nursing work index-rの 因子分析からみえる 看護師...

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22 日看管会誌 Vol. 12, No. 2, 2009 The Journal of the Japan Academy of Nursing Administration and Policies Vol. 12, No. 2, PP 22-31, 2009 報告 Nursing Work Index-R の 因子分析からみえる 看護師が望む看護労働環境 Nursing Labor Environment for which the Nurse Desires Seen from Factor Analysis of Nursing Work Index-R 中島美津子 1) 森山美知子 2) Mitsuko Nakashima 1) Michiko Moriyama 2) Key words: nursing labor environment, Magnet hospital, Nursing Work Index- Revised, Nursing administration : 看護労働環境,マグネットホスピタル,日本語版 NWI ― R,看護管理 Abstract We tried the research to aim at the visualization of the nursing labor environment for the nursing labor environment improvement of Japan. The investigation targeted all 1193 person the nurses in five hospitals. We used the questionnaire concerning the nursing labor environment developed by researching hospital "Magnet hospital" that attracted the nurse of the United States (Nursing Work Index- Revised NWI R) by this investigation. There was no Japanese version to which this questionnaire was standardized. Therefore, a Japanese version was developed. In addition, after the reliability had been examined, the validity of the construct extracted by the factor analysis was examined. The item extracted by the factor analysis is showing of the construct of the nursing environment of Japan. As a result, it was the entire coefficient of reliability α=0.879, and the extracted factor was 0.5 or more. The following six were obtained as a consequence of the factor analysis and a nursing organization construct of Japan. Nursing administrator's management skills, Nursing practice environment as professional, Nurse - Doctor's relationship, Staff assignment, Career up support, Individual standpoint in nursing organization. 本研究は看護労働環境改善に関する研究の一環として日本の看護労働環境の可視化を試みること で看護職離職問題への示唆を得ることを目的とした.調査対象は 5 病院の組織全層 1193 名の看護 師とした.米国の看護師をひきつける病院「マグネットホスピタル」の研究で開発された看護労働 環境に関する尺度(Nursing Work Index- Revised 以降 NWI-R)を使用し,NWI の日本語版とし て使用した.その際尺度の信頼性と妥当性の検討も実施した.信頼性には Cronbach のα係数を用 い,信頼性検討後,構成概念妥当性の検討に職務満足度および蓄積的疲労徴候尺度を用いた.因子 分析による下位尺度は日本の看護環境の構成概念を表象化したものである.その結果,全体の信頼 性係数α =0.879 であり,下位尺度も 0.5 以上であった.NWI - R の下位尺度と職務満足度,蓄積 受付日:2008 年 2 月 19 日  受理日:2008 年 5 月 23 日 1) 広島大学大学院保健学研究科博士課程後期 Graduate School of HealthScience, Hiroshima University (聖マリア学院大学)(St. Mary’s College) 2) 広島大学大学院保健学研究科 Graduate School of HealthScience, Hiroshima University

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22 日看管会誌 Vol. 12, No. 2, 2009

The Journal of the Japan Academy of Nursing Administration and Policies Vol. 12, No. 2, PP 22-31, 2009

報告

Nursing Work Index-R の 因子分析からみえる

看護師が望む看護労働環境Nursing Labor Environment for which the Nurse Desires

Seen from Factor Analysis of Nursing Work Index-R

中島美津子 1) 森山美知子 2)

Mitsuko Nakashima1) Michiko Moriyama2)

Key words: nursing labor environment, Magnet hospital, Nursing Work Index- Revised, Nursing administration

キーワード : 看護労働環境,マグネットホスピタル,日本語版 NWI ― R,看護管理

AbstractWe tried the research to aim at the visualization of the nursing labor environment for the nursing

labor environment improvement of Japan. The investigation targeted all 1193 person the nurses in five hospitals. We used the questionnaire concerning the nursing labor environment developed by researching hospital "Magnet hospital" that attracted the nurse of the United States (Nursing Work Index- Revised;NWI-R) by this investigation. There was no Japanese version to which this questionnaire was standardized. Therefore, a Japanese version was developed. In addition, after the reliability had been examined, the validity of the construct extracted by the factor analysis was examined. The item extracted by the factor analysis is showing of the construct of the nursing environment of Japan. As a result, it was the entire coefficient of reliability α=0.879, and the extracted factor was 0.5 or more. The following six were obtained as a consequence of the factor analysis and a nursing organization construct of Japan. ① Nursing administrator's management skills, ② Nursing practice environment as professional, ③ Nurse - Doctor's relationship, ④ Staff assignment, ⑤ Career up support, ⑥ Individual standpoint in nursing organization.

