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© 2015 Nichii Gakkan Company. All rights reserved. 1 提出データを理解し、診療報酬改定に備える 【 NICHII ‐ INDEX 】 では・・・ 厚生労働省等の公表資料を分析し、医療情勢に即したデータを定期配信しております。 【はじめに】 今年度はH28年度の診療報酬改定を控え、準備を進めていく1年となります。 NICHII-INDEXは「H28年度診療報酬改定に向けて」を大きなテーマとし、シリーズで情報発信させて いただきます。 今、医療機関では行政機関(国や都道府県等)に様々なタイミングで各データを提出しており、そのデータは今後 の行政機関の方向性を決定する政策立案などの分野で利用されています。 たとえば、NDB(ナショナルデータベース)等の元となる医療機関が毎月提出しているレセプトデータは、電子化が進 んだこともあり毎月1億件を超える情報が収集されています。 診療報酬改定のみならず、医療・介護等の政策を決定する場面や、医療の質の向上にも活用されています。今後 ますます提出データの重要性は高まることが予想されます。 正確なデータを提出する事はもちろん、そのデータがどのような場面でどのように利用されているのか各地域、各医療 機関にどのような影響が予想されるのかその動向も注視していかなければなりません。 データ提出加算に関するデータ提出の状況 中医協総会(第303回)データより データ提出届出 病床数割合 7:1入院基本料 n=313) 96.5% 10:1入院基本料 n=280) 43.9% 地域包括ケア病棟基本料 (n=106) 72.4% 回復期リハビリテーション病棟入院基本料 (n=203) 33.7% 療養病棟入院基本料 (n=542) 10.7% 平成26年度診療報酬改定では、急性期を担う医療機関の機能や役割を適切に分析・評価するため、 7:1入院基本料と地域包括ケア病棟入院料算定医療機関について、データ提出加算の届出が義務化 されました。 また、医療機関の機能や役割を幅広く分析・評価する観点から、これまで対象となっていなかった病棟についても、 新たに届出が可能となったため、すべての医療機関でデータ提出加算の届出が可能となりました。

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© 2015 Nichii Gakkan Company. All rights reserved. 1

提出データを理解し、診療報酬改定に備える

【 NICHII ‐ INDEX 】 では・・・ 厚生労働省等の公表資料を分析し、医療情勢に即したデータを定期配信しております。

【はじめに】

今年度はH28年度の診療報酬改定を控え、準備を進めていく1年となります。

NICHII-INDEXは「H28年度診療報酬改定に向けて」を大きなテーマとし、シリーズで情報発信させて

いただきます。

今、医療機関では行政機関(国や都道府県等)に様々なタイミングで各データを提出しており、そのデータは今後

の行政機関の方向性を決定する政策立案などの分野で利用されています。

たとえば、NDB(ナショナルデータベース)等の元となる医療機関が毎月提出しているレセプトデータは、電子化が進

んだこともあり毎月1億件を超える情報が収集されています。

診療報酬改定のみならず、医療・介護等の政策を決定する場面や、医療の質の向上にも活用されています。今後

ますます提出データの重要性は高まることが予想されます。

正確なデータを提出する事はもちろん、そのデータがどのような場面でどのように利用されているのか、各地域、各医療

機関にどのような影響が予想されるのかその動向も注視していかなければなりません。

データ提出加算に関するデータ提出の状況

中医協総会(第303回)データより データ提出届出 病床数割合

7:1入院基本料 (n=313) 96.5%

10:1入院基本料 (n=280) 43.9%

地域包括ケア病棟基本料 (n=106) 72.4%

回復期リハビリテーション病棟入院基本料 (n=203) 33.7%

療養病棟入院基本料 (n=542) 10.7%

平成26年度診療報酬改定では、急性期を担う医療機関の機能や役割を適切に分析・評価するため、

7:1入院基本料と地域包括ケア病棟入院料算定医療機関について、データ提出加算の届出が義務化

されました。

また、医療機関の機能や役割を幅広く分析・評価する観点から、これまで対象となっていなかった病棟についても、

新たに届出が可能となったため、すべての医療機関でデータ提出加算の届出が可能となりました。

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平成27年度データ提出加算に係る説明会 平成27年5月15日 厚生労働省保険局医療課

【参考】 DPCデータ提出に係る評価の見直しについて

平成26年改定後 [データ提出加算1(入院データ提出)](退院時1回) イ(200床以上)100点、ロ(200床未満)150点

[データ提出加算2(入院+外来データ提出)](退院時1回) イ(200床以上)110点、ロ(200床未満)160点

患者の診療内容に関するより正確なデータを収集し、医療機関の機能や役割を適切に分析、評価することが

いっそう重要となってきています。院内の患者情報の一元管理(見える化)はすすんでいますか?

