no. 90 · 表 2 jtc 1 resolution recommended for ideas/opportunities for future green ict...

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No. 90 2011 年 6 月 標準活動トピックス: JTC 1 における Green ICT の検討状況について ......................................... 2 櫻井 義人((株)日立製作所) 最近の国際会議から: JTC 1/SWG on Accessibility 会議報告......................................................... 4 野村 茂豊((株)日立製作所) JTC 1/SWG on Directives 会議報告............................................................ 5 鈴木 俊宏(日本オラクル(株)) SC 23(Digitally Recorded Media for Information Interchange and Storage)総会報告........... 7 山下 経((株)日立製作所) SC 35(User interface)GOM 報告............................................................. 8 山本 喜一(慶應義塾大学) SC 36(Information Technology for Learning, Education and Training)総会報告................ 9 仲林 清(千葉工業大学) 国際規格開発賞の表彰 ................................................................ 12 解説:デジタルアーカイブ(長期保存) ................................................... 13 菅谷 寿鴻(国立大学法人 電気通信大学) 声のページ: 国際標準作成を支えるもの ..................................................................17 山田 朝彦(東芝ソリューション(株)) ISO/IEC 10646 の CJK 統合漢字拡張 C・拡張 D の日本提案文字 ...................................17 高田 智和(国立国語研究所) 2011 年 6 月以降 国際会議開催スケジュール ............................................. 18 編集後記 ............................................................................ 18

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Page 1: No. 90 · 表 2 JTC 1 Resolution recommended for ideas/opportunities for future Green ICT standardiza tion items to JTC 1 SCs and WG 再開され,上記の実現のための準備が開始された.し

No. 90 2011 年 6 月

目 次 標準活動トピックス:

JTC 1 における Green ICT の検討状況について......................................... 2 櫻井 義人((株)日立製作所)

最近の国際会議から:

JTC 1/SWG on Accessibility 会議報告.........................................................4 野村 茂豊((株)日立製作所)

JTC 1/SWG on Directives 会議報告............................................................5 鈴木 俊宏(日本オラクル(株))

SC 23(Digitally Recorded Media for Information Interchange and Storage)総会報告...........7 山下 経((株)日立製作所)

SC 35(User interface)GOM 報告.............................................................8 山本 喜一(慶應義塾大学)

SC 36(Information Technology for Learning, Education and Training)総会報告................9 仲林 清(千葉工業大学)

国際規格開発賞の表彰 ................................................................ 12

解説:デジタルアーカイブ(長期保存) ................................................... 13 菅谷 寿鴻(国立大学法人 電気通信大学)

声のページ:

国際標準作成を支えるもの ..................................................................17 山田 朝彦(東芝ソリューション(株))

ISO/IEC 10646 の CJK 統合漢字拡張 C・拡張 D の日本提案文字 ...................................17 高田 智和(国立国語研究所)

2011 年 6 月以降 国際会議開催スケジュール ............................................. 18

編集後記 ............................................................................ 18

Page 2: No. 90 · 表 2 JTC 1 Resolution recommended for ideas/opportunities for future Green ICT standardiza tion items to JTC 1 SCs and WG 再開され,上記の実現のための準備が開始された.し

<標準活動トピックス> JTC 1 における Green ICT の検討状況について

櫻井 義人((株)日立製作所)

1. まえがき

JTC 1 における Green ICT の検討のきっかけのひと

つは,2008 年の奈良総会での Technology Watch Sessionである.この時のメインテーマが,Environment and IT Standard であり,サブテーマとして,Green IT 及び IT contributions to sustainability があげられた.これらテー

マの下で 5 件のプレゼンテーションが行われた.奈良

総会の後,これを受ける形で SWG on Planning会合で,

「環境」について,ISO の TC で取り扱おうとしてい

る範囲と IT との関係で JTC 1 が取り扱うべきテーマ

について検討すべきとの議論がなされた.2009 年の

テルアビブ総会で,いくつかの「環境」に関する検討

グループの具体的な提案が各国からなされ,結果とし

て 2 つの SG (Study Group)の設置が決まった.SG on Energy Efficiency of Data Center (SG EEDC)と SG on Green ICT (SG GICT)である(SG GICTは2010年のベル

ファスト総会で SG on Green by ICT に改称された).なお,SG は SC や WG と異なり,規格案そのものの

検討は行わない.JTC 1 の外の該当テーマに関する標

準化活動状況の調査や,JTC 1 の活動とのギャップ分

析,JTC 1 で実際に検討すべき項目の提言などを主な

任務とする(具体的な任務は ToR :Term of Referenceとして総会で決定される).

2. SG on Energy Efficiency of Data Center (SG EEDC)

2009 年 10 月の JTC 1 総会で以下が決議された(決

議文の要約). 「データセンタのエネルギー効率は重要なトピ

ックであるので,標準化に対する市場の要求条件

(requirements)を調査するために SG を設立する.

その任務は,EEDC に関する現状の標準化の取組

み の 調 査 , 関 連 SDO (Standard Developing Organization) との連携,ワークショップの開催,

JTC 1 への調査報告及び今後の取組みの提案であ

る.尚,今回同様に新設されるクラウドコンピュ

ーティングのスタディグループ(SGCC)と協調

すること.メンバーシップはオープン(JTC 1 メ

ンバに限らない).米国を幹事に任命するので,

米国は 60 日以内にコンビーナを指名すること.」 その後,米国におけるコンビーナの選定に時間が掛か

り,2010年3月になってアイルランド IBMのRaymond Lloyd がコンビーナを引き受けること,セクレタリは

米国 INCITS の Jennifer Garner が務めることとの連絡

があった.日本を含む 10 カ国と 1 つの標準化団体

(Ecma International)が参加を表明した.4 月から

表 1 Identified 11Green by ICT use cases 8 月まで月 1 回の電話会議が設定され,上記決議内容

に沿って作業が行われた.更に,9 月 27,28 日に DIN(ドイツ規格協会)のホストでベルリン(独)にて

2010 年の JTC 1 総会に向けた報告内容の打合せのた

めの会合が開催された.このときの出席は 7 名のみで

あった(日本は欠席).2010 年の総会での報告事項の

要点は次の通り. 「データセンタには広範囲の技術(ストレージ,

処理装置,環境制御,配電等)が使われているし,

多数の組織が多くの活動を実施している.従って,

明らかにデータセンタのエネルギー効率をひと

つの(single)KPI (Key Performance Indicator) では

表せない.本 SG は活動を継続し,次の項目を推

進するために policy-setting bodies や業界コンソー

シアムとワークショップを開催することを提言

する. - データセンタ及びエネルギー効率のトピックを

カバーする Terminology と Taxonomy - データセンタの目的やビジネスモデルを反映し

た指標を生成できる広く受け入れられる KPI またはアルゴリズムで広く受け入れられるもの

- データセンタのニーズに合致した製品/ソリュ

ーションであって,エネルギー効率が良く,か

つ標準に準拠したものの活用」 JTC 1 総会後,2010 年 12 月から月 1 回の電話会議が

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表 2 JTC 1 Resolution recommended for ideas/opportunities for future Green ICT standardization items to JTC 1 SCs and WG

再開され,上記の実現のための準備が開始された.し

かしながら参加者は減少傾向であり,活動の進捗は少

ない.

3. SG on Green by ICT (SG GICT)

2009 年 10 月の JTC 1 総会で以下が決議された(決

議文の要約). 「グリーン ICT に関する標準化状況を評価し,

JTC 1 における新規作業項目の可能性を検討する.

他の標準化団体やコンソーシアムと協調する.グ

リーン化技術に関するベストプラクティスを調

査する.ただし SG EEDC の担当範囲を除く.韓

国の Yong-Woon KIM をコンビーナに指名する.

また韓国が幹事国を担当する.」 実質的に活動が始まったのは 2010 年の 5 月になって

からである.コンビーナ Yong-Woon KIM は韓国 ETRI (Electronics and Telecommunications Research Institute) の所属であり,セクレタリは KATS (Korea Agency for Technology and Standards) が務める.第 1 回会合は,

2010 年 6 月 2~3 日にソウル(韓)で行われた.参加

者は約 20 名で海外からの参加は櫻井(日)のみ.米

国,シンガポールから電話会議参加があった.会議で

は,SG GICT は,Green by ICT に焦点を絞り,他の標

準化団体との連携を保ちながら,Green 化による効率

化が図られる産業分野を特定し,今後 JTC 1 で標準化

すべきテーマを調査し答申する,という SG の任務が

確認された.その後,韓国のいくつかのユースケース

が紹介された.また,リエゾンすべき組織の検討が行

われた.最後に,今後は月 1 回(6 月から 10 月まで)

の電話会議を基本とすることが確認された.各電話会

議では,他のグループ/企業から寄せられた Green by ICT 関連の標準化活動及び,ユースケース,及びこれ

ら議論を整理した最終報告書案がレビューされた.ま

た,ITU-T SG5 WP3,Ecma International TC38,JTC1 SG EEDC,JTC 1 SWG on Smart Grid からのリエゾンが処

理された.最終会議でコンビーナから,電話会議の参

加者が次第に減少するとともに,各国メンバ/エキス

パートの寄与が少なくなったことから,最終報告書の

完成度に懸念があるとして,内容の充実のため

SGGICTをさらに 1年継続したいとの提案をおこなっ

た.しかし,この最終会議では合意に至らず,最終報

告書にコンビーナ提案の記述を残し,2010 年 11 月の

英国ベルファストでの JTC 1 総会で結論を出すこと

になった.総会への報告書では,以下が記載された. 「- Green by ICT でのエネルギー消費削減ユースケ

ースとベストプラクティスの調査,及び,この

調査に基づく標準化要件の整理(表 1). - Green by ICT に関する国際条約,各国の法律及

び規制,温暖化ガス排出量に対する法的責任,

各企業のエネルギー効率向上のためにやるべき

ことは何か,という観点での整理. - Green by ICT に関連する標準化活動の整理とギ

ャップ分析. - ISO/IEC JTC1 での新作業項目案(表 2).」 結局,2010 年のベルファスト総会にて SG の継続は承

認され,2011 年 3 月から月 1 回の電話会議が再開さ

れた.しかし,3 月の電話会議は韓国,英国,米国か

ら 4 名のみの参加であり,4 月の電話会議は参加者が

揃わずキャンセルされた.