要  旨

本研究は看護労働環境改善に関する研究の一環として日本の看護労働環境の可視化を試みることで看護職離職問題への示唆を得ることを目的とした.調査対象は 5 病院の組織全層 1193 名の看護師とした.米国の看護師をひきつける病院「マグネットホスピタル」の研究で開発された看護労働環境に関する尺度(Nursing Work Index- Revised 以降 NWI-R)を使用し,NWI の日本語版として使用した.その際尺度の信頼性と妥当性の検討も実施した.信頼性には Cronbach のα係数を用い,信頼性検討後,構成概念妥当性の検討に職務満足度および蓄積的疲労徴候尺度を用いた.因子分析による下位尺度は日本の看護環境の構成概念を表象化したものである.その結果,全体の信頼性係数α =0.879 であり,下位尺度も 0.5 以上であった.NWI - R の下位尺度と職務満足度,蓄積

受付日:2008 年 2 月 19 日  受理日:2008 年 5 月 23 日1) 広島大学大学院保健学研究科博士課程後期 Graduate School of HealthScience, Hiroshima University

(聖マリア学院大学)(St. Mary’s College)2) 広島大学大学院保健学研究科 Graduate School of HealthScience, Hiroshima University

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的疲労徴候尺度にも相関が認められ,使用尺度として信頼性と妥当性が得られた.因子分析の結果,日本の看護組織構成概念として①看護管理者のマネジメント能力②専門性を発揮できる看護環境③看護師―医師関係④人員配置⑤キャリア・アップ支援⑥組織内における個人の位置づけの 6 つが得られた.

Ⅰ . はじめに

看護師不足問題はわが国に限定されたことではなく ICN(International Council of Nurses:世界看護師協会)の事務局長も世界的な看護師不足を言及し,その解決には職場環境の改善が必要であることを述べている(Oulton, 2006).

米国では 1980 年代,国家的な看護師不足が問題になる中,優れた看護師を惹きつけ,高定着率を維持し,一貫した質の高いケアを提供している看護組織が存在した.そこで,これらを「マグネットホスピタル」と命名し,その組織の分析から看護師不足改善への糸口を探る研究を始めた.このときに抽出された組織特性は,その後の看護組織改善へのモデルとして,現在でも多くの示唆を与えている(Urden & Monarch, 2002).また,この組織特性を可視化した尺度として開発されたのが Nursing Work Index(看護環境調査票:以下,NWI と略す.)である(Kramer & Hafner,1989).これらの項目は看護職を惹きつける職場環境としての評価に使用されることが多く,看護職の職場環境改善への指標として使用されることもある

(Lewis & Matthews, 1998).同時に看護職の離職防止への貢献も報告されている(Upenieks, 2003).

わが国においても 2006 年度の診療報酬改定で一般入院基本料7対1を設定したことにより,増収を狙う病院による看護師大量採用は,看護師の偏在化現象をうみ,看護師獲得が医療機関の存続をかけた社会的問題となっている.しかしこの現象は看護労働環境の改善にとって追い風である.病院側は,限られた人的資源をいかに確保し,定着させるか,看護師の離職防止と定着促進という喫緊の課題への努力が迫られ,わが国でも看護師の定着率を向上させ離職率を低下させるための看護

労働環境への関心が高まっている.そこで本研究では,米国で開発された NWI を用

いてわが国の看護師が望む看護労働環境を明らかにし,米国とは異なる医療環境・労働環境下にある看護師の離職問題への対策と検討材料への基礎的資料を得ることを目的としている.

Ⅱ . 研究方法

第 1 稿(研究の第一段階)では,質的調査によるわが国のマグネットホスピタルとしての組織特性と離職要因の抽出を行った.本稿(第二段階)では,米国で開発された NWI によるわが国の看護師が望む看護労働環境を中心に報告する.

1.研究対象施設及び対象者の抽出米国のマグネットホスピタル研究における調査

方法を参考に,研究者らによる個人情報網を活用し,①看護師に人気がある病院,②看護師がいきいきと働いていると感じられる病院,③働きやすい病院といわれている病院,③患者からの評判の良い病院,④病院全体を改善しようとする組織的改善活動が盛んな病院,⑤入院基本料・設置主体・施設規模(許可病床数)は問わない,⑥急性期・慢性期は問わない,⑦保険医取り消しや行政処分などの対象でない病院の 7 項目を施設候補基準に選出した.その結果選出された対象施設の看護部長に直接協力を依頼し,同意を得た施設の看護師全員を研究対象者とした.

