ながる新たな価値を生み出していくことが期待される。

    中学校学習指導要領解説【総則編】

  • 30

    このような求めに応じ、授業を世の中の流れから乖離させず、生徒たちに必要な

    資質・能力をはぐくむためには、教職員自身が“社会”や“社会の変化”に対する

    知見や見識を持つことが必要である。ゆえに、まずもって私たち自身が社会の中に

    身を置き、一市民として人と言葉を交わし、書籍を読んだり、実際に活動したりし

    て体験や実感を蓄積する時間が必要である。この視点からも教職員の働き方改革は

    急務である。

    これらのことから、本校における働き方改革

    は、過労死や精神疾患等を防止する健康保持の

    視点だけでなく、生徒に向き合う時間を確保す

    るとともに、長時間働くことをもって“一生懸

    命”であるという認識から脱却し、教職員個々

    の(業務でない)自己研鑽やリフレッシュする

    ための時間、家族や地域の中で生き、人として

    深まる時間などを確保するためにあることを念頭に置いた。

    以上のことから、本研究の目的を以下のとおり設定した。

    ① 本校の働き方改革は、その方向性を健康の保持という喫緊の課題はもとより、

    教職員自身が自己を向上させ、人としてよりよく生きるための機会(または時

    間)の確保という視点をもって整理し、Society5.0や人生100年時代等へと移

    行する社会の変化に対応する教育を推進するために環境を整えるものとする。

    ② 学校における業務の内容や方法、環境、働き方の意識等を改善するための具

    体的な方策を実践し、他校でも活用できるようモデルとして示す。

    以上の視点をもって学校運営全般を見直し、これからの社会の変化に対応して授

    業改革を推進するために、柔軟性があり持続可能な業務環境をつくりたいと考え、

    本研究を進めた。

    正規の勤務時間

    個としての 自分の時間

  • 31

    (2) 課題と目標

    〈職員の意識等(ひと)に関すること〉

    教員の労働条件は、一般企業のそれとは異なり、労働基本法

    に基づくものの「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等

    に関する特別措置法」(以下、「給特法」)により「残業手当」

    は支給されない。このことから、職員の意識等に以下の状況が

    生じている。

    ア 一般社会の残業手当て制度やその額など(いわゆる“た

    だ働き”は禁じられていること)を知らない。

    イ 労働に関係する法令等の知識が不足している。

    ウ 超過勤務等に関する労務管理が行われていない。

    エ 「子どものため」に超過勤務が恒常化している。

    オ 超過勤務がプライベートな時間を圧迫し、家族や市民としての生活時間や自

    己研鑽の機会等が少なくなっている。

    〈時間の使い方(とき)に関すること〉

    本校の超過勤務等の実態は、全国的な調査結果(平成28年文

    科省調査)と同様の実態があり、以下のとおり多数の教職員が

    過労死ラインを超えて業務を行っている実態がある。

    ○年休取得数 …8.5日(H29の年平均)

    ○超過勤務時間 …68.1時間(H30 4~7月の月平均)

    ・ 80時間越えの月がある教職員…5人 ・100時間越えの月がある教職員…3人 ○時間帯別超過勤務時間(H30年4月第2~4週 課業日の日平均)

    校 長… 48分

    教 頭…1時間3分

    教諭等… 30分

    校 長…1時間00分

    教 頭…3時間19分

    教諭等…2時間14分

    ※4月の部活動終了時刻は18時30分

    《目標》

    会議や行事の

    指導等はもとよ

    り、普段の業務

    について改めて

    その価値や意義

    を再確認すると

    ともに、業務の

    効率化を図り、

    超過勤務時間を

    削減して正規の

    勤務時間内に収

    ま る よ う に す

    る。

    《目標》

    勤務時間以外

    の時間の重要性

    を再確認すると

    ともに、自身の

    人生を豊かにす

    ることが教育の

    充実につながる

    ことを認識し、

    健康で明るく自

    由闊達に学び合

    い、高め合う教

    職員集団(チー

    ム)をつくる。

    超過勤務

    超過勤務

    部活動

    勤務時間

    (8:05~16:35)