4. まとめ

JTC 1 における Green ICT に関連する 2 つの Study Group の活動状況を紹介した.いずれも 1 年の活動の

後,活動を継続することを決めたものの,求心力を失

って参加者が激減している状況である.各国,各機関

の関心が Green ICT そのものではなく,それを実現す

るための Cloud Computing や Smart Grid に移行してい

るようにも思われる.情報分野の標準化活動を行う

JTC 1 における「環境」「Green 分野」の活動はどうあ

るべきかの再検討が必要な時期に来ていると思われ

る.

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<最近の国際会議から> ■ JTC 1/SWG on Accessibility 会議報告

アクセシビリティ SWG 小委員会

幹事 野村 茂豊((株)日立製作所)

1. 開催場所:ロンドン(英)

2. 開催期間:2011-03-01/04

3. 参加国数/出席者数:10 カ国,8組織/30 名

Convener(Mr. Alex Li),Secretariat(Ms. Jennifer Garner),豪(1,SC 36), デンマーク(1),仏(1),加(1,SC 35),独(2,電話参加),ノルウェー(1,TC 1/SC 36), 韓(1, 電話参加),英(4 うち 1 は SC29),米(7 うち 1 電話参加),SC 35(1,電話参加),ITU-T SG 16(2 うち 1 は松本充司),ETSI STF 416(2),W3C/WAI(2 うち 1 は電話参加),日本(3:鈴木俊宏

[日本オラクル],松本充司[早稲田大],野村茂豊)

4.主な合意事項

(1) JTC1N10424(2010年度の JTC 1総会の合意事項で,

2011 年度 JTC 1 総会で SWG-A の活動を合意するため

に,SWG-A が,SWG-Directives に則った活動として,

行なう活動を,事前に報告するというもの.)に対す

る回答を次のように合意した. SWG-A は,TR 29138:2009 Parts 1-3(Information technology -- Accessibility considerations for people with disabilities -- Part 1: User needs summary, Part 2: Standards inventory,Part 3: Guidance on user needs mapping) をベースとして,それらの情報を更新し,

ガイド,データベースなどにして,公表する活動を行

なう.他の案として,次があった. ・ SWG-A を,TR を改定できる組織(新 SC)にす

る. ・ TR 29138:2009 Parts 1-3 の管理を,改定のできる

組織(SC 35 は引き受けて良いと決議)に移す. ・ Part 1 と Part 3 は改定の必要がない.Part 2 の改

定は,Part 2 の option として,追加していく. ・ 予定されている Guide71 の改定作業時に,TR

29138:2009 Parts 1-3 の改訂版を Annex として,

追加する. (2) SWG-A の Terms of Reference(活動)案を次のよ

うに合意したが,次回 9 月会合で決定するために,メ

ンバは意見を 6 月 30 日までに提出する. The JTC 1 SWG on Accessibility will: 1. determine an approach, and implement, the gathering of accessibility user requirements, being mindful of the varied and unique opportunities including direct

participation of user organizations, workshops, and liaisons 2. maintain and disseminate an up-to-date inventory of all known accessibility standards efforts 3. identify areas/technologies where voluntary accessibility standards are needed and suggest an appropriate standards body to consider the necessary work 4. through wide dissemination of the SWG materials, encourage the use of globally relevant voluntary accessibility standards 5. assist consortia/fora, if desired, in submitting their accessibility standards to the formal standards process. Note: Where 'accessibility standards' is understood to include standards or specifications having some feature or element pertaining to accessibility. (3) AdHoc13(名称変更 Interactions with JTC 1 Entities on Accessibilities Matters)は,JTC 1 と協力して,JTC 1プロモーションビデオのアクセシビリティ対応版を

作成する.また,JTC 1 AdHoc Group on Enabling Tools to Support JTC 1’s Work と交流して,彼らのテーマに

関してアクセシビリティ化を支援する. (4) AdHoc14 (名称変更 Accessibility User Needs Summary)は,User Needs Summary の更新および User Needs Summary の活用方法・有効性を調査する.

SWG-A メンバは,追加すべき User Needs を 6 月 30日までに,リーダに連絡する. (5) AdHoc15(名称変更 Evolution of the Database Definition for the Accessibility Standards Inventory)は,

資料 N435 を参考に作成するデータベース定義書案,

データベースの運営案,構築・維持費用案を,次回会

議で審議できるように提案する.また,SWG-A メン

バは,データベースに追加すべき規格を 6 月 30 日ま

でに,リーダに連絡する. (6) AdHoc16(Refinement of Japanese NB Proposal for New Work on Generic Test Method and Code of Practice Documents)は,SWG は,TR を作成できないと判明

したので,SWG-A として,検討しないこととした.

本件の規格化をふさわしい SC に提案するかどうかは,

Web accessibility Code of Practice(BS8878)を制定した

英国に任せることとした. (7) The CEN, CENELEC, ETSI Joint Working Group on Mandate M376 European Accessibility Requirements for Public Procurement of Products and Services in the ICT Domain とリエゾンを結ぶ.SWG-A からのリエゾン代

表者の立候補は 4 月 21 日まで募集する.

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(8) 今回会議を反映した Project Plan の更新と 30 日間

の意見調整 (9) 2010 年度 JTC 1 総会合意への対応 ・ SWG-A 議長と幹事は,2011 年 6 月 1 日までに,

SWG-A history を SWG on Planning などに提出す

る. ・ 2010 年 11 月の WSC(注)-Workshop "Accessibility

and the Contribution of International Standards"のア

クセシビリティ関連合意事項(Strategic Advisory Group “Accessibility”の WSC での設立,共通

アクセシビリティ方針の決定,アクセシビリテ

ィ関連規格の促進など)を推進するために,

SWG-A 議長が,JTC 1 議長に協力することを決

定した. (注)World Standards Cooperation (IEC, ISO and ITU) (10) SWG-A 議長は,JTC 1 SWG on Planning からの各

SC などに対する質問状(今後,規格化が活発な分野) に対する SWG-A の回答書案を,本会議の議論をベー

スにまとめ,SWG-A メンバに配布し,メンバは,4月 8 日までにコメントを提出する.議長は,4 月 15日までに,回答書を JTC 1 SWG on Planning に提出す

る.

5. Liaison Reports

(1) ITU-T SG16(Dr. 松本充司,Mr. William Pechey)から,Telecommunications Accessibility Checklist が,

http://www.itu.int/pub/T-TUT-FSTP-2006-TACL から無

料ダウンロードできることと,Report of Question 26/16 “Accessibility to multimedia systems and services”の紹介があった. (2) IEC/TC100(Dr. Kate Grant)から,アクセシビリテ

ィ関連の報告があった. (3) ETSI STF416(Mr. Dave Sawdon)から,M/376 の

紹介があった. (4) W3C/WAI(Ms. Judy Brewer)から,活動紹介があ

った.

6.次回開催

2011-09-06/09 パリ(仏)

■ JTC 1/SWG on Directives 会議報告

ディレクティブズ SWG 小委員会

幹事 鈴木 俊宏(日本オラクル(株))

1. 開催場所:セントデニス(仏)

2. 開催期間: 2011-02-16/18

3. 参加国数/出席者数:6 カ国,1団体/18 名

議長(Karen Higginbottom,米),セクレタリ(Sally Seitz,米),JTC 1 セクレタリ(Lisa Rajchel,米),JTC 1Supplement エディタ,ITTF ISO CS,ITTF IEC CS,加(2),仏(5),独(3),英(3),米(1),韓(2),日(1: 鈴木俊宏)

4. 概要と主な成果

今回の SWG on Directives 会議は,昨年 11 月にベル

ファストで開催された JTC 1 総会の決議の内,SWG on Directives に与えられた作業のフォローと,JTC 1 Supplements と JTC 1 Standing Document について各

NB からの寄書の審議が行われた.以下に各審議の概

要を報告する. (1) JTC 1 Belfast Plenary - Resolution 7(PAS の

DIS 処理について)

ITTF から PAS の DIS 処理の現状認識として DIS 処

理のフローチャートが示され,日本を含む各 NB から

コメントが寄せられた.検討の結果,統一した見解に

至らずアドホック(Ad Hoc on Fast Track and PAS Flow Charts)を設置(リーダ:Lisa Rajchel,メンバ:ITTF,加,英,韓,米,仏,日(鈴木))検討し,本年 9 月

に開催される次回 SWG on Directives オタワ会議で再

度検討することとなった. (2) JTC 1 Belfast Plenary - Resolution 31(JTC 1

で使用する文書フォーマットについて)

各NBと各SCに対して行われたサーベイの結果(寄

せられた要望)を元に検討を行った.利用する立場と

管理(アーカイブ含む)する立場,利用するフェーズ

の違いにより,残念ながら統一した見解に至らなかっ

たため,引き続き Ad Hoc on EDPDA(リーダ:Jim Hughes(米),メンバ:ITTF,米,独,仏,加,英,

日(鈴木))を再設置し,検討結果を次回の SWG on Directives オタワ会議に持ち込むこととなった. zip ファイルフォーマットについては,複数ファイ

ルを提出する際に有効であるという一定の理解は得

られたもののコンセンサスが得られず,zip ファイル

フォーマットではなく利用されるファイルフォーマ

ットに焦点を当てて検討を行ない規定化することに

なった. (3) JTC 1 Standing Document on API(JTC 1 Belfast

Plenary - Resolution 33)

SD on API の抹消についての投票結果が報告され,

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JTC 1 Standing Document シリーズから抹消されるこ

ととなった. (4) JTC 1 Standing Document on Teleconferences and

Electronic Meetings

電話会議の枠として新しく 2100 UTC(現在は 1300 UTC のみ)を追加することになった.更に Time and Date表を JTC 1 Web サイトに掲載することになった.