2.データ収集方法1)調査期間2006 年 10 月~ 2007 年 3 月

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2)調査方法無記名自記式質問紙調査票及び返信用封筒を個

別包装し,必要人数分,看護部長宛に送付し,看護部から対象者に調査票を配布してもらった.看護部長からの強制力が働かないよう,回収は研究者への直接個別返送とした.3)使用尺度(1)看護環境調査票(Nursing Work Index-

Revised)本研究で使用する Nursing Work Index-Revised

(以下,NWI-R と略す.)は,看護師を惹きつけ看護の専門性を生かすことが可能な組織特性を可視化する看護労働環境尺度として Kramer & Hafner

(1989)によって開発された原版 NWI を改訂したもので,Kramer & Schmalenberg(2005)によって発表されている.質問項目は 57 項目(全体のα= 0.96),構成概念は① Nurse Autonomy Subscale( 自 律 性 ) α = 0.85, ② The control over the practice setting subscale(実践環境としてのコントロール力)α= 0.91,③ The nurse-physician relationship subscale(看護師-医師の関係性)α= 0.84,④ The organizational support subscale(組織からのサポート)α= 0.84 の 4 つである.回答は各項目に対し4件法で,得点は高いほど良い環境を示し,総合得点及び下位尺度得点両者で評価可能となっている.現在,各国で標準化が試みられているが,その解釈は研究者によって異なり,Aiken & Patrician(2000)の研究では3 つの下位尺度,Lake(2002)では 5 つの下位尺度,Estabrooks, et al.(2002)の研究では 26 項目から構成された 1 つの尺度,Cummings, et al.(2006)の研究では統計学的に整合性がないと判断しているなど,標準化については多くの課題がある尺度である.しかしながら,現時点で看護労働環境尺度は他に開発されていないため,本研究では調査当時,日本版への標準化作業の途中である NWI-R

(翻訳版)を,研究者(後の金井ら(2007)の研究)の許可を得て使用した.そのため,本調査において妥当性と信頼性を検討した.(2)基準関連妥当性検討のための尺度概要

看護師の職務満足度が低いほど離職が高いこと(藤野 ,2007,2005,2004),労働者の心身の疲労が強いほど労働能力の低下を導出し労働意欲の低下に帰結すること(越河 , 2002)などが報告されていることから,職務満足度尺度と蓄積的疲労徴候Index 尺度を用いた.

①職務満足度尺度:Stamps,et al.(1978)の 48項目を尾崎ら(1988)が日本語訳を作成し,満足度調査で多用されている妥当性と信頼性が確立された尺度である.7 つの下位尺度(給料,専門職としての自律,看護業務,看護管理,看護師間相互の影響,職業的地位,医師-看護師間の関係)から成り立っている.

②蓄積的疲労徴候 Index:身体的疲労の蓄積は労働意欲の低下と離職に関連するという越河ら

(2002)の研究によって開発された慢性的な疲労感を測定する本尺度を選定した.81 項目から構成され,下位尺度は,気力の減退,一般的疲労感,身体不調,イライラの状態,労働意欲の低下,不安感,抑うつ感,慢性疲労徴候の 8 つである.「労働意欲の低下」は自分の生活や職場の評価が含まれ,労働負荷に対する個人の反応を表し,「慢性疲労」は業務的繁忙さを反映している.本研究では「労働意欲の低下」と「慢性疲労」の下位尺度(17 項目)を使用した.4)基本属性年齢,最終専門学歴,婚姻状況,看護職として

の転職回数,配置転換経験回数,看護職としての通算経験年数,就業形態,所属病棟,職位,など19 項目とした.

3.分析方法1)NWI-R の因子分析による構成概念の検討(1)多持性-尺度化分析平均値と標準偏差,歪度と尖度,相関係数の算

出と因子分析,正規性の検定を実施した.NWI-Rの下位尺度の因子数はスクリープロットにより判断し因子分析を行った.因子抽出法は最尤法とし,潜在変数間の相関を鑑みプロマックス回転を行った.2 つ以上の因子にまたがって 0.4 以上の因子負

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荷量を示す項目やいずれの因子にも因子負荷量が0.4 に満たない項目を削除する多持性-尺度化分析とし,いずれか一項目のみに因子負荷量が 0.4 以上である項目になるまで因子分析を繰り返した.なお因子負荷量の数値だけでなく,その項目を削除することで行列が大きく変化する項目や看護労働環境調査として重要と判断される項目は削除しなかった.(2)NWI-R の他の尺度との相関分析NWI-R の総得点と職務満足度尺度,蓄積的疲労

徴候 Index との Spearman の順位相関により検討した.2)NWI-R の信頼性の検討信 頼 性 の 検 討 と し て,NWI-R の 全 体 的 な

Cronbach のα係数及び下位尺度の Cronbach のα係数を求めた.