    始業前

    終業後

  • 32

    〈業務方法や環境(もの)に関すること〉

    これまで作成した紙媒体とそのデータ、教具等が整理され

    ず、整理の仕方や運用方法等のルールも整えられていなかった

    ため、業務を継続させて成果を蓄積していくなど、年度を越え

    た組織的な取組が行いにくい環境にあった。

    以上のことを通して、以下の実現を目指す。

    ※4…「給特法」第3条が示す教職調整額(基礎給与の4%)の算定根拠となったとされる昭和41

    年の勤務実態調査結果/文科省を参考。

    ※5…労基法(第39条)が示す年休に関する規定を参考。

    4 研究の概要 本研究では、文科省通知(H30/2/9)「学校における働き方に関する緊急対策の策

    定並びに学校における業務改善及び勤務時間管理等に係る取組の徹底について」に示

    されている改善項目の内、「業務の管理・調整を図る体制の

    構築」および「授業時数の設定等における配慮」を参考に

    し、以下8つの種類に分けて取り組んだ。

    以下、その項目を示す。

    (1) 情報の集約、用品・用具の整理・整頓

    学校にある様々なデータや成果物、用品・用具等を整

    理・整頓し、効率よく取り出せるようにする。

    (2) 仕事量の平準化

    学期末に集中しがちな業務を長期休業日等に移行するな

    どして平準化し、教育効果を高める。

    (3) 意識改革

    超過勤務の原因や関係法令等を改めて知ることにより、

    実態を理解し、改善への機運を高める。

    (4) 時間の使い方の工夫・改善

    教科授業時数等を明確に管理し、日課や日常業務の工夫

    を図ることによって、余裕時間を生み出す。

    (5) 様式の工夫

    時間割や出退勤を管理・集計するソフトや通知表、出張

    実 践 項 目 (便宜上、通し番号を付した)

    (1)①情報集約

    ②データ管理

    ③用品・道具

    ④リーフレット

    ⑤ホームページ

    (2)⑥夏休みの授業

    (3)⑦勉強会

    ⑧教頭退庁時刻

    (4)⑨時数管理

    ⑩日課

    ⑪タイムカード

    ⑫教科連絡

    ⑬評価作業

    ⑭提出物集配

    ⑮短学活

    ⑯目標設定

    (5)⑰出退勤様式

    ⑱通知表

    ⑲出張報告

    ⑳検食簿

    ㉑指導案

    ㉒マニュアル

    (6)㉓決済ルート

    ㉔権限委譲

    ㉕ミーティングエリア

    ㉖職員会議

    ㉗机上

    ㉘挨拶回り

    (7)㉙生徒指導

    (8)㉚学校支援員

    〇個々の超過勤務時間を月8時間(※4)以内にする。

    〇全職員が年休を年20日(※5)取得する。

    《目標》

    あらゆるもの

    を整理し、取り

    出しやすくする

    とともに、成果

    が蓄積する環境

    をつくる。

  • 33

    報告、検食簿等の様式を工夫し、効率を高める。

    (6) 権限委譲、会議やミーティングの効率化

    決裁ルートや教頭以下の専決事項を再編するとともに、会議や執務環境を整える。

    (7) 危機管理

    生活指導の徹底を図ることにより、問題行動等に対応・対処する時間を削減する。

    (8) 学校支援員(平成31年度からの市教委事業)の活用

    本市教育員会の事業により配置された「学校支援員」にプリントの印刷等を委託

    して、業務のスリム化を図る。

    上記、それぞれの取組においては、今回の実践により削減したと考えられる時間を

    可能な限り計上して示し、成果を数値的に捉えようとした。

    また、取組の後には、本校教職員を対象として「効果の実感等」に関するアンケー

    トを実施し、負担感の軽減等に関する成果を検証した。

    なお、1年間のうちの課業日、休業日、週休日および休日の日数は、通常は学年の

    授業日等により差が生じるが、便宜上、以下のとおりとした。

    5 具体的な取組 (1) 情報の集約、用品・用具の整理・整頓 (○数字は便宜上、通し番号を付与している。)

    ① 教育活動の全てを1冊にまとめ、随時更

    新できるようにして、業務の継続性を高

    め、改善を蓄積していく仕組みをつくっ

    た。

    <成果>

    各種の資料を、新しく作成する必要がなく(案件によっては、そのまま起案・

    協議する)、前年度までの流れを踏まえ、担当者の異動による様々な影響を受け

    ることなくノウハウを蓄積することができるようになった。

    また、“探す”時間を短縮することができるとともに、先を見越して目を通し

    ておいたり、様々な取組を横断的に検討(カリキュラム・マネジメント)したり

    することなどがしやすくなった。

    ・課業日 …200日(授業や行事等を行う日)

    ・休業日(課業日以外の勤務日)… 45日(授業はないが、会議や研修、部活動等を行う日)

    ・週休日および休日 …120日(授業も会議も研修もないが、部活動は行う日※) ※本市「運動部活動の方針」により、週休日のうち1日は休養日にあてるよう定められている。

  • 34

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉 =

    〈削減できた時間〉

    60分×222件 20分×222件 1件あたり40分(222件)

    (148時間0分0秒)

    ※「教育計画」の内容項目数は、222項目。

    ※1つの資料を作成するために60分かかっていたと仮定し、「教育計画」を使用することにより

    作成時間が20分に短縮されたとして計上した。

    ② 校務分掌に基づくフォルダーを作成し、

    散在していたデータを集約・整理して、取

    り出しやすくした。

    <成果>

    職員の誰もが同じデータにアクセスし、

    情報を共有して重複を避け、成果を蓄積で

    きるようになった。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    1分×11人

    ×3回×245日

    20秒×11人

    ×3回×245日

    40秒×11人×3回×245日

    (89時間50分0秒)