また,電話会議の開催通知ならびにリマインダを明示

的に発行するよう奨励するなどを盛りこんだテキス

ト案を 3ヶ月投票にかけるべく JTC 1 Secretaryが作成

することになった. IEC が提供する電話会議システムの幅広い利用に

ついても議論があったが仕様の詳細について IEC に

確認することになった. (5) JTC 1 Standing Document on History

参加者リストを公開するか否かについて議論が行

われ,SD on History は公式な公開ドキュメントである

ことも踏まえ,プライバシ保護の観点から名前は公開

しないことで意見が一致した. JTC 1 Secretary から JTC 1 総会の出席者リストは要

望に応じて渡しているが非公開である旨の説明があ

った. (6) JTC 1 Standing Document on PAS

仏から現在の Standing Document on PAS の記載に重

複や不明瞭な点(例えば,PAS Submitter Reaffirmationについての記載が散逸している)があるとして幾つか

の修正提案が出された.これらの修正テキストを 3 ヶ

月投票にかけるべく JTC1 Secretary が作成することに

なった. (7) JTC 1 Ad Hoc on New Work Item Proposals

Ad Hoc on New Work Item Proposals から ISO と IECを統合した新しい New Work Item Proposal Form の提

案があり内容を確認した.議論では,NWIP が Freely Available を期待するか否かを新 Form に入れるべきと

の主張があったが却下された.NWIP 提出時に要求さ

れている Working draft document や Outline document の完成度を投票時に(新 Q7 として)評価することも

検討されたが,新 Form には該当文書が存在するか否

かをチェック欄があるため資料の有無は確認できる

として却下された. SC 35 から Cultural and Linguistic Adaptability の記載

について提案があったが,新しいテキスト案を合意す

るまでには至らなかったため,Ad Hoc on New Work Item Proposals(リーダ:Michael Breidthardt(独),メ

ンバ:米,独,仏,英,日(鈴木))を再度立ち上げ,

SC 35 の協力を仰ぎながら,検討することになった. (8) Linking of the ISO/IEC Directives, JTC 1

Supplement and JTC 1 Standing Documents

JTC1 Supplement のエディタから,新しい Merged Document の提供形態について,Adobe Acrobat の

Portfolio 機能を使った提供方法の説明があった.各国

の環境で動作検証を行うべく,次回の SWG on Directives オタワ会議までに各メンバからコメントを

受け付け再度検討することとなった. ちなみに,本会議期間中,Adobe Acrobat 8 Japanese version で簡単に試したところ「動作保証しないので

Adobe Acrobat 9 へのアップグレードを強く推奨する」

とのメッセージが表示されることが判明したため,現

象を報告すると共に懸念を表明した. またこの作業は,JTC 1 Ad Hoc on Tools にも影響を

及ぼすことが想定されるため,日本の懸念と共に情報

共有することになった. (9) National Body of Japan Contribution on Acronyms 日本が提案していた頭字語集が JTC 1 Standing Document on Acronyms として作成されることになり,

新テキスト案を 3 ヶ月投票にかけるべく JTC 1 Supplement エディタが作成することになった.また,

新 JTC 1 Standing Document 公開に併せて,JTC 1 Supplement から参照可能とするように JTC 1 Supplement を更新することになった. (10) Working Group Convenor Term Limits

Working Group Convenorの任期が明記されていない

という指摘があり,以下の文言を JTC 1Supplement に追加することになった. All WG Convenorships shall be for nominal three-year terms ending at the next plenary session of the parent body following the three-year term. The Convenor may be reappointed for additional three-year terms. (11) JDMT June 14, 2011 Meeting and 2011 JTC 1

Supplement

JTC 1 Supplement の更なる統合について意見交換を

行った.基本的に,英,仏,加は賛成,米,独は反対,

日本は「方向性は認識しているが,行うならば何処を

やるのか特定し現場が混乱しないように最大限に配

慮すべきである」というコメントと共に一応反対の立

場を取った.結論としては,必要に応じて各国から寄

書を求めることとなった. (12) Other Working Group and Special Working Group

Reconstitution

日本から「JTC 1 直下の SWG や OWG の再設置

(Reconstitution)クライテリアが存在しないために安

易な再設立が散見される」という指摘と共に,JTC 1 Standing Document on Advisory and Ad Hoc Groups にク

ライテリアの明記を要請し受け入れられた.その結果,

新しいテキスト案を 3 ヶ月投票にかけるべく JTC 1 Secretary が作成することになった.新テキストの挿入

場所ついては,日本提案と英国提案があるため JTC 1 Secretary に一任することになった.

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(13) Special Working Groups and International

Documents

現在の JTC 1 Supplement では,SWG は Technical Report を作成できないが,既に SWG on Accessibility が 3 つの TR を(JTC 1 Directives 時代に)作成,発行

し,管理している事実などもあり,実運用の面で JTC 1 Supplement と乖離が存在する.本問題について,加

から「SWG が Technical Report を作成出来るようにす

る」という修正提案があったが,寄書内容自体に不明

確な部分があるためコンセンサスが得られず却下さ

れた.しかし,この問題は SWG on Accessibility にと

って切実であるため,日本からの要請で,JTC 1 Chairと JTC 1 Secretary が「どのような方策が取れるか」を

ITTF と検討し,SWG on Accessibility に情報共有する

と共にサポートを行うこととなった. (14) 投票期間中の議論について

SC 毎に投票期間中の振る舞いが異なるという指摘

があり,以下の文言を JTC 1 Supplement に反映させる

と共に出来るだけ早く 3 ヶ月投票にかけることにな

った. JA.1.1 Discussion during ballot period Documents out for ballot shall not be subject to discussion during any meeting, and comments on such documents shall not be formally distributed by JTC 1 or its subgroup entities.

5. 今後の予定

(1) 次回 SWG on Directives オタワ会議までのスケジ

ュール

2011 年 07 月 25 日寄書の締切り 2011 年 08 月 15 日最終アジェンダに掲載されてい

る寄書に対するコメントの締切り 2011 年 08 月 17 日最終アジェンダ発行 (2) 今後の会合の予定

2011 年 08 月 31 日~09 月 02 日:オタワ(加) 2012 年 02 月 07 日~02 月 09 日:横浜(日) 2012 年 09 月 05 日~09 月 07 日:ベルリン(独)

■ SC 23(Digitally Recorded Media for Information

Interchange and Storage/情報交換及び保存用ディ

ジタル記録再生媒体)総会報告

SC 23 専門委員会

委員長 山下 経((株)日立製作所)

1. 開催場所: Winterthur,(スイス).

2. 開催期間: 2010-12-3

3. 参加国数/出席者数: 4 カ国/9 名

議長(三橋慶喜,日),セクレタリ(木村敏子,日),

スイス(1), 米(1),蘭(1),日(4:山下 経[HoD],入

江満[大阪産業大],藤井敏彦[富士通],向井幹雄[ソ

ニー,電話参加]

4. 議事内容

【要旨】

今回の SC 23 総会では前回の総会で設立が決定し

た ISO/TC42 との Joint Working Group(JWG1)会議結

果報告と関連事項審議,日本から提案の 2件の Volume & File Format Amendment に関する審議,および SC 23議長の任期が 2011年 11月に終了することに伴う次期

SC 23 議長選出が主たるものであった. 前回総会以来メイン活動として SC 23 JWG1で検討

してきた CD/DVD の寿命推定試験方法に関する規格

化審議は,実質 1 年間の審議で完了したが,JWG1 会

議の最中から,この規格に Blu-ray DiscTMを追加した

いとの要請が参加メンバやユーザから多数寄せられ

た.追加するには,BD-R/RE といった記録形の光デ

ィスクの国際規格化が必須であり,現在,Blu-ray Disc Association(BDA)に要請する方向で多数の委員会,

ユーザから要請状を送付することになった.今後この

要請に基づいて BDA から国際規格化提案が出されて

くるものと期待する.またこの BD の国際規格化作業

が始まるまでは,2 件の Volume & File Format 審議が

メインとなるが,JTC 1 総会でも検討要請があった

Flash memory や,ISO/TC46/SC11 や IEC/TC100 で検討

中の規格との collaboration規格開発も視野に入れた活

動を行うことになる見込み. 【特記事項】

4.1 Volume & file Structure 規格 IS9660&IS1001

の Amendment 提案審議

(1) 日本からの提案である ISO1001((File structure and labeling of magnetic tapes for information interchange),と ISO 9960 (Volume and file structure of CD-ROM for information interchange)提案は全会一致で了解された. (2) 両規格の Amendment を行うために,JTC 1 に対し

これら規格のメインテナンスを SC 23 に Assign する

ように要請する. 1)IS1001 の Amendment Project Editor:大石完一(社)

Page 8: No. 90 · 表 2 JTC 1 Resolution recommended for ideas/opportunities for future Green ICT standardiza tion items to JTC 1 SCs and WG 再開され,上記の実現のための準備が開始された.し

電子情報技術産業協会 テープストレージ専門委員会

客員委員)藤井敏彦(富士通) 2)IS9660 の Amendment Project Editor:八谷祥一((株)