なお,統計解析には SPSS14.0J for Windows を使用し,有意水準を 5% 未満とした.

4.倫理的配慮研究の趣旨と意義,プライバシーの保護,研究

参加の任意性と中断の自由及び結果の公表の仕方等を研究協力者に文書を用いて説明し,文書で同意を得た.さらに調査票は全て研究者への個人返送とし,研究者によるデータのコード化を行い,研究以外の目的には使用しないことも確約した.本研究は,広島大学大学院保健学研究科倫理審査委員会の承認を得ている.

Ⅲ . 研究結果

1.対象の基本属性(表1)抽出した 29 組織のうち同意が得られた組織は 5

つで,公益法人 2 組織,企業立 1 組織,社会福祉法人1組織,独立行政法人1組織であった.病床規模は,500 床以上 2 組織,200 床~ 500 床未満 2組織,200 床未満 1 組織であった.調査票は対象組織成員 1193 名分を配布した.回収率 31.4%,有効回答率 97.6%であった.全ての回答について正

表1 対象の基本属性

属性  n=366 単位:人 (%)

年齢層 20 歳代 151 (41.30)

30 歳代 113 (30.90)

40 歳代 66 (18.00)

50 歳代 34 (9.30)

婚姻状況 配偶者有 子ども有 105 (28.70)

配偶者有 子ども無 41 (11.20)

配偶者無 子ども有 24 (6.60)

配偶者無 子ども無 195 (53.30)

転職回数 ( 回 ) 0 回 214 (58.50)

1 回 58 (15.80)

2 回 35 (9.60)

3 回 34 (9.30)

4 回 15 (4.10)

5 回 5 (1.40)

6 回 1 (0.30)

経験部署数 0 47 (12.80)

(配置転換経験数) 1 77 (21.00)

2 55 (15.00)

3 48 (13.10)

4 39 (10.70)

5 34 (9.30)

6 23 (6.30)

7 11 (3.00)

8 10 (2.70)

9 5 (1.40)

10 7 (1.90)

11 2 (0.50)

15 2 (0.50)

通算経験年数 1 ~ 5 年 125 (34.20)

6 ~ 10 年 93 (25.40)

11 ~ 15 年 42 (11.50)

16 ~ 20 年 37 (10.10)

21 ~ 25 年 29 (7.90)

26 ~ 30 年 21 (5.70)

31 ~ 35 年 13 (3.60)

36 ~ 40 年 3 (0.80)

就業形態 日勤のみの正規職員 111 (30.30)

二交替制の正規職員 59 (16.10)

三交替制の正規職員 171 (46.70)

非常勤または臨時 14 (3.80)

パートタイム 6 (1.60)

職位 管理職 19 (5.20)

中間管理職 53 (14.50)

非管理職 286 (78.10)

有給取得率 25%未満 74 (20.20)

50%未満 82 (22.40)

75%未満 45 (12.30)

76%以上 45 (12.30)

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規性を確認し,基本的統計値を求めた.年齢は 20歳代が最も多く 41.3%,平均年齢 34.3(SD ± 9.59)才,婚姻状況は配偶者無子ども無(独身)が最も多く 53.3%,配偶者有子ども有が 28.7%であった.自分の意志による所属組織の変更は,全く経験のない者が 58.5%と最も多く,通算経験年数は5 年以内が 34.2%であった.就業形態は正規職員三交替制勤務が最も多く 46.7%,職位はスタッフ78.1%,中間管理職(副師長クラス)14.5%,管理職(病棟師長・看護部長)5.2%であった.有給休暇取得率は 48.8% が未記入であった.