    ※教職員(11人)が、1日3回共有フォルダにアクセスした(データを探した)と仮定した。

    ③ 用具等の保管場所を整理・整頓し、名前カードを貼

    り付けたり、作業机を設置したりするなどして、物品

    を取り出しやすくした。

    <成果>

    何があり、何が無いのかを明確にし、物を探す時間を削減した。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    30秒×11人

    ×1回×245日

    20秒×11人

    ×1回×245日

    10秒×11人×1回×245日

    (7時間29分10秒)

    ※教職員(11人)が、1日1回教具室内の用具等を取り出したと仮定した。

    ④ これまで学校要覧として冊子(約30ページ)にしていたものをA3版用紙の

    両面に集約し、いつでも配布できるようリーフレット化した。

    <成果>

    製作は、比較的時間を自

    由に使える校長が行い冊子

    を廃止したことにより、教

    頭等が担ってきた作業時間

    を「0」にすることができた。

  • 35

    また、リーフレットを校内印刷にしたことにより増刷やデータの更新が容易に

    なり、保護者や来賓等に対する説明等がしやすくなった。

    〈取組前の時間〉

    - 〈取組後の時間〉

    =〈削減できた時間〉

    5時間×1件 (教頭等の作業時間)

    0時間×1件 5時間

    (5時間0分0秒)

    ※学校要覧の製作に5時間を要したと仮定した。(校長の作業時間は計上しない)

    ⑤ ホームページ上に生徒の取組だけでなく、年間行事や非常

    時の対応、就学援助や進路等の情報など、保護者が問い合わ

    せたい情報を掲載し、普段から本校教育に対する理解を得ら

    れるようにした。

    <成果>

    必要な情報がいつでも取り出せるとともに、保護者等への情報提供が密になり、

    学校理解が進むことにより、協力を得やすくなった。これらのことにより、学校

    への問い合わせが少なくなった。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    3分×1件

    ×245日

    3分×30件

    /1年間

    735分-90分

    (10時間45分0秒)

    ※1日に1件、電話による問い合わせがあったものが学期中に10件になったと仮定した。

    (2) 仕事量の平準化 ⑥ 本市小中学校管理規則の改訂を受けて長期休業日に教科授業を実施し、学期末

    や学期始めの業務を分散した。

    ・8月 8・9日…平和学習事前指導他(総3+3)

    (長崎県の公立学校では、原爆の日の8月9日に平和学習に関する取組を行っている。)

    ・8月21・22日…実力試験他(国1、社1、数1、理1、英1、学1)

    <成果>

    業務時間の削減を行うことはできなかったが、1学期末に行っていた平和学習

    の取組や夏休み明けに行っていた実力試験を夏季休業日中に行うことにより繁忙

    期の業務等を分散化し、準備やまとめに余裕を持つことができた。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    50分×12コマ 50分×12コマ 0時間

    本校ホームページのQRコード

    夏季休業日 平和集会

    準備と実施 実力試験終

    業式

    始業式

  • 36

    (3) 意識改革 ⑦ 働き方に関する法令や残業時間等の現状を知り、改革の必要性や目的・目標等

    を確認するとともに、学校だより等により保護者等にも理解を得られるようにし

    た。

    <成果と課題>

    労働環境改善の必要性や目的・目標を確認することができたが、「子どもたち

    のために」という教育への想いや教職員個々の生き甲斐の持ち方、キャリア形成

    としての職能向上の視点等を含めると、意識改革の難しさを感じている。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    0時間 20分×11人×3回学期ごとに1回実施

    (-11時間0分0秒)

    ※学期ごとの経営方針を伝える機会に実施した。

    ⑧ 教頭の退庁時刻を「部活動終了後1時間以内」と設定し、施錠は残った教職員

    が行うようにした。

    <成果と課題>

    教頭の退庁時刻を早めるようにしているが、職員からの相談事もあり、退庁で

    きない日が多い。やはり全職員の超過勤務を削減することが求められる。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    3時間19分

    ×教頭×200日

    2時間34分

    ×教頭×200日

    45分×200日

    (150時間0分0秒)

    ※教頭の1日当たり超過勤務時間(平均)のH30とH31の比較による。

    (4)時間の使い方の工夫・改善 ⑨ 行事等および教科授業時数等を明確に算出するとともに、教科等の授業時数を

    標準時数に抑え、学校の裁量で使えるコマ数を捻出した。

    (1日6コマで算出)

    <成果>

    〔生み出した学校裁量(余裕)の時間(単位はコマ、1日6コマで算出)H30年度〕

    捻出した時間を学期末やテス

    ト期間等の繁忙期に振り分ける

    ことにより、勤務時間内の作業

    時間を増やすことができた。

    1年生 2年生 3年生

    1学期 35 49 28

    2学期 29 24 18

    3学期 27 28 14

    計 91 101 60

  • 37

    また、この学校裁量時間を活用して毎週金曜日を5コマまでとし、部活動を

    90分間行ってなおかつ定時退勤とする日課をつくった。このことにより、部活

    動休養日を含め、平日に2日、定時に退勤できる体制をつくることができた。

    さらに、教科標準時数以上は割り当てないとしたことにより、教科担当者の

    時数管理や授業の進捗管理等に対する意識が高まった。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    金曜日の超過時間