ガイヤ・システム・ソリューション),小町裕史(大

阪工業大学) 4.2 SC 23 Joint Working Group 1(JWG1: Joint work

with SC 23, TC23 & TC171 報告(Co-Convener:山下

経)

2008 年12月の総会で設立が承認された JWG1会議

は,ほぼ 1 年にわたる TC42 との事前協議の末,よう

やく 2009 年 10 月東京での第一回の会議にこぎつけ,

その後会議の進め方についての審議を含め,CD/DVD両光ディスクの寿命を推定する規格審議を(この規格

を適用する用途によって,厳密に推定する試験と,簡

易的に推定する試験方法,条件を規定)合計 4 回行い

完成させた.なお,第 2 回会議(2010 年 2 月:Los Angeles)以降 TC171 が本 JWG1 会議メンバとして参

加.本件の規格は ISO/IEC10995 および ISO18927 を

ベースとして,日本メンバと Ecma TC31 とで共同で

策定し,出来上がった規格は Ecma 規格 ECMA396 と

して承認され,現在 ISO/IEC JTC 1 への Fast track 提案

待ちの状況である.(なお,規格完成後,TC42 からこ

の規格策定 Procedure について,審議の結果了解され

た Procedure に従って実施したにもかかわらず,クレ

ームが出てきた.(本件は,上部機関である SCIT で

も審議された.)これに対する対応審議を行い,JWG1 Resolution や議事録を元に,TC42 議長や SCIT 参加

関連委員会日本メンバに状況説明し,理解を求めたが,

SC 23 側のコメントは一切無視された形となった.出

来上がった規格は予定通り ISO/IEC 規格として承認

される見込みではあるが,後味の悪い規格化作業とな

ってしまった. 4.3 次期 SC 23 議長選出

日本から提案の山下 経(現 SC 23 国内専門委員会 委員長)が全会一致で承認された. 4.4 Appointment/Confirmation of Officers

今後とも関連委員会との協力活動を行うため,次の

Liaison Representative を選出し,今後の情報交換窓口

として活動していただくことを確認した. ISO/TC42: 入江満(再) ISO/TC171: Terry Nelson(米,再) ISO/TC171/SC1: Terry Nelson(米,再) IEC/TC100/TA6 &TA7:向井幹雄(ソニー,再) Ecma TC31: 山下経(再)

5. その他

5.1 新 WG 6 Convener の選出依頼

現WG 6 Convenerが次期SC 23議長となるのに伴い,

新 WG 6 Convener を選出する必要が生じた.次回 JTC 1 会議までに新 Convener 選出の依頼が JNB にあった.

5.2 JTC 1(Belfast)総会での SC 23 関連事項審議

(1)Flash Memory を使った規格作成の可能性審議:

2011 年 6 月 1 日までに回答予定 (2)JTC1/TC46/SC11 での Archive /record 関連規格検

討:SC 23 検討内容との関連性を要確認 (3)IEC TC100 での,Audio Archival 規格審議 Project:

SC 23 検討内容との関連性を要確認 5.3 Magnetic/Optical 規格のReview結果を基にした

Stabilization 提案

日本からの光ディスクと磁気テープ等規格 32 件の

Stabilization 提案(未だに市場で使われている)は全

会一致で承認された.

6. 今後の会議開催予定

2012 年(場所未定) ■ SC 35(User interface/ユーザインタフェース)

GOM 報告

SC 35 専門委員会

委員長 山本 喜一(慶應義塾大学)

1. 開催場所: ベルビュー(米)

2. 開催期間: 2011-02-21/25

3. 参加国数/出席者数: 10 カ国/29 名

議長(Yves Neuiville,仏),セクレタリ(Pilippe Magnabosco,仏),韓(5),デンマーク(1),英(1),スウェーデン(1),独(1),加(3),米(7),仏(3),アイルランド(1,O member),日(6: 山本喜一[HoD],

中尾好秀[JBMIA],池田宏明[千葉大],関喜一[産

総研],中野義彦[JBMIA],野村成豊[日立])

4. 審議概要:

プロジェクトの通常の進行計画以外の事項及び日

本が主体になって進めているプロジェクトについて

述べる. (1) 韓国提案の NP が承認された Gesture-based interface ⎯ Navigation gestures common between mice, touch pads, touch screens, tablets and similar devices は, 4 月 30 日までに韓国のエディタが新たな WD を作成

し,それに基づいて審議を進める.日本は,積極的に

協力する. (2) 日本から提案し,参加国不足で承認されなかった

3 件の NP について個別に議論し,それぞれのタイト

ルを次に示すように少し修正するとともに,スコープ

がより明確になるように記述を変更,追加して新たな

NP として投票にかけることが承認された. Navigation methods for ladder menus with 4-direction

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devices Principal voice commands ⎯ Part 1: Framework and general guidance Principal voice commands ⎯ Part 4: Management of spoken command registration (3) 参加国が増加すると同時に,従来のメンバが交代

して投票の際の行動が今までとは違ってきている.特

に,NP への参加については,総会に出席して資料を

提出することを前提に参加を決定している国もあり,

必ずしも資料作成は必要ないことが周知された. (4) SC35 では従来,総会又は GOM(General Orientation Meeting: セクレタリが欠席したときの総会)の名称を

使ってきたが,この違いが Directive には規定さてい

ないので総会と何が違うのかとの指摘があった.そこ

で,会議の名称について Secretariat を含め議論し,

Directiveでは総会は JTC 1総会をさしていることから,

今後は SC の総会については SC 会議を会議名称とす

る方向で AFNOR と相談することになった.

5. 今後の予定

2011-08-29/09-02 Warsaw(ポーランド) 2012-02-20/24 京都(日) 2012-08-27/31 Montreal(加,仮)

6. その他

24 日(木)から JTC 1 議長の Ms. Karen Higginbottomが会議に参加し,SC 35 メンバの努力に対して謝辞を

頂いた. 2012 年 2 月の日本への会議招致に対して謝辞が

贈られた. ■ SC 36(Information Technology for Learning,

Education and Training/学習,教育,研修のための

情報技術)総会報告

SC 36 専門委員会

委員長 仲林 清(千葉工業大学)

1. 開催場所:Strasbourg(仏)

2. 開催期間:2011-03-12/18

3. 参加国数/出席者数:12 カ国,4団体/42 名

議長(Bruce Peoples,米),セクレタリ(Channy Lee,韓), P メンバ: 豪(3),加(4),中(11),仏(6),独(1),日(5: 仲林清[千葉工大,HoD],岡本敏雄[電通大,

WG 2 コンビーナ],西田知博[大阪学院大],平田謙

次[東洋大],鷹岡亮[山口大]),韓(4),ノルウェ

ー(1),露(3),英(2)

リエゾン(人数の無い団体はNB代表が兼務): AUF,CEN/ISSS,DCMI, LETSI

4. 議事内容

SC36 総会および WG が前回 2010 年 9 月の State Collage 会議に続いて開催された.主な審議内容を以

下に示す. 4.1 総会(2011-03-18)

総会での主要な審議議事項は以下の通りである. (1) 東日本大震災関連

総会開会に先立って,会期直前に発生した東北関東

大震災に関して,議長より,お見舞いと支援の意を表

すステートメントが述べられ,日本から,各国の支援

に対する謝意と復興への気持ちを示す返礼を述べた. (2) ISO TC232 との関係

2006 年に設立された ISO TC 232 Learning services for non-formal education and training との間で,SC 36のフランス HoD がリエゾンを務めていたが,TC 232側から情報が得られない状態が続いていた.TC 232が策定中の ISO 29990は教育の質保証に関するもので

あるが,すでにSC 36から IS化された ISO/IEC 19796-1 ITLET -- Quality Management, Assurance, and Metrics との内容の重複が指摘されていた. このような重複について,すでに JTC 1 経由で ISO TMB に申し入れを行い,関係の正常化に向けた努力

が行われている.今回,2010 年 11 月の JTC 1 Belfast総会での JTC 1 および ISO TMB からのアドバイスに

従い,リエゾン組織として,TC 232 から IS 化された

ISO 29990:2010 ― Learning services for non-formal education and training ― Basic requirements for service providers の改定提案,および,TC 232 の NWI に関す

るコメントを行うことになった. (3) 電子書籍に関する SC 34 とのリエゾン

教育の分野でも電子教科書が各国の話題となってお

り,電子書籍の標準化に関して SC 34 とリエゾンを結

ぶこととなった. (4) 議長の交代

現在,議長を務めている B.Peoples 氏(米)は,す

でに 2 期目であり,今後の体制をどうするかについて

議論が行われた.議長を務めるには,この分野の標準

化に関する知識だけでなく,JTC 1 の標準化プロセス

に習熟していることが必要である,といったことが指

摘され,Peoples 氏の任期中に Vice Chair を置くこと

などを含めて検討することとなった. 4.2. WG 1(ボキャブラリ)(2011-03-13,16)

WG 1 ではボキャブラリ規格である ISO/IEC 2382-36 を扱っている.既に出版されている第 1 版の

コリジェンダはDCOR投票が行われ承認されている.