2. NWI - Rによる看護労働環境の特性(表2)1)看護労働環境としての構造的特徴看護労働環境に関する 57 項目の設問と各設問に

対する 4 段階評価に基づく因子分析の結果,6 つの因子が導出された(表 2).「18. よくできた仕事は,認められ,賞賛が得られる」「43. 患者ケアに対する看護師の貢献は一般の人々に認められている」「54. 各病棟・部署独自の看護方針や手順を定めている」の 3 項目は,いずれも因子負荷量が 0.4に満たないため本来ならば削除するが,これらの削除で因子解がまとまりのない分析結果となるため削除しなかった.NWI-R は全体で 57 項目であったが多持性-尺度化分析の結果より,対象組織全体における組織の看護労働環境は 6 因子,23 項目を採用した.これら 23 項目全体の内的整合性を示すα係数は 0.861 であり,各因子の内的整合性も0.500 以上であり信頼性を確保できた.第一因子α= 0.879,第 2 因子α= 0.733,第 3 因子α= 0.802,第 4 因子α= 0.759,第 5 因子α= 0.763,第 6 因子α= 0.514 であった.(1)看護管理者のマネジメント能力(第一因子)第一因子には「看護師長は,看護師をバックアッ

プしている」「看護師長は,管理者・指導者として有能である」「看護師長は,日々の問題や諸手続きに対して相談にのっている」「看護師長は,医師との衝突があっても,看護職員の意思決定をバックアップしてくれる」の 4 項目が含まれていた.い

ずれも看護師長のマネジメントに関する項目であることから「看護管理者のマネジメント能力」と命名した.(2)専門性を発揮できる看護環境(第二因子)第二因子には「臨床能力がある看護師と一緒に

働いている」「看護師が患者ニーズに応じて,すべてのケアの調整・提供を行っている」「この病院のことを熟知した看護師と一緒に働いている」「看護ケアは,医師の診断というより,むしろ看護過程に基づいている」「患者ケアについての相談の機会を提供している専門看護師や認定看護師がいる」

「各病棟・部署独自の看護方針や手順を定めている」「患者ケアに対する看護師の貢献は一般の人々に認められている」の 7 項目を含んでいた.これらは,看護職としての専門性を発揮できる環境が整っている中で,自律した看護の提供を可能にする労働環境に関する項目であることから「専門性を発揮できる看護環境」と命名した.(3)看護師 - 医師の関係(第三因子)第三因子は「看護師と医師はとてもチームワー

クがとれている」「医師と看護師の仕事上の関係は良好である」「医師は,質の高い医療を提供している」「看護師と医師は,同等な立場で協力して患者ケアの提供にあたっている」の 4 項目を含んでいた.これらはいずれもチーム医療として医師との関係性を示すものであり「看護師 - 医師関係」と命名した.(4)人員配置(第四因子)第四因子は「仕事を終えるための十分な数の看

護師がいる」「質の高い患者ケアを提供するために十分な看護師が配置されている」「各病棟間で,看護必要度に応じて融通のきく看護人員配置がとられている」「よくできた仕事は,認められ,賞賛が得られる」の 4 項目を含んでいた.これらは看護師一人ひとりに対する日常業務における適切な人員配置による正当な業務量を求めている項目であり「人員配置」と命名した.(5)キャリア・アップ支援(第五因子)第五因子は「クリニカルラダーなどキャリア・

アップを図る機会がある」「看護師のための院内/

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継続教育プログラムは活発に行われている」の二つの項目を含んでいた.これらは看護師としての専門性を高めると同時に,ケアの質を高めるためのキャリア・アップ教育の充足を示していることから「キャリア・アップ支援」と命名した.

(6)組織内における個人の位置づけ(第六因子)第六因子は「師長や主任以外の看護師でも,院

内や看護部門の委員会の委員となる機会を有する」「病棟・部署の専属として配属された看護師(師長・主任を除く)は,他の病棟に欠員などができた場

表2 看護労働環境の因子分析(N=366)