    2時間×9人×35日

    金曜日の超過時間

    0時間×9人×35日

    金曜日の超過勤務0×35日

    (630時間0分0秒)

    ※金曜日の定時退勤日を年間35日実施できたと仮定した。

    ※人数は、部活動を受け持たない養護教諭と事務職員を含まない(2人減)。

    本年度はさらに、以下のねらいをもって、教科担当者として行ってきた授業

    計画時数から10%を削減し、新学習指導要領の趣旨に基づいた内容を入れて構

    築し直す試みを進めている。

    ・授業の組み立て方に関する考え方や視点等の改革

    ・教え込むスタイルからファシリテーターへ

    ・教師主導型の一斉授業から生徒の主体性を引き出す個別最適化する授業へ

    ・「長時間=一生懸命」からの脱却

    これらの作業をとおして教員も生徒も24時間をデザイン(マネジメント)し

    て、時間をより有意義に使う意識を高めたい。

    ⑩ 日課を工夫し、諸活動の時間を増やす日課や1日7コマの日課等を用意してお

    くことにより、状況に応じて柔軟に対応できるようにした。

    <成果>

    行事の準備作業や生徒指導の補充などを行う時間、そして学期末の評価や通知

  • 38

    表作成の時間等を確保することができた。

    また、1日7コマの日課を持つことにより、台風等による臨時休業の回復措置

    等にも余裕を持って対応することができた。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    (作業が勤務時間外に

    及ぶことあり) 70分×10人×9日1人あたり70分×9日

    (105時間0分0秒)

    ※学期末に3日間、評価や通知表作成のためのB日課を設定できたと仮定した。

    ※人数は、行事を通常は受け持たない事務職員を含まない(1人減)。

    ⑪ タイムカードを導入し、出退勤時刻の記録作業を簡略化した。

    <成果>

    タイムカードによる記録により、毎日の記録作業(パソコンでデー

    タを毎日入力していた者もあった)を不要にするとともに、出退勤の

    正確な時刻の記録を残すことができた。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    30秒×11人×2回

    ×245日

    (5秒×2回×245日

    +5分×12)×11人

    161700秒→95150秒

    (26時間25分50秒)

    ※毎日自分で記録を取る場合を30秒、タイムカード記録が5秒、この作業が1日に2回、月に1

    度の報告書を作成する時間を5分かかると仮定した。

    ⑫ 教科連絡を授業の最後(または教室を出る前)に行うようにした。

    <成果>

    このことにより、時間を削減したばかりでなく、教科連絡係の生徒と教科担当

    者双方の休憩時間(昼休み)を確保できた。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    10秒×1015コマ

    ×3学級 0秒

    30450秒→0秒

    (8時間27分30秒)

    ※年間標準時数(1015コマ)の教科連絡にかかる時間を1教科あたり10秒と仮定した。

    ⑬ 評価作業を授業中に行うようにした。(研究中)

    <成果と課題>

    現状は、教師主導型の教授形式の授業から教師がファシリテーターとして機能

    する授業へ転換を図っている途中であり、まずもって生徒同士が闊達にディス

    カッションなどをする時間(機会)の設定に苦慮している。今後、指導と評価の

    一体化を含めて、授業スタイルの転換を進めていきたい。

  • 39

    〈取組前の時間〉 +

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    3分×1015コマ×

    1/10×3学級

    3分×1015コマ×

    1/10×3学級

    従来分と合わせて1827分

    (30時間27分0秒)

    ※1コマ授業の評価作業時間を、おしなべて3分と仮定(単元末や学期末の作業時間は、計上し

    ない)とした。

    ※評価作業を授業中に実施した回数は、すでに実施していた回数を全体の1/10、新たに実施し

    た回数を全体の1/10と仮定した。

    ⑭ 宿題や提出物は、出席番号順に集めたり、チェックするページを開いて集めた

    りするようにした。

    <成果>

    提出物等を名簿等と照らし合わせる時間を短縮するとともに、ノートチェック

    時のページをめくる手間を省くことができた。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    10分×9人×1件

    ×200日

    7分×9人×1件

    200日

    18000分→12600分

    (90時間0分0秒)

    ※提出物の件数は、1日1件とし、チェックする時間は、おしなべて(生活ノートのコメント書

    きを含めて)1件あたり10分とした。

    ※人数は、養護教諭と事務職員を含まず(2人減)。

    ⑮ 短学活のメニューを、日課上の設定時間から3分間少なく設定した。

    <成果>

    担任の話が長くなっても短学活を日課の時間内に終わらせることができるよう

    になり、その後の活動にスムーズに入ることができるようになった。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    3分×80日