また,ボキャブラリを各国語に翻訳したアメンドメン

トを作成することとなり,今回,ロシア,韓国,日本

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が翻訳を持ち寄った.これらを集約して第 2 版を作成

する.また,SC 36 の他のプロジェクトで用いられて

いる語彙をもとに第 3 版の検討を行った.掲載する語

彙の選択を行い,各国に確認の上で作業を進める. 4.3. WG 2 ( Collaborative and intelligent

technology)(2011-03-14,17)

(1) ISO/IEC 19778 Part.4 (Type3 Technical

Report)

Collaborative workplace(ISO/IEC 19778-1,2,3)およ

び Collaborative learning communication (ISO/IEC 19780-1)について,その普及を図るためのユーザガイ

ド作成の議論が行われた.日本,オーストラリア,中

国から,各国でのユースケースや規格の拡張の方向性

について議論が行われた.WD を 2011 年 7 月 31 日ま

でに作成し,2011 年 11 月の PDTR 投票開始を目指す

ことが合意された. (2) Study period: “Web 2.0 in collaborative ITLET

environments”

Web2.0 関連ツールの教育応用に関して,日本,中

国,カナダ,ロシアからユースケースや実施上の課題

に関するプレゼンが行われた.それを受けて,「今後,

SNS,Blog,Twitter などに分析,推薦などの付加機能

が学習環境として整備されていった時に,標準化,ユ

ーザガイドでフォローしていくことが必要である」等

の提案がなされた.これを受けて Study period を 6 か

月間延長することとなった. (3) Study period: “the integration of automated

processes for supporting collaborative

activities”

SC 36 議長から Cognition 技術の概要及び他のリエ

ゾンの動き(SC 37の cognitionとの関係)が説明され,

Collaborative workplace を Context based に拡張すべき

であること,Cognition と Predictive Model の重要性等

について意見が述べられた.議論の結果,フランスと

日本が連携して,“Predictive models of human learning”に関する新しいプロジェクトを立ち上げる準備を始

めることが合意された.これを受けて,本 Study periodはさらに 6 ヶ月間延長することとなった. 4.4 WG 3(学習者情報)(2011-03-14,15,17)

(1) ISO/IEC 24703 ITLET - Participant

identifiers

学習者識別子に関する IS の第 2 版について,WG 1での語彙の見直しを受け,出版に向けて,最終版を 4月末までに準備し,1 が月のレビュー後,出版に進め

ることになった. (2) ISO/IEC TR 29140 - Nomadicity and Mobile

Technologies

モバイルラーニングに関する 2 つのパートからな

る TR を作成するプロジェクトである.Part 1,Part 2とも DTR 投票の BRM が行われ,どちらも 4 月末ま

でに TR を準備することとなった. (3) ISO/IEC 29187 - Identification of Privacy

Protection Requirements

ノルウェーから提出されたコメント(WG3_326)について会議中議論をした.Part1 の CD 草稿につい

ては,エディタに対して他のパートについても草稿を

提出するよう要請した. (4) ISO/IEC 20013 ITLET - e-Portfolio Reference

Model

学習者の学習履歴の管理に関するプロジェクトで

ある.PDTR 投票の BRM が行われた.これを受けて

PDTR2 を 5 月末までに提出して投票を行うこととな

った.また,内容に即したタイトルの見直しを行い

Reference Model for e-Portfolio Information に変更する

こととなった. (5) ISO/IEC 20006 ITLET - Information Model for

Competency

学習者のスキル・コンピテンシの管理に関する日本

提案のプロジェクトである. ・ Part 1: Competency general framework and

information model (IS) ・ Part 2: Proficiency information model (IS) ・ Part 3: Guidelines for the aggregation of competency

information and data (TR) の構成である.Part 1 と 2 についてプロジェクトエデ

ィタの平田より WD の説明をしたのち,議論を行っ

た.双方とも次回 9 月の上海会議後速やかに CD 投票

ができるよう,5 月 31 日までに各国にケースと今回

の案についての意見を提供するよう要請することと

なった.Part 3 については Part 1 と 2 の CD BRM 後に

作成することとなった. 4.5. WG 4(MDLET, Management and Deliverly for LET)

(2011-03-12,15,17)

WG 4 は MLR (Metadata for Learning Resources),CP (Content Packaging) の標準化を行っている. MLR については,Part 1: Framework が 2011 年 1 月 15日に IS として出版された.Part 2: Dublin Core elementsは FDIS 投票中である. Part 3: Basic application profile は,Part 1 と 2 を基に

したアプリケーションプロファイルで,今回 FCD の

BRM が行われたが,Dublin Core および IEEE LTSC (Learning Technology Standards Committee) の LOM (Learning Object Metadata) との互換性に関する各国

の考え方の相違が際立っている.Dublin Core ではメ

タデータの各要素はすべて任意要素だが,LOM では

要素ごとに必須/任意や繰り返し回数,繰り返した場

合の優先度が定められており,Part 3 でこれにどう対

応するかが問題となっている.今回,FDIS 投票のド

キュメントを用意することとなったが,まだ紆余曲折

が想定される.

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Part 5: Educational elements も今回 BRM が行われ

FCD 投票に進めることとなったが,教育関連のメタ

データ要素は非常に合意が得られにくく,今後も議論

が想定される. また,Part 4: Technical elements,Part 6: Availability, distribution, and intellectual property elementsが CD 段階,

Part 7: Bindings,Part8: Data elements for MLR recordsが WD 段階にある. その他,Part 5 に関するボキャブラリについてのプ

レゼンが行われた. CP については,広く用いられている IMS の規格に

基づいており,Part 1: Information Model が IS となっ

ている.Part 2: XML Binding, Part3: Best practice and implementation guideについては今回 FCD投票のBRMが実施された.この結果,Part 2 については FDIS 投

票に進めることとなった.Part 3 については,日本か

らのコメントにより種別を TR とすることとなり,

DTR 投票に進めることとなった. MLR,CP 以外に,e ラーニングコンテンツの標準

規格 SCORM (Sharable Content Object Reference Model) の関連で,IEEE LTSC と LETSI (Learning Education and Training Systems Interoperability) が協同で進めている

CMI (Computer Managed Instruction) 規格の改定に関

するプレゼンが行われた. 4.6 WG 5(Quality Assurance)(2011-03-12,13,

15)

(1) ISO/IEC 19796 ITLET -- Quality Management,

Assurance, and Metrics

教育の質保証に関する規格である.Part1: General Approach については第 2 版の検討を開始している.

今回,各国から利用状況の説明があった.ロシアでは,

すでに国内標準となっており,大学の保証制度の運営

に用いている.また,授業作成支援システムを Part1のプロセスモデルに沿って開発している.開発と保証

とを連携させ,平易に保証情報を提供することに成功

している.中国も国内規格として導入している.すで

に 50 以上の大学で用いられており,具体的な改善例

の説明もあった.また,Part1 第 2 版の開発において

は,ISO 9000s と連携が分かるようにすることで合意

した. Part 2: Quality Model は CD2 ドラフトのレビューを

継続して行っており,2011 年 5 月の投票を目指して

いる.今回,平田から修正方針について, (1) ISO 9001との連携を明確にした図と文面を追加する, (2) Product 部分については補足に移行する,(3) Productの表についてより平易に理解できるよう変更する,と

いう提案をおこなった Part 4: Best Practice and Implementation Guide は

PDTR の BRM を行い,DTR に進めることとなった.

次回上海会議で DTR 文書の議論を行い,2011 年 10

月の投票を目指している.Part1 の中国での事例を反

映させるために中国からエディタを選出することと

した. Part 5: Guide "How to use ISO/IEC 19796-1"について

は,TR が近々出版される. Part 6: Conformity Assessment Model for ISO/IEC

19796-1 は Part1, 2 の進捗を待って作業を延期するこ

ととなった.またエディタにロシアとオーストラリア

を追加した. (2) Study Period "e-Assessment"

テスト・アセスメントに関する Study Period を進め

て今回終了した.得られた成果は NWI "Quality Standard for the Creation and Delivery of Fair, Valid and Reliable e-Tests"に反映した.この NWI は現在投票中

である. (3) Study Period "Relation to other quality

standards"

他の質保証標準(特に ISO9000)との関係を検討す

る Study Period を進めて今回終了し,得られた成果を

Part 1 と Part 2 の策定に反映することとなった. 4.7 WG 6(Supportive Technology and Specification

Integration)(2011-03-12,15)

今回の会議ではまず, ISO/IEC 24725-1 ITLET supportive technology and specification integration -- Part 1: framework の DTR 投票の BRM が行われた.ここで

は,すべてのコメントへの対応が了承され,TR とし

ての出版に向けての手続きが進められることとなっ

た. Virtual Experiment(学習用の仮想実験)の study period に関しては各国から集めたユースケースの報

告と議論が行われた.この結果,引き続き 6 月までユ

ースケースを募集した後,7 月末までに NWI 提案の

原案を作成し,各国のコメントを 8 月末まで集めるこ

ととなった. さらに,e-Textbook の study period に関して各国か

ら集めたユースケースの報告が行われた.この規格化

に関し,韓国 Yong-Sang Cho 氏からは SC 34 Ad Hoc Group 4で進められている EPUB3.0をベースとした電

子書籍の規格化の活動と連携を取るべきであるとい

う提案がなされた.また,日本(西田)やフランスか

ら各国の電子教科書の現状についてのプレゼンテー

ションが行われた.その後の議論の結果,e-Textbook に関しては SC 34 と協調した規格化を目指すことと

なり,韓国の Yong-Sang Cho 氏と中国の Wu Yonghe氏がリエゾンとなることとなった. 4.8 WG 7(Human Diversity and Access for All)

(2011-03-13,14,15)

ISO/IEC 20016 Language Accessibility and Human Interface Equivalencies (HIEs) in e-Learning applications -- Part 1: Framework and Reference Model for Semantic

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Interoperability の BRM が行われ,反対していたノル

ウェーとカナダが投票を賛成に変更した.2011 年 10月までに FDIS 投票を行う. ISO/IEC 24751 の 6 つのプロジェクトのうち,2 つ

のプロジェクト(Part 11: Access For All Preferences for Non- digital Resources (PNPND), Part 13: Access For All Personal Needs and Preferences for LET Events and Venues (PNP-EV))に関しては,WD について議論が

行われ,2011 年 5 月までに CD ドキュメントを準備し

て投票にかけることが確認された. また,本 WG が Accessibility や Universal Design 等の領域において標準化活動を展開していることから,

これらの領域に関連する他の SC や SWG(SC 32,SC 35/WG 8 , JTC 1/SWG-A) や 他 団 体 ( W3C/WAI, ITU/G3ict,GPII,DCMI/Accessibility,W3C/UWA,

IMS/Accessibility)のリエゾン活動報告が行われ,今

後も連携や協力体制を確保していくことが確認され

た.特に,GPII (Global Public Inclusive Infrastructure) に関しては,ISO/IEC 24751 と関連性が深く,標準化の

開発に大きく寄与することが説明された.