NWI-R 項目第 1

因子

第 2

因子

第 3

因子

第 4

因子

第 5

因子

第 6

因子

【看護管理者のマネジメント能力】

4. 看護師長は,看護師をバックアップしている 0.864 -0.011 -0.005 -0.014 0.020 -0.048

13. 看護師長は,管理者・指導者として有能である 0.797 0.016 -0.108 0.109 -0.014 -0.143

44. 看護師長は,日々の問題や諸手続きに対して相談にのっている 0.734 0.017 0.093 -0.090 0.084 0.100

35. 看護師長は,医師との衝突があっても,看護職員(正看護師,准看護師,

看護助手)の意思決定をバックアップしてくれる

0.695 0.091 0.014 0.027 0.001 -0.059

【専門性を発揮できる看護環境】

33. 臨床能力がある看護師と一緒に働いている 0.025 0.704 -0.049 -0.051 -0.082 -0.072

21. 看護師が患者ニーズに応じて,すべてのケアの調整・提供を行なってい

-0.014 0.603 -0.026 0.049 0.059 0.020

56. この病院のことを熟知した看護師と一緒に働いている 0.113 0.576 -0.082 -0.100 -0.080 0.155

41. 看護ケアは,医師の診断というより,むしろ看護過程に基づいている -0.015 0.453 0.130 0.013 0.018 0.097

19. 患者ケアについての相談の機会を提供している専門看護師や認定看護師

がいる

-0.124 0.417 0.016 0.049 0.283 -0.339

54. 各病棟・部署独自の看護方針や手順を定めている -0.034 0.391 0.043 -0.067 0.199 0.050

43. 患者ケアに対する看護師の貢献は一般の人々に認められている 0.113 0.332 0.098 0.001 0.153 0.173

【看護師 - 医師の関係】

27. 看護師と医師はとてもチームワークがとれている -0.025 -0.077 0.921 -0.031 0.005 -0.026

2. 医師と看護師の仕事上の関係は良好である    0.034 -0.121 0.816 0.026 0.039 -0.030

28. 医師は,質の高い医療を提供している -0.075 0.101 0.536 0.035 0.073 0.057

39. 看護師と医師は,同等な立場で協力して患者ケアの提供にあたっている 0.092 0.316 0.489 0.003 -0.182 -0.046

【人員配置】

16. 仕事を終えるための十分な数の看護師がいる -0.046 -0.069 0.005 0.899 -0.084 -0.006

12. 質の高い患者ケアを提供するために十分な看護師が配置されている -0.034 0.080 0.061 0.714 0.032 -0.048

53. 各病棟間で,看護必要度に応じて融通のきく看護人員配置がとられてい

0.074 -0.151 -0.040 0.701 0.112 0.106

18. よくできた仕事は,認められ,賞賛が得られる 0.150 0.242 0.027 0.341 -0.131 0.077

【キャリア・アップ支援】

8. クリニカルラダーなどキャリアアップを図る機会がある -0.020 0.157 -0.099 0.055 0.793 0.010

7. 看護師のための院内/継続教育プログラムは活発に行なわれている 0.115 -0.097 0.089 -0.048 0.755 0.002

【組織内における個人の位置づけ】

42. 師長や主任以外の看護師でも,院内や看護部門の委員会の委員となる機

会を有する

0.002 0.034 -0.025 0.056 0.082 0.818

49. 病棟・部署の専属として配属された看護師(師長・主任を除く)は,他

の病棟に欠員などができた場合に手伝いに行く必要はない

-0.195 0.176 -0.001 0.019 -0.105 0.414

累積寄与率 29.157 37.782 44.940 51.929 58.223 62.898

信頼性係数 0.879 0.733 0.802 0.759 0.763 0.514

因子抽出法 : 最尤法

回転法 : Kaiser の正規化を伴うプロマックス法

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合に手伝いに行く必要はない」の 2 項目であった.これらは看護職個々人が,組織内において自分の位置づけを認識しながら,一個人として活動できる環境を包含していると考えられ「組織内における個人の位置づけ」と命名した.2)看護労働環境調査票と職務満足度尺度との

関係因子分析での 6 つの因子構造を持つ NWI - R

に信頼性が得られたため,各因子の項目を単純合算し下位尺度として以降の分析に使用する.職務満足度の下位尺度との平均得点の同時妥当性相関を検討した結果,NWI - R の 6 つの因子について総じて正の相関がみられた.3)看護労働環境調査票と蓄積的疲労感 Index

との関係NWI-R の下位尺度を独立変数とし,蓄積的疲労

感 Index との関連を検討した.概して NWI-R の下位尺度と慢性的疲労感 Index は正の相関が認められたが,いずれも相関係数は0.01~ 0.2と低かった.NWI-R の第六因子「組織運営参画」と蓄積的疲労感 Index「努力しても仕方ないと思う」間でのみ負の相関がみられた.

Ⅳ . 考察

1.看護労働環境調査票の信頼性と妥当性1)構成要素の信頼性翻訳した NWI-R は全体で 57 項目であったが,

多持性-尺度化分析の結果より,対象組織全体における看護労働環境として 6 因子,23 項目を採用した.これら 23 項目全体の内的整合性を示すα係数は 0.861,各因子の内的整合性も 0.500 以上であり信頼性を確保できと考える.内的整合性として第 6 因子のα =0.514 は一見低いと考えられるが,第六因子の 2 項目は看護職個々人が,組織内においてなんらかの位置づけを持ちながら,一個人として活動できる環境を包含しており,職業構成概念上必要なものであると考える.尾崎ら(1988)の職務満足度調査票の開発過程でも,14 個の項目