    ×3学級

    3分×40日

    ×3学級

    720分→360分

    (6時間0分0秒)

    ※短学活が日課の時刻で終わらなかった日数を、帰りの会が全体の2/5(超過時間は3分)とし、

    改善できた日数をそのうちの半数と仮定した。(なお、朝の会分は計上しなかった。)

    ⑯ 目標管理制度による目標設定の方向性を「研修によるチームへの貢献」に絞り、

    取組内容を具体的かつ実行状況が分かりやすいものにするとともに、職員間の同

    僚性を高めるようにした。

    <成果>

    互いの目標や取組を共有することによって同僚性を高め、高め合う雰囲気をつ

    くることができた。

  • 40

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    60分+30分+30分

    ×11人

    40分+15分+20分

    ×11人

    1320分→825分

    (8時間15分0秒)

    ※目標管理シートの記入は、年間3回行ったと仮定した。

    (5) 様式の工夫 ⑰ 出退勤報告書の様式を工夫し、記

    入時間の削減を図るとともに、超過

    勤務時間に応じてメッセージが出る

    ようにした。

    <成果>

    入力時間を短縮しただけでなく、毎月、超過勤務時間に応じてメッセージがで

    るようにしたことで、働き方改革への意識を高めることができた。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    7分×11人

    ×12月

    5分×11人

    ×12月

    924分→660分

    (4時間24分0秒)

    ※出退勤報告書作成は、1ヶ月に1度とした。

    ⑱ 通知表の記載内容を簡素化し、入力作業を効率化した。

    〔簡素化〕

    ・夏季休業中の三者面談実施等により、1学期と2学期の所見を廃止した。

    ・仕様をバインドファイルにし、二つ折りにする作業等を不要にした。

    〔効率化〕

    ・評定や出欠などのデータ入力を一覧表でできるようにした。

    ・行動評定の項目を指導要録と同じ内容にし、3学期分の結果をもとに指導要

    録の記録を作成できるようにした。

    ・通知表の学年末の所見は、基本的に指導要録への記載内容と同じにした。

    (ただし、多少の修正はある。)

    <成果>

    上記の簡素化や効率化により、作業時間を削減するとともに、分担できるよう

    になり、仕事量を分散させることができた。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    15分×87人×3回

    +20分×87人

    15分×87人×1回

    +5分×87人

    5665分→1740分

    (65時間15分0秒)

    ※所見作成にかかる時間は、1人あたり通知表が15分、指導要録が20分と仮定し、その他の作業

    にかかる時間は計上しないとした。

  • 41

    ⑲ 出張では、当日、実施要項等に要件等を記入するようにし、報告書に際しては、

    その資料を添付して提出するようにした。(報告書への記入は「別紙のとおり」

    のみ)

    <成果>

    報告書への記入時間を削減するとともに、管理職が研修や会議の内容をより把

    握しやすくなった。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    10分×120件 5分×120件 5分×120件

    (10時間0分0秒)

    ※件数は、年間の出張報告数を参考とし、作成作業が10分から5分に短縮したと仮定した。

    ⑳ 各種の様式を簡素・効率化し、可能な限りチェックのみで行えるようにした。

    ・改善した様式…検食簿、起案カード、部活動試合等計画 など

    <成果>

    検食簿や起案カード、部活動試合計画などの記入時間を削減するとともに、記

    載内容を確認しやすくして、情報共有がスムーズになった。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    30秒×2件×245日 20秒×2件×245日14700秒→9800秒

    (1時間21分40秒)

    ※使用頻度は、全体で1日に2件とした。

    ㉑ 校内研修のポイントをしぼり、指導案はA4版1枚にまとめるようにした。

    ・本校の校内研究のポイント…教科授業におけるキャリア教育の推進

    <成果>

    ポイントをしぼって研究授業を準備することにより、作業時間を削減するとと

    もに、教科横断的な視点からも協議しやすくなった。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    5時間×10人 3時間×10人 50時間→30時間

    (20時間0分0秒)

    ※全ての教員が年に1回の研究授業を実施すると仮定した。

    ※人数は、授業を受け持たない事務職員を除いた。

    ㉒ タブレットパソコンや通知表データの入力作業等のマニュアルを作成した。

    <成果>

    マニュアルを活用することにより、作業がスムーズになるとともに、活用方法

    等の情報を共有化し、OJTとしての研修が進んだ。

  • 42

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    15分×1件

    ×11人

    5分×1件

    11人

    165分→55分

    (1時間50分0秒)

    ※マニュアルが必要な状況が年に1回、全ての教職員に発生したと仮定した。

    (6) 権限委譲、会議やミーティングの効率化

    ㉓ 起案内容に応じて決裁ルートを整理した。

    ・校長決裁…学校運営全般に関わるもの、市教委等への提出物、など

    ・教頭決裁…各種たより等(ただし、配布時に校長も目を通し、コメントを伝えるようにした。)