[算定要件] 診療録管理体制加算に係る届出を行っていること。等

[対象病棟] 全ての病棟(短期滞在手術基本料1を除く)

[参加機会](H27年度) 年4回(5月20日、8月20日、11月20日、2月22日)

【参考】 データ提出加算算定開始までの流れ(DPC病院、DPC準備病院以外)

①様式40の5の届出 データの提出を希望する病院は、様式40の5を地方厚生(支)局医療課長を経由して、厚生労働省保

険局医療課長に届出を行う。 平成27年度における届出の期限は、 平成27年5月20日、8月20日、11月20日、平成28年2月22日。

②試行データの作成、③試行データの提出 様式40の5の届出期限である月の翌月から起算して2月分(4回目のスケジュールを除く。)の試行データ

をDPC調査事務局が提供する試行用形式チェックソフトにより作成し、指定する期日までにDPC調査事務局に提出する(厚生労働省が様式40の5を受領後、DPC調査事務局から各病院の連絡担当者宛に案内メールを送信する。)。

④データ提出通知 試行データが適切に提出されていた場合は、データ提出の実績が認められた保険医療機関として、厚生労

働省から各医療機関あて通知(データ提出通知)を発出する。 ⑤様式40の7の届出以降 様式40の7に④のデータ提出通知を添付して、地方厚生(支)局長あて届出を行う。届出が受理された

翌月の1日から加算開始となる。また、様式40の7の届出が受理された月の属する四半期から本データを提出する。

提出されたこれらの情報が、診療報酬改定の見直しなど様々な場面で用いられ、国の方針決定に少なからず

影響を与えています。たとえば、最近多くの医療機関の関心が高い「病床機能報告制度」における「医療機能

別病床数」の推計には平成25年度のNDB(ナショナルデータベース)のレセプトデータ及びDPC提出データ

等が用いられてます。

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医療資源 投入量

基本的記な考え方 患者像の例

高度 急性期

救命救急病棟やICU、 HCUで実施するような 重症者に対する診療密度が 特に高い治療(一般病棟等で実施する診療を含む。)から、 一般的な標準治療へ移行する 段階における医療資源投入量

心不全に対して非侵襲的人工呼吸器による呼吸補助を行い、肺動脈圧測定カテーテルや心エコー、血液検査、レントゲン等で綿密な評価を行いながら、利尿剤等による治療を実施している状態。まもなく呼吸器から離脱出来そうで、検査や評価の頻度も下げていけそうである。 [例] 非侵襲的人工呼吸器+心エコー・心電図+観血的肺動脈圧

測定+胸部レントゲン+点滴管理+薬剤+血液検査

急性期

急性期における治療が終了し、 医療資源投入量が一定程度 落ち着いた段階における 医療資源投入量

急性胆管炎に対し、緊急で内視鏡的胆道ドレナージを行った。引き続き、抗菌薬治療を行い、全身状態は改善し、血液検査を実施した。

尿路感染症に対し、抗菌薬治療を行っている。熱が下がり、全身状態は回復しつつあり、食事を摂ることが出来ている。

[参考]NDBのレセプトデータ及びDPCデータから、「医療資源投入量がおおよそ横這いとなって、落ち着く段階」の平均資源投入量を計算。

具体的には、DPCの入院期間Ⅱ及び入院期間Ⅲにおける全疾患の平均資源投入量を、入院期間Ⅱ及び入院期間Ⅲのそれぞれの患者数で加重平均。その後、NDBのレセプトデータも加えて、さらに補正。