について有意差を認めていなかったが,看護師としての職業構成概念上必要なものとして除外できないと判断しそのまま使用されている.これらについては,この尺度が内容的妥当性という観点を重視して構成された変数であることを示しており,結果として収束的妥当性が低くなり,Cronbach のα係数も低くなる可能性を示唆しているが,尺度としての信頼性はあると述べている.本研究においても,全体の結果として収束的妥当性が低くなり,Cronbach のα係数もやや低くなったが,尺度としての信頼性は確保できたと考える.2)構成要素の妥当性NWI-R の下位尺度の信頼性が得られたことから

基準関連妥当性の検討として職務満足度調査で使用されている 7 つの構成概念に対する相関及び蓄積的疲労尺度との相関を検討した結果,総じて正の相関が認められ構成要素としての妥当性が得られたと考えられる.

2.NWI-R の構成概念に関する国内外比較1)欧米のNWI - Rに関する検討結果 (表3)NWI-R は,世界各国で信頼性・妥当性の検討が

重ねられ,様々な結果が導出されている.Aiken & Patrician(2000)は 4 つの下位尺度が得られた報告をしており,Lake(2002)は 5 つの下位尺度を報告している.また,Estabrooks(2002)の研究では,他の研究結果と丁寧に検討し,結論としては整合性のない項目があり,下位尺度のない 26項目から成る1つの尺度という結果を得ている.さらに最近の Cummings, et al.(2006)の論文では表 3 に示した 3 つの研究結果について,その全てにおいて看護環境を測定する尺度として不適合であると述べ,いずれもモデル適合しないことを論じている.これまでの NWI に関する研究論文のうち主要な研究結果の比較を表3に示す.2)国内のNWI - R比較 (表4)本研究の調査当時,わが国における NWI-R の研

究は公表されていなかった.その後,金井ら(2007)と小林ら(2006)の 2 つの研究報告がなされている.金井ら(2007)の研究によると,わが国の結果は

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欧米の代表的 3 つの先行研究と全く異なり,医療制度の異なる看護実践環境の中で,同一指標で測定することの困難性を言及している.その上で「上司からのサポート」「看護師―医師関係」の 2 因子を列挙し,9 因子のうち残りの 7 因子については構成する項目間の整合性が得られないとしている.小林ら(2006)の研究によると,構成概念は「患者ケアの質の保証」「看護師長からのサポート」「仕事上の条件」とし,職務満足度との基準関連妥当性の検討から尺度の妥当性を明示し,Cronbach のα係数も全体として 0.96 であり十分な信頼性の確保を述べている.本調査結果では「看護管理者のマネジメント能力」「専門性を発揮できる看護環境」

「看護師‐医師関係」「人員配置」「キャリア・アッ

プ支援」「組織内における個人の位置づけ」の6つが構成概念として抽出された.本研究結果のうち,金井ら(2007)の「上司からのサポート」,小林ら

(2006)の「看護師長からのサポート」に対し「看護管理者のマネジメント能力」が相当する.また,

「看護師 - 医師関係性」は,本研究と金井ら(2007)の研究では抽出されているが,小林ら(2006)は

「仕事上の条件」に内包している.加えて,小林ら(2006)は「仕事上の条件」に看護人員配置や勤務スケジュール,意思決定を自由に行うことができる点,個人としての病棟内での位置づけを確認する機会などについて言明し,これら包含する結果として3つの因子を列挙している.さらに金井ら

(2007),小林ら(2006)の両研究とも「人員配置」

表3 NWI - Rの欧米における下位尺度比較

Aiken & Patrician(2000) Lake(2002) Estabrooks (2002)

Autonomy(自律性)Participation in hospital affairs

(病院運営に関する看護師の参加)

Practice

Environment

1Factor (26-items)

実践環境 1 因子

Control over the practice setting

(実践環境に対するコントロール)Quality of Care(ケアの質)

Nurse/Physician Relationships

(看護師―医師関係)

Nurse Manager ability

(看護管理者のマネジメント能力)

Organizational Support(組織のサポート) Staffing and resources(人員配置と人的資源)

Nurse/Physician Relationships(看護師―医師関係)

表4 わが国におけるNWI-R の下位尺度比較

金井(2007) 小林ら(2006) 本研究

項目数 57 項目 項目数 21 項目 項目数 23 項目

<第 4 因子> 注)

上司からのサポート

<第 1 因子>

(α =0.83)

患者のケアの質保証

<第 1 因子>(α =0.879)