    <成果>

    校長不在時の決裁の遅れ等を防止することにより、業務の流れをスムーズにす

    ることができた。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    10分×3件

    11人 0分

    330分→0分

    (5時間30分0秒)

    ※決裁を待つことによりロスした時間を、1人当たり各学期に1件、それぞれ10分と仮定した。

    ㉔ 消耗品の決裁は、3万円未満の場合は事務職員が行うようにした。

    (ただし、最終的な決裁は、校長が電子決済時に行う。)

    <成果>

    校長不在時の決裁の遅れ等を防止することにより、消耗品の補充や授業の準備

    等がスムーズにできるようになった。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    10分×3件

    11人 0分

    330分→0分

    (5時間30分0秒)

    ※決裁を待つことによりロスした時間を、1人当たり各学期に1件、それぞれ10分と仮定した。

    ㉕ 職員室内にミーティングエリアを設置した。

    <成果>

    1つのテーブルで顔を合わせて職員会議をすることによ

    り、協議を活発化させ、より正確に情報の共有化を図ると

    ともに、小グループでの話し合いや雑談、作業スペースにも活用され、コミュニ

    ケーションが密になった。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    5分×3件

    11人 0分

    165分→0分

    (2時間45分0秒)

    ミーティングエリア

  • 43

    ※情報共有の不徹底により「あとで聞き直す」など、ロスした時間を、各学期に1人5分と仮定

    した。

    ㉖ 会議に関する年間計画を作成した。

    <成果>

    担当者として先を見通した準備をすることができ、計画的に起案や事前の打ち

    合わせ等ができた。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    10分×11人×3件 0分 330分→0分

    (5時間30分0秒)

    ※会議のやり直しや確認等に費やした時間を、全員が各学期1回、それぞれ10分要したと仮定し

    た。

    ㉗ 職員の机上を整理するための棚を設置した。

    <成果>

    机上を機能的に使えるようになり、文書等の紛失を防ぐとともに、パソコンの

    操作作業で前屈みになっていた姿勢を改善することができた。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    10分×11人×6件 5分×11人×3件660分→165分

    (8時間15分0秒)

    ※捜し物が年間6回(各10分)発生し、取組によって発生件数と探す時間が短縮されたと仮定し

    た。

    ㉘ 年度初めと年度末のあいさつ回りを9回から2回に削減した。

    ・あいさつ回り先 …小学校、市教委

    ・養護教諭異動の場合…学校医(2名)、学校歯科医、学校薬剤師

    ・校長のみ訪問 …交番、公民館、消防署

    <成果>

    繁忙期の中でも一番に業務が集中する年度のはじめと終わりに行うあいさつ回

    りの件数を削減することで、時間的に大きく削減することができた。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    2時間×2

    ×4人

    30分×2

    ×4人

    16時間→4時間

    (12時間0分0秒)

    ※異動者は3人、引率者1人と仮定した。

  • 44

    (7) 危機管理

    ㉙ 授業者を複数配置したり、生徒の様子を細やかに観察するなどして、危機管理

    を徹底することにより、生徒指導(生活指導)事案の未然防止に努めた。

    <成果>

    事後処理にかかる時間と労力(ストレス)を削減した。

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    1時間20分×11人

    ×200日

    30分×11人

    ×200日

    176000分→66000分

    (1833時間20分0秒)

    ※生徒指導にかかる時間(1時間20分)は、教員勤務実態調査/文科省を参考とした。

    (8) 市教委事業の活用

    ㉚ 「学校支援員」を活用し、授業の準備や成績処理等の業務時間を削減した。

    ・支援業務例…プリント印刷、教具等の準備・片付け、蛍光灯の付け替え、

    小テストの採点と集計、提出物の集約 など

    <成果>

    学校支援員の活用により、印刷や教具等の準備・片付けをしてもらうことによ

    り、時間的な余裕が生まれ、より授業の充実に集中することができた。

    (ただし、諸事情により6~7月のみの配置となった。)

    〈取組前の時間〉 -

    〈取組後の時間〉=

    〈削減できた時間〉

    (2時間4分/1日

    1人あたり)※1 (学校支援員に任せた分、

    余裕が生まれた) 20時間/週※2×8週※3

    (20時間0分0秒)