5. その他

5.1 日本提案の進展

WG 2 で長らく進めてきた協調学習関係の 4 つの規

格については,ユースケースドキュメントを作成する

プロジェクトが立ち上がっており,引き続き日本が中

心となって作業を進めていく必要がある.また,WG 3,WG 5 ではスキル標準関係,品質保証関係の活動

で日本が中心になって進めており.今回 WG 3 で議論

が行われた.今後,国内への普及も含めて推進してい

きたい. 5.2 SCORM 関連

WG 4 で IEEE/LETSI のリエゾンから SCORM 関連

のプレゼンが行われた.日本では海外と連携して

SCORM 規格の普及を進めてきた.今回の規格改定に

関してもコメントを求められているほか,次期に向け

た新しい技術の検討にも参加を要請された.国内関係

者と連携しながら参加していきたい. 5.3 電子書籍・電子教科書関連

電子書籍に関して,今回 SC 34 とリエゾンを組むこ

とが議決された.国内でも様々な動きがあり,関係者

の方々との情報交換など連携を進めていきたい. 5.4 今後の予定

2011-09-10/18 上海(中) 2012-03 オーストラリア 2012-09 韓国 2013-03 ケニア 2013-09 ロシア

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<国際規格開発賞の表彰> 国際規格開発賞は,当会に所属する Project Editor または Project Co-Editorの貢献に対して授与されるものです.

受賞者は表彰委員会で審議決定し,受賞対象の規格が発行された後に授与されます.

2011 年 3 月の受賞者 吉田 博隆((株)日立製作所) 近澤 武 (IPA)

ISO/IEC 10118-2 (Third Edition) Security techniques -- Hash-functions -- Part 2: Hash-functions using an n-bit block cipher(SC 27,2010-10-15 発行)

竜田 敏男 (情報セキュリティ大学院

大)

ISO/IEC 11770-1 (Second Edition) Information technology -- Security techniques -- Key management -- Part 1: Framework(SC 27,2010-12-01 発行)

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<解説: デジタルアーカイブ(長期保存)>

SC 23 専門委員会

委員 菅谷 寿鴻(国立大学法人 電気通信大学)

1. はじめに

まず,3 月 11 日に宮城県沖で発生した巨大地震と

大津波(東日本大震災)で被災された皆様には,心よ

りお見舞いを申し上げますとともに,一日も早い復興

を心よりお祈り申し上げます. 震災から 2 ヶ月以上が経ちますが,未だ多くの人が

見つからず,また依然として震災当時の瓦礫が片付け

られないままでいるなど心痛む日々が続きます.市町

村によっては,庁舎が壊滅的な打撃を負い,住民台帳

などの貴重な文書情報を遺失したため,行政サービス

や行方不明者を確定できないなどの困難も続いてい

ます. 一方では,泥にまみれですが,思い出の写真など個

人や家族にとってかけがいのない貴重な品々が見つ

かるなど,明るい話題も紹介されるようにもなりまし

た.普段いつでも取り出して見たり触ったりきる思い

出の品々や写真,行政や企業などが持つ情報,歴史的

な文物,無形の文化財産,そして音楽・美術・彫刻な

どの芸術作品など,同じものが二つとないユニークな

情報や存在で,一度失われると再現できない貴重なも

のです.この大震災から,多くの方が貴重な情報等を,

安全かつ長期的に保存するにはどうしたらよいか考

えたのではないでしょうか. さて,本稿で紹介するデジタルアーカイブ(長期保

存)は,前述のようなユニークな情報や存在を文書・

画像・映像・オーディオの形でデジタル化したデータ,

あるいはデジタル的に発生させたデータ(Web 上の情

報・他)などを安全に長期的に保存し,利用・活用で

きるシステムのコアとなるものです.こでは,1990年代中ごろから使われ始めたデジタルアーカイブに

ついて,その概念や実際の使われ方,デジタルアーカ

イブで重要となる情報の長期的な保存や保存メディ

アの寿命,そして実際に SC 23 専門委員会が中心とな

って国際標準化を進めてきた長期保存のための光デ

ィスクの寿命推定のための試験法,および長期保存の

ためのデータ移行法(data migration)について紹介し

ます.

2. デジタルアーカイブ

元来アーカイブ(Archive)とは,公文書や歴史的

な記録を長期にわたって保管しておく場所で,記録・

保存・公開の概念を含みますが,一般に記録はユニー

クであり,本や雑誌などの出版情報を扱う図書館とは

役割が異なると言われています.これに対し,デジタ

ルアーカイブは,1996 年に設立された「デジタルア

ーカイブ推進協議会(JDAA)」の準備会議の中で東京

大学名誉教授の月尾氏から提案され,その概念は「有

形・無形の文化資産をデジタル情報の形で記録し,そ

の情報をデータベース化して保管し,随時閲覧・鑑賞,

情報ネットワークを利用して情報発信」というデジタ

ルアーカイブ構想にまとめられたと言われています

[1].日本では,この頃から有形・無形の文化資産を

ハイビジョンで映像化し,デジタル情報として,主に

テープで保存する動きが活発化しました.代表的な事

業として,1998 年,(財)新映像産業推進センター(現

在のデジタルコンテンツ協会(DCAJ: www.dcaj.org)の前進)が当時の通産省からの委託を受けて実施した

「先導的アーカイブ映像制作支援事業」などがありま

す[2]. 一方,宇宙データシステム諮問委員会(Consultative Committee for Space Data Systems)が 1995 年に

Digital-Archiving Information Service Reference Modelを策定し,その改良版が 1999 年,Red Book[3]として

発行されています.その後,さらに改良が進められ,

2003 年に OAIS(Open Archival Information Systems)として,国際規格化されています(ISO 14721:2003). OAIS とは,「コミュニティのために情報を保存し,

それを利用できるようにする責任を負ったデジタル

アーカイブ」です.現在,多くの国で OAIS モデルを

参照した多くの電子図書館やミュージアムなどのシ

ステムが構築され,情報を自らの責任で保存し,ユー

ザに提供できるようにしています[4].この OAIS 参照

モデルでは,情報の長期的な保存( long-term preservation または long- term data storage)が重要な位

置を占めています.

3. デジタル化した情報(データ)の保存媒体(メモ

リ)と保存寿命

データ蓄積・保存媒体としては,磁気ディスク

(HDD),フロッピーディスク,磁気テープ(LTO:

Linear Tape-Open),光ディスク(CD,DVD,Blu-ray,MO など),半導体メモリ(フラッシュメモリなど)

などが一般的です. これらの蓄積・保存媒体は用途によって使い分けら

れ,オンラインで稼動するデータセンターなど,業務

用を中心としたシステムでは,HDD やフラッシュメ

モリなどを使った大規模ストレージシステムが構築

され,そのバックアップに LTO などの磁気テープが

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用いられています.また,最近では,安全性の面から,

保存ファイルを冗長化・符号化・断片化して複数のデ

ータセンターに保管するネットワークサービスも提

供されています. 一般的な用途や民生用などのデータ保存媒体とし

ては,ビット単価が安いことや保存寿命が長いことな

どから,光ディスクが用いられてきました.最近では,

HDD やフラッシュメモリ(SD カード,USB メモリ)

のビットコストが急激に下がり,また光ディスク以上

に大容量化が進展したことなどから,地デジ放送やデ

ジカメ写真の保存媒体として使用する傾向も出てき

ています.これらのメモリは,一時的な蓄積媒体とし

てはいいのですが,貴重な情報を保存する場合は,光

ディスクへの保存が勧められています[5]. それでは,これら媒体の保存寿命をどのように見れ

ばよいのでしょうか.ユーザにとって自分の使ってい

る保存媒体の寿命は大いに気になるところです. 媒体の寿命は,一般には温度や湿度などの環境条件

によって大きく異なるため,使用環境や保存環境を定

義しなければ統一的に言うことはできません.例えば,

光ディスクでは,25℃/50%RH と 30℃/80%RH では,

保存寿命が約 6 倍も異なることが示されています

[6][7]. また,媒体によっては,温度や湿度以外に保存寿命

を大きく左右する要因もあります.磁気テープでは,

ヘッドとメディアとの接触パス数,アクセス回数,磁

気転写そしてテープ癒着,磁気ディスク(HDD)で

は,特にヘッドメディアインターフェースが重要で

HD A(Head Disk Assembly) 内の残留ごみ,浮上量を左

右する気圧変化や温湿度変化,衝撃なども考慮しなけ

ればなりません.ヘッドクラッシュが起きれば HDD全部が使えなくなり,また装置自体の故障でも,現実

にはデータの復元は困難です.Google が 10 万台以上

の民生用 HDD を用いて調査した結果では,突然故障

するという報告があります [8].フラッシュメモリを

使う SD カード・USB メモリ・SSD などは,温度以外

に放射線によるエラーや,メモリの抜き差しなどで故

障することもあります.これらのストレージは,一度

故障が起きれば蓄積した情報をすべて失う可能性が

高いので,単体で長期の保存媒体として使うことは,

極めて危険性が高いと考えられます. 富士フィルムは LTO のテープ寿命について報告し

ており,10 年ごとの移し換えを推奨しています[9].コダックは,デジタルプリザベーションとして,ドキ

ュメントライフサイクルに合致した情報の管理の必

要性を訴え,国立メディア研究所(米)の資料(1998)の記録媒体の期待寿命を用いてマイクロフィルムの優

位性を述べています[10].Kimberley Flak の 2010 年の

レポートに,Storage and Predicted Longevity (at standard temperature and relative humidity)の比較表があり,磁気

媒体と光媒体の寿命が掲載されています[11]. DCAJ は 2004 年から 4 年に亘って記録形 DVD に関

する寿命試験を行い,その成果を DCAJ の web-site で

公開しています[12].試験内容は,温湿度加速試験,

耐光性試験(光暴露),耐ガス試験(硫化水素)で,

耐光性試験および耐ガス試験では,通常環境なら顕著

な劣化は生じていないことが示されています.一方,

温湿度加速試験では,記録形 DVD の種類やブランド

によって推定寿命に大きな差があり,温湿度加速試験

による寿命推定が重要なことが報告されています.