回復期

在宅等においても実施できる 医療やリハビリテーションの密度における医療資源投入量 境界点に達してから退院調整等を行う期間の医療需要を見込み、175点で区分。

誤嚥性肺炎に対する抗菌薬療法は終了し、全身状態は安定しているが、経口摂取は不安定で補液が必要。喀痰が多いため吸引を行っている。

大腸がんの手術後、経過は良好であったが、腸閉塞となり、絶飲食とし、補液およびイレウス管によるドレナージを行っている。

[例]補液+点滴管理+ドレーン

在宅等

175点

C1 3,000点

C2 600点

C3 225点

【参考】 病床の機能別分類の境界点(C1~C3)について(抜粋加工) 平成27年6月15日 医療・介護情報の活用による 改革の推進に関する専門調査会

CCPとは「Comorbidity(併存症)」、「Complication(合併症)」、「Procedure(医療行為)」の頭文字から構成さ

れています。CCPマトリックスとは(C)入院時の併存症と(C)入院後の続発症、そして(P)行われた医療行為を勘案して

診断群分類を精緻化するという新たな評価手法です。

現在のDPC/PDPSにおける「樹形図」による診断群の分岐方式に加えCCPマトリックスを取り入れる事で、診断群分類総数の

増加を抑制しつつより正確な分類が可能になると期待されています。

今後診療報酬改定においてどのような形でCCPマトリックスが導入されるのか注目されます。

病床機能報告制度における病床は「高度急性期」、「急性期」、「回復期」、「慢性期(在宅等)」の4つに分類されますが、

その推計に用いられた医療資源の投入量はまさにDPCデータが用いられています。

また、この中で特に療養病床については「医療区分1の70%に相当する患者」は2025年には介護施設や高齢者住宅、在

宅医療等で受け止める事が適切であると述べられていて、これに関連して平成28年度診療報酬改定に向けた議論の中で、

療養病棟入院基本料の医療区分2・3に該当する「疾患・状態」、「医療処置」の項目の見直しや、療養病棟入院基本料2

に対しても医療区分2・3の患者割合要件が設けられることも考えられますので、今後の議論から目が離せません。

CCPマトリックスとは ~DPCの精緻化に向けた提出データ活用~

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CCPマトリックス導入の背景

DPC/PDPSの中では、平成30年度までに暫定調整係数が段階的に廃止される方向で進められており、各診断群における 医療資源の必要量をより正確に点数に反映させる仕組みの検討がなされています。 一方で、改定を追うごとに診断群分類数は増加傾向にあり、包括評価のメリットが損なわれているとの意見も出ていて、これ以上現在の樹形図方式のまま分岐を増やす手法は好ましくなく、新しい分類方式の必要性が議論されている所です。

H15年4月 H16年4月 H18年4月 H20年4月 H22年4月 H24年4月 H26年4月

差異 692 1,348 909 879 778 686 564

診断群分類総数 2,552 3,074 2,347 2,451 2,658 2,927 2,873

うち包括対象分類数 1,860 1,726 1,438 1,572 1,880 2,241 2,309

0

500

1,000

1,500

0

1,000

2,000

3,000

4,000

診断群分類総数等の推移

CCPマトリックスの考え方

案 副傷病等

なし 糖尿病 敗血症

手術・処置等2 なし 低 低 中

中心静脈注射 中 中 高

化学療法 中 高 高

CCPマトリックスの期待される効果 樹形図の構造にとらわれることなく、類似したグループを集約することができる

手術・処置や副傷病等の組み合わせに基づく医療資源の必要度等の類似性が高いものをグルーピングすることで分類数を集約する

上記案では縦軸3区分×横軸3区分の合計9区分を低、中、高の3区分に圧縮して分類数を減らすことが可能

CCPマトリックスのグルーピングの決定には副傷病情報、診療関連情報、診療記録(DPCコーディングの正確性の確保、根

拠)などの正確な診療情報が重要だといわれています。(これらの検討には様式1やEFファイル等のデータを主に使用)

現在のDPC/PDPSにおけるコーディングにおいて、手術、手術・処置等1及び2、定義副傷病には、収集データで出現したもの

の数が少ない等の理由により、定義は存在するものの分岐項目になっていないものがあります(【参考】040080 肺炎、急性

気管支炎、急性細気管支炎 の定義副傷病 等) 。そのためか、上記の事例のように現在分岐項目にないが定義されてい

る情報について、確認が不十分(特に定義副傷病)な事例が多く発生しています。

現在は診断群分類の選択で分岐に関係のない項目(副傷病名等)も、今後の改定により樹形図の分岐やDPCの入院期

間Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの日数、点数等に影響する可能性があります。特に医療資源の投入に影響のあるような副傷病名等はCCPマト

リックスのグルーピングに影響がありますので、定義の有無にかかわらずもれなく記録していくことが求められます。

中央社会保険医療協議会(中医協)の議論の中では

現在の分類コード14桁の上10桁は樹形図を維持し、下4桁(手術・処置等1、手術・処置等2、定義副傷病、重症度)についてCCPマトリックスを導入してはどうか

疾患数が多く、重症度等の評価が不十分だと考えられる診断群分類(肺炎、糖尿病、心不全、脳血管障害、慢性関節リウマチ、卵巣・子宮悪性腫瘍)等から部分的に導入を検討してはどうか

等の検討がされています。

CCPマトリックスと診療情報 1.副傷病情報の重要性 現行の支払いに影響しない副傷病も分類の精緻化に必要 適正な傷病情報の記録が複雑性係数などの機能評価に影響

2.正確な診療関連情報の重要性 適正な重症度評価と機能評価につながる適正な重症度評価と機能評価につながる

3. DPCコーディングの正確性の確保根拠となる診療記録の重要性 根拠となる診療記録の重要性 Auditに耐える記録とコーディング

CCPマトリックスと診療情報 1.副傷病情報、正確な診療関連情報、診療記録( DPCコーディングの正確性の確保根拠)重要性

資料 抜粋加工