    ※1…授業の準備や成績処理等の時間(2時間4分)は教員勤務実態調査/文科省を参考とした。

    ※2…学校支援員の就労規則による。

    ※3…本校に配置された週数による。

  • 45

    6 研究・実践の成果 本研究は、「職員自身の意識(ひと)」「時間の使い方(とき)」「業務方法や環境

    (もの)」の3つに着目し、本校でできると思われることを「まずはやってみる」の精

    神で取り組んできた。以下、その成果を整理する。

    (1) 教職員に対するアンケートの結果から

    下の表は、本校教職員に対する「効果の実感」に関するアンケート(H30.6.6、R

    元7.22)の結果および、取組によって削減できたと考えられる作業時間を表にまと

    めたものである。

    A効果あり、B少しあり、C効果なし、D逆効果、E無回答

    平均は「A…4、B…3、C…2、D…1、E…含めない」で計上した。 計3300時間20分

    以下の「働き方改革に対する全体的な受け止め方に関するアンケート結果」と併

    せて、昨年度と比較して、概ねよい評価を得た。 アンケート:「仕事が効率的になった」または「業務時間が短縮した」と感じた教職員数

    項 目 平成30年度

    変移

    令和元年度 改革により

    削減した時間

    (1分未満は切り捨て) A B C D E

    平均

    平均 A B C D E

    (1)①情報集約 ②データ管理 ③用品・道具 ④リーフレット ⑤ホームページ (2)⑥夏休み授業 (3)⑦勉強会 ⑧教頭退庁時刻 (4)⑨時数管理 ⑩日課 ⑪タイムカード ⑫教科連絡 ⑬評価作業 ⑭提出物集配 ⑮短学活 ⑯目標設定 (5)⑰出退勤様式 ⑱通知表 ⑲出張報告 ⑳検食簿 ㉑指導案 ㉒マニュアル (6)㉓決済ルート ㉔権限委譲 ㉕ミーティングエリア ㉖職員会議 ㉗机上 ㉘挨拶回り (7)㉙生徒指導 ㉚学校支援員

    1 5 8 3 3 1 1 1 1 2 2 3 1 1 2 2 6 1 2 2 3 3 1 3 3 7 4

    8 3 2 6 5 6 3 4 5 7 8 3 6 5 3 6 3 6 5 7 7 8 3 6 7 5 7 3 6

    34134376233744747414225334222

    2

    4

    1

    1

    1

    1

    1

    11

    1

    11

    1

    2.8 3.1 3.3 3.0 2.9 2.5 2.3 2.3 2.3 2.9 2.6 2.6 2.3 2.9 2.3 2.5 2.6 2.8 3.4 2.8 2.8 3.0 2.6 3.0 2.7 2.9 3.1 3.4 3.2

    ↗↗↗↗↗↗↗↗↗↗↗↗↗↗↗↗↗↗↗↘↗↗↗↗↗↗↗↗→

    3.3 3.5 3.5 3.6 3.3 3.2 3.0 3.1 3.1 3.1 3.4 2.9 2.7 3.2 2.4 3.1 2.6 3.5 3.7 2.5 3.5 3.3 3.0 3.3 3.2 3.7 3.3 3.6 3.2 3.5

    355732232362030126836424484746

    8664897687368761035334676536455

    221

    23314

    6

    311212

    1

    2

    1

    2

    148時間0分 89時間50分 7時間29分 5時間0分

    10時間45分 0時間0分

    -11時間0分 150時間0分 630時間0分 105時間0分 26時間25分 8時間27分

    30時間27分 90時間0分 6時間0分

    8時間15分 4時間24分

    65時間15分 10時間0分 1時間6分

    20時間0分 1時間50分 5時間30分 5時間30分 2時間45分 5時間30分 8時間15分 12時間0分

    1833時間20分 20時間0分

    感じた やや感じた あまり感じない 感じない 無回答

    平成30年度(全数12名) 0 4 6 0 2

    令和元年度(全数11名) 2 8 1 0 0

  • 46

    また、今回の取組で、一つ一つの業務時間を数量的に把握するとともに、1つの

    作業において5秒、10秒の短縮であっても、1年間を通して積み重ねることにより、

    大きな違いが生まれることが分かった。

    なお、各業務において今回の取組により削減されたと考えられる時間の総計から

    算出した1人あたりの業務削減時間は、以下のとおりであった。

    (2) 職員の意識(ひと)に関すること

    これまでの取組により、労働条件に関する法令(労基法や給特法等)をはじめ、

    文科省や県・市教委の取組、一般企業等で行われている労務管理や超過勤務に対す

    る手当て、労使間の協定等に関する職員の理解は得られていると考える。

    また、新学習指導要領等に示されるとおり、学校教育が社会の変化に対応して変

    革を求められていることや職員自身が時代の変化に対応して、生徒に求める生き方

    を体現することが期待されていることについても繰り返し伝えてきた。このことに

    より、少ないながらも超過勤務が削減され、これまで継続して行ってきた学校行事

    (「砂の造形」など)や通知表の所見などを取りやめるなど、柔軟な協議をとおして

    大胆な取組を進めることができている。

    (3) 時間の使い方(とき)に関すること

    今回の取組で得た時間に関する成果は、以下のとおりであった。

    (「年休取得日数集計」及び「各月の勤務時間報告書」から)

    ○年休取得数 …8.5日(H29の年平均)→13.0日(H30の年平均)

    ○超過勤務時間…68.1時間(H30 4~7月の月平均)→60.3時間(H31・R1 4~7月の月平均)