4. デジタルデータの長期保存

デジタルデータを長期的に保存するには,保存寿命

の長い光ディスクが望まれます.このためには保存寿

命を推定するための試験規格が必要となります.一方,

光ディスクの保存寿命は,ディスクの種類やブランド

によっても異なります.長期に亘って安全に保存する

ためには,定期的に記録したデータの品質を調べ,記

録状態が一定水準以下になったらデータを別のディ

スクに移し変えるデータ移行法が有効であると言わ

れています[4][13]. ここでは日本が中心となって規格化を推進した記

録形の CD 及び DVD に対応できる新しい寿命試験法

の国際規格(ISO/IEC DIS 16963)[6]および DVD のデ

ータ移行法の国際規格(ISO/IEC 29121)[7]について,

その要旨を紹介します. 4.1 CD 及び DVD ディスクの寿命推定のための試験法

光ディスクの寿命推定のための試験法としては,

ISO/TC 42 が作成した CD-R 対応の ISO 18927 Ed 2:2008 と Ecma-International が作成し,ファーストト

ラックで国際規格となった DVD 系対応の ISO/IEC 10995 Ed 1:2008(JTC 1/SC 23 担当)の二つの国際規

格があります. これら二つを融合させた新しい国際規格を作って

欲しいとの要望がでたことから,JTC 1/SC 23 の下に

JWG 1 が発足し,ISO/ TC42,TC171,および日本主

導の SC 23 が参加して,CD 系及び DVD 系の両方で

使える新しい光ディスクの寿命推定のための試験規

格の作成が行われました.4 回の JWG 1 会議を経て,

2010 年 9 月に規格案が合意され,その後,Ecma の協

力のもとファーストトラックで国際規格の提案が行

われ(ECMA-396),2011 年 6 月末締切りで,JTC 1 の

投票が始まっています(ISO/IEC DIS 16963[6]). この規格では,光ディスクに高い温度や湿度のスト

レスをかけて短時間で故障が発生するようにし,その

時の故障時間を用いて寿命の推定を行う方法を用い

ています. 一つは Arrhenius Method(アレニウス法)で,湿度

を一定にし,高温のストレスをかけて得られた故障時

間から,Harsh storage condition (30℃/80%RH の保存条

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件)での保存寿命を Arrhenius 式注 1)で推定します. 他の一つは Eyring Method(アイリング法)で,高

温・高湿のストレスをかけて得られた故障時間から,

Controlled storage condition(25℃/50%RH の保存条件)

での保存寿命を Eyring 式注 2)で推定します. 推定寿命は,加速試験に用いた標本が属する母集団

の平均寿命(B50 Life),製品の 5 %が故障する時間(B5 Life),B5 Life の 95%信頼下限で定義されています. 寿命推定のための加速ストレス条件には,Basic stress condition(簡易測定のための条件)と Rigorous stress condition(厳密な測定のための条件)があり,

両方とも Arrhenius Method と Eyring Method に対応し

ています.また,寿命を推定するための保存条件とし

て,Controlled storage condition(25℃/50%RH:エアコ

ンなどで制御された保存環境で Eyring Method で寿命

推定を行う)と,Harsh storage condition(30℃/80%RH:エアコンなどで制御されていない厳しい保存環境で,

Arrhenius Method で寿命推定を行う)の二つの保存環

境が定義されています. 図 1 に Rigorous stress condition testing,図 2 に Harsh storage condition testing の時の寿命の推定を示します. 4.2 DVD-R/RW/RAM 及び+R/+RW ディスクのためのデー

タ移行方法

ISO/IEC 29121:2009 のデータ移行法[7]は,2007 年

に日本から NP 提案し,2009 年に国際規格として制定

されました.その後,(財)光産業技術振興協会

(OITDA)が JIS 原案の作成を行い,JIS X 6255 とし

て,近々発行される予定です.なお,(社)日本画像

情報マネジメント協会(JIIMA)が原案を作成した JIS Z 6017:2006(電子化文書の長期保存方法)は,電子化

文書に限定して適用されています. この規格では,ディスクの推定寿命が不明の場合,

基本的に 3 年又はそれ以下の間隔で定期性能試験を 行うことを推奨しています.もし使用するディスクの

推定寿命が十分に長ければ,定期性能試験を行う間隔

も長くすることができ,定期性能試験にかけるコスト

を下げることができます.記録性能の評価指標は,

DVD-R/RW および+R/+RW については最大 PIE SUM 8 注 3),DVD-RAMについては最大 BER(Byte Error Rate)を用いています. 表 1 に初期性能試験の記録性能区分と定期性能試

験時の記録性能区分を示します.最初ディスクにデー

タを記録したとき,表 1 の記録性能区分で評価し,レ

ベル 1 の場合(最大 PIE SUM 8 が 140 未満)は,そ

のままデータ保存用として使います.これらデータを

保存したディスクは,3 年毎の定期性能試験にかけら

れ,表 2 の評価指標に従って引き続き使用してよいか

(最大 PIE SUM 8 が 200 未満),それともデータを移

温度(°C)

40

50

60

70

80

90

100

0 70 80 90 10010 20 30 40 50 60

図1 Basic Stress Condition試験

Harsh storage condition

30°C/80%RH

Controlled storage   condition25°C /50%RH

相対湿度(%)

ストレスポイント

Arrhenius methodを用いた寿命推定

Eyring methodを用いた寿命推定

DVD-R,

DVD-RW,DVD-R,

DVD-RW,

+R,+RW +R,+RW1 使用を推奨 <140 <7.1×10-4 4 引き続き使用し

てよい<200 <7.1×10-4

2 使用しないのが望ましい

140~280 7.1×10-4~

1.0×10-3

5 できるだけ早くデータ移行。

200~280 7.1×10-4~

1.0×10-3

3 使用してはならない

>280 >1.0×10-3 6 直ちにデータ移行

>280 >1.0×10-3

最大PIE SUM 8 最大BER 最大PIE SUM8 最大BER記録性能評価指標 記録性能評価指標

表1 初期記録性能の区分 表2 定期性能試験時の記録性能の区分

レベル ステータス DVD-RAM レベル ステータス DVD-RAM

温度 (°C)

40

50

60

70

80

90

100

70 80 90 1000 10 20 30 40 50 60

Controlled storage   condition25°C /50%RH

Harsh storage condition

30°C/80%RH

Eyring methodを用いた寿命推定

Arrhenius methodを用いた寿命推定

ストレスポイント

相対

湿度

(%

図2 Rigorous Stress condition 試験

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行するか判断されます.最大 PIE SUM 8 が 280 未満

は DVD のエラーの規格値と同じで,エラー訂正後の

データエラーは 10-13 より十分に小さくなります. 注 1) Ahheniusu 式は, kTHAet /Δ= と表され,故障時間

t は絶対温度 T だけの関数です.複数の高温の加速ス

トレス試験で得た多数の標本の故障データから,係数

A とΔH/k を推定し,これらを使って加速試験で用い

た標本が属する母集団の 30℃/80%RH での寿命推定

を行います. 注 2) Eyring 式は, RHBkTH eAet ×Δ= / と表され,故障時

間 t は絶対温度 T と相対湿度 RH の関数です.複数の

高温・高湿の加速ストレス試験で得た多数の標本の故

障データから,係数 A,ΔH/k および B を推定し,こ

れらを使って加速試験で用いた標本が属する母集団

の 25℃/50%RH での寿命を推定します. 注 3) 最大 PIE SUM 8 は,エラー訂正前の連続する 8個の ECC ブロックの PI (Parity of the Inner-code) 行の

エラー数の最大値です.一つの ECC ブロックは 208の PI 行と 182 の PO (Parity of the Outer- code) 列で構

成され,データは 32kB です.一つの PI 行はエラー訂

正符号を含め 182B あり,一つ以上のエラーが生じた

とき,PI エラーを1個と数えます.8 ECC ブロックの

PI 行は全部で 1664 個あり,DVD 規格では,この値が

280 個未満であることが規定されています.

5. おわりに

普段何気なく使っているパソコンが突然動かなく

なった,保存用に使っていたストレージやメモリから

データが読めなくなった,などの経験をした方も多い

のではないでしょうか.失って初めて知る情報の保存

の大切さ,この時期にデジタルアーカイブ(長期保存)

を紹介しましたが,少しでも皆様のお役になれば幸い

です.