看護管理者のマネジメント能力

<第 2 因子>(α =0.733)

専門性を発揮できる看護提供環境

<第 2 因子>

(α =0.92)

看護師長からのサポート

<第 3 因子>(α =0.802)

看護師‐医師関係

<第 5 因子>

看護師―医師関係

<第 4 因子>(α =0.759)

人員配置

<第 3 因子>

(α =0.76)

仕事上の条件

<第 5 因子>(α =0.763)

キャリア・アップ支援

<第 6 因子>(α =0.514)

組織内における個人の位置づけ

注)金井(2007)の結果は第 1 因子から第 3 因子について整合性がなく,α係数も示されていない

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の重要性について考察で述べ,日本の人員配置の恒常的不足について言及している.本研究結果は,これまでの研究結果を反映した構成概念であると共に,明確に「人員配置」や「キャリア・アップ支援」が抽出された結果となっている.概括すると,本研究結果は,これまでの研究結果に即した構成概念となり,他の研究に対する明らかな逸脱はみられない.

欧米の研究結果との比較については,比較的Lake(2002)の結果と類似しているが,看護労働者としての社会的位置づけや組織の性質が異なるため,一元的に比較することは控える.

3.人員確保と教育の充実を望む日本の看護組織

本研究の結果は,組織構成要素を組織特徴として示すだけでなく,看護師が組織に何を望み,何を重視しているのか,ということも表出される結果といえる.藤野ら(2005)は看護師長のリーダーシップが看護職者の職務満足への影響を実証し,スタッフが病棟師長に対し,病棟のマネジメントだけでなく,自律した専門職としての職位を確保するためのリーダーシップを発揮できる組織全体における有機的な機能を望んでいることを報告している.これらを裏付けるように本研究結果では,第1因子として「看護管理者のマネジメント能力」が抽出された.すなわち,このことは組織成員にとって最大の関心事項であることを表している.

「専門性を発揮できる看護環境」と「看護師 - 医師関係」についてはケアを展開する中で中心的要素であり,より質の高い看護環境を追究する組織成員の姿勢が反映されていると考える.また,看護労働環境として「キャリア・アップ支援」を望んでいるこの結果は,渡辺(2005)のヒトが「働く」4つの目的のうち「自己成長を求める」という自己実現に向けたキャリア・アップを望む看護師の労働環境を望む声を反映していると考える.最後に「人員配置」についてであるが,第1稿において離職の根底ある解決課題が「恒常的人員不足」であったことを報告したが,本調査結果はこれら

を裏付ける結果ではないかと考える.金井ら(2007)も離職率が低い病院が質の高い看護ケアが提供されているとは必ずしもいいがたい現実があると言及した上で,看護労働環境に与える様々な影響を示唆しながらも「十分な人員配置」が喫緊の課題であることを述べている.小林ら(2006)も考察の中で「人員配置」にふれている.これまでの研究結果と本研究結果は,看護師が望む看護労働環境に向けて,人員配置は第一義的に改善されなければならない課題であることを示唆していると考える.

Ⅴ . 本研究の限界

本調査対象に関して,サンプリングの母集団に対する絶対的不足に加え,個人の価値観や地域性など多くの交絡因子を多数含んでおり,それらについて議論できていない.また,使用した調査票に関する信頼性・妥当性も含め今後の検討の余地はある.そのため,あくまでも日本の看護労働環境を概観し看護労働環境改善への示唆の一つとして報告を試みた.

Ⅵ . 結語

本稿では,米国のマグネットホスピタルから開発された NWI-R を使用した組織特性の可視化を試み,看護職の離職防止への示唆を得ることを試みた.その結果,看護労働環境として重要と考えられる構成概念として,①看護管理者のマネジメント能力,②専門性を発揮できる看護環境,③看護師―医師関係,④人員配置,⑤キャリア・アップ支援,⑥組織内における個人の位置づけ,の 6 つが得られた.

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Ⅶ . 今後の課題(離職防止への介入)

今後は,組織の調査(アセスメント)に終わるのではなく,国内の研究データを蓄積し,国内外研究との比較を通して,実際的な組織改善に結びつく具現化された施策を展開する Action Research による介入研究が必要であると考える.

謝辞:本研究に御協力いただきました看護管理者の

皆様方や多くの看護職スタッフの皆様方に深く感謝申

し上げます.なお,本研究は同志社大学寄附教育研究

プロジェクト「医療組織の質改善に関する総合的研究

~働きがいのある看護組織の追究~」の一環として

行ったものです.

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