    ・ 80時間越えの月がある教職員…5人 → 2人 ・100時間越えの月がある教職員…3人 → 2人

    ○時間帯別超過勤務時間(4月第2~4週 課業日の1日平均) (H30年) (H31年) 校 長… 48分 → 42分

    教 頭…1時間3分 → 1時間6分

    教諭等… 30分 → 31分

    校 長…1時間00分 → 1時間6分

    教 頭…3時間19分 → 2時間34分

    教諭等…2時間14分 → 2時間2分

    上記のとおり、1人あたりの年間年休取得日数が前年度と比較して4.5日増え、

    教頭の超過勤務が、前年度比で1日平均約40分削減された。一方、1ヶ月あたりの

    1年間の削減時間(1人あたり)…300時間1分/年間

    1ヶ月の削減時間(1人あたり)… 25時間0分/月

    超過勤務

    超過勤務

    部活動 終了は18時30分

    勤務時間

    (8:05~16:35)

    始業前

    終業後

  • 47

    平均超過勤務時間については、約8時間が削減されたが、今回の取組で削減された

    と考えられる1ヶ月あたりの業務時間は1人あたり平均約25時間であることから約

    17時間分が生かされていない。これは部活動の終了時刻までは学校を離れられない

    ことから生じる状況と考えられる。

    なお、部活動指導時間は「ガイドライン」に基づけば、1ヶ月あたりの指導時間

    は44時間(平日2時間×4日+週休日3時間×1日)になり、この時間を除けば本

    校では全ての業務を正規の勤務時間内に(平均値では)収めることが可能になるの

    ではないかとの手応えも感じた。

    (4) 資料や教具、環境等(もの)に関すること

    教具室やミーティングエリア、各職員の机上等の整備はもとより、「教育計画」

    や共有フォルダにすべての資料や計画等を保管したことにより、組織として年を追

    うごとに改善していく仕組みををつくるなど、働きやすい環境づくりを進めること

    ができた。

    7 今後の課題 今回の研究により、学校運営の主な要素である「ひと」「と

    き」「もの」の改善を試み、業務時間の削減など、働き方改革を

    進め、その成果を実感することができた。しかし、実際には部活

    動指導のために正規の勤務時間外に一定時間拘束されており、削

    減の効果が退庁時間に反映しにくいことが分かった。

    今後、部活動をどのように位置付け、職員の勤務時間との関係

    においてどのように制度設計していくかが問われる。

    一方、学校における働き方改革の方向性として、民間企業等で導入が進められてい

    る情報通信技術(ICT)等の活用が考えられる。

    〈導入例〉

    ・テレビ会議システム

    複数の遠隔地を結んで双方向の画像や映像、音声、資料データ等をスクリーン上

    に映し出しながら会議を行うシステム

    ・テレワーク

    情報通信技術を活用し、時間や場所の制約を受けずに柔軟に働く形態

    ・クラウド(インターネット上でのデータ等保存)

    インターネットなどを経由して、コンピュータ資源を提供したり利用したりする

    形態

    ・インターネット上の文科省等の研修動画等

    超過勤務

    勤務時間

    (8:05~16:35)

    部活動

  • 48

    文科省は「mextchannel」で情報発信を行っており、Youtubeで視聴可

    ・研究授業や研究発表等を撮影した映像等

    本市の学校間をつなぐ共有フォルダやグループウェア等の活用で実現可 ほか

    これらを活用することにより、業務時間の他に“移動時間”の削減を進めることがで

    きる(隣市で開催される会議1つで往復2時間の削減が見込まれる)。このことは予

    算(旅費等)状況がひっ迫して校外(県外の先進地)での研修機会が激減しているこ

    とや、急速に進む高度情報化を職員自身が体感し、生徒に先んじて変化に対応する力

    をつける上でも早急に取り組むべき事項と考える。

    8 おわりに 社会が激動する中にあって、個々の職員が社会の変化に対峙して動向を読み解き、

    次代を担う生徒たちに必要な資質・能力を育み、生き抜く力を身につけさせるために、

    授業の抜本的な改革が求められている(授業力)。また、人生100年時代のワーク・ラ

    イフバランスの在り方が模索されており、生徒のそばにいる大人には、生徒の学びの

    機会として仕事への取り組み方や家庭人かつ地域人等としての生き方モデルを示すこ

    とが期待されている(人間力)。この「授業力」と「人間力」の双方を具備したもの

    が「教師力」であり、仕事を充実させることと自身の人生を充実させることが互いに

    作用し合う関係にあることをもって「教育公務員の特殊性」であるという考えを基盤

    にして本研究を進めてきた。

    超過勤務の課題を克服できない本校ではあるが、生徒を感化せしめ、授業に深みや

    厚み、広がりを持たせる人間力を高めるための時間を確保することに今後も主眼を置

    き、全ての職員と生徒が明るく元気に課題に立ち向かい、自身の人生において幸せに

    なる力を身につけることができる学校づくりをこれからも進めていきたい。

    以上、つたない研究ではありますが、それぞれの学校で「学校における働き方改革」

    を進めるうえで参考にしていただけたら幸いです。