参考文献

[1]ミュージアム IT 情報 http://www.dnp.co.jp/artscape/artreport/it/k_0401.html [2] 先導的アーカイブ映像制作支援事業」報告 (株)ニューメディア,1999 年発行 [3] CCSDS 650.0-R-1,”Reference Model for an Open Archival Information System (OAIS)”. Red Book, 1999 [4] 栗山正光 “長期保存型電子図書館と OAIS 参照モ

デル” 2003 年 1 月 24 日,筑波大学・図書館情報大

学統合記念公開シンポジウム [5] これなら失わないデータ保存技術 http://sec.sourcenext.info/tips/backup4/ [6] ISO/IEC DIS 16963:2011, Test method for the estimation of lifetime of optical media for long-term data storage [7] ISO/IEC 29121:2009, Data migration method for DVD-R, DVD-RW, DVD-RAM, +R, and +RW disks [8] E. Pinheiro, et al. “Failure Trends in a Large Disk Drive Population” Proc. of the 5th USENIX Conference on File and Storage Technologies (FAST’ 07), Feb. 2007 [9] http://fujifilm.jp/business/oa_media/promotion/lifeofthetape/index.html [10] ttp://www.kodak.com/JP/ja/business/products/digitalpreservation/digitalanalog.shtml [11] K. Flak “Sustainability of Digital Media” http://www.carl-abrc.ca/horaire/other/pdf/ [12] 長期保存のための光ディスク媒体の開発に関す

るフィージビリティスタディ報告書(要旨)・他, http://www.dcaj.org/ [13] 入江満“光ディスクのマイグレーション” OPTRONICS,Vol.29,No.345 138-141(2010)

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<声のページ>

国際標準作成を支えるもの

山田 朝彦(東芝ソリューション(株))

2005 年 4 月から SC 27(情報セキュリティ)で,

ISO/IEC 24761 Authentication context for biometrics(略

称 ACBio)の開発に関わった.ACBio は,インター

ネット環境でも生体認証を可能にするためのデータ

構造規格である.国際標準作成に当たっては,この得

難い機会を最大限に活用し,長く利用可能な標準にす

るため,考えられる限り完全な仕様とすることを活動

指針とした. ACBio は,バイオメトリクスに関する標準なので,

活動当初より SC 37(バイオメトリクス)に関心を持

っていただいた.しかし,SC 37 からの最初のコメン

トは,活動自体に対する懸念表明だった.当時の原案

が活動内容を適切に表現していなかったことに加え,

SC 37の既存標準に酷似した表現形式を取っていたた

め,SC 27 で対抗する標準を作成しようとしていると

の誤解を与えてしまっていた.2006 年 1 月の SC 37京都会議で,この誤解は解消され,以後,SC 37 とは

切磋琢磨の良好な協力関係を築くことになった. 切磋琢磨の第 1 段は,京都会議での ACBio のマル

チモーダル(複合的生体認証処理)への対応要求だっ

た.これは当初スコープ外だったため仕様再検討が必

要になり CD 段階での停留を余儀なくされたが,結果

的には成果が利用される機会が広がった.マルチモー

ダル対応に当たっては SC 37 専門家の綿密なレビュ

ー協力があったし,その後も各段階の原案に対してバ

イオメトリクス専門家視点での数多くの有益なコメ

ントをいただいた.切磋琢磨の第 2 段は,ACBio プロ

ジェクトから SC 37 に対する,バイオメトリクスの標

準 API である BioAPI の ACBio 対応,バイオメトリク

ス機器精度評価結果のマシン可読形式の活動の提案

だった.SC 37 では迅速に 3 つのプロジェクトが立ち

上がり,ISO/IEC 19784-1 Amd.3 と ISO/IEC 19785-4 が

IS 化され,ISO/IEC 29120-1 も FCD 段階にある. SC 17(IC カード)から得られた協力も大きい.ICカードは ACBio の重要な構成要素だったので,

ISO/IEC 7816 シリーズの IC カードコマンドインタフ

ェースを使った ACBio 生成例を,是非とも記述した

かった.これには SC 17 国内委員会の有志が全面的に

支援して下さり,目標を達成することができた. SC 37 及び SC 17 の協力がなければ,ISO/IEC 24761はもっと内容の乏しいものになっていた.ご協力いた

だいた各位に心から感謝申し上げます.

ISO/IEC 10646 の CJK 統合漢字拡張 C・拡張 D の

日本提案文字

高田 智和(国立国語研究所)

世界の文字・記号を収録した文字コード規格

ISO/IEC 10646 の第 2 版が,2011 年 3 月に出版されま

した.第 2 版には,2000 年以降に追補された文字が

収録され,総数は 10 万字を超えます. ISO/IEC 10646 の大部分を占めているのは漢字です.

CJK 統合漢字と呼ばれる漢字領域は,第 2 版では拡張

C 領域,拡張 D 領域を収録するに至っています.拡張

C 領域,拡張 D 領域ともに,SC 2 専門委員会を通じ

て,日本から提案された文字も含まれています. CJK 統合漢字拡張 C 領域には,日本製漢字(いわ

ゆる「国字」)を提案しました.標準化の審議を経て,

日本から提案された「国字」は,最終的に 367 字が

ISO/IEC 10646 に収録されました. この 367 字の中には,日常生活では,ほとんど見た

こともないような文字が含まれています.例えば,偏

「哥」,旁「舞」から成る「 (UCS:2A8A6)」は,「契

情お国 妓(けいせいおくにかぶき)」(享保 15[1730]年刊,浮世草子),「酒迎御馳走 妓(さかむかえご

ちそうかぶき)」(明和 8[1771]年初演,歌舞伎脚本)

のように,江戸時代の文芸作品の題目に用いられます.

江戸文学を研究したり,これらの本を所蔵する図書館

が目録を作成したりするときには,現代でも十分に使

われる可能性のある文字です. また,CJK 統合漢字拡張 D 領域には,各国・地域

で緊急に必要とされる漢字が提案されました.日本か

らは,汎用電子情報交換環境整備プログラム(平成

14~20 年度,国立国語研究所・情報処理学会・日本

規格協会)の成果を利用して,行政の情報処理で使わ

れる漢字の中で,特に緊急度が高いものを選んで提案

しました.最終的に 107 字が収録されました. 拡張 D 領域に収録された 107 字は,いずれも地名

や人名に使われる文字です.例えば,偏「金」,旁「当」

から成る「 (UCS:2B7F0)」は,北海道弟子屈町の

地名「 別(とうべつ)」に使われます.2008 年 9月に弟子屈町役場を訪れた折,業務システム用に外字

を作成して,日々の仕事に用いている現場を拝見しま

した.住民の転出時に,ほかの自治体と情報交換がで

きずに困っている現状を,役場の方はうったえておら

れました. ISO/IEC 10646の第2版に新たに収録された文字は,

今すぐに実装されるわけではありません.しかし,国

際規格として標準化されたことをきっかけに,パソコ

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ンや業務システムで扱え,情報交換ができるような環

境の実現に,一歩近づきました.今後の文字コード標

準化は,実務の現場のニーズを把握して,進められて

いくものと思われます.

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<2011 年 6 月以降 国際会議開催スケジュール>

JTC 1 2011-11-07/12 San Diego, CA,USA SWG-Accessibility 2011-09-06/09 Paris,France SWG-Directives 2011-08-31/09-02 Ottawa,Canada SC 2 2011-06-10 Helsinki,Finland SC 6 2011-06-22 San Diego, CA,USA SC 7 2012-05-20/25 Jeju,韓国 SC 17 2011-10-05/07 Song-Do International City,

韓国 SC 22 2011-09-19/21 Copenhagen,Denmark SC 23 2012 (未定)

SC 24 2011-08-26 Rapid City,SD,US SC 25 2011-10-31 Melbourne,Astralia SC 27 2012-05-14/15 Stockholm,Sweden SC 28 2011-06-21/07-01 杭州,中国 SC 29 2011-07-23 Torino,Italy SC 31 2012-06-05/09 Pittsburgh,PA,US SC 32 2012-06-04/08 Berlin,Germany SC 34 2011-09-26/30 Busan,韓国 SC 35 2011-08-29/09-02 Warsaw,Poland SC 36 2011-09-10/18 上海,中国 SC 37 2011-07-11/12 京都,日本 SC 38 2011-09-19/23 Seoul,韓国

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<編集後記>

本号は,3/11 に発生した東北地方太平洋沖大震災後,

最初の発行です.この場をお借りして本震災により亡

くなられた方々に慎んでお悔やみを申し上げますと

ともに,被災された地域の方々に心よりお見舞いを申

し上げます. さて,今回の震災では,直接的な被害の他にも,原

子力発電所の事故や電力不足もあり,日本の各地で震

災後も大きな影響が続いています.経済状況が必ずし

も良好とは言えない今の時期に,様々な対応が求めら

れることは,企業などの組織としても,個々人として

も苦しい状況と推察します.しかし,ピンチこそチャ

ンス!日本が一丸となって復興に取組むことで,より

強固で安定した日本を築くことができると信じてい

ます.例えば,日本の現状に適したスマートグリッド

の構築,電力消費量を減らした IT 機器やデータセン

タの構築・活用・運用,BCP のためのクラウド活用,

モバイル機器やスマートフォンを活用した被災者支

援など,今回の震災を契機に益々推進されることでし

ょう.これらの分野は,標準化にとっても新しい領域

として注目されています.これらの領域での標準化が

日本の復興に役立つとともに,復興で積み上げられる

実績は今後の標準化活動にも役立つに違いありませ

ん.本会に関わるみなさまと共に,この震災を契機に,

益々積極的な標準化活動を推進し,国際標準へ大きく

貢献していきたいと考えます. (SI 記)

発 行 人

一般社団法人 情 報 処 理 学 会

情報規格調査会

広報委員会

〒105-0011 東京都港区芝公園 3-5-8

機械振興会館 308-3

Tel: 03-3431-2808 Fax: 03-3431-6493

[email protected]

http://www.itscj.ipsj.or.jp/